(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の補強シートと第2の補強シートは連続して巻回され、シャフトの最外層に配設されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブ用シャフト。
前記第1の補強シートと第2の補強シートは、グリップ側の端部が一致するように巻回されている、ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、スチールシャフトを装着したゴルフクラブの打球の方向性が良いのは、金属は等方性の性質を有しており、ねじり剛性と曲げ剛性の比率(GIp/EI)が長さ方向に亘って均一になっていることが要因と考えられる。これに対して、FRPシャフトは、スチールシャフトと比較して軽量化できるため、スイングスピードの向上が図れ、打ち出し角度や飛距離が向上するというメリットが得られるものの、FRPは、強化繊維の指向方向によって縦・横の弾性係数が異なり、異方性の性質を有することから、ねじり剛性と曲げ剛性の比率(GIp/EI)が長さ方向に亘ってばらついており、これが、スチールシャフト程の方向性の安定化が得られない要因と考えられる。
【0006】
特許文献1に開示されているFRP製のシャフトでは、上記したように、ヘッドが装着される先端領域に、強化繊維が軸長方向に指向された補強用のプリプレグシート(以下、補強シートと称する)を配設しており、この補強シートが方向性の安定化を図る上で問題になってしまう。すなわち、このような補強シートを配設すると、先端領域では曲げ剛性が高まり、かつ、先端側に行く程、巻回数が多くなることから、シャフトの長手方向を横軸(mm)、曲げ剛性を縦軸(Kgf・mm
2 )にすると、
図1(a)に示すように、先端から300mm付近で変曲点が生じ、先端に移行するに従い曲げ剛性が上昇する曲げ剛性分布となる。この場合、先端から300mm付近で曲げ剛性が最も低くなっているのは、補強シートの長さが300mm程度であれば、この部分が補強シートの端部(巻回数が0)になることによる。なお、上記の補強シートを配設しなければ、300mm付近で変曲点が生じることはなく、先端側に移行するに従って、曲げ剛性はそのまま減少することとなる。
【0007】
巻回される補強シートは、強化繊維が軸長方向に指向していることから、曲げ剛性に大きな影響を与えるが、その方向性から、ねじり剛性については影響を与えることはほとんど無い。このため、
図1(a)と同様、シャフトの長手方向を横軸(mm)、ねじり剛性を縦軸(Kgf・mm
2 )にすると、
図1(b)に示すようなねじり剛性分布となる。
【0008】
したがって、強化繊維が軸長方向に指向された補強シートを巻回したFRP製のシャフトでは、ねじり剛性と曲げ剛性の比率(GIp/EI)を考慮すると、先端領域では変位幅が大きくなってしまい(ねじり剛性と曲げ剛性の比率が長さ方向に亘ってばらつく)、これが方向性の安定化を図る上で問題になってしまう。特に、プレーをするに際して、スチールシャフトを装着したゴルフクラブと、FRPシャフトを装着したゴルフクラブをセット化すると、両クラブ同士で、しなり・ねじれのフィーリングが異なってミスショットに繋がり易くなり、かつ、FRPシャフトを装着したゴルフクラブでは、軽量化してスイングし易いものの方向の安定化が図り難くなってしまう。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、FRP製のシャフトを装着したゴルフクラブにおいて、スイング感や打球感が良く、打球の方向性の安定化が図れるゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明に係るゴルフクラブは、ヘッドに繊維強化樹脂製のシャフトを装着しており、前記シャフトは、全長に亘って、ねじり剛性と曲げ剛性の比率(GIp/EI)の変位幅が0.2以下となるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
通常、プレーヤにとってのゴルフクラブのスイング感や打球感は、シャフトのねじり剛性及び曲げ剛性が大きな影響を及ぼす。すなわち、ねじり剛性はねじれに対する抵抗であり、曲げ剛性は曲げに対する変形のし難さを示すことから、ねじり剛性が高い程、手元の感覚がヘッドに伝わり易い(反応性が良い)シャフトとなり、曲げ剛性が低くなれば、シャフトそのものの変形を利用して打球が行えるシャフトとなる。この場合、ねじり剛性と曲げ剛性の比率については、全長に亘って均一(フラットな直線状)になっていれば、等方性のあるシャフトとなり、全体的な剛性感が均一化されて打球の方向性も安定する。すなわち、シャフトの軸長方向の位置によって、その比率が大きく変化してしまう(ばらつきが大きい)と、スイング感や打球感に違和感が生じ易く、打球の安定化を図る上では好ましくはない。特に、1つのゴルフクラブのセット内において、そのようなばらつきが大きいゴルフクラブが存在していると、ゴルフクラブ間での感覚のずれ(雰囲気の違い)が大きくなってしまう。たとえば、1ラウンド内において、スチールシャフトのゴルフクラブと、前記の比率が大きいFRPシャフトのゴルフクラブを併用した場合、ゴルフクラブ間での感覚のずれが大きくなり、ミスショットに繋がる可能性がある。
【0012】
上記した構成のシャフトでは、全長に亘って、ねじり剛性と曲げ剛性の比率(GIp/EI)の変位幅が0.2以下となるように形成して、その変動幅を極力小さくしているため、スチールシャフトのような等方性としての性質に近づき、スイング感や打球感の向上が図れ、打球の方向性の安定化が図れるようになる。また、シャフトがFRP製であるため、軽量でスイングし易いゴルフクラブが得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、FRP製のシャフトを装着したゴルフクラブにおいて、スイング感や打球感が良く、打球の方向性の安定化が図れるゴルフクラブが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るゴルフクラブの実施形態について説明する。
図2は、本発明に係るゴルフクラブの一例を示す図である。
【0016】
図2に示すゴルフクラブ1は、アイアン型のゴルフクラブを例示しており、シャフト10の先端側には、ヘッド(アイアンヘッド)5が装着され、シャフト10の基端側には、ラバー等によって形成されたグリップ12が装着されている。
前記ヘッド5は、シャフト10を挿入して先端領域を固着するホーゼル5aと、打球が成される板状のフェース部5bとを有しており、シャフト10の外面とホーゼル5aの嵌合孔の内面との固着範囲は、ゴルフクラブのタイプにもよるが、概ね25mm〜40mm程度とされる。
【0017】
前記シャフト10は、公知のように、芯金に対して、強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを複数枚巻回し、これを熱硬化して脱芯することで形成されるFRP製である。この場合、シャフト10の先端領域は、テーパにより細径化されていること、ヘッドが装着されて重量物が付加されていること、打球時に衝撃を受けること等により、補強用のプリプレグシート(補強シート)が巻回されている。この補強シートは、先端領域の曲げ剛性やねじり剛性を向上することができるとともに、前記ホーゼル5aの嵌合孔の内面とシャフト外面との間でストレート状の固着領域を形成し、ヘッドの固着強度を向上する役目を果たしている。なお、芯金に巻回されるプリプレグシート、補強シートの構成、及び、その配設例については後述する。
【0018】
本発明では、ヘッドに装着されるFRP製のシャフトが以下のような特性となるように構成している。ここで、本実施形態に係るシャフトの構成を説明する前に、本発明の基本原理となるシャフトの特性について具体的に説明する。
【0019】
シャフトの剛性については、ゴルファーがスイングする際のフィーリングに大きな影響を及ぼすのであり、スイングした際及び打球した際、ゴルファーは、曲げ剛性とねじり剛性を感覚的に把握する(シャフトの剛性感を把握する)ことができる。
【0020】
シャフトの曲げ剛性については、高くなる程、しなり難くなる(いわゆる張りが大きくなる)ことから、剛性が高いシャフトは、スイングスピードが速いゴルファーに適した特性であり、剛性が低いシャフトは、シャフトのしなりを利用して打球することができることから、スイングスピードが遅いゴルファーに適した特性となる。なお、このようなしなりについては、スイングした際にゴルファーが感覚的に捉えることが可能であり、単にグリップを把持して上下方向に振ってもその剛性を視覚的に把握することが可能である。
【0021】
また、シャフトのねじり剛性については、回転方向の操作感に影響を与えるものであり、ゴルファーは、感覚的にグリップ部分でのねじれ方向の抵抗や反応性として把握することが可能である。すなわち、ねじり剛性が高いシャフトは、グリップでのねじれの感覚がダイレクトにヘッドに伝わるような感覚となり、ねじり剛性が低いシャフトは、グリップでのねじれの感覚が、多少の余裕(遊度)をもってヘッドに伝わるような感覚となる。
【0022】
スイングしてから打球がなされるまで、ゴルファーは、上記した曲げ剛性とねじり剛性を感覚的に把握可能であることから、シャフトとしては、全長に亘って、曲げ剛性とねじり剛性の特性が一致していることが好ましいといえる。すなわち、
図1(a)で示した曲げ剛性分布を有するシャフトは、先端から略300mmの位置を変曲点として先端に移行するに従い、上昇する特性を有するが、ねじり剛性については、そのような変曲点が生じることなく、先端に移行するに従い、低下する特性を有する。
【0023】
したがって、このような特性のシャフトを装着したゴルフクラブでは、シャフトを全長に亘って考慮した場合、曲げ剛性感とねじり剛性感の間でずれが生じていることから、ゴルファーは、感覚的に、しなりやねじれのフィーリングが異なっていることを感じてしまう(違和感を生じさせる)。すなわち、曲げ剛性の分布曲線の形状と、ねじり剛性の分布曲線の形状については、略一致していれば、曲げ剛性感とねじり剛性感の間でずれが生じることが無くなるため、フィーリングの良いゴルフクラブになると考えられる。
【0024】
具体的に、
図1(a)(b)に示したような剛性分布曲線を有するシャフトでは、先端から略300mmの位置を変曲点として、ねじり剛性を先端に向けて上昇させることで、
図1(b)に示すねじり剛性の分布曲線を
図1(a)に近づけることができる。この場合、ねじり剛性を向上する上で最も効果的なのは、シャフトの軸長方向に対して強化繊維が±45°に指向している補強シートを巻回することであり、先端移行するに連れて巻回数が多くなる補強シート(軸長方向に対して強化繊維が±45°に指向している)を巻回すれば良い。逆に、軸長方向に強化繊維が指向した補強シートを排除することで、
図1(a)に示す曲げ剛性の分布曲線を、
図1(b)に示すねじり剛性の分布曲線に近づけることができるが、このような構成では、ヘッド側の補強効果がなくなるため、強度的には好ましくはない。
【0025】
なお、スチール製のシャフトは金属製であり、等方性を有することから、シャフトの全長に亘って曲げ剛性とねじり剛性の分布は略同一となり、曲げ剛性とねじり剛性の比率は略均一(シャフト全長に亘って略直線状となり、変位幅は略ゼロ)となる。このため、ゴルフクラブとして重量化はするものの、曲げ剛性感とねじり剛性感の間でずれが生じていないことから、フィーリングの良いゴルフクラブとなる。
【0026】
上記したように、FRP製のシャフトは、巻回されるプリプレグシートの強化繊維の方向に影響を受け、異方性としての特徴を有することから、
図1で示したような分布特性では、シャフト全長に亘って曲げ剛性とねじり剛性の比率(GIp/EI)は均一化されていないが、プリプレグシートの配置、特に、ヘッド側の先端領域に配設される補強シートの構成を工夫することにより、曲げ剛性とねじり剛性の比率を均一化する(変位幅を小さくする)ことが可能である。
【0027】
本発明は、FRP製のシャフトの全長に亘って、曲げ剛性とねじり剛性の比率(GIp/EI)を均一化する(その変位幅(ぶれ幅)を可能な限り小さくする)ことを特徴とするものであり、その比率が全長に亘って変位しない(変位幅が0)、乃至は変位幅を0に近づけることで、その感覚をスチール製シャフトに近づけようとするものである。
【0028】
次に、シャフト全長に亘って曲げ剛性とねじり剛性の比率(GIp/EI)を均一化するに際して、変位幅がどの程度になれば、フィーリングの良い感覚が得られるかについて
図3から
図5を参照して具体的に説明する。
ここでは、同一のヘッドを装着したゴルフクラブのシャフトを複数本、準備しており、本発明の構成と対比するシャフトについては、比較例カ、比較例キ、比較例クとしてその特性を示し(
図4参照)、本発明に係るシャフトについては、実施例ア、実施例イ、実施例ウ、実施例エとしてその特性を示している(
図3参照)。
【0029】
図3、
図4で示す数値は、シャフトの先端を0とし、50mm間隔でシャフト位置を特定し、その位置における曲げ剛性(ΣEI)と、ねじり剛性(ΣGIp)の値を算出するとともに、その比率(GIp/EI)を導き出したものである(各剛性の単位はKgf・mm
2 )。また、各シャフトでは、(GIp/EI)の最大値(MAX)と最小値(MIN)を示しており、その差を示している(MAX−MIN)。したがって、この差が大きいほど、前記の変位幅は大きくなる。
なお、
図3及び
図4の表では、シャフトを50mm間隔にして曲げ剛性(ΣEI)とねじり剛性(ΣGIp)の値、及び、比率(GIp/EI)を小数点以下3桁まで示しているが、比率(GIp/EI)の最大値及び最小値は、表には存在しない位置で生じている実施例や比較例も存在する。すなわち、実施例イにおける比率の最小値(0.303)は1110mmの位置で算出され、実施例ウにおける比率の最大値(0.963)は1110mmの位置で算出される。また、比較例カにおける比率の最大値(0.563)は280mmの位置で算出され、比較例キにおける比率の最小値(0.539)は910mmの位置で算出され、比較例クにおける比率の最大値(0.492)は170mmの位置で算出される。
【0030】
この場合、曲げ剛性(EI)、及び、ねじり剛性(GIp)については、下記の計算方法によって導き出される。
曲げ剛性に関しては、ヤング率(縦弾性係数)Eについては、シャフトを構成するプレプレグシートの構成(材料)及び配設態様(積層構造)の仕様から計算によって特定することができ、I(断面二次モーメント)については、
I=π(D
2 4 −D
1 4 )/64(式1)によって導き出すことができる。
また、ねじり剛性(GIp)に関しては、せん断弾性係数(横弾性係数)Gについては、前記同様、シャフトを構成するプレプレグシートの構成(材料)及び配設態様(積層構造)の仕様から計算によって特定することができ、Ip(断面ねじりモーメント)については、
Ip=π(D
2 4 −D
1 4 )/32(式2)によって導き出すことができる。
なお、上記(式1)及び(式2)において、D
2 は、シャフトの外径であり、D
1 は、シャフトの内径である。
また、FRPシャフトは複数枚の材料を巻回して構成されているため、各層の計算値を足していく事でシャフト全体の数値を算出する。
【0031】
実際に成形されているFRPシャフトの曲げ剛性(EI)については、シャフトを水平にして測定点から距離(L/2)離れた2点を支持し、中央測定点の位置に上方から力(P)を加えたときのたわみ量(δ)を測定することで導き出すことが可能である。具体的には、
EI=(L
3 /48)×(P/δ)
の計算式から導き出すことが可能である。
なお、最大荷重Pは20kgfであり、支持間距離Lは200mmである。
上記手法にて、2点支持間中央位置測定点のEIを求める事が可能であり、支持位置をずらす事によって、連続的に数値を算出することが可能となる。
【0032】
また、実際に成形されているFRPシャフトのねじり剛性(GIp)については、シャフトを水平にして片側端部を固定し、固定部からLmm隔てた位置を保持し、保持部にトルクTrを与えたときのシャフトの捻れ角度A(ラジアン)を測定することで導き出すことが可能である。具体的には、
GIp=L×Tr/A
の計算式から導き出すことが可能である。
なお、前記トルクTrは139(kgf・mm)であり、シャフトの固定保持間距離Lは200mmである。
上記手法にて、シャフト固定保持間中央位置のGIpを求めることが可能であり、位置をずらすことによって、連続的に数値を算出することが可能となる。
【0033】
スチールシャフトについては、上述したとおり、等方性を有することから、シャフトの全長に亘って、GIp/EIの比率は均一化されるが、その値については、構成材料のポアソン比(ν)によって多少変わる。シャフトとして鉄が主成分であると考慮すれば、そのポアソン比は0.3程度であるため、E=2(1+ν)の関係から0.87程度と考えられる。このため、実際のスチールシャフトでは、構成材料にもよるが、0.85±0.1の範囲に収まると考えられる(下記の
図5では、0.85としてある)。
【0034】
図5は、
図3及び
図4で示した各シャフトについて、シャフトの長手方向(横軸)に対する比率(GIp/EI)をグラフ化したものである。
実施例ア、イ、ウ、エは、いずれも比率の変位幅が0.2以下となるように、巻回されるプリプレグ(後述する本体プリプレグシート、補強プリプレグシート)の配置、構成を設定したものである。変位幅については、実施例ウが最も低く、かつ、比率が1に近くなる(変位は0.8から1.0の範囲内)ように設定しており、最もスチールシャフトに近い特性となるように構成したものである。
【0035】
一方、比較例カは、比率の変位幅を0.368とし、比較例キは、比率の変位幅を0.784としたシャフトであり、比較例クについては、比率の変位幅を0.230とし、0.2に近づけたものである。比率の変位幅については、大きくなると上記したように、フィーリングが低下するのであり、0に近づくほど、そのフィーリングが向上する。ここでは、シミュレーションとして予め検討した結果、比率の変位幅が0.2以内であれば、フィーリングの向上が見込めることがある程度、予測できたことから、実際の官能試験では、変位幅が0.2付近になるものを準備して(実施例エでは0.194、比較例クでは0.2030)、実際に検証を行った。
【0036】
以下、その官能試験の内容、及びその結果について説明する。
官能試験では、
図3、
図4で示した7本のゴルフクラブを準備し、通常のアベレージゴルファー10名に、各ゴルフクラブで試打をしてもらった。この場合、各人には、ランダムに、7本のゴルフクラブを提供し、少なくとも10球以上打球させて、各クラブを相対評価してもらった。相対評価では、打球時のフィーリングが良く、方向性が良いと評価したゴルフクラブに〇を付してもらい(1本以上で複数本選んでも良い)、良いと評価したゴルフクラブと相対評価して、多少は劣るものの、許容できる範囲と評価したものに△を付してもらい(1本以上で複数本選んでも良い)、さらに、良いと評価したゴルフクラブと相対評価して改善した方が良いと評価したものに×を付してもらった(1本以上で複数本選んでも良い)。
下記の表にその結果を示す。
【0037】
【表1】
上記の評価結果に見られるように、変位幅が0.104の実施例ウ、変位幅が0.132の実施例イ、変位幅が0.168の実施例アについては、良いと評価、もしくは許容できる範囲と評価されていることから、フィーリングが良いゴルフククラブであると評価することができる。
【0038】
これに対し、変位幅が0.368の比較例カ、変位幅が0.784の比較例キについては、改善した方が良いとの評価が多く見られた。また、変位幅が0.194の実施例エ、変位幅が0.230の比較例クについては、評価が多少分かれるところであるが、実施例ア、イ、ウの評価、及び、比較例カ、キの評価を考慮した結果、本発明では、変位幅0.2が実用上において、良好なフィーリングが得られる限界値であると判断した(例えば、〇を2点、△を1点、×を0点で得点換算すると、実施例エは12点、比較例クは10点であることから、本発明では、変位幅の限界値を0.2と特定した)。
【0039】
本発明のように、ゴルフクラブのシャフトをFRP製とすることで軽量化が図れるため、スイングがしやすくなり、かつ、全長に亘って、ねじり剛性と曲げ剛性の比率(GIp/EI)の変位幅が0.2以下となるように形成したことで、ねじりのフィーリングとしなりのフィーリングが近づくことから、ショットの安定化、及び、方向性の安定化が図れるようになる。また、このようなシャフトを装着したゴルフクラブを、スチールシャフトを装着したゴルフクラブとともにセット化した場合、ラウンド中で、両方のゴルフクラブを使用しても、大きな違和感が生じることもなく、両クラブ間で安定したショットをすることが可能となる。
【0040】
次に、以上のような特性を有するシャフトの構成例について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、上記したようなシャフトの特性が得られるプリプレグシート及び補強用プリプレグシートの配置、構成の一例を示すパターン図である。
【0041】
この構成例では、
図1(b)に示すようなねじり剛性分布の形状を、
図1(a)に示すような曲げ剛性分布の形状に合わせるようにするものであり、シャフトの先端領域に巻回される補強用プリプレグシート(補強シート)の構成に特徴を持たせている。具体的に、本実施形態のシャフトは、先端側が小径化した芯金20に対して、順次、本体プリプレグシート(本体シート)を巻回するとともに、最後に、補強シートを巻回し、この状態で加熱、焼成した後、脱芯し、表面処理等することで形成される。この場合、芯金20は、長さLの領域(1180mm)がシャフトの全長を構成する。
【0042】
前記本体シートは、複数枚巻回されてシャフトの全長を形成(本体層を形成)するのであり、最内層となる本体シート31は、強化繊維が軸長方向に対して+45°方向に指向する第1の斜向シートと強化繊維が軸長方向に対して−45°方向に指向する第2の斜向シートとを重ね合わせ、例えば、先端側で3.6プライ、基端側で1.2プライ巻回されるように裁断されている。その上に巻回される本体シート32,33は、軸長方向に強化繊維を引き揃え、例えば、先端側でオーバープライとなるように1プライ、基端側でオーバープライとなるように1プライ巻回されるように裁断されている。その上に巻回される本体シート34は、周方向に強化繊維を引き揃え、例えば、先端側でオーバープライとなるように1プライ、基端側でオーバープライとなるように1プライ巻回されるように裁断されている。そして、その上に巻回される本体シート35は、軸長方向に強化繊維を引き揃え、例えば、先端側でオーバープライとなるように1プライ、基端側でオーバープライとなるように1プライ巻回されるように裁断されている。
【0043】
上記した複数枚巻回される本体シートの内、強化繊維を軸長方向に引き揃えたものは、曲げ剛性の向上に寄与し、強化繊維をクロス方向に指向させたものは、ねじり剛性の向上に寄与する。この場合、最も効果的にねじり剛性の向上に寄与するのは、強化繊維を±45°に指向させたものであるが、角度については限定されることはない。また、強化繊維を周方向に引き揃えたものは、つぶれ強度の向上に寄与する。
【0044】
前記シャフトの先端領域(ヘッドが装着される先端側)には、補強用シートが巻回される。補強用のシートは、先端から250mmの範囲まで巻回するようにしており、強化繊維が軸長方向に対して+45°方向に指向する第1斜向シートと強化繊維が軸長方向に対して−45°方向に指向する第2斜向シートとを重ね合わせた第1の補強シート50と、強化繊維を軸長方向に配向した第2の補強シート51とを有している。
【0045】
この場合、第1の補強シート50と第2の補強シート51は、周方向で非連続的に巻回されていても良い(間に本体シートが介在していても良い)が、
図6に示すように、連続して巻回するのが好ましく、更には、これらの補強シートは、連続した状態でシャフトの最外層に配設されるのが好ましい。このように連続して巻回することで、径方向に隙間が生じることなく巻回することができ、更には、外層側(最外層)に巻回することで、曲げ剛性とねじり剛性の比率(GIp/EI)を0.2以下に設定し易くなる。
【0046】
前記第1の補強シート50を構成する各斜向シートは、その肉厚が0.1mm以下(貼り合わせた状態で0.2mm以下)になることが好ましく、補強シート50,51の肉厚については、斜向シートの肉厚<第2の補強シート51の肉厚<第1の補強シート(貼り合わせた状態の補強シート)50の肉厚となるように構成されることが好ましい。これは、肉厚が厚くなると、巻き付けるときに、内側となる第1の補強シート50と、外側となる第2の補強シート51でずれが生じ易くなってしまい、巻き始めと巻き終わり位置の段差が大きくなって、外径調整としての機能を果たし難くなるためである。
【0047】
前記第1の補強シート50は、一方向、例えば+45°の繊維角度で先端位置で2プライ、基端位置(先端から250mmの位置)で0プライとなるように裁断されたシートと−45°の繊維角度で同寸法に裁断されたシートの貼り合せで構成されている。また、第2の補強シート51は、先端位置で5.21プライ、基端位置(先端から250mmの位置)で0プライとなるように裁断されている。このように、第1の補強シート50と第2の補強シート51は、グリップ側の端部が一致するように巻回されており、これにより変曲点の位置が一致し、曲げ剛性とねじり剛性の比率(GIp/EI)が大きく変位しないようにすることができる。
【0048】
上記した構成では、曲げ剛性とねじり剛性の比率(GIp/EI)が0.2以下に設定されていれば良く、補強シート50,51の構成については、適宜変形することが可能である。ただし、補強シート50,51のサイズによっては、変位幅が0.2以下におさまらなくなるため、材料の種類やサイズには留意が必要となる。例えば、
図6に示した構成では、クロスシート(補強シート50)を内側に配設したが、これを外側に配設しても良い。また、両シートは、周方向に非連続に巻回しても良いし、グリップ側の端部位置が軸長方向に多少ずれていても良い。また、補強シート50,51の軸長方向の長さについては特に限定されることはないが、あまり長くし過ぎると重量が増加することから、300mm程度以下にすることが好ましい。さらに、第1の補強シート50のクロスする強化繊維の指向方向については特に限定されることはないが、±45°に指向させることにより、効率的にねじり剛性の向上を図ることができ、巻回数を少なくすることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々、変形することが可能である。本発明は、シャフトが、全長に亘ってねじり剛性と曲げ剛性の比率(GIp/EI)の変位幅が0.2以下となるように形成されていれば良く、補強シート50,51や、本体シート31〜35の構成については、そのような条件が満たされれば適宜変形することが可能である。例えば、上記した各シートのプライ数については一例を示したに過ぎないのであり、
図6に示したパターン図において、更に本体シートを巻回しても良いし、調整用のプリプレグシートを巻回しても良い。また、基端側となるグリップ領域にも補強シートを巻回しても良い。
【0050】
また、ねじり剛性と曲げ剛性の比率(GIp/EI)の数値についても適宜変形することが可能である。
図5に示したグラフでは、等方性の性質を有するスチールシャフトは、その比率が全長に亘って0.85付近となるが、本発明では、1.0より大きい値で変位幅を0.2以下(例えば、1.1〜1.3の範囲等)となるように構成しても良い。