(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の引き違い窓は、障子が閉まる際に自動施錠する構成とされている。このため、引き違い窓を建物のテラスなどに設置して戸先錠を障子に対して室内側に配置した場合において、人が障子を開けて室内から室外に出たまま障子を閉めると、障子が戸先錠によって自動施錠されてしまい、人が室外に締め出されるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、障子が閉まる際に意図せずに施錠されるおそれをなくすことができる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具は、
建具枠と、前記建具枠内にスライド方向に開閉自在に配置された障子と、前記障子を施錠する戸先錠とを備えた建具であって、前記戸先錠は、係合孔が形成された錠受け部材および錠本体を備え、前記錠受け部材は、前記建具枠および前記障子のうちのいずれか一方に取り付けられ、前記錠本体は、前記建具枠および前記障子のうちのいずれか他方に取り付けられた台座と、前記台座に対して回転可能に取り付けられているとともに、前記錠受け部材に係合可能な第一位置および前記錠受け部材との係合を解除可能な第二位置に配置されるフック部材と、前記フック部材を前記第一位置および前記第二位置に保持する位置保持機構とを備え、前記フック部材には、当該フック部材の前記第二位置から前記第一位置への回転によって前記係合孔に係合され、かつ、当該フック部材の前記第一位置から前記第二位置への回転によって前記係合孔との係合が解除される鎌状のフック部が形成され、
前記錠受け部材には、鎌状のフック部に当接して前記フック部材を前記第一位置から前記第二位置へ案内可能に、前記スライド方向に対して傾斜したフックガイド面が形成され、前記フックガイド面は、前記第一位置にある前記フック部材の鎌状のフック部に対して前記スライド方向に対向し、かつ、前記第二位置にある前記フック部材の鎌状のフック部に対して前記対向から外れた位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の建具によれば、フックガイド面が錠受け部材に形成されている場合には、障子が閉鎖移動すると、フックガイド面がフック部材に当たってフック部材を第一位置から第二位置へ案内する。また、フックガイド面がフック部材に形成されている場合には、障子が閉鎖移動すると、フックガイド面が錠受け部材に当たってフック部材を第一位置から第二位置へ案内する。さらに、フックガイド面が錠受け部材およびフック部材の双方に形成されている場合には、障子が閉鎖移動すると、これら双方にそれぞれ対向する部材にフックガイド面が当たってフック部材を第一位置から第二位置へ案内する。
このように、第一位置から第二位置へ案内されたフック部材は位置保持機構によって第二位置に保持されるので、障子を閉める際に、第一位置にあるフック部材が第二位置まで回転されないまま第一位置に残り続けることなく強制的に第二位置に配置でき、障子が閉鎖時に意図せずに施錠されるおそれをなくすことができる。
【0010】
また本発明の建具によれば、フック部材が第一位置にある状態で障子が閉められる場合には、フックガイド面が鎌状のフック部に当たってフック部材を第二位置へ案内することとなるので、障子が閉鎖時に意図せずに施錠されるおそれをなくすことができる。
また、フック部材が第二位置にある状態で障子が閉められる場合には、フックガイド面は鎌状のフック部に当たることがなくフック部材は第二位置を維持することとなるので、障子が閉められても解錠状態を維持できる。
【0011】
本発明の建
具は、
建具枠と、前記建具枠内にスライド方向に開閉自在に配置された障子と、前記障子を施錠する戸先錠とを備えた建具であって、前記戸先錠は、錠受け部材および錠本体を備え、前記錠受け部材は、前記建具枠および前記障子のうちのいずれか一方に取り付けられ、前記錠本体は、前記建具枠および前記障子のうちのいずれか他方に取り付けられた台座と、前記台座に対して回転可能に取り付けられているとともに、前記錠受け部材に係合可能な第一位置および前記錠受け部材との係合を解除可能な第二位置に配置されるフック部材と、前記フック部材を前記第一位置および前記第二位置に保持する位置保持機構とを備え、少なくとも前記錠受け部材および前記フック部材のうちの一方の部材には、当該他方の部材に当接して前記フック部材を前記第一位置から前記第二位置へ案内可能に、前記スライド方向に対して傾斜したフックガイド面が形成され、少なくとも前記台座および前記錠受け部材のうちの一方の部材には、当該他方の部材に当接して前記障子を前記建具の見込み方向に案内可能に、前記スライド方向に対して前記フックガイド面とは逆向きに傾斜した障子ガイド面が形成されていること
を特徴とする。
本発明の建具によれば、前述したように、第一位置から第二位置へ案内されたフック部材は位置保持機構によって第二位置に保持されるので、障子を閉める際に、第一位置にあるフック部材が第二位置まで回転されないまま第一位置に残り続けることなく強制的に第二位置に配置でき、障子が閉鎖時に意図せずに施錠されるおそれをなくすことができる。
また、このような構成によれば、例えば障子に温度変化による反り等が生じたために当該障子が建具の見込み方向における一方側に寄って位置する場合には、第一位置にあるフック部材がフックガイド面によって第二位置まで案内しきれないことが想定されるが、本発明では、障子の閉鎖移動に伴って、フックガイド面とは逆向きに傾斜した障子ガイド面によって障子を建具の見込み方向に案内することで、フックガイド面を当接相手であるフック部材または錠受け部材にしっかりと当てることができて、フック部材を第二位置まで案内できる。
【0012】
本発明の建具では、前記障子ガイド面は、前記台座に一体的に形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、例えば障子ガイド面が形成されたガイド部材などを、台座に取り付ける場合と比べて、部品点数を削減できる。また、前述したガイド部材、台座および錠受け部材の三つの部材の相互の位置決めをする場合と比べて、ガイド部材および台座の寸法誤差などを考慮する必要がなく、障子ガイド面がある台座と錠受け部材との二つの部材の相互の位置決めをすればよいので、障子ガイド面の錠受け部材に対する位置決めが容易となる。
【0013】
本発明の建
具は、
建具枠と、前記建具枠内にスライド方向に開閉自在に配置された障子と、前記障子を施錠する戸先錠とを備えた建具であって、前記戸先錠は、錠受け部材および錠本体を備え、前記錠受け部材は、前記建具枠および前記障子のうちのいずれか一方に取り付けられ、前記錠本体は、前記建具枠および前記障子のうちのいずれか他方に取り付けられた台座と、前記台座に対して回転可能に取り付けられているとともに、前記錠受け部材に係合可能な第一位置および前記錠受け部材との係合を解除可能な第二位置に配置されるフック部材と、前記フック部材を前記第一位置および前記第二位置に保持する位置保持機構とを備え、少なくとも前記錠受け部材および前記フック部材のうちの一方の部材には、当該他方の部材に当接して前記フック部材を前記第一位置から前記第二位置へ案内可能に、前記スライド方向に対して傾斜したフックガイド面が形成され、前記位置保持機構は、前記フック部材の回転軸心側から径方向に突出して当該フック部材に形成された被掛り突部と、前記フック部材の回転方向において前記被掛り突部に掛かる掛り突部、および前記フック部材の回転によって前記被掛り突部が前記掛り突部を乗り越え可能に弾性支持する弾性支持部を有した位置保持部材とによって構成されていること
を特徴とする。
本発明の建具によれば、前述したように、第一位置から第二位置へ案内されたフック部材は位置保持機構によって第二位置に保持されるので、障子を閉める際に、第一位置にあるフック部材が第二位置まで回転されないまま第一位置に残り続けることなく強制的に第二位置に配置でき、障子が閉鎖時に意図せずに施錠されるおそれをなくすことができる。
また、このような構成によれば、掛り突部を被掛り突部に対してフック部材の回転方向における一方側に配置した状態でフック部材を第一位置に配置でき、また、掛り突部を被掛り突部に対してフック部材の回転方向における他方側に配置した状態でフック部材を第二位置に配置できる。そして、フック部材に回転力が加えられても、被掛り突部が弾性支持部の弾性力に抗して掛り突部を乗り越えられない限り、フック部材を第一位置または第二位置に保持できる。また、フック部材に回転力が加えられ、被掛り突部が弾性支持部の弾性力に抗して掛り突部を乗り越えると、フック部材の回転位置は第一位置および第二位置間で切り替えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、障子が閉まる際に意図せずに施錠されるおそれをなくすことができる建具を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、本実施形態に係る建具としての引き違い窓1は、建物躯体の開口部に設置されるものである。引き違い窓1は、窓枠2(建具枠)と、左右引き違い形式にスライド可能に窓枠2内に配置される外障子3および内障子4とを備えており、外障子3の戸先側には戸先錠50が設置されており、内障子4の戸先側には戸先錠60が設置されている。
ここで、図に示すX、Y、Z軸方向は互いに直交しており、本実施形態では、X軸方向は後述する左右の縦枠23,24の見付け方向に沿っており、Y軸方向は後述する上枠21および下枠22の見付け方向に沿っており、Z軸方向は引き違い窓1の見込み方向に沿っている。
窓枠2は、樹脂押出形材によって形成された上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24を枠組みして構成されている。
上枠21および下枠22には上レールおよび下レールがそれぞれ形成されており、外障子3と内障子4がX軸方向にスライド可能に嵌合されている。
【0017】
図1において左側に示す縦枠23は、
図2に示すように、縦枠見込み片部231と、縦枠見込み片部231に連続した室外見付け片部232、中間見付け片部233および室内見付け片部234とを有しており、中間見付け片部233は、Z軸方向において室外見付け片部232および室内見付け片部234間に配置されている。中間見付け片部233の先端には、気密材235が室外側に向かって突設されている。
また、縦枠23には、室外見付け片部232の室内面に沿ってガイド部材25が設置されている。ガイド部材25は、閉鎖移動する外障子3に当接して室外側から室内側へ案内するものであり、外障子3のスライド方向に対して傾斜しているとともに、縦枠見込み片部231側の一端が室外見付け片部232の端部よりも室内側に位置しているガイド面251を有している。
なお、
図1において右側に示す縦枠24は、縦枠23と同じ断面形状の樹脂押出形材によって形成されており、縦枠23に対して左右逆向きに配置されている。
【0018】
外障子3および内障子4は、上框31,41、下框32,42、左右の縦框33,43およびガラスパネル等の面材35,45を框組みして構成されている。上框31,41、下框32,42および左右の縦框33は樹脂押出形材によって形成されている。
図1において左側に示す縦框33は外障子3における戸先框であり、右側に示す縦框43は内障子4における戸先框である。中央側に示す縦框43は内障子4の召合せ框である。外障子3の縦框33と内障子4の縦框43は、同様に形成されて左右逆向きに配置されているため、外障子3の縦框33のみ以下詳細に説明する。
【0019】
縦框33は、
図2に示すように、框本体36と、框本体36の中空部に配置された金属製の補強材37とを備えている。框本体36は、室外見付け片部361および室内見付け片部362と、室外見付け片部361および室内見付け片部362に連続した外見込み片部363および内見込み片部364とを有している。
【0020】
戸先錠50は、
図2に示すように、縦枠23に取り付けられた錠受け部材51と、戸先側の縦框33に取り付けられた錠本体52とを備えている。
錠受け部材51は、
図3に示すように、金属板を断面略L字状に折曲して形成されており、縦枠23に固定された固定板部511と、固定板部511から見付け方向に延出した係合板部512と、係合板部512の延出端部からX軸方向(外障子3のスライド方向と同方向)に対して室外側に向かって傾斜した傾斜板部513とを有している。
【0021】
固定板部511は、中間見付け片部233および室内見付け片部234間に配置されており、縦枠見込み片部231にねじ止めされている。固定板部511および係合板部512が交差して連続する部分には、係合孔514が形成されており、この係合孔514は、固定板部511および係合板部512に跨って形成されている。
【0022】
本実施形態では、傾斜板部513の室内側の面によってフックガイド面515が構成されている。フックガイド面515は、フック部材54を錠受け部材51に係合可能な第一位置(
図2に二点鎖線で示すフック部材54の位置)から錠受け部材51との係合を解除可能な第二位置(
図2に実線で示すフック部材54の位置)へ案内するものである。
このフックガイド面515は、縦枠23の見付け方向内側における一端516が見付け方向外側における他端517よりもZ軸方向において室外側に位置している。
【0023】
フックガイド面515は、外障子3が閉じ方向にスライドして縦枠23に近づく際(フック部544が錠受け部材51に当接する前)において、第一位置にあるフック部材54のフック部544に対して外障子3のスライド方向に対向し、また、第二位置にあるフック部材54のフック部544は、外障子3が閉じた状態でも閉じる過程においても、フックガイド面515との対向から外れた位置に配置されている。
【0024】
錠本体52は、
図2〜
図6に示すように、縦框33の室内見付け片部362に取り付けられた台座53と、台座53に軸ピン56を介してR1方向およびR2方向に回転可能に取り付けられたフック部材54と、フック部材54の回転位置を保持する位置保持部材55とを備えている。
【0025】
台座53は、
図6に示すように、縦長の台座本体部531と、台座本体部531に連続した操作カバー部532とを有している。
台座本体部531には、上下二つの取付孔533と、台座本体部531の上下方向における中間位置でその表面側から裏面側に貫通した貫通孔534と、貫通孔534よりも上側および下側の位置で軸ピン56を受ける軸受け溝535と、貫通孔534よりも上側および下側の位置で位置保持部材55の後述する掛け爪552が掛けられる掛け孔536とが形成されている。この台座53は、取付孔533にねじが挿通されて縦框33の室内見付け片部362にねじ込まれることで、縦框33の室内面に固定される。
【0026】
操作カバー部532は、台座本体部531の表面側から突出しており、当該表面側に連続した内面側にフック部材54の後述する解錠操作部543が配置される凹部537が形成されている。この操作カバー部532は、台座53の縦框33への取付状態では台座本体部531から室内側に突出して配置される。
この台座53において、台座本体部531の縦縁部531Aのうち貫通孔534よりも上側および下側の位置に形成された上下二つの障子ガイド部57が当該台座本体部531と一体的に形成されている。
【0027】
障子ガイド部57は、
図5に示すように、縦縁部531AからX軸方向にそれぞれ突出しており、それぞれの突出端面によって障子ガイド面571が構成されている。
障子ガイド面571は、外障子3を引き違い窓1の見込み方向において室外側へ案内するためのものである。この障子ガイド面571は、
図5に示すように、外障子3のスライド方向(X軸方向)に対して傾斜しており、縦框33の見付け方向外側における一端572(戸先側の一端)が見付け方向内側における他端573よりもZ軸方向において室外側に位置している。障子ガイド面571の傾斜向きは、前述したフックガイド面515の傾斜向きとは逆向きである。
【0028】
フック部材54は、前述した軸ピン56が挿通された回転本体部541と、回転本体部541から外障子3のスライド方向(X軸方向)において戸先側に延出した施錠操作部542と、回転本体部541から室内側に延出した解錠操作部543と、
図5において施錠操作部542の上下方向における中間位置から室外側に突出したフック部544とを有している。施錠操作部542はR1方向に押圧操作可能に構成されており、解錠操作部543はR2方向に押圧操作可能に構成されている。
【0029】
回転本体部541には、その回転軸心C側から径方向であって室外側に突出した被掛り突部545が形成されている。
被掛り突部545には、第一摺動面546および第二摺動面547が形成されており、第一摺動面546および第二摺動面547が連続する部分によって被掛り突部545の頂部548が尖形状に形成されている。第一摺動面546および第二摺動面547は、回転軸心Cと頂部548とを結ぶ仮想線に対して傾斜しており、本実施形態ではこれらの傾斜角度は互いに等しい。
【0030】
フック部544は、施錠操作部542とともに鎌状に形成されている。また、フック部544には傾斜面544Aが形成されており、この傾斜面544Aは、外障子3のスライド方向において戸先側に向かうに従ってフック部544の先端部から室内側に傾斜している。
このフック部544は、施錠操作部542の回転操作によってフック部材54が
図2に実線で示す第二位置から二点鎖線で示す第一位置へのR1方向に回転することで、錠受け部材51の係合孔514に係合される。また、フック部544は、解錠操作部543の回転操作によってフック部材54が第一位置から第二位置へのR2方向に回転することで、係合孔514との係合が解除される。
【0031】
位置保持部材55は、
図5,6に示すように、台座53の裏面側に配置される本体板部551と、本体板部551に形成された上下二つの掛け爪552と、本体板部551から突出した弾性支持部553と、弾性支持部553の突出した先端に形成された掛り突部554とを有している。
各掛け爪552は、前述した台座53の各掛け孔536に掛けられることで、位置保持部材55を台座53に装着している。弾性支持部553は、本体板部551からX軸方向に沿って延びている。
【0032】
掛り突部554には、第一摺動面555および第二摺動面556が形成されており、第一摺動面555および第二摺動面556が連続する部分によって頂部557が尖形状に形成されている。掛り突部554の頂部557は、被掛り突部545の頂部548の回転軌跡よりも回転軸心Cに寄った位置に配置されている。
【0033】
前述した位置保持部材55とフック部材54の被掛り突部545とによって位置保持機構58が構成されている。
フック部材54が第一位置にある場合、掛り突部554は被掛り突部545に対してフック部材54の回転方向における一方側に配置される。また、フック部材54が第二位置にある場合、掛り突部554は被掛り突部545に対してフック部材54の回転方向における他方側に配置される。フック部材54の回転位置は、被掛り突部545が弾性支持部553の弾性力に抗して掛り突部554を乗り越えない限り、第一位置および第二位置のいずれか一方の位置に保持され、被掛り突部545が掛り突部554を乗り越えた場合には、第一位置から第二位置への切り替え、または第二位置から第一位置への切り替えが行われる。
【0034】
戸先錠60は、前述した錠本体52と同様に構成されて内障子4の縦框43に左右逆向きに取り付けられた錠本体と、この錠本体が係合可能に、前述した係合孔514およびフックガイド面515が形成されて縦枠24に取り付けられた錠受け部材51とによって構成されている。
【0035】
外障子3が
図2に示す閉鎖位置、且つ、フック部材54が実線で示す第二位置にある場合、フック部544は錠受け部材51の係合孔514に対して室内側に離れた位置に配置され、戸先錠50は解錠状態となる。
ここで、施錠操作部542を押し操作してフック部材54をR1方向に回転し、フック部材54の回転位置を第二位置から
図2に二点鎖線で示す第一位置へ切り替えて、フック部544を係合孔514に差し込む。これにより、戸先錠50によって外障子3を施錠した施錠状態となる。
また、解錠操作部543を押し操作してフック部材54をR2方向に回転し、フック部材54の回転位置を第一位置から第二位置へ切り替えて、フック部544を係合孔514から抜き出す。これにより、外障子3を解錠した解錠状態となる。
このように戸先錠50を手動操作することで、外障子3を施錠、解錠する。
【0036】
戸先錠50のフック部材54が第一位置にある状態で外障子3を閉める動作は次の通りである。
図7に示すように、外障子3が縦枠23に向かってスライド方向に閉鎖移動されると、フック部544は、フックガイド面515の一端516側の部分(先端部分)に当たり、当該フックガイド面515に沿って摺動しながら室内側へ案内され、フック部材54がR2方向に回転されながら第一位置から第二位置へ切り替えられる。これにより、戸先錠50は、外障子3の閉鎖移動に伴って自動解錠動作を行う。
【0037】
より具体的には、
図7に示すように、当接開始時からフック部544はフックガイド面515の先端部分に当接するため、その後、フック部544がフックガイド面515の斜面全体(大部分)に沿って摺動することが可能である。
これにより、フックガイド面515の室内外方向の寸法(Z軸方向の寸法)だけフック部544の先端が室内側に変位するため、被掛り突部545の頂部548が被掛り突部554の第一摺動面555に摺接した後、被掛り突部545の頂部548が掛り突部554の頂部557を乗り越えることが出来る程度に、フック部544をR2方向へ大きく回動することが可能となる。
【0038】
被掛り突部545の頂部548が掛り突部554の頂部557を乗り越えることで弾性変形していた弾性支持部553が復元しつつ、被掛り突部545の頂部548が掛り突部554の第二摺動面556と摺接することで、フック部544が更にR2方向へ回動して
図2の実線で示すフック部544の位置となる。これにより、外障子3を閉じきった位置において錠本体52と錠受け部材51による施錠を防ぐことができる。
【0039】
環境温度変化などの影響によって縦框33に内反りが生じた場合には、縦框33は
図8に示すように縦枠23に対して室内側寄りに位置することがある。この状態における戸先錠50による自動解錠動作について、以下説明する。
【0040】
図8に示すように外障子3が室内側寄りに位置した状態では、第一位置にあるフック部544とフックガイド面515の最初の当接位置が、
図7に示すようにフックガイド面515の先端部分ではなく、フックガイド面515の他端517側寄り部分(室内側寄り部分)となる。
この
図8に示す状態の場合では、当接開始時からフック部544はフックガイド面515の先端部分よりも室外側部分に当接するため、フック部544とフックガイド面515の摺動距離は
図7に示す状態と比較して減少することになる。
この際、台座53に障子ガイド部57が設けられていない場合、フック部544がR2方向に回動する際に、被掛り突部545が掛り突部554を乗り越えることが出来ない可能性がある。
【0041】
より具体的には、
図8に示すように、当接開始時からフック部544はフックガイド面515の室内側寄り部分に当接するため、その後、フック部544がフックガイド面515の一部の斜面に沿って摺動する。
これにより、フックガイド面515の室内側方向の寸法(Z軸方向の寸法)より短い寸法しかフック部544の先端が室内側に変位しないため、被掛り突部545の頂部548が被掛り突部554の第一摺動面555に摺接している間に、フックガイド面515に対するフック部544の摺動が終わり、被掛り突部545の頂部548が掛り突部554の頂部557を乗り越えることが出来ない。
その状態で外障子3を更に閉じ方向へ移動すると、フック部544が係合孔514に入り込むため、外障子3を閉じきった位置において錠本体52と錠受け部材51で施錠される。
【0042】
それに対し、台座53に障子ガイド部57が設けられた場合では、
図8の状態から外障子3が更に閉鎖移動し、フック部544がフックガイド面515に沿って室内側に案内されてフックガイド面515の他端517側に位置した際には、
図9に示すように、障子ガイド部57の障子ガイド面571が錠受け部材51の傾斜板部513の先端に当接する。この状態から外障子3がさらに閉鎖移動すると、障子ガイド面571が傾斜板部513の先端に摺接しながら室外側へ移動し、外障子3を室外側に案内する。
これにより、フック部544がフックガイド面515の他端517側に位置し、フックガイド面515によってフック部544を室内側に案内しきれない状態となっても、
図9に示す状態で障子ガイド面571のうち傾斜板部513の先端が当接した位置から室内側に位置した部分の室内外方向の寸法(Z軸方向の寸法)の分だけ、外障子3がフック部544に対して室外側に引き離され、フック部材54はR2方向に回転する。この回転により、前述したようにフック部544とフックガイド面515の摺動距離が
図7に示す状態として減少した場合であっても、傾斜板部513と障子ガイド面571との摺動距離を稼ぐことができ、被掛り突部545の頂部548が掛り突部554の第一摺動面555に摺接し、掛り突部554の頂部557を乗り越えることができる。このため、
図10に示すように、フック部材54の回転位置を第一位置から第二位置へ切り替えられ、戸先錠50は、内反りした外障子3の自動解錠動作を行う。
【0043】
また、環境温度変化などの影響によって縦框33に外反りが生じた場合には、縦框33は
図11に示すように縦枠23に対して室外側寄りに位置することがある。この状態における戸先錠50による自動解錠動作について、以下説明する。
外障子3の閉鎖移動によって、第一位置にあるフック部材54のフック部544の傾斜面544Aは錠受け部材51のフックガイド面515に当接し、外障子3の閉鎖移動に伴ってフック部544はフックガイド面515に沿って室内側へ案内され、フック部材54の回転位置は第一位置から第二位置へ切り替えられる。
さらに外障子3が閉鎖移動されると、縦框33がガイド部材25のガイド面251に当接し、
図12に示すように外障子3を室内側へ案内する。これにより、フック部544は錠受け部材51の係合板部512に対して室内側に離れて配置される。このように、戸先錠50は、外障子3の閉鎖移動に伴って、当該外反りした外障子3を室内側へ案内しながら自動解錠動作を行う。
なお、戸先錠60により自動解錠動作は、前述した戸先錠50による自動解錠動作と概略同様であるので、その詳細な動作説明を省略する。
【0044】
[本実施形態の効果]
(1)フックガイド面515が錠受け部材51に形成されている場合には、外障子3が閉鎖移動すると、フックガイド面515がフック部材54に当たってフック部材54を第一位置から第二位置へ案内する。
このように、第一位置から第二位置へ案内されたフック部材54は位置保持機構58によって第二位置に保持されるので、外障子3を閉める際に、第一位置にあるフック部材54が第二位置まで回転されないまま第一位置に残り続けることなく強制的に第二位置に配置でき、外障子3が閉鎖時に意図せずに施錠されるおそれをなくすことができる。
(2)フック部材54が第一位置にある状態で外障子3が閉められる場合には、フックガイド面515が鎌状のフック部544に当たってフック部材54を第二位置へ案内することとなるので、外障子3が閉鎖時に意図せずに施錠されるおそれをなくすことができる。
また、フック部材54が第二位置にある状態で外障子3が閉められる場合には、フックガイド面515は鎌状のフック部544に当たることがなくフック部材54は第二位置を維持することとなるので、外障子3が閉められても解錠状態を維持できる。
(3)外障子3に温度変化による内反り等が生じたために当該外障子3が室内側に寄って位置する場合には、第一位置にあるフック部材54がフックガイド面515によって第二位置まで案内しきれないことが想定されるが、本実施形態では、外障子3の閉鎖移動に伴って、フックガイド面515とは逆向きに傾斜した障子ガイド面571によって外障子3を引き違い窓1の見込み方向に案内することで、フックガイド面515を当接相手であるフック部材54にしっかりと当てることができて、フック部材54を第二位置まで案内できる。
(4)障子ガイド面571が形成されたガイド部材などを台座53に取り付ける場合と比べて、部品点数を削減できる。また、前述したガイド部材、台座53および錠受け部材51の三つの部材の相互の位置決めをする場合と比べて、ガイド部材および台座53の寸法誤差などを考慮する必要がなく、障子ガイド面571がある台座53と錠受け部材51との二つの部材の相互の位置決めをすればよいので、施工時における障子ガイド面571の錠受け部材51に対する位置決めが容易となる。
(5)掛り突部554を被掛り突部545に対してフック部材54の回転方向における一方側に配置した状態でフック部材54を第一位置に配置でき、また、掛り突部554を被掛り突部545に対してフック部材54の回転方向における他方側に配置した状態でフック部材54を第二位置に配置できる。そして、フック部材54に回転力が加えられても、被掛り突部545が弾性支持部553の弾性力に抗して掛り突部554を乗り越えられない限り、フック部材54を第一位置または第二位置に保持できる。また、フック部材54に回転力が加えられ、被掛り突部545が弾性支持部553の弾性力に抗して掛り突部554を乗り越えると、フック部材54の回転位置は第一位置および第二位置間で切り替えられる。
(6)被掛り突部545および掛り突部554の頂部548,557は尖形状である。このため、例えば被掛り突部545および掛り突部554の頂部548,557に平坦面が形成されている場合と比べて、被掛り突部545の頂部548が掛り突部554の頂部557を速やかに乗り越えることができ、フック部材54の回転による第一位置および第二位置の切り替えを円滑に行うことができる。
(7)被掛り突部545および掛り突部554には、互いに摺動可能に当接する第一摺動面546,555および第二摺動面547,556が形成され、第一摺動面546,555および第二摺動面547,556が連続する部分によって被掛り突部545および掛り突部554の頂部548,557が形成されている。
このため、これら摺動面546,555,547,556同士が摺動可能に当接することで、フック部材54を回転方向における一方側や他方側に付勢でき、フック部材54の回転位置を安定させることができる。
【0045】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、錠受け部材51が窓枠2に取り付けられ、錠本体52が障子(外障子3、内障子4)に取り付けられているが、これに限らず、錠受け部材51が障子3に取り付けられ、錠本体52が窓枠2に取り付けられていてもよい。
【0046】
前記実施形態では、フックガイド面515は、錠受け部材51に形成されているが、これに代えてまたは加えて、フック部材54であって錠受け部材51に当接可能な位置にフックガイド面515が形成されていてもよい。
【0047】
また、障子ガイド面571は、台座53に一体的に形成されているが、これに限らず、例えば、障子ガイド面571が形成されたガイド部材を台座53に取り付けてもよい。また、障子ガイド面571は、台座53に形成されているが、これに代えてまたは加えて、錠受け部材51に形成されていてもよい。錠受け部材51に障子ガイド面571を形成する場合には、例えば、傾斜板部513の先端からさらに室外側に傾斜した障子ガイド部を延設し、これに障子ガイド面571を形成してもよい。
【0048】
前記実施形態では、被掛り突部545に第一摺動面546および第二摺動面547が形成されているとともに、掛り突部554に第一摺動面555および第二摺動面556が形成されているが、被掛り突部545および掛り突部554のいずれか一方だけに前述した各摺動面が形成されていてもよい。
【0049】
また、被掛り突部545および掛り突部554の頂部548,557は、尖形状に形成されているが、これに限らず、例えば湾曲面や平坦面を有して形成されていてもよい。
【0050】
本発明の建具は、前記実施形態の引き違い窓1に限定されず、片引き窓などのスライディング形式の窓や戸などの建具であってもよい。