(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
[実施の形態1]
[パターン修正装置の構成]
図1は、この発明の実施の形態によるパターン修正装置1の全体構成を示す斜視図である。
【0021】
図1を参照して、パターン修正装置1は、観察光学系2、CCDカメラ3(撮像装置)、カット用レーザ装置4、インク塗布機構5、およびインク硬化用光源6から構成される修正ヘッド部と、この修正ヘッド部を修正対象の基板7に対して垂直方向(Z軸方向)に移動させるZステージ8と、Zステージ8を搭載してX軸方向に移動させるXステージ9と、基板7を搭載してY軸方向に移動させるYステージ10と、装置全体の動作を制御する制御用コンピュータ11(制御装置)と、CCDカメラ3によって撮影された画像などを表示するモニタ12と、制御用コンピュータ11に作業者からの指令を入力するための操作パネル13とを備える。
【0022】
観察光学系2は、照明用の光源を含み、基板7の表面状態や、インク塗布機構5によって塗布された修正用インク(液状材料)の状態を観察する。観察光学系2によって観察される画像は、CCDカメラ3により電気信号に変換され、モニタ12に表示される。カット用レーザ装置4は、観察光学系2を介して基板7上の不要部にレーザ光を照射して除去する。
【0023】
インク塗布機構5は、基板7上に形成された配線パターンに発生した断線部に修正用インクを塗布して修正する。インク硬化用光源6は、たとえばCO
2レーザを含み、インク塗布機構5によって塗布されたインクにレーザ光を照射して硬化させる。
【0024】
なお、この装置構成は一例であり、たとえば、観察光学系2などを搭載したZステージ8をXステージに搭載し、さらにXステージをYステージに搭載し、Zステージ8をXY方向に移動可能とするガントリー方式と呼ばれる構成でもよく、観察光学系2などを搭載したZステージ8を、修正対象の基板7に対してXY方向に相対的に移動可能な構成であればどのような構成でもよい。
【0025】
次に、複数の塗布針を用いたインク塗布機構の例について説明する。
図2は、観察光学系2およびインク塗布機構5の要部を示す斜視図である。
図2を参照して、このパターン修正装置1は、可動板15と、倍率の異なる複数(たとえば5個)の対物レンズ16と、異なる色のインクを塗布するための複数(たとえば5個)の塗布ユニット17とを備える。
【0026】
可動板15は、観察光学系2の観察鏡筒2aの下端と基板7との間で、X軸方向およびY軸方向に移動可能に設けられている。また、可動板15には、たとえば5個の貫通孔15aが形成されている。
【0027】
対物レンズ16は、Y軸方向に所定の間隔で、それぞれ貫通孔15aに対応するように可動板15の下面に固定されている。5個の塗布ユニット17は、それぞれ5個の対物レンズ16に隣接して配置されている。可動板15を移動させることにより、所望の塗布ユニット17を修正対象の断線部の上方に配置することが可能となっている。
【0028】
図3(a)〜(c)は、
図2のA方向から要部を見た図であって、インク塗布動作を示す図である。塗布ユニット17は、塗布針18とインクタンク19とを含む。まず
図3(a)に示すように、所望の塗布ユニット17の塗布針18を修正対象の断線部の上方に位置決めする。このとき、塗布針18の先端部は、インクタンク19内のインクに浸漬されている。
【0029】
次いで
図3(b)に示すように、塗布針18を下降させてインクタンク19の底の孔から塗布針18の先端部を突出させる。このとき、塗布針18の先端部にはインクが付着している。次に
図3(c)に示すように、塗布針18およびインクタンク19を下降させて塗布針18の先端部を断線部に接触させ、断線部にインクを塗布する。この後、
図3(a)の状態に戻る。
【0030】
複数の塗布針を用いたインク塗布機構は、この他にも様々な技術が知られているため詳細な説明を省略する。たとえば特許文献2などに示されている。パターン修正装置1は、たとえば
図2に示すような機構をインク塗布機構5として用いることにより、複数のインクのうちの所望の色のインクを用いて断線部を修正することができ、また、複数の塗布針のうち所望の塗布径の塗布針を用いて断線部を修正することができる。
【0031】
[パターン修正工程]
次に、
図1に示したパターン修正装置1を用いて実行される、パターン修正工程の概要を説明する。
【0032】
図4は、パターン修正工程を示すフローチャートである。
図4を参照して、パターン修正工程は、基板形状測定工程(ステップS10)と、断線部形状検出工程(ステップS20)と、塗布位置算出工程(ステップS50)と、インク塗布工程(ステップS60)と、乾燥工程(ステップS70)とを備える。
【0033】
基板形状測定工程(ステップS10)では、基板7の表面の三次元形状が測定される。基板形状測定工程では、基板7の表面に形成された配線パターンの三次元形状を測定することができる。
【0034】
断線部形状検出工程(ステップS20)では、基板形状測定工程(ステップS10)で測定された基板7の表面の三次元形状を示すデータに基づいて、配線パターンに発生している断線部の三次元形状が検出される。
【0035】
ステップS30では、断線部形状検出工程(ステップS20)での検出結果に基づいて、断線部を修正する必要があるか否かが判定される。具体的には、断線部形状検出工程(ステップS20)において配線パターンに断線部が検出されなかった場合には、断線部の修正が不要であると判定される(ステップS30のNO判定)。なお、後述するインク塗布工程(ステップS60)を実施した後にステップS30に戻り、断線部の修正が不要であると判定された場合には、断線部へのインクの充填が終了したと判断され、インクを乾燥するための乾燥工程(ステップS70)に移行する。
【0036】
一方、断線部形状検出工程(ステップS20)において配線パターンに断線部が検出された場合には、断線部の修正が必要と判定される(ステップS30のYES判定)。この場合にはさらに、断線部の修正が可能であるか否かが判定される(ステップS40)。具体的には、インク塗布工程(ステップS60)を予め定められた回数繰り返し実施した後、ステップS30において断線部へのインクの充填が終了していないと判断された場合(ステップS30のYES判定時)には、断線部の修正が不可能であると判定される。
【0037】
一方、断線部の修正が可能であると判定された場合(ステップS40のYES判定時)には、塗布位置算出工程(ステップS50)が実施される。塗布位置算出工程(ステップS50)では、断線部形状検出工程(ステップS20)で検出された断線部の三次元形状を示すデータに基づいて、インクを塗布する位置が算出される。
【0038】
インク塗布工程(ステップS60)では、塗布位置算出工程(ステップS50)で算出されたインク塗布位置に従ってインク塗布機構5を制御することにより、基板7の表面にインクが塗布される。インク塗布工程(ステップS60)が実施された後、再び基板形状測定工程(ステップS10)に戻ることにより、断線部が修正された後の基板7の表面の三次元形状が測定される。さらに、断線部形状検出工程(ステップS20)に進み、基板7の表面の三次元形状に基づいて、断線部の三次元形状が検出される。断線部の三次元形状の検出結果から、上記のインク塗布工程(ステップS60)によって断線部へのインクの充填が終了しており、断線部の修正が不要と判断された場合(ステップS30のNO判定時)には、乾燥工程(ステップS70)が実施される。一方、配線パターンの修正が必要と判断された場合(ステップS30のYES判定時)には、再度、塗布位置算出工程(ステップS50)およびインク塗布工程(ステップS60)が実施されることになる。
【0039】
以下、
図4に示したパターン修正工程に含まれる各工程の詳細を説明する。
[基板形状測定工程]
基板形状測定工程(
図4のステップS10)では、制御用コンピュータ11はパターン修正装置1を制御し、基板7の表面の三次元形状を測定する。
図5は、基板7の表面に形成された配線パターンを概略的に示す部分平面図である。
図5には、基板7の表面に正常に形成された配線部分(以下、「正常配線部」とも称す)と、部分的に断線部(図中の領域RGN)が生じている配線部分とが模式的に示されている。
【0040】
基板形状測定工程では、基板7の表面をXY座標系として、XY座標系に複数の測定ポイントをマトリクス状に設定する。そして、設定された複数の測定ポイントの各々について、Z軸方向の高さを検出することにより、基板7の表面の三次元形状を測定する。以下、各測定ポイントのZ軸方向の高さを検出する方法について説明する。
【0041】
この高さ検出方法では、対物レンズ16に二光束干渉対物レンズを使用する。二光束干渉対物レンズでは焦点位置での干渉光強度が最大になることを利用し、Zステージ8を基板7に対して相対的に移動させながら干渉光の画像を撮像し、画素ごとに干渉光強度が最大になるZステージ位置を求め、その位置を当該画素の高さとする。この高さ測定方法は、数μm以下の微小な高さの検出に適している。
【0042】
二光束干渉対物レンズは、光源から出射された白色光を二光束に分離して一方を対象物の表面に照射するとともに、他方を参照面に照射することにより、対象物の表面からの反射光と、参照面からの反射光とを干渉させるものである。本実施の形態では、ミラウ型干渉対物レンズを用いるが、マイケルソン型やリニーク型の干渉対物レンズを用いてもよい。
【0043】
また、光源としては白色光源を用いることが好ましい。白色光源を用いた場合、レーザなどの単一波長の光源を用いる場合とは異なり、二光束干渉対物レンズの焦点位置でのみ干渉光強度が最大になる。このため、高さを測定するのに適している。
【0044】
図6は、対物レンズ16にミラウ型干渉対物レンズ30を用いたときの観察光学系2の光学素子の配置図である。ミラウ型干渉対物レンズ30は、レンズ31、参照鏡32、およびビームスプリッタ33を含む。
【0045】
対物レンズ16をミラウ型干渉対物レンズ30に切換えると同時に、落射光源34の出射部にフィルタ切換装置35によってフィルタ36を挿入する。落射光源34を出射した光がフィルタ36を通過すると、中心波長λ(nm)の白色光が得られる。
【0046】
落射光源34として、たとえば白色LED(Light Emitting Diode)を用いてもよい。白色LEDの発光スペクトルは、波長450nmおよび560nmの2つのピークを有しているが、フィルタ36は、長波長側の560nmを中心とする光を選択的に透過させるローパスフィルタにより構成されることが好ましい。これは、450nmを中心とする光よりも、560nmを中心とする光の方が波長帯域が広いため、可干渉距離を短くできるからである。可干渉距離は、干渉縞を観測できる高さ方向の距離を示す。可干渉距離の短い方が、後述する第2段階で説明するコントラスト値の近似計算や重心計算で用いるデータ数を少なくすることができるため、処理の高速化が可能になる。
【0047】
フィルタ36を通過した光は、ハーフミラー37でレンズ31の方向に反射される。レンズ31に入射した光は、ビームスプリッタ33で基板7の方向に通過する光と参照鏡32の方向に反射する光とに分けられる。基板7の表面で反射した光と参照鏡32の表面で反射した光とは再びビームスプリッタ33で合流し、レンズ31で集光される。この後、レンズ31から出た光は、ハーフミラー37を通過した後、結像レンズ38を経てCCDカメラ3の撮像面3aに入射する。
【0048】
通常は、Zステージ8によりミラウ型干渉対物レンズ30を光軸方向に移動させて基板7の表面反射光と参照鏡32の表面反射光との間に光路長差を生じさせる。そして、Zステージ8によりミラウ型干渉対物レンズ30を移動させながら上記光路長差により発生する干渉光をCCDカメラ3で撮像する。この干渉光の強度、すなわち明るさは基板7からの反射光と参照鏡32からの反射光との光路長が等しいとき最大となる。また、このとき基板7の表面に焦点が合っている。
【0049】
Zステージ8は基板7とミラウ型干渉対物レンズ30とをZ軸方向に相対移動させる位置決め装置に相当する。なお、Zステージ8の他に、基板7自身をテーブルで上下させたり、ミラウ型干渉対物レンズ30と観察光学系2との連結部にピエゾテーブルを取り付けることによってミラウ型干渉対物レンズ30の位置を上下させてもよい。
【0050】
次に、探索手順について説明する。Zステージ8を探索開始位置に移動させる。現在位置をZp、探索範囲をΔとおくと、たとえばZステージ8を初期位置(Zp−Δ/2)に移動させる。ここで、Zステージ8のマイナス方向を基板7に近付く方向とし、プラス方向を基板7から遠ざかる方向とする。探索は、初期位置(Zp−Δ/2)からプラス方向、すなわちZステージ8が基板7から遠ざかる方向に行なうこととする。したがって、初期位置(Zp−Δ/2)からプラス方向にΔの範囲を探索する。なお、探索方向は必ずしも基板7から遠ざかる方向である必要はなく、基板7に近付く方向であってもよい。
【0051】
画像のサンプリングは、Zステージ8が移動を始め、定速状態になってから開始する。制御用コンピュータ11は一定周期でサンプリングを行なう。好ましくはCCDカメラ3の垂直同期信号の周期でサンプリングを行なうことにより、より正確に画像をサンプリングすることができる。
【0052】
Zステージ8は予め定められた速度v(μm/秒)で移動する。Zステージ8の移動速度v(μm/秒)は次のように定める。白色光の中心波長をλ(μm)とし、CCDカメラ3の垂直同期信号の周波数をF(Hz)とすると、移動速度v(μm/秒)は、画像のサンプリング周期1/F(秒)の間にZステージ8がλ/8(μm)だけ移動するように定められる。すなわち、Zステージ8の移動速度vは、v=(λ/8)×F(μm/秒)となる。この移動速度vは白色光の位相増分でπ/2に相当し、ナイキスト原理を満たしている。位相をπ/2ずつ変化させることにより、干渉光強度のピーク点を容易に検出することができる。
【0053】
位相をπ/2ずつ変化させながら画像をサンプリングしたとき、画像f
iを中心とする前後±2枚の合計5枚の画像f
i−2,f
i−1,f
i,f
i+1,f
i+2を用いてコントラスト値M
iを次式(1)を用いて算出する。
【0055】
ここで、f
i(x,y)は画像f
iの位置(x,y)における画素の輝度を示す。画像f
iにおける各画素(x,y)は測定ポイントを構成する。なお、iは取得した順に画像に付された番号(以下「サンプル番号」ともいう)であって、i=1,2,・・・,N(Nは自然数)の値をとる。
【0056】
図7(a)はサンプル番号iと輝度f
i(x,y)との関係を示す図である。
図7(b)はサンプル番号iとコントラスト値M
iとの関係を示す図である。
図7(c)はZステージ8の位置と移動速度との関係を示す図である。
【0057】
図7(a)〜(c)において、輝度f
i(x,y)およびコントラスト値M
iはともに画像pの近傍でピークを示している。このピーク点に対応するZステージ8の位置が画素(x,y)の焦点位置である。
【0058】
上記式(1)で表わされるコントラスト値M
iは、
図7(a)に示す輝度f
iの包絡線を示している。したがって、コントラスト値M
iを演算すればピーク点を求めることができる。しかしながら、ここでは演算を高速に行なうため、平方根を求める演算および除算を行なわない。たとえば実際の計算では、次式(2)を用いて、コントラスト値M
iを簡素化させたコントラスト値M
i♯を演算する。このコントラスト値M
i♯はコントラスト値M
iを2乗した値に比例するため、コントラスト値M
iに代えてコントラスト値M
i♯を用いても、包絡線のピーク点および画素の焦点位置がずれることはない。
【0060】
基板形状測定工程は2段階の処理により構成される。第1段階の処理では、画像f
iの各画素(x,y)について、輝度f
i(x,y)が最大となるZステージ8の位置を求める。これは、
図7(a)および(b)から分かるように、輝度f
i(x,y)とコントラスト値M
iとが、画素pの近傍において共にピークを示すことを利用している。すなわち、輝度f
i(x,y)がピークとなる画像pを求めることによって、コントラスト値M
iのピーク点の見当を付けることができる。これにより、第2段階の処理範囲を狭めることができるため、処理の高速化が可能になる。このように、第1段階の処理においては、撮影した画像を構成する複数の画素の各々について焦点の候補位置を求めるものである。
【0061】
次に、第2段階の処理では、輝度f
i(x,y)が最大となる画像pを中心とする前後±n枚(nは自然数)の合計(2n+1)枚の画像を選択して、上記式(2)によりコントラスト値M
i♯を演算する。そして、演算したコントラスト値M
i♯が最大となるZステージ8の位置を求め、このZステージ8の位置を画素(x,y)の最終的な焦点位置とする。すなわち、第2段階の処理は、第1段階の処理で求めた焦点の候補位置を基に、コントラスト値Mi♯を用いて正確な焦点位置を求めるものである。
【0062】
図8は、基板形状測定工程を実行するための制御構成を示すブロック図である。
図8を参照して、基板形状測定工程(ステップS10)に係る制御構成は、CCDカメラ3と、取込装置40と、処理装置42とから構成される。なお、取込装置40および処理装置42は、制御用コンピュータ11の内部に設けられる。
【0063】
取込装置40は、一定周期(好ましくはCCDカメラ3の垂直同期信号の周期)で画像のサンプリングを行なう。具体的には、取込装置40は、CCDカメラ3の垂直同期信号をトリガとして、画像のサンプリングを開始する。そして、画像のサンプリングが完了すると、サンプリングした画像を直ちに処理装置42に転送する。このとき、取込装置40は、処理装置42の記憶部44に対して画像を直接的に転送する。この画像転送には、たとえばDMA(Direct Memory Access)転送が用いられる。取込装置40による画像のサンプリングおよび転送は、CCDカメラ3の垂直同期信号の周波数をF(Hz)とすると、画像のサンプリング周期1/F(秒)で繰り返し実行される。
【0064】
処理装置42は、記憶部44と、中央処理部46とを含む。記憶部44には、画像のサンプリング周期1/F(秒)で取込装置40から画像f
iが転送される。記憶部44は転送された画像f
iを順番に記憶する。中央処理部46は、記憶部44に画像が転送された直後に、第1段階の処理である輝度f
i(x,y)の最大値を求める処理を開始する。そして、中央処理部46は、この輝度f
i(x,y)の最大値を求める処理を、次回の画像が転送されるタイミングの直前までに完了する。すなわち、第1段階の処理は、画像のサンプリング周期1/F(秒)の間に実行される。
【0065】
(第1段階の処理)
以下、第1段階の処理である輝度f
i(x,y)の最大値を求める処理の手順について詳細に説明する。
【0066】
図8において、記憶部44には、CCDカメラ3の解像度と同じ解像度となるように記憶セルが2次元に配列された記憶領域が3つ用意されている。これら3つの記憶領域のうち、第1の記憶領域には、画像f
iの位置(x,y)における輝度f
i(x,y)の最大値が格納される。すなわち、2次元配列された記憶セルの各々には、対応する画素(x,y)の輝度の最大値が格納される。以下の説明では、輝度f
i(x,y)の最大値を“Max(x,y)”と表記する。
【0067】
第2の記憶領域には、輝度f
i(x,y)が最大となる画像f
iを撮影したときのZステージ8の位置が格納される。すなわち、2次元配列された記憶セルの各々には、対応する画素(x,y)の輝度が最大となるときのZステージ8の位置が格納される。以下の説明では、輝度f
i(x,y)が最大となるときのZステージ8の位置を“Pz(x,y)”と表記する。
【0068】
第3の記憶領域には、輝度f
i(x,y)が最大となる画像f
iを撮影したときのサンプル番号iが格納される。すなわち、2次元配列された記憶セルの各々には、対応する画素(x,y)の輝度が最大となる画像f
iのサンプル番号iが格納される。以下の説明では、輝度f
i(x,y)が最大となる画像f
iのサンプル番号iを“I(x,y)”と表記する。
【0069】
なお、記憶部44に格納されるMax(x,y),Pz(x,y),I(x,y)の3つの値は、探索を開始する前の初期状態において「0」に設定されている。探索が開始されると、取込装置40から記憶部44に対して、画像がサンプリング周期1/F(秒)で順次転送される。中央処理部46は、画像f
iの転送が完了すると、画素ごとに、輝度f
i(x,y)とMax(x,y)とを比較し、比較結果に基づいてMax(x,y),Pz(x,y),I(x,y)の値を更新する。具体的には、中央処理部46は、画像f
iの位置(x,y)における輝度f
i(x,y)と、当該画素(x,y)の輝度の最大値Max(x,y)とを比較する。f
i(x,y)≦Max(x,y)の関係が成り立つとき、中央処理部46は、Max(x,y)の値を維持する。このとき中央処理部46は、Pz(x,y)およびI(x,y)の値についても維持する。
【0070】
これに対して、f
i(x,y)>Max(x,y)の関係が成り立つときには、中央処理部46は、Max(x,y)の値を輝度f
i(x,y)に書き換える。さらに中央処理部46は、Pz(x,y)の値を画素値f
i(x,y)に対応するZステージ8の位置に書き換えるとともに、I(x,y)の値を輝度f
i(x,y)のサンプル番号iに書き換える。
【0071】
中央処理部46は、上述した輝度f
i(x,y)とMax(x,y)との比較動作、および比較結果に応じた記憶部44の書換動作を、取込装置40から記憶部44に画像が転送されたタイミングから取込装置40が次回の画像のサンプリングを開始するタイミングまでの期間を使って実行する。たとえばCCDカメラ3の解像度を640×480とし、輝度f
i(x,y)を1バイトと想定した場合、取込装置40から記憶部44に転送される画像データのサイズは307,200バイトとなる。一方、CCDカメラ3の垂直同期信号の周波数を120Hzとすると、画像のサンプリング周期は1/120秒となる。したがって、取込装置40は、1/120秒(約8.3m秒)ごとに307,200バイトの画像データを取込んで処理装置42の記憶部44へ転送する。取込装置40から記憶部44へのデータ転送は、DMA転送を用いることによって約2m秒の時間で行なうことができる。したがって、処理装置42は、サンプリング周期である約8.3m秒のうち、データ転送に要する約2m秒を除いた約6.3m秒の時間を利用して、輝度f
i(x,y)の最大値を求める処理を実行する。
【0072】
このようにして画像のサンプリング周期ごとに、データ転送後の空き時間を用いて第1段階の処理を実行する。これにより、探索範囲内のすべての画像のサンプリングが完了したときには、記憶部44には、各画素について、輝度f
i(x,y)の最大値(=Max(x,y))、輝度f
i(x,y)が最大となるときのZステージ8の位置(=Pz(x,y)、および輝度f
i(x,y)が最大となる画像f
iのサンプル番号(=I(x,y))が格納されている。
【0073】
次に、第2段階の処理であるコントラスト値M
i♯が最大となるZステージ8の位置を求める処理の手順について詳細に説明する。第2段階の処理は、探索範囲内のすべての画像のサンプリングが完了した後、中央処理部46によって実行される。
【0074】
中央処理部46は、記憶部44から、各画素について、輝度f
i(x,y)が最大となるサンプル番号i(=I(x,y))を読み出す。そして、中央処理部46は、I(x,y)が示すサンプル番号iの画像f
iを中心とする前後±n枚の合計(2n+1)枚の画像を用いて、コントラスト値M
i♯(x,y)のピーク点を求める。
【0075】
具体的には、(2n+1)枚の画像の各々のサンプル番号をjとすると、サンプル番号jは、I(x,y)−n,I(x,y)−n+1,・・・,I(x,y)−1,I(x,y),I(x,y)+1,・・・,I(x,y)+n−1,I(x,y)+nの順で表わされる。中央処理部46は、画像f
jの輝度f
j(x,y)を上記式(3)に代入することにより、合計(2n+1)個のコントラスト値M
j♯(x,y)を算出する。
【0076】
ここで、コントラスト値Mj♯(x,y)に対応するZステージ8の位置をZ
jとすると、Z
jは次式(3)で表わすことができる。
【0078】
図7(b)で説明したように、コントラスト値M
j♯はピーク点を中心とする左右対称の山型傾向を示すため、2次関数あるいはガウス関数を用いてコントラスト値M
j♯を示す曲線を近似することができる。そこで、中央処理部46は、コントラスト値M
j♯とZステージ8の位置Z
jとの関係を2次関数あるいはガウス関数で近似し、求めた関数からコントラスト値M
j♯がピークとなるZステージ8の位置Z
jを求める。そして、このZステージ8の位置Z
jを画素(x,y)の高さとする。
【0079】
以上に説明したように、基板形状測定工程においては、第1段階の処理として、撮影される画像を構成する複数の画素の各々について、輝度が最大になるZステージ位置を焦点の候補位置とする。その後、第2段階の処理として、焦点の候補位置の近傍で撮影した画像の輝度からコントラスト値を求め、画素ごとに、コントラスト値が最大になるZステージ位置を焦点位置として求める。そして、求めた焦点位置から、測定ポイントのZ軸方向の高さを検出する。
【0080】
このような構成とすることにより、第1段階の処理において、各画素についてコントラスト値を演算する処理を省略できるため、制御用コンピュータ11における演算負荷を低減することができる。また、各画素のコントラスト値を記憶しておく必要がないため、大容量のメモリが不要となる。この結果、制御用コンピュータを安価に構成することができる。
【0081】
また、第1段階の処理を、撮像装置の撮影周期(CCDカメラ3における画像のサンプリング周期)内の画像を転送した後の空き時間を利用して行なうことができるため、探索範囲内のすべての画像の撮影が完了した後の数値演算処理を軽減することができる。この結果、基板形状測定工程の作業時間を短縮することが可能となる。
【0082】
なお、上述した第2段階の処理においては、コントラスト値M
i♯を2次関数あるいはガウス関数により近似する構成について説明したが、(2n+1)個のコントラスト値Mi♯の重心位置を求め、求めた重心位置をピーク位置としてよい。この重心位置は、
図7(b)に示すような左右対称データの中心位置を示す。重心位置をZ
gとおくと、Z
gは次式(4)を用いて算出できる。
【0084】
[断線部形状検出工程]
断線部形状検出工程(
図4のステップS20)では、制御用コンピュータ11は、基板7の表面の三次元形状を測定したデータに基づいて、配線パターンに発生した断線部の三次元形状を検出する。
【0085】
具体的には、制御用コンピュータ11内部の処理装置42(
図8参照)は、基板形状測定工程(
図4のステップS10)で得られた、基板7の表面の三次元形状の測定データを用いて、配線パターンから断線部が抽出された画像(以下、「断線部抽出画像」とも称す)D(x,y)を生成する。
【0086】
断線部抽出画像D(x,y)は、正常配線部が「1」であり、かつ、断線部を含む正常配線部以外の部分が「0」である、2値化された画像である。処理装置42は、測定ポイントのZ軸方向の高さをZ(x,y)とおく。なお、(x,y)は、上記の基板形状測定工程(ステップS20)において、CCDカメラ3で撮影ざれた画像上の画素の位置を表している。
【0087】
処理装置42は、正常配線部のZ軸方向の高さをHpとしたときに、測定ポイントのZ軸方向の高さZ(x,y)と正常配線部のZ軸方向の高さHpとを比較する。測定ポイントの高さZ(x,y)と正常配線部の高さHpとの関係が次式(5)を満足するとき、対応する画素位置の値を「1」とする。一方、測定ポイントの高さZ(x,y)と正常配線部の高さHpとの関係が次式(5)を満たさないときには、対応する画素位置の値を「0」とする。なお、次式(5)中のαは、正常配線部の高さHpに対する許容誤差を示している。
【0089】
2値画像である断線部抽出画像D(x,y)において、値が「0」の画素は、正常配線部以外の部分に相当する。したがって、値「0」の画素の中から、断線部を抽出することができる。具体的には、処理装置42は、配線パターンの連続性を利用し、正常配線部は検査エリア内では連続であるという特徴をもとに、値「0」の画素の中から断線部を抽出する。以下、配線パターンがY軸方向に連続している場合における断線部の抽出方法について説明する。
【0090】
図9は、断線部の抽出方法を説明するための図である。処理装置42は、最初に、
図9(a)に示すように、断線部抽出画像から検査エリア内における複数の画素からなる画像を取り込む。次に、処理装置42は、
図9(b)に示すように、取り込んだ断線部抽出画像から値が「1」の画素の塊を検出し、当該塊の輪郭線を抽出する。そして、処理装置42は、各輪郭線におけるY軸方向の最大値および最小値を算出し、輪郭線ごとにY軸方向の最小値の座標を検出する。1つの輪郭線におけるY軸方向最小値(図中の黒丸に相当)が検査エリアの上端か左右端に接している場合、処理装置42は、当該輪郭線が正常配線部の輪郭線に相当すると判断する。一方、1つの輪郭線におけるY軸方向最小値が検査エリアの上端か左右端に接していない場合には、処理装置42は、当該輪郭線が正常配線部の輪郭線に相当しないと判断する。この場合、Y軸方向最小値を「欠陥候補点」として、その座標を記憶する。
【0091】
なお、配線パターンがX軸方向に連続している場合には、処理装置42は、1つの輪郭線におけるX軸方向最小値が測定エリアの左端か上下端に接しているときに当該輪郭線が正常配線部の輪郭線に相当すると判断し、X軸方向最小値が測定エリアの左端か上下端に接していないときには、当該輪郭線が正常配線部の輪郭線に相当しないと判断する。この場合、X軸方向最小値を欠陥候補点として、その座標を記憶する。
【0092】
同様にして、処理装置42は、輪郭線ごとにY軸方向最大値の座標を検出する。1つの輪郭線におけるY軸方向最大値(図中の白丸に相当)が検査エリアの下端か左右端に接している場合、処理装置42は、当該輪郭線が正常配線部の輪郭線に相当すると判断する。一方、1つの輪郭線におけるY軸方向最大値が測定エリアの下端か左右端に接していない場合には、処理装置42は、当該輪郭線が正常配線部の輪郭線に相当しないと判断する。この場合、Y軸方向最大値を欠陥候補点として、その座標を記憶する。
【0093】
なお、配線パターンがX軸方向に連続している場合には、処理装置42は、1つの輪郭線におけるX軸方向最大値が測定エリアの右端か上下端に接しているときに当該輪郭線が正常配線部の輪郭線に相当すると判断し、X軸方向最大値が測定エリアの右端か上下端に接していないときには、当該輪郭線が正常配線部の輪郭線に相当しないと判断する。この場合、X軸方向最大値を欠陥候補点として、その座標を記憶する。
【0094】
最後に、処理装置42は、記憶された欠陥候補点に基づいて、断線部を抽出する。このとき、制御用コンピュータ11は、欠陥候補点を頂点とした、値が「0」の画素の塊を、断線部として抽出する。
【0095】
このようにして、断線部形状検出工程では、基板7の表面の三次元形状を、測定ポイントごとのZ軸方向の高さに基づいて2値画像に変換する。変換された2値画像から断線部を抽出することにより、断線部の三次元形状を検出することができる。
【0096】
[塗布位置算出工程]
塗布位置算出工程(
図4のステップS50)では、制御用コンピュータ11内部の処理装置42は、断線部形状検出工程(
図4のステップS20)で検出された断線部の三次元形状に基づいて、修正インクの三次元上の塗布位置を決定する。
図10は、断線部の一例を拡大して示す模式図である。
図10に点線で示されるように、処理装置42は、断線部に外接する矩形領域を設定する。この矩形領域は、左上端座標(x1,y1)および右下端座標(x2,y2)を頂点とする。処理装置42は、矩形領域内に位置する画素(x,y)について、正常配線部のZ軸方向の高さHpと、画素のZ軸方向の高さZ(x,y)との高低差Δ(x,y)を算出する。
【0097】
図11は、矩形領域内に位置する各画素の高低差Δ(x,y)をプロットした図である。
図11において、高低差Δ(x,y)=0となる画素(x,y)は正常配線部に相当する。一方、高低差Δ(x,y)>0となる画素(x,y)は断線部に相当する。
【0098】
処理装置42は、得られた高低差Δ(x,y)に基づいて、Z軸方向におけるインクの塗布回数Nzを算出する。具体的には、高低差Δ(x,y)の最大値をΔmaxとし、1回の塗布動作によって塗布されるインクのZ軸方向の塗布高さをtとし、高さ補正量をΔtとすると、Z軸方向の塗布回数Nzは次式(6)で表される。
【0100】
ここで、ceiling()は、「指定された数以上のうち、最小の整数を返す」関数である。なお、高さ補正量Δtとは、乾燥工程(
図4のステップS70)で塗布されたインクが乾燥によって収縮する可能性を見込んで、インクの収縮による塗布高さの減少分を、予め最大値Δmaxに上乗せしておくものである。高さ補正量Δtは、塗布直後のインク塗布部のZ軸方向の高さと、乾燥後のインク塗布部のZ軸方向の高さとの差を予め実験等で求めることにより、設定することができる。
【0101】
処理装置42はさらに、X軸方向における塗布回数NxおよびY軸方向における塗布回数Nyを算出する。具体的には、インクの塗布ピッチ、すなわちインク塗布の間隔をpとした場合、X軸方向における塗布回数Nxは、断線部の左上端座標(x1,y1)および右下端座標(x2,y2)を用いて、次式(7)により算出される。
【0103】
同様にして、Y軸方向における塗布回数Nyは、断線部の左上端座標(x1,y1)および右下端座標(x2,y2)を用いて、次式(8)により算出される。
【0105】
次に、処理装置42は、算出された塗布回数Nx,Ny,Nzに基づいて、インク塗布動作におけるインクの塗布位置を求める。インクの塗布位置は、インク塗布範囲の中心座標(rx,ry,rz)として三次元的に表される。最初に、X軸方向における塗布ピッチpx、Y軸方向における塗布ピッチpy、およびZ軸方向における塗布ピッチpzが、次式(9)を用いて算出される。
図12は、塗布ピッチpx,py,pzを示す図である。
【0107】
ただし、Nx=1のときpx=0とし、Ny=1のときpy=0とし、Nz=1のときpz=0とする。次に、塗布ピッチpx,py,pzを用いて、インクの塗布位置(rx,ry,rz)が、次式(10)を用いて算出される。
【0109】
式(10)中のnx,ny,nzはそれぞれ、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向における塗布回数を特定するためのインデックス番号である。すなわち、nxは0以上Nx−1以下の整数であり、nyは0以上Ny−1以下の整数であり、nzは0以上Nz−1以下の整数である。
【0110】
また、式(10)中のBzは、正常配線部の主表面に焦点を合わせたときのZステージ8の位置を示している。なお、Bzは上記の基板形状測定工程(
図4のステップS20)において、予め取得しておくことができる。
【0111】
[インク塗布工程]
インク塗布工程(
図4のステップS60)では、制御用コンピュータ11は、Xステージ9およびYステージ10を制御することにより、所望の塗布ユニット17の塗布針18を、インク塗布位置(rx,ry,rz)に移動させる。このとき、
図3(a)に示されるように、塗布針18の先端部は、インクタンク19内のインクに浸漬されている。
【0112】
次に、
図3(b)に示すように、塗布針18を下降させてインクタンク19の底の孔から塗布針18の先端部を突出させる。さらに、
図3(c)に示すように、Zステージ8によって可動板15を下降させて、塗布針18の先端部を断線部に接触させることにより、断線部におけるインク塗布位置(rx,ry,rz)にインクを塗布する。この後、
図3(a)の状態に戻る。
【0113】
塗布位置算出工程(
図4のステップS50)により算出された塗布位置は、合計でNx×Ny×Nz個存在する。各塗布位置に対してインク塗布動作を行なう際、制御用コンピュータ11は、塗布位置(rx+px/2,ry+py/2,rz+pz/2)を中心とする直方体状の塗布範囲と、配線パターンの断線部との重なり判定を行なう。ここで、直方体状の塗布範囲は、塗布位置(rx,ry,rz)を中心とし、塗布ピッチpx,py,pzにより規定される。すなわち、塗布範囲は、X軸方向の上下限値をrx+px/2±pxとし、Y軸方向の上下限値をry+py/2±pyとし、Z軸方向の上下限値をrz+pz/2±pzとする。
【0114】
重なり判定において、制御用コンピュータ11は、まず、上記塗布範囲を占める断線部の体積を算出する。そして、算出した断線部の体積が所定の閾値以上となる場合に、制御用コンピュータ11は、その塗付範囲に対してインクを塗布する。一方、塗布範囲を占める断線部の体積が閾値を下回る場合には、制御用コンピュータ11は、その塗布範囲にはインクの塗布を行なわない。
【0115】
具体的には、制御用コンピュータ11は、XY座標系での塗布位置(rx+px/2,ry+py/2)を中心としてX軸方向に±px、およびY軸方向に±pyの範囲内に位置する画素(x,y)について、断線部の体積d(x,y)を算出する。画素(x,y)における欠陥箇所の体積d(x,y)は、正常配線部の高さHpと画素(x,y)の高さとの高低差Δ(x,y)、Z軸方向における塗布ピッチpz、およびZ軸方向の塗布回数Nzを用いて、次式(11)により算出することができる。
【0117】
制御用コンピュータ11は、塗布位置(rx+px/2,ry+py/2)を中心としてX軸方向に±px、およびY軸方向に±pyの範囲内に位置する複数の画素の中から、欠陥箇所の体積d(x,y)>0となる画素(x,y)を抽出し、その抽出した画素(x,y)の欠陥箇所の体積d(x,y)の合計値dsを算出する。算出された合計値dsは、塗布位置(rx+px/2,ry+py/2,rz+pz/2)を中心とする直方体状の塗布範囲を占める断線部の体積に相当する。制御用コンピュータ11は、合計値dsと所定の閾値dTとを比較し、合計値dsが閾値dT以上となる場合に、塗布位置(rx+px/2,ry+py/2,rz+pz/2)を中心とする塗布範囲に対してインクを塗布する。一方、合計値dsが閾値dTより小さくなる場合には、当該塗布範囲に対してインクの塗布を行なわない。
【0118】
制御用コンピュータ11は、合計Nx×Ny×Nz個の塗布位置の各々について、上述した塗布範囲と欠陥箇所との重なり判定を行なう。そして、制御用コンピュータ11は、その判定結果に基づいてインクを塗布する。これにより、断線部における欠陥箇所にインクが充填される。
【0119】
図4に示されるように、インク塗布工程(ステップS60)が実施された後には、基板形状測定工程(ステップS10)および断線部形状検出工程(ステップS20)が再び実施される。これにより、断線部においてインク塗布量が不足している箇所が新たに検出される。続けて塗布位置算出工程(ステップS50)およびインク塗布工程(ステップS60)が実施されることにより、インク塗布量が不足している箇所に対して、インクが充填されることになる。
【0120】
制御用コンピュータ11は、上述した基板形状測定工程(ステップS10)、断線部形状検出工程(ステップS20)、塗布位置算出工程(ステップS50)およびインク塗布工程(ステップS60)を、断線部へのインクの充填が終了しており、配線パターンの修正が不要と判断されるまで(ステップS30のNO判定時)、繰り返し実施する。これにより、断線部を正常配線部と同等の高さにまで修正することができる。なお、上記一連の工程を所定回数繰り返し実施しても、配線パターンの修正が不要と判断されない場合(ステップS30のYES判定時)には、配線パターンの修正が不可能であると判断することも可能である。
【0121】
[乾燥工程]
乾燥工程(
図4のステップS70)では、制御用コンピュータ11は、Xステージ9およびYステージ10を制御することにより、インク硬化用光源6の直下に、基板7の表面上に形成されたインク塗布部を移動させる。インク硬化用光源6は、たとえばCO
2レーザを含み、レーザ光をインク塗布部に照射することによりインクを乾燥させて硬化させる。
【0122】
なお、インクの乾燥方法としては、上記の方法のほかに、インク塗布部に赤外光を照射する、インク塗布部に高温の風を吹き付けるなどの方法がある。使用する修正用インクの種類に応じて、適当な乾燥方法を選択することができる。
【0123】
このように、本発明の実施の形態によるパターン修正装置によれば、基板と対物レンズとを上下方向に相対移動させながら画像を撮影し、撮影した画像を構成する複数の画素の各々について焦点位置を求めることにより、求めた焦点位置に基づいて、基板表面の三次元形状を検出することができる。これにより、検出された基板表面の三次元形状に基づいて、配線パターンに発生している断線部の三次元形状を検出することが可能となる。そして、断線部の三次元形状が検出可能となることにより、当該断線部を修正するための修正用インクの塗布位置を三次元的に決定することができる。これによれば、たとえば10μm以上の厚膜の配線パターンに対しても、その断線部に正確にインクを積層して塗布することが可能となる。
【0124】
さらに、上記のように、三次元的に決定された塗布位置に従ってインクの塗布動作を実行可能となることにより、厚膜の配線パターンに対しても加工作業を自動化することができる。この結果、作業効率を向上させるとともに、加工作業の省人化を実現することができる。
【0125】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示されおよび範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。