(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相対回転抵抗部材の抵抗力は、前記車輪と前記回転体との間に所定値以下の相対回転力が生じる場合には、両者を一体的に回転させ、所定値を超える相対回転力が生じた場合には、両者の相対回転を許容するように、その大きさが設定されている、請求項1〜4いずれかに記載の車輪構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の手押し車は、ブレーキを操作するために、ブレーキパッドと車輪の内周面の接触抵抗を用いているため、ブレーキを十分に操作するためには、操作者がブレーキレバーを十分に強い力で押圧する必要があった。
【0007】
一方、特許文献2の手押し車は、操作者が誤って握り部から手を離した場合、自動的に車輪の回転が制動されるため、手押し車が急停止して、転倒する場合がある。
【0008】
本発明の目的は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、容易にブレーキをかけることができ、急停止を防止することが可能な車輪構造およびそれを備えた手押し車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る車輪構造は、車軸の周りを回転可能であり、ブレーキ部材によってその回転が停止される回転体と、回転体と同軸で回転体の周りを回転可能な車輪と、回転体と車輪との間に位置し、両者の相対回転に対して抵抗力を発揮する相対回転抵抗部材とを備える。
【0010】
好ましくは、相対回転抵抗部材の抵抗力は、車輪と回転体との間に所定値以下の相対回転力が生じる場合には、両者を一体的に回転させ、所定値を超える相対回転力が生じた場合には、両者の相対回転を許容するように、その大きさが設定されている。
【0011】
好ましくは、相対回転抵抗部材は、回転体および車輪のうちの一方に保持され、他方に対して当接して摩擦係合する摩擦部材である。
【0012】
好ましくは、車輪は、車軸を支持する車軸支持部と、車軸支持部と向かい合い、走行路面と当接するタイヤ部を保持するタイヤ保持部と、車軸支持部とタイヤ保持部との間に設けられる環状の凹部とを有し、回転体は、環状凹部内に配置されている。
【0013】
好ましくは、相対回転抵抗部材は、回転体に保持され、回転体から径方向内側に向かって付勢され、車軸支持部に当接する摩擦部材である。
【0014】
好ましくは、摩擦部材は、回転体から車軸支持部への突き出し長さが調節可能に設けられている。
【0015】
好ましくは、相対回転抵抗部材は、回転体に保持され、回転体から径方向外側に向かって付勢され、タイヤ保持部に当接する摩擦部材である。
【0016】
好ましくは、摩擦部材は、回転体からタイヤ保持部への突き出し長さが調節可能に設けられている。
【0017】
好ましくは、回転体は、ブレーキ部材を受け入れて係合する受け入れ部を有している。
【0018】
本発明の一態様に係る手押し車は、車軸を保持する本体フレームと、車軸の周りを回転可能な回転体と、回転体と同軸で回転体の周りを回転可能な車輪と、回転体に係合してその回転を停止する係合位置と、回転体と係合せずその回転を許容する非係合位置との間を変位可能なブレーキ部材と、車輪と回転体との間に位置し、両者の相対回転に対して抵抗力を発揮する回転抵抗部材とを備える。
【発明の効果】
【0019】
上記構成を備える本発明によれば、容易にブレーキをかけることができ、急停止を防止することが可能な車輪構造およびそれを備えた手押し車を提供することができる。
【0020】
好ましい実施形態の作用効果については、図面を参照しながら以下の項目で詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
<乳母車の構造について>
はじめに、
図1,2を参照して、本実施の形態に係る手押し車として乳母車1について説明する。乳母車1は、たとえば、いわゆる両面式であり、背面押し状態および対面押し状態の両状態に切替え可能である。
図1には、背面押し状態における乳母車1が示されている。
【0024】
乳母車1は、前輪および後輪を構成する4個の双輪2と、本体フレーム部10と、一対の押棒16とを備えている。本体フレーム部10は、一対の前脚11と、一対の後脚12と、一対の座部支持部材13と、一対の前脚11を連結する横架部材14と、一対の後脚12を連結する横架部材15とを含んでいる。
【0025】
一対の前脚11は、幅方向に互いに離れて配置される一対の脚部である。一対の後脚12もまた、幅方向に互いに離れて配置される一対の脚部である。前脚11および後脚12は、その下端において車軸39(
図3)を保持する。なお、「幅方向」とは、左右方向と同義であり、進行方向に直交する方向を表わす。
【0026】
双輪2は、背面押し状態における進行方向前方位置および進行方向後方位置において、幅方向に並んで配置されている。双輪2は、たとえば、キャスタであり、乳母車1の後脚12および前脚11の下端に取り付けられている固定体19を介してホルダ90に取り付けられている。ホルダ90と固定体19とは、たとえば、
図10に示すように、旋回軸線Laに沿って延びるキャスタ軸91により、相対回転可能に接続されている。ホルダ90は、車軸39を介して一対の車輪構造3を回転可能に支持している。ホルダ90は、空洞部を有し、その内部には、路面などのの凹凸を吸収して座席に伝えないサスペンション92が設けられていてもよい。ホルダ90には、たとえば、車輪構造3の回転を停止するブレーキ部材8(
図6)が取り付けられている。車輪構造3およびブレーキ部材8の詳細については、後述する。
【0027】
一対の押棒16は、上下方向に延び、枢軸17を介して本体フレーム部10に取り付けられている。一対の押棒16の上端部同士は、ハンドル部6によって連結されている。押棒16は、この枢軸17を中心として前後方向に回動可能である。
【0028】
ハンドル部6の上方には、車輪構造3近傍に設けられるブレーキ部材8(
図6)を操作するブレーキレバー7が取り付けられている。ブレーキレバー7とブレーキ部材8とは、本体フレーム部10内に設けられるワイヤ85で連結されている。ブレーキレバー7を操作することで、車輪構造3近傍に設けられるブレーキ部材8を変位させることができる。すなわち、操作者がブレーキレバー7を押圧すると、乳母車1は走行可能状態になり、操作者がブレーキレバー7から手を離すと、乳母車1はブレーキ状態となる。
【0029】
ブレーキレバー7は、ハンドル部6に沿って幅方向に延び、その両端がハンドル部6に取り付けられている。これにより、操作者がブレーキレバー7の中央部以外の位置を片手で握ったとしても、確実にブレーキレバー7を押圧することができる。
【0030】
図2を参照して、本実施の形態では、ハンドル部6の中央部には、ハンドル部6とブレーキレバー7とを連結する操作領域60が設けられている。なお、理解を容易にすべく、
図2においては、操作領域60の前カバーを取り外して示している。
【0031】
操作領域60には、中心部62を中心に回転する回転部材61が配置されている。回転部材61は、一対のワイヤ85の上端が接続されている。ワイヤ85は、中間地点が切断され、その中間地点が回転部材61に接続されている。具体的には、回転部材61は、円盤状の部材であり、一対のワイヤ85の上端のそれぞれが、回転部材61から偏心した位置、すなわち中心部62からずれた位置に接続されている。回転部材61が回転することにより、一対のワイヤ85を互いに近づけたり、遠ざけたりすることができる。
【0032】
ブレーキレバー7を上方から下方に向かって押圧することで、回転部材61は、中心部62を中心に回転するように構成されている。操作者がブレーキレバー7を操作(押圧)している状態、すなわち、ブレーキレバー7がハンドル部6に近づいている状態では、
図2(a)に示すように、一対のワイヤ85は互いに近づく位置に配置される。操作者がブレーキレバー7を操作(押圧)していない状態、すなわち、ブレーキレバー7がハンドル部6から離れている状態では、
図2(b)に示すように、一対のワイヤ85は、互いに遠ざかる位置に配置される。
【0033】
図2に示すように、操作領域60には、回転部材61の円柱状の突起63と係合する囲み部71が設けられている。操作部材70の囲み部71内に回転部材61の突起63が挿入されることにより、操作部材70と回転部材61とは係合する。囲み部71は、ブレーキレバー7の上方中央部に設けられる操作部材70と接続されている。ブレーキレバー7を押圧して、操作部材70が下方に移動することにより、回転部材61は、時計回りに移動し、ブレーキレバー7から手を離して、操作部材70が上方に移動することにより、回転部材61は、反時計回りに移動するので、回転部材61に接続された一対のワイヤ85を互いに近づけたり、遠ざけたりすることができる。
【0034】
上述のように、本実施の形態の乳母車1は、ブレーキレバー7を押圧すると走行可能状態となり、手を離すと停止状態となる。このような構造を有する乳母車は、一般的には、ハンドル部から手を離すと、乳母車はすぐに停止状態となる。これに対し、本実施の形態に係る乳母車1は、操作者がハンドル部から手を離すと、すぐに停止状態とならず、徐々に停止状態となる。このような乳母車1の車輪構造3について、以下に詳細に説明する。
【0035】
<本実施の形態1について>
図3〜5を参照して、乳母車1の車輪構造3について説明する。なお、
図5は、下述する車輪20の円筒部材28およびカバー体32と、回転体40と、摩擦部材50との取り付け状態を示す図である。
【0036】
本実施の形態に係る車輪構造3は、車軸39の周りを回転可能であり、ブレーキ部材(
図6)によってその回転が停止される回転体40と、回転体40と同軸で回転体40の周りを回転可能な車輪20と、回転体40と車輪20との間に位置し、両者の相対回転に対して抵抗力を発揮する相対回転抵抗部材50とを備える。
【0037】
図4を特に参照して、車輪20は、たとえば、車輪本体21と、接続体25と、円筒部材28と、カバー体32とを備える。接続体25、円筒部材28およびカバー体32は、車輪本体21に固定されている。これにより、乳母車1が走行して車輪本体21が回転すると、接続体25、円筒部材28およびカバー体32もともに回転する。
【0038】
本実施の形態において、車輪本体21は、走行路面と当接するタイヤ部22と、タイヤ部22の内周を保持するリム部23と、リム部23内を架け渡されるホイール部24とを有している。ホイール部24は、乳母車1の外側を向いて固定されている。
【0039】
接続体25は、略円盤状の部材であり、中央に車軸39が貫通する孔を有する円盤部26と、孔を取り囲む車軸固定部27とを有している。円盤部26は、リム部23の一端に回転不能に固定されている。
【0040】
円筒部材28は、底壁部29と、底壁部29の外周縁から立ち上がる立壁部30とを有している。底壁部29には、中央に車軸39が貫通する開口が形成されている。立壁部30は、後述する相対回転抵抗部材50が直接当接する部材である。
【0041】
カバー体32は、中央に車軸39が貫通する孔を有する筒状の部材であり、上方鍔部34と、上方鍔部34の径方向内側に設けられる係合穴35と、上方鍔部34から車輪本体21側に延びる延出部33とを有している。上方鍔部34の外径は、後述する回転体40の内径より大きく設けられている。これにより、カバー体32は、回転体40側への軸方向の移動が禁止される。延出部33の外径は、円筒部材28の内径よりやや小さく、延出部33は、円筒部材28の立壁部30に対して回転不能に固定される。延出部33の内径は、接続体25の車軸固定部27の外径よりやや大きく、延出部33は、接続体25の車軸固定部27に対して回転不能に固定される。
【0042】
係合穴35は、乳母車1を駐車するために用いられるパーキングブレーキ部材(図示せず)を係合するためのものである。カバー体32は、車輪本体21に固定されているため、カバー体32の係合穴35にパーキングブレーキ部材が係合すると、車輪20の回転を即時に停止することができる。本実施の形態では図示しないが、パーキングブレーキ部材の操作部は、車輪構造3近傍に設けられ、足で操作可能であることが望ましい。
【0043】
以上より、本実施の形態において、車軸39を支持する車軸支持部は、接続体25の車軸固定部27と、円筒部材28の立壁部30と、カバー体32の延出部33とを含む。また、車軸支持部と向かい合い、走行路面と当接するタイヤ部22を保持するタイヤ保持部は、車輪本体21のリム部23を含む。これにより、本実施の形態では、環状凹部は、車軸支持部(車軸固定部27、立壁部30、延出部33)とタイヤ保持部(リム部23)との間に設けられる。
【0044】
回転体40は、車輪20と共に回転可能であり、ブレーキ部材(
図6)によってその回転が停止される場合、車輪20の回転とは独立してその回転が停止される部材である。回転体40は、環状凹部内、すなわち車輪本体21のリム部23と円筒部材28の立壁部30との間に配置されている。本実施の形態において、回転体40は、中央に車軸39が貫通する開口を有する略円筒形状であり、表面部41と、表面部41の外周より立ち上がる側面部43とを有する。表面部41の内周側には、下方鍔部45が繋がっている。表面部41には、複数の受け入れ穴42が設けられている。受け入れ穴42は、ブレーキ部材(
図6)を受け入れて係合するものである。側面部43には、切欠き44が形成されている。
【0045】
図4,5を特に参照して、本実施の形態では、相対回転抵抗部材50は、車輪20に対して当接して摩擦係合する摩擦部材である。摩擦部材50は、回転体40に保持され、回転体40から径方向内側に向かって付勢され、車軸支持部、すなわち円筒部材28の立壁部30に当接する。具体的には、摩擦部材50は、たとえば、中央部に開口を有する移動部53と、移動部53内に設けられる一対の挟持部51,52とを有する。移動部53は、円筒部材28の立壁部30の外周を取り囲むように配置されている。挟持部51,52は、向かい合って配置され、円筒部材28の立壁部30に当接して、円筒部材28の立壁部30を挟み込む。
【0046】
挟持部51の上方には、移動部53に取り付けられる回転螺子55が設けられている。回転螺子55は、回転体40の側面部43の切欠き44から外方に突出している。回転螺子55を回転させると、移動部53が上方に移動して挟持部52が上方に移動すると共に、回転螺子55自体が押圧部54を押圧して挟持部51が下方に移動する。これにより、摩擦部材50は、回転体40から円筒部材28の立壁部30への突き出し長さを調節可能に設けることができ、結果として、立壁部30への摩擦力を調節することができる。回転螺子55が、回転体40の切欠き44から上方に突出しているため、車輪構造3をホルダ90に取り付けた状態のまま、摩擦部材50の摩擦力を調整することが可能である。
【0047】
摩擦部材50の抵抗力は、車輪20と回転体40との間に所定値以下の相対回転力が生じる場合には、両者を一体的に回転させ、所定値を超える相対回転力が生じた場合には、両者の相対回転を許容するように、その大きさが設定されている。車輪20と回転体40との間に所定値を超える相対回転力が生じる場合とは、たとえば、車輪20が回転中に、回転体40の受け入れ穴42にブレーキ部材8(
図6)の係合部80が係合することである。この場合、回転体40は、停止状態となるのに対し、車輪20は、回転しようとするが、回転体40に保持された摩擦部材50により、回転体40と車輪20との相対回転に対して摩擦抵抗力が発揮され、徐々に車輪20の回転が停止する。
【0048】
次に、
図6を参照して、回転体40の受け入れ穴42に受け入れ係合されるブレーキ部材8について簡単に説明する。
【0049】
ブレーキ部材8は、たとえば、ホルダ90内に設けられる。ブレーキ部材8は、回転体40の受け入れ穴42に受け入れられて係合される係合部80と、係合部80の端部を保持する保持部81とを含む。係合部80は、たとえば、ピンであり、ホルダ90の貫通孔から出し入れ自在に設けられる。保持部81は、一方で係合部80を保持し、他方に設けられた凹部状の収納部82でばね部材84を保持する。ばね部材84は、係合部80がホルダ90の貫通孔から突出するように付勢されている。さらに、保持部81は、ワイヤ85の端部の球体83を回転可能に保持している。
【0050】
操作者がブレーキレバー7を押圧してワイヤ85が引き上げられると、係合部80は、
図6(a)に示すように、受け入れ穴42から引き抜かれた被係合位置に変位し、回転体40の回転は許容される。操作者がブレーキレバー7から手を離してワイヤ85が引き下げられると、係合部80は、
図6(b)に示すように、受け入れ穴42に係合した係合位置に変位し、回転体40の回転は停止される。
【0051】
図2,6,7を特に参照して、走行可能状態およびブレーキ状態について説明する。
【0052】
図2(a)に示すように、操作者がブレーキレバー7を押圧すると、回転部材61が中心部62を中心に時計回りに回転し、ワイヤ85が互いに近づく。ワイヤ85の動きに連動して、係合部80は、
図6(a)に示すように、回転体40の受け入れ穴42から引き抜かれ、車輪20は、走行可能状態となる。この場合には、車輪20と回転体40とは、
図7(a)に示すように、車軸39を中心に一体的に回転する。
【0053】
図2(b)に示すように、操作者がブレーキレバー7から手を離すと、回転部材61が中心部62を中心に反時計回りに回転し、ワイヤ85が互いに遠ざかる。ワイヤ85の動きに連動して、係合部80は、
図6(b)に示すように、回転体40の受け入れ穴42に受け入れられて係合され、回転体40の回転は停止する。回転体40と車輪20とは固定されていないため、
図7(b)に示すように、車輪20は回転状態のままであるが、回転体40に保持された摩擦部材50により、停止状態の回転体40と回転状態の車輪20との間に摩擦抵抗力が発揮され、車輪20の回転が徐々に停止する。
【0054】
このように構成することにより、操作者が意図せずブレーキレバー7から手を離してしまった場合でも、すぐに車輪20の回転が停止するのではなく、ブレーキ部材8により回転体40の回転が停止され、回転体40と車輪20とが相対回転し、徐々に車輪20の回転が停止するため、乳母車1が急停止することがない。また、ブレーキをかけるために操作者が力を要さないため、容易にブレーキをかけることができる。
【0055】
上記実施の形態における摩擦部材50は、回転体40から径方向内側に向かって付勢され、車軸支持部(円筒部材28の立壁部30)に当接している。以下の実施形態おいて、回転体40Aから径方向外側に向かって付勢され、タイヤ保持部に当接している摩擦部材50Aを備えた車輪構造3Aについて説明する。
【0056】
<実施の形態2について>
図8,9を参照して、本実施の形態2に係る車輪構造3Aについて説明する。
【0057】
本実施の形態において、車輪構造3Aの車輪20Aは、実施の形態1とは異なり、車輪本体21Aのみで構成されている。車輪本体21Aは、車軸39を支持する車軸支持部36Aと、車軸支持部36Aと向かい合い、走行路面と当接するタイヤ部22Aを保持するタイヤ保持部37Aとを有する。タイヤ保持部37Aは、車軸支持部36Aとの間に設けられる立壁部30Aを含む。立壁部30Aと車軸支持部36Aとの間には、環状凹部38Aが形成される。タイヤ部22Aとタイヤ保持部37Aとの間には、乳母車1を駐車するために設けられたパーキングブレーキ部材(図示せず)を係合するための複数の係合穴35Aが設けられる。
【0058】
本実施の形態では、回転体40Aは、略円盤形状であり、中央に車軸39が貫通する孔を有し、外周縁近傍にブレーキ部材8(
図6)の係合部80が係合する複数の受け入れ穴42Aが設けられる。
【0059】
本実施の形態では、摩擦部材50Aは、回転体40Aに保持され、回転体40Aから径方向外側に向かって付勢され、立壁部30Aに当接している。摩擦部材50Aは、車輪20Aの立壁部30Aに対して当接して摩擦係合する。摩擦部材50Aは、たとえば、立壁部30Aに当接する一対の当接部51A,52Aを含む。当接部51A,52Aは、正面視円形形状の立壁部30に沿うように略円弧形状を有している。当接部51A,52Aは、上方の孔にピン(図示せず)が貫通されることにより固定される。
【0060】
当接部51A,52Aの下方には、軸方向外側に向かって広がる傾斜部が形成される。当接部51A,52Aの傾斜部間には、軸方向外側に向かって広がる、略台形形状の調整部材56Aが配置される。調整部材56Aには、回転体40Aに形成される孔を貫通し、その軸方向位置を調節する回転螺子55Aが取り付けられている。回転螺子55Aを回転すると、調整部材56Aは、軸方向外側に向かって移動し、当接部51A,52Aは、径方向外側に向かって付勢される。これにより、摩擦部材50Aは、回転体40Aから車輪本体21Aの立壁部30Aの突き出し長さを調節可能に設けることができ、結果として、立壁部30への摩擦力を調節することができる。
【0061】
上記各実施の形態1,2では、ブレーキ部材8は、
図6に示すように、ホルダ90から軸方向に向かって出し入れ自在であるとして説明した。以下の実施形態おいて、ホルダ90に対して回動運動するブレーキ部材8Bを用いた車輪構造3Bについて説明する。
【0062】
<実施の形態3について>
図10〜12を参照して、本実施の形態3に係る車輪構造3Bおよびブレーキ部材8Bについて説明する。
【0063】
図12を特に参照して、本実施の形態において、車輪20Bは、車輪本体21Bと、カバー体32Bとを備える。車輪本体21Bは、車軸39を支持する車軸支持部36Bと、中央に車軸支持部36Bが設けられる円盤部26Bと、円盤部26Bの外周から立ち上がる立壁部30B(タイヤ保持部)と、立壁部30Bと車軸支持部36Bとの間の環状凹部38Bとを有している。
【0064】
カバー体32Bは、略円盤形状であり、中央部に車軸支持部36Bが貫通する孔が設けられ、外周面に係合穴35Bを有している。カバー体32Bは、車輪本体21Bと一体的に回転する。
【0065】
本実施の形態において、回転体40Bは、略円盤形状であり、中央に車軸支持部36Bが貫通する孔が設けられた凹部46Bと、複数の受け入れ穴42Bとを有している。凹部46Bには、カバー体32Bが収容される。受け入れ穴42Bは、回転運動するブレーキ部材8Bが係合しやすいように、たとえば、切欠きで形成される。
【0066】
摩擦部材50Aは、実施の形態2の摩擦部材50Aと略同一の形状である。摩擦部材50Aは、回転体40Bに保持され、回転体40Bから径方向外側に向かって付勢される。摩擦部材50Aは、環状凹部38B内に位置し、立壁部30Bに当接する。
【0067】
図10を特に参照して、ブレーキ部材8Bは、回転軸86Bを介してホルダ90に取り付けられており、ブレーキ本体81Bと、回転体40Bの受け入れ穴42Bに係合される係合部80Bとを含む。係合部80Bは、たとえば、車輪20B側に向かって突出する突出部であり、回転軸86Bを中心に回転自在に設けられる。
【0068】
ブレーキ本体81Bは、ワイヤ85の端部である球体83を回転可能に保持している。
ブレーキレバー7(
図2)を押圧して、ワイヤ85を下方に引き下げ、回転軸86Bを中心に時計回りに回転させることにより、ブレーキ本体81Bは、係合部80Bが受け入れ穴42Bと係合しない非係合位置に変位する。ブレーキレバー7から手を離して、ワイヤ85を上方に引き上げ、回転軸86Bを中心に反時計回りに回転させることにより、ブレーキ本体81Bは、係合部80Bが受け入れ穴42と係合する係合位置に変位する。この場合、ブレーキレバー7は、上述した構造とは異なり、回転部材61が設けられておらず、たとえば、ブレーキレバー7を押圧することによりワイヤ85が下方に引き下げられ、ブレーキレバー7から手を離すことによりワイヤ85が上方に引き上げられるような構造である。
【0069】
ホルダ90には、乳母車1を駐車するためのパーキングブレーキ部材94Bが設けられる。パーキングブレーキ部材94Bは、上方から押圧すると、下端に設けられるピン93Bがカバー体32Bに向かって突出して係合穴35Bに係合する。カバー体32Bは、車輪本体21Bに固定されているため、カバー体32Bの係合穴35Bにパーキングブレーキ部材94Bのピン93Bが係合すると、車輪20Bの回転を即時に停止することができる。
【0070】
なお、上記各実施の形態に係る車輪構造3,3A,3Bでは、相対回転抵抗部材は、摩擦部材であるとして説明した。しかし、相対回転抵抗部材は、回転体と車輪体との相対回転に介して抵抗力を発揮すればよく、たとえば、磁力または圧力により抵抗力を発揮する部材であってもよい。
【0071】
また、上記各実施の形態に係る車輪構造3,3A,3Bにおいて、相対回転抵抗部材50,50A,50Bは、回転体40,40A,40Bに保持されているとしたが、車輪20,20A,20Bに保持されていてもよい。この場合、相対回転抵抗部材50,50A,50Bは、回転体40,40A,40Bに当接して摩擦係合する。
【0072】
また、車輪20,20A,20Bは、必ずしも車軸支持部とタイヤ保持部と環状凹部とを有していなくてもよい。たとえば、車輪がタイヤ保持部だけを有する環状の部材である場合、回転体40,40A,40Bは、タイヤ保持部内に配置されていてもよい。
【0073】
また、上記実施の形態2に係る車輪構造3Aにおいて、環状凹部38Aは、車軸支持部36Aと立壁部30Aとの間に設けられるとしたが、立壁部30Aとタイヤ保持部37Aとの間に設けられてもよい。この場合、回転体50Aは、立壁部30Aとタイヤ保持部37Aとの間に配置される。
【0074】
また、乳母車1は、双輪2であるとした。この場合、双輪2のうち少なくとも一方の車輪20,20A,20Bが本実施の形態に係る車輪構造3,3A,3Bであればよい。また、上記各実施の形態の乳母車1は、双輪ではなく、単輪であっても構わない。
【0075】
また、上記各実施の形態の乳母車1において、ブレーキ部材8の操作部は、ハンドル部6の上方に設けられるブレーキレバー7であるとしたが、操作部は、たとえば、車輪の近傍に設けられて、足により操作可能であってもよい。また、操作部がハンドル部6近傍に設けられている場合、乳母車1は、操作者が操作部を押圧するとブレーキがかかり、操作者が操作部から手を離すとブレーキが解除されるような構造であってもよい。
【0076】
また、本実施の形態では、手押し車は、乳母車1であるとして説明したが、これに限定されず、ハイローベッドなどの育児器具、シルバーカート、ショッピングカートなど種々のものに用いられてもよい。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。