特許第6798955号(P6798955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798955
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】インテークマニホールドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20201130BHJP
   C23C 18/36 20060101ALI20201130BHJP
   F02M 35/104 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   C23C18/18
   C23C18/36
   F02M35/104 N
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-177724(P2017-177724)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-52354(P2019-52354A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591006520
【氏名又は名称】株式会社興和工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中渡瀬 明
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】天本 有希
(72)【発明者】
【氏名】松前 直樹
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−174602(JP,A)
【文献】 特開平08−170178(JP,A)
【文献】 特開平08−004609(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/068175(WO,A1)
【文献】 特開平05−311451(JP,A)
【文献】 国際公開第00/043153(WO,A1)
【文献】 特開2007−042598(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/050566(WO,A1)
【文献】 特開2008−202109(JP,A)
【文献】 特開2016−213357(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0179034(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102619732(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00 − 20/08
B22D 29/00 − 31/00
B22D 27/00 − 27/20
B22C 5/00 − 9/30
F02M 35/104
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテークマニホールドの少なくとも一部を構成するマニホールド構成部品を、鉄系の材料で鋳造する鋳造工程と、
前記鋳造工程で成形したマニホールド構成部品の表面にカチオン電着塗装を施すカチオン電着塗装工程と、
前記カチオン電着塗装工程の後、マニホールド構成部品の表面の一部を研磨することにより、前記カチオン電着塗装で形成した塗膜層を除去する研磨工程と、
前記研磨工程の後、前記マニホールド構成部品の表面にニッケル−リンめっきを施す無電解ニッケル−リンめっき工程と
を備えるインテークマニホールドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテークマニホールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鋳型内に溶融状態の金属を注入して鋳造することにより、内部に中空部を有する物体を製造する方法が開示されている。また、特許文献1には、このようにして鋳造される物体の例として、インテークマニホールドが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−174602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示するように、鋳造でインテークマニホールドを成形する場合、防錆性の向上等のために、成形したインテークマニホールドの表面にニッケルめっきを施すことが考えられる。しかしながら、鋳造で成形されたインテークマニホールドは、表面の平坦度が低い。したがって、インテークマニホールドに求められる表面平坦度を満たすようにニッケルめっきを施そうとすると、めっき層を相応に厚くする必要がある。そのため、ニッケルの消費量の増大やめっき処理の長時間化等、製造コストの増加が避けられない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のインテークマニホールドの製造方法は、インテークマニホールドの少なくとも一部を構成するマニホールド構成部品を、鉄系の材料で鋳造する鋳造工程と、前記鋳造工程で成形したマニホールド構成部品の表面にカチオン電着塗装を施すカチオン電着塗装工程と、前記カチオン電着塗装工程の後、マニホールド構成部品の表面の一部を研磨することにより、前記カチオン電着塗装で形成した塗膜層を除去する研磨工程と、前記研磨工程の後、前記マニホールド構成部品の表面にニッケル−リンめっきを施す無電解ニッケル−リンめっき工程とを備える。
【0006】
上記構成によれば、カチオン電着塗装によって形成された塗膜層や無電解ニッケル−リンめっき工程で形成しためっき層によってマニホールド構成部品の防錆性が確保される。また、ニッケル−リンめっきが施されるのは、研磨工程において塗膜層が除去されたマニホールド構成部品の表面の一部であるため、マニホールド構成部品の表面全体にニッケル−リンめっきを施す場合に比較して、ニッケルの消費量が少なくて済む。さらに、ニッケル−リンめっきは、マニホールド構成部品の表面のうち、研磨工程によって研磨されて平坦度が向上した箇所に施される。そのため、めっき層をそれほど厚くしなくとも必要な平坦度を確保することができ、ニッケルの消費量が少なくて済むとともに無電解ニッケル−リンめっき工程の処理時間の短縮化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】内燃機関の概略構成図。
図2】インテークマニホールドの分解斜視図。
図3】インテークマニホールドの製造方法の工程図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。先ず、本発明によって製造されるインテークマニホールド30と、そのインテークマニホールド30が適用される内燃機関10の構成について説明する。
【0009】
図1に示すように、内燃機関10のシリンダブロック11には、6つの気筒12が設けられている。6つの気筒12のうちの3つの気筒12は、クランクシャフト20の回転中心Cよりも一方側(図1においては左側)に並設されていて、第1バンク側の気筒12Lを構成している。また、他の3つの気筒12は、クランクシャフト20の回転中心Cよりも他方側(図1においては右側)に並設されていて、第2バンク側の気筒12Rを構成している。第1バンク側の気筒12L及び第2バンク側の気筒12Rは、クランクシャフト20側に向かうほど互いに近づくように傾斜している。すなわち、内燃機関10は、いわゆるV型6気筒の内燃機関である。なお、図1では、第1バンク側の気筒12Lを1つ、第2バンク側の気筒12Rを1つ、合計2つの気筒12を図示している。
【0010】
第1バンク側の気筒12Lの内部には、当該気筒12L内を往復動作可能にピストン13Lが配置されている。ピストン13Lは、ピストンロッド14Lを介して、クランクシャフト20(クランクピン)に連結されている。同様に、第2バンク側の気筒12Rの内部には、当該気筒12R内を往復動作可能にピストン13Rが配置されている。ピストン13Rは、ピストンロッド14Rを介して、クランクシャフト20(クランクピン)に連結されている。これら第1バンク側のピストン13L及び第2バンク側のピストン13Rが往復動作することにより、クランクシャフト20が回転中心Cを中心として回転する。
【0011】
シリンダブロック11の上部には、第1バンク側の気筒12Lに向かい合うようにして第1シリンダヘッド15Lが取り付けられている。第1シリンダヘッド15Lには、第1バンク側の各気筒12Lに吸気を供給するための吸気ポート16Lが設けられている。吸気ポート16Lは、第1バンク側の気筒12Lの数に対応して3つ設けられている。また、第1シリンダヘッド15Lには、吸気ポート16Lの気筒12L側の開口部を開閉するための吸気弁17Lが設けられている。
【0012】
第1シリンダヘッド15Lには、第1バンク側の各気筒12Lからの排気を排出するための排気ポート18Lが設けられている。排気ポート18Lは、第1バンク側の気筒12Lの数に対応して3つ設けられている。また、第1シリンダヘッド15Lには、排気ポート18Lの気筒12L側の開口部を開閉するための排気弁19Lが設けられている。
【0013】
シリンダブロック11の上部には、第2バンク側の気筒12Rに向かい合うようにして第2シリンダヘッド15Rが取り付けられている。第2シリンダヘッド15Rには、第2バンク側の各気筒12Rに吸気を供給するための吸気ポート16Rが設けられている。吸気ポート16Rは、第2バンク側の気筒12Rの数に対応して3つ設けられている。また、第2シリンダヘッド15Rには、吸気ポート16Rの気筒12R側の開口部を開閉するための吸気弁17Rが設けられている。
【0014】
第2シリンダヘッド15Rには、第2バンク側の各気筒12Rからの排気を排出するための排気ポート18Rが設けられている。排気ポート18Rは、第2バンク側の気筒12Rの数に対応して3つ設けられている。また、第2シリンダヘッド15Rには、排気ポート18Rの気筒12R側の開口部を開閉するための排気弁19Rが設けられている。
【0015】
内燃機関10における第1シリンダヘッド15Lと第2シリンダヘッド15Rとの間には、車両外部からの吸気(外気)を、第1シリンダヘッド15Lの吸気ポート16Lや第2シリンダヘッド15Rの吸気ポート16Rへと導くためのインテークマニホールド30が連結されている。
【0016】
インテークマニホールド30は、吸気の流れ方向における上流側の一部を構成する上流部31と、その上流部31の下流側に接続される第1下流部41L及び第2下流部41Rとを備えている。これら上流部31、第1下流部41L及び第2下流部41Rは、いずれも鋳鉄製である。なお、以下の説明では、図1及び図2に示すように、上流部31側を上側、第1下流部41Lや第2下流部41R側を下側として説明する。
【0017】
図2に示すように、上流部31は、扁平なブロック状の本体部32を備えている。本体部32においては、6つの上流通路33が本体部32の厚み方向に貫通している。6つの上流通路33のうちの3つの上流通路33は、本体部32の短手方向の一方側に配置されていて、第1上流通路33Lを構成している。これら第1上流通路33Lは、本体部32の長手方向に並設されている。また、他の3つの上流通路33は、本体部32の短手方向の他方側に配置されていて第2上流通路33Rを構成している。これら第2上流通路33Rは、本体部32の長手方向に並設されている。
【0018】
本体部32の厚み方向一方側(吸気流れ方向上流側)の端面には、略板状の上流側フランジ部34が接続されている。上流側フランジ部34は、本体部32の厚み方向一方側の端面の全体に亘って設けられている。また、上流側フランジ部34の一部分は、本体部32の外周面よりも外側にまで至っている。上流側フランジ部34においては、6つの開口部35が厚み方向に貫通している。各開口部35の開口形状は、本体部32における各上流通路33の通路断面形状と同一になっている。また、各開口部35の配置は、本体部32における各上流通路33の配置と同一になっている。すなわち、本体部32の各上流通路33は、上流側フランジ部34の各開口部35を介して、上流部31における吸気流れ方向の上流側に開口している。
【0019】
上流側フランジ部34においては、8つのボルト孔36が厚み方向に貫通している。各ボルト孔36は、上流側フランジ部34のうちの本体部32の外周面よりも外側の部分に位置している。すなわち、各ボルト孔36は、上流通路33内には連通していない。これらボルト孔36には、図示しないボルトが挿通され、当該ボルトによって、上流部31(インテークマニホールド30)が、さらに上流側の吸気通路、例えば吸気を一時的に貯めるためのサージタンクに連結される。
【0020】
本体部32の厚み方向他方側(吸気流れ方向下流側)の端面には、略板状の第1下流側フランジ部37L、及び略板状の第2下流側フランジ部37Rが接続されている。第1下流側フランジ部37Lは、本体部32の短手方向一方側(図2において左上側)に位置しているとともに本体部32の長手方向に延びている。また、第1下流側フランジ部37Lの一部分は、本体部32の外周面よりも外側にまで至っている。第1下流側フランジ部37Lにおいては、3つの開口部38Lが厚み方向に貫通している。各開口部38Lの開口形状は、本体部32における第1上流通路33Lの通路断面形状と同一になっている。また、各開口部38Lの配置は、本体部32における各第1上流通路33Lの配置と同一になっている。すなわち、本体部32の各第1上流通路33Lは、第1下流側フランジ部37Lの各開口部38Lを介して、上流部31における吸気流れ方向の下流側に開口している。第1下流側フランジ部37Lにおいては、4つのボルト孔39Lが厚み方向に貫通している。各ボルト孔39Lは、第1下流側フランジ部37Lのうちの本体部32の外周面よりも外側の部分に位置している。
【0021】
第2下流側フランジ部37Rは、本体部32の短手方向他方側(図2において右下側)に位置しているとともに本体部32の長手方向に延びている。また、第2下流側フランジ部37Rの一部分は、本体部32の外周面よりも外側にまで至っている。第2下流側フランジ部37Rにおいては、3つの開口部38Rが厚み方向に貫通している。各開口部38Rの開口形状は、本体部32における第2上流通路33Rの通路断面形状と同一になっている。また、各開口部38Rの配置は、本体部32における各第2上流通路33Rの配置と同一になっている。すなわち、本体部32の各第2上流通路33Rは、第2下流側フランジ部37Rの各開口部38Rを介して、上流部31における吸気流れ方向の下流側に開口している。第2下流側フランジ部37Rにおいては、4つのボルト孔39Rが厚み方向に貫通している。各ボルト孔39Rは、第2下流側フランジ部37Rのうちの本体部32の外周面よりも外側の部分に位置している。
【0022】
インテークマニホールド30の第1下流部41Lは、略四角筒状の3つの第1筒状体42Lを備えている。各第1筒状体42Lは、上流部31における3つの第1上流通路33Lの配置に合わせて並設されている。また、各第1筒状体42Lは、吸気流れ方向の下流側に向かうほど、本体部32の短手方向外側に向かうように傾斜している。
【0023】
各第1筒状体42Lの上端面には、略板状の第1上部フランジ43Lが接続されている。第1上部フランジ43Lは、3つの第1筒状体42Lの上端面を繋ぐように延びている。第1上部フランジ43Lにおいては、3つの開口部44Lが厚み方向に貫通している。各開口部44Lの開口形状は、第1筒状体42Lの通路断面形状と同一になっている。また、各開口部44Lの配置は、各第1筒状体42Lの配置と同一になっている。すなわち、第1筒状体42Lの内部空間は、第1上部フランジ43Lの開口部44Lを介して本体部32の第1上流通路33Lに連通している。また、第1上部フランジ43Lにおいては、4つのボルト孔45Lが厚み方向に貫通している。各ボルト孔45Lの位置は、上流部31における第1下流側フランジ部37Lのボルト孔39Lの位置に対応している。各ボルト孔45L及び各ボルト孔39Lに図示しないボルトが挿通されることにより、第1下流部41Lが上流部31に固定される。
【0024】
各第1筒状体42Lの下端面には、略板状の第1下部フランジ46Lが接続されている。第1下部フランジ46Lは、3つの第1筒状体42Lの下端面を繋ぐように延びている。第1下部フランジ46Lにおいては、3つの開口部47Lが厚み方向に貫通している。各開口部47Lの開口形状は、第1筒状体42Lの通路断面形状と同一になっている。また、各開口部47Lの配置は、各第1筒状体42Lの配置と同一になっている。すなわち、第1筒状体42Lの内部空間は、第1下部フランジ46Lの開口部47Lを介して第1下流部41Lの吸気下流側に開口している。また、第1下部フランジ46Lにおいては、4つのボルト孔48Lが厚み方向に貫通している。各ボルト孔48Lには、図示しないボルトが挿通され、当該ボルトにより第1下流部41Lが第1シリンダヘッド15Lに固定される。
【0025】
第1下流部41Lにおける第1上部フランジ43Lと上流部31における第1下流側フランジ部37Lとの間には、金属製の第1ガスケット51Lが介在している。第1ガスケット51Lは板状であり、平面視すると、第1下流部41Lにおける第1上部フランジ43Lの上端面と略同一の形状になっている。すなわち、第1ガスケット51Lにおいては、3つの開口部52Lが厚み方向に貫通している。各開口部52Lの開口形状及び配置は、第1上部フランジ43Lの開口部44Lの開口形状及び配置と同一になっている。また、第1ガスケット51Lにおいては、4つのボルト孔53Lが厚み方向に貫通している。ボルト孔53Lの配置は、第1上部フランジ43Lのボルト孔45Lの配置と同一になっている。このボルト孔53Lには、上流部31に第1下流部41Lを固定するための図示しないボルトが挿通されている。
【0026】
なお、図示は省略するが、第1下流部41Lにおける第1下部フランジ46Lと第1シリンダヘッド15Lとの間にも、上記第1ガスケット51Lと同様な金属製のガスケットが介在されている。
【0027】
インテークマニホールド30の第2下流部41Rは、略四角筒状の3つの第2筒状体42Rを備えている。各第2筒状体42Rは、上流部31における3つの第2上流通路33Rの配置に合わせて並設されている。また、各第2筒状体42Rは、吸気流れ方向の下流側に向かうほど、本体部32の短手方向外側に向かうように傾斜している。
【0028】
各第2筒状体42Rの上端面には、略板状の第2上部フランジ43Rが接続されている。第2上部フランジ43Rは、3つの第2筒状体42Rの上端面を繋ぐように延びている。第2上部フランジ43Rにおいては、3つの開口部44Rが厚み方向に貫通している。各開口部44Rの開口形状は、第2筒状体42Rの通路断面形状と同一になっている。また、各開口部44Rの配置は、各第2筒状体42Rの配置と同一になっている。すなわち、第2筒状体42Rの内部空間は、第2上部フランジ43Rの開口部44Rを介して本体部32の第2上流通路33Rに連通している。また、第2上部フランジ43Rにおいては、4つのボルト孔45Rが厚み方向に貫通している。各ボルト孔45Rの位置は、上流部31における第2下流側フランジ部37Rのボルト孔39Rの位置に対応している。各ボルト孔45R及び各ボルト孔39Rに図示しないボルトが挿通されることにより、第2下流部41Rが上流部31に固定されている。
【0029】
各第2筒状体42Rの下端面には、略板状の第2下部フランジ46Rが接続されている。第2下部フランジ46Rは、3つの第2筒状体42Rの下端面を繋ぐように延びている。第2下部フランジ46Rにおいては、3つの開口部47Rが厚み方向に貫通している。各開口部47Rの開口形状は、第2筒状体42Rの通路断面形状と同一になっている。また、各開口部47Rの配置は、各第2筒状体42Rの配置と同一になっている。すなわち、第2筒状体42Rの内部空間は、第2下部フランジ46Rの開口部47Rを介して第2下流部41Rの吸気下流側に開口している。また、第2下部フランジ46Rにおいては、4つのボルト孔48Rが厚み方向に貫通している。各ボルト孔48Rには、図示しないボルトが挿通され、当該ボルトにより第2下流部41Rが第2シリンダヘッド15Rに固定される。
【0030】
第2下流部41Rにおける第2上部フランジ43Rと上流部31における第2下流側フランジ部37Rとの間には、金属製の第2ガスケット51Rが介在している。第2ガスケット51Rは板状であり、平面視すると、第2下流部41Rにおける第2上部フランジ43Rの上端面と略同一の形状になっている。すなわち、第2ガスケット51Rにおいては、3つの開口部52Rが厚み方向に貫通している。各開口部52Rの開口形状及び配置は、第2上部フランジ43Rの開口部44Rの開口形状及び配置と同一になっている。また、第2ガスケット51Rにおいては、4つのボルト孔53Rが厚み方向に貫通している。ボルト孔53Rの配置は、第2上部フランジ43Rのボルト孔45Rの配置と同一になっている。このボルト孔53Rには、上流部31に第2下流部41Rを固定するための図示しないボルトが挿通されている。
【0031】
なお、図示は省略するが、第2下流部41Rにおける第2下部フランジ46Rと第2シリンダヘッド15Rとの間にも、上記第2ガスケット51Rと同様な金属製のガスケットが介在されている。
【0032】
上記のように構成されたインテークマニホールド30の上流部31の表面のうち、他の部材と接合される部分(例えばガスケット等が介在される部分)には、ニッケル−リンめっきが施されてめっき層が形成されている。具体的には、上流側フランジ部34の上端面、第1下流側フランジ部37Lの下端面、第2下流側フランジ部37Rの下端面には、ニッケル−リンめっきが施されてめっき層が形成されている。また、上流部31の表面のうち、上流側フランジ部34のボルト孔36の内周面、第1下流側フランジ部37Lのボルト孔39Lの内周面、第2下流側フランジ部37Rのボルト孔39Rの内周面にも、ニッケル−リンめっきが施されてめっき層が形成されている。そして、上流部31の表面のうちのニッケル−リンめっきが施されていない箇所には、エポキシ樹脂による塗膜層が形成されている。
【0033】
インテークマニホールド30の第1下流部41Lの表面のうち、他の部材と接合される部分(例えばガスケット等が介在される部分)には、ニッケル−リンめっきが施されてめっき層が形成されている。具体的には、第1上部フランジ43Lの上端面、第1下部フランジ46Lの下端面には、ニッケル−リンめっきが施されてめっき層が形成されている。また、第1下流部41Lの表面のうち、第1上部フランジ43Lのボルト孔45Lの内周面、第1下部フランジ46Lのボルト孔48Lの内周面にも、ニッケル−リンめっきが施されてめっき層が形成されている。そして、第1下流部41Lの表面のうちのニッケル−リンめっきが施されていない箇所には、エポキシ樹脂による塗膜層が形成されている。
【0034】
インテークマニホールド30の第2下流部41Rの表面のうち、他の部材と接合される部分(例えばガスケット等が介在される部分)には、ニッケル−リンめっきが施されてめっき層が形成されている。具体的には、第2上部フランジ43Rの上端面、第2下部フランジ46Rの下端面には、ニッケル−リンめっきが施されてめっき層が形成されている。また、第2下流部41Rの表面のうち、第2上部フランジ43Rのボルト孔45Rの内周面、第2下部フランジ46Rのボルト孔48Rの内周面にも、ニッケル−リンめっきが施されてめっき層が形成されている。そして、第2下流部41Rの表面のうちのニッケル−リンめっきが施されていない箇所には、エポキシ樹脂による塗膜層が形成されている。
【0035】
なお、この実施形態では、上流部31、第1下流部41L、及び第2下流部41Rは、いずれもインテークマニホールド30の一部を構成している。すなわち、上流部31、第1下流部41L、及び第2下流部41Rは、いずれもマニホールド構成部品である。
【0036】
次に、インテークマニホールド30を構成する上流部31、第1下流部41L、及び第2下流部41Rの製造方法を、第1下流部41Lを例として説明する。
図3に示すように、第1下流部41Lを製造するにあたっては、先ず、ステップS1の鋳造工程を行う。この鋳造工程では、所定形状の型内に溶融状態の鋳鉄を注入して、上述した第1下流部41Lの形状とほぼ同じ形状の成形物を鋳造する。すなわち、この実施形態では、第1下流部41Lにおける第1筒状体42L、第1上部フランジ43L、及び第2上部フランジ43Rが一体的に成形される。その後、成形物(第1下流部41L)表面の「ばり」を除去するとともに表面に付着した異物を純水等による洗浄で除去する。
【0037】
次に、ステップS2のカチオン電着塗装工程を行う。このカチオン電着塗装工程では、水溶性の塗料であるエポキシ塗料が溶けた溶液内に、鋳造工程後の成形物(第1下流部41L)を浸漬する。そして、成形物(第1下流部41L)を陰極、他の電極を正極として通電を行う。これにより、陰極である成形物(第1下流部41L)の表面においてエポキシ塗料のポリマー化が進行し、不溶性のエポキシ樹脂の塗膜層が形成される。その後、純水等で洗浄して、未反応のエポキシ塗料等を除去する。
【0038】
カチオン電着塗装工程の後、ステップS3の焼付工程を実行する。この焼付工程では、塗装膜を形成した直後の成形物(第1下流部41L)を、例えば、数十分間、120〜180℃雰囲気に晒すことにより、塗膜層を定着させる。
【0039】
焼付工程の後、ステップS4の研磨工程を行う。研磨工程では、成形物(第1下流部41L)の表面のうち、第1上部フランジ43Lの上端面、第1下部フランジ46Lの下端面を研磨する。同様に、研磨工程では、第1下流部41Lの表面のうち、第1上部フランジ43Lのボルト孔45Lの内周面、第1下部フランジ46Lのボルト孔48Lの内周面を研磨する。これにより、研磨された部分においては、ステップS3のカチオン電着塗装工程で形成された塗膜層が除去されて、表面に鋳鉄が露出する。また、この鋳鉄が露出している表面は、研磨されている分だけ、ステップS1の鋳造工程直後よりも、平坦度が高くなっている。その後、純水等で洗浄して、研磨に伴って発生した研磨粉等を除去する。
【0040】
研磨工程の次には、ステップS5の無電解ニッケル−リンめっき工程を行う。この無電解ニッケル−リンめっき工程では、硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸、プロピオン酸、クエン酸ナトリウム等の溶液であるめっき液内に、研磨工程後の成形物(第1下流部41L)を浸漬する。そして、めっき液の温度を90℃程度に維持することで、成形物(第1下流部41L)の表面にニッケルとリンとの合金からなるめっき層を形成する。
【0041】
なお、このニッケル及びリンの析出反応は、主として、次亜リン酸の還元作用により進行する。そして、次亜リン酸は、鉄等を触媒として還元作用を示す。したがって、この実施形態では、研磨工程において鋳鉄が露出した第1上部フランジ43Lの上端面、第1下部フランジ46Lの下端面、ボルト孔45Lの内周面、及びボルト孔48Lの内周面にめっきが施される。その一方で、成形物(第1下流部41L)の表面のうち研磨工程で研磨されていない箇所は、エポキシ樹脂の塗膜層で覆われていて鋳鉄が露出していない。したがって、次亜リン酸を還元剤とするニッケル及びリンの析出反応が進まず、めっき層がほとんど形成されない。
【0042】
無電解ニッケル−リンめっき工程の後、ステップS6の乾燥工程を実行する。この乾燥工程では、めっき液から取り出した成形物(第1下流部41L)を約100℃の雰囲気下で乾燥させ、最終的な第1下流部41Lを得る。
【0043】
上記の製造方法によって製造された第1下流部41Lの効果について説明する。
上記の製造方法で製造された第1下流部41Lの表面は、カチオン電着塗装工程によって形成される塗膜層や無電解ニッケル−リンめっき工程で形成されるめっき層によって被膜されている。したがって、鋳造工程直後の成形物に比較して、防錆性や耐腐食性等が高くなっている。
【0044】
ところで、カチオン電着塗装工程で形成される塗膜層は比較的に低コストで形成できる反面、無電解ニッケル−リンめっき工程で形成されるめっき層に比較して、剥がれ等が生じやすい。そのため、例えば、第1下流部41Lの第1上部フランジ43Lと第1ガスケット51Lとの間に剥がれた塗膜層が入り込むと、第1ガスケット51Lによるシール性が低下するおそれがある。また、カチオン電着塗装工程で形成される塗膜層は、表面の平坦度が比較的に低く、これを一定以上の平坦度で形成することが難しい。したがって、仮に、第1下流部41Lの第1上部フランジ43Lの上端面に塗膜層が形成されている場合、これらの表面の平坦度の低さに起因して十分なシール性を得られないおそれがある。
【0045】
この点、上記実施形態では、第1下流部41Lの第1上部フランジ43Lの上端面には、無電解ニッケル−リンめっきが施されている。この無電解ニッケル−リンめっきにより得られるめっき層は、カチオン電着塗装による塗膜層に比較して、耐摩耗性に優れているとともに表面の平坦度を高くしやすい。したがって、上述したような剥がれや平坦度の低さに起因するシール性の低下は生じにくい。
【0046】
さらに、第1下流部41Lの表面のうち、ボルト孔45Lの内周面及びボルト孔48Lの内周面も、ニッケル−リンめっきが施されている。したがって、ボルトをこれらボルト孔45L、48Lに挿通する際に、ボルトとの摩擦によりめっき層が剥がれ落ちにくく、鋳鉄が表面に露出しにくい。したがって、第1下流部41Lにおいて鋳鉄が露出している部分を起点として錆が進行するといったことは生じにくい。
【0047】
なお、上記実施形態では、無電解ニッケル−リンめっき工程は約90℃で行われる。また、無電解ニッケル−リンめっき工程の後の乾燥工程で、比較的低温な約100℃での乾燥を行っている。これらの処理温度は、いずれも無電解ニッケル−リンめっき工程以前のカチオン電着塗装工程で形成される塗膜層(エポキシ樹脂)が変質する温度である約250℃に対して十分に低い。したがって、カチオン電着塗装工程で形成される塗膜層が、その後の各工程において変質して防錆性等に悪影響を及ぼす可能性は低い。
【0048】
上記実施形態では、第1下流部41Lの表面全体にニッケル−リンめっきを施すのではなく、一部にのみ施している。したがって、第1下流部41Lの表面全体にニッケル−リンめっきを施す場合に比較して、ニッケルの消費量が低下する。
【0049】
また、表面の平坦度の低い物体にニッケル−リンめっきを施しつつ、そのめっき層の表面の平坦度としてある程度高い平坦度を確保しようとした場合、無電解ニッケル−リンめっき工程を長時間行って、厚いめっき層を形成する必要がある。
【0050】
この点、上記実施形態では、研磨工程において研磨した後のある程度平坦度が確保されている部分に対してニッケル−リンめっきを施している。そのため、それほどめっき層を厚くしなくても、めっき層の表面の平坦度を高くすることができる。その結果、ニッケルの消費量を少なくできるとともに無電解ニッケル−リンめっき工程を過度に長時間行わなければならないといった事態は生じにくい。これらは、いずれも第1下流部41Lの製造コストの低下に寄与する。
【0051】
なお、上の説明では、第1下流部41Lを例として、製造方法及びその効果について説明したが、上流部31及び第2下流部41Rについても、同様の製造方法で製造される。すなわち、上流部31及び第2下流部41Rのうちニッケル−リンめっきが施される箇所をステップS4の研磨工程で研磨しておき、その後、ステップS5の無電解ニッケル−リンめっき工程を行う。また、同製造方法で製造された上流部31及び第2下流部41Rは、第1下流部41Lと同様の効果を奏する。
【0052】
上記実施形態は、次のように変更できる。
・上記製造方法が適用されるインテークマニホールド30は、V型6気筒の内燃機関10に適用されるものに限らない。気筒数や気筒の配置等に拘わらず、どのような態様の内燃機関のインテークマニホールドであっても、上記製造方法が適用でき得る。
【0053】
・上記実施形態では、インテークマニホールド30が、上流部31、第1下流部41L、及び第2下流部41Rに分割されていたが、インテークマニホールド30全体が1つの一体成形物であってもよい。この場合、インテークマニホールド30そのものが、マニホールド構成部品である。
【0054】
・インテークマニホールド30を複数に分割する場合において、その分割の仕方は上記実施形態の態様に限らない。例えば、インテークマニホールド30を、例えば上流側と下流側との2つに分割してもよいし、第1バンク側と第2バンク側との2つに分割してもよい。さらに、インテークマニホールド30を4つ以上に分割してもよい。
【0055】
・第1ガスケット51Lや第2ガスケット51Rは必須ではなく、場合によっては省略してもよい。上記実施形態では、上流部31における第1下流側フランジ部37Lの下端面や、第1下流部41Lにおける第1上部フランジ43Lの上端面にニッケル−リンめっきが施されており、これらの表面の平坦度が相応に高い。したがって、第1ガスケット51Lを省略したとしても、両者の間のシール性として、十分なシール性を得られる可能性がある。
【0056】
・上記の製造方法は、上流部31、第1下流部41L、及び第2下流部41Rの全てに適用される必要はない。例えば、第1下流部41L及び第2下流部41Rについては、上で説明した一連のステップS1〜S6にしたがって製造しつつ、上流部31については他の製造方法で製造してもよい。この場合、上流部31は、鋳鉄で形成されていなくてもよく、例えばアルミニウム合金で形成されていてもよい。
【0057】
・ステップS3の焼付工程における温度は、カチオン電着塗装工程で形成される塗膜層(エポキシ樹脂)の種類等によって適宜変更することができる。また、場合によっては、焼付工程を省略することもできる。
【0058】
・ステップS4の研磨工程で研磨する箇所、すなわちステップS5の無電解ニッケル−リンめっき工程でめっき層を形成する箇所は、適宜変更できる。例えば、インテークマニホールド30に他の部材を、ブラケット(金具)を介して取り付ける場合には、そのブラケットが接触する部分に、めっき層を形成するようにしてもよい。
【0059】
・ステップS5の無電解ニッケル−リンめっき工程で使用するめっき液の組成は、適宜変更できる。例えば、上記実施形態で例示した各成分に加えて他の成分を追加してもよいし、硫酸ニッケル及び次亜リン酸ナトリウム以外の成分については、省略することも可能である。
【0060】
・ステップS6の乾燥工程における温度は、カチオン電着塗装工程で形成される塗膜層に過度に悪影響を与えない温度であれば、適宜変更できる。例えば、ステップS3の焼付工程と同程度の温度未満であれば、上記実施形態で例示した100℃より高くても、塗膜層に悪影響を与える可能性は低い。
【符号の説明】
【0061】
C…回転中心、10…内燃機関、11…シリンダブロック、12…気筒、12L…第1バンク側の気筒、13L…第1バンク側のピストン、14L…第1バンク側のピストンロッド、15L…第1シリンダヘッド、16L…第1バンク側の吸気ポート、17L…第1バンク側の吸気弁、18L…第1バンク側の排気ポート、19L…第1バンク側の吸気弁、12R…第2バンク側の気筒、13R…第2バンク側のピストン、14R…第2バンク側のピストンロッド、15R…第2シリンダヘッド、16R…第2バンク側の吸気ポート、17R…第2バンク側の吸気弁、18R…第2バンク側の排気ポート、19R…第2バンク側の吸気弁、20…クランクシャフト、30…インテークマニホールド、31…上流部、32…本体部、33…上流通路、33L…第1上流通路、33R…第2上流通路、34…上流側フランジ部、35…開口部、36…ボルト孔、37L…第1下流側フランジ部、38L…開口部、39L…ボルト孔、37R…第2下流側フランジ部、38R…開口部、39R…ボルト孔、41L…第1下流部、42L…第1筒状体、43L…第1上部フランジ、44L…開口部、45L…ボルト孔、46L…第1下部フランジ、47L…開口部、48L…ボルト孔、41R…第2下流部、42R…第2筒状体、43R…第2上部フランジ、44R…開口部、45R…ボルト孔、46R…第2下部フランジ、47R…開口部、48R…ボルト孔、51L…第1ガスケット、52L…開口部、53L…ボルト孔、51R…第2ガスケット、52R…開口部、53R…ボルト孔。
図1
図2
図3