(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上述したようにIDを用いて商品等を管理することが様々な市場で行われており、それに伴って、IDを構成するビット数が多いことが好ましくなっている。上述したように、共振ピークの周波数が互いに異なる複数のアンテナを有し、このアンテナの組み合わせでIDを判別可能に表現するものにおいては、アンテナの個数をN個とした場合、(2
N−1)ビットからなるIDが表現されることになるため、IDのビット数を増やす場合はアンテナの数を増やすこととなる。
【0006】
IDのビット数が膨大なものとなった場合は、実物の版が必要となるアナログ印刷やエッチングによる生産は好ましくなく、実物の版を必要としないインクジェット印刷のようなデジタル印刷が好ましいが、デジタル印刷では形成される膜厚が薄くなるため、デジタル印刷で作製したアンテナは反射強度が弱く、共振ピークを検出することができなくなってしまう。
【0007】
図14は、アンテナとグランドパターンとを対向配置したIDタグの一例を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面図である。
図15は、
図14に示したIDタグ501の周波数特性を示す図である。
【0008】
本例は
図14に示すように、絶縁性材料からなるベース基材520の一方の面に、アンテナ510が積層されるとともに、ベース基材520の他方の面に、その外形が平面視にてアンテナ510を覆うグランドパターン530が積層されて構成されたIDタグ501である。
【0009】
図14に示したIDタグ501において、アンテナ510及びグランドパターン530をそれぞれアナログ印刷によって3μmの膜厚で積層した場合、
図15中破線で示すように8.5GHz程度の周波数にて共振ピークが観測される。ところが、アンテナ510及びグランドパターン530をそれぞれデジタル印刷によって100nmの膜厚で積層した場合、
図15中実線で示すように共振ピークが観測されなくなってしまう。
【0010】
このように、アンテナ510及びグランドパターン530をそれぞれアナログ印刷によって積層した場合には共振ピークが観測されるものの、同一のアンテナ510及びグランドパターン530をそれぞれデジタル印刷によって積層した場合には、それらの膜厚が薄くなることで共振ピークが観測されなくなり、IDタグ501として機能しなくなってしまう。そこで、デジタル印刷を複数回行うことで、アンテナ510及びグランドパターン530の膜厚を厚くすることが考えられるが、その場合、生産性が低下し、コストが増加してしまうことになる。
【0011】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、識別情報が多ビットからなるものであっても、生産性が低下することなく識別情報が判別可能な識別体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、
共振ピークの検出の有無によって判別される識別情報が付与された識別体であって、
ベース基材と、
前記ベース基材の一方の面に積層されたアンテナと、
前記ベース基材の他方の面に積層され、平面視にて前記アンテナを覆う外形を具備するとともに、前記アンテナの少なくとも一部に対向する領域に、当該識別体に付与された識別情報に応じて導電層が積層される非導電部を具備するグランドパターンとを有し、
前記アンテナは、前記非導電部に前記導電層が積層された場合に前記共振ピークが発現する。
【0013】
上記のように構成された本発明においては、ベース基材の一方の面にアンテナが積層されるとともに、ベース基材の他方の面にグランドパターンが積層された構成において、グランドパターンには、アンテナの少なくとも一部に対向する領域に非導電部が設けられており、アンテナが、非導電部に導電層が積層された場合に共振ピークが発現し、非導電部に導電層が積層されていない場合に共振ピークが発現しないので、アンテナ及びグランドパターンを一律に第1の塗布法となるアナログ印刷等で膜厚を厚くして積層しておき、識別体に付与された識別情報に応じて、実物の版を必要としない第2の塗布法となるデジタル印刷等の可変印刷で非導電部のみに導電層を積層すれば、共振ピークの検出の有無によって識別情報が判別されることになる。
【0014】
このように、アンテナ及びグランドパターンを一律に膜厚を厚くして積層しておき、識別体に付与された識別情報に応じて、デジタル印刷等の可変印刷で非導電部のみに導電層を積層することで、識別情報に応じて共振ピークが発現することになるので、識別情報が多ビットからなるものであっても、生産性を低下させることなく、共振ピークの検出の有無によって識別情報が判別されることになる。
【0015】
例えば、共振ピークの周波数が互いに異なる複数のアンテナ及びそれに対応した複数の非導電部を有し、導電層が、識別体に付与された識別情報に応じて複数の非導電部のうち少なくとも1つに積層されていれば、複数のアンテナのうち、対応する非導電部に導電層が積層されているアンテナについては共振ピークが発現し、対応する非導電部に導電層が積層されていないアンテナについては共振ピークが発現せず、この共振ピークが発現するかどうかによって、識別情報を構成するビット毎の値を複数のアンテナ毎に設定し、この値を組み合わせることで、多ビットからなる識別情報を判別できるようになる。
【0016】
上記のようなアンテナとしては、グランドパターンに対向しない状態におけるQ値が30以下であれば、非導電部に導電層が積層されることで、Q値が30以上となる鋭い共振ピークを発現させることができる。
【0017】
このような識別体の製造方法としては、
導電性材料を塗布する第1の塗布法を用いて、前記ベース基材の一方の面に前記アンテナを積層するとともに、前記ベース基材の他方の面に、前記非導電部を具備する前記グランドパターンを積層する工程と、
前記第1の塗布法とは異なる第2の塗布法を用いて、前記識別体に付与された識別情報に応じて前記非導電部に前記導電層を積層する工程とを有するものが考えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アンテナ及びグランドパターンを一律に膜厚を厚くして積層しておき、識別体に付与された識別情報に応じて、デジタル印刷等の可変印刷で非導電部のみに導電層を積層することで、識別情報に応じて共振ピークが発現することになるため、識別情報が多ビットからなるものであっても、生産性を低下させることなく識別情報が判別可能な構成とすることができる。
【0019】
また、共振ピークの周波数が互いに異なる複数のアンテナ及びそれに対応した複数の非導電部を有し、導電層が、識別体に付与された識別情報に応じて複数の非導電部のうち少なくとも1つに積層されているものにおいては、複数のアンテナ毎に共振ピークが発現するかどうかによって、多ビットからなる識別情報を判別することができる。
【0020】
また、アンテナが、グランドパターンに対向しない状態におけるQ値が30以下であるものにおいては、非導電部に導電層が積層されることで、Q値が30以上となる鋭い共振ピークを発現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の識別体の第1の実施の形態における一例の構成を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。なお、
図1(c)においては、非導電部31とアンテナ10との位置関係を明確にするためにアンテナ10を破線で示している。
【0024】
本構成例は
図1に示すように、ベース基材20の表面に導電性のアンテナ10が積層されるとともに、ベース基材20の裏面にアンテナ10と対向してグランドパターン30が積層され、それにより、アンテナ10とグランドパターン30とがベース基材20を介して対向配置されて構成されたIDタグ1aである。
【0025】
アンテナ10は、ベース基材20の表面に導電性材料が塗布されることで構成され、長方形の形状であり、グランドパターン30と対向することで、アンテナ10の形状に応じた周波数にて共振ピークを発現する。なお、グランドパターン30に対向した場合に共振ピークが発現するためには、アンテナ10単体、すなわち、アンテナ10がグランドパターン30に対向していない状態におけるQ値が30以下、好ましくは20以下であるか、あるいは、アンテナ単体では共振ピークが発現しないものである必要がある。これは、アンテナ単体のQ値が30を超えるものにおいては、グランドパターンと対向した場合、共振ピークが発現しなくなる一方、アンテナ単体のQ値が30以下のものにおいては、グランドパターンと対向した場合、Q値が30以上となる鋭い共振ピークが発現するためである。なお、Q値とは、共振ピークでの周波数をω
0とし、その共振ピークよりも低周波側にて振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数をω
1とし、共振ピークよりも高周波側にて振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数をω
2とした場合、Q=ω
0/(ω
2−ω
1)で表される値である。
【0026】
グランドパターン30は、ベース基材20の表面に導電性材料が塗布されることで構成され、アンテナ10よりも大きく、平面視にてアンテナ10を覆う外形を有している。グランドパターン30は、アンテナ10に対向する領域に、導電性材料が塗布されていない非導電部31を有している。この非導電部31は、アンテナ10の一部に対向するようにグランドパターン30が孔状にくり抜かれた形状を有しており、それにより、アンテナ10が平面視にて非導電部31を覆う形状を有するものとなっている。
【0027】
ベース基材10は、200〜300μm程度の厚みを有する絶縁性材料からなる。絶縁性材料としては、樹脂フィルム等が考えられるが、誘電正接が小さなものが好ましい。
【0028】
図2は、本発明の識別体の第1の実施の形態における他の例の構成を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。なお、
図2(c)においては、導電パターン40とアンテナ10との位置関係を明確にするためにアンテナ10を破線で示している。
【0029】
本構成例は
図2に示すように、
図1に示したIDタグ1aに対して、非導電部31に導電層となる導電パターン40が非導電部31の全てが埋まるように積層された点が異なるIDタグ1bである。
【0030】
図3は、
図1及び
図2に示したIDタグ1a,1bの周波数特性を示す図である。
【0031】
図1に示したIDタグ1aにおいては、ベース基材20の表面にアンテナ10が積層されているとともに、ベース基材20の裏面にグランドパターン30が積層されているものの、アンテナ10の一部に対向する領域に、グランドパターン30が孔状にくり抜かれた非導電部31が配置されていることにより、
図3(a)に示すように共振ピークが検出されない。
【0032】
一方、
図2に示したIDタグ1bにおいては、ベース基材20の表面にアンテナ10が積層されているとともに、ベース基材20の裏面においては非導電部31に導電パターン40が積層されていることでアンテナ10がその全面にてグランドパターン30及び導電パターン40からなる導電領域と対向していることにより、
図3(b)に示すように、8.4GHz近傍にて共振ピークが検出される。
【0033】
そこで、共振ピークが検出された場合を“1”とし、共振ピークが検出されない場合を“0”とすることで、識別情報を表現することができる。すなわち、
図1に示したIDタグ1aにおいては、識別情報として“0”を付与し、非導電部31に導電パターン40を積層しないことで共振ピークが検出されずに、識別情報“0”が判別され、
図2に示したIDタグ1bにおいては、識別情報として“1”を付与し、非導電部31に導電パターン40を積層することで共振ピークが検出されて、識別情報“1”が判別されることになる。
【0034】
上記のように構成されたIDタグ1a,1bを作製する場合は、まず、ベース基材20に、IDタグ1a,1bに付与された識別情報“0”,“1”に拘らずに一律にアンテナ10及びグランドパターン30を第1の塗布法であるアナログ印刷で例えば3μmの膜厚に積層する。この際、アンテナ10及びグランドパターン30をアナログ印刷で積層することで、アンテナ10及びグランドパターン30の膜厚を厚くすることができる。なお、ベース基材20に厚い膜厚で積層されたアンテナ10及びグランドパターン30は、識別情報“0”,“1”に拘らずにIDタグ1a,1bにて共通なものであるため、チップレスRFIDマスターパターンと称する。
【0035】
次に、焼成を行い、チップレスRFIDマスターパターンがベース基材20に積層されてなるチップレスRFID前駆体を作製する。
図1に示したIDタグ1a、すなわち、識別情報“0”が付与されたIDタグ1aは、上述したチップレスRFIDマスターパターンがベース基材20に積層されて構成されたチップレスRFID前駆体からなる。すなわち、チップレスRFID前駆体は、識別情報として“0”が付与されたIDタグの最終形態となるものでもある。
【0036】
その後、IDタグ1a,1bのうち、識別情報“1”が付与されたIDタグ1bのみについて、非導電部31に、導電パターン40を第2の塗布法となるデジタル印刷で例えば100nmの膜厚に積層する。この際、導電パターン40を、実物の版を必要としないデジタル印刷等の可変印刷で積層することで、導電パターン40の膜厚は薄くなるものの、識別情報“1”が付与されたIDタグ1bのみに個別に積層することができる。
【0037】
このようにして製造されたIDタグ1bにおいては、導電パターン40がデジタル印刷で積層されることで膜厚が薄いものの、共振ピークを発現させるための主な要素となるアンテナ10及びグランドパターン30がそれぞれアナログ印刷でその膜厚が厚くなるように積層されていることで、
図3(b)に示したように、8.4GHz近傍にて共振ピークが検出されることになる。
【0038】
上述したように本形態においては、ベース基材20にアンテナ10及びグランドパターン30を一律にアナログ印刷で膜厚を厚くして積層しておき、IDタグ1a,1bに付与された識別情報“0”,“1”に応じてデジタル印刷等の可変印刷で非導電部31のみに導電パターン40を個別に積層することで、識別情報“0”,“1”に応じて共振ピークが発現することになるので、非導電部31に導電パターン40が積層された場合に、アンテナ10及びグランドパターン30の膜厚が厚いことで反射強度が確保されて共振ピークが確実に発現するとともに、識別情報“0”,“1”に応じて共振ピークが発現するかどうかをデジタル印刷等の可変印刷による導電パターン40の積層の有無によって制御することで、識別情報が多ビットからなるものであっても、生産性を低下させることがなくなる。
【0039】
以下に、
図1及び
図2に示したIDタグ1a,1bの応用形態について説明する。
【0040】
図4は、
図1及び
図2に示したIDタグ1a,1bの応用形態の一例を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。
【0041】
本例における識別体は
図4に示すように、例えば300μmの厚みを有するポリプロピレン(PP)系合成紙からなるベース基材120の表面に、5つのアンテナ110a〜110eが積層されているとともに、ベース基材120の裏面に、アンテナ110a〜110eに対応する非導電部131a〜131eを有するグランドパターン130が積層されてなるIDタグ101aである。なお、アンテナ110a〜110e及びグランドパターン130は、例えば、銀インクを用いたスクリーン印刷によって、3μmの厚さで抵抗率6μΩcmとなるように積層されている。
【0042】
アンテナ110aは、ベース基材120を介してグランドパターン130と対向することで7.5GHz近傍にて共振ピークが発現し、アンテナ110bは、ベース基材120を介してグランドパターン130と対向することで8.0GHz近傍にて共振ピークが発現し、アンテナ110cは、ベース基材120を介してグランドパターン130と対向することで8.5GHz近傍にて共振ピークが発現し、アンテナ110dは、ベース基材120を介してグランドパターン130と対向することで9.0GHz近傍にて共振ピークが発現し、アンテナ110eは、ベース基材120を介してグランドパターン130と対向することで9.5GHz近傍にて共振ピークが発現するものである。
【0043】
図5は、
図1及び
図2に示したIDタグ1a,1bの応用形態の他の例を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。
【0044】
本例における識別体は
図5に示すように、
図4に示したものに対して、非導電部131a〜131eのうち2つの非導電部131c,131eのみに導電層となる導電パターン140c,140eが、例えば銀ナノインクを用いたインクジェット印刷によって積層された点が異なるIDタグ101bである。なお、導電パターン140c,140eを構成する材料は、グランドパターン130を構成する材料と異なるものであればよい。具体的には、グランドパターン130と異なる物質、例えば金や銅、アルミニウム等でもよいし、グランドパターン130と同じ物質であっても粒径の異なるものであればよい。また、含有される樹脂、例えばビニール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が異なるものであってもよい。導電パターン140c,140eは、上記の材料によって積層された後、焼成されることで、100nμmの厚さで抵抗率6μΩcmのものとなる。
【0045】
図6は、
図4及び
図5に示したIDタグ101a,101bの周波数特性を示す図である。
【0046】
図4に示したIDタグ101aにおいては、ベース基材120の表面に共振ピークが発現する周波数が互いに異なる5つのアンテナ110a〜110eが積層されているとともに、ベース基材120の裏面にグランドパターン130が積層されているものの、アンテナ110a〜110eの一部に対向する領域にそれぞれ非導電部131a〜131eが配置されていることにより、
図6(a)に示すように共振ピークが検出されない。
【0047】
一方、
図5に示したIDタグ101bにおいては、ベース基材120の表面に共振ピークが発現する周波数が互いに異なる5つのアンテナ110a〜110eが積層されているとともに、ベース基材120の裏面においては、非導電部131a〜131eのうちアンテナ110c,110eに対応する非導電部131c,131eに導電パターン140c,140eが積層されていることでアンテナ110c,110eがその全面にてグランドパターン130及び導電パターン140c,140eからなる導電領域と対向していることにより、
図6(b)の実線で示すように、8.5GHz近傍と9.5GHz近傍にて共振ピークが検出される。なお、非導電部131a〜131eの全てに導電パターンが積層された場合は、
図6(b)の破線で示すように、アンテナ110a〜110eの全てについて共振ピークが検出されることになる。
【0048】
図7は、
図5に示したIDタグ101bに付与されたIDを判別するID判別システムの一例を示す図である。
【0049】
本例におけるID判別システムは
図7に示すように、
図5に示したIDタグ101bと、IDタグ101bに付与されたIDを認識するリーダ50とから構成され、リーダ50は、送信アンテナ51aと、受信アンテナ51bと、送信部52と、受信部53と、処理部54と、制御部55とを有する。
【0050】
送信部52は、アンテナ110a〜110eの共振ピークの周波数を含む電磁波を生成し、送信アンテナ51aを介して照射する。
【0051】
受信部53は、送信部52から送信アンテナ51aを介して照射された電磁波に対するIDタグ101bからの反射波を受信アンテナ51bを介して受信し、反射波の受信電力のレベルを検知する。
【0052】
処理部54は、受信部53にて検知された受信電力のレベルによって、IDタグ101bにおける共振ピークを検出し、アンテナ110a〜110eの共振ピークの周波数のうち、共振ピークが検出された周波数についての個別IDを“1”とし、共振ピークが検出されなかった周波数についての個別IDを“0”とし、これら“1”と“0”とを周波数の順序に並べることで、IDタグ101bに付与されたIDを判別する。
【0053】
制御部55は、送信部52における電磁波の照射、及び処理部54における各処理を制御する。
【0054】
上記のように構成されたリーダ50を用いて、IDタグ101bに付与されたIDを判別する場合は、送信部52において、アンテナ110a〜110eの共振ピークの7.5GHz〜9.5GHzを含む周波数帯をスイープしながら当該周波数帯の電磁波をIDタグ101bに対して送信アンテナ51aを介して照射する。
【0055】
すると、IDタグ101bからの反射波が、受信アンテナ51bを介して受信部53にて受信されて反射波の受信電力のレベルが検知され、処理部54において、受信部53にて検知された受信電力のレベルによって共振ピークが検出される。
図5に示したIDタグ101bにおいては、上述したように、非導電部131a〜131eのうちアンテナ110c,110eに対応する非導電部131c,131eに導電パターン140c,140eが積層されていることでアンテナ110c,110eがその全面にてグランドパターン130及び導電パターン140c,140eからなる導電領域と対向していることにより、受信部53にて受信された反射波の受信電力は、8.5GHz及び9.5GHzのそれぞれの近傍にて共振ピークを有するものとなる。
【0056】
そして、アンテナ110a〜110eの共振ピークの周波数が0.5GHzずつの等間隔であることから、処理部54において、0.5GHzの間隔で、共振ピークが検出された周波数についての個別IDを“1”とし、共振ピークが検出されなかった周波数についての個別IDを“0”とし、これら2値情報となる“1”と“0”とを、例えば周波数の低い順序に並べることで、IDタグ101bに付与されたIDが判別される。
図5に示したIDタグ101bおいては、上述したように、8.5GHz及び9.5GHzのそれぞれにて共振ピークが検出されるため、個別ID“0”,“0”,“1”,“0”,“1”がこの順序に並べられてなるID“00101”が判別される。
【0057】
このように、複数のアンテナ110a〜110e及びこれに対応した複数の非導電部131a〜131eを有する構成において、非導電部131a〜131eのうち少なくとも1つに導電パターンを積層しておくことで、複数のアンテナ110a〜110eのうち、対応する非導電部131a〜131eに導電パターンが積層されているアンテナについては共振ピークが発現し、対応する非導電部に導電パターンが積層されていないアンテナについては共振ピークが発現せず、この共振ピークが発現するかどうかによって、識別情報を構成するビット毎の値となる“1”及び“0”を複数のアンテナ毎に設定し、この値を組み合わせることで、多ビットからなる識別情報を判別できるようになる。
【0058】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の識別体の第2の実施の形態における一例の構成を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。なお、
図8(c)においては、非導電部231とアンテナ210との位置関係を明確にするためにアンテナ210を破線で示している。
【0059】
本構成例は
図8に示すように、
図1に示したIDタグ1aに対して、非導電部231の形状が異なるIDタグ201aである。本構成例における非導電部231は、アンテナ210に対向しない領域まで存在している。
【0060】
図9は、本発明の識別体の第2の実施の形態における他の例の構成を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。なお、
図9(c)においては、導電パターン240とアンテナ210との位置関係を明確にするためにアンテナ210を破線で示している。
【0061】
本構成例は
図9に示すように、
図8に示したIDタグ201aに対して、非導電部231の一部のみに、導電層となる導電パターン240がアンテナ210に対向して積層された点が異なるIDタグ201bである。
【0062】
図8及び
図9に示したIDタグ201a,201bにおいても、
図1及び
図2に示したIDタグ1a,1bと同様に、
図8に示したIDタグ201aにおいては、ベース基材220の表面にアンテナ210が積層されているとともに、ベース基材220の裏面にグランドパターン230が積層されているものの、アンテナ210の一部に対向する領域に非導電部231が配置されていることにより共振ピークが検出されず、
図9に示したIDタグ201bにおいては、ベース基材220の表面にアンテナ210が積層されているとともに、ベース基材220の裏面においては非導電部231においてアンテナ210に対向して導電パターン240が積層されていることでアンテナ210がその全面にてグランドパターン230及び導電パターン240からなる導電領域と対向していることにより共振ピークが検出されることになる。そして、共振ピークが検出された場合は、識別情報が“1”と判別され、共振ピークが検出されない場合は、識別情報が“0”と判別されることになる。
【0063】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の識別体の第3の実施の形態を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。なお、
図10(c)においては、非導電部331及び導電パターン340とアンテナ310との位置関係を明確にするためにアンテナ310を破線で示している。
【0064】
本構成例は
図10に示すように、
図9に示したIDタグ201bに対して、導電パターン340の配置が異なるIDタグ301である。本構成例における導電パターン340は、非導電部331においてアンテナ310の一部のみに対向している。すなわち、アンテナ310は、グランドパターン330にも導電パターン340にも対向しない領域を有している。
【0065】
図11は、
図10に示したIDタグ301の周波数特性を示す図である。
【0066】
図10に示したIDタグ301においては、
図2や
図9に示したIDタグ1b,201bと同様に、ベース基材320の表面にはアンテナ310が積層されており、また、ベース基材320の裏面においては、非導電部331を有するグランドパターン330が積層されているとともに、非導電部331に導電パターン340が積層されていることにより、
図11に示すように、その周波数特性は共振ピークを有するものとなっている。ところが、IDタグ301は、
図2や
図9に示したIDタグ1b,201bとは異なり、アンテナ310が、グランドパターン330にも導電パターン340にも対向しない領域を有しているため、
図11に示すように、
図8に示した周波数特性に対して、共振ピークが発現する周波数が低周波数側にシフトしている。
【0067】
このように、本形態のIDタグ301においても、共振ピークが発現するため、非導電部331にデジタル印刷等の可変印刷で導電パターン340を積層することで、識別情報“1”を判別できるようになるが、アンテナ310がグランドパターン330にも導電パターン340にも対向しない領域を有することで、共振ピークが発現する周波数がシフトするため、アンテナ310と導電パターン340との重なり量を調整することで、共振ピークが発現する周波数を調整することができる。
【0068】
(第4の実施の形態)
図12は、本発明の識別体の第4の実施の形態における一例の構成を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。なお、
図12(c)においては、非導電部431とアンテナ410との位置関係を明確にするためにアンテナ410を破線で示している。
【0069】
本構成例は
図12に示すように、
図1に示したIDタグ1aに対して、非導電部231の形状が異なるIDタグ401aである。本構成例における非導電部431は、グランドパターン430が孔状にくり抜かれた形状となっているのではなく、その端辺からスリット状にくり抜かれた形状となっている。
【0070】
図13は、本発明の識別体の第4の実施の形態における他の例の構成を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面の構成を示す図である。なお、
図13(c)においては、導電パターン440とアンテナ410との位置関係を明確にするためにアンテナ410を破線で示している。
【0071】
本構成例は
図13に示すように、
図12に示したIDタグ401aに対して、非導電部431の一部のみに、導電層となる導電パターン440がアンテナ410に対向して積層された点が異なるIDタグ401bである。
【0072】
図12及び
図13に示したIDタグ401a,401bにおいても、
図1及び
図2に示したIDタグ201a,201bと同様に、
図12に示したIDタグ401aにおいては、ベース基材420の表面にアンテナ410が積層されているとともに、ベース基材420の裏面にグランドパターン430が積層されているものの、アンテナ410の一部に対向する領域に非導電部431が配置されていることにより共振ピークが検出されず、
図13に示したIDタグ401bにおいては、ベース基材420の表面にアンテナ410が積層されているとともに、ベース基材420の裏面においては非導電部431においてアンテナ410に対向して導電パターン440が積層されていることでアンテナ410がその全面にてグランドパターン430及び導電パターン440からなる導電領域と対向していることにより共振ピークが検出されることになる。そして、共振ピークが検出された場合は、識別情報が“1”と判別され、共振ピークが検出されない場合は、識別情報が“0”と判別されることになる。