(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゲノムDNAを標的とするガイド化合物であって、crRNAと結合している14〜24個の連続するモノマーの標的ガイド鎖を含み、ゲノムDNAのCRISPR遺伝子編集を導き、モノマーがUNAモノマーおよび核酸モノマーを含み、ガイド化合物が、ゲノムDNAのCRISPR遺伝子編集を導くことを標的とする塩基配列を含む、ガイド化合物。
ガイド化合物が、ヒト遺伝子TTRに二本鎖切断を導き、標的ガイド鎖が、5’−UGCAUGGCCACAUUGAUGGC−3’(配列番号13)の16〜20個の連続するモノマーを含み、crRNAが、標的ガイド鎖の3’末端において結合している、請求項1に記載のガイド化合物。
ガイド化合物が、ヒト遺伝子TTRに二本鎖切断を導き、標的ガイド鎖が、5’−CACAUGCAUGGCCACAUUGA−3’(配列番号40)の16〜20個の連続するモノマーを含み、crRNAが、標的ガイド鎖の3’末端において結合している、請求項1に記載のガイド化合物。
1以上の核酸モノマーが、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−O−メチルプリンヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロピリミジンヌクレオチド、2’−デオキシリボヌクレオチド、2’−デオキシプリンヌクレオチド、ユニバーサル塩基ヌクレオチド、5−C−メチルヌクレオチド、逆位デオキシ脱塩基モノマー残基、3’末端が安定化されたヌクレオチド、3’−グリセリルヌクレオチド、3’−逆位脱塩基ヌクレオチド、3’−逆位チミジン、ロックド核酸ヌクレオチド(LNA)、2’−O,4’−C−メチレン−(D−リボフラノシル)ヌクレオチド、2’−メトキシエトキシ(MOE)ヌクレオチド、2’−メチル−チオ−エチル、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチド、2’−O−メチルヌクレオチド、2’,4’−拘束2’−O−メトキシエチル(cMOE)、2’−O−エチル(cEt)、2’−アミノヌクレオチド、2’−O−アミノヌクレオチド、2’−C−アリルヌクレオチド、2’−O−アリルヌクレオチド、N6−メチルアデノシンヌクレオチド、修飾された塩基5−(3−アミノ)プロピルウリジンを有するヌクレオチド、修飾された塩基5−(2−メルカプト)エチルウリジンを有するヌクレオチド、修飾された塩基5−ブロモウリジンを有するヌクレオチド、修飾された塩基8−ブロモグアノシンを有するヌクレオチド、修飾された塩基7−デアザアデノシンを有するヌクレオチド、2’−O−アミノプロピル置換されたヌクレオチド、または2’−OH基を、2’−R、2’−OR、2’−ハロゲン、2’−SRもしくは2’−アミノに置換したヌクレオチド(ここでRは、H、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり得る)である、請求項1に記載のガイド化合物。
ガイド化合物の各末端における、最後の3つのモノマーのうちの1つ以上が、ホスホロチオエート結合、キラルなホスホロチオエート結合またはホスホロジチオエート結合で連結されている、請求項1に記載のガイド化合物。
TTR、BIRC5、CDK16、STAT3、CFTR、F9、KRASおよびCARから選択される遺伝子において、二本鎖切断を導く、請求項1に記載のガイド化合物。
V30M TTR、G284R ColA1、L132Pケラチン12、R135Tケラチン12、G85R SOD1、G272V Tau、P301L Tau、V337M Tau、R406W Tau、Q39STOPベータ−グロビン、T8993G/C mtDNA、G719S EGFR、およびG12C Krasから選択される疾患関連アレルにおいて、二本鎖切断を導く、請求項1に記載のガイド化合物。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、遺伝子編集および治療応用に用いられる、様々な新規薬剤および組成物を提供する。本発明の分子は、CRISPR遺伝子編集様式を考慮した組成物のための、ガイド成分として使用され得る。本発明の分子および組成物は、遺伝子およびその機能性に関連する様々な疾患を改善、予防または処置するのに使用され得る。
【0066】
本発明のガイド分子は、Cas9、Cas9および他の遺伝子編集酵素を用いた、効率的な遺伝子編集を提供し得る。
【0067】
本発明のガイド分子は、ヒト遺伝子を遺伝子編集するのに有効であり得る。ガイド分子は、tracrRNAと結合またはアニールし、CRISPR/Cas遺伝子編集におけるガイド/tracr分子を提供し得る。
【0068】
本発明のガイド/tracr分子は、ゲノムDNAの編集において、インビトロ、インビボまたはエクスビボで、細胞内に送達および遺伝子導入され得る。
【0069】
本発明のガイド分子は、アレル選択的な結果を伴う、ヒト遺伝子の遺伝子編集に驚くほど活性であり得る。
【0070】
いくつかの実施態様において、本発明のガイド分子は、ゲノムDNAの遺伝子編集および二本鎖切断の生成において、並外れた、驚くべきレベルのアレル選択性を示す。これは、オフターゲット活性を有利に減少させる能力を示す。
【0071】
いくつかの態様において、ゲノムDNAに二本鎖切断を生成する能力は、細胞内のDNA発現を変化、調節または減少させる能力を含む。
【0072】
細胞は、真核細胞、哺乳類細胞またはヒト細胞であり得る。
【0073】
本発明のガイド分子は、ヒトゲノムDNAのアレル選択的遺伝子編集に使用され得る。本開示は、オフターゲット変異の減少を伴うCRISPR−Cas遺伝子編集を実行するのに使用され得る、ガイド分子を提供する。
【0074】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、オフターゲット効果の減少を伴う、対応野生型アレルより優先されるヒトバリアントアレルのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0075】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、編集効率によって測定される少なくとも30%の選択性を伴う、対応野生型アレルより優先される、ヒト遺伝子バリアントアレルのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0076】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、編集効率によって測定される少なくとも40%の選択性を伴う、対応野生型アレルより優先される、ヒト遺伝子バリアントアレルのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0077】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、編集効率によって測定される少なくとも2の選択性比を伴う、対応野生型アレルより優先される、ヒト遺伝子バリアントアレルのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0078】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、編集効率によって測定される少なくとも3の選択性比を伴う、対応野生型アレルより優先される、ヒト遺伝子バリアントアレルのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0079】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、編集効率によって測定される少なくとも5の選択性比を伴う、対応野生型アレルより優先される、ヒト遺伝子バリアントアレルのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0080】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、編集効率によって測定される少なくとも8の選択性比を伴う、対応野生型アレルより優先される、ヒト遺伝子バリアントアレルのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0081】
比較において、同一の条件下で、1の選択性比を有するCRISPR/Cas9ガイドは、選択性を持たないことを示す。
【0082】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、野生型アレルに対するオフターゲット活性を本質的に有さない、対応野生型アレルに対してヒト遺伝子バリアントアレルにアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0083】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、野生型アレルに対する1%未満のオフターゲット活性を有する、対応野生型アレルに対してヒト遺伝子バリアントアレルにアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0084】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、野生型アレルに対する3%未満のオフターゲット活性を有する、対応野生型アレルに対してヒト遺伝子バリアントアレルにアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0085】
本発明のガイド化合物の性質は、その分子構造に従って生じ、その分子構造全体は、全体として、その性質に基づく実質的な利益を提供し得る。本発明の実施態様は、Cas9を用いた遺伝子編集における有効性の増強を有利に与える、1以上の性質を有するガイド分子、ならびに様々な疾患および症状の治療薬における組成物または製剤を提供し得、これらは臨床薬を提供し得る。
【0086】
広範な新規ガイド分子を本明細書において提供し、これらはそれぞれ、特殊なリンカー基を包含し得る。リンカー基は、ガイド分子内の鎖に結合し得る。各リンカー基はまた、核酸塩基に結合し得る。
【0087】
いくつかの態様において、リンカー基はモノマーであり得る。モノマーは結合し、鎖状分子を形成し得る。本発明の鎖状分子において、リンカー基のモノマーは、鎖内の任意の点において結合し得る。
【0088】
ある態様において、リンカー基のモノマーを、鎖の末端付近に存在するように、本発明の鎖状分子と結合させてもよい。鎖状分子の末端を、リンカー基のモノマーで形成してもよい。
【0089】
本明細書において、鎖状分子はオリゴマーとも呼ばれ得る。
【0090】
さらなる態様において、鎖状分子の各リンカー基を、核酸塩基と結合させてもよい。鎖状分子内の核酸塩基の存在は、核酸塩基配列を提供し得る。
【0091】
ある実施態様において、本発明は、リンカー基のモノマーと、特定の天然ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、または化学修飾ヌクレオチドとの、新規の組合せを包含する鎖状構造を有する、オリゴマーガイド分子を提供する。
【0092】
本発明のオリゴマーガイド分子は、遺伝子の少なくとも一部を標的とする、核酸塩基配列を示し得る。いくつかの実施態様において、オリゴマーは、多数のバリアント間で保存または高度に保存された、遺伝子の少なくとも一部を標的とし得る。
【0093】
いくつかの態様において、本発明は、核酸分子の少なくともフラグメントに対応し、または相補的であり、細胞内に存在する少なくともそのようなフラグメントの編集を与える、有効なオリゴマーガイド分子を提供する。
【0094】
いくつかの実施態様において、細胞は、真核細胞、哺乳類細胞またはヒト細胞であり得る。
【0095】
本発明は、リンカー基モノマーを包含する、オリゴマーガイド薬の構造、方法および組成物を提供する。本発明のオリゴマーガイド分子は、遺伝子編集治療の製剤における有効成分として使用され得る。
【0096】
本発明は、遺伝子編集におけるその活性のために、治療効果を与えるのに有用な、多様なガイド分子を提供する。本発明のガイド分子は、インビトロ、エクスビボおよびインビボにおいて遺伝子編集活性を与えるように、構築される。
【0097】
本発明のガイド分子は、あらゆるCRISPR/Casシステムに使用され得る。
【0098】
ある実施態様において、有効なガイド分子は、モノマーから構成されるオリゴマーとして構築され得る。本発明のオリゴマー構造は、特定のヌクレオチドと共に、1以上のリンカー基モノマーを含み得る。
【0099】
いくつかの態様において、本発明は、Cas9タンパク質および真核細胞の遺伝子を標的とする1以上のガイド分子を有する、CRISPR/Casシステムを提供する。
【0100】
本発明のガイド分子は、crispr−tracr配列と融合したガイド配列を有し得る。
【0101】
さらなる態様において、CRISPR/Casシステムは、遺伝子標的のDNAの一方または両方の鎖を切断するのに使用され得る。
【0102】
CRISPR遺伝子編集酵素(例えばCas9タンパク質)は、特に、肺炎レンサ球菌、化膿レンサ球菌(例えば、UniProtKBアクセッション番号Q99ZW2;CAS9_STRP1)、髄膜炎菌およびサーモフィラス菌(S.thermophilus)に由来し得る。
【0103】
CRISPR遺伝子編集酵素は、コリネバクテリウム属、ステレラ属、レジオネラ属、トレポネーマ(Treponemna)属、フィリファクター属(Filifactor)、ユーバクテリウム属、ストレプトコッカス属、ラクトバチルス属、マイコプラズマ属、バクテロイデス属、フラビイボラ属(Flaviivola)、フラボバクテリウム属、スフェロケタ属(Sphaerochaeta)、アゾスピリルム属(Azospirillumn)、グルコンアセトバクター属、ナイセリア属、ロゼブリア属、パルビバクラム属(Parvibaculum)、スタフィロコッカス属、ニトラティフラクター属(Nitratifractor)、マイコプラズマ属およびカンピロバクター属を含む属に由来し得る。
【0104】
本発明の実施態様は、遺伝子産物の発現を変化、調節または減少させる方法を含み得る。いくつかの実施態様において、真核細胞は、標的配列を有するDNA分子を含んでもよく、発現していてもよく、このDNAは遺伝子産物をコードするものである。細胞に、遺伝子操作された、天然に存在しないCRISPR関連(Cas)システム(標的配列とハイブリダイズしている、本発明の誘導性または構成的ガイド分子を含む)を遺伝子導入してもよい。CRISPR関連(Cas)システムはさらに、誘導性または構成的II型Cas9タンパク質を含み得る。CRISPR関連(Cas)システムはさらに、1以上の核局在シグナルを含み得る。ガイド分子は、標的配列の場所を見つけ出し、Casタンパク質がDNAを切断するのを導き得、遺伝子産物の発現を変化させ得る。Casタンパク質およびガイド分子は共に、天然に存在しない。
【0105】
哺乳類細胞において1以上の配列の発現を与えるベクターは、当分野で公知である。
【0106】
Casタンパク質のいくつかの例は、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、およびCas9を含む。
【0107】
CRISPR関連遺伝子編集タンパク質は、Casタンパク質を含み得る。
【0108】
CRISPR遺伝子編集システムは、CRISPR関連(Cas)タンパク質をコードする遺伝子、tracrRNAおよびガイド鎖の発現に関与し、またはこれらの活性を導く、ポリヌクレオチド、転写物および部分を含み得る。CRISPRシステムは、内在性CRISPRシステムを有する特定の生物(化膿レンサ球菌など)に由来し得る。CRISPR遺伝子編集システムは、標的DNA配列の部位において、CRISPR複合体の形成を促進し得る。
【0109】
Cas9タンパク質は、修飾もしくは変異されてもよく、または真核細胞における発現が改善された、ホモログもしくはオーソログであってもよい。Cas9タンパク質は、ヒトコドン最適化され得る。いくつかの実施態様において、対形成したガイド分子を用いて、対形成したCas9ニッカーゼと共に、dsDNAの異なる鎖を標的としてもよい。Casニッカーゼの対による両方のDNA鎖の切断を用いて、部位特異的な二本鎖切断を作成することができ、これは編集の効率を減少させることなく、オフターゲット効果を減少させ得る。
【0110】
本発明のガイド分子は、ガイド鎖を含み得、これは標的ガイド鎖とも呼ばれ得る。ガイド鎖は、モノマー鎖から構成され得、各モノマーは、結合した核酸塩基を有し得る。ガイド鎖は塩基配列を有し得、これは標的配列とハイブリダイズするのに十分な標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有する。ガイド鎖は、CRISPR複合体と標的配列との配列特異的な結合を導き得る。
【0111】
本発明のガイド分子は、標的配列とハイブリダイズするのに十分な標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有する塩基配列を有する、ガイド鎖を含み得る。ガイド分子はさらに、ガイド鎖と結合したCRISPRの一部またはcrRNAを含み得、crRNAはtracrRNAと結合し、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を導き得る。したがって、ガイド分子は、ガイド分子を形成する、crRNAと結合したガイド鎖であり得る。
【0112】
いくつかの実施態様において、本発明は「単一ガイド」の実施態様を含む。この実施態様では、標的配列とハイブリダイズするのに十分な標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有するガイド鎖が、crRNA配列と結合し、これがさらにtracrRNA配列と結合して「単一ガイド分子」を形成している。ここで、単一ガイド分子は、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を導き得る。「単一ガイド」の実施態様の例を
図1に示す。
【0113】
本発明のガイド分子、crRNA、ガイド鎖またはtracrRNAは、1以上の非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、または化学修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0114】
いくつかの実施態様において、ガイド分子は、20〜120塩基またはそれ以上の長さであり得る。ある実施態様において、ガイド分子は、20〜60塩基、20〜50塩基、30〜50塩基または39〜46塩基であり得る。
【0115】
ある実施態様において、ポリヌクレオチド標的配列は、5〜100塩基、5〜50塩基、5〜30塩基、5〜25塩基、5〜24塩基、5〜23塩基、5〜22塩基、5〜21塩基、5〜20塩基、5〜19塩基、または5〜18塩基であり得る。
【0116】
ある実施態様において、ポリヌクレオチド標的配列は、18〜30塩基、18〜24塩基または18〜22塩基であり得る。
【0117】
さらなる実施態様において、ポリヌクレオチド標的配列は、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基、31塩基、32塩基、33塩基、34塩基または35塩基であり得る。
【0118】
さらなる実施態様において、単一ガイド分子は、40〜200塩基またはそれ以上の長さであり得る。
【0119】
ガイド配列が、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を導く性質は、当分野で公知の任意のアッセイで決定され得る。
【0120】
本発明はさらに、1以上のベクターまたは1以上のその転写物を、細胞ならびに作製した細胞および生物に送達する方法を想定する。
【0121】
いくつかの実施態様において、CRISPR/Cas複合体の成分(ガイド分子を含む)は、インビトロ、エクスビボまたはインビボにおいて、細胞に送達され得る。当分野で公知のウイルスおよび非ウイルス導入法を用いて、核酸を哺乳類細胞に導入してもよい。核酸を、薬学的に許容し得る担体を用いて送達してもよく、または例えば、リポソームに封入してもよい。
【0122】
標的配列は、真核生物において内在性または外来性の、任意のポリヌクレオチド配列であり得る。標的ポリヌクレオチドは、コード配列または非コード配列であり得る。標的配列は、当分野で公知のように、PAM配列を伴ってもよい。
【0123】
標的配列は、当分野で確立されているように、任意の疾患関連ポリヌクレオチドまたは遺伝子であり得る。
【0124】
本発明はさらに、ポリヌクレオチドまたは遺伝子における切断を修復する方法および組成物を想定する。
【0125】
いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチドまたは遺伝子における切断を、非相同末端結合(NHEJ)によって修復し、ランダムな挿入および欠失を生成してもよい。この方法は、修復された標的遺伝子から発現するタンパク質の構造において、1以上の変化をもたらし得る。
【0126】
さらなる実施態様において、ポリヌクレオチドまたは遺伝子における切断を、外来性鋳型ポリヌクレオチドを用いて、相同組換え修復(HDR)によって修復し、制御された挿入、欠失および置換を生成してもよい。この方法は、修復された標的遺伝子から発現するタンパク質の構造において、1以上の変化をもたらし得る。
【0127】
ポリヌクレオチドまたは遺伝子における切断の修復を、当分野で公知のように、センスまたはアンチセンスの一本鎖オリゴヌクレオチドを修復の鋳型として用いて、実行してもよい。
【0128】
アレル選択的な実施態様およびオフターゲットの減少
【0129】
本発明はさらに、ゲノムDNAの遺伝子編集および二本鎖切断の生成のための、アレル選択的であるガイド分子を想定する。
【0130】
いくつかの態様において、本発明のガイド分子は、オフターゲット活性の減少を伴う、遺伝子編集に使用され得る。
【0131】
さらなる態様において、本発明のガイド分子は、野生型アレルに対するオフターゲット活性を本質的に伴わない、対応野生型アレルより優先されるヒト遺伝子バリアントアレルの遺伝子編集に、使用され得る。
【0132】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、野生型アレルに対する1%未満のオフターゲット活性を伴う、対応野生型アレルより優先されるヒト遺伝子バリアントアレルのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0133】
ある実施態様において、本発明のガイド分子は、野生型アレルに対する3%未満のオフターゲット活性を伴う、対応野生型アレルより優先されるヒト遺伝子バリアントアレルのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0134】
本発明のアレル選択的なガイド分子は、ガイド鎖を含み得る。ガイド鎖は、モノマー鎖から構成され得、各モノマーは、結合した核酸塩基を有し得る。ガイド鎖は塩基配列を有し得、これは標的配列とハイブリダイズするのに十分な標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有する。ガイド鎖は、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を導き得る。
【0135】
オフターゲット効果の減少を有する、本発明のガイド分子は、ガイド鎖を含み得る。ガイド鎖は、モノマー鎖から構成され得、各モノマーは、結合した核酸塩基を有し得る。ガイド鎖は塩基配列を有し得、これは標的配列とハイブリダイズするのに十分な標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有する。ガイド鎖は、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を導き得る。
【0136】
本発明のアレル選択的なガイド分子は、標的配列とハイブリダイズするのに十分な標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有する塩基配列を有する、ガイド鎖を含み得る。ガイド分子はさらに、ガイド鎖と結合した、CRISPRの一部またはcrRNAを含み得、crRNAはtracrRNAと結合し得、CRISPR複合体と標的配列との配列特異的な結合を導き得る。したがって、ガイド分子は、ガイド分子を形成する、crRNAと結合したガイド鎖であり得る。
【0137】
オフターゲット効果の減少を示す、本発明のガイド分子は、標的配列とハイブリダイズするのに十分な標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有する塩基配列を有する、ガイド鎖を含み得る。ガイド分子はさらに、ガイド鎖と結合した、CRISPRの一部またはcrRNAを含み得、crRNAはtracrRNAと結合し得、CRISPR複合体と標的配列との配列特異的な結合を導き得る。したがって、ガイド分子は、ガイド分子を形成する、crRNAと結合したガイド鎖であり得る。
【0138】
いくつかの実施態様において、本発明はアレル選択的な「単一ガイド」の実施態様を含む。この実施態様では、標的配列とハイブリダイズするのに十分な標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有するガイド鎖が、crRNA配列と結合し、これがさらにtracrRNA配列と結合して「単一ガイド分子」を形成している。ここで、単一ガイド分子は、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を導き得る。
【0139】
本発明のガイド分子の標的ポリヌクレオチド配列の例を表1に示す。表1の標的ポリヌクレオチド配列は、特定のヒト遺伝子における一塩基多型を示し、これは疾患に関連する。
【表1-1】
【表1-2】
【0140】
表1において、単一のヌクレオチドアレル変異の位置に下線を引く。
【表2】
【0141】
本発明は、ヒト遺伝子の疾患に関連した一塩基多型の遺伝子編集および二本鎖切断の生成のための、アレル選択的なガイド分子を想定する。
【0142】
本発明はさらに、オフターゲット活性の減少を伴う、ヒト遺伝子の疾患に関連した一塩基多型の遺伝子編集および二本鎖切断の生成のための、ガイド分子を想定する。
【0143】
本発明のアレル選択的なガイド分子は、ガイド鎖を含み得る。ガイド鎖は、モノマー鎖から構成され得、各モノマーは、結合した核酸塩基を有し得る。ガイド鎖は塩基配列を有し得、これは、一塩基多型を含む標的ポリヌクレオチド配列と十分な相補性を有し、標的配列とハイブリダイズする。ガイド鎖は、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を導き得る。
【0144】
本発明のアレル選択的ガイド分子は、標的配列とハイブリダイズするのに十分な一塩基多型を含む標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有する塩基配列を有する、ガイド鎖を含み得る。ガイド分子はさらに、ガイド鎖と結合した、CRISPRの一部またはcrRNAを含み得、crRNAはtracrRNAと結合し得、CRISPR複合体と標的配列との配列特異的な結合を導き得る。したがって、ガイド分子は、ガイド分子を形成する、crRNAと結合したガイド鎖であり得る。
【0145】
いくつかの実施態様において、本発明はアレル選択的な「単一ガイド」の実施態様を含む。この実施態様では、標的配列とハイブリダイズするのに十分な、一塩基多型を含む標的ポリヌクレオチド配列に対する相補性を有するガイド鎖が、crRNA配列と結合し、これがさらにtracrRNA配列と結合して「単一ガイド分子」を形成している。ここで、単一ガイド分子は、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を導き得る。
【0147】
トランスサイレチンに関連するアミロイドーシス(ATTR)は、様々な臓器および組織(末梢神経系、自律神経系および中枢神経系を含む)におけるアミロイド線維タンパク質の沈着を含む。トランスサイレチンは、血漿および脳脊髄液中の血清サイロキシンおよびレチノール結合タンパク質を結合および輸送する、分泌型チラコイドホルモン結合タンパク質である。
【0148】
ATTRの病態は、多くのTTR変異を含み得る。ATTRの症状は、神経障害および/または心筋症を含むことが多い。末梢神経障害は、運動感覚性神経障害を伴って、脚において始まり得、腕まで進行し得る。自律神経障害は、胃腸症状および起立性低血圧によって現れ得る。
【0149】
最も一般的な変異である、TTR遺伝子Val−30−Metを有する患者は、正常な心エコー図を有する。しかしながら、この患者は、伝導系の異常を有し得、ペースメーカーを必要とし得る。ATTR V30Mバリアントは、脚の衰弱、疼痛および感覚障害ならびに自律神経機能障害を生じ得る。硝子体および不透明体のアミロイド沈着は、ATTRの特徴であり得る。
【0150】
本発明のU−ガイド分子は、ヒトTTRの遺伝子編集に有効であり得る。U−ガイド分子は、tracrRNAと結合またはアニールし、CRISPR/Cas9遺伝子編集におけるU−ガイド/tracr分子を与え得る。
【0151】
本発明のU−ガイド/tracr分子は、ゲノムDNAの編集において、インビトロ、インビボまたはエクスビボで、細胞に送達および遺伝子導入され得る。
【0152】
本発明のU−ガイド分子は、アレル選択的な結果を伴うヒトTTRの遺伝子編集に驚くほど有効であり得る。
【0153】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、オフターゲット活性の減少を伴うヒトTTRの遺伝子編集に有効であり得る。
【0154】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、野生型TTRと比較して、V30M TTRにおける二本鎖切断の生成について、並外れた、驚くべきレベルのアレル選択性を示す。
【0155】
本発明のU−ガイド分子は、ヒトTTRのアレル選択的な遺伝子編集に用いられ得る。
【0156】
さらなる実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、少なくとも3の選択性比を伴う、野生型TTRより優先されるヒトV30M TTRのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0157】
さらなる実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、少なくとも5の選択性比を伴う、野生型TTRより優先されるヒトV30M TTRのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0158】
さらなる実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、少なくとも8の選択性比を伴う、野生型TTRより優先されるヒトV30M TTRのアレル選択的な遺伝子編集に、使用され得る。
【0159】
直接的な比較において、同一の条件下で、U−ガイド分子と同一の核酸塩基配列および構造を有するが、いかなるUNAモノマーも持たない、CRISPR/Cas9ガイドは、約1、または2未満の選択性比を有し得る。
【0160】
さらなる態様において、本発明のU−ガイド分子は、野生型アレルに対するオフターゲット活性を本質的に有さない、野生型TTRより優先されるヒトV30M TTRの遺伝子編集に、使用され得る。
【0161】
ある実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、野生型アレルに対する1%未満のオフターゲット活性を有する、野生型TTRより優先されるヒトV30M TTRの遺伝子編集に、使用され得る。
【0162】
ある実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、野生型アレルに対する3%未満のオフターゲット活性を有する、野生型TTRより優先されるヒトV30M TTRの遺伝子編集に、使用され得る。
【0164】
本発明はさらに、Cas9を用いた遺伝子編集に非常に有効であり得る、U−ガイド分子を提供する。本発明の組成物および方法は、インビボ、エクスビボまたはインビトロにおいて、Cas9を用いた遺伝子編集に使用され得る。
【0165】
本発明は、新規U−ガイド分子によって誘導される、Cas9を用いて遺伝子を編集する方法を想定する。
【0166】
本発明のU−ガイド分子は、Cas9を用いた効率的な遺伝子編集を提供し得る。
【0167】
本発明のU−ガイド分子は、TTR遺伝子を遺伝子編集するのに有効であり得る。本発明のU−ガイド分子は、アレル選択的な結果を伴うヒトTTRの遺伝子編集に驚くほど有効であり得、オフターゲット効果の減少を示し得る。
【0168】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、野生型TTRと比較して、V30M TTRにおける二本鎖切断の生成について、並外れた、驚くべきレベルのアレル選択性を示し、オフターゲット効果の減少を示す。
【0169】
本発明はさらに、NHEJおよびHDR修復機構による遺伝子修復と共に、新規U−ガイド分子によって誘導される、Cas9を用いた遺伝子を編集する方法を想定する。
【0170】
本発明のU−ガイド分子は、Cas9によって導かれる遺伝子操作の効率を有利に増加させ得る。
【0171】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、Cas9によって導かれる遺伝子操作の効率を有利に増加させ得、NHEJを介する高頻度の標的変異を与え得る。
【0172】
さらなる実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、Cas9によって導かれる遺伝子操作の効率を有利に増加させ得、任意のゲノム標的において、HDRを用いた正確なDNA組み込みを与え得る。
【0173】
いくつかの態様において、本発明のU−ガイド分子は、インビボにおけるCas9結合およびDNA切断を増強し得る。
【0174】
本発明は、様々な疾患および症状の治療薬として用いられる、新規分子を提供する。本発明の分子は、様々な疾患および症状を改善、予防または処置する組成物における、医薬品有効成分として用いられ得る。
【0175】
いくつかの実施態様において、本発明の分子は、アミロイドーシスおよび関連するアミロイド関連疾患またはアルツハイマー病の改善および/または処置に使用され得る。
【0176】
本発明の実施態様は、Cas9を用いた有効な遺伝子編集を有利に提供するガイド分子ならびに治療薬のための組成物または製剤を提供し得、これは臨床薬を提供し得る。
【0177】
本発明のガイド分子の性質は、その構造に従って生じ、その分子構造全体は、全体として、実質的な利益および性質を提供し得る。
【0178】
いくつかの実施態様において、広範な新規U−ガイド分子を提供し、これらは1以上のリンカー基を包含し得る。リンカー基は、ガイド分子内の鎖に結合し得る。各リンカー基はまた、核酸塩基に結合し得る。
【0179】
いくつかの態様において、リンカー基はモノマーであり得る。モノマーは結合し、鎖状分子を形成し得る。本発明の鎖状分子において、リンカー基のモノマーを、鎖内の任意の点において結合させてもよい。
【0180】
ある態様において、リンカー基のモノマーを、鎖の末端付近に存在するように、本発明の鎖状分子と結合させてもよい。鎖状分子の末端を、リンカー基のモノマーで形成してもよい。
【0181】
さらなる態様において、鎖状分子の各リンカー基を、核酸塩基と結合させてもよい。鎖状分子内の核酸塩基の存在は、核酸塩基配列を提供し得る。
【0182】
ある実施態様において、本発明は、リンカー基のモノマーと、特定の天然ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、または化学修飾ヌクレオチドとの、新規の組合せを包含する鎖状構造を有する、オリゴマー分子を提供する。
【0183】
本発明のオリゴマーガイド分子は、ポリヌクレオチドまたはゲノムの少なくとも一部を標的とする、核酸塩基配列を示し得る。
【0184】
本発明は、リンカー基のモノマーを包含するオリゴマー薬についての構造、方法および組成物を提供する。本発明のオリゴマー分子は、遺伝子編集治療の製剤における有効成分として使用できる。
【0186】
本発明の実施態様は、有効なガイド分子を提供し得、これは細胞内の遺伝子を変化させ、または編集するのに使用され得、それによって遺伝子の機能性、遺伝子発現または遺伝子発現産物を調節する。
【0187】
本発明は、広範な治療応用を伴う、遺伝子編集における頑強で効率的な方法を提供し得る。
【0188】
一般に、CRISPR/Casシステムは、ガイド分子を用いて、特定のDNA標的を認識し得る。Cas酵素は、ガイド分子の作用によって、特定のDNA標的に供給され得る。CRISPR/Casシステムは、本発明のガイド分子を用いた、効率的で効果的な遺伝子編集に使用され得る。
【0189】
いくつかの態様において、本発明は、1以上の遺伝子産物の発現を変化させ、または調節する方法を提供する。
【0190】
本発明の方法は、真核生物に、II型CRISPR/Cas9誘導エンドヌクレアーゼ遺伝子編集システムの成分を導入するベクターを利用し得る。ベクターは、遺伝子内の標的配列とハイブリダイズできるガイド分子と動作可能に連結した調節配列、およびII型Cas9エンドヌクレアーゼと動作可能に連結したさらなる調節配列を有し得る。ガイド分子は、遺伝子標的を切断するCas9タンパク質を供給し得る。ある実施態様において、ベクターは核局在シグナルを含み得る。
【0191】
ベクターに関するいくつかの情報が、例えばGoeddel (Editor), Methods in Enzymology, Volume 185: Gene Expression Technology, Academic Press, 1990に与えられている。
【0192】
いくつかの実施態様において、ガイド分子は、crispr−tracr配列と結合したガイド配列を有し得る。ガイド配列は、遺伝子標的とハイブリダイズすることを標的とし得、crispr−tracr配列はCas9と結合し得る。
【0193】
いかなる特定の理論に拘束されることも意図しないが、原核生物のII型CRISPRおよびCRISPR関連タンパク質(Cas)システムは、遺伝子編集に使用され得る。原核生物において、このシステムは免疫防御システムとして機能する。CRISPR遺伝子は、標的外来遺伝子に属するスペーサー配列によって分離された、特定の反復配列からなり得る。CRISPRからの一次転写物は、CRISPR RNA(crRNA)にプロセシングされる。crRNAは、保存された反復配列、および標的遺伝子配列に相補的な可変スペーサー配列またはガイドからなり得る。トランス活性化crisperRNA(tracrRNA)は、CRISPR反復に相補的であり、crRNAをプロセシングするのに役立つ、短いRNA配列であり得る。crRNA、tracrRNAおよびCas9によって形成される複合体は、塩基対形成によって標的配列に結合し、配列特異的な二本鎖DNA切断を生じる。
【0194】
さらなる実施態様において、本発明のガイド分子は、crRNAおよびtracrRNAに関連する配列を包含する構造を包含し得る。
【0195】
CRISPR/Cas複合体は、標的配列とハイブリダイズし、Casタンパク質と複合体形成する、ガイド配列を含み得る。CRISPR/Cas複合体は、標的配列、標的配列の数塩基対内または標的配列付近における、一方または両方の鎖の切断をもたらし得る。
【0196】
Casタンパク質、ガイド配列およびtracr配列を含む、CRISPR/Cas複合体の各成分は、別々のベクター上の別々の調節配列と動作可能に連結していてもよい。
【0197】
CRISPR/Cas複合体の成分は、同一または異なる調節配列から発現されてもよく、単一のベクターに組み合わされていてもよい。
【0198】
ベクターは、1以上のガイド配列を提供するのに用いられ得る。
【0199】
本明細書において、用語「Cas」は、ガイド分子を用いた遺伝子編集において動作可能な、当分野で公知の任意のCasタンパク質を指す。
【0200】
いくつかの実施態様において、1以上のガイド分子を、遺伝子編集のために同時に使用してもよい。
【0201】
いくつかの実施態様において、本発明は、遺伝子をノックアウトする方法および組成物、遺伝子を増幅する方法および組成物、ゲノムの不安定性に関連する変異を修復する方法および組成物、およびゲノムにおける公知の欠損を修正する方法および組成物を提供する。
【0202】
いくつかの実施態様において、標的遺伝子の1以上の遺伝子産物の発現が減少し得る。
【0203】
いくつかの実施態様において、標的遺伝子の1以上の遺伝子産物の発現が増加し得る。
【0204】
いくつかの様式において、CRISPR/Casシステムは、CRISPRゲノム干渉のために、本発明のガイド分子を利用できる。
【0205】
ある態様において、CRISPR/Casシステムは、本発明のガイド分子を用いて、遺伝子発現を抑制できる。触媒不活性のCas9を用いて、遺伝子の転写に干渉することによって、遺伝子発現を抑制できる。本発明のガイド分子は、不活性Cas9をゲノム配列に与え、これはリプレッサーとして作用し得る。ガイド分子は共発現され得る。
【0206】
ある実施態様において、調節機能を有するエフェクタードメインの、不活性Cas9への付着は、安定で効率的な転写抑制を与え得る。転写リプレッサードメインまたは調節機能を有する調節ドメインの、不活性Cas9への付着は、標的内在性遺伝子の発現を抑制し得る。
【0207】
いくつかの実施態様において、本発明のガイド分子は、有効なCas9が、DNAを切断することなく、特定の標的配列に結合することを可能にするために、相対的に短くてもよく(最大で14または16nt長)、したがってこれはリプレッサーとして作用し得る。
【0208】
さらなる態様において、CRISPR/Casシステムは、本発明のガイド分子を用いて、遺伝子発現を活性化できる。転写活性化因子を、不活性Cas9に結合させ得る。転写活性化因子は、遺伝子発現を増加させ得、一方、不活性Cas9は本発明のガイド分子に標的とされ得る。
【0209】
UNAモノマー
いくつかの実施態様において、リンカー基のモノマーは、アンロックドヌクレオモノマー(UNAモノマー)であってもよく、これは、以下に示される、プロパン−1,2,3−トリ−イル−トリスオキシ構造に基づく、有機小分子である。
【化1】
式中、R
1およびR
2はHであり、R
1およびR
2はホスホジエステル結合であってもよく、Baseは核酸塩基であってもよく、R
3は後述する官能基である。
【0210】
別の観点において、UNAモノマーの主原子を、IUPAC命名法で以下のように表し得る:
【化2】
式中、オリゴマー鎖の進行方向は、プロパン残基の1末端から3末端である。
【0211】
核酸塩基の例には、ウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、アデニン、グアニン、イノシン、ならびに天然および非天然の核酸塩基アナログが含まれる。
【0212】
一般に、UNAモノマーはヌクレオチドでないため、オリゴマーにおいて少なくとも4つの形態を示し得る。第一に、UNAモノマーはオリゴマーにおける内部モノマーであり得、このUNAモノマーは両側において他のモノマーと隣接する。この形態において、UNAモノマーは、オリゴマーが二本鎖であり、例えば二本鎖中に核酸塩基を有する他のモノマーが存在する場合に、塩基対形成に関与し得る。
【0213】
プロパン−1−イル位およびプロパン−3−イル位の両方に隣接する内部モノマーとしてのUNAモノマーの例(R
3が−OHの場合)を以下に示す。
【化3】
【0214】
第二に、UNAモノマーは、オリゴマー二本鎖のオーバーハング内のモノマーであり得、このUNAモノマーは両側において他のモノマーと隣接する。この形態において、UNAモノマーは塩基対形成に関与しない。UNAモノマーは、ヌクレオチドとは異なり、柔軟な有機構造であるため、UNAモノマーを含むオーバーハングは、オリゴマーにおける柔軟なターミネーターである。
【0215】
UNAモノマーは、オリゴマーのオーバーハング内の末端モノマーであり得、このUNAモノマーはプロパン−1−イル位またはプロパン−3−イル位のいずれかにおいて、1つのモノマーのみと結合している。この形態において、UNAモノマーは、塩基対形成に関与しない。UNAモノマーはヌクレオチドとは異なり、柔軟な有機構造であるため、UNAモノマーを含むオーバーハングは、オリゴマーにおいて柔軟なターミネーターであり得る。
【0216】
プロパン−3−イル位に結合した末端モノマーとしてのUNAモノマーの例を以下に示
す。
【化4】
【0217】
UNAモノマーは柔軟な分子であり得るため、末端モノマーとしてのUNAモノマーは、多様な立体構造が想定され得る。プロパン−3−イル位に結合した末端モノマーとして、エネルギーを最小化したUNAモノマーの立体構造の例を以下に示す。
【化5】
したがって、末端UNAモノマーを有するUNAオリゴマーは、従来の核酸物質とは、構造が著しく異なる。対照的に、末端UNAモノマーの可動性(conformability)は、種々の性質を有するUNAオリゴマーを与え得る。
【0218】
特に、UNAモノマーの構造は、それが天然に存在するヌクレオチドに結合することを可能にする。UNAオリゴマーは、UNAモノマー、および天然に存在するヌクレオシドに基づき得る、様々なヌクレオチドから構成された鎖であり得る。
【0219】
いくつかの実施態様において、UNAモノマーの官能基R
3は−OR
4、−SR
4、−NR
42、−NH(C=O)R
4、モルホリノ、モルホリン−1−イル、ピペラジン−1−イル、または4−アルカノイル−ピペラジン−1−イルであり得、R
4は各R
4において同一または異なってもよく、H、アルキル、コレステロール、脂質分子、ポリアミン、アミノ酸、またはポリペプチドであり得る。
【0220】
UNAモノマーは有機分子である。UNAモノマーは、核酸モノマーまたはヌクレオチドではなく、天然に存在するヌクレオシドまたは修飾された天然に存在するヌクレオシドでもない。
【0221】
本発明のUNAオリゴマーは合成鎖状分子である。本発明のUNAオリゴマーは核酸ではなく、オリゴヌクレオチドでもない。
【0222】
いくつかの実施態様において、上記に示したように、UNAモノマーは、UNA−A(A~と命名)、UNA−U(U~と命名)、UNA−C(C~と命名)、およびUNA−G(G~と命名)であり得る。
【0223】
本明細書で使用され得る記号には、mA、mG、mC、およびmUが含まれ、これらは2’−O−メチル修飾されたリボヌクレオチドを指す。
【0224】
本明細書で使用され得る記号には、小文字のcおよびuが含まれ、これらは2’−O−メチル修飾されたリボヌクレオチドを指す。
【0225】
本明細書で使用され得る記号にはdTが含まれ、これは2'−デオキシTヌクレオチドを指す。
【0226】
ガイド化合物におけるさらなるモノマー
【0227】
本明細書において、オリゴマー配列に関して、記号XはUNAモノマーを表す。
【0228】
本明細書において、オリゴマー配列に関して、記号Nは任意の天然ヌクレオチドモノマーまたは修飾されたヌクレオチドモノマーを表す。
【0229】
本明細書において、オリゴマー配列に関して、記号Qは非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、または化学修飾ヌクレオチドモノマーを表す。
【0230】
Qモノマーが二本鎖の一方の鎖に存在し、他方の鎖と対形成しない場合、モノマーには任意の塩基が結合していてよい。Qモノマーが二本鎖の一方の鎖に存在し、他方の鎖のモノマーと対形成する場合、Qモノマーは、他方の鎖の対応する対形成する位置の、モノマーと相補的な任意の塩基が結合していてよい。
【0231】
核酸モノマーの例は、非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチドおよび化学修飾ヌクレオチドを含み、当分野で公知のそのような任意のヌクレオチドを含む。
【0232】
非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、当分野で公知のそのような任意のヌクレオチドを含み、例えば、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−O−メチルプリンヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロピリミジンヌクレオチド、2’−デオキシリボヌクレオチド、2’−デオキシプリンヌクレオチド、ユニバーサル塩基ヌクレオチド、5−C−メチル−ヌクレオチドおよび逆位デオキシ脱塩基モノマー残基を含む。
【0233】
非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、3’末端が安定化したヌクレオチド、3’−グリセリルヌクレオチド、3’−逆位脱塩基ヌクレオチド、および3’−逆位チミジンを含む。
【0234】
非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、ロックド核酸ヌクレオチド(LNA)、2’−O,4’−C−メチレン−(D−リボフラノシル)ヌクレオチド、2’−メトキシエトキシ(MOE)ヌクレオチド、2’−メチル−チオ−エチル、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチド、および2’−O−メチルヌクレオチドを含む。
【0235】
非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、2’,4’−拘束2’−O−メトキシエチル(cMOE)および2’−O−エチル(cEt)修飾されたDNAを含む。
【0236】
非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、2’−アミノヌクレオチド、2’−O−アミノヌクレオチド、2’−C−アリルヌクレオチド、および2’−O−アリルヌクレオチドを含む。
【0237】
非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、N
6−メチルアデノシンヌクレオチドを含む。
【0238】
非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、修飾された塩基5−(3−アミノ)プロピルウリジン、5−(2−メルカプト)エチルウリジン、5−ブロモウリジン;8−ブロモグアノシン、または7−デアザアデノシンを有するヌクレオチドモノマーを含む。
【0239】
非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、2’−O−アミノプロピル置換されたヌクレオチドを含む。
【0240】
非天然ヌクレオチドモノマー、修飾ヌクレオチドモノマー、および化学修飾ヌクレオチドモノマーの例は、ヌクレオチドの2’−OH基の、2’−R、2’−OR、2’−ハロゲン、2’−SR、または2’−アミノへの置換を含み、ここでRは、H、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり得る。
【0241】
本発明のガイド分子、crRNA、ガイド鎖またはtracrRNAは、上記で示される、1以上の任意の、非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、または化学修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0242】
いくつかの態様において、本発明のガイド化合物は、結合している塩基の配列によって記述され得、その置換体または修飾体であり得る。本明細書において、置換体または修飾体は、本明細書でさらに記述されるように、異なって置換されたUNAモノマーおよび異なって置換または修飾された核酸モノマーを含む。
【0243】
修飾ヌクレオチドのいくつかの例は、Saenger, Principles of Nucleic Acid Structure, Springer-Verlag, 1984において与えられる。
【0244】
UNAモノマーから構成されるU−ガイド化合物
【0245】
本発明の態様は、UNAモノマーを含むオリゴマー化合物である、遺伝子編集用のU−ガイド分子についての構造および組成物を提供し得る。
【0246】
オリゴマーU−ガイド物質は、1以上のUNAモノマーを包含し得る。本発明のオリゴマー分子を、遺伝子編集治療の製剤における有効成分として用いてもよい。
【0247】
いくつかの実施態様において、本発明は、UNAモノマーと、特定の天然ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは化学修飾ヌクレオチドとの新規な組合せを包含する構造を有する、オリゴマーU−ガイド化合物を提供する。
【0248】
さらなる態様において、本発明のオリゴマーU−ガイド化合物は、薬理活性分子であり得る。本発明のU−ガイドを、遺伝子編集における有効医薬成分として用いてもよい。
本発明のU−ガイド分子は、式Iの構造を有し得る。
【化6】
式中、L
1は結合であり、nは39〜46であり、各L
2において、L
2は化学式−C
1−C
2−C
3−を有するUNAリンカー基であり、ここでRはC
2に結合し、化学式−OCH(CH
2R
3)R
5を有し、R
3は−OR
4、−SR
4、−NR
42、−NH(C=O)R
4、モルホリノ、モルホリン−1−イル、ピペラジン−1−イルまたは4−アルカノイル−ピペラジン−1−イルであり、R
4は、各R
4において同一または異なっており、H、アルキル、コレステロール、脂質分子、ポリアミン、アミノ酸またはポリペプチドであり、R
5は核酸塩基であり、またはL
2(R)は、リボースなどの糖であり、Rは核酸塩基であり、または、L
2は修飾されたリボースなどの修飾された糖であり、Rは核酸塩基である。ある実施態様において、アルキルは、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである。ある実施態様において、核酸塩基は、修飾された核酸塩基であり得る。L
1は、ホスホジエステル結合であり得る。さらなる実施態様において、−OCH(CH
2R
3)R
5は、−SCH(CH
2R
3)R
5、−CH
2CH(CH
2R
3)R
5、または−(SO
2)CH(CH
2R
3)R
5であり得る。
【0249】
本発明のU−ガイド分子は、ゲノムの標的配列と相補的なガイド配列を有し得、ここで最大で3つのミスマッチが生じ得る。
【0250】
U−ガイド分子の標的は、標的核酸であり得る。いくつかの実施態様において、標的は、対象の任意のゲノムDNAであり得る。U−ガイド分子は、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子編集に有効であり得る。
【0251】
いくつかの態様において、本発明のU−ガイド分子は、任意の鎖の任意の位置において、任意の数のモノマー間ホスホロチオエート結合を有し得る。
【0252】
いくつかの実施態様において、U−ガイド分子の任意の1以上のモノマー間結合は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート(ジチオアートを含む)、キラルなホスホロチオエート、および他の化学的に修飾された形態であり得る。
【0253】
例えば、記号「N」は、標的におけるモノマーに相補的な、任意のヌクレオチドを示し得る。
【0254】
鎖またはオリゴマー内の記号「X」は、UNAモノマーを示す。UNAモノマーがU−ガイド分子の鎖に存在し、標的と対形成する場合、UNAモノマーは、標的の鎖における、モノマーと相補的な任意の塩基と結合し得る。
【0255】
U−ガイド分子がUNAモノマーで終わる場合、上記で示した位置の番号付けに従って、末端位置は1末端となり、または末端位置は3末端となる。例えば、配列番号1のU−ガイド分子1−U~G~CACGGCCACAUUGAUGGCGUUUUAGAGCUAUGCUGUCCU~U~−3は、左側にUNA−Uモノマーの1末端、および右側にUNA−Uモノマーの3末端を有する。
【0256】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、鎖の1末端において、1以上のUNAモノマーを有し得、鎖の3末端において、1以上のUNAモノマーを有し得る。
【0257】
ある実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、39〜46モノマー長であり得る。
【0258】
遺伝子編集における本発明のU−ガイド分子は、39〜46モノマー長の鎖を有し得、モノマーは、UNAモノマーおよび核酸モノマーであり得る。
【0259】
U−ガイド分子は、標的遺伝子を標的とし得、CRISPR/Cas9遺伝子編集用の従来のガイドRNAと比較して、オフターゲット効果の減少を示し得る。
【0260】
標的との配列相同性に基づくオフターゲット部位を、標的またはオフターゲット配列のいずれかを用いてエピソームとして複製されるレポータープラスミドを構築することによって、決定してもよい。レポーターを、U−ガイド分子と共に、哺乳類細胞に同時導入してもよい。プラスミドを単離し、T7エンドヌクレアーゼIアッセイを行ってもよい。あるいは、オフターゲットの配列決定を、潜在的なオフターゲット部位に隣接するプライマーセットを用いて、PCRで行ってもよい。
【0261】
U−ガイド分子は、標的遺伝子を標的とし得、CRISPR/Cas9遺伝子編集用の従来のガイドRNAと比較して、遺伝子編集の効率の増加を示し得る。
【0262】
本発明のU−ガイド分子について、ゲノム標的の平均変異率は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%であり得る。
【0263】
本開示のU−ガイド分子は、天然に存在する核酸ヌクレオチド、および遺伝子編集活性に適合する、その修飾物を含み得る。
【0264】
本明細書において、鎖という用語は、モノマーの単一の連鎖を指し、この鎖は任意の数の内部モノマーおよび2つの末端モノマーを有し、各末端モノマーは、鎖が終結するように、一方の側において1つの内部モノマーと結合し、他方の側ではモノマーと結合しない。
【0265】
U−ガイド分子のモノマーは、ホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合、ギャップ結合(gapped linkage)、および他の変形を介して結合し得る。
【0266】
いくつかの実施態様において、U−ガイド分子は、ガイド配列と標的配列との間の相補性において、ミスマッチを含み得る。さらなる実施態様において、U−ガイド分子は、標的に対する1つ、2つ、または3つのミスマッチを含み得る。
【0267】
U−ガイド分子の標的は、標的遺伝子の標的核酸であり得る。
【0268】
ある実施態様において、U−ガイド分子は、自身でフォールドし、自身とハイブリダイズし、一方の末端に結合ループを有する2本鎖領域を形成する、単一鎖であり得る。
【0269】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、39〜46モノマー長の鎖を有し得、UNAモノマーでない任意のモノマーは、Qモノマーであり得る。
【0270】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、39〜46モノマー長の鎖を有し得、UNAモノマーでない任意のモノマーは、Qモノマーであり得、Qモノマーの数は、20個未満である。
【0271】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、39〜46モノマー長の鎖を有し得、UNAモノマーでない任意のモノマーは、Qモノマーであり得、Qモノマーの数は、12個未満である。
【0272】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、39〜46モノマー長の鎖を有し得、UNAモノマーでない任意のモノマーは、Qモノマーであり得、Qモノマーの数は、10個未満である。
【0273】
いくつかの実施態様において、本発明のU−ガイド分子は、39〜46モノマー長の鎖を有し得、UNAモノマーでない任意のモノマーは、2’−O−メチル修飾されたリボヌクレオチドであり得る。
【0275】
いくつかの実施態様において、標的が3’プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接する場合、本発明のガイド分子を用いて、TTR遺伝子の任意の標的部分を編集できる。
【0276】
本発明のガイド分子で編集され得る遺伝子および/またはポリヌクレオチドの例は、TTRを含み、これはアミロイド神経障害およびアミロイドーシスに関連し得る。
【0277】
ある実施態様において、本発明はさらに、トランスサイレチン関連遺伝性アミロイドーシスを予防、処置または改善する方法を想定する。
【0279】
いくつかの態様において、本発明は、オリゴマー化合物および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0280】
医薬組成物は、局所投与または全身投与が可能であり得る。いくつかの態様において、医薬組成物は、任意の投与様式が可能であり得る。ある態様において、投与は、静脈内、皮下、肺内、筋肉内、腹腔内、経皮的、経口的または鼻腔投与であり得る。
【0281】
本発明の実施態様は、脂質製剤におけるオリゴマー化合物を含む、医薬組成物を含む。
【0282】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は、カチオン性脂質、アニオン性脂質、ステロール、ペグ化脂質、および前記の任意の組合せから選択される、1以上の脂質を含み得る。
【0283】
ある実施態様において、医薬組成物は、リポソームを実質的に含まなくてもよい。
【0284】
さらなる実施態様において、医薬組成物は、リポソームまたはナノ粒子を含んでもよい。
【0285】
本発明の有効な分子を送達するための脂質および脂質組成物のいくつかの例は、WO/2015/074085に与えられ、これは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0286】
さらなる実施態様において、医薬組成物は、ウイルスベクターまたは細菌ベクター内のオリゴマー化合物を含み得る。
【0287】
本開示の医薬組成物は、当分野で公知の、担体、希釈剤または賦形剤を含み得る。医薬組成物の例は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A.R. Gennaro ed. 1985)に記述されている。
【0288】
医薬組成物における賦形剤の例は、抗酸化剤、懸濁剤、分散剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤および界面活性剤を含む。
【0289】
本発明の薬剤または医薬品製剤の有効投与量は、インビボにおいて遺伝子編集を引き起こすのに十分な量であり得る。
【0290】
本発明の薬剤または医薬品製剤の有効投与量は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の、インビボにおけるゲノム標的の平均変異率を引き起こすのに十分な量であり得る。
【0291】
治療上有効な投与量は、治療効果を引き起こすのに十分な薬剤または製剤の量であり得る。治療上有効な投与量は、1回またはそれ以上に分割された投与において、および種々の経路によって、投与され得る。
【0292】
投与に際して、治療上有効な投与量は、1〜1000pg/ml、1〜1000ng/ml、1〜1000μg/mlまたはそれ以上の、有効成分の血清レベルをもたらし得る。
【0293】
インビボにおける有効成分の治療上有効な投与量は、0.001〜0.01mg/kg体重、0.01〜0.1mg/kg、0.1〜1mg/kg、1〜10mg/kg、または10〜100mg/kgの投与量であり得る。
【0294】
インビボにおける有効成分の治療上有効な投与量は、0.001mg/kg体重、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kgまたはそれ以上の投与量であり得る。
【0296】
本発明のガイド分子を利用できる、疾患および/または症状の例は、表3の疾患および/または症状を含む。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0297】
T7アッセイによるmTTR遺伝子編集の評価のためのプロトコル
【0298】
WTマウスTTRを発現するHepa1−6細胞に、Cas9 mRNAをLIPOFECTAMINE MESSENGERMAX試薬で遺伝子導入し、その4時間後に、UNAガイドまたは比較ガイド(これらはそれぞれ、mTTRのエクソン2を標的とする、プレアニールしたcrRNA:tracrRNAユニットであった)を遺伝子導入した。遺伝子導入の48時間後に、ゲノムDNAを単離し、mTTRの459bpのフラグメントをプライマー
配列番号2
5’CTGGTGCACAGCAGTGCATCT3’
および
配列番号3
5’CCTCTCTCTGAGCCCTCTAGCTGGTA3’
を用いて増幅した。
【0299】
その後、PCR産物を98℃で5分間加熱し、次いでヘテロ二本鎖形成のために、室温までゆっくりと冷却させた。その後、T7エンドヌクレアーゼアッセイを行い、遺伝子編集を評価した。ImageJ分析ソフトウェアを用いて、式%インデル=100x(1−(1−切断されたDNAフラグメントの面積/全体の面積)
1/2)で生成した、インデルの割合を決定した。
【0300】
CRISPR/Cas9遺伝子編集による、分泌mTTRタンパク質のノックダウンのELISA評価
【0301】
WTマウスTTRを発現するHepa1−6細胞に、Cas9 mRNAをLIPOFECTAMINE MESSENGERMAX試薬で遺伝子導入し、その4時間後に、UNAガイドまたは比較ガイド(これらはそれぞれ、mTTRのエクソン2を標的とする、プレアニールしたcrRNA:tracrRNAであった)を遺伝子導入した。遺伝子導入の48時間後に、上清を回収し、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(マウスプレアルブミンELISAキット、Genway)を行い、分泌マウスTTRタンパク質の量を定量化した。
【0302】
T7アッセイによる、遺伝子編集のインビボにおける評価
【0303】
Cas9 mRNAおよびUNAガイドまたは比較ガイド(これらはそれぞれ、mTTRのエクソン2を標的とする、プレアニールしたcrRNA:tracrRNAであった)を、脂質ナノ粒子に別々に封入し、次いで10mg/kg全RNAにおける、尾静脈注射による単回投与のために、混合した。投与の6日後、メスの6〜8週齢のBalb/cマウスを屠殺し、ゲノムDNAを単離し、mTTRの459bpのフラグメントを、プライマー
配列番号4
5’CTGGTGCACAGCAGTGCATCT3’
および
配列番号5
5’CCTCTCTCTGAGCCCTCTAGCTGGTA3’
を用いて増幅した。
【0304】
その後、PCR産物を98℃で5分間加熱し、次いで、ヘテロ二本鎖形成のために、室温までゆっくりと冷却させた。その後、T7エンドヌクレアーゼアッセイを行い、遺伝子編集を評価した。ImageJ分析ソフトウェアを用いて、式%インデル=100x(1−(1−切断されたDNAフラグメントの面積/全体の面積)
1/2)で生成した、インデルの割合を決定した。
【0305】
CRISPR/Cas9遺伝子編集による、分泌mTTRタンパク質ノックダウンのインビボにおけるELISA評価
【0306】
Cas9 mRNAおよびUNAガイドまたは比較ガイド(これらはそれぞれ、mTTRのエクソン2を標的とする、プレアニールしたcrRNA:tracrRNAであった)を、脂質ナノ粒子に別々に封入し、次いで10mg/kg全RNAにおける、尾静脈注射による単回投与のために、混合した。投与の2、4および6日後、血清をメスの6〜8週齢のBalb/cマウスから回収し、分泌マウスTTRタンパク質の量を、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(マウスプレアルブミンELISAキット、Genway)によって決定した。
【0307】
マウスTTRを標的とするCRISPR/Cas9遺伝子編集
【0308】
V30M mTTR用の20塩基長のガイド配列を、表4に示す。
【表4】
【0309】
表4の下線が引かれた
CATは、V30M変異を示す。
【0310】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、V30Mのための20塩基長のガイド配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含んでいた。
【0311】
mTTRのV30M領域のための、標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表5に示す。表5の分子は、
図2に示すように、crRNAと結合する標的U−ガイドを含む。
【表5】
【0312】
表5において、N(=A、U、C、G)はRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、A~、U~、C~、G~はUNAモノマーを指す。
【実施例】
【0313】
実施例1:CRISPR/Cas9用のU−ガイド分子を用いた、TTRゲノム部位のアレル選択的な編集。
【0314】
本実験において、357bpのPCR産物を、以下のプライマーを用いて、ヒトTTRゲノムDNA(アクセッション番号NC_000018.10)から生成した:
【0315】
配列番号11
順方向(イントロン1):5’−tgtcttctctacacccagggcac−3’
【0316】
配列番号12
逆方向(エクソン2):5’−gcaaaccacagctagaggagagga−3’。
【0317】
20塩基長のガイド配列を、ヒトTTRコード領域269〜288および269〜286をそれぞれ標的とするように、同定した。
【0318】
V30M hTTR用の20塩基長のガイド配列を、表6に示す。
【表6】
【0319】
表6において、下線が引かれた位置は、V30M変異を示す。表6において、配列番号13はまた、5’から3’方向に記載され得、5’から3’方向に記載された表7のU−ガイド分子内に現れる。
【0320】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、V30M用の20塩基長のガイド配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含んでいた。
【0321】
hTTRのV30M領域のための標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表7に示す。表7の分子は、
図2に示すように、crRNAと結合する標的U−ガイドを含む。
【表7】
【0322】
表7において、N(=A、U、C、G)はRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、A~、U~、C~、G~はUNAモノマーを指す。
【0323】
表7におけるU−ガイド分子は、ヒトTTRを遺伝子編集するのに有効であった。ヒトTTRの遺伝子編集のためのアッセイを、357bpのPCR産物で行った。このアッセイにおいて、U−ガイド分子をtracrRNAとプレアニールし、CRISPR/Cas9遺伝子編集用のU−ガイド/tracrを提供する。
【0324】
このアッセイにおいて、V30MヒトTTRを発現する293個の細胞、およびWTヒトTTRを発現する293個の細胞それぞれに、Cas9 mRNAをLIPOFECTAMINE MESSENGER MAX試薬を用いて遺伝子導入し、その4時間後に、U−ガイド/tracrを遺伝子導入した。遺伝子導入の48時間後に、ゲノムDNAを単離し、T7エンドヌクレアーゼアッセイを行った。
【0325】
図3は、U−ガイド分子UNA1(配列番号32)およびUNA2(配列番号35)を用いて、二本鎖切断を357bpのPCR産物に生成し、275bpおよび82bpの切断産物を与えたことを示す。
【0326】
配列番号32のU−ガイド分子は、アレル選択的な結果を伴う、ヒトTTRの遺伝子編集に驚くほど有効であった。配列番号32のU−ガイド分子は、野生型TTRと比較して、V30M TTRにおける二本鎖切断の生成について、並外れたレベルのアレル選択性を示した。
【0327】
図4に示すように、配列番号32のU−ガイド分子は、V30M TTRの26%の編集、および野生型TTRのわずか約3%の編集を与えた。ここで編集は二本鎖切断の程度を示す。したがって、配列番号32のU−ガイド分子は、アレル選択的な結果を伴う、ヒトTTRの遺伝子編集に並外れて、驚くほど有効であった。この実施例は、オフターゲット活性を減少させる能力を示す。
【0328】
配列番号35のU−ガイド分子は、アレル選択的な結果を伴う、ヒトTTRの遺伝子編集に驚くほど有効であった。配列番号35のU−ガイド分子は、野生型TTRと比較して、V30M TTRにおける二本鎖切断の生成について、並外れたレベルのアレル選択性を示した。
【0329】
図4に示すように、配列番号35のU−ガイド分子は、V30M TTRの19%の編集、および野生型TTRのわずか約2%の編集を与え、ここで編集は二本鎖切断の程度を示す。したがって、配列番号35のU−ガイド分子は、アレル選択的な結果を伴う、ヒトTTRの遺伝子編集に並外れて、驚くほど有効であった。この実施例は、オフターゲット活性を減少させる能力を示す。
【0330】
これらの結果は、本発明のU−ガイド分子を、ヒトTTRのアレル選択的な遺伝子編集に使用できることを示す。ヒトTTRの遺伝子編集における、驚くべきレベルのアレル選択性を、
図5に示す。配列番号32のU−ガイド分子は、8.7の高い選択性比を与えた。さらに配列番号35のU−ガイド分子は、9.5の高い選択性比を与えた。
【0331】
さらに、同一の条件において、配列番号32および35のU−ガイド分子と同一の核酸塩基配列および構造を有するが、いかなるUNAモノマーも持たない、CRISPR/Cas9ガイドは、1.43の選択性比であった。
【0332】
また、配列トレース分解による、ゲノム編集の評価を行った。V30MヒトTTRまたはWTヒトTTRのいずれかを発現する293個の細胞に、Cas9 mRNAをLIPOFECTAMINE MESSENGERMAX試薬で遺伝子導入し、その4時間後に、比較ガイドまたはUNAガイド(UNA1)(これらをそれぞれ、tracrRNAとプレアニールし、hTTRのV30M変異を標的とした)を遺伝子導入した。遺伝子導入の48時間後に、ゲノムDNAを単離し、hTTRの1048bpのフラグメントを増幅した。PCR産物を精製し、次いでサンガーシークエンスした。
【0333】
配列決定のデータファイルを、TIDE(分解によるインデルのトラッキング(Tracking of Indels by Decomposition))(例えば、Brinkman, 2014, Nucl. Acids Res., Vol. 42, No. 22, pp. 1-8参照)に取り込み、制御配列を整列させ、予想される切断部位後の、異常なヌクレオチドの相対的な存在量を決定し、挿入および欠失(インデル)ならびにその頻度のスペクトルを作製した。
【0334】
図6は、配列トレース分解(TIDE)による、V30M TTRのゲノム編集の評価のための、比較gRNAガイド(非UNAガイド構造)のインデルスペクトルを示す。全体の効率は、38.5%であった。
【0335】
図7は、配列トレース分解(TIDE)による、V30M TTRのゲノム編集の評価のための、UNAガイド(UNA1)のインデルスペクトルを示す。全体の効率は、33.4%であった。
【0336】
図8は、配列トレース分解(TIDE)による、野生型TTRのゲノム編集の評価のための、比較gRNAガイド(非UNAガイド構造)のインデルスペクトルを示す。全体の効率は、26.6%であった。したがって、比較gRNAガイドの選択性は、V30M TTRについて、野生型TTRに対して、38.5/26.6=1.4であった。
【0337】
図9は、配列トレース分解(TIDE)による、野生型TTRのゲノム編集の評価のための、UNAガイド(UNA1)のインデルスペクトルを示す。全体の効率は、2.1%であった。したがって、UNAガイド(UNA1)の選択性は、V30M TTRについて、野生型TTRに対して、33.4/2.1=15.9であった。
【0338】
これらの結果は、本発明のU−ガイド分子を、ヒトTTRのアレル選択的な遺伝子編集に使用できることを示す。本発明のU−ガイド分子は、ヒトTTRの遺伝子編集に、驚くほど高いレベルのアレル選択性を示した。
【0339】
実施例2.CRISPR/Cas9用のU−ガイド分子を用いた、TTRゲノム部位のアレル選択的な編集
【0340】
V30M hTTR用の20塩基長のガイド配列を、表8に示す。
【表8】
【0341】
表8において、配列番号40はまた、5’から3’方向に記載され得、5’から3’方向に記載された表9のU−ガイド分子内に現れる。
【0342】
本明細書において、用語「1または5’から3’」は、最左端にUNAモノマー(1から3’、例えば配列番号43)、または最左端にヌクレオチド(5’から3’、例えば配列番号44)のいずれかを有する、U−ガイドを指す。
【0343】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、V30M用の20塩基長のガイド配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含んでいた。
【0344】
hTTRのV30M領域のための、標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表9に示す。
【表9】
【0345】
表9において、N(=A、U、C、G)はRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、A~、U~、C~、G~はUNAモノマーを指す。
【0346】
表9におけるU−ガイド分子は、ヒトTTRを遺伝子編集するのに有効であった。ヒトTTRの遺伝子編集のためのアッセイを、357bpのPCR産物で行った。このアッセイにおいて、U−ガイド分子をtracrRNAとプレアニールし、CRISPR/Cas9遺伝子編集のためのU−ガイド/tracrを提供する。
【0347】
このアッセイにおいて、V30MヒトTTRを発現する293個の細胞、およびWTヒトTTRを発現する293個の細胞それぞれに、Cas9 mRNAをLIPOFECTAMINE MESSENGER MAX試薬を用いて遺伝子導入し、その4時間後に、U−ガイド/tracrを遺伝子導入した。遺伝子導入の48時間後に、ゲノムDNAを単離し、T7エンドヌクレアーゼアッセイを行った。
【0348】
図10は、U−ガイド分子UNA3(配列番号61)を用いて、二本鎖切断を357bpのPCR産物に生成し、271bpおよび86bpの切断産物を与えたことを示す。
【0349】
配列番号61のU−ガイド分子は、アレル選択的な結果を伴う、ヒトTTRの遺伝子編集に驚くほど有効であった。配列番号61のU−ガイド分子は、野生型TTRと比較して、V30M TTRにおける二本鎖切断の生成について、並外れたレベルのアレル選択性を示した。
【0350】
図11に示すように、配列番号61のU−ガイド分子は、V30M TTRの14%の編集、および野生型TTRのわずか約3%の編集を与えた。ここで編集は二本鎖切断の程度を示す。したがって、配列番号62のU−ガイド分子は、アレル選択的な結果を伴う、ヒトTTRの遺伝子編集に並外れて、驚くほど有効であった。この実施例は、オフターゲット活性を減少させる能力を示す。
【0351】
これらの結果は、本発明のU−ガイド分子を、ヒトTTRのアレル選択的な遺伝子編集に使用できることを示す。ヒトTTRの遺伝子編集における、驚くべきレベルのアレル選択性を、
図12に示す。配列番号61のU−ガイド分子は、4.7の高い選択性比を与えた。
【0352】
したがって、配列番号62のU−ガイド分子は、野生型TTRに対するV30M TTRのアレル選択性を伴う、ヒトTTRの遺伝子編集に並外れて有効であった。この実施例は、オフターゲット活性を減少させる能力を示す。
【0353】
実施例3:CRISPR/Cas9用のU−ガイド分子を用いた、BIRC5ゲノム部位の編集
【0354】
サバイビン(バキュロウイルスアポトーシス阻害剤リピート含有5(baculoviral inhibitor of apoptosis repeat-containing 5)、ヒトBIRC5、NG_029069.1)は、腫瘍細胞(特に乳がんおよび肺がん)において発現し得、一般的に正常細胞には存在しない。サバイビンは、がん遺伝子であり得、がん細胞におけるその過剰発現は、アポトーシス抵抗性および生存の増加を導き得る。
【0355】
20塩基長のガイド配列を、ヒトBIRC5の特定の領域を標的とするように、同定した。これらの配列のEntreZ遺伝子IDは332である。
【0356】
BIRC5のための20塩基長のガイド配列を、表10に示す。
【表10】
【0357】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、20塩基長の標的配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含む。
【0358】
BIRC5のための、標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表11に示す。
【表11-1】
【表11-2】
【0359】
表11において、NはRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、U~はUNA−Uモノマーを指し、G~はUNA−Gモノマーを指す。
【0360】
実施例4:CRISPR/Cas9用のU−ガイド分子を用いた、CDK16ゲノム部位の編集
【0361】
CDK16によってコードされるタンパク質は、タンパク質キナーゼのser/thrファミリーのcdc2/cdkxサブファミリーに属する(ヒトCDK16、NG_012517.1)。CDK16は、最終分化細胞におけるシグナル伝達カスケード、エクソサイトーシス、および小胞体からの分泌カーゴの輸送に関連し得る。CDK16の欠損およびコピー数バリアントは、様々な疾患(知的障害および関連障害を含む)に関連している。
【0362】
20塩基長のガイド配列を、ヒトCDK16の特定の領域を標的とするように、同定した。これらの配列のEntreZ遺伝子IDは5127である。
【0363】
CDK16のための20塩基長のガイド配列を、表12に示す。
【表12】
【0364】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、20塩基長の標的配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含む。
【0365】
CDK16のための標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表13に示す。
【0366】
【表13-1】
【表13-2】
【0367】
表13において、NはRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、U~はUNA−Uモノマーを指し、G~はUNA−Gモノマーを指す。
【0368】
実施例5:CRISPR/Cas9用のU−ガイド分子を用いた、STAT3ゲノム部位の編集
【0369】
シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)は、多くのサイトカインにおける転写メディエーターである(ヒトSTAT3、NG_007370.1)。STAT3は、STATタンパク質のファミリーに属し、これは、細胞外シグナル伝達タンパク質(特に、インターロイキン(IL)−6ファミリー(例えば、IL−5、IL−6、IL−11)を含む)に応答して活性化する。STAT3は、様々な自己免疫疾患(炎症性腸疾患(IBD)など)、肝疾患、グリオーシス、反応性アストロサイト、ならびに他の疾患および症状に関連し得る。
【0370】
20塩基長のガイド配列を、ヒトSTAT3の特定の領域を標的とするように、同定した。これらの配列のEntreZ遺伝子IDは6774である。
【0371】
STAT3のための20塩基長のガイド配列を、表14に示す。
【表14】
【0372】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、20塩基長の標的配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含む。
【0373】
STAT3のための標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表15に示す。
【0374】
【表15-1】
【表15-2】
【0375】
表15において、NはRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、U~はUNA−Uモノマーを指し、G~はUNA−Gモノマーを指す。
【0376】
実施例6:CRISPR/Cas9用のU−ガイド分子を用いた、CFTRゲノム部位の編集
【0377】
嚢胞性線維症(CF)は、呼吸器系に実質的に影響を与える遺伝性疾患であり、肺に異常に厚い粘液内層を生じる。この疾患は致死的な肺感染症を導き得、膵臓の様々な閉塞症をもたらし、消化を妨害し得る。CFの症状は、持続性の咳、喘鳴または息切れ、ならびに食欲の亢進および不十分な体重増加を含む。悪化は避けられず、衰弱および最終的に死に至る。米国において、CFの発症率は、新生児3500人に1人の割合であると報告されている。
【0378】
この疾患を患う個体は、それぞれの親から、異常な嚢胞性線維症CFTR遺伝子を受け継ぐ。異常なCFTR遺伝子は、異常なタンパク質嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子を生成し、これは細胞内外の塩および水の移動を正確に制御しない。結果として、呼吸器系、消化器系および生殖器系における厚い、粘着性の粘液、および汗における塩分の増加を与える。CFTR遺伝子には、千を超える変異の可能性がある。
【0379】
20塩基長のガイド配列を、ヒトCFTR(ヒトCFTR、NG_016465.4)の特定の領域を標的とするように、同定した。これらの配列のEntreZ遺伝子IDは1080である。
【0380】
CFTRのための20塩基長のガイド配列を、表16に示す。
【表16】
【0381】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、20塩基長の標的配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含む。
【0382】
CFTRのための、標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表17に示す。
【0383】
【表17-1】
【表17-2】
【0384】
表17において、NはRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、U~はUNA−Uモノマーを指し、G~はUNA−Gモノマーを指す。
【0385】
実施例7:CRISPR/Cas9用のU−ガイド分子を用いた、第IX因子(F9)ゲノム部位の編集
【0386】
第IX因子の欠乏は、血友病Bを引き起こす。第IX因子において、100を超える公知の変異がある。
【0387】
20塩基長のガイド配列を、ヒトF9(ヒトF9、NG_007994.1)の特定の領域を標的とするように、同定した。これらの配列のEntreZ遺伝子IDは2158である。
【0388】
F9のための20塩基長のガイド配列を、表18に示す。
【表18】
【0389】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、20塩基長の標的配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含む。
【0390】
F9のための標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表19に示す。
【0391】
【表19-1】
【表19-2】
【0392】
表19において、NはRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、U~はUNA−Uモノマーを指し、G~はUNA−Gモノマーを指す。
【0393】
実施例8:CRISPR/Cas9用のU−ガイド分子を用いた、KRASゲノム部位の編集
【0394】
KRASタンパク質は、正常な組織のシグナル伝達に必須であり、KRAS遺伝子の変異は多くのがんに関連する。
【0395】
20塩基長のガイド配列を、ヒトKRAS(ヒトKRAS、NG_007524.1)の特定の領域を標的とするように、同定した。これらの配列のEntreZ遺伝子IDは3845である。
【0396】
KRASのための20塩基長のガイド配列を、表20に示す。
【表20】
【0397】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、20塩基長の標的配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含む。
【0398】
KRASのための標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表21に示す。
【0399】
【表21-1】
【表21-2】
【0400】
表21において、NはRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、U~はUNA−Uモノマーを指し、G~はUNA−Gモノマーを指す。
【0401】
実施例9:CRISPR/Cas9用のU−ガイド分子を用いた、T細胞ゲノム部位の編集
【0402】
キメラ抗原受容体(CAR)の構造の略図を
図13に示す。CARは、T細胞に挿入され、発現される、人工的なT細胞受容体である。ScFvは単鎖可変フラグメントである。V
Hは重鎖可変領域である。V
Lは軽鎖可変領域である。TMは膜貫通ドメインである。SDはシグナル伝達ドメインである。
【0403】
CAR遺伝子を、T細胞において構成的に発現する任意の遺伝子に挿入し得る。
【0404】
例えば、ある実施態様において、CAR遺伝子をCD2遺伝子(分化クラスター2(cluster of differentiation 2))に挿入し得る。CD2は、T細胞表面上に見出される細胞接着分子であり、T細胞が抗原提示細胞に接着するのを助ける。
【0405】
図14は、CAR遺伝子を、T細胞の構成的CD2遺伝子に導入する方法の模式図を示し、CARはCD2の下流にある。二本鎖切断を、本発明のU−ガイド分子を用いて作成する。相同組換えで挿入した遺伝子は、P2AおよびCARの区分と共に、CD2の区分から構成され得る。P2Aペプチドは、2つの別々の遺伝子産物である、CD2タンパク質およびCARタンパク質を生成するのに使用され得る、自己切断ペプチドである。CARタンパク質受容体は、養子免疫療法の戦略において、対象のがん細胞に対するmAbの特異性を保有し、対象のがん細胞を死滅させ得る。
【0406】
図15は、CAR遺伝子を、T細胞の構成的CD2遺伝子に導入する方法の模式図を示し、CARはCD2の上流にある。
【0407】
CD2のための、いくつかの20塩基長のガイド配列を、表22に示す。
【表22】
【0408】
20塩基長のガイド配列を、ヒトCD2の特定の領域を標的とするように、同定した。
【0409】
CD2のための20塩基長のガイド配列を、表23に示す。
【表23】
【0410】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、20塩基長の標的配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含む。
【0411】
CD2のための標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表24に示す。
【0412】
【表24】
【0413】
表24において、NはRNAモノマーを指し、mNは2’−O−メチル−RNAモノマーを指し、*は3’−ホスホロチオエート結合を指し、U~はUNA−Uモノマーを指し、G~はUNA−Gモノマーを指す。
【0414】
実施例10:配列トレース分解(TIDE)のためのプロトコル
【0415】
V30MヒトTTRまたはWTヒトTTRのいずれかを発現する293個の細胞に、Cas9 mRNAをLIPOFECTAMINE MESSENGERMAX試薬で遺伝子導入し、その4時間後に、比較ガイドまたはUNAガイド(UNA1)(これらをそれぞれ、tracrRNAとプレアニールし、hTTRのV30M変異を標的とした)を遺伝子導入した。遺伝子導入の48時間後に、ゲノムDNAを単離し、hTTRの1048bpのフラグメントをプライマー:
配列番号559
5’ACAACTGGTAAGAAGGAGTGAC3’および
配列番号560
5’CCTTGGGTTTTGGGTGATCC3’
を用いて増幅した。
【0416】
PCR産物を精製し、次いで、
配列番号561
5’TCGACACTTACGTTCCTGAT3’または
配列番号562
5’CATACTTGACCTCTGCCTAC3’
のいずれかのプライマーを用いて、サンガーシークエンスした。
【0417】
実施例11:CRISPR/Cas9のためのU−ガイド分子を用いた、TTRゲノム部位の編集
【0418】
20塩基長のガイド配列を、ヒトTTR(アクセッション番号NC_000018.10)の特定の領域を標的とするように、同定した。
【0419】
hTTRのための20塩基長のガイド配列を、表25に示す。
【表25】
【0420】
U−ガイド分子を合成し、ここでこの分子は、20塩基長の標的配列および化膿レンサ球菌のCRISPR配列を含む。
【0421】
V122I hTTRのための、標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表26に示す。
【表26】
【0422】
hTTRのL55P領域のための、標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表27に示す。
【表27】
【0423】
hTTRのSP領域のための、標的の長さが20塩基長のU−ガイド分子の例を、表28に示す。
【表28】
【0424】
実施例12:CRISPR/Cas遺伝子編集のU−ガイド分子のための、crRNAの例は、
配列番号605
5’−GUUUUAGAGCUAUGCU−3’である。
【0425】
実施例13:CRISPR/Cas遺伝子編集のU−ガイドシステムのための、tracrRNAの例は、上記で用いられるように、
配列番号606
5’-mA*mG*mC*mAmUmAmGmCmAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAAmCmUmUmGmAmAmAmAmAmGmUmGmGmCmAmCmCmGmAmGmUmCmGmGmUmGmCmU*mU*mU-3’である。
【0426】
記載された特定の方法論、プロトコル、材料および試薬は様々であり得るため、本明細書はこれらに限定されないことが理解される。また、本明細書中で用いた用語は、特定の実施態様のみを説明することを目的とし、添付の特許請求の範囲によって包含される、本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解される。
【0427】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかな他の指示がない限り、複数形を含むことを注記しておく。さらに、用語「a」(または「an」)、「1以上の」および「少なくとも1つの」は、本明細書において交換可能に使用され得る。また、用語「含む」、「含んでいる」、「含有する」、「包含する」および「有する」は、交換可能に使用され得ることも注記しておく。
【0428】
さらなる詳述なしに、当業者は、上述の記載に基づいて、本発明を十分な範囲で利用できると考えられる。したがって、以下の具体的な実施態様は、単なる説明として解釈されるべきであり、いかなる方法においても本開示の残部の限定とはならない。
【0429】
本明細書に開示される全ての特徴は、任意の組合せで組み合わせてよい。本明細書に開示される各特徴を、同一、等価、または類似の目的を果たす代替の特徴によって、置換してもよい。