(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載される実施形態は、一般に、燃料電池システムにより生成された二酸化炭素を捕捉するためのシステムおよび方法に関し、特に、化石燃料装置、設備または施設(例えば、発電所、ボイラ、またはセメント工場の窯や鉄鋼業のコークス炉のような他の燃焼器)に一体化され得る、一体型電力生産システムまたは燃料電池システムに関する。本明細書に記載のシステムおよび方法は、アノード排ガスに含まれる様々なガス、特に二酸化炭素を効率的に分離するように構成される。アノード排ガスに含まれる水素は、アノード排ガス中の二酸化炭素の相対濃度を増加させるようにメタン化される。
【0016】
本明細書で使用する「メタン化」または「メタン化された」との用語は、アノード排ガスに含まれる水素およびCO
2の少なくとも一部をメタンに変換することを指す。
【0017】
図1Aは、燃料電池1の概略図である。燃料電池1は、電解質マトリックス2と、アノード3と、カソード4とを備えている。アノード3およびカソード4は、電解質マトリックス2によって互いに分離されている。燃焼排ガス供給部からの煙道ガスを酸化剤ガスとしてカソード4に供給してもよい。燃焼排ガス供給部からの排ガスを、酸化剤ガスとしてカソード4に供給してもよい。燃料電池1では、カソードにおいて、CO
3=イオンの形態のCO
2およびO
2がカソードからアノードへと移動し、アノードにおいて、燃料ガスおよび酸化剤ガスは、電解質マトリックス2の細孔内に存在する電解質(例えば、炭酸塩電解質)の存在下で電気化学反応を受ける。
【0018】
幾つかの実施形態において、燃料電池1は、複数の個別燃料電池1が積み重ねられて直列に接続された燃料電池スタックアセンブリを含むことができる。
図1Bは、一実施形態による統合発電生産システム100の概略図である。電力生産システム100は、セメント工場内の化石燃料設備、施設または装置、ボイラ、燃焼器、炉および窯のうちの1以上を含む煙道ガス発生アセンブリ6(以下、「化石燃料設備、施設または装置」)を備えている。この煙道ガス生成アセンブリは、化石燃料(例えば、石炭、天然ガス、ガソリン、ディーゼルなど)を燃焼させて、二酸化炭素を含む煙道ガスを生成するように構成されてよい。
【0019】
電力生産システム100は、煙道ガス発生アセンブリ6に流体連結され、そこから煙道ガスを受け取るように構成された燃料電池アセンブリ10(例えば、炭酸塩燃料電池アセンブリ)を含む。電力生産システム100はまた、例示的な実施形態による炭酸ガス燃料電池アセンブリ10およびガス分離アセンブリ25を含む電力生成ガス分離および隔離システムを含む。
図1Bに示すように、燃料電池10は、カソード部12とアノード部14とを備えている。幾つかの実施形態において、燃料電池アセンブリ10は、内部改質型または直接溶融炭酸塩型の燃料電池アセンブリを含むことができ、そこでは、アノード用の燃料がアセンブリ内で内部改質される。他の実施形態において、燃料電池アセンブリ10は、外部改質炭酸塩型燃料電池アセンブリを含むことができ、この場合、燃料電池のアノード部に供給される前の燃料を改質するために、改質器が使用されるであろう。
【0020】
発電ガス分離および隔離システムの煙道ガス発生アセンブリ6および燃料電池アセンブリ10は、
図1Bに示すように縦列に配置されてよく、ここでは燃料電池アセンブリ10の陰極セクション12に、煙道ガス発生アセンブリ6からの煙道ガスが供給されるようになっている。幾つかの実施形態において、煙道ガス発生アセンブリからの煙道ガスは、陰極セクション12に専ら供給される。例えば、化石燃料供給源2から、石炭、天然ガスまたは他の炭化水素燃料などの化石燃料が、空気供給源4から供給される空気と共に、化石燃料設備、施設または装置6へと供給される。化石燃料および空気は、煙道ガス発生装置6において燃焼反応を起こして電力を生成し、出力煙道ガス排気を生じることができる。煙道ガス排気は、約3〜15%の二酸化炭素、1〜20%の水(好ましくは10〜20%)、および3〜15%の酸素(好ましくは5〜15%)を含み、残りは窒素である。これら成分の正確な量は、化石燃料の種類および空気供給源4からの空気量に依存する。酸素含有量は、空気供給源4を調整することによって、または燃料電池用カソード部12に供給される前の煙道ガス8に補給空気7を添加することによって変化させることができる。補助空気は、煙道ガス8の中に燃料電池の運転に必要な十分な酸素がない場合に、混合流9の酸素部分を増加させるために使用されてよい。
【0021】
図1Bに示すように、ライン9は、煙道排ガスの一部または全部をカソード部12の入口12Aに流体的に連結させ、カソード入口12Aへの煙道ガスまたは酸化剤ガスの供給が煙道ガス排気を含むようにする。幾つかの実施形態において、可能な補助空気流と組み合わせた煙道ガスは、カソード入口12Aへの排他的な酸化剤ガス供給源である。同時に、石炭ガス、天然ガスまたは他の水素含有燃料のような供給源16からの燃料が、ライン15を介してアノード部14の入口14Aに供給される。燃料電池アセンブリ10では、アノード部14内の燃焼排ガスを含む酸化剤ガスと、カソード部12内の改質水素とが電気化学反応を起こして電力出力を生成する。この電気化学的反応はまた、煙道ガス中の二酸化炭素のかなりの部分(約65〜85%またはそれ以上)が、燃料電池10のカソード部12からアノード部14へと移送される結果をもたらす。
【0022】
更に言えば、煙道ガス中の二酸化炭素および酸素は、燃料電池アセンブリ10のカソード部12で反応して炭酸イオンを生成し、該イオンは、燃料電池電解質を通って燃料電池10のアノード部14に運ばれる。アノード部14では、炭酸イオンが燃料からの水素で還元されて、水および二酸化炭素が生成する。正味の結果は、上記で述べた煙道ガス中の二酸化炭素のかなりの部分の、カソード部12からアノード部14への移動である。従って、燃料電池10のアノード部14の出口14Bにおけるアノード排ガスは二酸化炭素の濃度が高く、これにより、ここに記載されたCO
2分離および隔離システムを使用して、二酸化炭素ガスをより容易かつ効率的に捕捉および隔離することができる。幾つかの実施形態において、アノード排ガス中の二酸化炭素の濃度は、それらの間の全ての範囲および値を含めて60〜75モル%(乾燥基準)の範囲である。別の実施形態では、より高い濃度を達成することができる。
【0023】
図1Bに示すように、二酸化炭素が枯渇した煙道ガスは、ライン18を介して、カソード出口12Bを通ってカソード部12を出て行き、また主に二酸化炭素、ならびに未反応述べた水素、一酸化炭素、水蒸気および痕跡量の他のガスを含むアノード排ガスはアノード出口14Bを出て、ライン20によりガス分離アセンブリ25へと運ばれる。幾つかの実施形態において、ガス分離アセンブリ25は、アノード排気から水を回収するための少なくとも水除去アセンブリ21と、残りのアノード排ガスから二酸化炭素を分離するための二酸化炭素分離アセンブリ22とを含むことができる。更に、カソードガスは高温で燃料電池アセンブリ10を出て行くので、この流れからの検出可能な熱の全部または一部を1以上の熱回収ユニット17によって回収し、燃料電池アセンブリ10に流入するガスを予熱するために使用できる。幾つかの実施形態では、ガス分離アセンブリ25に輸送される前に、燃料電池アノード部14を出るアノード排ガスから熱を回収することができる。
【0024】
図2は、一実施形態による、電力生成ガス分離および隔離システム200のより詳細な概略図である。システム200は、燃焼排ガス供給装置205(例えば、煙道ガス発生アセンブリ6)から煙道ガスを受け取る。この煙道ガスは主に二酸化炭素、水、酸素および窒素を含み、燃焼に基づく電力プラント、化石燃料施設、設備または装置等においては、例えば石炭、天然ガス、バイオガス、合成ガス、および他の炭化水素燃料(例えばエタノール)を含む可燃性炭化水素の燃焼から製造される。燃焼排ガス供給装置205は、ガス流導管210aを通る煙道ガス排気を、微量汚染物/汚染ガス除去装置215に供給する。微量汚染物/汚染ガス除去装置215は、SO
2などの酸化硫黄ガス、水銀、および微粒子を含む燃焼副生成物を除去する。窒素酸化物ガス(NOx)は、燃料電池の性能に影響を及ぼさず、また燃料電池カソードでは殆どのNOxが破壊されるので、除去する必要はない。
図2に示すように、微量汚染物/汚染ガス除去装置215は、清浄化された煙道ガスを、ガス流導管210bを介して煙道ガスブロワ220へと出力する。煙道ガスブロワ220は、浄化された煙道ガスの圧力を上昇させて、煙道ガスがシステム200を通って押し出されるようにする。
【0025】
煙道ガスブロワ220は、煙道ガスを約500℃〜650℃の温度に加熱するように構成された第1の熱交換器225へと、煙道ガスを出力する。幾つかの実施形態において、第1の熱交換器225はまた、煙道ガスから熱を除去し、熱回収のためにこの熱を迂回させることができる。
図2に示すように、第1の熱交換器225は、ガス流導管210bを介して燃焼排ガス供給装置205から洗浄された煙道ガスを受け取り、また燃料電池235のカソード側236からカソード排気出力を受け取る。煙道ガスは第1の熱交換器225の中で所望の温度に加熱され、その後、この加熱された煙道ガスは酸化器230を含む酸化器アセンブリへと出力される。酸化器230はまた、燃料を含有するガス、例えばアノード排気、または以下に記載するガス分離装置275においてアノード排ガスから分離された残留燃料の全部もしくは一部を受取る。幾つかの実施形態において、それは天然ガス供給物241の一部をも受ける。酸化器230では、燃料含有ガスが煙道ガスの存在下で酸化され、それにより煙道ガスを更に加熱する。酸化器230は、この更に加熱された煙道ガスを、ガス流導管210cを介して燃料電池235へと出力する。
【0026】
燃料電池235は、カソード部236およびアノード部237を備える。燃料電池235は、燃料がアノード部237に搬送される前にこれを改質するために、内部改質溶融炭酸塩燃料電池(MCFC)、外部改質燃料電池、又はそれらの組み合わせを含むことができる。カソード部236は、ガス流導管210a−cを介して燃焼排ガス供給装置205に連結されており、煙道ガスが微量汚染物/汚染ガス除去装置215で処理され、また第1の熱交換器225および酸化器230内で加熱された後に、ガス流導管210b−cを介して燃焼排ガス供給装置205から排ガスを受け取る。
図2に示すように、カソード部236は専ら、燃焼排ガス供給装置205から供給される排ガスまたは処理された排ガスを受け取る。しかし、他の実施形態において、燃料ガスまたは処理された燃料ガスは、他の供給源からの空気または酸化剤ガスと混合される。
【0027】
燃料電池235で電気化学反応を受けた後、カソード部236は、ガス流導管212を介してカソード流を第2の熱交換器240に出力し、第2の熱交換器240はまた、燃料供給源241から天然ガスなどの燃料を、また燃料供給管242を通して水252を受取る。任意の適切な燃料を使用することができ、これには天然ガス、石炭由来の合成ガス、嫌気性消化ガス、およびエタノールまたは水素などの再生可能な燃料を含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、硫黄含有種のような有害な燃料電池汚染物は、燃料電池235で使用される前に燃料ガスから除去することができる。第二の熱交換器では、受け取られた燃料がカソード排気からの廃熱を用いて約450〜650℃の温度にまで加熱され、また加熱された燃料および蒸気は、第二の熱交換器240から燃料電池235のアノード部237へと搬送される。第2の熱交換器240はまた、冷却されたカソード排気を出力し、これは次いで第1の熱交換器225を通って搬送され、前記洗浄された煙道ガスを予熱する。
【0028】
図2に示すように、アノード部237は予熱された燃料を受け取り、これは導管252を介して水を加えることにより加湿されてよく、また当該ガスが燃料電池235において電気化学反応を受けた後に、アノード部237は、導管214を介してアノード排ガスをガス分離アセンブリ25へと出力する。ガス分離アセンブリ25は、メタン化装置245、水除去アセンブリ250、圧縮機260、ならびに燃料電池235、およびフラッシュドラム275の廃熱により駆動される冷却器アセンブリ265、または他の適切なガス−液体分離装置を含んだ二酸化炭素分離アセンブリ22を含む。図示してはいないが、低温はメタンの平衡形成に有利なので、メタン化装置に入る前にアノード排ガスを部分的に冷却することが必要である。メタン化反応は発熱性であるため、段階の間での冷却を伴って、複数のメタン化装置を使用することができる。
【0029】
メタン化装置245は、アノード排ガスに含まれる水素の少なくとも一部を、以下の反応によってメタンに変換するように構成されている。
4H
2+CO
2 → CH
4+2H
2O …(1)
2H
2+CO → CH
4+H
2O …(2)
これにより、メタン化されたアノード排ガス、即ち、より高いパーセンテージのメタンと、より低いパーセンテージの水素を有するアノード排ガスを生じる。これは、特に水が凝縮して除去された後には、より低い総容積と、前記アノード排ガス中の非凝縮性物質に比較してより高濃度の二酸化炭素を有する排ガスを導く。
【0030】
更に言えば、アノード排ガス中に存在する水素および他の非凝縮性ガスは、燃料電池のアノード排気による二酸化炭素の濃縮を妨害し、これは燃料電池の下流での二酸化炭素の圧縮および冷却のコスト上昇を招く可能性がある。アノード排ガスに含まれる水素をメタン化することにより、不活性水素4モルが不活性メタン1モルに減少される。アノード排ガスは、一般に、乾燥基準で約25%〜約75%の範囲の水素+一酸化炭素を含むので、これによりアノード排ガス中の二酸化炭素の濃度は約75%〜約85%まで増加し、アノード排ガスの容積は約15%減少する。幾つかの実施形態において、アノード排ガスのメタン化は、アノード排ガス中の二酸化炭素の濃度を、10〜20%の範囲(それらの間の全ての範囲および値を含む)で増加させることができる。
【0031】
メタン化装置245は、任意の適切な構成および/または構造を有してよく、水素のメタンへの変換を促進するように配合された触媒を含んでよい。適切な触媒には、ルテニウム、コバルト、ニッケル、鉄、他の適切な触媒、またはそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。メタン化装置245は、単段または多段のメタン化装置であってよい。メタン化装置245からのメタン化されたアノード排ガスは、その後、凝縮器などを含む水除去装置250に運ばれ、そこでは、メタン化されたアノード排ガス中に存在する水が凝縮により残留ガスから分離される。
【0032】
水除去アセンブリ250は、水除去導管251を通して凝縮水を出力し、そこから凝縮水をシステム200に戻してリサイクルさせるか、またはシステム200の外部で使用するため、および/または前記システムにリサイクルさせるために、生成水コレクタ255へと出力する。
図2に示すように、凝縮水の全部または一部は、水リサイクル導管252を介して燃料供給導管242へ向けることにより、この水を燃料加湿のためにリサイクルされてよい。また、示されているように、前記凝縮水の残りの部分は、システム200から出力されるか、或いは生成水コレクタ255で収集され、必要に応じてシステム200へリサイクルされてもよい。
【0033】
凝縮器アセンブリ250は、水分離されたアノード排気を、ガス流導管216を通して圧縮機260へと出力し、該圧縮機は前記アノード排ガスを適切な圧力、例えば約200psi(または1.38MPa)以上の圧力に圧縮する。圧縮機260の圧力が高くなればなるほど、冷却器によって提供され得る温度は高くなる。設計ポイントは、より大きく且つ冷却力がより強い冷却器と、より高い圧縮用電力消費との間のトレードオフである。圧縮機260は、圧縮されたアノード排気を冷却器アセンブリ265へと出力する。幾つかの実施形態において、圧縮機260は多段圧縮機であり、段の間での冷却を伴う。冷却器アセンブリ265は、アノード排気内の個々のガスを分離させるように、熱を使用して圧縮および水分離されたアノード排気の冷却を駆動する1以上の装置を含むことができる。
図2に示すように、冷却器アセンブリ265は、1以上の吸収冷却器、即ち、1以上の吸収式冷凍機を備えている。幾つかの実施形態では、直列に接続された複数の吸収式冷凍機のアセンブリが使用されてよく、ここでの吸収式冷却装置の各々は、圧縮され且つ水分離されたアノード排気の全部または一部を圧縮機260から受け取る。
【0034】
冷却器アセンブリ265において、水分離され圧縮されたアノード排ガスは、その圧縮状態を維持しながら所定の温度にまで冷却される。特に、アノード排ガスはガスの高圧を維持しながら、即ち、約200psi(約1.38MPa)以上で約−40℃以下の温度にまで冷却される。この温度および圧力は、アノード排気中に存在する二酸化炭素の殆どを液化させる、アノード排ガス中に存在する残留水素およびメタン燃料等の他のガスから二酸化炭素を分離させる。メタン化によるCO
2濃度の上昇は、液化されるCO
2の量を増加させる。冷却器アセンブリ265は、燃料電池237によって生成されて、熱回収アセンブリ270内で燃料電池排気から回収された廃熱を利用する。詳細に言えば、カソード排気は、第2の熱交換器240および第1の熱交換器225を通過した後、導管266を介して熱回収アセンブリ270に運ばれる。熱回収アセンブリ270は、残留廃熱をカソード排気から回収し、この回収された廃熱を利用して冷却器アセンブリ265を駆動する。
【0035】
熱回収アセンブリ270を通って搬送された後、カソード排気はシステム200から除去され、排気導管271を通ってシステム排気ダクト280により大気に放出される。幾つかの実施形態では、熱交換器225の前で煙道ガス供給物を予熱することによって、更なる熱が回収される。冷却器アセンブリ265は、冷却されたアノード排気(その中では二酸化炭素が液化されている一方、残った燃料はガス状態である)をガス分離装置275へと出力する。フラッシュドラムとも呼ばれるガス分離装置275は、液化二酸化炭素を残留燃料ガスから分離し、分離されたほぼ純粋の液化された二酸化炭素を、地下貯蔵ユニットのような隔離アセンブリ280へと出力するタンクである。ガス分離装置275から分離され且つ液化された純粋な二酸化炭素の流れを容易にするために、ポンプ281等を使用することができる。例えば、二酸化炭素を超臨界状態に変換して隔離サイトへの長距離輸送を容易にするために、ポンプ281を利用して、液化二酸化炭素の圧力を>2200psi(約15.17MPa)まで上昇させてよい。
【0036】
幾つかの実施形態において、分離された二酸化炭素は、EOR(Enhanced Oil Recovery;向上した油回収)、化学物質の生産、および食品産業における食品生産のような、他のプロセスおよび用途に利用される。ガス分離アセンブリ275はまた、分離された残留燃料ガス、例えば水素およびメタンを、燃料ガスリサイクル導管276を通して出力する。
図2の例示的実施形態に示すように、燃料ガスリサイクル用の導管276は酸化器ユニット230に連結され、分離された残留燃料出力が、燃焼ガスを予熱するためにガス分離装置275から酸化器ユニット230へと出力されるようになっている。他の実施形態において、前記分離された残留燃料ガスは、他のプロセス(精錬所、燃焼タービン、およびシステム200に含まれない他の燃料電池が含まれるが、これに限定されない)において合成ガス副生成物として利用されてよく、またはアノード供給部へとリサイクルされてもよい。
【0037】
圧縮および冷却の前の、前記ガス分離アセンブリによるアノード排ガスのメタン化は、当該排ガス中のCO
2濃度を増加させ(例えば、10%〜20%の範囲内)、ならびに電力を低減し、それによってアノード排ガスを圧縮および/または冷却(または凝縮)して、そこから二酸化炭素を抽出するためのコストを低減する(例えば、約15%)。例えば、表1はメタン化されてないアノード排ガス、1段階メタン化および2段階メタン化を受けたアノード排ガスの様々なパラメータを要約している。
【0038】
表I:メタン化されないアノード排気(AE)ガス、1段階メタン化されたAEガス、および2段階メタン化されたAEガスの種々のパラメータ
【表1】
【0039】
CO
2のモル%は、メタン化されないアノード排ガス中の約74%から、1段メタン化された排ガス中の約85%へ、そして2段メタン化されたアノード排ガス中の約90%へと増加する。更に、lbモル/hrでの流速は、1段メタン化では92%に減少し、2段メタン化では86%に減少する。より低い流速は、アノード排ガスの下流での圧縮および/または冷却に必要な電力を低減し、それによって圧縮および/または冷却のコストを低減する。
【0040】
図3は、メタン化された、またはメタン化されないアノード排ガス(例えば、燃料電池アセンブリ1/10/235によって生成されたアノード排ガス)から、二酸化炭素を分離するために使用され得るガス分離アセンブリ300の別の実施形態の概略ブロック図である。ガス分離アセンブリ300は、圧縮ループ300aおよび冷却ループ300bを備えている。
【0041】
メタン化された、またはメタン化されないアノード排ガス流535は、第1の冷却器302に提供され、次いで、流れ706として低圧(LP)圧縮機304に供給される。アノード排ガス流に含まれる水は、第1の水分離器306を介して分離され、第1の水流30として抜取られる。
【0042】
LP圧縮機304から出るアノード排ガス流708は、第2の冷却器308を介して、ストリーム709として高圧(HP)圧縮機310に送られる。第2の水分離器312は、HP排ガス流に含まれる水を第2の水流35として収集する。
【0043】
HP圧縮機310によって放出された高圧アノード排ガス流711は、第3の冷却器316を介して、また第3の水分離器318を通って、流れ715として冷却ループ300bに送られる。第3の水分離器318は、第3の水流37として抜取られる高圧流から、残留水の実質的に全てを除去する。様々な分離器からの水流は、混合器330および314で一緒に混合され、液体水流39としてガス分離アセンブリ300から排出される。
【0044】
図示された実施形態において、華氏約100度の温度を有する高圧アノード排ガス流715は、高圧アノード排ガスを冷却する熱交換器320を介して移送される。華氏−30度未満の温度を有する冷却された高圧アノード排ガス流800は、第1の分離装置(水切りポット)322に送られる。冷却器320は、この高圧アノード排ガスを冷却して、第1の液体CO
2流850を生じさせる。
【0045】
第1の分離装置(水切りポット)322から出るアノード排ガス流805は、次いで、第4の冷却器/冷却器326を介して、流れ510として第2の分離装置(水切りポット)328へと移動される。第2の冷却器326は、アノード排ガス中の追加の二酸化炭素を液化して、第2の液体CO
2流855を生成する。これ以上は容易に凝縮できない残りのアノード排ガス流815は、ガス冷却ループ300bから除去され、燃料電池(例えば、燃料電池10または235)へとリサイクルすることができる。
【0046】
第1の液体CO
2流850および第2の液体CO
2流は、合体されて総液体CO
2流857を生成する。この総液体CO
2は、フラッシュ冷却器324へと回収または移動され得る。フラッシュ冷却器324が液体CO
2の圧力を更に低下させるので、CO
2の一部は気化し、液体CO
2流の温度を低下させて低温液体CO
2流860を生成し、これは熱交換器320へと移動される。この液体CO
2は、圧縮ループ300aから受け取った高圧アノード排ガスを冷却するための、熱交換器320内の冷却剤として働くことができる。液体CO
2は、熱交換器320中で気化して気化CO
2流865を生成し得るが、これは気化ループ300bから抜取られて回収され得る。
図4は、高圧アノード排ガス流715および液体二酸化炭素流860の熱曲線を示すプロットであり、各流れのエンタルピーおよび温度の変化を示している。
【0047】
液体CO
2が所望の回収方法であるならば、液体CO
2流857をより高い圧力にポンピングし、搬出すればよい。この実施形態では、冷却器320および分離装置(水切りポット)322が省略され、冷凍冷却器326のデューティは増加する。
【0048】
表IIは、メタン化されないアノード排ガスの様々な流れのパラメータを纏めたものであり、表IIIは、ガス分離器300を流れるメタン化されないアノード排ガスから分離された種々の液体CO
2流および水流のパラメータを纏めたものである。メタン化されたアノード排ガスの性能は、メタン化装置からの減少した体積流量が必要な圧縮力を減少させ、より少ない量の非凝縮性アノード排ガス流が生成され、捕捉されるCO
2量を増加させる点を除いて同様である。表IVは、メタン化されないアノード排ガス(基本ケース)およびメタン化されたアノード排ガス(メタン化されたケース)に対して動作するガス分離アセンブリ300について、アノード排ガス流535、非凝縮性アノード排ガス流815、および搬出されるCO
2流865のパラメータを比較している。メタン化されないアノード排ガスは約66モル%の二酸化炭素を含み、メタン化されたアノード排ガスは約77モル%の二酸化炭素を含むことが分かる。更に、メタン化されないアノード排ガスの体積流量は約322lb−モル/hrであり、メタン化されたアノード排ガスの体積流量は260.05lb−モル/hrである。従って、メタン化されたアノード排ガスを圧縮するのに必要な圧縮力はより低くなり、その結果、より低い電力消費およびより低いコストがもたらされる。非凝縮性アノード排ガス流は、メタン化されない場合の153.49lbモル/時間から、メタン化された場合には48.24ポンドモル/時間へと減少し、残留燃料中のCO
2は減少し、搬出されるCO
2は増加する。
【0050】
表III:ガス分離アセンブリ300内のメタン化されないアノード排ガスから分離された種々の二酸化炭素流および水流のパラメータ
【表3】
【0051】
表IV:アノード排ガス流535、ガス分離アセンブリ300から排出される非凝縮性アノード排ガス815、および基本ケースおよびメタン化されたケースでの回収された二酸化炭素流865のパラメー比較。
【表4】
【0052】
図5は、二酸化炭素を煙道ガス、例えば発電生産システム100または発電ガス分離および隔離システム200によって生成された煙道ガスから、二酸化炭素を濃縮および分離するための例示的方法400を示す概略フロー図である。
【0053】
方法400は、電力生産システム402、例えば化石燃料装置、設備または施設(例えば、発電所、ボイラ、またはセメント工場の窯のような他の燃焼器、および鉄鋼業におけるコークス炉)からの煙道ガスを、供給および処理することを含む。煙道ガスは、二酸化炭素、水、酸素、窒素および他の不活性ガスを含み得る。煙道ガスは、例えば、微量汚染物/汚染ガス除去装置215を介して、硫黄酸化物および他の痕跡種を除去するために処理されてよい
【0054】
煙道ガスは、例えば燃料電池のカソード排気からの廃熱を使用して、および/または発電装置のガス分離および隔離システム200に関して本明細書で説明するように、酸化装置内で燃料を酸化することによって、402において加熱される。予熱された煙道ガスは、燃料電池のカソード部に搬送される。例えば、予熱された煙道ガスは、
図1A、1Bおよび
図2の燃料電池1/10/235におけるカソード部4/12/236へとそれぞれ搬送される。カソード部4/14/236は、煙道ガスに対して、水素燃料との電気化学反応を受けさせ、電力を生成および出力して、二酸化炭素をアノードへと移動させることができる。
【0055】
アノード排ガスは、408において、アノード排ガスに含まれる水素をメタンに変換するように処理される。例えば、使用済燃料、水素、二酸化炭素、水および一酸化炭素を含むアノード排ガスは、燃料電池1/10/235のアノード部3/14/237から出力され、アノード排ガスに含まれる水素をメタンに変換するように処理されて、メタン化アノード排ガスを生成する。本明細書に記載するように、メタン化されたアノード排ガスは、メタン化されないアノード排ガスに対して、より高い濃度の二酸化炭素を含むことができる。
【0056】
メタン化されたアノード排ガスは、410において、ガス分離アセンブリへと送られる。例えば、メタン化されたアノード排ガスは、本明細書に記載されるように、メタン化されたアノード排ガスから二酸化炭素および場合により水を分離するために、ガス分離アセンブリ25/300へと供給される。
【0057】
本明細書で使用するとき、「概ね」、「約」、「実質的に」および類似の用語は、本発明の主題が、本開示の属する当業者による一般的かつ許容される使用法と調和して、広範な意味を有することを意図している。この開示を検討する当業者であれば、これらの用語によって、一定の特徴の記述を、与えられた正確な数値範囲にこれら特徴を限定することなく、説明および特許請求の範囲への記載を可能にすることを意図するものである旨を理解するはずである。従って、これらの用語は、説明され且つ特許請求の範囲に記載された主題の非実質的または重要でない改変または変更が、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内にあるとみなされるべきことを意味すると解釈されるべきである。
【0058】
本明細書で使用される「結合された」、「連結された」などの用語は、2つの部材を互いに直接的または間接的に接合することを意味する。そのような接合は、静的(例えば、永久的)、または可動的(例えば、取り外し可能または解放可能)であってよい。このような接合は、2つの部材、または2つの部材および任意の追加の中間部材が互いに単一の一元体として一体的に形成され、或いは2つの部材、または2つの部材および任意の追加の中間部材が相互に取り付けられて一体的に形成されることによって達成され得る。
【0059】
種々の例示的な実施形態の構成および配置は、例示にすぎないことに留意することが重要である。本開示では幾つかの実施形態のみが詳細に説明されているが、本開示を検討する当業者は、本明細書に記載された主題の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの変更が可能であること(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状および比率、パラメータの値、取り付け配置、材料の使用、色、向き等の変化)を容易に認識するであろう。例えば、一体的に形成された要素は、複数の部品または要素から構成されてもよく、要素の位置が逆であっても異なっていてもよく、個別の要素または位置の性質または数が改変または変更されてもよい。任意のプロセスまたは方法工程の順序またはシーケンスは、別の実施形態に従って変更または再配列されてもよい。様々な例示的な実施形態の設計、動作条件および配置において、本発明の範囲から逸脱することなく、他の置換、修正、変更および省略を行うこともできる。例えば、熱回収熱熱交換器は更に最適化されてよい。