特許第6798894号(P6798894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6798894位置推定装置、位置推定システム、及び、位置推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798894
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】位置推定装置、位置推定システム、及び、位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20201130BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20201130BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   G06T7/60 200J
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-4390(P2017-4390)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-112981(P2018-112981A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老原 宏
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−106703(JP,A)
【文献】 特開2015−184956(JP,A)
【文献】 特開2012−222762(JP,A)
【文献】 特開2013−154730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
G06T 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定対象の位置を推定する位置推定装置であって、
当該装置が搭載される車両の車両情報を取得時刻とともに一定周期でバッファに蓄積する蓄積処理部と、
推定開始時刻から推定終了時刻までの前記車両情報を前記バッファから纏めて取得して前記推定対象の位置を推定する推定処理部と、
を備える、位置推定装置。
【請求項2】
前記推定処理部は、
推定開始時刻から推定終了時刻までの前記車両情報を前記バッファから纏めて取得して前記推定対象の位置を推定する第1モードと、
所定周期で得られる前記車両情報毎に逐一前記推定対象の位置を推定する第2のモードと、
を切り替え可能に設けられる、請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記推定処理部は、前記推定対象の位置推定処理以外の、当該装置によって行われる他の処理の負荷に基づいて、前記第1モードと前記第2モードとの切り替えを行う、請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記推定処理部は、前記車両情報に基づいて前記第1モードと前記第2モードとの切り替えを行う、請求項2又は3に記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記推定処理部は、車両速度が第1閾値より遅く、操舵角の変化速度が第2閾値より遅い場合に、前記第1モードを選択する、請求項4に記載の位置推定装置。
【請求項6】
前記推定対象は駐車枠であり、
前記推定処理部は、カメラ画像から認識された前記駐車枠の位置情報又は先の推定処理によって取得された前記駐車枠の位置情報と、前記車両情報とに基づいて前記駐車枠の位置推定を行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の位置推定装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の位置推定装置と、
前記車両の周辺を撮影するカメラと、
を備える位置推定システム。
【請求項8】
情報処理装置によって推定対象の位置を推定する位置推定方法であって、
車両情報を取得時刻とともに一定周期でバッファに蓄積する蓄積処理工程と、
推定開始時刻から推定終了時刻までの前記車両情報を前記バッファから纏めて取得して前記推定対象の位置を推定する推定処理工程と、
を備える、位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定装置、位置推定システム、及び、位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたカメラで撮影された車両周囲の画像に基づいて、地面に描かれた駐車枠線を認識する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−12838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駐車枠線の位置情報が必要な時点において、当該駐車枠線が撮影された最新画像が取得できないことがある。このような状況は、例えば、車両が移動して当該駐車枠線から離れた場合等に生じる。また、駐車枠線の位置情報が必要な時点において、他の画像処理が実行されており、処理負荷の大きい駐車枠線の認識処理を即座に実行することができないことがある。
【0005】
このような事態に対応するための補助機能として、駐車枠線の認識を行った後に、当該駐車枠線の位置を、車両の速度情報及びステアリングの操舵角情報等の車両情報を用いて一定周期で逐次推定することが考えられる。これにより、先に駐車枠線の認識が行われた枠線については、新たに駐車枠線の認識処理を行わなくても、位置推定処理結果によって枠線位置を認識することができる。
【0006】
ただし、この場合、一定周期で逐次推定処理が行われるために、位置推定処理を行うタイミングが他の処理と競合し易く、処理装置に対する負荷が大きくなることが懸念される。また、複数の駐車枠線の位置を同じタイミングで推定処理することが必要になる場合もあり、このような場合にも、処理装置に対する負荷が大きくなることが懸念される。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、演算処理の負荷を分散させながら位置推定処理を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る位置推定装置は、推定対象の位置を推定する位置推定装置であって、当該装置が搭載される車両の車両情報を取得時刻とともに一定周期でバッファに蓄積する蓄積処理部と、推定開始時刻から推定終了時刻までの前記車両情報を前記バッファから纏めて取得して前記推定対象の位置を推定する推定処理部と、を備える構成(第1の構成)である。
【0009】
また、上記第1の構成の位置推定装置において、前記推定処理部は、推定開始時刻から推定終了時刻までの前記車両情報を前記バッファから纏めて取得して前記推定対象の位置を推定する第1モードと、所定周期で得られる前記車両情報毎に逐一前記推定対象の位置を推定する第2のモードと、を切り替え可能に設けられる構成(第2の構成)であってよい。
【0010】
また、上記第2の構成の位置推定装置において、前記推定処理部は、前記推定対象の位置推定処理以外の、当該装置によって行われる他の処理の負荷情報に基づいて、前記第1モードと前記第2モードとの切り替えを行う構成(第3の構成)であってよい。
【0011】
また、上記第2又は第3の構成の位置推定装置において、前記推定処理部は、前記車両情報に基づいて前記第1モードと前記第2モードとの切り替えを行う構成(第4の構成)であってよい。
【0012】
また、上記第4の構成の位置推定装置において、前記推定処理部は、車両速度が第1閾値より遅く、操舵角の変化速度が第2閾値より遅い場合に、前記第1モードを選択する構成(第5の構成)であってよい。
【0013】
また、上記第1〜第5のいずれかの構成の位置推定装置において、前記推定対象は駐車枠であり、前記推定処理部は、カメラ画像から認識された前記駐車枠の位置情報又は先の推定処理によって取得された前記駐車枠の位置情報と、前記車両情報とに基づいて前記駐車枠の位置推定を行う構成(第6の構成)であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る位置推定システムは、上記第1〜第6のいずれかの構成の位置推定装置と、前記車両の周辺を撮影するカメラと、を備える構成(第7の構成)であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る位置推定方法は、情報処理装置によって推定対象の位置を推定する位置推定方法であって、車両情報を取得時刻とともに一定周期でバッファに蓄積する蓄積処理工程と、推定開始時刻から推定終了時刻までの前記車両情報を前記バッファから纏めて取得して前記推定対象の位置を推定する推定処理工程と、を備える構成(第8の構成)である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、演算処理の負荷を分散させながら位置推定処理を行うことができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る位置推定システムの構成を示すブロック図
図2】第1実施形態に係る位置推定装置の構成を示すブロック図
図3】第1実施形態における位置推定の手順を示すフローチャート
図4】第2実施形態における位置推定の手順を示すフローチャート
図5】第2実施形態におけるモードの切り替え判断処理の手順を示すフローチャート
図6】変形例の位置推定装置を含む位置推定システムの構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、車両の直進進行方向であって、運転席からハンドルに向かう方向を「前方向」とする。また、車両の直進進行方向であって、ハンドルから運転席に向かう方向を「後方向」とする。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転手の右側から左側に向かう方向を「左方向」とする。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転手の左側から右側に向かう方向を「右方向」とする。
【0019】
<<1.第1実施形態>>
<1−1.位置推定システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る位置推定システム1の構成を示すブロック図である。位置推定システム1は、推定対象の位置を推定するシステムである。図1に示すように、位置推定システム1は、位置推定装置10と、カメラ20と、を備える。また、位置推定装置10は、CAN(Controller Area Network)バス30を介して、車速センサ40、舵角センサ50、及び、シフトセンサ60に接続されている。
【0020】
位置推定装置10は、推定対象の位置を推定する情報処理装置である。本実施の形態では、一例として、推定対象は駐車枠である。より詳細には、推定対象は、駐車位置を区画する駐車枠線である。
【0021】
カメラ20は、位置推定装置10が搭載される車両の周辺を撮影する。カメラ20は、位置推定装置10が搭載される車両と同一の車両に搭載される。カメラ20の数は、特に限定されないが、本実施の形態では4つである。本実施の形態では、同一の車両に搭載する位置推定装置10とカメラ20とがセットになって、駐車枠の位置推定を行えるために、システム構成をコンパクトにできる。
【0022】
4つのカメラ20は、フロントカメラと、バックカメラと、左サイドカメラと、右サイドカメラとによって構成される。フロントカメラは、例えば車両の前端部に配置され、車両の前方を撮影する。バックカメラは、例えば車両の後端部に配置され、車両の後方を撮影する。左サイドカメラは、例えば車両の左側ドアミラーに配置され、車両の左側方を撮影する。右サイドカメラは、例えば車両の右側ドアミラーに配置され、車両の右側方を撮影する。カメラ20は、有線又は無線で位置推定装置10に接続されており、撮影情報を位置推定装置10に送信する。カメラ20は、例えば所定時間毎にカメラ画像を位置推定装置10に送信する。
【0023】
車速センサ40は、位置推定装置10が搭載される車両の速度を検出する。本実施の形態では、車速センサ40は、車両の車輪軸に設けられた不図示のロータの回転をパルス信号として出力する磁気センサ又は光センサである。舵角センサ50は、不図示のステアリングホイール(ハンドル)の回転角を検出する。シフトセンサ60は、不図示のトランスミッションからギアポジション(シフトポジション)を検出する。位置推定装置10は、CANバス30を介して、車速情報、操舵角情報、及び、シフトポジション情報を含む車両情報を取得する。
【0024】
<1−2.位置推定装置の詳細>
図2は、第1実施形態に係る位置推定装置10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、位置推定装置10は、制御部11と、記憶部12と、を備える。
【0025】
制御部11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を備えるコンピュータである。制御部11は、記憶部12に接続され、相互にデータの送受信を行い、位置推定装置10の全体を制御する。また、制御部11は、画像処理部111と、蓄積処理部112と、推定処理部113と、を備える。制御部11が備えるこれらの各部は、プログラムに従ってCPUが演算処理を行うことによって実現される機能である。
【0026】
画像処理部111は、カメラ20が撮影したカメラ画像の処理を行う。本実施の形態では、画像処理部111は、例えば、カメラ画像に基づいて駐車場に描かれた駐車枠の認識を行う。換言すると、本実施の形態の位置推定装置10は、駐車枠の認識装置としての機能も有する。画像処理部111は、カメラ画像に基づいて、認識した駐車枠内に車両を駐車することができるか否かの判断も行う。例えば、認識した駐車枠に車両が存在していると判断される場合、画像処理部111は、認識した駐車枠内に車両を駐車できないと判断する。画像処理部111は、認識した駐車枠に基づいて駐車領域を検出する機能も有する。駐車領域情報は、例えば、駐車支援を行う運転支援装置(不図示)に送信される。運転支援装置は、駐車領域情報に基づいて駐車支援制御を実行する。
【0027】
画像処理部111は、特に限定する趣旨ではないが、例えばサイドカメラで撮影されるカメラ画像に基づいて駐車枠の認識を行う。例えば、サイドカメラの代わりにリアカメラが用いられてもよいし、サイドカメラとリアカメラとの両方が用いられてもよい。駐車枠の認識処理は、適宜実施される。画像処理部111は、カメラ画像中に存在する複数の駐車枠の認識処理を行う場合もある。
【0028】
画像処理部111は、カメラ画像中の輝度変化に基づいて、車両の駐車領域を区画する駐車枠線の検出を行う。駐車枠線は、一般的に白色又は黄色等の明るい色彩が施されるために、画像中における輝度が高い。このために、駐車枠線の輝度と駐車場の路面表面の輝度との間に輝度差が発生する。当該輝度差に基づく輝度変化は一定範囲になるために、輝度変化が一定範囲となるエッジを検出することにより、駐車枠線の検出を行うことができる。なお、「エッジ」は、画像中において、画素間の輝度が所定以上の大きさで変化する部分を指す。
【0029】
画像処理部111は、検出された2つの駐車枠線のエッジ間の距離が所定の距離であると判断される場合に、検出された2つの駐車枠線間の領域を駐車枠として認識する。所定の距離とは、例えば、駐車場に関する法令等で規定される一般公共用の標準的な駐車枠の幅であり、2.5mである。
【0030】
本実施の形態では、画像処理部111は、認識した駐車枠の駐車枠線の座標値について記憶部12の駐車枠管理メモリ121に記憶する。記憶する座標値は、駐車枠線の代表的な位置でよく、1つでも複数でもよい。画像処理部111は、駐車枠線の座標値と共に、当該座標位置に駐車枠線が存在していたと判断される時刻も駐車枠管理メモリ121に記憶する。
【0031】
なお、上述の座標値は、実空間上における車両の所定位置を基準とした座標(いわゆるワールド座標)上の値であってよい。カメラで撮影した画像における各画素の座標は、実際の空間における車両に対する座標に1対1で対応しているために、画像で検出した駐車枠線の座標位置からワールド座標の座標値を算出することができる。
【0032】
蓄積処理部112は、位置推定装置10が搭載される車両の車両情報を取得時刻とともに一定周期でバッファに蓄積する。本実施の形態では、車両情報は、CANバス30を介して車速センサ40、舵角センサ50、及び、シフトセンサ60から取得される。詳細には、車両情報は、車輪速パルス積算値、ハンドルの操舵角、及び、シフトポジションである。蓄積処理部112は、車両情報だけでなく、当該車両情報を取得した時刻についてもバッファに記憶させる。
【0033】
本実施の形態では、バッファは、記憶部12に備えられる車両情報メモリ122である。蓄積処理部112は、車両情報メモリ122をリングバッファとして、リングバッファ制御を実行する。リングバッファ制御とは、蓄積処理部112が、車両情報メモリ122における最後の領域までデータを記憶すると、最初の領域に戻って新たなデータを記憶する制御である。これにより、リングバッファである車両情報メモリ122は、最も古いデータに対して新たなデータが順次上書きされていく。車両情報メモリ122においては、常に過去一定時間分の車両情報が記憶された状態にできる。
【0034】
本実施の形態では、蓄積処理部112は、例えば24ms周期で車両情報を車両情報メモリ122に記憶する。また、蓄積処理部112は、画像処理部111による駐車枠検知に関する処理が開始される時点においては、車両情報の蓄積処理を開始している。すなわち、駐車枠線の座標値の取得に用いられたカメラ画像が撮影された時点、又は、それ以前に、車両情報の蓄積処理は開始されている。
【0035】
推定処理部113は、推定開始時刻から推定終了時刻までの車両情報をバッファ122から纏めて取得して推定対象の位置を推定する。推定開始時刻及び推定終了時刻は、推定を行う状況に応じて適宜設定される。本実施の形態によれば、バッファ122に一定周期で車両情報を蓄積しておき、必要に応じて車両情報をバッファ122から纏めて取得して位置推定が行われる。このために、一定周期で位置推定が繰り返される構成に比べて、位置推定装置10における演算処理の負荷を分散させることができる。
【0036】
本実施の形態では、推定処理部113は、カメラ画像から認識された駐車枠の位置情報、又は、先の推定処理によって取得された駐車枠の位置情報と、車両情報と、に基づいて駐車枠の位置推定を行う。本実施の形態では、詳細には、駐車枠管理メモリ121に記憶される駐車枠線の位置情報と、車両情報とに基づいて駐車枠線の位置推定を行う。本実施形態によれば、最新のカメラ画像から目標とする駐車枠線の位置を認識することが出来ない場合でも、位置推定機能によって駐車枠線の位置を認識することができる。
【0037】
駐車枠管理メモリ121には、上述のように、画像処理部111によって認識された駐車枠線の位置情報が記憶される。また、駐車枠管理メモリ121には、推定処理部113によって推定された駐車枠線の位置情報も記憶される。推定処理部113は、例えば、最も直近のカメラ画像から認識された駐車枠線の位置情報を用いて位置推定処理を行う。推定処理部113は、推定処理によって得られた駐車枠線の位置情報を用いて位置推定処理を行うこともある。
【0038】
推定処理部113は、車両情報に含まれるシフトポジション情報によって、推定開始時刻から推定終了時刻までの間において、車両が前進したのか後退したのかを把握できる。また、推定処理部113は、車両情報に含まれる操舵角情報によって、推定開始時刻から推定終了時刻までの間におけるハンドルの向きを把握することができる。すなわち、推定処理部113は、シフトポジション情報と操舵角情報とによって、車両の進行方向を把握することができる。推定処理部113は、更に車両情報に含まれる車速情報を組み合わせることによって、推定開始時刻から推定終了時刻までの間に、車両がどの方向にどれだけの距離を移動したのかを把握することができる。このために、推定処理部113は、駐車枠管理メモリ121から読み出される、推定開始時刻における駐車枠線の位置情報から、推定終了時刻における駐車枠線の位置を推定することができる。
【0039】
図3は、第1実施形態における位置推定の手順を示すフローチャートである。なお、図3に示す位置推定の手順は例示に過ぎない。推定処理部113は、例えば、画像処理部111が認識した駐車枠線の位置情報が駐車枠管理メモリ121に記憶された時点で位置推定に関する処理を開始する。
【0040】
推定処理部113は、推定処理結果が必要なタイミングか否かを判断する(ステップS1)。推定処理結果が必要なタイミングとして、例えば、駐車枠線情報を利用した処理が要求されるタイミングが挙げられる。詳細には、カメラ画像に駐車枠を重ねて表示することが要求されたタイミングが例示される。また、推定処理結果が必要なタイミングとして、例えば、車両情報メモリ122によって記憶される情報によって推定処理が実行できなくなる前の適当なタイミングが挙げられる。これは、車両情報メモリ122がリングバッファとして構成されており、古い車両情報が上書きにより消去されることを考慮するものである。また、推定処理結果が必要なタイミングとして、例えば、推定対象となる駐車枠線がカメラ画像において認識できなくなったタイミングが挙げられる。また、位置推定装置10における演算処理負荷が少ないタイミングが、推定処理結果が必要なタイミングとされてもよい。
【0041】
推定処理結果が必要なタイミングとなるまで、推定処理部113は、当該タイミングか否かの判断を繰り返す。推定処理部113は、推定処理結果が必要なタイミングであると判断すると(ステップS1でYes)、駐車枠管理メモリ121から推定対象となる駐車枠線の位置情報を読み出す(ステップS2)。駐車枠管理メモリ121から読み出される位置情報は、例えば、最も直近のカメラ画像から認識された駐車枠線の位置情報や、最も直近の推定処理によって得られた駐車枠線の位置情報である。
【0042】
また、推定処理部113は、推定対象時間を決定する(ステップS3)。詳細には、推定処理部113は、推定開始時刻及び推定終了時刻を決定する。推定処理部113は、駐車枠管理メモリ121から読み出した駐車枠線の位置情報と共に記憶されている時刻を推定開始時刻とする。駐車枠線の位置情報と共に記憶されている時刻は、当該位置情報に示される座標位置に推定対象となる駐車枠線が存在していたと判断される時刻である。また、推定処理部113は、例えば、推定処理結果が必要とされたタイミングを推定終了時刻にする。
【0043】
推定処理部113は、決定した推定開始時刻から推定終了時刻までの車両情報を、車両情報メモリ122から読み出す(ステップS4)。車両情報には、上述のように、車速情報、操舵角情報、及び、シフトポジション情報が含まれる。推定処理部113は、ステップS2で読み出した駐車枠線の位置情報と、ステップS4で読み出した車両情報とに基づいて、駐車枠線の位置を推定する(ステップS5)。推定処理部113は、推定した駐車枠線の位置(座標値)を、その位置に当該駐車枠線があったと判断される時刻と共に、駐車枠管理メモリ121に記憶する。
【0044】
推定処理部113は、推定処理を行った後、更に推定処理が行われるか否かを確認する(ステップS6)。推定処理が必要な場合には(ステップS6でYes)、ステップS1に戻る。推定処理が不要な場合には(ステップS6でNo)、位置推定に関する処理が終了される。
【0045】
本実施の形態の構成によれば、CANバス30を介して取得される車両情報は、即座に使用されるのではなく、一旦、バッファである車両情報メモリ122に記憶される。そして、位置推定装置10は、必要なタイミングに、車両情報メモリ122から車両情報を纏めて取得して、当該車両情報を用いて駐車枠線の位置を推定する構成になっている。このために、例えば、一定周期でCANバス30を介して車両情報を取得するたびに、逐一駐車枠線の位置推定を行う構成と比べて、演算処理のタイミングを分散させることができる。例えば、複数の駐車線枠の位置推定が必要な場合でも、それらの演算処理が行われるタイミングを互いにずらすことも可能であり、位置推定装置10における演算処理の負荷が一時期に過度に大きくなるといった事態の発生を低減することができる。
【0046】
<<2.第2実施形態>>
第2実施形態の位置推定システム及び位置推定装置の構成は、第1実施形態の構成と同様である。第1実施形態と重複する部分については、同一の符号を付して説明し、特に必要が無い場合には説明を省略する。
【0047】
第2実施形態においては、推定処理部113が、推定開始時刻から推定終了時刻までの車両情報をバッファから纏めて取得して推定対象の位置を推定する第1モードと、所定周期で得られる車両情報毎に逐一推定対象の位置を推定する第2モードと、を切り替え可能に設けられる。この点、第1実施形態と異なる。
【0048】
第1モードは、第1実施形態の位置推定処理手法と同じである。バッファは車両情報メモリ122である。第2モードにおける所定周期は、本実施の形態では、蓄積処理部112が車両情報メモリ122に蓄積する一定周期と同じ周期である。例えば、所定周期は24ms周期である。第2実施形態の構成によれば、例えば車両状況や、位置推定装置10の処理状況に応じて位置推定処理の方法を切り替えることができるので、演算処理の負荷の分散に加えて、精度の高い位置推定を行うことが可能になる。
【0049】
図4は、第2実施形態における位置推定の手順を示すフローチャートである。なお、図4に示す位置推定の手順は例示である。推定処理部113は、例えば、画像処理部111が認識した駐車枠線の位置情報が駐車枠管理メモリ121に記憶された時点で位置推定に関する処理を開始する。
【0050】
図4に示すように、推定処理部113は、まず、推定処理手法が第1モードで良いか否かを確認する(ステップS11)。第1モードで良いか否かは、例えば、車両情報や位置推定装置10の演算処理の負荷状況に基づいて決定される。モードの切り替え判断処理の詳細については後述する。
【0051】
第1モードで良いと判断された場合(ステップS11でYes)、推定処理部113は、ステップS12〜ステップS17までの処理を行う。ステップS12〜ステップS17までの処理は、第1実施形態で説明した処理(図3のステップS1〜ステップS6)と同じである。このために、詳細な説明は省略する。
【0052】
一方、第1モードで良くないと判断された場合(ステップS11でNo)、第2モードにしたがった推定処理が実行される。推定処理部113は、一定時間が経過したか否かを確認する(ステップS18)。この確認は、一定時間が経過するまで行われる。本実施の形態では、一定時間は、蓄積処理部112が車両情報を取得する周期(例えば24ms)と同じ長さである。
【0053】
推定処理部113は、一定時間が経過すると(ステップS18でYes)、車両情報を取得する(ステップS19)。車両情報には、車速情報、操舵角情報、及び、シフトポジション情報が含まれる。本実施の形態では、蓄積処理部112によって車両情報メモリ122に記憶された情報を読み出す。ただし、本実施の形態では、車両情報が車両情報メモリ122に蓄積される周期と、推定処理部113が推定処理を行う周期は同じである。このために、実質的には、推定処理部113は、CANバス30を介して得られる最新の車両情報を即座に利用することになる。
【0054】
また、推定処理部113は、一定時間が経過すると(ステップS18でYes)、駐車枠管理メモリ121から駐車枠線の位置情報を読み出す(ステップS20)。駐車枠管理メモリ121から読み出される位置情報は、最も直近のカメラ画像から認識された駐車枠線の位置情報や、最も直近の推定処理によって得られた駐車枠線の位置情報である。なお、ステップS19とステップS20は、ほぼ同時に処理され、ステップS19とステップS20とは逆であってもよい。
【0055】
推定処理部113は、ステップS19で取得した車両情報と、ステップS20で読み出した駐車枠線の位置情報とに基づいて、駐車枠線の位置を推定する(ステップS21)。推定処理部113は、推定した駐車枠線の位置(座標値)を、その位置に駐車枠線があったと判断される時刻と共に、駐車枠管理メモリ121に記憶する。
【0056】
推定処理部113は、ステップS16における推定処理後と同様に、ステップS21における推定処理を行った後、更に推定処理が行われるか否かを確認する(ステップS17)。推定処理が必要な場合には(ステップS17でYes)、ステップS11に戻る。推定処理が不要な場合には(ステップS17でNo)、位置推定に関する処理が終了される。
【0057】
本実施の形態では、第1モードが選択された場合、バッファ122に一定周期で車両情報が蓄積される。そして、バッファ122に記憶された車両情報が必要に応じて必要な量だけ纏めて取得され、位置推定が行われる。このために、一定周期で位置推定が繰り返される構成に比べて、位置推定装置10における演算処理の負荷を分散させることができる。また、第2モードが選択されている場合には、その間、一定周期で位置推定が繰り返されることになるために、位置推定の精度を向上させることができる。
【0058】
本実施の形態では、推定処理部113は、推定対象の位置推定処理以外の、当該位置推定装置10によって行われる他の処理の負荷情報に基づいて、第1モードと第2モードとの切り替えを行う。他の演算処理の負荷が小さい場合には、位置推定処理を一定周期で繰り返しても、位置推定装置10の負荷が高くなりすぎることはない。このために、位置推定処理の優先度を上げ、位置推定処理を一定周期で繰り返すことによって位置推定の精度を向上させることができる。一方、他の演算処理の負荷が大きい場合には、バッファによる車両情報の蓄積を利用して、位置推定処理の優先度を下げることができる。このために、位置推定装置10に一時期に大きな負荷が加わることを避けることができる。他の演算処理の負荷情報として、例えば、画像処理部111における演算処理の負荷情報が挙げられる。例えば、駐車に使用する駐車枠が決定されている場合、更に駐車枠の検出処理を行う必要がないために、演算処理の負荷が小さいと判断される。
【0059】
本実施の形態では、推定処理部113は、車両情報に基づいて第1モードと第2モードとの切り替えを行う。例えば、車両情報から、車両が、その位置を大きく変化させる動作を行っていないと判断される場合には、バッファの車両情報を纏めて処理して位置推定を行う第1モードとされる。これにより、位置推定の推定誤差が大きくなることを避けつつ、他の処理を優先させることができる。一方、車両情報から、車両が、その位置を大きく変化させる動作を行っていると判断される場合には、推定誤差が大きくなることを抑制するために、位置推定処理が一定周期で行われる第2モードとされる。これにより、精度の高い位置推定を確保することが可能になる。車両情報としては、例えば、車速情報や操舵角情報が挙げられる。
【0060】
図5は、第2実施形態におけるモードの切り替え判断処理の手順を示すフローチャートである。推定処理部113は、駐車に使用する駐車枠が決定済みであるか否かを確認する(ステップS111)。駐車枠が決定済みであるか否かは、画像処理部111からの情報で判断できる。推定処理部113は、駐車枠が決定済みでない場合(ステップS111でNo)、推定処理手法を第1モードと決定する(ステップS112)。駐車に使用するための駐車枠が決定していない場合には、駐車枠を検出する処理を行う必要があり、画像処理部111の演算処理を優先して行える状態が望まれるためである。
【0061】
推定処理部113は、駐車枠が決定済みの場合(ステップS111でYes)、車両速度が第1閾値より遅いか否かを確認する(ステップS113)。本実施の形態では、車速情報は、例えばCANバス30を介して車速センサ40から取得することができる。第1閾値は予め決められた値であり、例えば記憶部12に記憶されている。
【0062】
推定処理部113は、車両速度が第1閾値より遅い場合(ステップS113でYes)、操舵角の変化速度が第2閾値より遅いか否かを確認する(ステップS114)。本実施の形態では、操舵角情報は、例えばCANバス30を介して舵角センサ50から取得することができる。第2閾値は予め決められた値であり、例えば記憶部12に記憶されている。
【0063】
推定処理部113は、操舵角の変化速度が第2閾値より遅い場合(ステップS114でYes)、推定処理手法を第1モードに決定する(ステップS112)。すなわち、推定処理部113は、車両速度が第1閾値より遅く、操舵角の変化速度が第2閾値より遅い場合に、第1モードを選択する。車速が遅く、且つ、操舵角の変化速度が遅い場合、車両の位置が大きく変化しないと判断される。このため、バッファに蓄積される車両情報を纏めて利用して位置推定を行っても、推定誤差を小さく抑えることができるためである。
【0064】
推定処理部113は、車速が第1閾値以上である場合(ステップS113でNo)、及び、操舵角の変化速度が第2閾値以上である場合(ステップS114でNo)、推定処理手法を第2モードに決定する(ステップS115)。車速が速い場合や、操舵角の変化速度が速い場合には、車両の位置が大きく変化する可能性があるために、位置推定処理の優先度を上げて、位置推定の精度を向上するためである。
【0065】
なお、本実施の形態では、第1モードと第2モードとの切り替え判断に3つの指標を用いているが、これは例示である。判断指標の種類及び数は適宜変更されてよい。
【0066】
<<3.留意点>>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、以上に示した複数の実施形態及び変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0067】
例えば、以上に示した実施形態では、位置推定装置10が画像処理部111を備える構成とした。ただし、これは例示にすぎない。位置推定装置は、画像処理部を備えない構成であってよい。この場合には、位置推定装置が、カメラ画像の処理を行う画像処理装置と情報のやり取りを行う構成とすればよい。
【0068】
また、以上においては、位置推定装置が、当該装置を搭載する車両を基準とした、駐車枠の位置を推定する構成とした。ただし、これは例示であり、位置推定装置は、当該装置を搭載する車両自身の位置(以下、自車位置という場合がある)を推定する構成であってもよい。図6は、当該変形例に係る位置推定装置10´を含む位置推定システム2の構成を示すブロック図である。
【0069】
変形例の位置推定システム2は、カメラ20の代わりにGPS(Global Positioning System)受信機70を備える。位置推定装置10´は、画像処理部111の代わりに位置情報処理部114を備える。位置情報処理部114は、GPS受信機70から送信されるGPSデータを演算処理して、車両の空間上の位置を経度及び緯度として算出する。位置情報処理部114は、算出した位置情報を位置情報メモリ123に記憶する。位置情報処理部114は、プログラムに従ってCPUが演算処理を行うことによって実現される機能である。
【0070】
変形例の位置推定装置10´においては、推定処理部113は、第1実施形態と同様に(図3参照)、必要なタイミングにおいて、最も直近にGPS受信機70から得られた情報と、車両情報とに基づいて自車位置の推定を行う。必要なタイミグとしては、例えば、GPS受信機70からGPSデータを取得できない場合が挙げられる。本変形例では、バッファ(車両情報メモリ122)に蓄積された車両情報を必要なタイミングで纏めて取得して、位置推定処理を行うことができる。このために、GPS受信機70によって自車位置が把握できる場合には、一定周期で取得される車両情報を逐一用いて位置推定処理を行わない構成にできる。この結果、位置推定処理は、必要な場合に適宜実行されることになり、位置推定処理による負荷を分散させることができる。
【0071】
また、以上に示した実施形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されていると説明したが、これらの機能のうちの少なくとも一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。また逆に、ハードウェア回路によって実現されるとした機能のうちの少なくとも一部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1、2・・・位置推定システム
10、10´・・・位置推定装置
20・・・カメラ
112・・・蓄積処理
113・・・推定処理部
122・・・車両情報メモリ(バッファ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6