特許第6799042号(P6799042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6799042量子ドット、発光材料および量子ドットの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799042
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】量子ドット、発光材料および量子ドットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20201130BHJP
   C01B 19/04 20060101ALI20201130BHJP
   C01G 9/08 20060101ALI20201130BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20201130BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20201130BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20201130BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20201130BHJP
   C09K 11/88 20060101ALN20201130BHJP
【FI】
   C09K11/08 G
   C09K11/08 A
   C01B19/04 C
   C01G9/08
   H05B33/14 Z
   H01L27/32
   H05B33/10
   G09F9/33
   !C09K11/88
【請求項の数】1
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-198236(P2018-198236)
(22)【出願日】2018年10月22日
(65)【公開番号】特開2019-108521(P2019-108521A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2019年2月22日
(31)【優先権主張番号】106136465
(32)【優先日】2017年10月24日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594006345
【氏名又は名称】奇美實業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】林 耕竹
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/066548(WO,A1)
【文献】 特表2011−505432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/00−11/89
C01G1/00−23/08
C01G25/00−47/00;49/10−99/00
C01B15/00−23/00
C01B13/00−13/36
C01B25/00−25/46
G09F 9/33
H01L 27/32
H05B 33/10
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットの製造方法であって、
第12族元素、第13族元素、または第14族元素を含む第1の溶液を準備するステップと;
第15族元素または第16族元素を含む第2の溶液を準備するステップと;
前記第1の溶液を前記第2の溶液と混合して第3の溶液を形成するステップと;
前記第12族元素、前記第13族元素または前記第14族元素を含む材料と、前記第15族元素または前記第16族元素を含む第4の溶液とを前記第3の溶液に添加して、前記量子ドットを含む第5の溶液を形成するステップと;
前記第5の溶液に熱処理を行うステップであって、前記熱処理の温度は、275℃〜295℃であり、前記熱処理の時間は、3分〜7分である、ステップとを含み、
前記熱処理後に、特徴的な波長における前記量子ドットの吸収強度に対する発光強度の比が、1.5×10CPS/Abs.〜2.0×10CPS/Abs.の範囲であり、前記特徴的な波長は、前記熱処理後の前記量子ドットの発光ピークの最大強度の半分に対応する2つの波長のうち、より短い波長であり、
前記第1の溶液は少なくとも第12族元素を含み、前記第12族元素は亜鉛、カドミウム、水銀、またはこれらの組み合わせを含み、前記第2の溶液は少なくとも第16族元素を含み、前記第16族元素は酸素、硫黄、セレンおよびテルルの少なくとも1つを含み、前記量子ドットの粒径は3〜25nmである、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光材料に関する。より詳細には、本開示は、量子ドットを含む発光材料に関する。
【関連技術の説明】
【0002】
量子ドットは、半導体発光材料の一種であり、量子ドットの粒径を調整することにより、量子ドットのバンドギャップを変化させることができる。このようにして、量子ドットの大きさを調整することにより、量子ドットが発する光の波長範囲を変化させることができる。量子ドットは、その高い彩度または高いクロマを特徴とするため、量子ドットは、近年、ディスプレイパネル技術において次第に適用されてきている。量子収率は、量子ドットの重要なパラメータの1つである。量子収率は、量子ドットが入射光を蛍光に変換する収率を指す。それにより、改善された量子収率を有する量子ドットを製造することは、当技術分野において重要な研究課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本開示は、改善された量子収率を有する量子ドットを提供する。本開示は改善された量子収率を有する量子ドットを含む発光材料および表示装置をさらに提供する。また、本開示は、量子ドットの自己吸収を低減することができる量子ドットの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一実施形態では、量子ドットが提供される。特徴的な波長における量子ドットの吸収強度に対する発光強度の比は、1.5×10CPS/Abs.〜2.0×10CPS/Abs.の範囲である。特徴的な波長は、量子ドットの発光ピークの最大強度の半分に対応する2つの波長のうち、より短い波長である。
【0005】
本開示の一実施形態における発光材料は、キャリアと、上記量子ドットと、封止層とを含む。量子ドットは、キャリアの表面に付着される。封止層は、量子ドットが取り付けられたキャリアをカプセル化する。
【0006】
本開示の一実施形態の量子ドットの製造方法は、以下のステップを含む。第12族元素、第13族元素、または第14族元素を含む第1の溶液を準備する。第15族元素または第16族元素を含む第2の溶液を準備する。第1の溶液を第2の溶液と混合して第3の溶液を形成する。第12族元素、第13族元素または第14族元素を含む材料と、第15族元素または第16族元素を含む第4の溶液とを第3の溶液に添加して、量子ドットを含む第5の溶液を形成する。第5の溶液に熱処理を行い、熱処理の温度は、量子ドットを含む第5の溶液を形成する温度よりも15℃〜75℃高く、熱処理の時間は、3分〜7分である。熱処理後に、特徴的な波長における量子ドットの吸収強度に対する発光強度の比は、1.5×10CPS/Abs.〜2.0×10CPS/Abs.の範囲であり、特徴的な波長は、熱処理後の量子ドットの発光ピークの最大強度の半分に対応する2つの波長のうち、より短い波長である。
【発明の効果】
【0007】
要約すると、本開示の実施形態の量子ドットの製造方法では、量子ドットを含む溶液に熱処理を行う。熱処理の温度は、量子ドットを含む溶液を形成する温度よりも15℃〜75℃高く、熱処理の時間は3分〜7分の範囲である。このように、量子ドットの吸収ピークと発光ピークとの間のストークスシフトを大きくすることができる。これにより、熱処理後の特徴的な波長における量子ドットの吸収強度に対する発光強度の比が大きくなり、1.5×10CPS/Abs.〜2.0×10CPS/Abs.の範囲である。特徴的な波長は、量子ドットの発光ピークの最大強度の半分に対応する2つの波長のうち、より短い波長である。したがって、量子ドットの自己吸収現象を少なくすることができ、量子ドットの量子収率を向上させることができる。
【0008】
本開示の前述した特徴および他の特徴および利点をより理解しやすくするために、図面を伴ういくつかの実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本開示の実施形態を示し、説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
図1図1は、本開示の一実施形態に係る量子ドットの製造方法のフローチャートである。
図2A図2Aは、熱処理されていない量子ドットの発光強度および吸収強度を示すグラフである。
図2B図2Bは、本開示の一実施形態に係る280℃の温度で熱処理された量子ドットの発光強度および吸収強度を示すグラフである。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る発光材料の製造方法のフローチャートである。
図4A図4Aは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図4B図4Bは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図4C図4Cは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図4D図4Dは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図4E図4Eは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図4F図4Fは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図4G図4Gは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図4H図4Hは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図4I図4Iは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図4J図4Jは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
【発明の詳細な説明】
【0010】
図1は、本開示の一実施形態に係る量子ドットの製造方法のフローチャートである。図2Aは、熱処理されていない量子ドットの発光強度および吸収強度を示すグラフである。図2Bは、本開示の一実施形態に係る280℃の温度で熱処理された量子ドットの発光強度および吸収強度を示すグラフである。
【0011】
図1を参照すると、本実施形態の量子ドットの製造方法は、以下のステップを含む。ステップS100を実行し、第12族元素、第13族元素、または第14族元素を含む第1の溶液を準備する。具体的には、第12族元素、第13族元素または第14族元素は、第1の溶液中に陽イオンの形態で存在していてもよい。例えば、第1の溶液中の第12族元素は、亜鉛、カドミウム、水銀、またはこれらの組み合わせを含むことができる。第1の溶液中の第13族元素は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、またはこれらの組み合わせを含むことができる。第1の溶液中の14族元素は、スズ、鉛、またはこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、第12族元素(または第12族元素によって形成される前駆体)、第13族元素(または第13族元素によって形成される前駆体)、または第14族元素(または第14族元素によって形成される前駆体)を有機酸と混合して第1の溶液を形成することができる。有機酸は、オレイン酸(OA)、ステアリン酸、ラウリン酸、またはこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1の溶液が形成された後、160℃〜200℃の範囲の温度で第1の溶液をさらに反応させることができる。いくつかの実施形態では、上記の反応が行われた後、第1の溶液の温度を230℃〜330℃の範囲にさらに上昇させることができる。
【0012】
ステップS102を実行し、第15元素または第16元素を含む第2の溶液を準備する。具体的には、第15族元素または第16族元素は、陰イオンの形態で第2の溶液中に存在してもよい。例えば、第2の溶液中の第15族元素は、窒素、リンおよびヒ素の少なくとも1つを含むことができる。第2の溶液中の第16族元素は、酸素、硫黄、セレンおよびテルルの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施形態では、第15族元素(または第15族元素によって形成される前駆体)または第16族元素(または第16族元素によって形成される前駆体)を有機溶液と混合することができる。有機溶液は、トリオクチルホスフィン(TOP)、オクタデセン(ODE)、トリブチルホスフィン、ジオクチルアミン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、ステップS102は、室温で実行してもよい。室温は20℃〜30℃の範囲とすることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、ステップS100とステップS102を同時に実行してもよい。他の実施形態では、ステップS100を、ステップS102の前または後に実行してもよく、本開示は、ステップS100およびステップS102を実行する順序を限定することを意図しない。
【0014】
ステップS104を実行し、第1の溶液と第2の溶液を混合して第3の溶液を形成する。ステップS104では、第1の溶液中の少なくとも1つの陽イオンは、第2の溶液中の少なくとも1つの陰イオンと反応して、2元、3元、4元または他の多元半導体材料を形成する。いくつかの実施形態では、半導体材料は、量子ドットの内側コアであってもよい。他の実施形態では、半導体材料は、量子ドットの内側コアおよび内側シェルとして機能するコア−シェル構造を有してもよい。内側シェルは、単層構造または多層構造でもよい。さらに、半導体材料は、実質的に球形の輪郭を有するように形成されてもよい。換言すると、半導体材料は、約1のアスペクト比を有する球形であってもよい。いくつかの実施形態では、半導体材料は、12族−16族半導体、13族−15族半導体または14族−16族半導体であってもよい。例えば、12族−16族半導体は、CdO、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、およびHgZnSTeからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。13族−15族半導体は、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAs、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAs、InCuSe、およびInAlPAsからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。14族−16族半導体は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、およびSnPbSTeからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。いくつかの実施形態では、第3の溶液が形成された後、第3の溶液を230℃〜330℃の範囲の温度でさらに反応させる。いくつかの実施形態では、上記の反応を行った後、第3の溶液を室温までさらに冷却してもよく、室温は20℃〜30℃の範囲であってもよい。
【0015】
ステップS106を実行し、第12族元素、第13族元素または第14族元素を含む材料と、第15族元素または第16族元素を含む第4の溶液とを第3の溶液に添加して、量子ドットを含む第5の溶液を形成する。いくつかの実施形態では、その材料中の第12族元素、第13族元素、または第14族元素は、それぞれ、第1の溶液中の第12族元素、第13族元素、または第14族元素と異なっていてもよい。さらに、第4の溶液中の第15族元素または第16族元素は、それぞれ、第2の溶液中の第15族元素または第16族元素と異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、第12族元素、第13族元素、または第14族元素を含む材料と、第15族元素または第16族元素を含む第4の溶液とを、第3の溶液に順番に添加してもよい。他の実施形態では、第12族元素、第13族元素、または第14族元素を含む材料と、第15族元素または第16族元素を含む第4の溶液とを、第3の溶液に同時に添加してもよい。ステップS106では、量子ドットの内側コア(または内側シェル)の表面に外側シェルを形成してもよい。このように、量子ドットは外側シェルおよび内側コアを有していてもよいし、または外側から内側にかけて、外側シェル、内側シェル、および内側コアを有していてもよい。外側シェルは、共有結合によって、内側コア(または内側シェル)の表面に形成されてもよい。外側シェルと内側コア(または外側シェル、内側シェル、および内側コア)を含む量子ドットは、依然として球形の輪郭を維持する。いくつかの実施形態では、外側シェルは、単層構造であってもよい。他の実施形態では、外側シェルは、多層構造であってもよい。いくつかの実施形態では、第4の溶液を第3の溶液に添加した後、第4の溶液および第3の溶液を含む混合溶液を220℃〜260℃の範囲の温度でさらに反応させて、外側シェルを有する量子ドットを含む第5の溶液を形成する。外側シェルを形成する過程において、外側シェルを構成する分子を、溶液中に分散させるよりも、第4の溶液と第3の溶液とを含む混合溶液を加熱することにより、外側シェルを構成する分子を、内側コア(または内側シェル)の表面に好適に核形成することができる。このようにして、内側コア(または内側コアおよび内側シェル)が外部の水、酸素、および青色光によって損傷することを防ぐように、量子ドットの外側シェルは、内側コア(または内側コアおよび内側シェル)をより保護することができる。したがって、量子ドットの信頼性が向上する。
【0016】
ステップS108を実行し、第5の溶液に熱処理を行う。第5の溶液に行う熱処理は、量子ドットを含む第5の溶液に行う熱処理、すなわち、量子ドットに行う熱処理とみなされる。第5の溶液に行う熱処理の温度は、上記ステップS106における量子ドットの外側シェルの形成温度(220℃〜260℃の範囲)よりも少なくとも15℃〜75℃または20℃〜50℃高い。換言すると、ステップS108における熱処理の温度は、ステップS106における温度範囲よりも、15℃〜75℃または20℃〜50℃高い。熱処理の温度範囲は275℃〜295℃の範囲である。いくつかの実施形態では、熱処理の温度範囲は280℃〜290℃の範囲であってもよい。さらに、熱処理の時間は、3分〜7分または4分〜6分の範囲である。いくつかの実施形態では、熱処理は不活性雰囲気中で行ってもよい。例えば、不活性雰囲気中の不活性ガスは、窒素またはアルゴンを含むことができる。いくつかの実施形態では、熱処理前の量子ドットの直径に対する熱処理後の量子ドットの直径の比は、1.0〜1.3である。特に、熱処理前の内側コアの直径は、熱処理後の内側コアの直径と同一であってもよい。いくつかの実施形態では、量子ドットは内側シェルをさらに含み、熱処理前の内側コアの直径および内側シェルの厚さは、それぞれ、熱処理後の内側コアの直径および内側シェルの厚さと同一であり得る。また、熱処理前の外側シェルの厚さに対する熱処理後の外側シェルの厚さの比は、1.0〜1.6の範囲であってもよい。さらに、量子ドットに熱処理を行うことで、量子ドットの元素分布が変化し得る、または量子ドットの欠陥の数が減少し得る。いくつかの実施形態では、ステップS106を実行した後、第5の溶液の温度が直ちに上昇してステップS108を実行し、第5の溶液に熱処理を行う。
【0017】
その後、ステップS108で得られた溶液に、遠心分離操作および洗浄操作を行った後、この実施形態の量子ドットを得てもよい。この実施形態の量子ドットは、実質的に球形の輪郭を有する。球形の輪郭を有する量子ドットのアスペクト比は、0.7〜1.3、好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.9〜1.1の範囲であり得る。また、量子ドットの組成およびサイズを変えることによって、量子ドットによって放出される光の波長範囲を調節することができる。いくつかの実施形態では、量子ドットは、赤色光を放出する量子ドットであってもよく、赤色量子ドットとも呼ばれる。他の実施形態では、量子ドットは、緑色光または青色光を放出する量子ドットであってもよく、これらはそれぞれ、緑色量子ドットまたは青色量子ドットとも呼ばれる。特に、波長350nm以上かつ量子ドットが発する光の波長よりも短い波長の入射光、例えば、波長390nm〜500nmの入射光を量子ドットが受ける場合、量子ドットは、400nm〜700nmの範囲の波長を有する光を放出することができる。また、量子ドットによって放出される光のピークの半値全幅は、例えば、20nm〜60nmである。いくつかの実施形態では、赤色量子ドットによって放出される光の波長は、例えば、600nm〜700nm、605nm〜680nm、または610nm〜660nmの範囲である。他の実施形態では、緑色量子ドットによって放射される光の波長は、例えば、500nm〜600nm、510nm〜560nm、または520nm〜550nmの範囲である。青色量子ドットによって放射される光の波長は、例えば、400nm〜500nm、430nm〜470nm、または440nm〜460nmの範囲である。いくつかの実施形態では、赤色量子ドットによって放出される光のピークの半値全幅は、例えば、30.0nm〜35.0nm、30.0nm〜34.0nm、または31.0nm〜34.0nmの範囲である。例えば、量子ドットによって放出される光の波長、強度、および半値全幅は、HORIBA,Ltd.製のフォトルミネッセンスアナライザー(型番:FluoroMax−3)によるフォトルミネッセンス分析によって求めることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、赤色量子ドットの平均粒径は、例えば、3nm〜25nm、4nm〜15nm、または5nm〜10nmの範囲である。緑色量子ドットの平均粒径は、例えば、2nm〜20nm、3nm〜15nm、または4nm〜9nmの範囲である。青色量子ドットの平均粒径は、例えば、1nm〜15nm、2nm〜10nm、2nm〜8nmの範囲である。
【0019】
上述したように、この実施形態に係る量子ドットの製造方法では、量子ドットを含む溶液に熱処理を行う。熱処理の温度は、量子ドットを含む溶液を形成する温度よりも15℃〜75℃高く、熱処理の時間は、3分〜7分の範囲である。熱処理の結果、量子ドットの吸収ピークはより短い波長にシフトすることができ、一方、量子ドットの発光ピークは、同じまままたはより長い波長にわずかにシフトすることがある。このようにして、量子ドットの発光ピークの強度が増大する。
【0020】
図2Aを参照すると、熱処理されていない量子ドットの吸収ピーク200(破線で示す)と発光ピーク202(実線で示す)とが部分的に重なっている。図2Bを参照すると、280℃の温度で熱処理を行った後、量子ドットの吸収ピーク200a(破線で示す)の波形が変化して短波長側にシフトし、発光ピーク202a(実線で示す)の位置はほとんど変化しない。このように、量子ドットの吸収ピークと発光ピークとの間のストークスシフトが増大することがある。図2Bを参照すると、熱処理後では、特徴的な波長λc1における量子ドットの発光強度Iと吸収強度Iとの比(I/I)は、1.5×10CPS/Abs.〜2.0×10CPS/Abs.の範囲である。特徴的な波長λc1は、量子ドットの発光ピークの最大強度Iの半分に対応する2つの波長(特徴的な波長λc1および特徴的な波長λC2)のうち、短い波長である。好ましくは、量子ドットの吸収強度Iに対する発光強度Iの比(I/I)は、2.0×10CPS/Abs.〜1.0×10CPS/Abs.の範囲である。より好ましくは、特徴的な波長λc1での量子ドットの吸収強度Iに対する発光強度Iの比(I/I)は、2.0×10CPS/Abs.〜6.0×10CPS/Abs.の範囲である。これにより、量子ドットの自己吸収現象を回避して、量子ドットの量子収率を高めることができる。図2Aおよび図2Bを参照すると、本開示の実施形態では、特性波長λc1における量子ドットの発光強度Iの単位は、特性波長λc1における1秒あたりの光子数を示すCPS(Counts Per Second)であり;特性波長λc1における量子ドットの吸収強度Iの単位は、特性波長λc1における吸光度を示すAbs.(吸光度単位)である。
【0021】
図3は、本開示の一実施形態に係る発光材料の製造方法のフローチャートである。図4A図4Jは、本開示の複数の実施形態に係る表示装置を示す模式図である。図3を参照すると、いくつかの実施形態では、上述の量子ドットに基づく発光材料の製造方法は、以下のステップを含むことができる。
【0022】
ステップS300を実行し、量子ドット溶液およびキャリア溶液を準備する。量子ドット溶液は、ステップS100〜ステップS108によって形成された量子ドットと、量子ドットを分散させるように構成された溶媒とを含む。同様に、キャリア溶液は、キャリアと、キャリアを分散させるように構成された溶媒とを含む。例えば、量子ドット溶液の溶媒およびキャリア溶液の溶媒は、それぞれ、n−ヘキサンまたはトルエンを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、量子ドット溶液中の量子ドットの重量パーセントは、0.1%〜5%の範囲である。キャリア溶液中のキャリアの重量パーセントは、0.5%〜10%の範囲である。
【0023】
いくつかの実施形態では、キャリアの材料は、有機高分子、無機高分子、水溶性高分子、有機溶媒可溶性高分子、生体高分子および合成高分子からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。例えば、キャリアの材料は、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケチド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリアセチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、およびセルロースポリマーからなる群の少なくとも1つであってもよい。いくつかの実施形態では、キャリアの材料は、無機媒体であってもよく、例えば、シリカゲル、ベントナイト、ガラス、石英、カオリン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。いくつかの実施形態では、キャリアの材料は、好ましくは酸化ケイ素であり、例えば、ポリシロキサン、ガラス、水ガラス、および二酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0024】
水ガラスは、アルカリ金属酸化物と二酸化ケイ素とを組み合わせることにより形成される材料である。水ガラスは、アルカリ金属の種類に基づいて、リチウム水ガラス、ナトリウム水ガラス、およびカリウム水ガラスに分類することができる。リチウム水ガラス、ナトリウム水ガラス、およびカリウム水ガラスの分子式は、それぞれ、LiO・nSiO、NaO・nSiO、KO・nSiOである。分子式中、nは、水ガラスの係数を示し、これは水ガラス中のアルカリ金属酸化物に対する酸化ケイ素の分子比(またはモル比)を表す。係数nは、1.5〜4.0の範囲、または2.0〜3.5の範囲であり得る。
【0025】
ポリシロキサンは、以下の一般式(I)で示されるシロキサン化合物に水を加えることによる加水分解縮合反応を経て得られる。
Si(OR4−n n=0〜3 式(I);
はC〜C15の芳香族基を示し、RはC〜Cのアルキル基を表す。芳香族基は、例えば(これらに限定されない)、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル、またはナフチル基である。アルキルは、例えば(これらに限定されない)、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、またはn−ブチル基である。いくつかの実施形態では、ポリシロキサンは、テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解および縮合反応を経て得ることができる。
【0026】
キャリアの平均粒径は、例えば、0.1μm〜25μm、0.3μm〜15μm、または0.5μm〜10μmである。いくつかの実施形態では、キャリアの材料は多孔質である。多孔質キャリアの平均表面孔径は、3nm〜100nmである。いくつかの実施形態では、量子ドットは赤色量子ドットであり、多孔質キャリアの平均表面孔径は、例えば、7nm〜40nm、7nm〜35nm、または7nm〜30nmである。他の実施形態では、量子ドットは緑色量子ドットであり、多孔質キャリアの平均表面孔径は、例えば、5nm〜30nm、5nm〜25nm、または5nm〜20nmである。また、量子ドットが青色量子ドットである場合、多孔質キャリアの平均表面孔径は、例えば、3nm〜25nm、3nm〜20nm、または3nm〜15nmである。多孔質キャリアの比表面積は、例えば、100m/g〜1000m/gである。いくつかの実施形態では、多孔質キャリアは多孔質微粒子である。多孔質微粒子は、二酸化ケイ素粒子であってもよい。キャリアは、親油性キャリアであってもよい。例えば、多孔質微粒子は、親油性二酸化ケイ素粒子であってもよい。親油性二酸化ケイ素粒子は、以下の式(II)で示されるシリコーン化合物を経て二酸化ケイ素粒子を変性することによって得られる。
Si(OR4−m m=1〜3 式(II);
はC〜C20のアルキル基を示し、RはC〜Cのアルキル基を示す。いくつかの実施形態では、Rはオクチル基、ノニル基、またはデシル基である。Rは、例えば(これらに限定されない)、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、またはn−ブチル基である。
【0027】
二酸化ケイ素からなる各多孔質キャリアは、1μm〜5μmの平均粒径、5nm〜15nmの平均表面孔径、および500m/g〜900m/gの比表面積を有してもよく;または各多孔質キャリアは、1μm〜5μmの平均粒径、10nm〜30nmの平均表面孔径、および250m/g〜750m/gの比表面積を有してもよく;または各多孔質キャリアは、0.5μm〜1.5μmの平均粒径、5nm〜15nmの平均表面孔径、および200m/g〜600m/gの比表面積を有してもよく;または各多孔質キャリアは、0.1μm〜0.5μmの平均粒径、3nm〜12nmの平均表面孔径、および100m/g〜500m/gの比表面積を有してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、有機基は、量子ドットの表面を修飾するために使用され得る。有機基は、封止剤と呼ばれ、量子ドットの凝集を抑制することができ、量子ドットを外部環境から適度に隔離することができる。封止剤は、ルイス塩基化合物からなるものであってもよい。いくつかの実施形態では、不活性溶媒中の炭化水素を希釈して、上記のルイス塩基化合物を形成することができる。封止剤は、ホスフィン、ホスフィンオキシド、アルキルホスホン酸、アルキルアミン、アリールアミン、ピリジン、長鎖脂肪酸、チオフェン、またはこれらの組合せなどの単官能または多官能リガンドを含むことができる。例えば、ホスフィンとしては、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィンなどが挙げられる。ホスフィンオキシドとしては、トリオクチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。アルキルアミンとしては、ヘキサデシルアミン、オクチルアミンなどが挙げられる。
【0029】
ステップS302を実行し、量子ドット溶液およびキャリア溶液を混合する。ステップS302では、量子ドット溶液中の量子ドットをキャリア溶液中のキャリアに付着させることができる。いくつかの実施形態では、キャリアは多孔質キャリアであり、そのため、量子ドットはキャリアに均一かつ安定に付着することができる。
【0030】
次に、ステップS304を実行し、量子ドットおよびキャリアを含む溶液と、封止材料を含む溶液とを混合する。ステップS304では、封止材料は、量子ドットが付着されたキャリアの表面をカプセル化して封止層を形成することができる。いくつかの実施形態では、封止層の厚さは、0.1nm〜20nmの範囲であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、封止材料は、有機高分子、無機高分子、水溶性高分子、有機溶媒可溶性高分子、生体高分子および合成高分子からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。例えば、封止材料は、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケチド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリアセチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、およびセルロースポリマーからなる群の少なくとも1つであってもよい。いくつかの実施形態では、封止材料は、無機媒体であってもよく、例えば、シリカゲル、ベントナイト、ガラス、石英、カオリン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。いくつかの実施形態では、封止層およびキャリアは、同じ材料によって構成されていてもよい。他の実施形態では、封止層およびキャリアは、異なる材料によって構成されていてもよい。
【0032】
次に、ステップS306を実行し、キャリアと量子ドットと封止層とを含む溶液に遠心分離を行い、発光材料を得る。換言すれば、発光材料は、キャリア、量子ドット、および封止層を含むことができる。量子ドットはキャリアの表面に付着され、封止層は量子ドットおよびキャリアをカプセル化する。
【0033】
いくつかの実施形態では、発光材料中の量子ドットの重量パーセントは、0.1%〜30%の範囲であってもよい。他の実施形態では、発光材料中の量子ドットの重量パーセントは、0.2%〜25%、または0.3%〜20%の範囲であってもよい。発光材料中の量子ドットの重量パーセントが0.1%未満であると、発光材料中の量子ドットの濃度が比較的低く、発光材料全体の発光効率が悪い。発光材料中の量子ドットの重量パーセントが30%を超えると、量子ドットの自己吸収現象が起こりやすくなり、そのため、発光材料全体の発光効率が低下し、赤色シフトが観察されるだろう。例えば、重量パーセントは、誘導結合プラズマ(ICP)の分光分析によって得ることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、発光材料は、発光装置のパッケージ材料に塗布することができる。例えば、発光装置のパッケージ材料としては、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、アクリル樹脂、ガラスなどが挙げられる。発光装置では、光源(例えば、発光ダイオード、レーザー源、アーク灯、黒体光源)で発生した一次光が量子ドットを励起して二次光を発生させることができる。一次光の波長範囲は、二次光の波長範囲と異なっていてもよい。換言すると、一次光の色は、二次光の色と異なっていてもよい。また、発光装置全体によって放出される光の所定の強度および波長を満たすために、一次光の色と二次光の色は、適宜混合してもよい。なお、発光装置によって放出される光は、量子ドットによって放出される光(すなわち、二次光)のみであってもよいし、または光源によって放出される光と量子ドットによって放出される光とを混合することによって発生した(すなわち、一次光および二次光を混合することによって発生した)光であってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の色の量子ドットが発光材料に含まれていてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、この実施形態の発光材料を用いた発光ダイオード(LED)は、バックライトユニットまたは他の発光装置の発光構成要素として役立ち得る。また、この実施形態の発光材料を用いた複数の発光ダイオードは、量子ドット発光ダイオード(QLED)表示装置内に配置することも可能であり、QLED表示装置の各発光ダイオードは1画素である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示の実施形態の発光材料は、様々な表示装置に適用することができる。表示装置の例としては、テレビジョン(TV、TV受信機ともいう)(図4Aに示すような)、デジタルカメラ(図4Bに示すような)、デジタルビデオカメラ(図4Cに示すような)、デジタルフォトフレーム(図4Dに示すような)、携帯電話(図4Eに示すような)、ノートブックパーソナルコンピュータ(図4Fに示すような)、モバイルコンピュータ、コンピュータ用モニタなど(図4Gに示すような)、携帯ゲーム機、携帯情報端末、オーディオ再生装置(図4Hに示すような)、ゲーム機(図4Iに示すような)、およびカーディスプレイ(図4Jに示すような)などが挙げられる。
【0037】
以下に、実験例1、実験例2、比較例1、比較例2、および比較例3を挙げて本開示の効果を検証するが、本開示は以下の内容に限定されない。
(実験例1)
<量子ドットの調製>
【0038】
まず、第1の溶液を準備する。1630ミリグラムの酸化カドミウム、20ミリリットルのオレイン酸および60ミリリットルのオクタデセンを3つ口フラスコに入れて第1の溶液を形成し、第1の溶液を真空下、180℃の温度で加熱して反応を行う。次いで、3つ口フラスコを窒素で満たし、温度を250℃に上昇させる。
【0039】
次に、第2の溶液を準備し、第1の溶液を第2の溶液と混合して第3の溶液を形成する。0.6ミリモルのトリオクチルホスフィンセレニド(TOP−Se)によって形成された1.0ミリリットルの第2の溶液を3つ口フラスコに注入し、第1の溶液を第2の溶液と混合して第3の溶液を形成し、第3の溶液を250℃で反応させる。第3の溶液を撹拌して赤色懸濁液を形成し、次いで赤色懸濁液を室温まで冷却する。
【0040】
次に、第4の溶液を準備し、第3の溶液に添加して第5の溶液を形成する。600ミリグラムの酢酸亜鉛(Zn(Ac))粉末と、8.0ミリリットルのトリオクチルホスフィンおよび200ミリグラムの硫黄(S)によって形成された第4の溶液とを3つ口フラスコに注入する(すなわち、第4の溶液を第3の溶液に加える)。第3の溶液と第4の溶液とを含む混合溶液を240℃で反応させて量子ドットを含む第5の溶液を形成する。
【0041】
最後に、第5の溶液に熱処理を行う。混合溶液を240℃で反応させて量子ドットを含む第5の溶液を形成した後、直ちに熱処理を行う。熱処理の温度は280℃であり、熱処理の時間は5分である。次に、反応を経て得られた混合物を60℃まで冷却し、100ミリリットルのエタノールで沈殿させる。沈殿物に遠心分離を行った後、この実験例の量子ドットを得る。この実験例の量子ドットは赤色量子ドットであり、量子ドットは638nmの波長に対応する発光ピークを有し、発光ピークの半値全幅は32.1nmである。
<発光材料の調製>
【0042】
次に、得られた量子ドットをn−ヘキサンと混合して量子ドット溶液を形成する。量子ドット溶液中の量子ドットの重量パーセントは1%である。さらに、多孔質二酸化ケイ素粒子キャリアをn−ヘキサンと混合して、キャリア溶液を形成する。多孔質二酸化ケイ素粒子は、3μmの平均直径、10nmの平均表面孔径、および700m/gの比表面積を有する。さらに、多孔質二酸化ケイ素粒子を親油性になるように修飾する。キャリア溶液中の多孔質二酸化ケイ素粒子の重量パーセントは5%である。
【0043】
0.25グラムの量子ドット溶液および5グラムのキャリア溶液を混合し、10分間放置する。次に、量子ドットとキャリアとを含む溶液に遠心ろ過を行い、量子ドットが付着した多孔質二酸化ケイ素粒子(すなわち、量子ドットが付着したキャリア)を得る。次いで、量子ドットが付着したキャリアを250グラムのエタノールに加え、均一に分散させる。
【0044】
封止材料を含む溶液を準備し、この溶液は、0.5グラムのテトラエトキシシラン(TEOS)および2.5グラムの29重量%のアンモニア水(NHOH)を含む。封止材料を含む溶液を、量子ドットが付着したキャリアを含むエタノール溶液に添加し、室温で4時間撹拌する。このようにして、量子ドットが付着したキャリアの表面に封止層を形成する。キャリアと、量子ドットと、封止層とを含む溶液のpHは、10〜11の範囲である。次に、キャリアと、量子ドットと、封止層とを含む溶液を遠心分離する。沈殿物を純水で3回洗浄した後、乾燥して、0.26グラムのマイクロサイズの発光材料を得る。
(実験例2)
【0045】
この実験例の量子ドットの製造方法は、実験例1の量子ドットの製造方法と同様であり、その違いは、この実験例の熱処理温度が290℃であることである。また、この実験例の発光材料の製造方法は、実験例1の発光材料の製造方法と同じである。
(比較例1)
【0046】
比較例1の量子ドットの製造方法は、実験例1の量子ドットの製造方法と同様であり、その違いは、比較例1の熱処理温度が270℃であることである。また、比較例1の発光材料の製造方法は、実験例1の発光材料の製造方法と同じである。
(比較例2)
【0047】
比較例2の量子ドットの製造方法は、実験例1の量子ドットの製造方法と同様であり、その違いは、比較例2の熱処理温度が300℃であることである。また、比較例2の発光材料の製造方法は、実験例1の発光材料の製造方法と同じである。
(比較例3)
【0048】
比較例3の量子ドットの製造方法は、実験例1の量子ドットの製造方法と同様であり、その違いは、比較例3の量子ドットを含む溶液に熱処理を行わないことである。また、比較例3の発光材料の製造方法は、実験例1の発光材料の製造方法と同じである。
(実験例1、実験例2、比較例1、比較例2および比較例3の結果)
【0049】
実験例1、実験例2、比較例1、比較例2および比較例3の量子ドットの光学特性を以下の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
図2Aおよび図2Bを参照すると、特徴的な波長λc1での量子ドットの吸収強度Iに対する発光強度Iの比は、量子ドットの発光スペクトルと吸収スペクトルから得られる。波長450nmにおける量子ドットの吸光度が0.135となる濃度に量子ドットの濃度を調整したとき、吸収スペクトルは、400nm〜700nmの波長範囲で測定される。発光スペクトルは、前述の吸収スペクトル測定における量子ドットの同じ濃度で550nm〜700nmの波長で測定される。
【0052】
溶媒としてのn−ヘキサンに量子ドットを分散させて、得られた溶液を、青色光(波長450nm)における71〜79%の透過率を有するサンプル溶液として調製して測定することによって、量子収率が得られる。積分球(HORIBA QUANTA−φF−3029)を備えたフォトルミネッセンスアナライザー(HORIBA FluoroMax−3)を用いて、溶液と溶媒(n−ヘキサン、ブランク実験)について、それぞれ、サンプル溶液と溶媒の励起積分面積と発光積分面積を測定し、サンプル溶液の量子収率を以下の式(2)から計算する。
【数1】

Φは、量子収率を示し、Eは、サンプル溶液の発光積分面積であり、Eは、n−ヘキサンの発光積分面積であり、Lは、サンプル溶液の励起積分面積であり、Lは、n−ヘキサンの励起積分面積である。
【0053】
表1を参照すると、実験例1および実験例2の特徴的な波長λc1での量子ドットの吸収強度Iに対する発光強度Iの比は、両方とも、比較例1、比較例2および比較例3の特徴的な波長λc1での量子ドットの吸収強度Iに対する発光強度Iの比よりも大きい。このように、実験例1および実験例2の量子ドットの量子収率は、比較例1、比較例2および比較例3の量子ドットの量子収率よりも大きい。
【0054】
また、実験例1および比較例3の結果から、量子ドットに熱処理を行うと、量子ドットの量子収率が増加し、発光ピークの半値全幅にはほとんど影響がないことがわかる。また、実験例1および比較例1の結果から、熱処理の温度が270℃より高いと、量子ドットの量子収率が大幅に増加することが分かる。一方、実験例2および比較例2の結果に基づくと、熱処理の温度が300℃以上であると、量子ドットの量子収率が著しく低下し、発光ピークの半値全幅が大幅に増加する。
【0055】
本開示の範囲または精神から逸脱することなく、本開示の構造に様々な変更および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。前述のことを考慮して、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に含まれる本開示の変更および変形に及ぶことを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
量子ドット、発光材料、表示装置およびその製造方法は、表示技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
200、200a:吸収ピーク
202、202a:発光ピーク
:吸収強度
:発光強度
:最大強度
S100、S102、S104、S106、S108、S300、S302、S304、S306:ステップ
λc1、λc2:特徴的な波長
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J