特許第6799085号(P6799085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799085
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20201130BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20201130BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20201130BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20201130BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20201130BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
   H01M4/40
   !H01M4/505
   !H01M4/525
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-564809(P2018-564809)
(86)(22)【出願日】2016年12月29日
(65)【公表番号】特表2019-536193(P2019-536193A)
(43)【公表日】2019年12月12日
(86)【国際出願番号】CN2016113005
(87)【国際公開番号】WO2018094818
(87)【国際公開日】20180531
【審査請求日】2019年3月25日
(31)【優先権主張番号】201611055577.8
(32)【優先日】2016年11月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513222359
【氏名又は名称】シェンズェン カプチェム テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CAPCHEM TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー チァオ
(72)【発明者】
【氏名】リン ムーチョン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ハイリン
(72)【発明者】
【氏名】フー シーグァン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ロンロン
【審査官】 小川 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−133255(JP,A)
【文献】 特開2015−060819(JP,A)
【文献】 特開2016−027574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/052
H01M 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜、及び、電解液を有したリチウムイオン電池であり、
前記正極は、正極活物質を有し、
前記正極活物質は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3であり、
前記負極は、人造黒鉛であり、
前記電解液は、リチウムイオン電池用非水電解液であり、
前記電解液は、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を有し、
前記添加剤は、下記構造式Aに示された不飽和リン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウムを含み、
【化1】
前記式Aにおいて、R1、R2は独立したC2〜C5の不飽和炭化水素基であり、R3はC1〜C6の飽和炭化水素基、C1〜C6の不飽和炭化水素基、及び、フッ素化炭化水素基のうちの一種であり、
前記不飽和リン酸エステルは、下記構造式1に示された化合物であり、
【化3】
前記リチウムイオン電池の非水電解液の総重量を100%とした場合、前記不飽和リン酸エステルの含有量の重量割合は0.1〜2%であり、
前記リチウムイオン電池の非水電解液の総重量を100%とした場合、前記二フッ化リン酸リチウムの含有量の重量割合は0.1〜2%であることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項2】
不飽和環状炭酸エステルをさらに含むことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電
【請求項3】
前記不飽和環状炭酸エステルは、ビニレンカーボネート及びエチレンカーボネートのうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電
【請求項4】
前記リチウムイオン電池の非水電解液の総重量を100%とした場合、前記不飽和環状炭酸エステルの含有量の重量割合は0.1〜3%であることを特徴とする請求項2又は3に記載のリチウムイオン電
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、特にリチウムイオン電池用非水電解液およびリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、正極と負極との間でリチウムイオンを移動させることによって動作する二次電池である。リチウムイオン電池は、動作電圧が高く、エネルギー密度が大きく、自己放電率が低く、メモリ効果がないなどの著しい利点を有しており、水力、火力、風力と太陽エネルギー発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電気自動二輪車、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの幅広い分野に応用されている。新エネルギー自動車、エネルギー保存技術の発展に伴い、リチウムイオン動力電池の性能に対する要求が高まっている。この要求を満たすリチウムイオン電池の開発が必要とされている。現在、リチウムイオンパワー電池は高温サイクル寿命が不足しており、高低温特性等を両立することができない。
【0003】
非水電解液は、電池のサイクル特性と高低温特性に影響を与える重要な要素である。特に電解液中の添加剤は電解液の特性に対して決定的な役割を有する。現在実用化されている非水電解液に用いられているものは、ビニレンカーボネート(VC)などの従来の成膜添加剤であり、これによって電池のサイクル特性を保証している。しかしながら、VCは高温特性が劣り、高温サイクル特性を満足することができない。さらにVCはインピーダンスが大きく、電池の低温特性にもある程度の副次的作用がある。
【0004】
飽和リン酸エステルを有する非水電解液が開示された特許文献がある。飽和リン酸エステルを電解液の添加剤として使用すると、電池の難燃効果は改善されるものの、飽和リン酸エステルは膜を形成しないため、サイクル特性に対して顕著な改善効果がない。特許文献US6919141(B2)には、リチウムイオン電池の不可逆容量を低下させ、リチウム電池のサイクル特性を向上させることができる不飽和結合を含有するリン酸エステルの非水電解液の添加剤が開示されている。しかしながら、当業者が研究した結果、不飽和結合を有するリン酸エステル添加剤が電極界面で形成する不動態皮膜は導電性が悪いため、界面抵抗が増大し、低温特性が大幅に低下し、低温条件での非水リチウムイオン電池の利用が制限されてしまう。
【発明の概要】
【0005】
従来のリチウムイオン電池用非水電解液では良好な高低温特性が両立しにくいという問題を解決するため、本発明の目的は、より良好な高低温サイクル特性(すなわち、高温サイクル特性がよくて抵抗が低い)を両立できるリチウムイオン電池用非水電解液を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、前記リチウムイオン電池用非水電解液を含むリチウムイオン電池を提供することである。
【0007】
本発明は、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記添加剤は、下記構造式Aに示された不飽和リン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウムを含むリチウムイオン電池用非水電解液によって実現される。
ここで、前記式Aにおいて、R1、R2は独立したC2〜C5の不飽和炭化水素基であり、R3はC1〜C6の飽和炭化水素基、C1〜C6の不飽和炭化水素基、及び、フッ素化炭化水素基のうちの一種である。
【化1】
【0008】
前記不飽和リン酸エステルは、下記構造式1〜5に示された化合物であることが好ましい。
【化2】
【0009】
前記リチウムイオン電池の非水電解液の総重量を100%とした場合、前記不飽和リン酸エステルの含有量の重量割合は0.1〜2%であることが好ましい。
【0010】
前記リチウムイオン電池の非水電解液の総重量を100%とした場合、前記二フッ化リン酸リチウムの含有量の重量割合は0.1〜2%であることが好ましい。
【0011】
前記リチウムイオン電池は、不飽和環状炭酸エステルを有することが好ましい。
【0012】
前記不飽和環状炭酸エステルは、ビニレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも一種であることが好ましい。
【0013】
前記リチウムイオン電池の非水電解液の総重量を100%とした場合、前記不飽和環状炭酸エステルの含有量の重量割合は0.1〜3%であることが好ましい。
【0014】
更に、正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜及び電解液を有するリチウムイオン電池であり、前記電解液は、前記のリチウムイオン電池用非水電解液である。
【0015】
前記正極は、正極活物質を有し、前記正極活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiCo1-yy2、LiNi1-yy2、LiMn2-yy4及びLiNixCoyMnz1-x-y-z2のうちから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。ここで、MはFe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiから選ばれた少なくとも1種であり、0≦y≦1,0≦x≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1である。
【0016】
前記リチウムイオン電池の充電終止電圧が4.3V以上であることが好ましい。
【0017】
本発明によるリチウムイオン電池用非水電解液は、不飽和リン酸エステル成分を有し、且つ、前記不飽和リン酸エステルは少なくとも二種の不飽和基を含んでいる。このような構造特性を有する不飽和リン酸エステルは、より良好に正、負極に膜を形成することができ、更に正、負極を有効に保護し、リチウムイオン電池の高温特性、特に高温サイクル特性を向上させることができる。更に、前記不飽和リン酸エステルによって形成される不動態皮膜は導電性が悪く、抵抗が大きく、電池低温特性の向上には適さない。このため、本発明では、リチウムイオン電池用非水電解液に同時に二フッ化リン酸リチウムを添加する。前記二フッ化リン酸リチウムは膜を形成する効果こそないが、少なくとも二種の不飽和基を有する前記不飽和リン酸エステルと混合された後、負極への成膜に寄与することによって、負極での前記不飽和リン酸エステルの膜抵抗を減少させることができ、ひいてはリチウムイオン電池の低温特性を改善することができる。また、前記二フッ化リン酸リチウム自体が抵抗を低下させ、低温特性を改善するが、少なくとも二種の不飽和基を有する不飽和リン酸エステルと組み合わせて使用されると、低温特性を改善し、電池の高温特性をさらに改善することを見出した。本発明に記載のリチウムイオン電池用非水電解液において、二フッ化リン酸リチウムと少なくとも二種の不飽和基を有する不飽和リン酸エステルとを組み合わせて使用すれば、前記リチウムイオン電池の抵抗を低下させることができ、電池の高温特性をさらに向上させることによって、前記リチウムイオン電池に優れた低温特性及び高温サイクル特性を付与することができる。
【0018】
本発明によるリチウムイオン電池は、前記非水電解液を有するため、より良好な高低温サイクル特性を兼ね備えたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的手段及び効果をより明確にするために、以下の実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。ここに記載する具体的な実施例は、本発明についての説明であって、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0020】
本発明の実施例は、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を有するリチウムイオン電池用非水電解液を提供し、前記添加剤は、下記構造式Aに示された不飽和リン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウムを含む。
【化1】
ここで、前記式Aにおいて、R1、R2は独立したC2〜C5の不飽和炭化水素基であり、R3はC1〜C6の飽和炭化水素基、C1〜C6の不飽和炭化水素基、及び、フッ素化炭化水素基のうちの一種である。
【0021】
具体的には、前記不飽和リン酸エステルはより優れた高温サイクル特性を有するものの、前記不飽和リン酸エステルが電池の正負極に形成する不動態皮膜は、導電性が悪く、抵抗がより大きく、電池の低温特性が悪い。本発明の実施例において、リチウムイオン電池用非水電解液には、同時に不飽和リン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウム(LiPO22)が添加される。ここで、前記不飽和リン酸エステルは、少なくとも二種の不飽和置換基を含むものが選択される。具体的には、R1、R2は独立したC2〜C5(炭素数2〜5)の不飽和炭化水素基であり、R3はC1〜C6(炭素数1〜6)の飽和炭化水素基、C1〜C6(炭素数1〜6)の不飽和炭化水素基、及び、フッ素化炭化水素基のうちの一種である。
【0022】
前記構造的特徴を有する不飽和リン酸エステルは、より良好な成膜効果を有しており、リチウムイオン電池の高温特性を向上させる。また、前記二フッ化リン酸リチウムと協同作用できるのは、この構造的特徴を有する前記不飽和リン酸エステルのみであり、電池負極での前記不飽和リン酸エステルの抵抗を減少させて、リチウムイオン電池に良好な高低温特性を与えることができる。
【0023】
前記不飽和リン酸エステルは、下記構造式1〜5に示された化合物を有することがより好ましい。
【化2】
【0024】
この好ましい不飽和リン酸エステル構造は、前記二フッ化リン酸リチウムと複合化でき、相補してより良好な相乗作用を起こすことにより、前記リチウムイオン電池の高低温サイクル特性を向上させることができる。当然のことながら、不飽和リン酸エステルの具体的種類はこれらに限定されるものではない。
【0025】
前記リチウムイオン電池の非水電解液の総重量を100%とした場合、前記不飽和リン酸エステルの含有量の重量割合は0.1〜2%であることがさらに好ましい。前記不飽和リン酸エステルの含有量が0.1%未満の場合、正、負極での成膜効果が悪くなり、高温サイクル特性に対しては、必要な改善作用が得られなくなる。前記不飽和リン酸エステルの含有量が2%を超えると、正、負極で形成された膜が厚くなり、電池の抵抗を大幅に増大させて、電池特性を悪くする。
【0026】
本発明の実施例において、前記二フッ化リン酸リチウム自体では良好なSEI膜を形成することができず、サイクル特性への効果が良くなく、特に高温サイクル特性が明らかに不足であり、高温条件下の電解液の利用を抑制する。しかしながら、前記構造の不飽和リン酸エステルと複合化すると、負極での成膜に寄与することができるため、前記不飽和リン酸エステルと有効に相補し、同時にリチウムイオン電池の高低温サイクル特性を向上させる。
【0027】
前記リチウムイオン電池の非水電解液の総重量を100%とした場合、前記二フッ化リン酸リチウムの含有量の重量割合は0.1〜2%であることがさらに好ましい。前記二フッ化リン酸リチウムの含有量が0.1%未満である場合、抵抗を減少させる効果が限定的となり、電池の低温特性を効果的に向上させることができない。含有量が2%を超えると、溶解性が悪くなるだけでなく、電池特性を低下させたり、高温特性を悪化させたりする。
【0028】
好ましい実施例としては、前記リチウムイオン電池用非水電解液は、不飽和環状炭酸エステルを含む。前記不飽和環状炭酸エステルは、ビニレンカーボネート及びエチレンカーボネートのうちの少なくとも一種を含むことが特に好ましい。前記リチウムイオン電池の非水電解液の総重量を100%とした場合、前記不飽和環状炭酸エステルの含有量の重量割合は0.1〜3%であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の実施例において、前記リチウムイオン電池用非水電解液中の有機溶媒、リチウム塩は明確に限定されるものではない、該当技術分野で通常の非水有機溶媒、リチウム塩をすべて本発明の実施例に使用することができる。例えば、前記リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのうちの少なくとも一種を含むが、これに限定されない。
【0030】
本発明の実施例によるリチウムイオン電池用非水電解液には、不飽和リン酸エステル成分が含まれており、前記不飽和リン酸エステルには、少なくとも二種の不飽和基が含まれているため、前記不飽和リン酸エステルは、正、負極でより良好な膜形成を可能にし、効果的に正、負極を保護し、リチウムイオン電池の高温特性を向上させ、特に高温サイクル特性を向上させることができる。更に、前記不飽和リン酸エステルによって形成される不動態皮膜は導電性が悪く、抵抗が大きく、電池低温特性の向上には適さない。このため、本発明の実施例では、リチウムイオン電池用非水電解液に同時に二フッ化リン酸リチウムを添加する。前記二フッ化リン酸リチウムは膜を形成する効果こそないが、少なくとも二種の不飽和基を有する前記不飽和リン酸エステルと混合された後、負極への成膜に寄与することによって、負極での前記不飽和リン酸エステルの膜抵抗を減少させることができ、ひいてはリチウムイオン電池の低温特性を改善することができる。また、前記二フッ化リン酸リチウム自体が抵抗を低下させ、低温特性を改善するが、少なくとも二種の不飽和基を有する不飽和リン酸エステルと組み合わせて使用されると、低温特性を改善し、電池の高温特性をさらに改善することを見出した。本発明に記載のリチウムイオン電池用非水電解液において、二フッ化リン酸リチウムと少なくとも二種の不飽和基を有する不飽和リン酸エステルとを組み合わせて使用すると、前記リチウムイオン電池の抵抗を低下させることができ、電池の高温特性をさらに向上させることによって、前記リチウムイオン電池に優れた低温特性及び高温サイクル特性を付与する。
【0031】
更に、本発明の実施例は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜及び電解液を有するリチウムイオン電池を提供し、前記電解液は、前記のリチウムイオン電池用非水電解液である。
【0032】
具体的には、前記電解液は、上記のリチウムイオン電池用非水電解液であるが、便宜上これに関する記述を省略する。前記リチウムイオン電池において、正極、負極、隔膜は明確に限定されるものではない。該当技術分野で通常の正極、負極、隔膜を使用することができる。例えば、正極は、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiCo1-yy2、LiNi1-yy2、LiMn2-yy4及びLiNixCoyMnz1-x-y-z2からなる群より選ばれた少なくとも一種である。MはFe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V及びTiからなる群より選ばれた少なくとも一種であり、0≦y≦1,0≦x≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1である。
【0033】
本発明の実施例によるリチウムイオン電池は、前記非水電解液を有するため、より良好な高低温サイクル特性を兼ね備えたものとなる。
【0034】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。
【0035】
<実施例1>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例1に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0036】
<実施例2>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例2に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0037】
<実施例3>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例3に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0038】
<実施例4>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例4に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0039】
<実施例5>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例5に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0040】
<実施例6>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例6に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0041】
<実施例7>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例7に示された含有量の重量割合の添加剤を含んでいた。
【0042】
<実施例8>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例8に示された含有量の重量割合の添加剤を含んでいた。
【0043】
<実施例9>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例9に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0044】
<実施例10>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の実施例10に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0045】
<比較例1>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の比較例1に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0046】
<比較例2>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の比較例2に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0047】
<比較例3>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の比較例3に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0048】
<比較例4>
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、電解液とを含むLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池を製造した。前記電解液は非水電解液であり、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記非水電解液の総重量を100%とした場合、表1の比較例4に示された重量割合の添加剤を含んでいた。
【0049】
本発明の実施例1〜10、比較例1〜4のLiNi0.5Co0.2Mn0.3/人造黒鉛電池の性能試験を行った。試験指標および試験方法は以下の通りであった。
【0050】
(1)高温サイクル特性について、45℃で、1Cサイクル800回の容量維持率の試験を行った。具体的な方法は以下の通りである。45℃環境下において、製造された電池を0.01Cをカットオフ電流として1Cで4.2Vになるまで定電流定電圧充電した後、1Cで3.0Vになるまで定電流放電した。充電/放電サイクルを800回繰り返した後に800回サイクル後における容量維持率を計算し、高温サイクル特性を評価した。
【0051】
45℃で、1Cサイクル800回の容量維持率の計算式は、次の通りとした。
【0052】
800回サイクル後における容量維持率(%)=(第800サイクルの放電容量/第1サイクルの放電容量)×100%
【0053】
(2)低温サイクル特性(−20℃における0.5Cの放電効率)が以下の通り試験された。25℃環境下において、製造された電池を0.01Cをカットオフ電流として1Cで4.2Vまで定電流定電圧充電した。その後、1Cで3.0Vまで定電流放電して、放電容量を測定した。次いで、0.01Cをカットオフ電流として1Cで4.2Vまで定電流定電圧充電した。その後、電池を−20℃の環境に12時間放置し、0.5Cで2.5Vまで定電流放電し、放電容量を測定した。
【0054】
−20℃で、0.5Cの放電効率の計算式は、次の通りである。
【0055】
−20℃での低温放電効率(%)=0.5Cの放電容量(−20℃)/1Cの放電容量
(25℃)。
【0056】
(3)以下の方法で、60℃で30日間保存後における電池の容量維持率、及び、容量回復率の試験を行った。常温環境下において、製造された電池を0.01Cをカットオフ電流として1Cで4.2Vまで定電流定電圧充電した後、1Cで3.0Vになるまで定電流放電し、電池の初回放電容量を測定した。次に電池を0.01Cをカットオフ電流として1Cで4.2Vになるまで定電流定電圧充電した後、60℃で30日間保存した後、1Cで3.0Vになるまで定電流放電し、維持容量を測定した。さらに0.01Cをカットオフ電流として1Cで4.2Vまで定電流定電圧充電し後、1Cの電流で3.0Vになるまで定電流放電して、回復容量を測定した。容量維持率、容量回復率の計算式は以下の通りである。
【0057】
電池容量維持率(%)=維持容量/初期容量×100%;
【0058】
電池容量回復率(%)=回復容量/初期容量×100%。
【0059】
試験結果は、下記表1に示す。
【表1】
【0060】
上記表1において、実施例1〜10を比較例1と比較すると、実施例1〜10及び比較例1の非水電解液には少なくとも二種の不飽和基を有するリン酸エステルが添加されていたが、実施例1〜10の非水電解液には、同時に二フッ化リン酸リチウムが添加され、比較例1の非水電解液には二フッ化リン酸リチウムが含まれていなかった。その結果、少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステルと二フッ化リン酸リチウムとを同時に含有する実施例1〜10は、より優れた高温サイクル特性及び低温サイクル特性を兼ね備えていた。これに対して、二フッ化リン酸リチウムを含まない比較例1の高温特性は比較的に良好であったものの、低温特性は著しく悪かった。従って、二フッ化リン酸リチウムを添加することによって低温サイクル特性を改善できることが明白に理解できる。
【0061】
実施例1〜10と比較例2とを比較すると、比較例2の非水電解液には二フッ化リン酸リチウムが添加されていたが、実施例1〜10の非水電解液には、同時に少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステルが添加され、比較例1の非水電解液には少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステルが含まれていなかった。その結果、少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステルと二フッ化リン酸リチウムとを同時に含有する実施例1〜10は、より優れた高温サイクル特性、高温保存性能及び低温サイクル特性を兼ね備えていた。これに対して、少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステルを含まない比較例2の低温特性は比較的に良好であったものの、高温特性は著しく悪かった。従って、二種の不飽和基を含むリン酸エステルを添加することによって高温サイクル特性を改善できることが明白に理解できる。実施例1と、比較例1及び比較例2との試験結果によると、単に二フッ化リン酸リチウムまたは二種の不飽和基を含むリン酸エステルのみ添加された電解液と比較した場合、二種の不飽和基を含むリン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウムを含む電解液においては、二フッ化リン酸リチウムの低温特性の向上を維持できただけではなく、二種の不飽和基を含むリン酸エステルは高温特性が改善された効果も有しており、ひいては、これら2つの相乗効果により、電解液の高温特性が、上記リン酸エステル単独の添加と比較してさらに改善された。
【0062】
実施例1〜10と、比較例3とを比較した場合、実施例1〜10の非水電解液には、同時に少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウムが添加されたが、比較例3の非水電解液には、飽和リン酸エステルのみが添加された。その結果、同時に少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウムが添加された実施例1〜10は、より優れた高温サイクル特性及び低温サイクル特性を備え、飽和リン酸エステルのみ含む比較例3の低温特性は比較的良好ではあったものの、高温特性が悪かったことから見ると、飽和リン酸エステルの添加がもたらす高温サイクル特性の改善効果は限定的であった。
【0063】
実施例1〜10と、比較例4とを比較した場合、実施例1〜10の非水電解液には、同時に少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウムが添加された一方、比較例4の非水電解液には、一つの不飽和基を含むリン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウムが添加された。その結果、同時に少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステル及び二フッ化リン酸リチウムが添加された実施例1〜10は、より優れた高温サイクル特性及び低温サイクル特性を備え、一つの不飽和基を含むリン酸エステルのみが含まれた比較例4の低温特性は比較的には良好であったものの、高温特性が悪かったことから、高温サイクル特性を向上させるには、リン酸エステルに二種の不飽和基が存在することが必要であることが示唆されている。
【0064】
本発明の実施例1〜10によれば、少なくとも二種の不飽和基を含むリン酸エステルと二フッ化リン酸リチウムとを同時に含む非水電解液を用いて製造されたリチウムイオン電池において、良好な高温特性、小さい抵抗、および、優れた高温度サイクル特性を確認することができた。
【0065】
上述した内容は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の精神及び原則範囲内で限り、いかなる修正、同等置換及び改良などのすべては本発明の保護範囲内に含まれるべきである。