(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799096
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】シスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20201130BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
A61K8/46
A61Q5/12
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-23530(P2019-23530)
(22)【出願日】2019年2月13日
(65)【公開番号】特開2020-111560(P2020-111560A)
(43)【公開日】2020年7月27日
【審査請求日】2019年2月19日
(31)【優先権主張番号】10-2019-0001895
(32)【優先日】2019年1月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519050598
【氏名又は名称】サムイン ケミカル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ソン チョル
【審査官】
塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2004/062633(WO,A1)
【文献】
特開2018−076278(JP,A)
【文献】
特開2014−005239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シスタミン誘導体を含むことを特徴とするシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物であって、
前記シスタミン誘導体は、シスタミンジマレアート、シスタミンジカルボシステイネートまたはシスタミンジグルタメートの中から選択されたいずれか一つが使用されることを特徴とする、シスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物。
【請求項2】
前記シスタミンジマレアートはトリートメント組成物全体含量中に5ないし15重量%が含まれており、シスタミンジカルボシステイネートは25ないし35重量%が、シスタミンジグルタメートは25ないし35重量%が含まれることを特徴とする、請求項1記載のシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物。
【請求項3】
前記シスタミン誘導体以外にポリクォータニウム−10、水溶性シリコーン、フェノキシエタノール、香料及び精製水を更に含むことを特徴とする、請求項2記載のシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物に関するものであって、更に詳細には、頻繁なカラーリング、ブリーチ及びパーマ施術に因り損傷した毛髪のシスチン結合物質を付与することで毛髪の損傷を防ぐことができ、毛髪の内部繊維組職を強化して健康な毛髪で回復させることができるシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人類にとって健康と美を保つ事は、自分自身を満足させると同時に他人に自身を誇示する手段でもある。生活に余裕ができるにつれ、人々は健康になり美しくなる事に多くの努力と時間を惜しみなく投資し、文化水準が向上するにつれ、顔の化粧に劣らず頭髪や身体全般の美容も重要であると考えるようになって来た。
【0003】
しかし、このような美容への強い関心は、パーマ、ヘアードライヤー、カラーリング、マニキュアコーティング等の過剰な毛髪美容施術へとつながっており、これらに因る毛髪及び皮膚の物理的、化学的損傷などといった逆効果も引き起こしている。
【0004】
最近、ブリーチ、カラーリング、ホットパーマが流行するにつれ、損傷毛髪が急激に増えているが、このような毛髪はいったん損傷すると回復が不可能となる。市販されているヘアーエッセンス、ヘアートリートメントがあたかも損傷毛髪の回復を可能とするかのように宣伝されているが、シリコーン、界面活性剤を用いた製品であり、消費者が一時的に回復したかのように感じるに過ぎない。
【0005】
また、シャンプーで洗髪する場合、頭皮と毛髪に自然に存在すべき栄養成分、皮脂成分、保湿成分等がすべて流されてしまいやすく、頭皮と毛髪が乾燥してパサつき、ひどくなると痒みを誘発するといった副作用を引き起こすことから、これを補う必要がある。
【0006】
一般的に毛髪はケラチンというタンパク質から成り、その中においても具体的に毛髪は、18種のアミノ酸のうち、システインを14〜18%含むケラチンタンパク質である。これらのケラチンタンパク質は、水または中性溶媒のような穏やかな条件下では非常に強いタンパク質の一種であるが、日常生活における、ブラッシング、ドライヤーの熱、カラーリング、パーマなどのような毛髪に対する物理的、化学的な処理に因り損傷しやすい。
【0007】
また、頻繁なパーマ、カラーリングなどの様々な物理的、化学的または環境的な要因により毛髪が損傷を受けると毛髪内部のタンパク質が溶出し、多孔質化することから、毛髪がパサつき、艶を失って柔らかさと柔軟効果が弱まり、摩擦力が増して扱いにくい毛髪となる。これらのことから、最近では、毛髪が切れやすくなり、または枝毛が発生するなどの問題とともに毛髪が細くなって弾力を失い、生気なく垂れさがることでボリューム感が消えてしまう問題が発生している。
【0008】
このような問題を解決すべく、洗浄時または洗浄後の毛髪の柔らかさを改善し、損傷した毛髪を回復または強化させるための毛髪用組成物に関する継続的な研究が行われて来た。その結果、強く、持続的な毛髪コンディショニング効果をもたらすための様々な方法が試みられ開発されている。
【0009】
例えば、韓国公開特許第10−2007−0038509号は、レチノイン酸のアミノ、アミノ酸またはペプチド結合体を含んで皮膚の老化にかかる現象を予防/治療する化粧剤を開示しているが、その効果は洗浄により著しく弱まるものであり、持続性に欠けるという短所がある。米国登録特許第5490980号には、毛髪、皮膚、爪などのような人体のタンパク質成分を構成するアミノ酸のうち、リシンとグルタミンの間のイソペプチド結合を形成するトランスグルタミナーゼを用いて毛髪、皮膚及び爪に有用なコンディショニング、抗菌、染料、香料等の様々な有効物質を伝達する手段として使用する方法が開示されており、日本特許公報第3567915号には、分子の中にリジン及び/またはグルタミン残基を含む分子量203以上のペプチド、トランスグルタミナーゼ及び特定化学式の1級アミン構造を有する化合物を含有する毛髪処理剤を開示している。
【0010】
しかし、前記発明において使用した酵素であるトランスグルタミナーゼは分子量が約38KDa程度の巨大分子を有する酵素であって、毛髪の表面にはその適用を容易に成し得るものの、実質的には、構造強化が必要な毛髪内部の損傷部分には適用が難しいという短所があり、その効果は非常に限定的である。
【0011】
したがって、物理的、化学的または環境的な様々な要因によって損傷を受けた毛髪を本来の健康な状態に回復させることのできる損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物に関する研究が切に求められるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1294245号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2018−0127558号公報
【特許文献3】韓国登録特許第10−1800681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、頻繁なカラーリング、ブリーチ及びパーマ施術に因り損傷した毛髪のシスチン結合物質を付与することで毛髪の損傷を防ぐことができ、毛髪の内部繊維組職を強化して健康な毛髪で回復させることができるシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物を提供することを目的とする。
【0014】
本発明が解決しようとする様々な課題は、以上において言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は、以下の記載から当業者に明確に理解され得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物は、シスタミン誘導体を含む。
【0016】
前記シスタミン誘導体には、シスタミンジマレアート、シスタミンジカルボシステイネートまたはシスタミンジグルタメートの中から選択されたいずれか一つを使用することができる。
【0017】
前記シスタミンジマレアートにはトリートメント組成物全体含量中に5ないし15重量%が含まれており、シスタミンジカルボシステイネートには25ないし35重量%が、シスタミンジグルタメートには25ないし35重量%が含まれ得る。
【0018】
前記シスタミン誘導体以外にポリクォータニウム−10、水溶性シリコーン、フェノキシエタノール、香料及び精製水を更に含み得る。
【0019】
その他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物は、頻繁なカラーリング、ブリーチ及びパーマ施術に因り損傷した毛髪のシスチン結合物質を付与することで毛髪の損傷を防ぐことができ、毛髪の内部繊維組職を強化して健康な毛髪で回復させることができる。
【0021】
本発明の技術的思想の実施例は、具体的に言及されていない様々な効果を提供し得ることが充分に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明によるシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物が損傷毛髪を回復させる原理を簡略に説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になるであろう。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態として具体化されることもある。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底して完全なものとなるようにし、当業者に本発明の思想を充分に伝達するために提供されるものである。
【0024】
本出願において使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に示さない限り、複数の表現を含む。
【0025】
特別に定義しない限り、技術的、科学的用語を含んでここで使用される全ての用語は本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願において明白に定義しない限り、理想的、または過度に形式的な意味として解釈されない。
【0026】
以下、添付された図面を参照して、本発明によるシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物について詳細に説明する。
【0027】
本発明によるシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物は、頻繁なカラーリング、ブリーチ及びパーマ施術に因り損傷した毛髪のシスチン結合物質を付与することで毛髪の損傷を防ぐことができ、毛髪の内部繊維組職を強化して健康な毛髪で回復させることができる。
【0028】
すなわち、一般的に頻繁なカラーリング、ブリーチ及びパーマ施術に因り毛髪のシスチン結合が切断されて毛髪が損傷し、損傷した毛髪にはチオール残基が増加するのであるが、本発明による損傷毛髪改善用組成物は、前記のように損傷した毛髪のシスチン結合を回復させることにより、損傷毛髪を復元することができる。
【0029】
本発明による損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物はシスタミン誘導体を含む。
【0030】
前記シスタミン誘導体には、シスタミンジマレアート、シスタミンジカルボシステイネートまたはシスタミンジグルタメートの中から選択されたいずれか一つを使用することができる。
【0031】
また、本発明において、前記シスタミンジマレアートはトリートメント組成物全体含量中に5ないし15重量%が含まれており、シスタミンジカルボシステイネートは25ないし35重量%が、シスタミンジグルタメートは25ないし35重量%が含まれ得る。
【0034】
(2) 性状:微黄色の結晶性粉末
(3) 構造式:下記の化学式2
【0036】
2. シスタミンジカルボシステイネート
【0038】
(2) 性状:微黄色または黄色の液体
(3) 構造式:下記の化学式4
【0042】
(2) 性状:微黄色または黄色の液体
(3) 構造式:下記の化学式6
【0044】
以下、本発明によるシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物に関する具体的な実験例をあげて更に詳細に説明する。
【0045】
以下に示す成分組成表及び重量比に含まれるように損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物を製造した。
【0052】
4.実験方法
健康な毛髪に前記実験例1、2及び3の重量比率で配合されたトリートメント組成物を適量塗布して10分間放置した後、微温水で洗浄してドライヤーで乾燥し、これを未処理毛髪と比較テストした。
【0055】
前記結果において、サンプル毛髪は2日ごとにシャンプー後に観察した。
【0056】
前記結果を参照すると、未処理毛髪に比べ、シスタミン誘導体を添加した場合に損傷毛髪が回復したことが確認できた。
【0057】
また、シスタミンマレアートを添加した結果からは、損傷毛髪の切断したS−S−結合がマレイン酸の二重結合に反応して回復することが確認できる。
【0058】
図1は、本発明によるシスタミン誘導体を用いた損傷毛髪回復のためのトリートメント組成物が損傷毛髪を回復させる原理を簡略に説明するための図面である。
【0059】
図1を参照すると、本発明によるシスタミン誘導体は、シスタミンの−S−S−を更に一つ付与することで毛髪の弾性及び引張強度が増し、毛髪の豊かさを感じることができた。
【0060】
また、シスタミンジカルボシステイネートとシスタミンジグルタメートはジペブチド類似物質であり、損傷毛髪のタンパク質残基と塩結合することから保湿、光沢に効果がある。
【0061】
一般的な損傷毛髪用の頭髪化粧品は、使用直後にシリコーン、界面活性剤等による一時的な効果があるだけでシャンプー後は直ちに洗い流されてしまうのであるが、本発明によるシスタミン誘導体を含むトリートメント組成物は、損傷した−S−S−結合の復元と補充されてから2〜3週程度、効果の維持が可能であった。
【0062】
以上、本発明の好ましい一実施例を説明したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を持った者であるなら、本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更することなく、別の具体的な形態として実施することができることを理解するであろう。それ故、以上において記述した一実施例は、すべての面において例示的なことであり、限定的ではないものとして理解すべきである。