【実施例1】
【0019】
図1は、延反機1の概略的な構成を示す。延反機1は、テーブル2の載置面2a上に生地3を積層する。生地3は、原反ロール3aから引き出され、積層体3bを形成するように、コンベアベルト4で搬送する。コンベアベルト4は、無端状で、搬送方向の前端側のキャリッジ5と後端側の後端ローラー6との間に架けられ、コンベア駆動ユニット7によって搬送用に駆動される。キャリッジ5は、キャリッジ駆動ユニット8による駆動で、載置面2aの上方を、搬送方向の前後に移動する。後端ローラー6は、キャリッジ5と連動して移動する。原反ロール3aから引き出された生地3が上部案内ローラー12に至る経路のコンベアベルト4上には、カッターユニット9が設けられ、カッター駆動ユニット10による駆動で、搬送方向の前後に移動する。
【0020】
キャリッジ5は、コンベアベルト4が巻掛けられる前端ローラー11と、上部案内ローラー12と下部案内ローラー13とを含む。上部案内ローラー12は、前端ローラー11よりも搬送方向の後端側でコンベアベルト4の上側を受けて案内する。下部案内ローラー13は、前端ローラー11の搬送方向の後端側でコンベアベルト4の下側を受けて案内する。生地案内板14は、前端ローラー11の搬送方向前方に隣接するように配置され、生地排出部分4aの延長上で生地3を載置面2a上に案内する。コンベアベルト4は、上部案内ローラー12から前端ローラー11への生地排出部分4aで下方に傾斜して生地3を排出する。キャリッジ5に搭載される前端ローラー11は、搬送方向の前後に往復移動しながら、載置面2a上に生地3を積重ねて積層体3bを形成し、積層厚に応じて昇降する。前端ローラー11の斜め上前方に配置される生地押え15は、生地3の先端付近を前端ローラー11の外周に押付けて押えることができる。
【0021】
キャリッジ5は、前端ローラー11、上部案内ローラー12および下部案内ローラー13、ならびに生地案内板14の相対的な位置関係を保つように保持する保持フレーム16を含む。保持フレーム16は、ほぼ板状であるけれども、ブロック状や、部材の組合せであってもよい。キャリッジ5の搬送方向の後方で、コンベアベルト4は水平の経路を保った後、下方に曲り、さらに前方に曲って後端ローラー6に巻き掛けられる。コンベアベルト4が下方に曲る位置の後方には、原反ロール3aから引き出された生地3が下方に弛まされる放反部17が設けられる。後端ローラー6に巻き掛けられたコンベアベルト4は、後方に戻り、上方に曲って弛み取り部18を通過し、前方の下部案内ローラー13に戻る。カッターユニット9は、幅方向に移動して生地3を切断するカッター19を備える。
【0022】
図2および
図3は、
図1のキャリッジ5の概略的な構成を示す。キャリッジ5の外側は、ハウジング20で覆われている。
【0023】
図2に示すように、キャリッジ5には、前端ローラー11を上下方向に直線移動するように案内する上下案内機構21が設けられる。上下案内機構21とともに、案内機構22として、下部案内ローラー13を搬送方向の前後の水平方向に直線移動するように案内する前後案内機構23も設けられる。上下案内機構21では、直線状のガイド21aがキャリッジ5で支持され、ガイド21aがスライダー21bを直線状に移動可能なように支持する。スライダー21bは、前端ローラー11の軸11aを支持する。前後案内機構23では、直線状のガイド23aがキャリッジ5で支持され、ガイド23aがスライダー23bを直線状に移動可能なように支持する。保持フレーム16は、軸11a,13aを回転可能に支持するとともに、上部案内ローラー12の軸12aも回転可能に支持する。案内機構22は、保持フレーム16の変位を案内し、前端ローラー11の昇降に応じてコンベアベルト4の生地排出部分4aの下方への傾斜をそれぞれ緩急させる。前後案内機構23のスライダー23bは、軸支持板23cを介して軸13cを支持する。載置面2a上を前後に移動するキャリッジ5には、車輪24,25が設けられている。
【0024】
キャリッジ5は、前端ローラー11を昇降させるために、昇降板26および昇降駆動機構27を備えている。昇降板26は、前端ローラー11の軸11aおよび上下案内機構21のスライダー21bを支持する。昇降板26の後部には、ラック26aが設けられ、昇降駆動機構27のピニオン27aと噛合している。昇降駆動機構27は、ピニオン27aとともに、従動ベルト27b、連絡プーリー27c、連絡軸27d、駆動ベルト27e、駆動プーリー27fおよび伝達プーリー27gを含む。
【0025】
図3に示すように、キャリッジ5および保持フレーム16は、幅方向の両側に設けられている。昇降板26、および昇降駆動機構27のピニオン27aと連絡プーリー27cも、幅方向の両側に設けられている。さらに両側には、ピニオン27aと同軸に、伝達プーリー27gが設けられる。伝達プーリー27gには、従動ベルト27bまたは駆動ベルト27eが掛る。両側の連絡プーリー27c間は、連絡軸27dで連結されるけれども、説明の便宜上、幅方向の中間部分の図示は省略する。図では下方となるキャリッジ5の一側方には従動ベルト27bが設けられる。キャリッジ5の他側方には、駆動ベルト27eおよび駆動プーリー27fが設けられ、駆動プーリー27fを回転駆動するモーター27hも設けられる。
【0026】
図2に示すように、軸11a,12a,13aは保持フレーム16によって支持されている。保持フレーム16間では、コンベアベルト4が保持フレーム16に連動して傾斜が変化する。幅方向の両側での保持フレーム16の支持によって、前端ローラー11、上部案内ローラー12および下部案内ローラー13の相対的な位置関係は変らず、生地排出部分4aとその下側のコンベアベルト4との間には、位置関係が変らない空間が形成される。本実施例では、この空間を利用して、
図3に示すように、梁部材30を配置して保持フレーム16間の幅方向の強度を補強している。梁部材30は、幅方向の中間部分で、前端ローラー11を補強するように支持する支持部材31を備えている。前端ローラー11は、幅方向の中間部分で補強されるので、生地排出部分4aでの前端ローラー11の撓みを防止することができる。梁部材30を利用すれば、コンベアベルト4の生地排出部分4aを下方から支持したり、振動を与えるバイブレーターなどを配置したりして、生地3の搬送の円滑化も図ることもできる。
【0027】
図4は、
図3の切断面線A−Aから見た側面断面の構成を示す。保持フレーム16間の幅方向には、他の図では図示を省略しているけれども、取付部材32も掛け渡され、生地押え15を駆動するエアシリンダー33を支持する。また、取付部材32は、生地案内板14の前端付近で生地3の先端を検出する生地センサー34も支持する。生地押え15およびエアシリンダー33は、幅方向に間隔をあけて複数設けられる。複数の生地押え15は、生地センサー34による生地3の検出結果に応じて動作する。たとえば、コンベアベルト4で生地3を搬送し、生地3の先端を生地センサー34が検出すると、生地3の先端を前端ローラー11まで戻して、生地3の先端を前端ローラー11の位置に保持するように生地押え15を同時に作動させることができる。
【0028】
図5は、
図1の前端ローラー11の昇降とコンベアベルト4の生地排出部分4aの傾斜の変化とのキャリッジ5内での関係を示す。(a)は本実施例1、(b)は変形例、(c)は特許文献1の例、をそれぞれ、前端ローラー11の昇降の上下での生地排出部分4aの傾斜変化として示す。前端ローラー11の上下移動のストローク、下降位置での上部案内ローラー12および下部案内ローラー13の配置などは同一とする。下降位置での配置は実線、上昇位置での配置は二点鎖線でそれぞれ示す。
【0029】
(a)に示すように、本実施例1では、前端ローラー11は上下に、下部案内ローラー13は前後に、それぞれ直線状の移動となるように案内される。(b)の変形例では、下部案内ローラー13に替えて、上部案内ローラー12を直線状に案内する。(c)に示すように、特許文献1の考え方では、上部案内ローラー12および下部案内ローラー13はキャリッジ5に対して移動しない。
【0030】
(a)に示すように、本実施例1では、前後の直線状の案内距離を最短にすることができる。ただし、(b)のように上部案内ローラー12を直線状に案内すれば、上部案内ローラー12よりも後方のコンベアベルト4は水平となる。(a)および(b)では、コンベアベルト4の生地排出部分4aと生地案内板14とが同一傾斜で続き、生地3を円滑に移動させることができる。また、上下案内機構21も前後案内機構23も直線状の案内を行うので、積層体3bの厚み変化に伴う傾斜角度の変化も、円滑かつ安定して行うことができる。
【0031】
(c)に示すように、特許文献1の考え方では、前端ローラー11が昇降しても、上部案内ローラー12の位置は変らない。コンベアベルト4の生地排出部分4aは、傾斜角度の減少で長さも減少するけれども、生地案内板14の傾斜角度は一定であるので、生地排出部分4aとの間に段差が生じる。
【0032】
なお、案内機構22では、前端ローラー11の軸11aを曲線状の経路で案内してもよい。上部案内ローラー12または下部案内ローラー13の軸12a,13aも曲線状の経路で案内したり、揺動軸として位置を固定したりすることもできる。ただし、上下案内機構21および前後案内機構23のような直線状の経路の方が安定した案内を行うことができる。前端ローラー11を昇降駆動するために、ラック26aとピニオン27aとの組合せを使用しているけれども、他の機構、たとえばボールねじなどを使用することもできる。