特許第6798977号(P6798977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798977
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】歯磨組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/11 20060101AFI20201130BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20201130BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/43 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   A61K8/11
   A61K8/21
   A61Q11/00
   A61K8/92
   A61K8/73
   A61K8/81
   A61K8/36
   A61K8/86
   A61K8/87
   A61K8/85
   A61K8/19
   A61K8/24
   A61K8/43
   A61K8/40
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-501434(P2017-501434)
(86)(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公表番号】特表2017-509706(P2017-509706A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】AU2015050133
(87)【国際公開番号】WO2015143507
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2018年3月23日
(31)【優先権主張番号】2014901059
(32)【優先日】2014年3月25日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】516287807
【氏名又は名称】バイオデンタル レミン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マッキントッシュ,アレクサンダー,ラン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルキ,ビョルン,ケンタロ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルキ,ロシ
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03471613(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0171904(US,A1)
【文献】 特表2013−529633(JP,A)
【文献】 特開昭64−006213(JP,A)
【文献】 特表2006−501268(JP,A)
【文献】 特開2004−196698(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/061932(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
7〜10のpHを有する練り歯磨き基剤を含む歯磨組成物であって、前記歯磨組成物はカルシウムイオン源とフッ化物イオン源とを含み、
前記カルシウムイオン源が、非カプセル化されており、かつ1種または複数種のショ糖リン酸カルシウム複合体であり、および
前記フッ化物イオン源がカプセル化されているかまたは練り歯磨き基剤に対して不浸透性のコーティングに被覆されており、かつ前記フッ化物イオン源が1種または複数種のフッ化アミンであり、それによって口腔面において歯ブラシによって機械的に撹拌されると、前記コーティングが分解して前記フッ化物イオンを放出し、
前記歯磨組成物が、口腔内において前記歯ブラシによって使用されると、前記コーティングが機械的に分解する前に、前記口腔内の歯面が前記カルシウムイオン源とまず曝露し、次いで、前記カプセル化されたフッ化物イオン源が放出し、かつ前記歯面が前記フッ化物イオン源と曝露する、歯磨組成物。
【請求項2】
前記フッ化物イオン源が、
.001ppm〜1ppm未満の間の有効濃度、0.001ppm〜9000ppmの間の有効濃度、もしくは0.0025〜0.09ppmの間の有効濃度で存在する、請求項1に記載の歯磨組成物。
【請求項3】
前記不浸透性コーティング材料が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC酢酸エステルコハク酸エステル、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、シェラック、ワックス、脂肪酸、フルオロポリマー、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコール(PVA−PEG)、ポリビニルピロリジン(PVP)、ポリウレタン、アクリル、アルキド、ポリエステル、およびメチルまたはエチルセルロースからなる群の1種または2種以上の組み合わせから選択される、請求項1または2に記載の歯磨組成物。
【請求項4】
前記カルシウムイオン源が500ppm〜50,000ppmの間の有効濃度で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯磨組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨組成物、具体的には、少なくとも2種の反応性成分を含む歯磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、主に練り歯磨きまたは歯磨剤として開発されており、本出願に関連して後述される。しかし、本発明がこの特定の使用分野に限定されず、例えば、口腔衛生の改善、歯の洗浄または歯の再石灰化のために口腔に塗布される他の局所組成物に適用できることはいうまでもない。
【0003】
何十年もの間、練り歯磨きが、予防剤または抗う蝕剤としてフッ化ナトリウムまたはフッ化第一スズなどのフッ化塩を含むことはよく知られている。これらのフッ化物源(ほとんどの場合モノフルオロリン酸ナトリウム塩)は、練り歯磨き基剤材料に配合されている。
【0004】
練り歯磨き基剤材料は、一般的に、pHが7〜約8.5であり、および他の成分、例えば研磨剤およびマウスフィール剤を含む。一度、歯に塗布されると、フッ化物イオンは、反応して、フッ化物イオンとして歯エナメル質を形成している結晶格子中に結合する。フッ化物イオンはヒドロキシアパタイトと結合して、より耐酸性の歯エナメル質を生成し、および主にヒドロキシアパタイトから構成されている歯エナメル質表面の不規則な結晶格子を修復する。
【0005】
練り歯磨きの再石灰化または修復の潜在力を最大にする試みがなされていることは、かなり以前から知られている。これが達成される方法の一つは、2種の相補的であるがさもなければ反応性の成分を練り歯磨き中に配合することである。
【0006】
国際公開第99/62471号(WongおよびPrencipe)は、不透水性シェルに被覆され、モノフルオロリン酸ナトリウムなどの水性フッ化塩を含有する練り歯磨き基剤中に配合されているカルシウム塩、例えば酢酸カルシウムまたは塩化カルシウムを含む水性歯磨組成物を開示している。カルシウム塩のシェルは、クエン酸トリエチルによって可塑化されたエチルセルロースポリマーから形成されている。使用中、練り歯磨き基剤は歯ブラシ上に置かれ、次いでそれは歯の上または口腔の他の部位に塗られる。このプロセスは、機械的にカルシウム塩コーティングを破り、それによってフッ化物との反応を開始させる。
【0007】
これは、最初にフッ化物イオンへの暴露を可能にし次いでカルシウムイオン源を放出することによって、歯の上での水性フッ化物塩の効力を改善すると考えられる。米国特許第5,045,305号は、半透性のコーティングを介して歯の上にフッ化物イオンを堆積させる方法に関する。Wongらは、歯をフッ化物イオン源に曝し次いでコーティングしたカルシウムイオン源からカルシウムイオンを放出することによって、この方法を改善したと主張した。しかし、実益になり得る割合で歯の再石灰化を示す何らかの実績があるようには見えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、リン酸イオン源および/またはカルシウムイオン源を共に含むフッ化物イオン源を提供して含まれるフッ化物源、リン酸源および/またはカルシウム源が使用されるまで安定である歯磨組成物を形成する、または有用な代替物を提供するという願望に起源を発する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、約7〜約10のpHを有する練り歯磨き基剤を含む歯磨組成物が提供され、この歯磨組成物はカルシウムイオン源およびフッ化物イオン源を含み、カルシウムイオン源が非カプセル化されており、フッ化物イオン源がカプセル化されているか、または練り歯磨き基剤に対して不浸透性のコーティングに被覆されており、それによって口腔面において歯ブラシによって機械的に撹拌されるとコーティングが分解してフッ化物イオンを放出する。
【0010】
したがって、口腔および歯面に塗布されてからフッ化物イオン源が利用可能になる、カルシウムイオン源と共に基剤材料を含む歯磨組成物が有利に提供されることがわかる。
フッ化物イオン源は、歯ブラシで塗布されると分解するように適合されたコーティングを含むまたはコーティングでカプセル化されており、塗布の際コーティング材料は、損なわれてフッ化物イオン源を放出する、または曝す。好適に適合された腸溶コーティングまたは他の破裂可能な不浸透性コーティングのいずれかを用いて、ブラシング作用がフッ化物イオンを放出させるようにもできるのは、有利である。
【0011】
さらに、好適な実施形態において、練り歯磨き基剤材料は、Biodental Remin Ltd,Sydney,Australiaの登録商標であるAnticay(登録商標)として知られているショ糖リン酸カルシウム複合体であり、コーティングされたフッ化物イオン源も含むカルシウムイオンとリン酸イオンの両方の供給源を提供する。口腔および歯面は、最初、カルシウムイオン源に曝され、次いで機械的作用によってフッ化物イオンを放出する。これは発明者らには、再石灰化の大きな潜在的可能性をもたらすように見える。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、約7〜約10のpHを有する水性練り歯磨き基剤を含む歯磨組成物が提供され、この歯磨組成物は非カプセル化カルシウムイオン源と3〜7未満の間のpHを有するフッ化物イオン源とを含み、フッ化物イオン源が練り歯磨き基剤の存在下で分解してフッ化物イオンを放出するように適合された第1の(または内側の)不浸透性コーティングにカプセル化されており、ならびに第1のコーティングが、練り歯磨き基剤の存在下で分解に耐えるよう、および機械的に分解して第1の(または内側の)コーティングを曝すように適合された第2の(または外側の)不浸透性コーティングに包まれ、これが口腔面への歯磨組成物の塗布に反応し分解してフッ化物イオンを放出する。
【0013】
したがって、コーティングされたフッ化物イオン源も含むカルシウムイオンとリン酸イオンの両方の供給源を提供する、ショ糖リン酸カルシウム複合体と共に水性基剤材料を含む歯磨組成物が有利に提供されることがわかる。
口腔および歯面は、最初、カルシウムイオン源とリン酸イオン源の両方に曝され、次いで機械的作用によって、再石灰化の大きな潜在的可能性をもたらすように見える、フッ化物イオンを放出する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで本発明の好適な実施形態を以下の非限定的な例として述べる。
【0015】
カルシウムイオン源およびリン酸イオン源が、近頃の再石灰化する練り歯磨き成分に含まれていることは知られている。例えば、Novamin(商標)(GlaxoSmithKline)に使用されている、またはRecaldent(商標)(Cadbury Enterprises Pte.Ltd)に使用されている。しかし、他の任意のカルシウムイオン源は、好ましくは有用なリン酸イオン源と共に、フッ化カルシウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸カルシウムを含む任意の好ましい既知の材料を含み得る。
【0016】
歯の再石灰化および歯の修復有効性において潜在的に著しく有望な材料としては、ショ糖リン酸カルシウム複合体、Anticay(登録商標)がある。ショ糖リン酸カルシウム複合体を参照して、好適な実施形態を以下に記載するが、前述のように任意のカルシウムイオン源を使用できる。ショ糖カルシウム複合体は、極めて水に溶けやすいカルシウムイオン源を提供し、かつリン酸イオン源も提供する。リン酸イオンがヒドロキシアパタイトの構造に不可欠であることは知られている。
【0017】
ショ糖リン酸カルシウム複合体は、歯磨剤中で使用できる周知の再石灰化および抗う蝕の材料である。米国特許第3,375,168号(Curtinら)を参照して、ショ糖リン酸カルシウム複合体の製造および分離が開示され、この開示は、相互参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0018】
好適な実施形態において、Curtainらの場合のように、ショ糖リン酸カルシウム複合体の1種または複数種は、粒径が10μm〜100μmの間の粒子として提供される。これらは、練り歯磨き基剤と組み合わせられた。練り歯磨き基剤の約1〜5重量%のショ糖リン酸カルシウム複合体が添加されるが、好ましくは、ショ糖リン酸カルシウム複合体の0.5重量%〜70重量%の間の任意の量を添加できる。最も好ましくは、ショ糖リン酸カルシウム複合体は、口腔内において500ppm〜50,000ppmの量でカルシウムイオン有効濃度を可能にするように提供される。また、有利に、ショ糖リン酸カルシウム複合体中のリン酸塩は、練り歯磨き基剤を緩衝することを補助する。
【0019】
しかし、水性または非水性かどうかにかかわらず、任意の好ましいカルシウムイオン源を必要に応じて使用できることを理解されたい。例えば、カルシウムイオン源としては、炭水化物リン酸カルシウム複合体、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、フッ化カルシウム、マレイン酸カルシウおよびムおよび酒石酸カルシウムのいずれか1種または組み合わせが挙げられる。もちろん、他の既知のカルシウムイオン源およびリン酸イオン源、例えば、それぞれCadbury Enterprises Pte LtdおよびGlaxoSmithKlineから提供される、Recaldent(商標)(カルシウムホスホペプチド−アモルファス状リン酸カルシウム)またはNovamin(商標)(リンケイ酸ナトリウムカルシウム)を、練り歯磨き基剤材料に添加できる。
【0020】
好適な実施形態の練り歯磨き基剤は、以下から形成された:
好ましくは5重量%量の1種または複数種のショ糖リン酸カルシウム複合体、
39.7重量%量の、最も好ましくは約1ミクロン〜50ミクロンおよび10nm〜500nmの粒径を有するリン酸カルシウム、
グリセリン20重量%、
ソルビトール2.07重量%、
ラウリル硫酸ナトリウム2.8重量%、
サッカリン0.1重量%、
安息香酸ナトリウム0.1重量%、
香味料0.9重量%、
2×10−6重量%〜2.0重量%の量でフッ化ナトリウムが存在して0.0025ppm〜約9000ppmの間の有効なフッ化物イオン源を提供するようにクエン酸トリエチルによって可塑化されたエチルセルロースに被覆されたモノフルオロリン酸ナトリウム粒子、および
100%精製水。
【0021】
別の例では、練り歯磨き基剤は、水、ヒドロキシアパタイトまたはゼオライトの形状での研磨材、ラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤、ソルビトールの形状での糖アルコール、および好ましくは10重量%量での1種または複数種のショ糖リン酸カルシウム複合体から形成され得る。
【0022】
任意の好ましい練り歯磨き基剤組成物が使用できることはいうまでもない。好ましくは、これは水性であり、単純に水と混合したショ糖リン酸カルシウム複合体を含んでよい。同様に、練り歯磨き基剤は、従来のペースト形状である必要はないが、ゲルを含んでもよい。
【0023】
ショ糖リン酸カルシウム複合体を有する好適な実施形態の練り歯磨き基剤に、フッ化ナトリムを2×10−6%〜2.0%の間で添加した。これは、粒径が100μm未満、最も好ましくは粒径が20μm未満の粒子の形状である。理想的には、フッ化物イオン源は、0.0025ppm〜9000ppmの量で有効なフッ化物イオンを提供するための量で添加される。フッ化ナトリム粒子は、クエン酸トリエチルによって可塑化されたエチルセルロースポリマーの形状での水不溶性かつ不透性のコーティング、または水環境中でフッ化物イオン源を包むことができる他のコーティングに包まれていた。
【0024】
任意の好ましいフッ化物イオン源として、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸第一スズ、フッ化銅または任意の他のフッ化物イオン源から任意の1種または複数種を用いることができることはいうまでもない。歯磨組成物中で一般的に用いられるモノフルオロリン酸ナトリムなどの、中性付近または中性を超えるpHを有するフッ化物イオン源の場合、これらの粒子は、上述のようにエチルセルロースに包まれてよく、または練り歯磨き基剤中のフッ化物イオンに対して不浸透性バリアをもたらすように適合される種々の状況でマイクロカプセル化のために用いられる任意の他の好ましいコーティング材料に包まれてよく、フッ化物イオン源は歯ブラシによるブラッシング中に破られ得る。例えば、コーティング材料は、シェラック、ワックス、脂肪酸、メチルセルロース、フルオロポリマー、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコール(PVS−PEG)、ポリウレタン、アクリル、アルキド、ポリエステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)もしくはHPMC酢酸エステルコハク酸エステル、
ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、およびポリビニルピロリジン(PVP)のうちの1種または2種以上の組み合わせであり得る。
【0025】
フッ化物イオンコーティングは、ブラッシングによりコーティングが壊れるように、7〜10の間のpHの練り歯磨き基剤材料の存在下でフッ化物イオン源をカプセル化させた状態にしておく必要がある。腸溶コーティングとして使用されることが知られているいくつかの材料は、練り歯磨き基剤の環境下で分解に耐えるように適合されると用いることができるが、しかしこれらは一般的に、約5未満のpH範囲内で分解に耐え、および上述のように例えば、アクリルは7〜10の間のpH環境で用いることができる。
【0026】
歯磨組成物が口腔に塗布されると、ショ糖リン酸カルシウム複合体は歯エナメル質表面に曝される。従来の歯ブラシまたは他のアジテータを用いるなどの方法でのブラッシングは、カルシウムイオンおよびリン酸イオンが豊富な基剤を歯に接触させ、それによってカルシウムイオンおよびリン酸イオンを歯構造に結合させる状態を改善する。ブラッシングまたは撹拌のプロセスも、フッ化物イオン源コーティングを壊し、溶解しまたは分解してフッ化物イオン源を曝す。このように、カルシウムイオン源およびリン酸イオン源がすでに有効になっているならば、フッ化物イオン源は口腔内で歯に曝される。ショ糖リン酸カルシウム複合体の好適な実施形態において、練り歯磨き基剤材料が約500ppm〜50,000ppmのオーダーの有効なリン酸イオンを含む場合、リン酸イオンも有利に放出される。
【0027】
好適な実施形態の歯磨組成物において、その中のpHおよび有効なリン酸イオン、カルシウムイオンおよびフッ化物イオンの量を調節することも可能であり、これらのイオンの一部またはすべてを、濃度もしくは有効性で調節して、必要に応じて種々の量で、フッ化カルシウムの沈殿またはフルオロアパタイトの形成をもたらすことができる。特に好適な一実施形態において、練り歯磨き基剤(すべての成分を含む)の結果として生じる混合物のpHは、歯面への練り歯磨き基剤の塗布により分解するように適合された水不溶性かつ不浸透性のコーティングにカプセル化された少なくとも1種の酸または酸性緩衝剤を包含することによって修正される。
【0028】
塗布すると、酸または酸性緩衝剤が放出され、それによってpHを所定のレベルまで、好ましくは2.5〜7の間に低下させる。一部の実施形態において、pHは4〜6の間であり、他の好適な実施形態において、pHは約5.5である。例えば、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウムまたはリン酸三カルシウムを用いる場合、pHはカルシウムの溶解性に影響を及ぼし、その結果、カルシウムを完全に遊離させるかカルシウムをさらに使用可能にするためにpHをより酸性にすると、溶解性が増加することを理解されたい。
【0029】
他の好適な実施形態において、練り歯磨き基剤(すべての成分を含む)の結果として生じる混合物のpHは、酸性環境下にあるときまたは歯ブラシによる歯面への練り歯磨き基剤の塗布により分解するように適合された水不溶性かつ不浸透性のコーティングにカプセル化された少なくとも1種のアルカリ性物質または緩衝剤を包含することによって修正されてアルカリ性物質を放出し、それによってpHを所定のレベルまで、好ましくはほぼ中性pHまで上昇させる。コーティングは、アルカリ性物質の放出の時間が、ブラッシング経過時間の2分前に最終pHを達成させ得るような、濃度または厚さである。好適な一実施形態において、所定の最終pHは、6.0〜8の間、より好ましくは6.5〜7.5の間、より好ましくは7.5である。
【0030】
歯磨組成物の好適な実施形態は、練り歯磨き基剤が非水性である場合を包含しうることを理解されたい。歯磨組成物は、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、カッパー亜鉛、カッパーシン、および安定化二酸化塩素などの抗菌材料を1種または複数種を含むこともある。しかし、任意の好ましい抗菌材料を使用できる。
【0031】
口腔内の歯がカルシウムイオン源およびリン酸イオン源に曝されるのを可能にするために、フッ化物イオン源のコーティングにより、次いでフッ化物イオンを放出することにより、歯エナメル質の再石灰化の改善が生じると思われる。
【0032】
別の好ましい実施形態は、フッ化アミン(Olaflur(商標)としてのブランドでも知られている)の形状であるフッ化物の分解を阻止するための第2のコーティングを含む。
【0033】
この好ましい実施形態の練り歯磨き基剤は以下から形成された:
好ましくは5重量%の量の1種または複数種のショ糖リン酸カルシウム複合体、
39.7重量%の量の、最も好ましくは約1ミクロン〜50ミクロおよび10nm〜500nmの粒径を有するヒドロキシアパタイト、
グリセリン20重量%、
ソルビトール2.07重量%、
ラウリル硫酸ナトリウム2.8重量%、
サッカリン0.1重量%、
安息香酸ナトリウム0.1重量%、
香味料0.9重量%、
0.0025ppm〜約9000ppmの有効なフッ化物イオン源を提供するためのフッ化アミン(またはN,N,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N’−オクタデシルプロパン−1,3−ジアミンジヒドロフルオリドであるオラフルル)、および
100%精製水。
【0034】
練り歯磨き基剤は、例えば、水と、ヒドロキシアパタイトまたはゼオライトの形状での研磨材とから形成されてもよい。ラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤およびソルビトールの形状での糖アルコールも含まれる。任意の好ましい練り歯磨き基剤組成物がここで用いられ、好ましくは水性であり、および単純に水と混合したショ糖リン酸カルシウム複合体を含んでよいことを理解されたい。
【0035】
ショ糖リン酸カルシウム複合体を含有する練り歯磨き基剤中に、0.1%〜1.5%のフッ化アミン(または、N,N,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N’−オクタデシルプロパン−1,3−ジアミンジヒドロフルオリドであるオラフルル)を好ましくは添加できる。これは、粒径が100μm未満、最も好ましくは20μm未満の粒子の形状である。理想的には、フッ化物イオン源は、0.0025ppm〜9000ppmの量で有効なフッ化物イオンを提供するための量で添加される。
【0036】
フッ化物イオン源は、2種のコーティング材料にカプセル化される。最も好適な実施形態において、第1の(または内側の)フッ化アミンコーティングは、HPMCで構成される。好適な実施形態において、これは次いで、シェラックである第2の(または外側の)水不溶性コーティングで被覆される。他のポリマーまたは合成の水不溶性コーティング材料を、必要に応じて使用できる。フッ化アミン粒子は、ヒプロメロース(HMC)もしくはPVAPの形状での水不溶性および不透性のコーティングに、または一般的に約4のオーダーのpHを有するフッ化アミンイオン源を包むことができる他のコーティングに包むことができる。
【0037】
フッ化アミンが第1および第2のコーティングで被覆されたならば、それはショ糖リン酸カルシウム複合体を含有する水性練り歯磨き基剤に添加される。フッ化物イオン源は次いで、ショ糖リン酸カルシウム複合体との反応から保護される。
【0038】
歯磨組成物は次いで、最も好ましくは口腔内の表面に、特に歯面にブラシで塗布される。第1のコーティングを分解して曝すために、ブラッシング作用によりフッ化アミン上の不溶性の第2の(または外側の)コーティングが破られる。この段階で、ショ糖リン酸カルシウム複合体は口腔面に塗布されており、この水環境が、フッ化アミンを放出するために第1のコーティングを分解するか、さもなければ溶解する。フッ化アミンは次いで、歯構造および/または最近堆積したカルシウムイオンおよびリン酸イオンに結合でき、またはショ糖リン酸カルシウムと反応して歯エナメル質と結合するためのフッ化カルシウムイオンをもたらし得る。その方法では、カルシウムイオン源が最初に歯に曝され、次いでフッ化物イオンが放出される。
【0039】
歯磨組成物のこの好適な実施形態は、酸性非水性フッ化アミンをアルカリ性pHの練り歯磨中に有利に配合させ、および歯などの口腔面に機械的に塗布されるまで反応が起こらない。これは、フッ化アミンの二重コーティングがそれを練り歯磨き基剤材料から保護し、塗布後に外側コーティングを機械的に壊して内側コーティングを分解させて、フッ化物イオンを放出させるので、有利であると予測される。
【0040】
別の好適な実施形態において、フッ化アミンは、フッ化アミンとフッ化第一スズとの混合物で置換され得ることを理解されたい。さらに、好適な実施形態において、フッ化アミンそれ自体は9−オクタデシルアミンヒドロフルオリド(別名デクタフルール)と交換され得ることを理解されたい。
【0041】
特に好適で有利な実施形態の歯磨組成物は、炭水化物リン酸カルシウム複合体および6.5〜6.7のpHを有する水性基剤材料内に配合される酸性pHを有する非水性フッ化物イオン源を含む(炭水化物リン酸カルシウム複合体は、6.5未満のpHで約12ヵ月にわたって分解する)。pHは6.6が好ましい。水性基剤は、カプセル化された水酸化カルシウムなどのアルカリ性pH調整剤を有し、それは破れるか、さもなければ分解すると、pH調整剤を放出して混合生成物のpHを上昇させる。
【0042】
使用中、フッ化物イオン源の第2の(外側の)コーティングは機械的に壊されるが、水溶性ではなく、それは次いで第1のコーティングを露出させ、これは、一旦カルシウムイオンが遊離し、かつ口腔内でブラッシングまたは練り歯磨きの他の適用が開始されると、分解し、溶解し、さもなければ徐々に壊れてフッ化物イオンを放出する。これにより、酸性のフッ化物イオン源が放出され、口内の練り歯磨きと唾液の混合物のpHが≧5.5まで低下する。付加的な酸性緩衝剤をフッ化物イオン源に組み込んでもよく、または他の酸性pH調整剤、酸性材料を含有するカプセルを組み込んで必要なpHシフトをもたらしてもよい。
【0043】
カプセル化アルカリ性pH調整剤は、口腔内で酸性pHに一定の時間曝されると壊れるように設計されているが、それらは柔らかくなるとブラッシング行為によって破れることもある。アルカリ性pH調整剤は、一定時間ブラッシングすると、材料および口腔のpHが7.0を上回るように、pHを上昇させる効果を有するように設計されている。
【0044】
前述は本発明の一実施形態だけを記載しており、当業者には明らかな修正は、本発明の範囲から逸脱することなく、なされてよい。
【0045】
本明細書で用いる場合、「含んでいる」(およびその文法的変化形)という用語は、「包含する」または「有する」を包括する意味で用いられており、「だけからなる」の排他的な意味では用いられない。