【文献】
WAKSMAN, S.A. and JOFFE, J.S.,J. Bacteriol.,1922年,Vol.7, No.2,pp.239-256
【文献】
HIROTA, R. et al.,J. Environmental Biotechnology,2002年,Vol.2, No.2,pp.135-143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アンモニア合成装置の下流側において、未反応の水素と窒素を回収し、回収したガスをアンモニア合成装置の上流側にリサイクルするリサイクル装置をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
[製造システム]
本発明は、有機化合物又は微生物の新規な製造システムを提供する。
【0017】
先述のとおり、大規模生産プロセスによるアンモニア合成においては、合成したアンモニアを液化・貯蔵して、アンモニア消費地まで液体アンモニアとして輸送することを前提としており、液体アンモニアの貯蔵・輸送・保安に伴う周辺コストが嵩む傾向にあった。
【0018】
本発明においては、微生物発酵に必要な窒素源又はpH調整剤として使用されるアンモニアを、当該微生物発酵を実施する地において製造(すなわち、オンサイト製造)する。これにより、液体アンモニアの貯蔵・輸送を介さずに、微生物発酵により有機化合物又は微生物を製造することができる。
【0019】
一実施形態において、本発明の有機化合物又は微生物の製造システムは、
担持ルテニウム触媒の存在下、水素と窒素を含む原料ガスを反応させてアンモニア含有ガスを合成するアンモニア合成装置と、
アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガス由来のアンモニアを使用して有機化合物の生産能を有する微生物を培養する培養装置と、
を含む。
【0020】
<アンモニア合成装置>
本発明の製造システムにおいて、アンモニア合成装置は、担持ルテニウム触媒の存在下、水素と窒素を含む原料ガスを反応させてアンモニア含有ガスを合成する。
【0021】
先述のとおり、アンモニアは現在、主にハーバー・ボッシュ法により製造されている。ハーバー・ボッシュ法では、二重促進鉄触媒を用いて、水素と窒素を含む原料ガスを、400℃〜600℃、20MPa〜100MPaの高温高圧条件にて反応させてアンモニアを合成する。
【0022】
本発明の製造システムでは、アンモニア合成触媒として担持ルテニウム触媒を使用する。担持ルテニウム触媒は、ハーバー・ボッシュ法で使用される二重促進鉄触媒に比して、低圧条件下においても高いアンモニア合成活性を呈することが可能である。
【0023】
担持ルテニウム触媒において、担体としては、ルテニウムを担持することができ、かつ、アンモニア合成におけるルテニウムの触媒能を阻害しない限り、特に限定されず、公知の担体を使用してよい。担体としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化チタン(チタニア)、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム、酸化セリウム(セリア)、ゼオライト等の酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物;活性炭が挙げられる。担体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
担持ルテニウム触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素からなる群から選択される1種以上の元素を助触媒成分として含んでもよい。
【0025】
担持ルテニウム触媒におけるルテニウムの担持量は、アンモニア合成活性の観点から、担体を100wt%としたとき、好ましくは0.01wt%以上、より好ましくは0.02wt%以上、さらに好ましくは0.03wt%以上、0.05wt%以上、0.1wt%以上、0.3wt%以上、0.5wt%以上、又は1wt%以上である。ルテニウムの担持量の上限は、アンモニア合成反応時のルテニウム粒子のシンタリングを抑制して所期のアンモニア合成活性を維持し得る観点から、好ましくは30wt%以下、より好ましくは20wt%以下、さらに好ましくは15wt%以下、又は10wt%以下である。
【0026】
助触媒成分を使用する場合、担持ルテニウム触媒における助触媒成分の担持量は、特に限定されないが、アンモニア合成活性の観点から、ルテニウムを100wt%としたとき、好ましくは0.01wt%〜1000wt%、より好ましくは1wt%〜800wt%である。
【0027】
担持ルテニウム触媒の比表面積は、特に限定されないが、好ましくは0.1m
2/g〜1000m
2/g、より好ましくは0.5m
2/g〜800m
2/gである。担持ルテニウム触媒の比表面積は、例えば、BET吸着法により測定することができる。
【0028】
担持ルテニウム触媒の調製方法は特に限定されず、担体の種類等に応じて公知の方法から適切な方法を選択してよい。例えば、含浸法、ゾル−ゲル法、CVD法、スパッタ法等が挙げられる。
【0029】
本発明の製造システムにおいて、アンモニア合成装置は、上記の担持ルテニウム触媒の存在下、水素と窒素を含む原料ガスを反応させてアンモニア含有ガスを合成し得る限り特に限定されず、例えば、水素と窒素を含む原料ガスの入口と、上記触媒の存在下、原料ガスを反応させてアンモニア含有ガスを合成する反応部と、生成したアンモニア含有ガスの出口とを含む。
【0030】
アンモニア合成装置の反応部において、原料ガス中の水素と窒素は、触媒の作用下、式:3H
2+N
2⇔2NH
3に従って直接反応してアンモニアを合成する。
【0031】
反応温度は、アンモニア消費地におけるアンモニア合成を容易とする観点から、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下、さらに好ましくは530℃以下、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下である。反応温度の下限は、アンモニア合成活性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上、250℃以上、又は300℃以上である。
【0032】
反応圧力は、アンモニア消費地におけるアンモニア合成を容易とする観点から、好ましくは30MPa以下、より好ましくは25MPa以下、さらに好ましくは20MPa以下である。担持ルテニウム触媒を使用する本発明においては、反応圧力がさらに低い場合にも優れたアンモニア合成活性を達成し得る。例えば、反応圧力は、15MPa以下、10MPa以下、5MPa以下、4MPa以下、3MPa以下、2MPa以下、又は1MPa以下としてよい。反応圧力の下限は、好適な一実施形態において化学平衡支配であるアンモニア合成装置出口のアンモニア濃度の観点から、好ましくは10kPa以上、より好ましくは50kPa以上、さらに好ましくは100kPa以上である。なお、反応圧力はゲージ圧である(以下同様)。
【0033】
アンモニア合成装置の反応部において、反応形式は、バッチ式反応形式、閉鎖循環系反応形式、流通系反応形式のいずれでもよいが、実用的な観点から、流通系反応形式が好適である。また、反応による触媒層の温度上昇を抑制し平衡アンモニア濃度を上げることでアンモニア合成反応速度を大きく維持することを目的とした内部熱交換式、あるいは原料ガスを流体流れ方向に分割して供給するクエンチャー式など、公知の反応器構造を採り得る。
【0034】
アンモニア合成装置の反応部において、担持ルテニウム触媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。あるいはまた、担持ルテニウム触媒と他のアンモニア合成触媒とを2種以上組み合わせて使用してもよい。2種以上の触媒を使用する場合、反応形式に応じて、2種以上の触媒を混合して使用してもよく、種類毎に別個の層を形成するように触媒を積層して使用してもよく、種類毎に異なる反応管に充填するように触媒を別個の反応管に充填した後に該反応管を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
なお、担持ルテニウム触媒を使用する場合、所期のアンモニア合成活性を得るに際して、原料ガス中の水分含有量を低く抑えることが重要である。とりわけ触媒の安定性の観点から、原料ガス中の水分含有量は、好ましくは100体積ppm以下、より好ましくは50体積ppm以下である。該水分含有量の下限は低いほど好ましく、0体積ppmであってもよい。なお、本発明の製造システムが、後述する未反応の水素と窒素のリサイクル装置を含む場合には、リサイクル装置によって回収したガス中の水分含有量も含めて、原料ガス中の水分含有量は上記の範囲にあることが重要である。
【0036】
原料ガス中の水素と窒素のモル比(水素/窒素)は、好ましくは1/2〜5/1、より好ましくは1/2〜3/1、さらに好ましくは1/2〜2/1、さらにより好ましくは4/5〜6/5である。
【0037】
アンモニア合成に使用する原料ガス中の水素は、周知の方法、例えば、1)炭化水素(例えば、石炭、石油、天然ガス、バイオマス)を、水蒸気改質反応、部分酸化反応、又はこれらの組み合わせによりCO、H
2を含むガスへと転化した後、COシフト反応、脱CO
2処理を実施する方法、2)水を電気分解する方法、3)光触媒を用いて水を分解する方法によって調製することができる。あるいはまた、水素は、水素ボンベ(水素ボンベカードルを含む。以下同じ。)、水素タンク(水素セルフローダー等の移動式タンクを含む。以下同じ。)から供給してもよい。アンモニア合成に使用する原料ガス中の窒素は、窒素分離膜あるいは深冷分離法を用いて空気から窒素を分離して調製してよい。あるいは、炭化水素の部分酸化反応を利用して水素を調製する場合には、酸素源として使用した空気中の窒素を利用してもよい。あるいはまた、窒素は、窒素ボンベ(窒素ボンベカードルを含む。以下同じ。)、窒素タンク(窒素セルフローダー等の移動式タンクを含む。以下同じ。)から供給してもよい。
【0038】
本発明においては、アンモニア消費地において有利に実施し得るプロセスを使用して水素と窒素を含む原料ガスを調製することができる。
【0039】
本発明の製造システムにおいて、アンモニア合成装置において合成されるアンモニア含有ガス中のアンモニア濃度は、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは2体積%以上、さらに好ましくは4体積%以上、6体積%以上、8体積%以上、又は10体積%以上である。アンモニア合成装置において合成されるアンモニア含有ガスには、アンモニアの他、未反応の水素、未反応の窒素が主に含まれる。
【0040】
本発明の製造システムにおいて、アンモニア合成装置のアンモニア合成能力(アンモニア−トン/日)は、培養装置におけるアンモニア使用量によっても異なるが、好ましくは300トン/日以下、より好ましくは200トン/日以下、さらに好ましくは100トン/日以下、80トン/日以下、60トン/日以下、又は50トン/日以下である。アンモニア合成能力の下限は、特に限定されないが、通常、0.1トン/日以上、1トン/日以上、2トン/日以上などとし得る。
【0041】
本発明の製造システムにおいては、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガス由来のアンモニアを使用して有機化合物の生産能を有する微生物を培養する。培養に際して、アンモニアは、窒素源又はpH調整剤として使用される。
【0042】
アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガスは、培養装置の具体的仕様に応じて、1)冷却した後に直に培養装置に供給してもよく、2)濃縮して濃縮アンモニアガス若しくは液体アンモニア(若しくは必要に応じてアンモニア水)として培養装置に供給してもよく、3)若しくは得られたアンモニア水からアンモニアガスを回収し、回収されたアンモニアガスを培養装置に供給してもよい。上記2)及び3)の実施形態も包含させるべく、本発明においては、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガス「由来の」アンモニアを使用するという表現を用いる。アンモニアはまた、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸、硝酸塩等のアンモニア由来含窒素化合物へと転化させた後、培養装置に供給してもよい。斯かる実施形態において、アンモニアは、窒素源又はpH調整剤の原料として使用される。このような実施形態も、本発明における「窒素源又はpH調整剤としてアンモニアを使用する」に包含される。
【0043】
したがって一実施形態において、本発明の製造システムは、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガスを冷却する冷却器をさらに含む。冷却器としては、アンモニア含有ガスを所定の温度に冷却し得る限り特に限定されず、公知の冷却器(例えば、コイル型熱交換器、シェルアンドチューブ型熱交換器等)を使用してよい。冷却されたアンモニア含有ガスは、そのまま培養装置に供給してもよく、貯蔵タンクに貯蔵した後に培養装置に供給してもよい。
【0044】
他の実施形態において、本発明の製造システムは、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガス中のアンモニアを濃縮するアンモニア濃縮装置をさらに含む。アンモニア濃縮装置としては、アンモニア含有ガス中のアンモニアを濃縮し得る限り特に限定されず、公知の濃縮装置を使用してよい。アンモニア濃縮装置としては、例えば、加圧冷却装置、ガス分離膜装置、圧力スイング吸着(PSA)装置が挙げられる。
【0045】
アンモニア濃縮装置として加圧冷却装置を使用する場合、加圧冷却の条件は、アンモニア含有ガス中のアンモニアが液化するように設定することが好適である。加圧冷却時の圧力は、アンモニア合成装置の反応部における反応圧力や加圧冷却時の温度によっても異なるが、好ましくは10kPa以上、より好ましくは50kPa以上、さらに好ましくは100kPa以上、0.2MPa以上、0.3MPa以上、0.4MPa以上、又は0.5MPa以上である。また、加圧冷却時の温度は、加圧冷却時の圧力によっても異なるが、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、20℃以下、10℃以下、5℃以下、0℃以下、−5℃以下、又は−10℃以下である。該温度の下限は、特に限定されないが、通常、−35℃以上、−30℃以上などとし得る。なお、加圧冷却装置としては、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガスを上記の条件にて加圧冷却し得る限り特に限定されず、公知の加圧冷却装置を使用してよい。アンモニア含有ガスを加圧冷却して得られた液体アンモニアは、そのまま培養装置に供給してもよく、貯蔵タンクに貯蔵した後に培養装置に供給してもよい。
【0046】
アンモニア濃縮装置としてガス分離膜装置を使用する場合、水素ガス分離膜、窒素ガス分離膜、又はこれらの組み合わせを使用することが好適である。アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガスには、アンモニア、未反応の水素、未反応の窒素が主に含まれおり、未反応の水素と未反応の窒素の少なくとも一方をガス分離膜により分離することで、アンモニアを濃縮することができる。水素ガス分離膜、窒素ガス分離膜としては、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガス中の未反応の水素、窒素を分離し得る限り特に限定されず、公知の水素ガス分離膜、窒素ガス分離膜を使用してよい。あるいはまた、アンモニア含有ガス中のアンモニアを選択的に分離し得るアンモニアガス分離膜を使用してもよい。ガス分離膜装置を使用したアンモニアの濃縮に際しては、ガス分離膜の種類に応じて、温度及び圧力等の条件を決定してよい。例えば、ガス分離時の圧力(粗ガス側)は、好ましくは10kPa以上、より好ましくは50kPa以上、さらに好ましくは100kPa以上、0.2MPa以上、0.3MPa以上、0.4MPa以上、又は0.5MPa以上である。該ガス圧(粗ガス側)の上限は、特に限定されないが、通常、アンモニア合成装置の反応部における反応圧力以下である。ガス分離膜装置で得られた濃縮アンモニアガスは、そのまま培養装置に供給してもよく、貯蔵タンクに貯蔵した後に培養装置に供給してもよい。
【0047】
アンモニア濃縮装置として圧力スイング吸着(PSA)装置を使用してもよい。PSA装置では、アンモニア含有ガス中のアンモニアに対して選択的吸着能を呈する吸着剤を使用して、圧力変動によりアンモニアの吸・脱着を制御してアンモニアと他のガスとを分離(アンモニアを濃縮)する。PSA装置としては、アンモニア含有ガス中のアンモニアを濃縮し得る限り特に限定されず、公知のPSA装置を使用してよい。例えば、特許第2634015号公報に記載されるPSA装置を使用して、アンモニア含有ガス中のアンモニアを濃縮してよい。
【0048】
PSA装置において、吸着剤にアンモニアを吸着させる際の圧力(P
ad)と、吸着剤からアンモニアを脱着させる際の圧力(P
de)とは、P
ad>P
deを満たすことが好ましい。アンモニア含有ガス中のアンモニアを効率的に濃縮する観点から、上記P
adおよびP
deは、P
ad−P
de≧10kPaを満たすことが好ましく、P
ad−P
de≧50kPaを満たすことがより好ましく、P
ad−P
de≧100kPaを満たすことがさらに好ましく、P
ad−P
de≧0.2MPaを満たすことがさらにより好ましく、P
ad−P
de≧0.3MPa、P
ad−P
de≧0.4MPa、又はP
ad−P
de≧0.5MPaを満たすことが特に好ましい。上記P
adとP
deの差分(P
ad−P
de)の上限は、通常、アンモニア合成装置の反応部における反応圧力以下である。また、P
adは、上記P
ad>P
deを満たす限り特に限定されず、使用する吸着剤の吸着能に応じて決定してよいが、通常、アンモニア合成装置の反応部における反応圧力以下である。P
deは、上記P
ad>P
deを満たす限り特に限定されず、使用する吸着剤の脱着能に応じて決定してよいが、通常、1MPa以下であり、好ましくは0.5MPa以下、0.2MPa以下、100kPa以下、50kPa以下、10kPa以下、又は0kPa以下である。ガス分離時の温度は、PSA装置の具体的仕様に応じて決定してよい。
【0049】
アンモニア濃縮装置としてPSA装置を使用する場合、2つ以上の吸着塔を備えたPSA装置が好適である。例えば、2つの吸着塔(第1の吸着塔及び第2の吸着塔)を備えたPSA装置においては、第1の吸着塔においてアンモニアの吸着工程を実施する際に第2の吸着塔においてアンモニアの脱着工程が実施され、第1の吸着塔においてアンモニアの脱着工程を実施する際に第2の吸着塔においてアンモニアの吸着工程が実施されるように操作することにより、連続的にアンモニア含有ガス中のアンモニアを濃縮することが可能である。PSA装置で得られた濃縮アンモニアガスは、そのまま培養装置に供給してもよく、貯蔵タンクに貯蔵した後に培養装置に供給してもよい。
【0050】
アンモニア濃縮装置としてPSA装置を使用する場合、アンモニア濃縮装置で得られる濃縮アンモニアガス中のアンモニア濃度は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは30体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上である。該アンモニア濃度の上限は、高いほど好ましく、100体積%であってもよい。したがって、本発明において、アンモニアの「濃縮」とは、アンモニア含有ガスからアンモニアを単離することを含む概念である。
【0051】
本発明において、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガスは、上記のアンモニア濃縮装置によりアンモニアを濃縮した後、さらにアンモニア精製装置を使用して精製を行ってもよい。
【0052】
先述のとおり、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガスには、未反応の水素、未反応の窒素が含まれる。これら未反応の水素と窒素をアンモニア合成の原料としてリサイクルすることにより、システム効率の向上を図ることが可能である。したがって、一実施形態において、本発明の製造システムは、アンモニア合成装置の下流側において、未反応の水素と窒素を回収し、回収したガスをアンモニア合成装置の上流側にリサイクルするリサイクル装置をさらに含む。
【0053】
アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガスを冷却した後にそのまま培養装置に供給する実施形態においては、培養装置においてリサイクル装置を設ければよい。リサイクル装置の詳細は、図を参照して後述することとする。
【0054】
また、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガスを濃縮して濃縮アンモニアガス若しくは液体アンモニア(若しくは必要に応じてアンモニア水)として培養装置に供給する実施形態においては、アンモニア濃縮装置において未反応の水素と窒素を選択的に回収することが可能であり、アンモニア濃縮装置にリサイクル装置を設ければよい。
【0055】
リサイクル装置としては、未反応の水素と窒素を回収して、回収した、水素及び窒素を含むガスをアンモニア合成装置の上流側にリサイクルすることができる限り特に限定されず、公知のリサイクル装置を使用してよい。例えば、リサイクル装置は、回収したガスの導管と、回収したガスを移送するためのポンプとを含んでよい。
【0056】
なお、回収したガスに水分が含まれる場合、該ガスをそのままリサイクルすると、アンモニア合成装置で使用する担持ルテニウム触媒の触媒能に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、一実施形態において、リサイクル装置は、回収したガス中の水分を除去する脱水装置を含む。脱水装置としては、回収したガス中の水分含有量を、本発明で使用する担持ルテニウム触媒の触媒能に悪影響を及ぼさない値にまで低下させ得る限り特に限定されず、公知の脱水装置を使用してよい。例えば、回収したガスを冷却して水分を凝縮除去する装置が挙げられる。また、回収したガス中の水分含有量をさらに減じる観点から、リサイクル装置は、乾燥装置を使用してよく、脱水装置に加えてあるいは脱水装置に代えて乾燥装置を含んでもよい。乾燥装置としては、回収したガス中の水分含有量をさらに減じる機能を有する限り特に限定されず、公知の乾燥装置を使用してよい。例えば、回収したガスを吸湿剤に接触させて脱水する装置が挙げられ、この装置において、吸湿剤としては、特に限定されないが、例えば、塩化カルシウム、五酸化二リン及び硫酸銅無水塩等の化学的吸湿剤;シリカゲル、アルミナゲル及びゼオライト等の物理的吸湿剤が挙げられる。
【0057】
<培養装置>
本発明の製造システムにおいて、培養装置は、アンモニア合成装置で得られたアンモニア含有ガス由来のアンモニアを使用して有機化合物の生産能を有する微生物を培養する。
【0058】
有機化合物の生産能を有する微生物を培養して有機化合物を製造する技術は広く知られている。本発明は、このような微生物発酵技術に広く適用することが可能である。微生物発酵において製造される有機化合物としては、例えば、アミノ酸、有機酸、多糖類、タンパク質、抗生物質、アルコールが挙げられる。アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、ヒスチジン、アルギニンが挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、アクリル酸、プロピオン酸、フマル酸が挙げられる。多糖類としては、例えば、キサンタン、デキストラン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、カードラン、ゲラン、スクレオグルカン、プルランが挙げられる。タンパク質としては、例えば、ホルモン、リンホカイン、インターフェロン、酵素(アミラーゼ、グルコアミラーゼ、インベルターゼ、ラクターゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等)が挙げられる。抗生物質としては、例えば、抗菌剤(β−ラクタム、マクロライド、アンサマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ペプチド性抗生物質、アミノグリコシド等)、抗カビ剤(ポリオキシンB、グリセオフルビン、ポリエンマクロライド等)、抗がん剤(ダウノマイシン、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ミスラマイシン、ブレオマイシン等)、プロテアーゼ/ペプチダーゼ阻害剤(ロイペプチン、アンチパイン、ペプスタチン等)、コレステロール生合成阻害剤(コンパクチン、ロバスタチン、プラバスタチン等)が挙げられる。アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1−ブタノール、ソルビットが挙げられる。微生物発酵において製造される有機化合物としてはまた、アクリルアミド、ジエン化合物(イソプレン等)、ペンタンジアミン等も挙げられる。
【0059】
有機化合物の生産能を有する微生物としては、1)本来的に有機化合物の生産能を有する微生物と、2)本来的には有機化合物の生産能を有しない又は実質的に有しないが有機化合物生成遺伝子を遺伝子組み換えにより導入されて後天的に有機化合物の生産能を有するに至った微生物の双方が含まれる。有機化合物の生産能を有する微生物に関しては、有機化合物の種類に応じて種々の微生物が知られており、本発明においては、これら既知の微生物を広く使用してよい。また、培養に際して窒素源又はpH調整剤としてアンモニアを使用することができる限り、今後開発される微生物に関しても本発明を広く適用することが可能である。
【0060】
微生物としては、有機化合物の生産能を有する限り特に限定されないが、細菌又は真菌が好適である。細菌としては、例えば、エシュリヒア(Escherichia)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、バシラス(Bacillus)属細菌、ラクトバシラス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌が挙げられる。真菌としては、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属菌、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属菌、ヤロウイア(Yarrowia)属菌、トリコデルマ(Trichoderma)属菌、アスペルギルス(Aspergillus)属菌、フザリウム(Fusarium)属菌、ムコール(Mucor)属菌が挙げられる。
【0061】
エシェリヒア属細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等が挙げられる。パントエア(Pantoea)属細菌としては、例えば、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)等が挙げられる。コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・アンモニアジェネス(Corynebacterium ammoniagenes)等が挙げられる。エンテロバクター(Enterobacter)属細菌としては、例えば、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等が挙げられる。クロストリジウム(Clostridium)属細菌としては、例えば、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)等が挙げられる。バシラス(Bacillus)属細菌としては、例えば、バシラス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バシラス・アミロリキファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)等が挙げられる。ラクトバシラス(Lactobacillus)属細菌としては、例えば、ラクトバシラス・ヤマナシエンシス(Lactobacillus yamanashiensis)、ラクトバシラス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバシラス・ヒルガルディ(Lactobacillus hilgardii)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)等が挙げられる。ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌としては、例えば、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)、ストレプトマイセス・ベネズエラ(Streptomyces venezuelae)、ストレプトマイセス・ピウセチウス(Streptomyces peucetius)等が挙げられる。ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌としては、例えば、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)等が挙げられる。シュードモナス(Pseudomonas)属細菌としては、例えば、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・エロデア(Pseudomonas elodea)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等が挙げられる。サッカロミセス(Saccharomyces)属菌としては、例えば、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)等が挙げられる。シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属菌としては、例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等が挙げられる。ヤロウイア(Yarrowia)属菌としては、例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)等が挙げられる。トリコデルマ(Trichoderma)属菌としては、例えば、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)等が挙げられる。アスペルギルス(Aspergillus)属菌としては、例えば、アスペルギルス・テレウス(Aspergullus terreus)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)等が挙げられる。フザリウム(Fusarium)属菌としては、例えば、フザリウム・ヘテロスポラム(Fusarium hetereosporum)等が挙げられる。ムコール(Mucor)属菌としては、例えば、ムコール・ジャバニカス(Mucor javanicus)等が挙げられる。
【0062】
本発明の製造システムにおいてアミノ酸を製造する場合、好適に使用し得る微生物の例としては以下が挙げられる。例えば目的物質がL−リジンの場合はエシェリヒア・コリAJ11442(NRRL B−12185,FERM BP−1543)(米国特許第4,346,170号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ3990(ATCC31269)(米国特許第4,066,501号参照)、Lys生産菌WC196LC/pCABD2(国際公開2010/061890号)等である。WC196ΔcadAΔldcは、WC196株より、リジンデカルボキシラーゼをコードするcadA及びldcC遺伝子を破壊することにより構築した株である。WC196ΔcadAΔldc/pCABD2は、WC196ΔcadAΔldcに、リジン生合成系遺伝子を含むプラスミドpCABD2(米国特許第6,040,160号)を導入することにより構築した株である。WC196ΔcadAΔldcは、AJ110692と命名され、2008年10月7日、国立研究開発法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292−0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)に受託番号FERM BP−11027として寄託された。L−スレオニンの場合はエシェリヒア・コリVKPM B−3996(RIA 1867、VKPM B−3996)(米国特許第5,175,107号参照)、コリネバクテリウム・アセトアシドフイラムAJ12318(FERM BP−1172)(米国特許第5,188,949号参照)等であり、L−フェニルアラニンの場合は、エシェリヒア・コリAJ12604(FERM BP−3579)(欧州特許出願公開第488,424号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12637(FERM BP−4160)(フランス特許出願公開第2,686,898号参照)等であり、L−グルタミン酸の場合はエシェリヒア・コリAJ12624(FERM BP−3853)(フランス特許出願公開第2,680,178号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12475(FERM BP−2922)(米国特許第5,272,067号参照)、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869を親株にして作成された2256ΔldhAΔsucAyggB*(国際公開2014/185430)等であり、L−ロイシンの場合はエシェリヒア・コリAJ11478(FERM P−5274)(特公昭62−34397号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ3718(FERM P−2516)(米国特許第3,970,519号参照)等であり、L−イソロイシンの場合はエシェリヒア・コリKX141(VKPM B−4781)(欧州特許出願公開第519,l13号参照)、ブレビバクテリウム・フラバムAJ12149(FERM BP−759)(米国特許第4,656,135号参照)等であり、L−バリンの場合はエシェリヒア・コリVL1970(VKPM B−4411)(欧州特許出願公開第519,l13号参照)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ12341(FERM BP−1763)(米国特許第5,188,948号参照)等である。
【0063】
本発明の製造システムにおいて有機酸を製造する場合、好適に使用し得る微生物の例としては以下が挙げられる。例えば目的物質がL−乳酸の場合はラクトバシラス・ヤマナシエンシス、ラクトバシラス・アニマリス、サッカロミセス・セレビジエ等であり、ピルビン酸の場合はエシェリヒア・コリ、シュードモナス・フルオレセンス等であり、コハク酸の場合はエシェリヒア・コリ、パントエア・アナナティス等であり、イタコン酸の場合はアスペルギルス・テレウス等であり、クエン酸の場合はエシェリヒア・コリ等である(例えば、国際公開2007/097260号、特開2010−187542号公報参照)。
【0064】
本発明の製造システムにおいて多糖類を製造する場合、好適に使用し得る微生物の例としては以下が挙げられる。例えば目的物質がデキストランの場合はラクトバシラス・ヒルガルディ、ストレプトコッカス・ミュータンス等であり、アルギン酸塩の場合はシュードモナス・エルギノーサ等であり、ヒアルロン酸の場合はストレプトコッカス・エクイ、ストレプトコッカス・ミュータンス等であり、ゲランの場合はシュードモナス・エロデア等である(例えば、特開2011−116825号公報、特開2007−9092号公報参照)。
【0065】
本発明の製造システムにおいてタンパク質を製造する場合、好適に使用し得る微生物の例としては以下が挙げられる。例えば目的物質が各種ホルモン、インターフェロンの場合はサッカロミセス・セレビジエ等であり、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼの場合はバシラス・ズブチリス、アスペルギルス・オリゼ等であり、インベルターゼ、ラクターゼの場合はサッカロミセス・セレビジエ、アスペルギルス・オリゼ等である(例えば、国際公開第2006/67511号、特開2003−153696号公報参照)。
【0066】
本発明の製造システムにおいて抗生物質を製造する場合、好適に使用し得る微生物の例としては以下が挙げられる。例えば目的物質がペニシリン等のβ−ラクタムの場合はシュードモナス・プチダ、ストレプトマイセス・クラブリゲルス等であり、エリスロマイシン、アジスロマイシン等のマクロライドの場合はストレプトマイセス・ベネズエラ等であり、ダウノマイシンの場合はストレプトマイセス・ピウセチウス等であり、プラバスタチンの場合はストレプトマイセス・クラブリゲルス等である(例えば、国際公開第96/10084号、特開2002−53589号公報、国際公開第2005/54265号、国際公開第2007/147827号参照)。
【0067】
本発明の製造システムにおいてアルコールを製造する場合、好適に使用し得る微生物の例としては以下が挙げられる。例えば目的物質がエタノールの場合はサッカロミセス・セレビジエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、ラクトバシラス・ブレビス等であり、トリメチレングリコールの場合はエシェリヒア・コリ等である(例えば、国際公開第2007/97260号参照)。
【0068】
微生物を培養する培地としては、有機化合物に転換されるための炭素源、窒素源を含むことが好ましい。炭素源としては、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類等の炭水化物;ショ糖を加水分解した転化糖;グリセロール;メタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸塩、一酸化炭素、二酸化炭素等の炭素原子数が1の化合物;コーン油、パーム油、大豆油等のオイル;アセテート;動物油脂;動物オイル;飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸等の脂肪酸;脂質;リン脂質;グリセロ脂質;モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド等のグリセリン脂肪酸エステル;微生物性タンパク質、植物性タンパク質等のポリペプチド;加水分解されたバイオマス炭素源等の再生可能な炭素源;酵母エキス;及びこれらの組み合わせが挙げられる。窒素源としては、例えば、アンモニア、アンモニウム塩、硝酸、硝酸塩等の無機窒素源;尿素、アミノ酸、タンパク質等の有機窒素源;及びこれらの組み合わせが挙げられる。培地は、炭素源、窒素源に加えて、無機イオン及び必要に応じてその他の有機微量成分を含むことが好ましい。斯かる無機イオン及びその他の有機微量成分としては、従来公知の任意の成分を使用してよい。培地は、天然培地であっても、合成培地であってもよい。
【0069】
培養条件としては、目的とする有機化合物の生産が可能な条件であれば、特に限定されず、標準的な微生物培養条件を用いてよい。培養温度としては、20℃〜37℃が好ましい。また、微生物の性質に応じて好気性、無酸素性、又は嫌気性条件下で培養を行うことが好ましい。
【0070】
培養方法としては、バッチ培養法、流加培養法、連続培養法等の公知の方法を用いてよい。
【0071】
培養装置における液深(培地深さ)は、微生物の特性に応じて、適宜決定してよい。例えば、好気培養の中でも、微生物の生育のために培地を静置状態にする必要がある場合は、液深の小さい培養装置(培養槽)を使用すればよい。酸素要求量が大きい場合は、攪拌槽あるいは気泡塔に空気を直接通気して酸素を培地に供給する深部培養装置を使用すればよい。
【0072】
培養装置へのアンモニアの供給方法は特に限定されず、アンモニアの形態(アンモニアガス、液体アンモニア、アンモニア水)に応じて、培養装置の気相に供給してもよく、培地中に供給してもよい。アンモニアをアンモニア由来含窒素化合物(アンモニウム塩、尿素、硝酸、硝酸塩)に転化した後に培養装置に供給する場合は培地中に供給すればよい。アンモニア又はアンモニア由来含窒素化合物の供給は、公知の方法に従って実施することができる。培養装置へのアンモニア又はアンモニア由来含窒素化合物の供給量は、有機化合物の生産能を有する微生物の種類をはじめとする培養装置の具体的設計に応じて決定してよい。
【0073】
以下、本発明の製造システムの実施形態について、図面を参照しつつ、説明することとする。
【0074】
図1には、原料ガス製造装置101、アンモニア合成装置102、加圧冷却装置及びPSA装置から選択されるアンモニア濃縮装置103、及び培養装置203を含む、製造システム1000を示す。
【0075】
製造システム1000では、はじめに、水素ガス原料1と空気2が原料ガス製造装置101に供給される。水素ガス原料1としては、原料ガス製造装置101における水素の製造プロセスに応じて、炭化水素(例えば、石炭、石油、天然ガス、バイオマス)、水を使用してよい。水素の製造プロセスとしては、先述のとおり、1)炭化水素を、水蒸気改質反応、部分酸化反応、又はこれらの組み合わせによりCO、H
2を含むガスへと転化した後、COシフト反応、脱CO
2処理を実施する方法、2)水を電気分解する方法、3)光触媒を用いて水を分解する方法が挙げられる。原料ガス製造装置101においてはまた、窒素が製造される。窒素は、窒素分離膜あるいは深冷分離法を用いて空気から窒素を分離して調製してよい。あるいは、炭化水素の部分酸化反応を利用して水素を調製する場合には、酸素源として使用した空気中の窒素を利用してもよい。
【0076】
原料ガス製造装置101で製造された水素と窒素を含む原料ガス3は、アンモニア合成装置102に供給される。アンモニア合成装置102では、担持ルテニウム触媒の存在下、水素と窒素を含む原料ガスを反応させてアンモニア含有ガスが合成される。
【0077】
合成されたアンモニア含有ガス4は、加圧冷却装置及びPSA装置から選択されるアンモニア濃縮装置103に供給される。アンモニア濃縮装置103が加圧冷却装置である場合、液体アンモニア6が得られる。アンモニア濃縮装置103がPSA装置である場合、濃縮アンモニアガス6が得られる。なお、得られた液体アンモニアや濃縮アンモニアガスは、貯蔵タンク(図示せず)に貯蔵してもよい。
【0078】
得られた液体アンモニアや濃縮アンモニアガス6は、培養装置203に供給される。培養装置203には、有機化合物の生産能を有する微生物の種類に応じて適切な培地が導入されており、必要に応じて空気13が供給される。培養装置203においては、窒素源又はpH調整剤としてアンモニア6が使用される。有機化合物の生産能を有する微生物を培養することにより有機化合物又は微生物14を製造することができる。
【0079】
なお、
図1に示す製造システム1000は、アンモニア濃縮装置103で分離された未反応の水素と窒素を回収して、回収したガス5をアンモニア合成装置102の上流側にリサイクルするリサイクル装置(図示せず)を備える。
【0080】
図2には、原料ガス製造装置101、アンモニア合成装置102、ガス分離膜装置(アンモニア濃縮装置)104及び105、及び培養装置203を含む、製造システム1001を示す。製造システム1001において、原料ガス製造装置101、アンモニア合成装置102、培養装置203は、先述のとおりである。
【0081】
製造システム1001は、アンモニア濃縮装置としてガス分離膜装置104及び105を備える。例えば、水素ガス分離膜104と窒素ガス分離膜105を組み合わせて使用することができる。ガス分離膜装置104及び105を備える製造システム1001では、濃縮アンモニアガス6が得られる。得られた濃縮アンモニアガスは、貯蔵タンク(図示せず)に貯蔵してもよい。
【0082】
なお、
図2に示す製造システム1001は、ガス分離膜装置104及び105で分離された未反応の水素と窒素を回収して、回収したガス5をアンモニア合成装置102の上流側にリサイクルするリサイクル装置を備える。
【0083】
図3には、原料ガス製造装置101、アンモニア合成装置102、冷却器106、及び培養装置203を含む、製造システム1002を示す。製造システム1002において、原料ガス製造装置101、アンモニア合成装置102は、先述のとおりである。
【0084】
製造システム1002では、アンモニア合成装置102で得られたアンモニア含有ガス4が冷却器106で冷却される。次いで、冷却されたアンモニア含有ガス6が培養装置203に備え付けられた予混合器204に供給される。
【0085】
製造システム1002において、培養装置203は、予混合器204を備える。予混合器204と培養装置203の培養槽との間では、培地が循環している。予混合器204では、循環している培地にアンモニアが予混合される。これにより、アンモニアが混合された培地が培養装置203の培養槽に供給される。
【0086】
冷却されたアンモニア含有ガス6には、未反応の水素と窒素が含まれる。製造システム1002では、予混合器204において未反応の水素と窒素を回収して、回収したガス15をアンモニア合成装置102の上流側にリサイクルするリサイクル装置を備える。また、回収したガス15には、培地に由来する水分が含まれる。製造システム1002において、リサイクル装置は、回収したガス15中の水分を除去する脱水装置107を備える。製造システム1002はまた、回収したガス15をさらに乾燥させる乾燥装置108を備える。
【0087】
図4には、原料ガス製造装置101、アンモニア合成装置102、冷却器106、アンモニア水製造装置201、アンモニアストリッピング装置205、及び培養装置203を含む、製造システム1003を示す。製造システム1003において、原料ガス製造装置101、アンモニア合成装置102、冷却器106、培養装置203は、先述のとおりである。
【0088】
製造システム1003では、アンモニア合成装置102で得られたアンモニア含有ガス4が冷却器106で冷却される。次いで、冷却されたアンモニア含有ガス6がアンモニア水製造装置201に供給される。アンモニア水製造装置201にはまた、水7が供給される。アンモニア水製造装置では、冷却されたアンモニア含有ガス6中のアンモニアを水7に溶解させてアンモニア水8を製造することができる。溶解の方法や条件は、所期の濃度のアンモニア水を製造し得る限り特に限定されず、公知の方法、条件を使用してよい。
【0089】
冷却されたアンモニア含有ガス6には、未反応の水素と窒素が含まれる。製造システム1003では、アンモニア水製造装置201において未反応の水素と窒素を回収して、回収したガス9をアンモニア合成装置102の上流側にリサイクルするリサイクル装置を備える。また、回収したガス9には、アンモニア水製造装置201で使用する水7に由来する水分が含まれる。製造システム1003において、リサイクル装置は、回収したガス9中の水分を除去する脱水装置107を備える。製造システム1003はまた、回収したガス9をさらに乾燥させる乾燥装置108を備える。
【0090】
製造システム1003では、製造したアンモニア水8を、さらに有機化合物又は微生物の製造に使用する。詳細には、製造されたアンモニア水8をアンモニアストリッピング装置205に供給して、アンモニア水からアンモニアガスを回収する。アンモニアストリッピング装置205としては、アンモニア水からアンモニアガスを回収することができる限り特に限定されず、公知のストリッピング装置を使用してよい。アンモニアストリッピング装置205で回収されたアンモニアを窒素源又はpH調整剤として使用して、培養装置203において有機化合物の生産能を有する微生物を培養することにより有機化合物又は微生物14を製造することができる。アンモニアストリッピング装置205で除去した水12は、
図4に示すように水7に合流させても良いし、排出しても良い。
【0091】
製造システム1003では、アンモニア水製造装置201で製造したアンモニア水8を輸送して、地理的に離れた場所において有機化合物又は微生物を製造することも可能である。
【0092】
以上、
図1〜
図4を参照して、本発明の有機化合物又は微生物の製造システムを説明してきた。
図1〜
図4に示す実施形態では、窒素源又はpH調整剤としてアンモニアを培養装置203に供給しているが、アンモニアを他の含窒素化合物(アンモニウム塩、尿素、硝酸、硝酸塩)に転化した後、該含窒素化合物を培養装置203に供給してもよい。このような変更形態も本発明の範囲に包含される。
図1〜
図4に示す製造システムにおいて、原料ガス製造装置101に代えて、水素ボンベ、水素タンク等の水素供給装置と、窒素ボンベ、窒素タンク等の窒素供給装置とを使用してもよい。また、
図1〜
図3に示す製造システムにおいて、液体アンモニアや濃縮アンモニアガス等の濃縮アンモニア6は、アンモニア水とした後に、培養装置203に供給することも好適である。
【0093】
[製造方法]
本発明はまた、有機化合物又は微生物の新規な製造方法を提供する。本発明の製造方法では、液体アンモニアの輸送を伴わない(あるいは最小限に抑える)ことを特徴とする。
【0094】
一実施形態において、本発明の有機化合物又は微生物の製造方法は、
(A)担持ルテニウム触媒の存在下、水素と窒素を含む原料ガスを反応させてアンモニア含有ガスを合成する工程、及び
(B)得られたアンモニア含有ガス由来のアンモニアを使用して有機化合物の生産能を有する微生物を培養する工程
を含む。
【0095】
工程(A)で使用する担持ルテニウム触媒、原料ガス、アンモニア含有ガス、及びアンモニア含有ガスを合成する際の条件(温度、圧力等)は[製造システム]に記載のとおりである。また、工程(B)で製造する有機化合物又は微生物、その製造方法は[製造システム]に記載のとおりである。本発明の製造システムについて説明した有利な効果は、本発明の製造方法についても同様に適用される。
【0096】
本発明の製造方法は、工程(A)と工程(B)を連続的に実施することを特徴とする。本発明において「工程(A)と工程(B)を連続的に実施する」とは、工程(A)で合成されたアンモニア含有ガスを、液体アンモニアとして輸送することなく、工程(B)を実施することを意味する。なお、「液体アンモニアとして輸送」とは、パイプライン、航空、船舶、自動車等による、地理的に離れた2地点間の移送を意味し、有機化合物又は微生物の製造拠点内部での移送は含まれない。
【0097】
本発明の製造方法は、水素ガス原料と空気から水素と窒素を含む原料ガスを製造する工程をさらに含んでもよい。水素ガス原料、原料ガスの製造方法については、[製造システム]に記載のとおりである。
【0098】
本発明の製造方法は、工程(A)で得られたアンモニア含有ガス中のアンモニアを濃縮する工程をさらに含んでもよい。アンモニア含有ガス中のアンモニアを濃縮する方法については、[製造システム]に記載のとおりである。
【0099】
本発明の製造方法は、未反応の水素と窒素を回収して、回収したガスを工程(A)にリサイクルする工程(以下、「工程(C)」という。)をさらに含んでもよい。一実施形態において、工程(C)は、回収したガス中の水分を除去する脱水処理及び/又は乾燥処理を含んでよい。脱水処理、乾燥処理の方法については、[製造システム]に記載のとおりである。
【0100】
本発明の製造方法の好適な一実施形態においては、工程(A)で得られたアンモニア含有ガス由来のアンモニアを使用してアンモニア水を製造し、得られたアンモニア水を工程(B)において使用して有機化合物の生産能を有する微生物を培養する。
【0101】
本発明の製造方法の他の好適な一実施形態においては、工程(A)で得られたアンモニア含有ガス由来のアンモニアを使用してアンモニア水を製造し、得られたアンモニア水からアンモニアガスを回収し、回収されたアンモニアガスを工程(B)において使用して有機化合物の生産能を有する微生物を培養する。
【0102】
本発明の製造方法は、培養終了後の培地液から代謝産物を採取することをさらに含んでもよい。本発明において、代謝産物を採取する方法は特に限定されず、従来より周知となっているイオン交換樹脂法、沈澱法その他の方法を組み合わせることにより代謝産物を採取することができる。
【実施例】
【0103】
[参考例1]
<Ruを担持したCs−MgOの合成>
MgO(宇部マテリアルズ(株)社製、製品番号UC95)(1g)を、500℃で5時間真空排気加熱し、Ar雰囲気下でRu
3(CO)
12を溶解させたテトラヒドロフラン溶液中に浸漬した。3時間攪拌後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、350℃で2時間真空排気加熱をした。これにより2wt%のRu金属粒子を担持したMgO触媒が得られた。さらに得られた触媒をAr雰囲気下でCs
2CO
3を溶解させたエタノール溶液中に浸漬した。このとき、CsとRuの元素比が1:1となるようにCs
2CO
3の量を調節した。3時間攪拌後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、室温で12時間真空排気処理を行うことで2wt%のRu金属粒子を担持したCs−MgO触媒(powder)が得られた。得られた触媒のBET比表面積は12m
2/g、CO吸着法で測定したRu分散度(%)は25であった。
【0104】
<アンモニア合成反応>
窒素ガス(N
2)と水素ガス(H
2)を反応させてアンモニアガス(NH
3)を生成する合成反応を行った。上記の方法で得られた触媒0.1gをガラス管に詰め、固定床流通式反応装置で合成反応を行った。ガスの流量は、N
2:15mL/min、H
2:45mL/min、計60mL/minに設定し、反応温度:340℃、圧力:大気圧で反応を行った。流通系の反応器から出てきたガスを0.005M硫酸水溶液中にバブリングさせ、生成したアンモニアを溶液中に溶解させ、生じたアンモニウムイオンをイオンクロマトグラフにより定量した。
【0105】
2wt%Ru/Cs−MgO触媒(Cs/Ru元素比=1)は、340℃においてアンモニア生成速度2367μmolg
−1h
−1を示した。TOF(×10
−3s
−1)は13.3であった。
【0106】
[参考例2]
<Ru−Cs/MgO触媒(RuとともにCsをMgOに担持した触媒)の合成>
MgO(宇部マテリアルズ(株)社製、製品番号UC95)粉末を石英ガラス容器に入れて、500℃で6時間真空排気した脱水処理した。脱水したMgO 1.00gを超脱水THF溶媒(和光純薬工業(株)社製、製品番号207−17765)60mL中に入れた。Ru担持量が、Ru−Cs/MgO触媒に対して6wt%となるように溶媒中にRu
3(CO)
12(純度99%、Aldrich社製、製品番号245011)0.02gを入れ、室温で4時間撹拌し、MgOにRu金属を含浸担持した。エバポレーターを使用し、40℃、16.0kPaにて7時間かけて乾固させた(1.01g)。乾固させた試料0.81gを脱水エタノール100mL中に入れた。RuとCsのモル比が1:1となるようにCs
2CO
3(関東化学(株)社製、製品番号07184−33)0.078gを入れ、室温で4時間撹拌し、Ru/MgOにCs金属を含浸担持した。エバポレーターを使用し、室温、9.0kPaにて7時間乾固した。6wt%Ru−Cs/MgO触媒0.087gを得た。
【0107】
<アンモニア水の製造>
窒素ガス(N
2)と水素ガス(H
2)を反応させてアンモニアガス(NH
3)を生成する反応を行った。得られた触媒0.2gを耐圧管に詰め、固定床流通式反応装置で反応を行った。ガスの流量は、N
2:15mL/min、H
2:45mL/min、計60mL/minに設定し、圧力:0.9MPa、反応温度400℃で反応を行った。流通系の反応器から出てきたガスを約3℃に冷却した水中に通気させ、アンモニアの生成速度は3734μmolg
−1h
−1であり、生成したNH
3を水中に溶解し、生成したNH
3を水中に溶解させ、約109時間でアンモニア水溶液1(液量200g、NH
4+量1.60g)を得た。
【0108】
[参考例3]
<硫酸アンモニウム溶液の製造>
参考例2のアンモニア水の製造において、反応温度400℃で、反応圧力を0.9MPaから0.1MPaに変え、さらに流通系の反応器から出てきたガスを約3℃に冷却した水に通気させることを、流通系の反応器から出てきたガスを室温下で0.220M硫酸水溶液に通気させることに変えた。以上の事項以外は参考例2と同様にして硫酸アンモニウムの製造を行った。アンモニアの生成速度は、3531μmolh
−1g
−1であり、約56時間で硫酸アンモニウム溶液1(液量100g、NH
4+量0.81g)を得た。
【0109】
[実施例1]
参考例1により合成されたアンモニアガスを水に溶解し、アンモニア水を得る。
【0110】
得られたアンモニア水から、アンモニアストリッピング装置を用いてアンモニアガスを回収し、そのアンモニアガスを用いて、E.coli MG1655を培養する。
生育曲線より、本発明で得られたアンモニアガスは、発酵・培養生産に用いることが可能であることが示される。
【0111】
[実施例2]
参考例2で製造したアンモニア水溶液1、E.coliを用いてL−リジン生産培養をした。培養には以下の培地を用いた。
【0112】
〔LB寒天培地〕
トリプトン:10g/L、酵母エキス:5g/L、NaCl:10g/L、寒天:15g/L
〔Lys安水培地〕
グルコース:20g/L、NH
3:3.09g/L(参考例2で製造したアンモニア水溶液1を使用)、MgSO
4・7H
2O:1g/L、KH
2PO
4:1g/L、酵母エキス:2g/L、FeSO
4・7H
2O:0.01g/L、MnSO
4・5H
2O:0.008g/L、H
2SO
4を用いてpH7.0に調整
【0113】
Lys生産菌WC196ΔcadAΔldc/pCABD2を、終濃度80mg/Lとなるようにストレプトマイシンを添加したLB寒天培地にて、37℃で一昼夜培養した。培養後の寒天培地から直径90mmのプレート上の全ての菌体をかきとり、3mLの生理食塩水に懸濁することで菌液を調製した。
【0114】
ストレプトマイシンを終濃度80mg/Lとなるように添加し、且つ予め乾熱滅菌した炭酸カルシウムを終濃度が30g/Lとなるように添加したLys安水培地を5mL張込んだ太試験管に、波長620nmに対する吸光度(O.D.620nm)が0.126となるように菌液を植菌後、37℃、120rpmにて24時間振とう培養した。
【0115】
[実施例3]
実施例2において、Lys安水培地を以下のLys硫安培地に変えた。以上の事項以外は実施例2と同様にしてL−リジンの生産培養を行った。
〔Lys硫安培地〕
グルコース:20g/L、(NH
4)
2SO
4:12g/L(参考例3で製造した硫酸アンモニウム溶液1を使用)、MgSO
4・7H
2O:1g/L、KH
2PO
4:1g/L、酵母エキス:2g/L、FeSO
4・7H
2O:0.01g/L、MnSO
4・5H
2O:0.008g/L、KOHを用いてpH7.0に調整
【0116】
[比較例1]
実施例2において、Lys安水培地におけるアンモニア水溶液1を市販品のアンモニア水溶液(純正化学(株)社製、製品番号13370−0301)に変えた。以上の事項以外は実施例2と同様にしてL−リジンの生産培養を行った。
【0117】
[比較例2]
実施例3において、Lys硫安培地における硫酸アンモニウム溶液1を市販品の硫酸アンモニウム溶液(純正化学(株)社製、製品番号83110−0367)に変えた。以上の事項以外は実施例3と同様にしてL−リジンの生産培養を行った。
【0118】
【表1】
【0119】
培養結果を上記表に示した。参考例2で製造したアンモニア水溶液1、又は参考例3で製造した硫酸アンモニウム溶液1を使用した場合においても、市販品のアンモニア水溶液(比較例1)あるいは市販品の硫酸アンモニウム溶液(比較例2)を使用して培養したものとほぼ同等の菌体生育とL−リジンの生産が確認され、本発明で得られたアンモニアガスを発酵・培養生産に用いることが可能であることが示された。
【0120】
[実施例4]
参考例2で製造したアンモニア水溶液、Corynebacterium glutamicumを用いてL−グルタミン酸の生産培養を行った。培養には以下の培地を用いた。
〔CM−Ace寒天培地〕
グルコース:2.5g/L、フルクトース:2.5g/L、グルコン酸ナトリウム:4g/L、コハク酸ナトリウム・6H
2O:2g/L、ペプトン:10g/L、Yeast Extract:10g/L、KH
2PO
4:1g/L、MgSO
4・7H
2O:0.4g/L、FeSO
4・7H
2O:0.01g/L、MnSO
4・5H
2O:0.01g/L、Urea:4g/L、豆ろ液(大豆加水分解物):1.2g/L(T−N)、ビオチン:1mg/L、ビタミンB1:5mg/L、KOHを用いてpH7.5に調整
〔Glu安水培地〕
グルコース:40g/L、NH
3(参考例2で製造したアンモニア水溶液1を使用)3.86g/L、KH
2PO
4:1g/L、MgSO
4・7H
2O:0.4g/L、FeSO
4・7H
2O:0.01g/L、MnSO
4・5H
2O:0.01g/L、ビタミンB1:200μg/L、ビオチン:300μg/L、豆ろ液:0.48g/L(T−N)、K
2SO
4:19.78g/L、H
2SO
4を用いてpH8.0に調整
【0121】
Corynebacterium glutamicumのGlu生産菌2256ΔldhAΔsucA yggB*をCM−Ace寒天培地にて、31.5℃で一昼夜培養した。培養後の寒天培地から1/24プレート分の菌体をかきとり、予め乾熱滅菌しておいた炭酸カルシウムを終濃度が30g/Lとなるように添加したGlu安水培地を5mL張込んだ太試験管に植菌し、31.5℃、120rpmにて24時間振とう培養した。
【0122】
[実施例5]
実施例4において、Glu安水培地を以下のGlu硫安培地に変えた。以上の事項以外は実施例4と同様にしてL−グルタミン酸の生産培養を行った。
〔Glu硫安培地〕
グルコース:40g/L、(NH
4)
2SO
4:15g/L(参考例3で製造した硫酸アンモニウム溶液1を使用)、KH
2PO
4:1g/L、MgSO
4・7H
2O:0.4g/L、FeSO
4・7H
2O:0.01g/L、MnSO
4・5H
2O:0.01g/L、ビタミンB1:200μg/L、ビオチン:300μg/L、豆ろ液:0.48g/L(T−N)、KOHを用いてpH8.0に調整
【0123】
[比較例3]
実施例4において、Glu安水培地におけるアンモニア水溶液1を市販品のアンモニア水溶液(純正化学(株)社製、製品番号13370−0301)に変えた。以上の事項以外は実施例4と同様にしてL−グルタミン酸の生産培養を行った。
【0124】
[比較例4]
実施例5において、Glu硫安培地における硫酸アンモニウム溶液1を市販品の硫酸アンモニウム溶液(純正化学(株)社製、製品番号83110−0367)に変えた。以上の事項以外は実施例5と同様にしてL−グルタミン酸の生産培養を行った。
【0125】
【表2】
【0126】
培養結果を上記表に示した。参考例2で製造したアンモニア水溶液1、又は参考例3で製造した硫酸アンモニウム溶液1を使用した場合においても、市販品のアンモニア水溶液(比較例3)あるいは市販品の硫酸アンモニウム溶液(比較例4)を使用して培養したものとほぼ同等の菌体生育とL−グルタミン酸の生産が確認され、本発明で得られたアンモニアガスを発酵・培養生産に用いることが可能であることが示された。