特許第6799006号(P6799006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799006
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】超流動性潤滑組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20201130BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20201130BHJP
   C10M 105/34 20060101ALN20201130BHJP
   C10M 105/18 20060101ALN20201130BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20201130BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20201130BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20201130BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20201130BHJP
【FI】
   C10M169/04
   !C10M107/02
   !C10M105/34
   !C10M105/18
   !C10M145/14
   C10N20:02
   C10N30:04
   C10N40:25
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-556138(P2017-556138)
(86)(22)【出願日】2016年4月29日
(65)【公表番号】特表2018-514621(P2018-514621A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016059581
(87)【国際公開番号】WO2016174186
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】1553930
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516357100
【氏名又は名称】トタル マルケティン セルビスス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100210686
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ロラ ブルタン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ オブレシュ
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−532805(JP,A)
【文献】 特表2001−509183(JP,A)
【文献】 特表2002−540287(JP,A)
【文献】 特表2013−537572(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0105589(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0190671(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
C10N10/00−80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
(X)W(Y)
(I)
により規定され、式中、
・Xが0又は5を示し、
・Yが4〜20の範囲の整数を示す
SAEJ300分類に従った等級の潤滑組成物であって、
(a)ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が1.5〜8mm2/sの範囲である、少なくとも1つのポリアルファオレフィン油(PAO)と、
(b)ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が1.5〜8mm2/sの範囲である、前記組成物の10〜80wt%の少なくとも1つのグループVの油と、
(c)3つの側鎖が50個以上の炭素原子を含み、かつ、少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つのポリ(アルキル)メタクリレートとのコポリマー;少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つのポリ(アルキル)アクリレートとのコポリマーから選択される、少なくとも1つの櫛型ポリマーと
を含み、
前記少なくとも1つのグループVの油が、
式(B1)
【化1】
のモノエステルであって、式中、
・R1が、14〜24個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、
・R2が、2〜18個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の炭化水素基を示す
モノエステルと、
式(B2)
【化2】
のポリアルキレングリコール(PAG)であって、式中、
・R3が、直鎖状又は分枝状のC1〜C30アルキル基を示し、
・m及びnが、独立して、1〜5の範囲の平均数を示す
ポリアルキレングリコール(PAG)とから選択され、
前記ポリアルファオレフィン油(PAO)(a)と前記グループVの油(b)との間の重量比(a/b)が、0.1〜4の範囲である、潤滑組成物。
【請求項2】
0W4、0W8、0W12、0W16、0W20、5W4、5W8、5W12、5W16、5W20から選択される、SAEJ300分類に従った等級の、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
ASTM D445標準に従って40℃で測定した場合に、動粘度が12〜30mm2/sの範囲である、請求項1又は2に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記PAOの動粘度が、ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、1.5〜6mm2/s、又は2〜8mm2/s、又はさらに2〜6mm2/sの範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記PAOの平均重量分子量が500Da未満であるか、又は50〜500Daの範囲であるか、又は50〜350Da若しくは50〜300Daの範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記組成物の20〜80wt%、30〜60wt%、又は35〜45wt%の前記グループVの油を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記櫛型ポリマーが、オレフィンの重合又は共重合により得られる側鎖を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記櫛型ポリマーが、
式(C2)
【化3】
のオレフィン系モノマーであって、式中、
・Q3が、直鎖状又は分枝状のC2〜C8アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、C6〜C10アリール基を示し、
・Q4が、水素原子又はメチル基を示し、
・L1が、ブタジエンの1,4付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたブタジエンの1,4付加体の残基;スチレンのビニル付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたスチレンのビニル付加体の残基を示し、
・L2が、ブタジエンのビニル付加体の残基;C1〜C6アルキル基で置換されたブタジエンのビニル付加体の残基;スチレンのビニル付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたスチレンのビニル付加体の残基を示し、
・k及びjが、独立して、0又は1〜3000の範囲の整数を示し、合計(k+j)が、7〜3000の範囲の整数である
オレフィン系モノマーと、
式(C3)
【化4】
のアルキルアクリル酸エステル又はアルキルメタクリル酸エステルのモノマーであって、式中、
・Q5が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q6が、直鎖状又は分枝状のC1〜C26アルキル基を示す
アルキルアクリル酸エステル又はアルキルメタクリル酸エステルのモノマーとの共重合により調製された、請求項1〜のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
前記櫛型ポリマーが、
式(C4)
【化5】
のオレフィン系モノマーであって、式中、
・Q7がC1〜C6アルキル基、C6アリール基を示し、
・Q8が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q9、Q10及びQ11が、独立して、水素原子又はC1〜C18アルキル基を示し、
・x、y及びzが、独立して、0又は1〜3000の範囲の整数を示し、合計(x+y+z)が、7〜3000の範囲の整数である
オレフィン系モノマーと、
式(C3)
【化6】
のアルキルアクリル酸エステル又はアルキルメタクリル酸エステルのモノマーであって、式中、
・Q5が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q6が、直鎖状又は分枝状のC1〜C26アルキル基を示す
アルキルアクリル酸エステル又はアルキルメタクリル酸エステルのモノマーとの共重合により調製された、請求項1〜のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
VIが220超である、請求項1〜のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
車両エンジンの潤滑のための、又は、欧州サイクルNEDCに従った市街地モードの際の車両エンジンの潤滑を改善するための、請求項1〜1のいずれか1項に記載の潤滑組成物の使用。
【請求項12】
車両エンジンの潤滑のための、又は、欧州サイクルWLTPに従った市街地モードの際の車両エンジンの潤滑を改善するための、請求項1〜1のいずれか1項に記載の潤滑組成物の使用。
【請求項13】
車両エンジンの潤滑のための、又は、欧州サイクルECEに従ったコールドモードの際の車両エンジンの潤滑を改善するための、請求項1〜1のいずれか1項に記載の潤滑組成物の使用。
【請求項14】
ハイブリッド車両のエンジンを潤滑するための、請求項1〜1のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
潤滑剤の燃料節約(FE)を改善するための、又は、エンジンの燃料消費を低減するための、請求項1〜1のいずれか1項に記載の潤滑組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のための潤滑組成物の分野に関する。本発明は、式(X)W(Y)であって、式中、Xが0又は5を示し、Yが4〜20の範囲の整数を示す式によって規定されるSAEJ300分類に従った等級の潤滑組成物を提供する。この潤滑組成物は、少なくとも1つのポリアルファオレフィン油(PAO)と、組成物の10〜80wt%の少なくとも1つのグループVの油と、少なくとも1つの櫛型ポリマーとを含む。本発明はまた、潤滑剤の燃料節約(Fuel Eco)(FE)を改善するための、又はエンジン、特に自動車エンジン、特にハイブリット車両のエンジンの燃料消費を低減するためのこの潤滑組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能の潤滑剤に対するニーズが増加している。特に、それは、過酷さが増加した使用条件、例えば、極めて高い温度又は極めて高い機械負荷のためである。
【0003】
油交換の間隔をあけること及び潤滑系のサイズを低減することはまた、高性能の潤滑剤のニーズを増加させる。
【0004】
エネルギー効率、特に、潤滑剤の燃料節約(FE)の改善又はエンジン、特に車両エンジンの燃料消費の低減は、ますます重要な目標になっており、高性能の潤滑剤の使用を増加させている。
【0005】
したがって、高性能の潤滑剤は、特に、動粘度、粘度指数、揮発性、粘度、又は低温流動点に関する改善した性能を有するべきである。
【0006】
熱的安定性及び耐酸化性はまた、高性能の潤滑剤について改善されるべき特性である。
【0007】
毒性の低減、及び他の潤滑剤又は他の材料との混和性はまた、高性能の潤滑剤について求められる特性である。
【0008】
これらのニーズは、特に、エンジン内の摩擦プロセスの低減に関する、ハイブリッド車両のエンジンの潤滑の際に特に増加する。使用条件の改善、例えば、特に操作温度の改善はまた、特にエンジンの温度の増加の際に、対象とされるべきである。
【0009】
自動車エンジンのエネルギー効率を摩擦プロセスの低減により改善するために、エンジン潤滑剤は、より高い粘度等級の流体で使用することができる。この事実は、世界の大都市の多くの市街地の道でよく見られるように、低温サイクル下でエンジンが作動する場合に、よりいっそう重要である。そして、このニーズは、ハイブリッドエンジンのために、よりいっそう重要である。粘度等級の低減を超えて、他の解決策により、エンジンの潤滑によって提供されるFEの利益を増加させることができる。
【0010】
エンジンのための潤滑組成物はまた、エンジンの清浄度を改善することができるべきである。潤滑組成物はまた、自動車産業により設定された制限に準拠すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、最新の潤滑剤の問題の全て又は一部に対する解決策を提供することができる高性能の潤滑剤についてのニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、式(I)
(X)W(Y)
(I)
により規定され、式中、
・Xが0又は5を示し、
・Yが4〜20の範囲の整数を示す
SAEJ300分類に従った等級の潤滑組成物であって、
(a)ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が1.5〜8mm2/sの範囲である、少なくとも1つのポリアルファオレフィン油(PAO)と、
(b)ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が1.5〜8mm2/sの範囲である、組成物の10〜80wt%の少なくとも1つのグループVの油と、
(c)側鎖が50個以上の炭素原子を含み、かつ、少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つのポリ(アルキル)メタクリレートとのコポリマー;少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つのポリ(アルキル)アクリレートとのコポリマーから選択される、少なくとも1つの櫛型ポリマーと
を含む、潤滑組成物を提供する。
【0013】
本発明に係る潤滑組成物は、特に有利な粘度等級を有する。本発明に係る潤滑組成物の粘度等級は、特に、
・式(II)又は(III)
0W(Y) 5W(Y)
(II) (III)
により規定され、式中、Yは4〜20の範囲、特に4〜16又は4〜12の範囲の整数を示されるSAEJ300分類に従った等級と、
・式(IV)又は(V)
(X)W8 (X)W12
(IV) (V)
により規定され、式中、Xは0又は5を示すSAEJ300分類に従った等級とから選択することができる。
【0014】
好ましくは、本発明に係る潤滑組成物のSAEJ300分類に従った等級は、0W4、0W8、0W12、0W16、0W20、5W4、5W8、5W12、5W16、5W20の中から選択される。より好ましくは、本発明に係る潤滑組成物は、0W12のSAEJ300に従った等級を有する。
【0015】
また好ましくは、本発明に係る潤滑組成物におけるASTM D445標準に従って40℃で測定した動粘度は、12〜30mm2/s、好ましくは14〜25mm2/sの範囲である。
【0016】
本発明に係る組成物は、少なくとも1つのポリアルファオレフィン(PAO)と、組成物の10〜80wt%の少なくとも1つのグループVの油と、少なくとも1つの櫛型ポリマーとを含む。
【0017】
好ましくは、本発明に係る潤滑組成物は、ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が、1.5〜6mm2/s、又は2〜8mm2/s、又はさらに2〜6mm2/sの範囲であるPAOを含む。
【0018】
PAOの平均重量分子量は、極めて大きく変化することがある。好ましくは、PAOの平均重量分子量は、500Da未満である。PAOの平均重量分子量はまた、50〜500Da、50〜350Da、又はさらに50〜300Daの範囲であることができる。
【0019】
また好ましくは、本発明に係る潤滑組成物は、低重量のPAO、特に、ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が、3〜4mm2/sであり、かつ、50wt%超の9−メチル−11−オクチルヘンイコサンの式(A)の1−デセントリマーを含むPAOを含む。
【化1】
【0020】
PAOに加えて、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の10〜80wt%の範囲の量でグループVの油を含む。好ましくは、本発明に係る潤滑組成物は、組成物の20〜80wt%、20〜60wt%、20〜50wt%、30〜80wt%、30〜60wt%、30〜50wt%の範囲のグループVの油を含む。より好ましくは、本発明に潤滑組成物は、組成物の35〜45%、例えば40wt%のグループVの油を含む。
【0021】
また好ましくは、本発明に係る潤滑組成物は、モノエステル、ジエステル、ポリエステル、エストリド、ポリアルキレングリコール(PAG)の中から選択されるグループVの油を含む。好ましくは、グループVの油は、モノエステル又はポリアルキレングリコール(PAG)の中から選択される。
【0022】
好ましいモノエステルとしては、式(B1)
【化2】
のモノエステルであって、式中、
・R1が、14〜24個の炭素原子を含む、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状の炭化水素基を示し、
・R2が、2〜18個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の炭化水素基を示す
モノエステルを挙げることができる。
【0023】
より好ましいモノエステルとしては、式(B1)のモノエステルであって、式中、
・R1が飽和基であり、R2が不飽和基であるか、又は
・R1が不飽和基であり、R2が飽和基であるか、又は
・R1及びR2が飽和基であるか、又は
・R1及びR2が不飽和基である
モノエステルか、又はさらに、
式(B1)の1つのモノエステルであって、式中、
・R1が、14〜20個の炭素原子、好ましくは14〜18個の炭素原子、より好ましくは16〜18個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の炭化水素基を示すか、又は
・R2が、3〜14個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子、より好ましくは4〜10個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の炭化水素基を示すか、又は
・R1が直鎖状基であり、R2が分枝状基であるか、又は
・R1が分枝状基であり、R2が直鎖状基であるか、又は
・R1及びR2が直鎖状基であるか、又は
・R1及びR2が分枝状基である
モノエステルを挙げることができる。
【0024】
特に好ましいモノエステルとしては、式(B1)のモノエステルであって、R1のみ、R2のみ、又はR1及びR2が、
・直鎖状飽和基
・1〜5個の分枝状鎖を含む分枝状飽和基
・分枝状鎖が1〜5個の炭素原子を含む分枝状飽和基
・1〜5個の分枝状鎖を含み、分枝状鎖が1〜5個の炭素原子を含む分枝状飽和基
から選択されるモノエステルを挙げることができる。
【0025】
好ましいモノエステルの例としては、
・ステアリン酸塩、好ましくは、ステアリン酸アルキル及びステアリン酸アルケニル、より好ましくは、C4〜C10のステアリン酸アルキル、特に、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ノニル、ステアリン酸デシル;
・オレイン酸塩、好ましくは、オレイン酸アルキル及びオレイン酸アルケニル、より好ましくは、C4〜C10のオレイン酸アルキル、特に、オレイン酸ブチル、オレイン酸ペンチル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ノニル、オレイン酸デシル
を挙げることができる。
【0026】
好ましいモノエステルの例としては、アルケンモノエステル及びアルキルモノエステル、好ましくはC2〜C10のアルキルモノエステル、特に、エチルモノエステル、プロピルモノエステル、ブチルモノエステル、ペンチルモノエステル、ヘキシルモノエステルをまた挙げることができる。
【0027】
好ましいポリアルキレングリコール(PAG)としては、式(B2)
【化3】
のPAGであって、式中、
・R3が、直鎖状及び分枝状C1〜C30アルキル基を示し、
・m及びnが、独立して、1〜5の範囲の平均数を示す
PAGを挙げることができる。
【0028】
好ましくは、式(B2)のPAGについて、R3が、直鎖状C8アルキル基、分枝状C8アルキル基、直鎖状C9アルキル基、分枝状C9アルキル基、直鎖状C10アルキル基、分枝状C10アルキル基、直鎖状C11アルキル基、分枝状C11アルキル基、直鎖状C12アルキル基、分枝状C12アルキル基、直鎖状C13アルキル基、分枝状C13アルキル基、直鎖状C14アルキル基、分枝状C14アルキル基、直鎖状C15アルキル基、分枝状C15アルキル基の中から選択される基を示す。
【0029】
また好ましくは、式(B2)のPAGについて、
・mがn以上であるか、又は
・mが2〜4.5の範囲の平均数、特に2〜3.5の範囲の平均数を示すか、又は
・nが1.5〜4の範囲の平均数、特に1.5〜3の範囲の平均数を示す。
【0030】
より好ましくは、式(B2)のPAGについて、mが2.5の平均数を示し、nが2の平均数を示すか、又は、mが3.5の平均数を示し、nが2.8の平均数を示す。
【0031】
有利には、本発明に係る潤滑組成物について、式(B2)のPAGは、
・ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、2.5〜4.5mm2/sである動粘度、又は
・160超、又は160〜210に含まれる粘度指数、又は
・−40℃未満の流動点、又は
・ASTM D5293標準に従って−35℃で測定した場合に、1200mPa・s未満の粘度(CCS)
を有する。
【0032】
好ましい例示のPAGは、式(B2)のPAGであって、mが2.5の平均数を示し、nが2の平均数を示し、ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が2.5〜3.5mm2/sであり、粘度指数が160〜180に含まれ、流動点が−40℃未満であり、ASTM D5293標準に従って−35℃で測定した場合に、粘度(CCS)が500mPa・s未満であるPAGである。
【0033】
別の好ましい例示のPAGは、式(B2)のPAGであって、mが3.5の平均数を示し、nが2.8平均数を示し、ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が3.5〜4.5mm2/sであり、粘度指数が180〜210に含まれ、流動点が−50℃未満であり、ASTM D5293標準に従って−35℃で測定した場合に、粘度(CCS)が1200mPa・s未満であるPAGである。
【0034】
別のポリアルキレングリコール(PAG)としては、式(B3)のブロックポリマー又は式(B3)のランダムポリマーであって、
【化4】
式中、
・R4が、直鎖状又は分枝状のC1〜C30アルキル基、好ましくは直鎖状又は分枝状のC8〜C12アルキル基を示し、
・pが2〜60、好ましくは5〜30又は7〜15の範囲の数を示し、
・R5及びR6が、同一であるか又は異なっており、独立して、水素原子又はC1〜C2アルキル基を示す
ブロックポリマー又はランダムポリマーを挙げることができる。
【0035】
他の特定のポリアルキレングリコール基(PAG)としては、
式(B4)のブロックポリマー又は式(B4)のランダムポリマーであって、
【化5】
式中、
・R4が、直鎖状又は分枝状のC1〜C30アルキル基、好ましくは直鎖状又は分枝状のC8〜C12アルキル基を示し、
・qが2〜60、好ましくは5〜30又は7〜15の範囲の数であり、
・R7及びR8が水素原子を示すか;又はR7が水素原子を示し、R8がメチル基を示すか;又はR7がメチル基を示し、R8が水素を示すか;R7及びR8がメチル基を示すか;又はR7がエチル基を示し、R8が水素原子を示すか;又はR7が水素原子を示し、R8がエチル基を示す
ブロックポリマー又はランダムポリマーと;
式(B5)のブロックポリマー又は式(B5)のランダムポリマーであって、
【化6】
・R4が、直鎖状又は分枝状のC1〜C30アルキル基、好ましくは直鎖状又は分枝状のC8〜C12アルキル基を示し、
・r及びtが、独立して、1〜30、好ましくは2〜15又は2〜8の範囲の数を示し、
・R9及びR10が水素原子を示すか;又はR9が水素原子を示し、R10がメチル基を示すか;又はR9がメチル基を示し、R10が水素を示すか;又はR9及びR10がメチル基を示すか;又はR9がエチル基を示し、R10が水素原子を示すか;又はR9が水素原子を示し、R10がエチル基を示し、
・R11及びR12が水素原子を示すか;又はR11が水素原子を示し、R12がメチル基を示すか;又はR11がメチル基を示し、R12が水素を示すか;又はR11及びR12がメチル基を示すか;又はR11がエチル基を示し、R12が水素原子を示すか;又はR11が水素原子を示し、R12がエチル基を示す
ブロックポリマー又はランダムポリマーとを挙げることができる。
【0036】
他の特定のポリアルキレングリコール(PAG)基のように、式(B6)のブロックポリマー又は式(B6)のランダムポリマーであって、
【化7】
式中、
・R13が、直鎖状又は分枝状のC8〜C12アルキル基を示し、
・vが2〜6の範囲の数を示し、
・wが2〜5の範囲の数を示す
ブロックポリマー又はランダムポリマーを挙げることができる。
【0037】
PAO及びグループVの油に加えて、本発明に係る潤滑組成物は櫛型ポリマーを含む。
【0038】
好ましくは、櫛型ポリマーは、オレフィンの重合又は共重合により得られる側鎖を含む。より好ましくは、櫛型ポリマーは、8〜17個の炭素原子を含むオレフィン、特に、スチレン、置換スチレン、1,4付加のブタジエン、1,2付加のブタジエン、式(C1)の化合物であって、
【化8】
式中、Q1及びQ2が、独立して、水素原子又はC1〜C18アルキル基を示す式(C1)の化合物の中から選択されるオレフィンの重合又は共重合により得られる側鎖を含む。
【0039】
より好ましくは、櫛型ポリマーは、
式(C2)のオレフィン系モノマーであって、
【化9】
式中、
・Q3が、直鎖状又は分枝状のC2〜C8アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、C6〜C10アリール基を示し、
・Q4が、水素原子又はメチル基を示し、
・L1が、ブタジエンの1,4付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたブタジエンの1,4付加体の残基;スチレンのビニル付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたスチレンのビニル付加体の残基を示し、
・L2が、ブタジエンのビニル付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたブタジエンのビニル付加体の残基、スチレンのビニル付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたスチレンのビニル付加体の残基を示し、
・k及びjが、独立して、0又は1〜3000の範囲の整数を示し、合計(k+j)が、7〜3000の範囲、10〜3000の整数である
オレフィン系モノマーと、
式(C3)のアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルのモノマーであって、
【化10】
式中、
・Q5が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q6が、直鎖状又は分枝状のC1〜C26アルキル基を示す
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルのモノマーとの共重合により調製される。
【0040】
より好ましくは、Q3がフェニル基又は直鎖状若しくは分枝状のブチル基、特に、n−ブチル基を示す。
【0041】
より特に好ましくは、櫛型ポリマーは、
式(C4)のオレフィン系モノマーであって、
【化11】
式中、
・Q7がC1〜C6アルキル、C6アリール基を示し、
・Q8が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q9、Q10及びQ11が、独立して、水素原子又はC1〜C18アルキル基を示し、
・x、y及びzが独立して、0か又は1〜3000の範囲の整数を示し、合計(x+y+z)が、7〜3000の範囲、好ましくは10〜3000の範囲の整数である
オレフィン系モノマーと、
式(C3)のアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルのモノマーであって、
【化12】
式中、
・Q5が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q6が、直鎖状又は分枝状のC1〜C26アルキル基を示す
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルのモノマーとの共重合により調製される。
【0042】
より好ましくは、Q7がフェニル基又は直鎖状若しくは分枝状のブチル基、特に、n−ブチル基を示す。
【0043】
より特に好ましくは、櫛型ポリマーは、
式(C5)のオレフィン系モノマーであって、
【化13】
式中、
・Q8が、水素原子又はメチル基を示し、
・x及びyが、独立して0又は1〜3000の範囲の整数を示し、合計(x+y)が、7〜3000の範囲、好ましくは10〜3000の範囲の整数である
オレフィン系モノマーと、
式(C3)のアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルのモノマーであって、
【化14】
式中、
・Q5が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q6が、直鎖状又は分枝状のC1〜C26アルキル基を示す
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルのモノマーとの共重合により調製される。
【0044】
櫛型ポリマーの例は、製品Viscoplex 3−200(Evonik Corporation)である。
【0045】
本発明に係る潤滑組成物の範囲において、(a)PAO、(b)グループVの油、及び(c)櫛型ポリマーの各々の量を変えることができる。好ましくは、(a)ポリアルファオレフィン油(PAO)と、(b)グループVの油との間の重量比(a/b)は、0.1〜4、好ましくは0.3〜3.6の範囲である。
【0046】
本発明に係る潤滑組成物は、特に高いVIを有する。好ましくは、本発明に係る潤滑組成物のVIは220超である。より好ましくは、本発明に係る潤滑組成物のVIは250超、又はさらに270超若しくは300超である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
一般的に、本発明に係る潤滑組成物は、その使用に適合した他の基油、鉱物、合成又は天然の、動物性又は植物性の油を含むことができる。
【0048】
本発明に係る潤滑組成物中で使用される基油は、API分類により規定された分類に従ったグループI〜Vの属する鉱物又は合成起源の油(又はATIEL分類に従ったそれらの等価物)(表A)、又はそれらの混合物であることができる。
【0049】
【表1】
【0050】
本発明に係る鉱物基油は、原油の常圧蒸留及び真空蒸留を行い、その後、溶媒での抽出、脱歴、溶媒での脱ろう、水素処理、水素化分解、水素異性化及び水素精製のような精製作業を行うことで得られた全てのタイプのベースを含む。
【0051】
合成油及び鉱物油の混合物をまた使用することができる。
【0052】
一般的に、本発明に係る潤滑組成物を製造するための異なる潤滑ベースの使用に関しては、それらが、エンジン又は車両変速機のための使用に適した、特に粘度特性、粘度指数、硫黄含有量、耐酸化性のような特性を有さなければならないことを除いては、制限は存在しない。
【0053】
本発明に係る潤滑組成物の基油はまた、合成油、例えば、カルボン酸及びアルコールの幾つかのエステルと、ポリアルファオレフィンとから選択することができる。基油として使用されるポリアルファオレフィンは、例えば、4〜32個の炭素原子を含むモノマー、例えば、オクテン又はデセンから得られ、その100℃での粘度は、ASTM D445標準に従って1.5〜15mm2/sに含まれる。それらの平均分子量は、一般的に、ASTM D5296標準に従って250〜3000に含まれる。
【0054】
本発明に係る潤滑組成物は、組成物の全体質量に対して、50mass%以上の基油を含むことができる。より有利には、本発明に係る潤滑組成物は、組成物の全体質量に対して、60mass%以上、又はさらに70mass%以上の基油を含む。より特に有利には、本発明に係る潤滑組成物は、組成物の全体質量に対して、75〜99.9mass%の基油を含むことができる。
【0055】
本発明はまた、本発明に係る少なくとも1つの潤滑組成物と、少なくとも1つの基油と、少なくとも1つの添加剤とを含む、車両エンジンのための潤滑組成物を提供する。
【0056】
多くの添加剤を、本発明に係るこの潤滑組成物のために使用することができる。
【0057】
本発明に係る潤滑組成物のための好ましい添加剤は、洗剤添加剤、耐摩耗添加剤、摩擦改質添加剤、極圧添加剤、分散剤、流動点向上剤、消泡剤、増粘剤、及びそれらの混合物から選択される。
【0058】
好ましくは、本発明に係る潤滑組成物は、少なくとも1つの耐摩耗添加剤、少なくとも1つの極圧添加剤、又はそれらの混合物を含む。
【0059】
耐摩耗添加剤及び極圧添加剤は、摩擦表面を、これらの表面上に吸着した保護膜を形成することによって、保護する。
【0060】
多くの種類の耐摩耗添加剤が存在している。好ましくは、本発明に係る潤滑組成物については、耐摩耗添加剤は、リン−硫黄添加剤から選択され、例えば、アルキルチオリン酸金属、特にアルキルチオリン酸亜鉛、より具体的には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛又はZnDTPである。好ましい化合物は、式Zn((SP(S)(OR)(OR))2であり、式中、R及びRは、同一であるか又は異なっており、独立して、アルキル基、好ましくは1〜18個の炭素原子を含むアルキル基を示す。
【0061】
リン酸アミンはまた、本発明に係る潤滑組成物中で使用することができる耐摩耗添加剤である。しかしながら、これらの添加剤によりもたらされるリンは、これらの添加剤が灰を生成するため、自動車の触媒系に対して毒として作用することがある。リン酸アミンを、例えば、ポリ硫化物、特に硫黄含有オレフィンのようなリンを提供しない添加剤と部分的に置換することで、これらの影響を最小化することができる。
【0062】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の全体質量に対して、0.01〜6mass%、好ましくは0.05〜4mass%、より好ましくは0.1〜2mass%の耐摩耗添加剤及び極圧添加剤を含むことができる。
【0063】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、少なくとも1つの摩擦改質添加剤を含むことができる。摩擦改質添加剤は、金属元素を提供する化合物及び灰を含まない化合物から選択することができる。金属元素を提供する化合物の中から、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znのような遷移金属の錯体を挙げることができ、その配位子は、酸素、窒素、硫黄又はリン原子を含む炭化水素化合物であることができる。灰を含まない摩擦改質添加剤は、一般的に有機起源のものであり、かつ、脂肪酸モノエステル、及びポリオール、アルコキシル化アミン、アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪族エポキシド、ホウ酸脂肪族エポキシド、脂肪族アミン又は脂肪酸グリセロールのエステルから選択することができる。
【0064】
本発明によれば、脂肪族化合物は、10〜24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素基を含む。
【0065】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の全体質量に対して、0.01〜2mass%又は0.01〜5mass%、好ましくは0.1〜1.5mass%又は0.1〜2mass%の摩耗改質添加剤を含むことができる。
【0066】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、少なくとも1つの酸化防止添加剤を含むことができる。
【0067】
酸化防止添加剤は、一般的に、使用中の潤滑組成物の劣化を遅らせることができる。この劣化は、特に、堆積物の形成、スラッジの存在、又は潤滑組成物の粘度の増加によって表すことができる。
【0068】
酸化防止添加剤は、特に、ラジカル抑制剤又はヒドロペルオキシド破壊剤として作用する。近年使用されている酸化防止添加剤の中から、フェノール系酸化防止添加剤、アミン系酸化防止添加剤、リン−硫黄含有酸化防止添加剤を挙げることができる。これらの酸化防止添加剤の幾つか、例えば、リン−硫黄含有酸化防止添加剤は、灰を作り出すものであることがある。フェノール系酸化防止添加剤は、灰を含まないことができるか、又は中性若しくは塩基性の金属塩の形態であることができる。酸化防止添加剤は、特に、立体障害フェノール、立体障害フェノールエステル、及びチオエーテル架橋を含む立体障害フェノール、ジフェニルアミン、少なくとも1つのC1〜C12アルキル基で置換されたジフェニルアミン、N,N’−ジアルキルアリールジアミン、並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0069】
好ましくは、本発明によれば、立体障害フェノールは、アルコール機能を含む炭素に近接した少なくとも1つの炭素がC1〜C10アルキル基、好ましくはC1〜C6アルキル基、好ましくはC4アルキル基、好ましくはter−ブチル基で置換された、フェノール基を含む化合物から選択される。
【0070】
アミノ化化合物は、任意選択でフェノール系酸化防止添加剤と組み合わせて使用することができる、別分類の酸化防止添加剤である。アミノ化化合物の例は、芳香族アミン、例えば、式NRabcの芳香族アミンであり、式中、Raは、任意選択で置換された、脂肪族基又は芳香族基を示し、Rbは、任意選択で置換された芳香族基を示し、Rcは、水素原子、アルキル基、アリール基、又は式RdS(O)zeの基を示し、式中、Rdは、アルキレン基又はアルケニレン基を示し、Reは、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を示し、zは0、1又は2を示す。
【0071】
硫黄含有フェノールアルキル又はそれらのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩をまた、酸化防止添加剤として使用することができる。
【0072】
別分類の酸化防止添加剤は、銅含有化合物のものであり、例えば、チオ−又はジチオ−リン酸銅、カルボン酸の銅塩、ジチオカルバミン酸塩、スルホン酸塩、フェノール酸塩、銅アセチルアセトナートである。銅I及びIIの塩、無水物又はコハク酸塩をまた使用することができる。
【0073】
本発明に係る潤滑組成物は、当業者に公知の任意のタイプの酸化防止添加剤を含有することができる。
【0074】
有利には、潤滑組成物は、灰を含まない少なくとも1つの酸化防止添加剤を含む。
【0075】
また有利には、本発明に係る潤滑組成物は、組成物の全体質量に対して、0.1〜2wt%の少なくとも1つの酸化防止添加剤を含む。
【0076】
本発明に係る潤滑組成物はまた、少なくとも1つの洗剤添加剤を含むことができる。
【0077】
洗剤添加剤は、一般的に、二次酸化生成物及び消費生成物の溶解による金属部の表面での堆積物の形成を低減することができる。
【0078】
本発明に係る潤滑組成物中で使用することができる洗剤添加剤は、一般的に当業者に公知である。洗剤添加剤は、長い疎水性炭化水素鎖及び親水性頭部を含むアニオン性化合物であることができる。関連カチオンは、アルカリ又はアルカリ土類金属の金属カチオンであることができる。
【0079】
洗剤添加剤は、好ましくは、カルボン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、スルホン酸塩、サリチル酸塩、ナフタレン酸塩、並びにフェノール酸塩から選択される。アルカリ及びアルカリ土類金属は、好ましくは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム又はバリウムである。
【0080】
これらの金属塩は、一般的に、化学量論的量の金属、又はそれ以上の金属、したがって化学量論的量超の量の金属を含む。次いで、これらは過塩基性洗剤添加剤であり、そして、洗剤添加剤に過塩基性を提供する過剰金属は、一般的に、油中で不溶性の金属塩の形態、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、好ましくは炭酸塩の形態である。
【0081】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の全体質量に対して、0.5〜8wt%又は2〜4wt%の洗剤添加剤を含むことができる。
【0082】
また有利には、本発明に係る潤滑組成物はまた、少なくとも1つの流動点降下剤を含むことができる。
【0083】
パラフィン結晶の形成を遅らせることにより、流動点降下剤は、一般的に、本発明に係る潤滑組成物の低温挙動を改善する。
【0084】
流動点降下剤の例としては、アルキルポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、アルキルポリスチレンを挙げることができる。
【0085】
有利には、本発明に係る潤滑組成物はまた、分散剤を含むことができる。
【0086】
分散剤は、マンニッヒ塩基、スクシンイミド、及びそれらの誘導体から選択することができる。
【0087】
また有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の全体質量に対して、0.2〜10mass%の分散剤を含むことができる。
【0088】
有利には、潤滑組成物はまた、粘度指数を改善する少なくとも1つの追加のポリマーを含むことができる。粘度指数を改善する追加のポリマーの例としては、ポリマーエステル、スチレン、ブタジエン及びイソプレンの水素化された又は水素化されていないホモポリマー又はコポリマー、ポリメタクリレート(PMA)を挙げることができる。また有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の全体質量に対して、1〜15mass%の粘度指数を改善するポリマーを含むことができる。
【0089】
潤滑組成物に加えて、本発明はまた、この潤滑組成物の使用に関する。特に、本発明は、車両エンジンの潤滑のための、特に、ハイブリッド車両のエンジンの潤滑のための、本発明に係る潤滑組成物の使用に関する。
【0090】
好ましくは、本発明に係る潤滑組成物の使用により、車両エンジンの潤滑を改善することができる。特に好ましくは、本発明に係る潤滑組成物の使用により、欧州サイクルNEDCに従って規定された市街地モードの際、又は欧州サイクルWLTPに従って規定された市街地モード、又はさらに欧州サイクルECEに従合って規定されたコールドモードの際に、車両エンジンの潤滑を改善することができる。
【0091】
本発明はまた、潤滑剤の燃料節約(FE)を改善するための、本発明に係る潤滑組成物の使用に関する。
【0092】
本発明はまた、エンジン、特に車両エンジン、特にハイブリッド車両のエンジンの燃焼消費を低減するための、本発明に係る潤滑組成物の使用に関する。
【0093】
本発明によれば、本発明に係る潤滑組成物の特定の、有利な又は好ましい特徴は、特定の、有利な又は好ましい本発明に係る使用を規定することができる。
【0094】
本発明の様々な態様を、以下の例により示すことができる。
【実施例】
【0095】
例1:本発明に係る潤滑組成物の調製
本発明に係る潤滑組成物の様々な成分は、表1に示される製品の量及び性質に応じて混合される。
【0096】
【表2】
【0097】
本発明に係るこれらの潤滑組成物の特性を表2に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
例2:比較の潤滑組成物の調製
製品の量及び性質に従って比較の潤滑組成物の様々な成分を表3に示した。
【0100】
【表4】
【0101】
第1の比較の潤滑組成物(CC1)は、櫛型ポリメタクリレートを含まず、直鎖状ポリメタクリレートを含む。第2の比較の潤滑組成物(CC2)は、グループVの油を含まず、グループIVの油のみを含んでいる。これらの比較の潤滑組成物の特性を表4に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
例3:本発明に係る潤滑組成物(CL2及びCL4)と、比較の潤滑組成物(CC1)との燃料節約性能の評価
国際公開第2012−025901号の例に記載された条件に従った幾つかの試験の際に、本発明に係る潤滑組成物により潤滑した際の燃料消費を、対照潤滑組成物(基油と、本発明に係る組成物の添加剤パッケージと同様の添加剤パッケージ−SAEJ300等級5W30)の使用の際の燃料消費と比較した。燃料消費の増加を、この対照潤滑組成物の使用から生じた燃料消費を参照することで評価した。得られた結果を表5に示す。
【0104】
【表6】
【0105】
本発明に係る潤滑組成物CL2及びCL4は、極めて有意な燃料消費の増加を得ることができることが理解される。したがって、本発明に係る潤滑組成物CL2は、櫛型ポリメタクリレートを含まない比較の潤滑組成物CC1を用いて得られたものより大きい増加を得た。さらに、PAGタイプのグループVの油を含む本発明に係る潤滑組成物CL4は、有意な増加を得た。
【0106】
より具体的には、本発明に係るこれらの潤滑組成物は、低温かつ低エンジン速度でのエンジンサイクルで、極めて有意な燃料節約の増加を得て、それは、市街地条件の下でさらにより有意な燃料節約を得ることについて、本発明に係るこれらの潤滑組成物の利益を示している。
【0107】
例4:本発明に係る潤滑組成物(CL1、CL2及びCL3)と、比較の潤滑組成物(CC2)とのトラクション係数の性能の評価
潤滑組成物のトラクション係数を評価して、得られた結果を表6に示す。
【0108】
【表7】
【0109】
したがって、本発明に係る潤滑組成物は、極めて良好なトラクション係数を有する。これらの結果は、本発明に係る潤滑組成物が、本発明に係るPAO及び櫛型ポリマーを含むが、本発明に係るグループVの油を含まない比較の潤滑組成物に比べて、摩擦係数を低減することができ、したがって、燃料節約の増加を改善することができることが確認され、これは、異なるグループVの油の含有量を含む場合でも確認された。
【0110】
例5:本発明に係る潤滑組成物(CL1、CL2、CL3及びCL4)と、比較の潤滑組成物(CC2)とのエンジン清浄度性能の評価
エンジン清浄度特性を、ASTM D7097標準に従ったTEOST MHT試験により評価し、得られた結果を表7に示し、ミリグラムで表した。特に多くの自動車製造者のための最大許容値は、等級0Wxxの油についてのILSAC分類に従って35mgである。
【0111】
【表8】
【0112】
したがって、本発明に係る潤滑組成物は、良好なエンジン清浄度を保持することができ、又はさらにエンジン清浄度を改善し、自動車産業により設定された制限に準拠することができる。エンジン清浄度のこれらの良好な結果は、本発明に係るグループVの油の様々な量で得られることに留意すべきである。
本開示は以下も包含する。
[1]
式(I)
(X)W(Y)
(I)
により規定され、式中、
・Xが0又は5を示し、
・Yが4〜20の範囲の整数を示す
SAEJ300分類に従った等級の潤滑組成物であって、
(a)ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が1.5〜8mm2/sの範囲である、少なくとも1つのポリアルファオレフィン油(PAO)と、
(b)ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、動粘度が1.5〜8mm2/sの範囲である、前記組成物の10〜80wt%の少なくとも1つのグループVの油と、
(c)3つの側鎖が50個以上の炭素原子を含み、かつ、少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つのポリ(アルキル)メタクリレートとのコポリマー;少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つのポリ(アルキル)アクリレートとのコポリマーから選択される、少なくとも1つの櫛型ポリマーと
を含む、潤滑組成物。
[2]
0W4、0W8、0W12、0W16、0W20、5W4、5W8、5W12、5W16、5W20から選択される、SAEJ300分類に従った等級の、上記態様1に記載の潤滑組成物。
[3]
ASTM D445標準に従って40℃で測定した場合に、動粘度が12〜30mm2/s、好ましくは14〜25mm2/sの範囲である、上記態様1又は2に記載の潤滑組成物。
[4]
前記PAOの動粘度が、ASTM D445標準に従って100℃で測定した場合に、1.5〜6mm2/s、又は2〜8mm2/s、又はさらに2〜6mm2/sの範囲である、上記態様1〜3のいずれかに記載の潤滑組成物。
[5]
前記PAOの平均重量分子量が500Da未満であるか、又は50〜500Daの範囲であるか、又は50〜350Da若しくは50〜300Daの範囲である、上記態様1〜4のいずれかに記載の潤滑組成物。
[6]
前記組成物の20〜80wt%、30〜60wt%、又は35〜45wt%の前記グループVの油を含む、上記態様1〜5のいずれかに記載の潤滑組成物。
[7]
前記グループVの油が、モノエステル、ポリアルキレングリコール(PAG)から選択される、上記態様1〜6のいずれかに記載の潤滑組成物。
[8]
前記グループVの油が、
式(B1)
【化1】
のモノエステルであって、式中、
・R1が、14〜24個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、
・R2が、2〜18個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の炭化水素基を示す
モノエステルと、
式(B2)
【化2】
のポリアルキレングリコール(PAG)であって、式中、
・R3が、直鎖状又は分枝状のC1〜C30アルキル基を示し、
・m及びnが、独立して、1〜5の範囲の平均数を示す
ポリアルキレングリコール(PAG)とから選択される、上記態様1〜7のいずれかに記載の潤滑組成物。
[9]
前記側鎖が、オレフィン、好ましくは8〜17個の炭素原子を含むオレフィン、及びスチレン、置換スチレン、1,4付加のブタジエン、1,2付加のブタジエン、式(C1)の化合物であって、
【化3】
式中、Q1及びQ2が、独立して、水素原子又はC1〜C18アルキル基を示す式(C1)の化合物から選択されるオレフィンの重合又は共重合により得られる櫛型ポリマーである、上記態様1〜8のいずれかに記載の潤滑組成物。
[10]
前記櫛型ポリマーが、
式(C2)
【化4】
のオレフィン系モノマーであって、式中、
・Q3が、直鎖状又は分枝状のC2〜C8アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、C6〜C10アリール基を示し、
・Q4が、水素原子又はメチル基を示し、
・L1が、ブタジエンの1,4付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたブタジエンの1,4付加体の残基;スチレンのビニル付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたスチレンのビニル付加体の残基を示し、
・L2が、ブタジエンのビニル付加体の残基;C1〜C6アルキル基で置換されたブタジエンのビニル付加体の残基;スチレンのビニル付加体の残基;少なくとも1つのC1〜C6アルキル基で置換されたスチレンのビニル付加体の残基を示し、
・k及びjが、独立して、0又は1〜3000の範囲の整数を示し、合計(k+j)が、7〜3000の範囲、好ましくは10〜3000の範囲の整数である
オレフィン系モノマーと、
式(C3)
【化5】
のアルキルアクリル酸エステル又はアルキルメタクリル酸エステルのモノマーであって、式中、
・Q5が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q6が、直鎖状又は分枝状のC1〜C26アルキル基を示す
アルキルアクリル酸エステル又はアルキルメタクリル酸エステルのモノマーとの共重合により調製された、上記態様1〜9のいずれかに記載の潤滑組成物。
[11]
前記櫛型ポリマーが、
式(C4)
【化6】
のオレフィン系モノマーであって、式中、
・Q7がC1〜C6アルキル基、C6アリール基を示し、
・Q8が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q9、Q10及びQ11が、独立して、水素原子又はC1〜C18アルキル基を示し、
・x、y及びzが、独立して、0又は1〜3000の範囲の整数を示し、合計(x+y+z)が、7〜3000の範囲、好ましくは10〜3000の範囲の整数である
オレフィン系モノマーと、
式(C3)
【化7】
のアルキルアクリル酸エステル又はアルキルメタクリル酸エステルのモノマーであって、式中、
・Q5が、水素原子又はメチル基を示し、
・Q6が、直鎖状又は分枝状のC1〜C26アルキル基を示す
アルキルアクリル酸エステル又はアルキルメタクリル酸エステルのモノマーとの共重合により調製された、上記態様1〜10のいずれかに記載の潤滑組成物。
[12]
前記ポリアルファオレフィン油(PAO)(a)と前記グループVの油(b)との間の重量比(a/b)が、0.1〜4、好ましくは0.3〜3.6の範囲である、上記態様1〜11のいずれかに記載の潤滑組成物。
[13]
VIが220超、好ましくは250超、又はさらに270超若しくは300超である、上記態様1〜12のいずれかに記載の潤滑組成物。
[14]
車両エンジンの潤滑のための、又は、欧州サイクルNEDCに従った市街地モードの際の車両エンジンの潤滑を改善するための、上記態様1〜13のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
[15]
車両エンジンの潤滑のための、又は、欧州サイクルWLTPに従った市街地モードの際の車両エンジンの潤滑を改善するための、上記態様1〜13のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
[16]
車両エンジンの潤滑のための、又は、欧州サイクルECEに従ったコールドモードの際の車両エンジンの潤滑を改善するための、上記態様1〜13のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
[17]
ハイブリッド車両のエンジンを潤滑するための、上記態様14〜16のいずれかに記載の使用。
[18]
潤滑剤の燃料節約(FE)を改善するための、又は、エンジン、特に車両エンジン、特にハイブリッド車両のエンジンの燃料消費を低減するための、上記態様1〜17のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。