【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日:平成28年8月24日〜平成28年8月26日 集会名:2016年度日本建築学会大会[九州] 開催場所:福岡大学 七隈キャンパス 発行日:平成28年7月20日 刊行物:2016年度日本建築学会大会[九州]学術講演梗概集 1281〜1282頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持構造体本体は、高強度部位と、該高強度部位に保持され弾性を有する荷重受け部材と、を有し、前記送気装置の吸気部は、前記荷重受け部材に設けられた空気の流通路に連通していることを特徴とする請求項3に記載の椅子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の椅子においては、ファンから送られた空気を着座者の背部側に吹き出す吹き出し部(排出口)が着座面の後部に固定的に設けられているため、着座時に衣服等で吹き出し部の一部が閉塞されてしまう可能性がある。この場合、着座者に向かう空気の吹き出し量や方向が不安定になることが懸念される。
【0006】
また、特許文献1に記載の椅子は、吹き出し部(排出口)が着座面の後部に固定的に設けられていることから、着座者の体格や姿勢、使用環境、好み等に応じた適切な空気の吹き出し方向の設定ができない。
【0007】
そこで本発明は、着座者に対して適切な方向から安定して空気を吹き出すことができる
椅子、及び、空調システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る
椅子は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
本発明に係る
椅子は、着座者の着座荷重を支持する
座の支持構造体本体と、前記支持構造体本体に固定され、吸入した空気を送出する送気装置と、前記送気装置から送出された空気を所定方向に案内して吹き出す誘導吹き出し手段と、を備え、前記誘導吹き出し手段は、先端部が前記支持構造体本体の外側位置に向かうように延設された誘導通路と、前記誘導通路の先端部に設けられ、空気の吹き出し方向が前記支持構造体本体の荷重支持面と交差しかつ着座者方向に向く角度範囲で、空気の吹き出し角度を調整可能とされた吹き出し部と、を有し
、前記吹き出し部は、前記座の後部寄りの側方に配置されるとともに、椅子幅方向に沿う軸心周りに傾動可能とされていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成により、送気装置から空気が送出されると、その空気は、誘導通路を通って支持構造体本体よりも外側位置の吹き出し部に誘導され、吹き出し部から着座者に向けて吹き出される。吹き出し部は、着座者の身体が触れる支持構造体本体の外側に位置されているため、空気の吹き出し口が着座者や衣服によって閉塞されにくくなる。また、着座者に対する空気の吹き出し方向は、着座者の体格や姿勢、使用環境、好み等に応じて吹き出し部で適切に調整することができる。
この場合、支持構造体本体の椅子幅方向外側に吹き出し部が配置されることになるため、着座者が着座したまま手を伸ばして吹き出し部を容易に操作することができる。また、この場合、通常の着座姿勢での着座時に着座者が吹き出し部に当接することがなくなる。このため、吹き出し部が着座者に当接することで、疼痛を着座者に与えるのを防ぐことができる。
さらに、この場合、着座者が座を執務用の天板付什器の天板の下方に引き寄せて着座したときにも、天板による影響を受けずに、若しくは、天板による影響を少なく抑えた状態で着座者に対して空気を安定して付与することができる。
【0010】
前記吹き出し部には、空気の吹き出し角度を調整する操作子が設けられるようにしても良い。
この場合、支持構造体本体の外側にある吹き出し部に操作子が設けられているため、操作子を容易に操作することができる。
【0012】
前記誘導通路は、前記支持構造体本体の高強度部位に固定されるようにしても良い。
この場合、支持構造体本体に入力される着座者からの入力荷重による影響を受けることなく、誘導通路と吹き出し部が安定的に支持構造体本体に支持される。したがって、この構成を採用した場合、着座者の荷重による影響を受けて吹き出し部からの空気の吹き出し向きが変動するのを抑制することができる。
また、吹き出し部に、空気の吹き出し角度を調整するための操作子がある場合には、操作子を安定して操作することが可能になる。
【0013】
前記支持構造体本体は、高強度部位と、該高強度部位に保持され弾性を有する荷重受け部材と、を有し、前記送気装置の吸気部は、前記荷重受け部材に設けられた空気の流通路に連通するようにしても良い。
この場合、荷重受け部材の空気の流通路を通して送気装置の吸入部に空気が吸い込まれるため、送気装置の吸気を利用して荷重受け部材に空気を流すことができる。したがって、この構成を採用した場合には、送気装置の送気と吸気の両方を利用して着座者の異なる部位に空気の流れを付与することができる。
【0016】
前記座の側方から上方に延出する肘掛けを備え、前記吹き出し部は、前記肘掛けの肘載せ部の後部寄りの下方位置に配置されるようにしても良い。
この場合、着座者が肘掛けの肘載せ部に腕先を載せた状態のまま、着座者の脇下方向に安定した空気を付与することができる。
【0017】
本発明に係る椅子の空調システムは、上記課題を解決するために、室内に空調空気を流通させる室内空調装置と、上記のいずれかの椅子を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、送気装置から送出された空気を、誘導通路を通して支持構造体本体よりも外側位置の吹き出し部に誘導し、その吹き出し部から着座者に向けて吹き出すことができるうえ、着座者に対する空気の吹き出し角度を吹き出し部で調整することができる。したがって、本発明によれば、着座者に対して適切な方向から安定して空気を吹き出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明においては、椅子1に正規姿勢で着座した人の正面となる向きを「前」と呼び、それと逆側の向きを「後」と呼ぶものとする。また、「上」,「下」と「左」,「右」については、椅子1に正規姿勢で着座した人の上方となる向きを「上」、それと逆側の向きを「下」と呼び、椅子1に正規姿勢で着座した人の左側となる向きを「左」、それと逆側の向きを「右」と呼ぶものとする。図中の適所には、前方を指す矢印FRと、上方を指す矢印UPと、左側方を指す矢印LHが記されている。
【0021】
最初に、
図1〜
図11に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る椅子1の全体構成を示す側面図であり、
図2は、椅子1を前部斜め上方から見た図である。
これらの図に示すように、本実施形態係る椅子1は、フロアF上に載置される脚部2と、脚部2の上端に設置されるボックス状の支基3と、支基3の上面に取り付けられた座受部材5と、座受部材5に前後位置調整可能に取り付けられ上面に着座者が着座する座4と、支基3から後部上方側に延出して座4に着座した着座者の背中を支持する背凭れ6と、座受部材5の左右の側部に取り付けられ座4に着座した着座者の腕先が載せ置かれる肘掛け11と、を備えている。
【0022】
脚部2は、キャスタ7a付きの多岐脚7と、多岐脚7の中央部より起立し昇降機構であるガススプリングを内蔵する脚柱8と、を備え、脚柱8の上端部に支基3が水平方向に回転可能に取り付けられている。
【0023】
支基3には、脚柱8の昇降調整機構と背凭れ6の傾動調整機構が内蔵されている。脚柱8のガススプリングの操作部は、支基3内の昇降調整機構に連結されている。
【0024】
背凭れ6は、側面視が略L字状の背凭れ支持フレーム9と、背凭れ支持フレーム9の後上部の前面に取り付けられ座4に着座した着座者の背中を直接支持する背凭れ本体10と、を備え、背凭れ支持フレーム9の前部下端が支基3内の傾動調整機構に連結されている。
【0025】
肘掛け11は、座受部材5の左右の各側部から上方に起立する肘掛け支柱11aと、肘掛け支柱11aの上端部に保持された肘載せ部11bと、を有している。肘載せ部11bの上面は平坦に形成され、その平坦な上面に着座者の腕先が載せ置かれるようになっている。
【0026】
本実施形態においては、座4が着座荷重支持構造体を構成している。
図3は、座4を上方から見た図であり、
図4は、後述する張材16を取り去って座4を前部斜め上方から見た図である。また、
図5は、座4の分解斜視図であり、
図6,
図7,
図8は、それぞれ
図3のVI−VI線沿う断面、VII−VII線沿う断面、VIII−VIII線沿う断面を示した図である。
【0027】
座4は、硬質樹脂または金属から成る支持ベース13(高強度部位)と、支持ベース13の上面側に載置されたクッション部材14と、クッション部材14の上面の一部に保持される通気性弾性部材15と、通気性弾性部材15の後縁部の上面を覆う吸入抑制シート25と、クッション部材14、通気性弾性部材15、及び、吸入抑制シート25の外側面と支持ベース13の外周縁部を覆う通気性を有する張材16と、を備えている。本実施形態においては、支持ベース13、クッション部材14、通気性弾性部材15、張材16等が、着座者の荷重を支持する支持構造体本体を構成している。また、クッション部材14と通気性弾性部材15は、高強度部位である支持ベース13に保持される荷重支持部を構成している。
【0028】
また、座4は、支持ベース13の後部寄りの下面に取り付けられた一対の送風ファン17(送気装置)と、各送風ファン17の送出部17oに接続された送気誘導ダクト18(誘導通路)と、送気誘導ダクト18の先端部に設けられた吹き出し部19と、を備えている。送気誘導ダクト18と吹き出し部19は、送風ファン17から送出された空気を所定方向に案内して吹き出す誘導吹き出し手段を構成している。
【0029】
支持ベース13は、四隅が緩やかに湾曲した略矩形状の平面視形状に形成され、その幅方向の中央領域が下方に凹状に湾曲している。支持ベース13の上面には、支持ベース13の外形よりも一回り大きく、上下方向に十分な厚みを有する平面視が略矩形状のクッション部材14が保持されている。クッション部材14は、ウレタン等の弾性を有する難通気性の樹脂材料によって構成されている。クッション部材14の外周縁部は、支持ベース13の外周縁部を覆うようにして被着されている。また、支持ベース13の幅方向の中央領域で、かつ前後方向の中央よりも後方側に偏った位置(後縁部)には、上下方向に貫通する一対の貫通孔20が形成されている。一対の貫通孔20は、支持ベース13に左右に離間して形成されている。支持ベース13の下面には、吸入部17iが各貫通孔20に臨むように一対の送風ファン17が取り付けられている。
【0030】
クッション部材14の上面には、
図5に示すように、前後方向の中央よりも後部寄り位置から前端部に亘って平面視が略矩形状の窪み部22が設けられている。窪み部22内の後部寄り位置には、支持ベース13の各貫通孔20に連通する一対の連通孔21が形成されている。各連通孔21は、支持ベース13の貫通孔20の直上位置に上下方向に沿って形成されている。また、窪み部22内には、前後方向に沿って延出する複数の凹溝23(凹部)が形成されている。複数の凹溝23は、クッション部材14の前端部領域から送風ファン17の吸入部17iに向かう空気の流れを案内し、それによって通気性弾性部材15内の空気の前後方向の流通抵抗を低減させる。
【0031】
通気性弾性部材15は、着座者からの荷重入力方向(上下方向)に沿う空気の良好な流通を許容するシート状の部材であり、平面視が略矩形状に形成されている。通気性弾性部材15は、クッション部材14の窪み部22と略同幅でかつ、窪み部22よりも前後方向の長さが長く形成されている。通気性弾性部材15は、後縁部がクッション部材14の一対の連通孔21の上方に配置され、かつ前端部がクッション部材14の前端部に達するようにクッション部材14の上面に載置されている。
【0032】
通気性弾性部材15は、上面が着座者側に面する荷重受け面とされている。支持ベース13の下面に設置された各送風ファン17の吸入部17iは、支持ベース13の貫通孔20とクッション部材14の連通孔21を通して通気性弾性部材の15の後縁部の下面(荷重受け面と相反する側の面)に対向している。通気性弾性部材15は、その内部が空気の流通路とされている。したがって、送風ファン17の吸入部17iは、荷重受け部材である通気性弾性部材15に設けられた流通路に連通している。
【0033】
本実施形態の場合、通気性弾性部材15の左右の側縁部は、クッション部材14の窪み部22に挿入され係止されている。クッション部材14の上面側の椅子幅方向で窪み部22に隣接する部分(縁部)は、荷重入力側(上方側)に向かって膨出する膨出部24を構成している。左右の各膨出部24は、内側の角部の近傍で通気性弾性部材15の左右の側縁部に当接し、それによって通気性弾性部材15の左右方向の位置ずれを防止している。
【0034】
なお、通気性弾性部材15は、その左右の側縁部の上下方向の厚みが薄い場合には、各膨出部24の上面の一部に載置されるようにしても良い。この場合も、膨出部24の内側の角部の近傍が通気性弾性部材15の側縁部に接触するようにすれば、通気性弾性部材15の左右方向の位置ずれを防止することができる。また、
図4中の符号50は、着座者の着座状態と非着座状態を検出する着座センサである。着座センサ50は、着座者が離席したときに送風ファン17を自動的に停止させるために用いられる。
【0035】
吸入抑制シート25は、通気性弾性部材15の後部側の上面を覆うように、クッション部材14の後縁部に取り付けられている。吸入抑制シート25は、ポレエチレンシート等の不通気性のシート材によって形成されており、通気性弾性部材15の後縁部の上面からの通気性弾性部材15の内部への直接的な空気の流入を抑制する。通気性弾性部材15は、直下の送風ファン17の吸入部17iから吸引力を受けて上下左右前後の様々な方向から空気が流入するが、吸入抑制シート25の配置されている領域では上方からの空気の流入が制限されている。なお、吸入抑制シート25は、
上記のポリエチレンシートの他、織り目の小さな織物や、編み目の小さな編物等であっても良い。
【0036】
本実施形態の場合、着座者の臀部の後方側に位置される部分が吸気不要領域とされ、その部分に吸入抑制シート25が設置されている。本実施形態においては、吸入抑制シート25は、通気性弾性部材15の上面のうちの送風ファン17の吸入部17iの直上位置に跨るように設置されている。なお、吸入抑制シート25は、通気性弾性部材15の上面の後縁部に限らず、通気性弾性部材15の上面のうちの吸気が不要な領域であればいずれの部分に設置しても良い。
【0037】
図9は、通気性弾性部材15の一部を拡大して示した図である。
通気性弾性部材15は、
図9に示すように、上面(荷重受面)に沿って延在する表面層26と、上面(荷重受面)に沿って延在し表面層26と対向方向で離間して配置された裏面層27と、表面層26と裏面層27の間にあって両者を連結する接続層28と、を有している。表面層26と裏面層27とは、化学繊維や天然繊維等の各種の繊維から成る線状体29がメッシュ状に接合された比較的に強度の高い層となっている。また、接続層28は、荷重入力方向に沿う方向に弾性変形可能なナイロンやポリエステル等の材料から成る撚っていない複数の線状体30(モノフィラメント)によって構成されており、表面層26の線状体29と裏面層27の線状体29を相互に連結している。
【0038】
通気性弾性部材15は、表面層26と裏面層27のメッシュ構造部が、接続層28の線状体30によって接続されているため、荷重入力方向(上下方向)の空気の流通を許容する。また、通気性弾性部材15は、接続層28の複数の線状体30の間に隙間が設けられているため、荷重入力方向と交差する方向の空気の流通も許容する。
【0039】
支持ベース13の下面に取り付ける送風ファン17は、本実施形態の場合、シロッコ式のファンによって構成されている。送風ファン17の送出部17oは、支持ベース13の下方において左右の側部後方側に向かって開口している。各送出部17oには、送気誘導ダクト18が接続されている。送気誘導ダクト18は、送風ファン17の送出部17oから支持ベース13の下面に沿って先端部が支持ベース13の側方に向かって延出している。送気誘導ダクト18の先端部には、正面視が略L字状の吹き出し部19が接続されている。吹き出し部19は、支持ベース13とクッション部材14及び張材16(座本体部)の左右の側面の外側を回り込んで先端部が上方に延出している。吹き出し部19は、支持ベース13の左右の側縁部の下面にブラケット31(
図3参照)を介して締結固定されている。
なお、本実施形態においては、送風誘導タクト18は、可撓性を有する部材によって構成されている。これにより、座4を座受け部材5に対して前後方向に位置調整するときに、座と一体に移動した送気誘導ダクト18が支基3側の部材と強接触するのを防止することができる。
【0040】
図10は、座4の左側方に配置される吹き出し部19の先端部を左前部上方側から見た図である。
本実施形態の場合、吹き出し部19は、座4の後部寄りの側方位置、より正確には、左右の対応する肘掛け11の肘載せ部11bの後部寄りの下方位置に配置されている。吹き出し部19の先端部は、上方に向かって開口する吹き出し口19aの内側に、吹き出し角度調整用のルーバー58が配置されている。吹き出し口19aは、空気の吹出し方向が荷重支持面と非平行でかつ着座者方向を向くように概ね上方を向いて開口している。本実施形態の場合、ルーバー58は、左右方向に角度調整可能とされている。また、吹き出し部19の外側側面には、角度調整用の回動操作子55(操作子)が取り付けられている。回動操作子55は、ルーバー58の図示しない回動機構に連係され、着座者による回動操作によってルーバー58の左右方向の指向角度を調整できるようになっている。
また、吹き出し部19の先端部は、図示は省略されているが、椅子1の幅方向に沿う軸心周りに傾動調整可能とされている。これにより、着座者が吹き出し部19の先端部を手で把持し、前後方向に傾動させることによって、吹き出し部19の先端部からの空気の吹出し方向を前後に適正に調整することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、吹き出し部19の吹き出し角度を調整する調整子が回動操作子によって構成されているが、調整子は回動式に限るものでない。また、本実施形態においては、吹き出し部19の空気の吹き出し方向が左右方向と前後方向に調整可能となっているが、吹き出し部19での空気の吹き出し方向は、左右方向と前後方向のいずれか一方のみ調整できるようにしても良い。
【0042】
また、
図2,
図3,
図5,
図6に示すように、左右の一方の吹き出し部19の前面には、風量調整スイッチを兼ねる送風ファン17の電源スイッチ56が設置されている。電源スイッチ56は、例えば、操作ノブをスライド操作するタイプのスイッチによって構成され、ノブの操作位置に応じて、送風ファン17の電源のON,OFFと、送風モード(送風の強弱)の切り換えを行えるようになっている。
【0043】
電源スイッチ56は、図示しない配線によって、
図8に示す送風ファン17の制御装置52に接続されている。送風ファン17と制御装置52には、送風ファン17の駆動電源であるバッテリ51が接続されている。
本実施形態の場合、バッテリ51と制御装置52は、座4の支持ベース13の後縁部側の下面に取り付けられている。なお、バッテリ51や制御装置52の設置位置はこの位置に限るものでなく、例えば、背凭れ6等に設置するようにしても良い。
【0044】
以上のように構成された椅子1は、以下のようにして着座者回りの空調が行われる。
即ち、座4に着座者が着座し、その状態で送風ファン17の電源スイッチ56が入れられると、座4の内部から左右の送風ファン17の吸入部17iに空気が吸入され、その空気が各送風ファン17の送出部17oから送気誘導ダクト18を通って、各吹き出し部19から吹き出される。吹き出し部19から吹き出された空気は着座者の脇部や腕部等に空気流として当てられる。
【0045】
また、送風ファン17の吸入部17iに吸引される空気は、
図8に示すように、支持ベース13の貫通孔20とクッション部材14の連通孔21を通して通気性弾性部材15の下面から吸い入れられる。通気性弾性部材15は、送風ファン17の吸入部17iの直上部位置こそ吸入抑制シート25によって上面側を閉塞されているものの、それよりも前方側の上面は閉塞されずに通気性の張材16によって覆われている。このため、送風ファン17の吸入部17iには、張材16の表面から通気性弾性部材15の内部に流入した空気が吸い込まれる。このとき、張材16のうちの着座者の着座位置の周囲から空気の吸い込みが行われ、このときの空気の流れが着座者に直接爽快感を与えるとともに、衣服や身体の水分の気化による冷却を促し、着座者に冷感を与える。
【0046】
図11は、本実施形態に係る椅子1の執務室60内での使用形態の一例を示す図である。
同図において、符号61は、執務室60内に椅子1とともに設置されたデスク装置であり、符号62は、執務室60の天井CとフロアFに設置された空調吹き出し部(室内に空調空気を流通させる室内空調装置)である。本使用形態においては、椅子1回りの空気の流れがタスク・アンビエント空調におけるタスク空調を構成している。
【0047】
タスク・アンビエント空調は、室内を、作業域(タスク域)とそれ以外の周辺域(アンビエント域)とに区画し、周辺域の熱負荷等を処理するベース空調と、執務空間での人体発熱等を処理するタスク空調とで構成することで、快適性を損なわずに省エネルギー化を図る空調システムである。本使用形態における空調システムは、執務室60内の空調吹き出し部62がベース空調を構成し、着座者回りの空気の流れを提供する椅子1の空気流通部がタスク空調を構成している。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る座4やその座4を用いる椅子1は、送風ファン17から送出された空気を、送気誘導ダクト18を通して支持構造体本体(支持ベース13,クッション部材14,通気性弾性部材15,張材16)よりも側部外側に配置されている吹き出し部19に誘導し、吹き出し部19から着座者に向けて吹き出すことができるうえ、着座者に対する空気の吹き出し角度を吹き出し部19で適切に調整することができる。したがって、本実施形態に係る座4や椅子1を採用した場合には、着座者に対して適切な方向から安定して空気を吹き出すことができる。
【0049】
また、本実施形態に係る座4や椅子1は、支持構造体本体の椅子幅方向外側に配置された吹き出し部19に、空気の吹き出し角度を調整する、本発明における操作子としての回動調整子55が設けられているため、空気の吹き出し角度を吹き出し方向を確認しながら容易に調整することができる。
また、本実施形態に係る座4や椅子1においては、吹き出し部19が支持構造体本体の椅子幅方向外側に配置されているため、通常姿勢での着座時に吹き出し部19が着座者に当接することがない。このため、着座者に疼痛を与えるのを防ぐことができる。
なお、吹き出し部19は、支持構造体本体の後方や前方に配置することも可能であるが、本実施形態のように支持構造体本体の椅子幅方向外側に配置した場合には、着座者が座4に着座した状態のまま、手を伸ばして空気の吹き出し角度を容易に調整することができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る座4や椅子1においては、誘導通路である送気誘導ダクト18が、支持構造体本体の高強度部位である支持ベース13に固定設置されているため、座4に入力される着座者からの入力荷重の影響を受けることなく、送気誘導ダクト18と吹き出し部19を安定的に支持することができる。したがって、本実施形態に係る座4や椅子1を採用した場合には、着座者の荷重による影響を受けて、吹き出し部19からの空気の吹き出し向きが、着座者の意図しない方向へ変動するのを抑制することができる。また、この場合、吹き出し部19に設けられた回動操作子55を安定して回動操作することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る座4や椅子1は、支持構造体本体が高強度部位である支持ベース13と、荷重受け部材であるクッション部材14及び通気性弾性部材15と、を有し、送風ファン17の吸入部17iが通気性弾性部材15の内部の流通路に連通している。このため、送風ファン17の吸気を利用して通気性弾性部材15に空気を流すことができる。したがって、本実施形態に係る座4や椅子1を採用した場合には、送風ファン17の送気と吸気の両方を利用して着座者の異なる部位に空気の流れを付与することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る荷重支持構造物の構成は、座4に限らず背凭れ6にも採用することができる。しかし、本実施形態のように座4に上記の構成を採用し、吹き出し部19を座4の後部寄りの側方に配置した場合には、着座者が座4をデスク装置61等の天板の下方に引き寄せて着座したときでも、天板による影響受けずに、若しくは、天板による影響を少なく抑えた状態で着座者に対して空気を安定して付与することができる。
【0053】
また、特に本実施形態のように、吹き出し部19を肘掛け11の肘載せ部11bの後部寄りの下方位置に配置した場合には、着座者が肘掛け11の肘載せ部11bに腕先を載せた状態で、着座者の脇下方向に安定した空気を付与することができる。したがって、この構成を採用した場合には、着座者に心地良い涼感を与えることができる。
【0054】
つづいて、
図12〜
図14に示す第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、基本的な構成は第1の実施形態とほぼ同様であるが、送風ファン17に接続される誘導吹き出し手段の誘導通路の構成のみが異なっている。なお、以下で説明する各実施形態においては、第1の実施形態と共通部分に同一符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
【0055】
図12は、座4を上方から見た図であり、
図13,
図14は、
図12のXIII−XIII線に沿う断面とXIV−XIV線に沿う断面をそれぞれ示す図である。
第1の実施形態の誘導通路は、全体が送気誘導ダクト18によって構成されていたが、第2の実施形態の誘導通路は、その一部が支持ベース13の上面と、クッション部材14の下面に形成された通路溝35とによって形成されている。
【0056】
第2の実施形態においては、基本的に第1の実施形態と同様の効果を得ることができるが、誘導通路の一部が支持ベース13の上面側に位置されているため、誘導通路が支持ベース13の下方側で周囲の部材と干渉したり、誘導通路が周囲の部材の設置スペースを狭めるのを抑制することができる。
【0057】
さらに、
図15〜
図17に示す第3の実施形態について説明する。
図15は、座4を上方から見た図であり、
図16,
図17は、
図15のXVI−XVI線に沿う断面とXVII−XVII線に沿う断面をそれぞれ示す図である。
第3の実施形態は、第2の実施形態と同様に、誘導通路の一部が支持ベース13の上面と、クッション部材14の下面に形成された通路溝35とによって形成され、さらに送風ファン17が支持ベース13の上面側に固定設定されている。
【0058】
第3の実施形態においては、誘導通路の一部とともに送風ファン17が支持ベース13の上面側に配置されているため、空気流通部が支持ベース13の下方に占めるスペースをより狭めることができる。
【0059】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、座4が荷重支持構造物とされているが、荷重支持構造物は背凭れ6であっても良い。また、送風ファン17、送気誘導ダクト18、吹き出し部19の数量は、上記の実施形態のものに限らず、要求される風量の条件やニーズに応じて適宜変更しても良い。
【0060】
また、上記の実施形態においては、座4の支持ベース13の上部にクッション部材14を設置し、そのクッション部材14に通気性弾性部材15を保持させているが、
図18に示す第4の実施形態のように、支持ベース13上にクッション部材を設置せずに、通気性弾性部材15を複数枚重ねて配置するようにしても良い。