(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図24に示すような等速自在継手の内側継手部材1を製造(成形)する装置としては、特許文献1等に記載の鍛造金型装置が知られている。内側継手部材1は、軸心孔2を有する円盤形状体からなり、その外径面に、溝底断面形状が曲線状のトラック溝3を周方向に沿って所定ピッチで形成したものである。この装置は、
図25と
図26に示すように、複数の分割ダイス5を円周方向に並べたダイス列6と、このダイス列6の内側に挿入された素材W1を軸方向に圧縮する上下一対のパンチ7,8等を備えたものである。なお、ダイス列6は、下方のパンチ8が付設される下型(図示省略)に配設され、上方パンチ7は上型(図示省略)に付設されている。
【0003】
分割ダイス5は、一対の側面5a、5aが装置外径側から装置内径側に向かって接近するテーパ面とされた平面視三角形状のブロック体からなり、
図25および
図26に示すように、8個が周方向に沿って配設されることによって、ダイス列6を形成する。そして、各分割ダイスの内径部には、トラック溝成形型面5bおよび外径面成形型面5cが設けられ、弾性機構によって、常時外径方向へ付勢されている。
【0004】
このため、自由状態では、
図25や
図26に示すように、各分割ダイス5は、外径方向にスライドした状態となって、周方向に隣り合う分割ダイス5間に隙間が設けられた状態となっている。従って、ダイス列6の内径側には、投入する素材(ワーク)W1よりも大きいスペースが形成される。
【0005】
このように設定された鍛造金型装置では、ダイス列6を、各分割ダイス5を外径方向にスライドさせた、
図25と
図26に示すような開状態として、このダイス列6の内径側に設けられたスペースに素材W1を投入する。この場合、下パンチ8を上昇させておいて、この下パンチ8にて素材W1を受ける。
【0006】
この状態で、上型を下降させる。この下降によって、ダイス列6の分割ダイス5が内径方向へ移動する。その後、上パンチ7の下降及び下パンチ8の上昇を行って、上パンチ7にて素材W1の上面を押圧するとともに、下パンチ8にて素材W1の下面を押圧する。すなわち、上パンチ7と下パンチ8にて素材W1を上下から圧縮する。これによって、素材が上下パンチ7,8で囲まれる空間内で塑性変形して鍛造成形が終了する。すなわち、鍛造済素材(図示省略)が形成される。その後は、この鍛造金型装置を開状態(上下型を分離状態)として、下パンチ8をノックアウトピンとして鍛造済素材を取り出すことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、溝底縦断面形状がアンダーカット形状(溝底縦断面形状が直線部と曲線部とを有するもの)を持った曲線状のトラック溝を有し、且つトラック溝が内輪軸方向に対し傾斜角度を有する等速自在継手の内側継手部材を成形する場合、上記従来技術にて成形を行うが製品形状の特性から素材の比(全高/径)が1.1と小さくなる。
【0009】
また、分割ダイス5は、アンダーカット形状である鍛造済素材が排出方向へ干渉しないように、十分な隙間を設けるため、成形時以外は弾性機構(ばね部材)により拡径している。そこに素材W1を投入した場合、分割ダイスと素材W1の隙間が大きく不安定な状態となる可能性が高い。結果、
図25(a)(b)に示すように挿入不良(この場合、素材W1の軸線WLが上下パンチ7、8の軸線Lに対して傾斜する状態)になったり、
図26(a)(b)に示すように、横倒れ(素材W1の軸線WLが上下パンチ7、8の軸線Lに対して直交する状態)等が発生する。このような挿入不良や横倒れ等が発生すれば、成形不可能(金型破損)となる。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、素材投入時に、素材(ワーク)が挿入不良や横倒れ等が発生することなく、高精度の鍛造成形を行うことができる鍛造金型装置および鍛造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の鍛造金型装置は、継手軸線に対して傾斜するトラック溝を有する等速自在継手の内側継手部材を製造するための鍛造金型装置であって、複数の分割ダイスを周方向に沿って配設されてなるダイス列と、ダイス列の各ダイスを径方向に沿って往復動させる往復動機構と、ダイス列の内側に投入された素材を軸方向に圧縮する上下一対のパンチとを備え、前記往復動機構を制御して、ダイス列の各ダイスを外径方向に移動させて周方向に沿って隣り合うダイス間に隙間を設ける開状態と、ダイス列の各ダイスを内径方向に移動させて周方向に沿って隣り合うダイスを密着させる閉状態との切り換えを所望のタイミングで行わせる制御機構を設け、前記制御機構は、少なくとも素材投入時に、ダイス列の各ダイスを内径方向に移動させて素材を安定姿勢に維持する閉状態とする
ものであり、前記内側継手部材は、周方向に隣り合うトラック溝の傾斜方向が反対方向に形成され、各トラック溝の溝底縦断面形状が、円弧部と直線部とを有するアンダーカット形状であるものである。
【0012】
本発明の鍛造金型装置によれば、素材投入時に、ダイス列の各ダイスを内径方向に移動させて素材を安定姿勢に維持する閉状態とするものであるので、この装置に投入された素材の挿入不良や横倒れ等の発生を有効に防止できる。
【0013】
前記往復動機構をシリンダ機構にて構成し、このシリンダ機構の動作を前記制御機構にて制御することができる。シリンダ機構として、空気圧シリンダであっても、油圧シリンダであってもよい。空気圧シリンダは、シンプルな構造なので取り扱いが簡単で、価格も安くでき、また、応答性や大きさ・重量、情報処理能力は平均的でバランスが取れたシリンダとなる。油圧シリンダは、小型の油圧ポンプでも大きな力を出すことができ、応答速度が非常に速く、コントロールもしやすいことから、超低速から高速まで幅広く利用できるシリンダである。位置決めも正確にコントロールすることができ、大出力が可能である。電動シリンダ等であってもよい。電動シリンダは、ボールネジ、リニアガイド、ACサーボモータで構成された電気駆動のシリンダであり、エアシリンダと同様に使え、ポンプが不要で電源に接続するだけの簡単な配線で使えるほか、オイルミストの飛散がない、ランニングコストが安いなどの利点がある。
【0015】
本発明の鍛造方法は、継手軸線に対して傾斜するトラック溝を有する等速自在継手の内側継手部材を製造する鍛造方法であって、複数の分割ダイスを周方向に沿って配設されてなるダイス列と、ダイス列の各ダイスを径方向に沿って往復動させる往復動機構と、ダイス列の内側に投入された素材を軸方向に圧縮する上下一対のパンチとを備えた鍛造金型装置を用い、素材をダイス列の内側に投入する素材投入工程と、上下のパンチを相対的に接近させる閉塞工程と、上下のパンチをさらに接近させて素材を圧縮する成形工程と、上下のパンチを相対的に離間させる開放工程と、成形されてなる成形品を排出する排出工程とを備え、素材投入工程と閉塞工程と成形工程とにおいては、ダイス列の各ダイスを内径方向に移動させて素材を安定姿勢とする閉状態とし、開放工程と排出工程とにおいては、ダイス列の各ダイスを外径方向に移動させた開状態とする
ものであり、前記内側継手部材は、周方向に隣り合うトラック溝の傾斜方向が反対方向に形成され、各トラック溝の溝底縦断面形状が、円弧部と直線部とを有するアンダーカット形状であるものである。
【0016】
本発明の鍛造方法によれば、素材投入工程と閉塞工程と成形工程とにおいては、ダイス列の各ダイスを内径方向に移動させて素材を安定姿勢とする閉状態としているので、この装置に投入された素材の挿入不良や横倒れ等の発生を有効に防止できる。また、開放工程と排出工程とにおいては、ダイス列の各ダイスを外径方向に移動させた開状態とするので、鍛造完成品の鍛造金型装置からの取り出しが容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、投入された素材の挿入不良や横倒れ等を有効に防止できる。このため、高精度の鍛造加工(成形)を行うことができる。また、開放工程と排出工程とにおいては、ダイス列の各ダイスを外径方向に移動させた開状態とすることができ、鍛造完成品の鍛造金型装置からの取り出しが容易であり、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の鍛造金型装置の閉塞工程前の要部拡大断面図である。
【
図2】本発明の鍛造金型装置の排出工程を示す要部拡大断面図である。
【
図4】本発明の鍛造金型装置の制御回路の簡略ブロック図である。
【
図5】
図1に示した鍛造金型装置を用いた鍛造方法の作業工程のブロック図である。
【
図6】素材投入前の鍛造金型装置の要部拡大断面図である。
【
図7】素材投入時の鍛造金型装置の要部拡大断面図である。
【
図8】上下型の接触時の鍛造金型装置の要部拡大断面図である。
【
図9】上下型の閉塞時の鍛造金型装置の要部拡大断面図である。
【
図10】成形時の鍛造金型装置の要部拡大断面図である。
【
図11】上下型開放時の鍛造金型装置の要部拡大断面図である。
【
図12】上型上昇時の鍛造金型装置の要部拡大断面図である。
【
図13】鍛造完成品の排出時の鍛造金型装置の要部拡大断面図である。
【
図16】素材に対して上下型が接触している状態のダイス列の平面図である。
【
図17】上下型の閉塞時のダイス列の平面図である。
【
図21】鍛造完成品排出時のダイス列の平面図である。
【
図22】本発明に係る鍛造金型装置で鍛造成形されてなる内側継手部材を用いた等速自在継手の縦断面図である。
【
図24】等速自在継手の内側継手部材の一部省略した斜視図である。
【
図25】従来の鍛造金型装置への素材投入時のダイス列を示し、(a)は挿入不良状態の平面図であり、(b)は挿入不良状態の断面図である。
【
図26】従来の鍛造金型装置への素材投入時のダイス列を示し、(a)は横倒れ状態の平面図であり、(b)は横倒れ状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を
図1〜
図23に基づいて説明する。
図1と
図2は、本発明に係る鍛造金型装置の要部断面図を示す。この鍛造金型装置は、
図22と
図23に示す等速自在継手141の内側継手部材143を鍛造成形するものである。
【0021】
等速自在継手141は、球状内周面146に軸方向に延びる複数のトラック溝147が形成された外側継手部材142と、球状外周面148に外側継手部材142のトラック溝147と対をなす複数のトラック溝149が形成された内側継手部材143と、外側継手部材142のトラック溝147と内側継手部材143のトラック溝149との間に介在してトルクを伝達するトルク伝達部材としての複数のボール144と、ボール144を保持する保持器145とを備える。保持器は、外側継手部材142の球状内周面146および内側継手部材143の球状外周面148にそれぞれ嵌合する球状外周面152および球状内周面153を有する。
【0022】
この等速自在継手141において、外側継手部材142のトラック溝147は、作動角0°の状態で継手中心Oを含んで継手の軸線n−nと直交する平面(継手中心平面)を境にしてその奥側および開口側を、それぞれ、継手中心Oを曲率中心とする円弧部147aおよび直線部147bとしたものである。一方、内側継手部材143のトラック溝149は、継手中心平面を境にしてその開口側および奥側を、それぞれ、継手中心Oを曲率中心とする円弧部149aおよび直線部149bとしたものである。
【0023】
そして、
図23に示すように、トラック溝147,149は、それぞれ、継手の軸線に対して周方向に傾斜すると共にその傾斜方向が周方向に隣り合うトラック溝147A,147Bおよび149A,149Bで互いに反対方向に形成されている。このため、トラック溝147Aの円弧部147aは円弧部147Aaと呼び、トラック溝147Aの直線部147bは円弧部147Abと呼び、トラック溝147Bの円弧部147aは円弧部147Baと呼び、トラック溝147Bの直線部147bは円弧部147Bbと呼びことになる。また、トラック溝149Aの円弧部149aは円弧部149Aaと呼び、トラック溝149Aの直線部149bは円弧部149Abと呼び、トラック溝149Bの円弧部149aは円弧部149Baと呼び、トラック溝149Bの直線部149bは円弧部149Bbと呼びことになる。
【0024】
外側継手部材142および内側継手部材143の対をなすトラック溝147A,149Aおよび147B,149Bの各交差部にボール144が配置されている。したがって、図示のような作動角0°の状態で両継手部材142,143が相対回転すると、トラック溝147A,149Aの間に形成されるくさび角の開く方向と、147B,149Bの間に形成されるくさび角の開く方向とが互いに反対方向となり、保持器145の周方向に隣り合うポケット部145aにボール144から相反する方向の力が作用することから、保持器145は継手中心O位置で安定する。このため、保持器145の球状外周面152と外側継手部材142の球状内周面146との接触力、および保持器145の球状内周面153と内側継手部材143の球状外周面148との接触力が抑制され、継手の作動性が向上する結果、トルク損失や発熱が抑えられ、耐久性が向上する。
【0025】
本発明の鍛造金型装置は、
図1等に示す炭素鋼等からなる円柱状の素材(ワーク)W1を、トラック溝149の仕上がり形状および球形外面を有する形状のもの、すなわち、
図24に示す形状の内側継手鍛造品143´を鍛造することになる。そして、この鍛造にて得た鍛造済素材Wは、
図10等に示すように、内径孔19が、軸方向の中間に底壁20を有する未貫通のものである。このため、この鍛造済素材Wの底部をプレス工程で打ち抜き、または旋削加工で除去し、その内径孔に雌スプラインを形成し、幅面と球面外面とを旋削又は研削等の機械加工で仕上げる。さらに、内径孔の開口縁等の細部の機械加工を行い、熱処理を施すことによって、等速自在継手の内側継手部材143を形成する。なお、内側継手鍛造品143´は、機械加工による仕上げ加工、及び熱処理を行っていない部品であり、従来の等速自在継手の内側継手部材1と同一形状品である。このため、従来の内側継手部材1を示す
図24に、本発明の鍛造金型装置で鍛造した内側継手鍛造品の符号143´を付している。
【0026】
鍛造金型装置は、
図6に示すように、上型21と、下型22と、上型21側に配設される上パンチ部材23と、下型22側に配設される下パンチ部材24と、下型22側に配設されるダイス列26等とを備える。
【0027】
上型21は、油圧シリンダ等の上型昇降駆動機構K1(
図4参照)により昇降可能とされる。また、上型21には、上パンチ部材23が上下動可能に収納される孔部27が形成され、上パンチ部材23は、油圧シリンダ等の上パンチ上下動機構U1(
図4参照)により上下動可能とされる。上パンチ部材23は、
図6〜
図13等に示すように、パンチ本体23aと、このパンチ本体23aの外周側に配設される上リングパンチ23bと、これらを受けるボス部23cとを有する。なお、孔部27の内径面には、上パンチ部材23をガイドするガイド構造28が設けられている。
【0028】
下型22は、油圧シリンダ等の下型昇降駆動機構K2(
図4参照)により昇降可能とされる。また、下型22には、下パンチ部材24が上下動可能に収納される孔部30が形成され、下パンチ部材24は、油圧シリンダ等の下パンチ上下動機構U2(
図4参照)により上下動可能とされる。下パンチ部材24は、
図1と
図2に示すように、パンチ本体24aと、このパンチ本体24aの外周側に配設されるリングパンチ24bと、これらを受けるボス部24cとを有する。なお、孔部30の内径面には、下パンチ部材24をガイドするガイド構造31が設けられている。
【0029】
下型22側に配設されるダイス列26は、
図14と
図15等に示すように、周方向に沿って配設される複数個(図例では、8個)の分割ダイス25からなる。各分割ダイス25は、一対の側面25a,25aが装置外径側から装置内径側に向かって接近するテーパ面とされた平面視三角形状のブロック体からなる。
【0030】
側面25a,25aは径方向に延びるものであって、
図14と
図15に示すように、装置中心にスライドして、周方向に隣り合う分割ダイス25の相対面する側面同士が接触乃至密接した状態となれば、ダイス列26が平面視リング形状をなすことになる。また、このダイス列26の各分割ダイスの内径部に、所定ピッチでトラック溝成形型面25bおよび外径面成形型面25cが設けられる。各分割ダイス25の外径部は、上方から下方に向かって外径方向へ拡径するテーパ面部29とされる。このテーパ面部29は、中央の第1部29aと、この第1部29aの両側の一対の第2部29b、29bと、第2部29b、29bに連設される一対の側部29c、29cとからなる。
【0031】
各分割ダイス25は、
図1と
図2等に示すように、往復動機構Mを介して径方向に沿って往復動する。往復動機構Mはシリンダ機構M1にて構成される。この場合のシリンダ機構M1は、シリンダーチューブ32と、このシリンダーチューブ32内に嵌入されるピストンロッド33と、シリンダーチューブ32内に収容されるスプリング34とを備えた単動シリンダである。
【0032】
シリンダーチューブ32には、第1室35と第2室36とが設けられる。すなわち、シリンダーチューブ32は、有底円筒体からなる本体部32aと、この本体部32aの開口に設けられる蓋部材32bとを備え、本体部32aの底壁32a1の凹部が設けられ、この凹部が前記第2室36を構成する。また、蓋部材32bと本体部32aの底壁32a1との間で前記第1室35を構成する。
【0033】
ピストンロッド33は、ピストン部33aと軸本体33bとからなり、ピストン部33aが第1室35に往復動自在に嵌入され、軸本体33bが蓋部材32bの貫通孔を介して第1室35から外部に突出する。そして、ピストン部33aと蓋部材32bとの間にスプリング34が介在されている。このため、自由状態では、
図1に示すように、ピストンロッド33がこのスプリング34の弾性力に押圧されてピストン部33aが本体部32aの底壁32a1に接触した状態となっている。
【0034】
ピストンロッド33の軸本体33bの突出端部には、分割ダイス25に連結される連結部材37が取付られている。この連結部材37は、ピストンロッド33の軸本体33bの突出端部にボルト部材40を介して取付られて軸方向に延びる第1部37aと、この第1部37aから内径方向に延びる第2部37bと、この第2部37bから軸方向(上下方向)に延びる第3部37cとからなり、第3部37cが分割ダイス25にボルト部材41を介して連結される。なお、分割ダイス25は、下型22に設けられて受け台42に受けられている。
【0035】
そして、第2室36には油圧路39が接続され、この油圧路39からこの第2室36に油圧が供給されることになる。このため、
図1に示す状態(第2室36に油圧が供給されていな状態であって、ピストン部33aが本体部32aの底壁32a1に接触している状態)では、分割ダイス25が内径方向に移動して、
図14と
図15に示すように、周方向に沿って隣り合う分割ダイス25の相対面する側面25a、25aが接触する状態のダイス列26が閉状態となっている。
【0036】
この
図1に示す状態から、第2室36に油圧を供給すれば、ピストンロッド33が
図2に示すように、外径方向へ移動することになる。このように移動すれば、連結部材37を介して連結されている分割ダイス25が外径方向に移動してダイス列26が開状態(周方向に沿って隣り合う分割ダイス25の相対面する側面25a、25a間に隙間が形成される状態、
図19〜
図21等に示す状態)となる。
【0037】
ところで、周方向に沿って複数個(この場合、8個)の分割ダイス25毎に
図3に示すようにシリンダ機構M1が接続されることになる。各シリンダ機構M1には油圧路39が接続される。この油圧路39には、油圧タンク45と、減圧制御弁46と、制御弁47と、シャトル弁48,49等が配設され、油圧回路Hが形成される。
【0038】
また、上型21には、
図6等に示すように、ダイスベース50が配置され、ダイスベース50の内側には上側プレート51が設けられている。このダイスベース50は、各分割ダイス25の外径端部が嵌合する複数の凹部52を有するものであり、この凹部52の内面に、分割ダイス25の外径部に沿うように、ダイスガイド面53が形成されている。すなわち、ダイスガイド面53がダイスベース50の軸方向の移動によって、分割ダイス25を内径方向へ押圧する面となる。
【0039】
この装置は、
図4に示すような制御機構(制御手段)55を備える。CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピューター等で構成することができる。また、制御機構55には、記憶手段としての記憶装置を備え、上下型21,22の上下動のタイミング、上下パンチ部材23,24の上下動のタイミング、油圧回路Hの制御弁47に切り換えるタイミング等は予め記憶されている。記憶手段としての記憶装置は、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)ドライブ、CD−R(Compact Disc-Recordable)ドライブ、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等からなる。なお、ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。すなわち、上下型21,22の昇降動作、上下パンチの上下動作、ダイス列の開閉動作のタイミング制御を行うことになる。
【0040】
本発明の鍛造方法は、前記鍛造金型装置を用いて、
図5に示すように、素材投入工程61と、閉塞工程62と、成形工程63と、開放工程64と、排出工程65とを備える。素材投入工程61には、鍛造金型装置への素材投入前のダイス列を閉状態とする準備工程(素材投入前(閉))と、ダイス列26を閉状態で鍛造金型装置へ素材を投入する投入工程(素材投入時(閉))とがある。また、閉塞工程62には、ダイス列26を閉状態を維持しつつ上下型21,22を素材に接触させる工程(上下型接触時(閉))と、上下型を相対的に接近させて、金型装置を閉塞状態とする工程(上下型閉塞時(閉))とがある。成形工程63は上下パンチ部材部材23、24を相互に接近させて成形する工程(成形時(閉))である。開放工程64には、上下型21,22を相互に離間させてダイス列を開状態とする工程(上下型開放時(開))と、ダイス列26を開状態のまま上型21を上昇させる工程(上型上昇時(開))とがある。排出工程65は、鍛造済素材を金型装置から排出する工程(ワーク排出時(開))である。なお、
図5の各工程の(閉)とは、ダイス列26が閉状態(シリンダ機構M1の第2室36に油圧を供給することなく、スプリング34の弾性力にてピストンロッド33を内径方向へ移動させて、各分割ダイス25を内径方向へ移動させている状態)であることを示し、
図5の各工程の(開)とは、ダイス列26が開状態(シリンダ機構M1の第2室36に油圧を供給して、スプリング34の弾性力に抗してピストンロッド33を外径方向へ移動させて、各分割ダイス25を外径方向へ移動させている状態)であることを示している。
【0041】
次に、
図5に示す工程を、
図6〜
図13、及び
図14〜
図21を用いて説明する。まず、
図6に示すように、上型21と下型22とが離間した金型装置開状態とする。この際、下パンチ部材24を下降させておく。また、シリンダ機構M1の第2室36に油圧を供給することなく、スプリング34の弾性力にてピストンロッド33を内径方向へ移動させて、各分割ダイス25を内径方向へ移動させて、分割ダイス25を内径方向に移動させる。すなわち、
図14に示すように、周方向に隣り合う分割ダイス25の側面を接触するダイス列閉状態とする。これが、準備工程(素材投入前(閉))である。
【0042】
この状態で、
図7に示すように、円柱形状の素材(ワーク)W1を、ダイス列26の内部に投入する投入工程(素材投入時(閉))を行う。このように素材W1を投入すれば、下パンチ部材24のパンチ本体24aの上面24a1で、素材W1の下面W1aが受けられ、また、素材W1の外周面W1cは、
図15に示すように、ダイス列26の内径面部にて接触している。これによって、素材W1は、その軸線が上下パンチ部材23,24の軸線に一致した正規位置に保持される。
【0043】
次に、
図8に示すように、上型21と下型22とを相対的に接近させて、上パンチ部材23のパンチ本体23aの下面23a1を素材W1の上面W1bに接触させる。すなわち、
図5に示す閉塞工程62の上下型接触時(閉)状態とする。その後、
図9に示すように、上パンチ部材23と下パンチ部材24とをさらに接近させる。これにより、素材W1の上面W1bに形成される凹部に上パンチ部材23の下部を嵌合させるとともに、素材W1の下面W1aに形成された凹部に下パンチ部材24の上部を嵌合させる工程、すなわち、
図5に示す上下型閉塞時(閉)を行う。
図8及び
図9に示す状態では、
図16及び
図17に示すように、素材W1の外周面W1cはダイス列26の内径面部にて接触している。
【0044】
次に、
図10に示すように、上パンチ部材23と下パンチ部材24とをさらに接近させて、鍛造済素材W(内径孔19が、軸方向の中間に底壁20を有する未貫通のものである)を
図18に示すように成形する。すなわち、
図5の成形時(閉)を行う。この場合、上パンチ部材23は、そのパンチ本体23aの下端部よりも上リングパンチ23bの下面23b1が上方に後退しているとともに、下パンチ部材24の上端部よりも下リングパンチ24bの下方に後退している。
【0045】
このため、上パンチ部材23のパンチ本体23aの下端部及び下パンチ部材24のパンチ本体24aの上端部にて底壁20付きの内径孔19を成形し、上パンチ部材23の上リングパンチ23bの下面23b1(
図6参照)が、鍛造済素材(鍛造済ワーク)Wの上面Wbを成形し、下パンチ部材24の下リングパンチ24bの上面24b1(
図1参照)が、鍛造済ワークWの下面Waを成形する。その後は、
図11に示すように、上下型21、22を離間させるとともに、ダイス列26の分割ダイス25を僅かに外径方向へスライドさせてダイス列26を、
図19に示すように、開状態(シリンダ機構M1の第2室36に油圧を供給して、スプリング34の弾性力に抗してピストンロッド33を外径方向へ移動させて、各分割ダイス25を外径方向へ移動させている状態)とする。すなわち、
図5に示す上下型開放時(開)とする。なお、
図19に示す開状態では、分割ダイス25をさらに外径方向へスライド可能な状態の開状態である。
【0046】
その後は、
図12に示すように、上下型21,22を離間させて上パンチ部材23を上昇させるとともに、
図20に示すように、分割ダイス25をさらに外径方向へスライドさせてダイス列26を開状態(シリンダ機構M1の第2室36に油圧を供給して、スプリング34の弾性力に抗してピストンロッド33を外径方向へ移動させて、各分割ダイス25を外径方向へ移動させている状態)とする。すなわち、
図5の上型上昇時(開)とする。つぎに、
図13に示すように、下パンチ部材24を上昇させて、鍛造済ワークWの取り出しを行う(この状態では、ダイス列26は
図21に示す状態である)。すなわち、
図5のワーク排出時(開)とする。これによって、鍛造加工が終了する。
【0047】
本発明の鍛造金型装置によれば、素材投入時に、ダイス列26の各ダイス25を内径方向に移動させて素材W1を安定姿勢に維持する閉状態とするものであるので、この装置に投入された素材W1の挿入不良や横倒れ等の発生を有効に防止できる。
【0048】
投入された素材W1の挿入不良や横倒れ等を有効に防止できる。このため、高精度の造加工(成形)を行うことができる。また、開放工程64と排出工程64とにおいては、ダイス列26の各ダイス25を外径方向に移動させた開状態とすることができ、鍛造完成品である鍛造済ワーク(鍛造済素材)Wの鍛造金型装置からの取り出しが容易であり、生産性に優れる。また、素材投入工程61と閉塞工程62と成形工程63とにおいては、ダイス列26の各ダイス25を内径方向に移動させて素材を安定姿勢とする閉状態としているので、トラック溝149が継手軸線に対して傾斜するとともに、アンダーカット形状であっても、挿入不良や横倒れ等の発生を有効に防止することができ、安定した鍛造加工(成形)を行うことができる。
【0049】
往復動機構Mをシリンダ機構M1にて構成し、このシリンダ機構M1の動作を制御機構55にて制御することができる。シリンダ機構M1として、空気圧シリンダであっても、油圧シリンダであってもよい。空気圧シリンダは、シンプルな構造なので取り扱いが簡単で、価格も安くでき、また、応答性や大きさ・重量、情報処理能力は平均的でバランスが取れたシリンダとなる。油圧シリンダは、小型の油圧ポンプでも大きな力を出すことができ、応答速度が非常に速く、コントロールもしやすいことから、超低速から高速まで幅広く利用できるシリンダである。位置決めも正確にコントロールすることができ、大出力が可能である。電動シリンダ等であってもよい。電動シリンダは、ボールネジ、リニアガイド、ACサーボモータで構成された電気駆動のシリンダであり、エアシリンダと同様に使え、ポンプが不要で電源に接続するだけの簡単な配線で使えるほか、オイルミストの飛散がない、ランニングコストが安いなどの利点がある。
【0050】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、等速自在継手として、アンダーカットフリータイプの固定式等速自在継手であったが、バーフィールドタイプの固定式等速自在継手であってもよいまた、クロスグルーブタイプの摺動式等速自在継手であってもよい。クロスグルーブタイプの等速自在継手を用いる場合、フロートタイプやノンフロートタイプであってもよく、トリポードタイプを用いる場合、シングルローラタイプであっても、ダブルローラタイプであってもよい。また、内側継手部材のトラック溝数の増減は任意であり、溝形状として、アンダーカット形状に限るものではなく、溝底が円弧部のみのものであってもよい。すなわち、ダイス列26の分割ダイス25の数の増減は任意であり、トラック溝成形型面25bおよび外径面成形型面25cの形状も任意に設定できる。
【0051】
上下型21,22を接近・離間させる場合、下型22を固定して上型21のみを上下動させても、上下型21,22の両者を上下動させても、上型21を固定して下型のみを上下動させてもよい。また、上下パンチ部材23,24を接近・離間させる場合、下パンチ部材24を固定して上パンチ部材23のみを上下動させても、上下パンチ部材23,24の両者を上下動させても、上パンチ部材23を固定して下パンチ部材24のみを上下動させてもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、素材投入工程61と閉塞工程62と成形工程63とにおいてダイス列26を閉状態とし、開放工程64と排出工程65とにおいてダイス列26を開状態としている。このように構成することが、高精度の鍛造する上で好ましい。しかしながら、制御機構(制御手段)55にて、ダイス列26の開状態と、ダイス列26の閉状態との切り換えを所望のタイミングで行わせることができるので、少なくとも、素材投入工程61において、ダイス列26を閉状態となっていればよいので、他の工程において、ダイス列26を、閉状態としたり、開状態としたりできる。