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特許6799108リンパ脈管筋腫症の処置のためのラパマイシン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799108
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】リンパ脈管筋腫症の処置のためのラパマイシン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/436 20060101AFI20201130BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20201130BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20201130BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20201130BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   A61K31/436
   A61K9/14
   A61K47/26
   A61K47/36
   A61K47/18
   A61K47/34
   A61K47/10
   A61P35/00
【請求項の数】11
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2019-85325(P2019-85325)
(22)【出願日】2019年4月26日
(62)【分割の表示】特願2016-522006(P2016-522006)の分割
【原出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2019-151649(P2019-151649A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2019年5月23日
(31)【優先権主張番号】61/888,066
(32)【優先日】2013年10月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519060232
【氏名又は名称】エイアイ・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】アーマー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】メルヴィン,ローレンス・エス,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ,ジョナサン・エム
(72)【発明者】
【氏名】リチェンステイン,ヘンリ
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/137148(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/063581(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0119330(US,A1)
【文献】 NEUROHR, C. et al.,IS SIROLIMUS A THERAPEUTIC OPTION FOR PATIENTS WITH PROGRESSIVE PULMONARY LYMPHANGIOLEIOMYOMATOSIS?,RESPIRATORY RESEARCH,2011年,Vol. 12, No.66,pp. 1-7
【文献】 KRISTOF, A. S.,mTOR SIGNALING IN LYMPHANGIOLEIOMYOMATOSIS,LYMPHATIC RESEARCH AND BIOLOGY,2010年,Vol. 8, No. 1,pp. 33-42
【文献】 McCORMACK, F. X. et al.,Efficacy and safety of sirolimus in lymphangioleiomyomatosis,The New england Journal of Medicine,2011年,Vol. 364, No. 17,pp. 1595-1606
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラパマイシンのマイクロ粒子であって1から5ミクロンまでの空気力学的質量中央直径(Mass Median Aerodynamic Diameter)(MMAD)を有する前記ラパマイシンのマイクロ粒子、およびキャリヤーの粒子を含む、肺送達のための医薬乾燥粉末組成物。
【請求項2】
ラパマイシンのマイクロ粒子が、2から3ミクロンまでのMMADを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ラパマイシンが、50マイクログラムから500マイクログラムの量で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
キャリヤーが、アラビノース、グルコース、フルクトース、リボース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、デンプン、デキストラン、マンニトール、リジン、ロイシン、イソロイシン、ジパルミチルホスファチジルコリン、レシチン、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−co−グルタミン酸)、およびキシリトール、または以上のいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
キャリヤーが、2種類の異なるキャリヤー、第1キャリヤーおよび第2キャリヤーのブレンドを含むかまたはそれからなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
キャリヤーが、2種類の異なるラクトースキャリヤーのブレンドからなる、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
第1キャリヤーが約30〜100ミクロンの範囲の直径を有する粒子からなり、第2キ
ャリヤーが10ミクロン未満の直径を有する粒子からなる、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
2種類の異なるキャリヤーの比が3:97から97:3までの範囲である、請求項
記載の組成物。
【請求項9】
粉末中のキャリヤーに対するラパマイシンの割合が0.5%から2%(w/w)までで
ある、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物が、1〜12か月間または1〜36か月間の貯蔵後に、20%を超える細粒分(f
ine particle fraction)(FPF)をもち、対応する細粒量(fine particle dose)(FP
D)は10マイクログラムから2ミリグラムまでの範囲、好ましくは0.5ミリグラム未
満である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
キャリヤーが2種類の異なるラクトースキャリヤーのブレンドからなり、第1キャリヤ
ーが約30〜100ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子からなり、第2キャリヤーが
10ミクロン未満の平均直径を有する粒子からなり、2種類の異なるキャリヤーの比が約
97:3〜3:97であり、および、ラパマイシンの量が25マイクログラムから140
0マイクログラムまでである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01] 本発明は、リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis)の予防および治療のための、好ましくは吸入による肺送達のための、ラパマイシン(rapamycin)を含む方法およ
び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[02] リンパ脈管筋腫症(LAM)は、結節性硬化症複合体(tuberous sclerosis complex)(TSC)を伴なう女性の30〜40%を冒す多系統疾患、すなわち肺に異常増殖する異常な平滑筋様細胞の広範な増殖を特徴とする、しばしば致死的な疾患である。これらの細胞(LAM細胞と呼ばれる)は、肺における嚢胞の形成、および軸リンパ管(axial lymphatic)における体液に満たされた嚢胞性構造体(リンパ脈管筋腫(lymphangioleiomyomas)と呼ばれる)の形成をもたらす。その結果、肺実質の進行性嚢胞破壊、リンパ管、気
道の閉塞、および進行性呼吸不全が生じる。さらに、LAM細胞は腫瘍を形成する可能性がある。これらは血管筋脂肪腫と呼ばれる、一般に増殖の遅い過誤腫である。腎血管筋脂肪腫はLAM患者において腎不全をもたらす可能性がある。LAM細胞の異常な増殖は、少なくとも一部は結節性硬化症複合体腫瘍抑制遺伝子のひとつであるTSC1またはTSC2における不活性化変異により引き起こされる。これらのTSC遺伝子は、ラパマイシンの哺乳動物ターゲット(mammalian target of rapamycin)(mTOR)の負の調節因子
である。このmTOR経路は、細胞増殖、代謝および細胞生存にとって重要な制御ポイントである。TSC遺伝子の不活性化の結果として、LAM細胞は、mTOR、ならびにAktおよびS6Kを含めたmTOR経路の他の多数のキナーゼの構成性活性化を示す。
【0003】
[03] LAMは一般に出産適齢期の女性に起きるが、男性に起きる可能性もある。それはTSCを伴なう女性において最も優勢であるが、TSCの臨床発現をもたない者およびTSC1またはTSC2腫瘍抑制遺伝子における生殖系列変異をもたない者にも起きる可能性がある。これらの症例は散発性LAMと呼ばれる。よって、LAMは結節性硬化症複合体と関連して起きるだけでなく散発性非遺伝性形態として起きる可能性もある。
【0004】
[04] LAMは進行が遅い可能性があるが、それは最終的に呼吸不全および死に至る。症状の発現後10年で、55%の患者は呼吸困難になり、20%は酸素吸入を受け、10%は死亡する。たとえば、Johnson et al. 2004 Thorax. Survival and disease progression in UK patients with lymphangioleiomyomatosis。LAMの治療または予防用とし
て現在承認されている薬物はない。第1治療選択肢には、経口ラパマイシン(シロリムス(sirolimus),FDAが臓器拒絶の予防用および腎移植用として承認,後記を参照)の適応外使用、または経口エベロリムス(everolimus)の適応外使用が含まれる。
【0005】
[05] ラパマイシンはストレプトマイセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)により産生される大環状トリエン系抗生物質である。たとえば、U.S. Pat. No. 3,929,992を参照。ラパマイシンはmTORの阻害薬である。ラパマイシンの免疫抑制お
よび抗炎症特性は、最初は移植分野および自己免疫疾患の処置における使用を指摘した。たとえば、それはアルブミンのアレルギー性攻撃に応答した体液性(IgE様)抗体の形成を阻止し、ネズミT細胞活性化を阻害し、組織不適合げっ歯類において移植臓器の生存時間を延長することが示された。自己免疫疾患のげっ歯類モデルにおいて、それは全身性エリテマトーデス、コラーゲン誘導型関節炎、自己免疫性I型糖尿病、自己免疫性心筋炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎、移植片対宿主疾患、および自己免疫性網膜ぶどう膜炎に関連する免疫仲介事象を抑制する。
【0006】
[06] ラパマイシンはそれの一般薬物名シロリムスによっても呼ばれる(たとえば、ANDA #201578参照,Dr.Reddys Labs Ltd.による,2013年5月28日承認)。シロリムスはFDAにより承認され、米国で臓器拒絶の予防および腎移植用として商品名RAPAMUNEでWyeth(Pfizer)により市販されている。それは経口液剤(1mg/ml)または錠剤(多数の濃度)の形態である。Wyeth(Pfizer)はまた、誘導体を商品名TORISEL(テムシロリムス(temsirolimus))で進行性腎細胞癌の処置用として市販しており、それは静脈内投与される。テムシロリムスはシロリムスの水溶性プロドラッグである。Johnson & Johnsonの部門であるCordisは、シロリムス溶出型冠動脈ステントを商品名CYPHERで市販している。これに関して、シロリムスの抗増殖効果はバルーン血管形成術後の冠動脈における再狭窄を阻止する。US 2010/0305150, Berg et al. (Novartis)には、神
経皮膚障害、たとえばTSCにより仲介されるもの(結節硬化症を含む)および神経線維腫症1型(NF−1)により仲介されるものを治療および予防するためのラパマイシン誘導体が記載されている。ラパマイシンおよびそれの誘導体は、さらにNishimura, T. et al. (2001) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 163:498-502、ならびにU.S. Pat. No. 6,384,046およびUS 6,258,823に記載されている。
【0007】
[07] ラパマイシンの臨床承認された概念での使用には幾つか有害作用が知られており、それには肺毒性(RAPAMUNEのラベルには、それが肺移植患者には適用されないと警告してある)、癌リスク増大、および糖尿病様症状が含まれる。ラパマイシンは肺毒性の発生と関連し、それは通常は間質性肺炎の形態であるが、肺胞蛋白症も記載がある。たとえば、Nocera et al., Sirolimus Therapy in Liver Transplant Patients: An Initial Experience at a Single Center, Transplantation Proceedings (2008), 40(6), 1950-1952; Perez et al., Interstitial Pneumonitis Associated With Sirolimus in Liver Transplantation: A Case Report, Transplantation Proceedings (2007), 39(10), 3498-3499; Hashemi-Sadraei et al., Sirolimus-associated diffuse alveolar hemorrhage in a renal transplant recipient on long-term anticoagulation, Clinical Nephrology (2007), 68(4), 238-244; Pedroso et al., Pulmonary alveolar proteinosis - a rare pulmonary toxicity of sirolimus, Transplant International (2007), 20(3), 291-296を参照。ラパマイシン誘導による肺毒性の原因は分かっていない。
【0008】
[08] 重篤な呼吸器有害事象も、抗癌療法として長期投与下で循環血濃度1ナノグラム/mLを超える範囲を生じるシロリムス使用と関連づけられている。たとえば、シロリムスのプロドラッグであるテムシロリムスの肺毒性は、2009年の“間質性肺疾患は腎癌患者におけるテムシロリムス処置の稀な副作用である”と明記した報告に記載された。Aparicio et al., Clinical & Translational Oncology (2009), 11(8), 499-510; Vahid et al., Pulmonary complications of novel antineoplastic agents for solid tumors, Chest (2008) 133:528-538。さらに、2012のメタ解析は、テムシロリムスまたはエベロリムスを投与された癌患者の10%が、クオリティ・オブ・ライフの悪化およびある症例では療法の中断を伴なう軽度の毒性を経験する可能性があると結論した。参照:Iacovelli et al., Incidence and risk of pulmonary toxicity in patients treated with mTOR inhibitors for malignancy. A meta-analysis of published trials, Acta oncologica (2012), 51(7), 873-879。さらに、ラットにおいてテムシロリムスについて実施され
た安全性薬理試験は、呼吸数減少ならびに肺胞マクロファージ浸潤および肺の炎症を示した(参照:Pharmacology Review for temsirolimus NDA 22088,US FDAウェブサイトから
入手できる)。これらの有害作用は、全身投与の結果として循環血体積における薬物濃度
が比較的高い条件下でみられた。
【0009】
[09] 経口投与ラパマイシンは、肺に対するそれの毒性の可能性にもかかわらず、潜在的LAM療法としての予備的な有望性を示した。参照:New Eng. J. Medicine 364:1595-
1606 (2011)、およびHammes and Krymskaya, Horm. Cancer 4(2):70-7 (2013)による概説;同様にAndo et al. Respir Investig. 51(3):175-8 (2013) “The efficacy and safety of low-dose sirolims for treatment of lymphangioleiomyomatosis”も参照。しかし、臨床証拠は、これに関するラパマイシンの限界、ならびにLAMの処置のための改善された療法および療法計画の必要性をも指摘する。ラパマイシンの主な限界は、その薬物を長期間使用する必要があること、そして最も重要なことはラパマイシンが他の有害事象(肺毒性の可能性に加えて)と関連することである。たとえば、20人の患者で完了した24か月間の非ランダム化オープンラベル試験において、経口投与シロリムスをそれが血管筋脂肪腫を軽減する能力について検査した;それは、TSCまたは散発性LAMを伴なう患者において腎不全をもたらす可能性がある増殖の遅い過誤腫である。Bissler et al. (2008) Sirolimus for angiomyolipoma in tuberous sclerosis complex or lymphangioleiomyomatosis. N Engl J Med 358(2):140-151。その試験において、血管筋脂肪腫は処置
期間中に“ある程度”退縮したが、療法停止後に増大する傾向があった。シロリムスに関連する重篤な有害事象には、下痢、肺炎、腎盂腎炎、蜂巣炎(cellulitis)(動物咬創から)、口内炎、および腎血管筋脂肪腫の出血が含まれていた。投薬は、腎移植患者における拒絶を阻止する血清中目標レベルを基準とし、1ng/mlから15ng/ml(血中シロリムスレベル)の範囲であった。他の類似の試験(第2相,非ランダム化オープンラベル試験)において、TSCまたは散発性LAMを伴なう16人の患者が経口シロリムスで最大2年間処置された。Davies et al (2011) Sirolimus therapy for angiomyolipoma in tuberous sclerosis and sporadic lymphangioleiomyomatosis: a phase 2 trial. Clin Cancer Res 17(12):4071-4081。その試験において、シロリムスの定常状態血中レベル
は3〜10ng/mlであり、半数を超える患者が3〜6ng/mlの維持レベルを維持した。シロリムス処置は腎血管筋脂肪腫の持続的退縮を示した。しかし、腫瘍応答は療法継続で維持されたけれども、処置2年目にはそれ以上の縮小はほとんど起きなかった。シロリムスに関連する有害事象には、口腔粘膜炎、呼吸器感染症、および蛋白尿症が含まれていた。進行が記録されている10人のLAM患者の他の試験において、3人の患者で重篤な再発性の下気道感染症またはシロリムス誘導性間質性肺炎のためシロリムスは停止された。Neurohr et al., Is sirolimus a therapeutic option for patients with progressive pulmonary lymphangioleiomyomatosis ? Respiratory Research (2011), 12:66。
その試験は、“シロリムスは急激に衰退しつつあるLAM患者における療法選択肢とみなしてもよいかもしれない”と結論づけたが“投与は、ある患者においては処置停止を要求する重篤な呼吸器有害事象と関連する可能性がある”、また“肺移植前にはシロリムス中断が必須である”と指摘した。最後に、患者89人の12か月ランダム化二重盲検臨床試験(46人の患者はLAMを伴なう)を実施し、その後、12か月間の観察期間をおいた。 McCormack et al (2011) Efficacy and safety of sirolimus in lymphangioleiomyomatosis. N Engl J Med 364:1595-1606。患者は血中シロリムスレベル5〜15ng/mlに維持された。この試験において、シロリムス処置は肺機能を安定化し、血清VEGF−Dレベルを低下させ、症状の軽減およびクオリティ・オブ・ライフの改善を伴なった。しかし、肺機能の安定化には継続処置が必要であった。重要なことに、これらの臨床試験はすべてシロリムスの経口配合物を用いていた。これは、前記に引用した文献により例示されるように、ラパマイシンの周知の肺毒性からみて肺に直接送達するためのラパマイシンのエアロゾル配合物は成功の可能性がきわめて少ないと考えられていたからである。
【0010】
[10] 2013年に公開されたLehrerによる米国特許出願は、“[ラ]パマイシン(シロリムス)は、十分な記載のあるそれの肺毒性、間質性肺炎のため、安全に吸入することができない”という見解を反映している。参照:US 20130004436, Chhajed et al.
(2006) 73:367-374を引用。Lehrer特許出願は、肺癌およびリンパ脈管筋腫症を治療および予防するための組成物および方法に関する。それ以前の幾つかの刊行物、たとえばU.S. Patent No. 5,080,899,Sturm et al. (1991年2月出願)およびUS Patent No. 5,635,161 (1995年6月出願)は、吸入による送達のために配合されたラパマイシンの一般的記
載を若干含むが、そのような一般的記載は何ら証拠により支持されておらず、またラパマイシン誘導による肺毒性の発生が多数報告される前になされたものである;肺毒性は、前記で考察した報文によって証明されるように、ラパマイシンが移植状況における免疫抑制薬として、また抗癌状況における細胞増殖阻害薬として、より広範に適用された後に現われた。
【0011】
[11] WO 2011/163600には、ラパマイシンと同様にマクロライド系ラクトンであるタクロリムス(tacrolimus)のエアロゾル配合物が記載されている。しかし、タクロリムスはシロリムスとは別個の化学物質であり、タクロリムスの分子ターゲットはカルシニューリン(calcineurin)であってmTORではなく、ラパマイシンと異なりタクロリムスは肺毒性
を示さず、実際に肺移植後の拒絶を阻止するために適用されている。
【0012】
[12] ラパマイシン誘導による肺毒性の可能性が広範に認識されていたことからみて、LAMの処置におけるラパマイシンを含む肺送達用の医薬組成物はヒトにおいて実行可能な選択肢であるとはみなされていなかった。
【0013】
[13] 薬物を吸入により肺へ送達するのは、下記を含めた多様な状態を処置するための重要な手段である:一般的局所状態、たとえば嚢胞性線維症、肺炎、気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患、ある種の全身性状態:ホルモン置換、疼痛管理、免疫不全、赤血球生成、糖尿病、肺癌などを含む。Yi et al. J. Aerosol Med. Pulm. Drug Deliv. 23:181-7 (2010)による総説を参照。吸入による肺癌の処置のために適用される薬剤には、シスプラ
チン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、タキサン(taxane)類およびアントラサイクリン(anthracycline)類が含まれる。たとえば、U.S. Pat. No. 6,419,900; 6,419,901; 6,451,784; 6,793,912; ならびにU.S. Patent Application Publication No. US 2003/0059375 および US 2004/0039047を参照。さらに、吸入により投与されるドキソルビシ
ン(doxorubicin)およびテモゾロミド(temozolomide)が肺転移の処置に示唆されている。
たとえば、U.S. Pat. No. 7,288,243およびU.S. Patent Application Publication No. 2008/0008662を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】U.S. Pat. No. 3,929,992
【特許文献2】US 2010/0305150
【特許文献3】U.S. Pat. No. 6,384,046
【特許文献4】US 6,258,823
【特許文献5】US 20130004436
【特許文献6】U.S. Patent No. 5,080,899
【特許文献7】US Patent No. 5,635,161
【特許文献8】WO 2011/163600
【特許文献9】U.S. Pat. No. 6,419,900
【特許文献10】U.S. Pat. No. 6,419,901
【特許文献11】U.S. Pat. No. 6,451,784
【特許文献12】U.S. Pat. No. 6,793,912
【特許文献13】U.S. Patent Application Publication No. US 2003/0059375
【特許文献14】US 2004/0039047
【特許文献15】U.S. Pat. No. 7,288,243
【特許文献16】U.S. Patent Application Publication No. 2008/0008662
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Johnson et al. 2004 Thorax. Survival and disease progression in UK patients with lymphangioleiomyomatosis
【非特許文献2】Nishimura, T. et al. (2001) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 163:498-502
【非特許文献3】Nocera et al., Sirolimus Therapy in Liver Transplant Patients: An Initial Experience at a Single Center, Transplantation Proceedings (2008), 40(6), 1950-1952
【非特許文献4】Perez et al., Interstitial Pneumonitis Associated With Sirolimus in Liver Transplantation: A Case Report, Transplantation Proceedings (2007), 39(10), 3498-3499
【非特許文献5】Hashemi-Sadraei et al., Sirolimus-associated diffuse alveolar hemorrhage in a renal transplant recipient on long-term anticoagulation, Clinical Nephrology (2007), 68(4), 238-244
【非特許文献6】Pedroso et al., Pulmonary alveolar proteinosis - a rare pulmonary toxicity of sirolimus, Transplant International (2007), 20(3), 291-296
【非特許文献7】Aparicio et al., Clinical & Translational Oncology (2009), 11(8), 499-510
【非特許文献8】Vahid et al., Pulmonary complications of novel antineoplastic agents for solid tumors, Chest (2008) 133:528-538
【非特許文献9】Iacovelli et al., Incidence and risk of pulmonary toxicity in patients treated with mTOR inhibitors for malignancy. A meta-analysis of published trials, Acta oncologica (2012), 51(7), 873-879
【非特許文献10】Pharmacology Review for temsirolimus NDA 22088
【非特許文献11】New Eng. J. Medicine 364:1595-1606 (2011)
【非特許文献12】Hammes and Krymskaya, Horm. Cancer 4(2):70-7 (2013)
【非特許文献13】Ando et al. Respir Investig. 51(3):175-8 (2013) “The efficacy and safety of low-dose sirolims for treatment of lymphangioleiomyomatosis”
【非特許文献14】Bissler et al. (2008) Sirolimus for angiomyolipoma in tuberous sclerosis complex or lymphangioleiomyomatosis. N Engl J Med 358(2):140-151
【非特許文献15】Davies et al (2011) Sirolimus therapy for angiomyolipoma in tuberous sclerosis and sporadic lymphangioleiomyomatosis: a phase 2 trial. Clin Cancer Res 17(12):4071-4081
【非特許文献16】Neurohr et al., Is sirolimus a therapeutic option for patients with progressive pulmonary lymphangioleiomyomatosis ? Respiratory Research (2011), 12:66
【非特許文献17】McCormack et al (2011) Efficacy and safety of sirolimus in lymphangioleiomyomatosis. N Engl J Med 364:1595-1606
【非特許文献18】Chhajed et al. (2006) 73:367-374
【非特許文献19】Yi et al. J. Aerosol Med. Pulm. Drug Deliv. 23:181-7 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
[14] 本発明は、一部は、動物試験においてラパマイシンを肺へ直接送達した際のそれの意外な薬物動態の知見に基づく。予想外に、肺への直接投与は血液と比較して肺組織においてより高いラパマイシン濃度を生じた。ラパマイシンのような高脂溶性小分子薬物は一般に肺から循環系中へ速やかに拡散し、次いで分布体積内で均一に再分布するので、これは予想されたものと対照的である。さらに、薬物は療法効果をもつのに十分なほど高い濃度で肺に存続した。最終的に、肺への直接投与は、ラパマイシンと肺毒性(特に間質性肺炎の形態のもの)の関連からみた気道における何らかの急性毒性または慢性毒性、他の予想外の結果を生じることもなかった。
【0017】
[15] 本明細書に記載するように、TORシグナル伝達経路により罹患する疾患および障害の有効な局所的な治療および予防を提供するために、好ましくは吸入により肺へ直接送達するラパマイシン、それのプロドラッグ、誘導体およびアナログの医薬配合物が求められている。そのような局所処置は、薬物の全身送達から生じる高濃度の血中ラパマイシンに関連するものを含む毒性および有害事象を低減または排除する。本発明はこの要望に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
[16] 本発明は肺へ直接投与するためのラパマイシン組成物を提供し、それは肺組織に対して低毒性または無毒性で肺においてmTORシグナル伝達を阻害するのに有効な量のラパマイシンを供給し、約1ng/ml未満の血中ラパマイシンレベルを生じる。本発明の組成物は、特にそれらの長期または持続的な使用に関して、1ng/ml〜15ng/mlの範囲の持続的血中濃度を生じる現在のラパマイシン投与形態と比較して改善された安全性プロファイルを示すと予期される。これが予期されるのは、本発明組成物の肺毒性が低く、それと併せて血中ラパマイシンレベルがきわめて低いことからみてラパマイシンへの全身曝露による有害事象が無いかまたは実質的により少ないという確率によるものである。したがって、本発明の組成物は、胃腸管経由または静脈内投与される既存の投与形態と比較して、より高い療法指数を示すと予期される。
【0019】
[17] 本発明は、肺送達、好ましくは吸入による送達のために設計されたラパマイシンを含む医薬組成物を用いてLAMを治療および予防するための組成物および方法に関する。1態様において、本発明はそのような処置を必要とするヒト対象においてLAMを治療および予防するための方法を提供し、本方法はラパマイシン(シロリムスとも呼ばれる)、またはそのプロドラッグもしくは誘導体を含むエアロゾル化可能な(aerosolizable)組
成物を対象に投与することを含む。本発明の組成物は単独で、またはLAMの処置のための1種類以上の追加の療法もしくは療法計画との組み合わせで使用できる。さらに、本明細書中に提供する組成物は、組成物中の唯一の療法薬としてラパマイシンまたはそのプロドラッグもしくは誘導体を含むことができ、あるいはラパマイシンを1種類以上の追加療法薬と共に単一剤形中に配合することができる。
【0020】
[18] したがって、本発明は、ヒト対象においてリンパ脈管筋腫症を処置する際に使用するための、ある量の薬物のマイクロ粒子、キャリヤーの粒子、および1種類以上の任意選択的な賦形剤を含み、薬物がラパマイシンまたはそのプロドラッグもしくは誘導体から選択される、肺送達のための医薬乾燥粉末組成物を提供する。
【0021】
[19] 1態様において、組成物中の薬物の量は50マイクログラムから500マイクログラムまで、50マイクログラムから250マイクログラムまで、または50マイクログラムから150マイクログラムまでである。
【0022】
[20] 1態様において、薬物はラパマイシンである。1態様において、薬物はエベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス(ridaforolimus)、ウミロリムス(umirolimus)お
よびゾタロリムス(zotarolimus)からなる群から選択される。
【0023】
[21] 1態様において、マイクロ粒子は、約0.1から10ミクロンまでの平均直径または約1から5ミクロンまでの平均直径をもつ薬物粒子からなる。1態様において、粒子は、約1.5〜4ミクロン、約1.5〜3.5ミクロン、または約2〜3ミクロンの平均直径をもつ。
【0024】
[22] キャリヤーは、アラビノース、グルコース、フルクトース、リボース、マンノー
ス、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、デンプン、デキストラン、マンニトール、リジン、ロイシン、イソロイシン、ジパルミチルホスファチジルコリン、レシチン、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−co−グルタミン酸)、およびキシリトール、ならびに以上のいずれかの混合物からなる群から選択できる。1態様において、キャリヤーは2種類の異なるキャリヤーのブレンドを含むかまたはそれからなる。キャリヤーの粒子は、 から200ミクロンまで、30から100ミクロンまでの範囲、または10ミクロン未満の直径をもつことができる。キャリヤーが2種類の異なるキャリヤーのブレンドからなる場合、各キャリヤーは平均粒子直径として測定して異なるサイズ範囲の粒子からなる。1態様において、キャリヤーは2種類の異なるキャリヤー、第1キャリヤーおよび第2キャリヤーのブレンドからなる。第1キャリヤーは約30〜100ミクロンの範囲の直径を有する粒子からなり、第2キャリヤーは10ミクロン未満の直径を有する粒子からなる。2種類の異なるキャリヤーの比は3:97から97:3までの範囲である。1態様において、キャリヤーは2種類の異なるラクトースキャリヤーのブレンドからなる。
【0025】
[23] 粉末中のキャリヤーに対する薬物の割合は0.5%から2%(w/w)までであってもよい。1態様において、粉末中のキャリヤーに対する薬物の割合は1%(w/w)である。
【0026】
[24] 組成物中の薬物の量は、組成物の総重量を基準として0.5%から20%(w/w)までである。1態様において、薬物の量は約1%から2%(w/w)までである。
[25] 1態様において、1種類以上の任意選択的な賦形剤が組成物中に存在し、リン脂質および脂肪酸金属塩ならびに以上の混合物から選択される。1態様において、リン脂質はジパルミチルホスファチジルコリンおよびレシチンから選択される。1態様において、脂肪酸金属塩はステアリン酸マグネシウムである。1態様において、賦形剤または賦形剤類は、大型キャリヤー粒子に対する賦形剤の重量割合0.01%から0.5%までの範囲でキャリヤー粒子上にコートされている。
【0027】
[26] 1態様において、組成物中の薬物の量は、mTORC1の生物活性を阻害するのに有効な量である。1態様において、薬物の量は、S6タンパク質のリン酸化を阻害するのに有効な量である。1態様において、薬物の量は、肺に送達される呼吸可能用量(respirable dose)5マイクログラムから400マイクログラムを達成するのに有効な量である。1態様において、呼吸可能用量は約10、約50、約100または約250マイクログラムである。1態様において、薬物の量は、対象において5ng/ml未満、2ng/ml未満、1ng/ml未満、0.5ng/ml未満、または0.25ng/ml未満の血中トラフレベル(blood trough level)を生じるのに有効な量である。1態様において、血中トラフレベルは1ng/ml未満、0.5ng/ml未満、または0.25ng/ml未満である。1態様において、薬物の量は、肺組織において1ng/gから1マイクログラム(ug)/gまでの薬物濃度を生じるのに有効な量である。1態様において、肺組織における薬物の濃度は、約10ng/g、約25ng/g、約50ng/g、約100ng/g、または約200ng/gである。1態様において、薬物は、好ましくはヒトに投与した後、肺において約1ng/g、約10ng/g、約25ng/g、約50ng/g、または約100ng/gの療法レベルで、ある期間存続し、その期間は約6〜10時間、約6〜14時間、約6〜24時間、および約6〜72時間から選択される。1態様において、その期間は約10時間、約14時間、約24時間、および約72時間から選択される。
【0028】
[27] 1態様において、組成物は、1〜12か月間または1〜36か月間の貯蔵後に、20%を超える細粒分(fine particle fraction)(FPF)をもち、対応する細粒量(fine particle dose)(FPD)は10マイクログラムから2ミリグラムまでの範囲、好ましくは0.5ミリグラム未満である。1態様において、送達量(delivered dose)(DD)または放出量(emitted dose)(ED)と呼ばれる、患者に送達される量は、25マイクログラムから2.5ミリグラムまでの範囲、好ましくは0.5ミリグラム未満である。
【0029】
[28] 1態様において、組成物はさらに1種類以上の追加療法薬を含む。1種類以上の追加療法薬は、エストロゲンアンタゴニスト(たとえば、レトロゾール(letrozole)、タ
モキシフェン(tamoxifen))、スタチン(たとえば、シンバスタチン(simvastatin))、src阻害薬(たとえば、サラカチニブ(saracatinib))、およびVEGF−R阻害薬(た
とえば、パゾパニブ(pazopanib))から選択される。1態様において、1種類以上の追加
療法薬はレトロゾール、タモキシフェン、シンバスタチン、サラカチニブ、パゾパニブ、およびイマチニブ(imatinib)から選択される。
【0030】
[29] 1態様において、組成物は、努力肺活量(forced vital capacity)(FVC)お
よび努力呼気量(forced expiratory volume)(FEV1)により測定した対象の肺機能を改善するのに有効な量の薬物を送達する。1態様において、組成物は、放射線検査により検出できる規模または量の胸膜滲出液を低減するのに有効な用量の薬物を送達する。
【0031】
[30] 1態様において、組成物を1日1回投与に適合させる。
[31] 1態様において、組成物は、薬物の水性懸濁液を調製し、その薬物懸濁液にマイクロフルイダイゼーションを施し、得られた粒子を噴霧乾燥して乾燥粉末を形成する工程を含む、湿式研磨法(wet polishing process)により製造される。
【0032】
[32] 1態様において、薬物はラパマイシンであり、キャリヤーは2種類の異なるラクトースキャリヤーのブレンドからなり、第1キャリヤーは約30〜100ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子からなり、第2キャリヤーは10ミクロン未満の平均直径を有する粒子からなり、2種類の異なるキャリヤーの比は約97:3〜3:97であり、ラパマイシンの量は25マイクログラムから1400マイクログラムまでである。
【0033】
[33] 本発明はまた、請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物を含み、薬物の量が約15マイクログラムから2500マイクログラムまで、25マイクログラムから250マイクログラムまで、50マイクログラムから150マイクログラムまでである、リンパ脈管筋腫症を処置するための単位剤形を提供する。1態様において、薬物の量は約50マイクログラムから250マイクログラムまでである。1態様において、剤形はドライパウダーインヘラーデバイス中に使用するのに適したカプセルである。1態様において、カプセルは1mgから100mgまで、または10mgから40mgまでの粉末を収容している。カプセルは、DPIデバイス中に使用するのに適したゼラチン、プラスチック、ポリマーまたはセルロース系のカプセルであり、あるいはホイル/ホイルまたはホイル/プラスチックブリスターの形態であってもよい。
【0034】
[34] 本発明はまた、本明細書に記載する組成物または単位剤形、および使用のための指示を含む、医薬パッケージまたはキットを提供する。
[35] 本発明はまた、本明細書に記載する組成物または単位剤形を収容したリザーバーを含む、乾燥粉末送達デバイスを提供する。リザーバーはデバイス内の一体チャンバー、カプセルまたはブリスターであってもよい。1態様において、デバイスは、Plastiape(登録商標) RS01 Model 7、Plastiape(登録商標) RS00 Model 8、XCaps(登録商標)、Handihaler(登録商標)、Flowcaps(登録商標)、TwinCaps(登録商標)、およびAerolizer(登録商標)から選択される。
【0035】
[36] 本発明はまた、そのような処置を必要とするヒト対象においてリンパ脈管筋腫症を処置するための方法であって、本明細書に記載する組成物または単位剤形を対象に吸入
により投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1:マウス血液中のラパマイシン10.6ng/mL(上)および内部標準(下)のLC−MS/MSクロマトグラム。
図2図2:マウス肺ホモジェネート中のラパマイシン10.6ng/mL(上)および内部標準(下)の代表的クロマトグラム。
図3図3:マウス血液中のラパマイシンについての検量曲線。
図4図4:マウス肺ホモジェネート中のラパマイシンについての検量曲線。
図5図5:ラパマイシンをOPAにより投与したマウス2−07からの血液中のラパマイシン(上)および内部標準(下)の代表的クロマトグラム。
図6図6:ラパマイシンをOPAにより投与したマウス2−07からの肺ホモジェネート中のラパマイシン(上)および内部標準(下)の代表的クロマトグラム。
図7図7:ラパマイシンのOPAおよび経口投与後のマウス肺におけるS6リン酸化。
図8図8:1日1回反復肺投与についての予測ラパマイシン血中濃度。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[37] 本発明は、そのような処置を必要とするヒト対象においてLAMを治療および予防するための方法および組成物を提供する。そのような処置を必要とするヒト対象は、LAMを伴なうと診断されている者である。1態様において、ヒト対象は女性である。1態様において、ヒト対象は男性である。1態様において、ヒト対象は結節性硬化症複合体を伴なうと診断されている。1態様において、ヒト対象は散発性LAMを伴なうと診断されている。1態様において、本方法は、適切なキャリヤー中のラパマイシン、および所望により1種類以上の添加剤を含む組成物を、吸入により対象に投与することを含む。用語“ラパマイシン”は、この開示内容全体を通して、ラパマイシンそのもの(シロリムスとも呼ばれる)ならびにそのプロドラッグ(たとえば、テムシロリムス)および誘導体を表わすために総称として用いられる。ラパマイシンの誘導体には、構造的にラパマイシンに類似する化合物、同じ化合物クラスの化合物、ラパマイシンアナログである化合物、またはラパマイシンもしくはその誘導体の医薬的に許容できる塩類である化合物が含まれる。ラパマイシン、それのプロドラッグ、および誘導体のさらなる記載および例を以下のセクションに提示する。
【0038】
[38] 本明細書に記載する組成物は、ラパマイシンまたはそのプロドラッグもしくは誘導体(“薬物”と総称する)を含有する呼吸可能な粒子を発生するのに適したエアロゾル化可能な組成物である。1態様において、薬物はシロリムス、エベロリムスおよびテムシロリムスから選択される。1態様において、薬物はシロリムスである。組成物は、薬物、キャリヤー、および所望により1種類以上の添加剤を含むことができる。組成物は、後記に“吸入用組成物”と題するセクションに詳細に記載するように、1種類以上の医薬的に許容できる噴射剤およびキャリヤーの水溶液、乾燥粉末、または混合物であってもよい。
【0039】
[39] 本発明はまた、そのような処置を必要とするヒト対象においてLAMを治療および予防するための方法であって、本発明の組成物を対象に肺投与する工程を含む方法を提供する。1態様において、ラパマイシンの投与量は、対象において0.01ng/mlから0.15ng/mlまで、0.075ng/mlから0.350ng/mlまで、0.150ng/mlから0.750ng/mlまで、0.750ng/mlから1.5ng/mlまで、または1.5ng/mlから5ng/mlまでの薬物の血中トラフレベルを達成するのに十分である。1態様において、ラパマイシンの投与量は、対象において5ng/ml未満、2ng/ml未満、1ng/ml未満、または0.5ng/ml未満の薬物の血中トラフレベルを達成するのに十分である。1態様において、ラパマイシンの投与
量は、肺組織において1ng/gから1ug/gまでの範囲のラパマイシン濃度を生じるのに十分である。好ましくは、上記のラパマイシンの療法レベルは、本明細書に記載する組成物を1日1回投与することにより達成され、好ましくは、対象に投与するラパマイシンの総日用量は、1日当たり2mg未満または1mg未満である。併用療法を含めて、肺への送達および投与のさらなる観点を、後記の“肺への投与および投薬”と題するセクションに詳細に記載する。
【0040】
[40] 本発明の方法および組成物は、そのような処置を必要とする対象、好ましくはヒト対象において、LAMを処置するのに有効である。LAMを処置するのに有効な薬物量(“有効量”または“療法有効量”)は、LAMまたはLAMの1以上の症状の進行、重症度および/または期間を低減または軽減し、LAMの進展を阻止し、LAMを退縮させ、あるいはLAMに関連する1以上の症状の発現または発症を阻止し、あるいは他の療法(たとえば、予防薬または療法薬)の、LAMの1以上の症状の重症度もしくは発症に関する、またはLAMの発現もしくは進行に関する、予防効果または療法効果を増強または改善するのに十分な、薬物(たとえば、ラパマイシン)の量を表わす。特定の態様において、LAMの処置に関する療法有効量は、LAM細胞の増殖を阻害または低減し、LAM細胞の拡散(転移)を阻害または低減し、あるいは腫瘍のサイズを縮小し、あるいはFVCまたはFEV1を改善し、あるいは放射線検査により検出できる量の胸膜滲出液を低減する、療法(たとえば、療法薬)の量を表わす。好ましい態様において、療法(たとえば、療法薬)の療法有効量は、LAM細胞の増殖または腫瘍のサイズを、対照(たとえば、リン酸緩衝化生理食塩水(“PBS”))と対比して少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減する。よって、本発明方法の概念において、用語“処置する(treat)”、“処置(treatment)”、および“処置すること(treating)”は、LAMまたは1以上のLAM関連症状の重症度、期間または進行の低減を表わす。特定の態様において、これらの用語は、LAM細胞の増殖阻害または増殖低減、LAM細胞の拡散(転移)またはLAM関連癌の発現もしくは進行の阻害または低減、あるいはLAM関連腫瘍のサイズの縮小、あるいは軸リンパ管の関与の低減を表わすことができる。
【0041】
[41] 本発明方法の1態様において、ラパマイシンは努力肺活量(FVC)および努力呼気量(FEV1)により測定した対象の肺機能を改善するのに有効な量で投与される。他の態様において、ラパマイシンは対象において放射線検査により検出できる規模または量の胸膜滲出液を低減するのに有効な用量で投与される。1態様において、ラパマイシンは下記のうち1以上を改善するのに有効な用量で投与される:機能的残気量(functional residual capacity)、血清VEGF−D、クオリティ・オブ・ライフおよび機能的動作、6分間歩行距離、および肺の一酸化炭素拡散能。1態様において、肺経路を介して送達されたラパマイシンは、肺および肺から離れた部位のLAM関連腫瘍の増殖を制限するのに有効な血中ラパマイシンレベルを達成する。1態様において、投与量のラパマイシンの有効性は上記のうちいずれか1以上により測定される。
【0042】
[42] ある態様において、本発明方法は、LAMを伴なう対象においてLAMを管理するのに有効である。これに関して、用語“管理する(manage)”、“管理すること(managing)”、および“管理(management)”は、治癒をもたらさない療法から対象が得る有益な効果を表わす。1態様において、LAMは、本発明に従ったラパマイシンによる処置中にそれの進行が遅延または停止すれば、対象において管理されている。他の態様において、LAMは、LAMに関連する1以上の症状が改善または安定化すれば(すなわち、その症状が処置コース中に悪化しなければ)、対象において管理されている。
【0043】
[43] 1態様において、本発明方法は、現在得られるLAM療法に対して“不応答性(non-responsive)”または“治療抵抗性(refractory)”である対象に向けられる。これに関して、用語“不応答性”または“治療抵抗性”は、療法に対する対象の応答がLAMに関連する1以上の症状を軽減するのに適切でないものを表わす。用語“対象(subject)”お
よび“患者(patient)”は、本発明の開示において互換性をもって用いられる。これらの
用語は、動物、好ましくは哺乳動物を表わし、これには非霊長類(たとえば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス)および霊長類(たとえば、チンパンジー、サル、たとえばカニクイザル(cynomolgous monkey)、およびヒト)、より好ましくはヒトが含まれる。好ましい態様において、対象はヒトである。
【0044】
[44] 用語“阻止する(prevent)”、“阻止すること(preventing)”および“阻止(prevention)”は、本発明方法に従って同定した1以上の化合物の投与、またはそのような化
合物と疾患または障害のための既知の療法との組合わせの投与から生じる、LAMの1以上の症状の再発、発現、進行または発症の阻止を表わす。
【0045】
[45] 本発明の医薬組成物に関して、“キャリヤー”は、たとえば送達のためにラパマイシンに配合する液体または固体材料、たとえば溶媒、希釈剤、安定剤、佐剤、賦形剤、助剤、噴射剤またはビヒクルを表わす。本発明の組成物中に使用するための医薬的に許容できるキャリヤーの例には、限定ではなく、乾燥粉末キャリヤー、たとえばラクトース、マンノース、アミノ酸、シクロデキストリン、ジパルミチルホスファチジルコリン、炭化水素およびフルオロカーボン噴射剤、圧縮ガス、無菌液体、水、緩衝塩類、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、油類、界面活性剤、懸濁化剤、炭水化物(たとえば、グルコース、ラクトース、スクロースまたはデキストラン)、抗酸化剤(たとえば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート化剤、低分子量タンパク質、またはその適切な混合物が含まれる。好ましくは、ラパマイシンの乾燥粉末エアロゾル配合物に関して、キャリヤーが存在する場合にはそれは糖類および糖アルコールからなる群から選択される。1態様において、キャリヤーが存在する場合にはそれはラクトースである。
【0046】
[46] 用語“医薬的に許容できる”は、動物、より特別にはヒトに使用するものとして連邦または州の政府の規制当局が承認したこと、または米国薬局方その他の一般的に認識されている薬局方、たとえば欧州薬局方に掲載されていることを示す。水に貧溶性または水に不溶性である薬物を可溶化するための1方法は、薬物の塩を形成すること、あるいはそれ自体がより可溶性であるプロドラッグまたはそれの水溶性塩を形成するために使用できるプロドラッグを製造することである。塩類および医薬的に許容できる塩形態を形成するための方法は当技術分野で既知であり、限定ではなく、目的とする薬物またはプロドラッグ中に存在する可能性のある酸性基または塩基性基の塩類が含まれる。塩基性である化合物は種々の無機酸および有機酸との多様な塩類を形成できる。そのような塩基性化合物の医薬的に許容できる酸付加塩を調製するために使用できる酸は、無毒性の酸付加塩、すなわち薬理学的に許容できるアニオンを含む塩類を形成するものである;下記のものが含まれるが、それらに限定されない:硫酸、クエン酸、マレイン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロネート(glucaronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、
メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))。酸性である化合物は、種々の薬理学的に許容できるカチオンとの塩
基塩を形成できる。そのような塩類の例には、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、および鉄塩が含まれる。
【0047】
[47] 1態様において、本発明の方法および組成物はラパマイシンの水溶性プロドラッグまたは誘導体、好ましくはテムシロリムスまたは関連化合物を使用する。1態様において、本発明の方法および組成物はラパマイシン(シロリムス)を使用する。
【0048】
ラパマイシン
[48] ラパマイシンはストレプトマイセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)により産生される大環状ラクトンである。それの化学(IUPAC)名は(3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントンである。
【0049】
[49] それの分子式はC5179NO13であり、それの分子量は914.172g/molである。それの構造を下記に示す。
【0050】
【化1】
【0051】
[50] ラパマイシンは白色ないし灰白色粉末であり、わずか2.6μg/mlのきわめて低い溶解度をもち、水に不溶性であるとみなされる。それはベンジルアルコール、クロロホルム、アセトンおよびアセトニトリルには易溶性である。ラパマイシンの水不溶性は、それの配合に特別な技術的問題を提起する。経口剤形としてのそれの配合に関して、それは固体分散液の形の経口液剤(WO 97/03654)およびナノサイズ(400nm未満)粒子
を含有する錠剤(US 5,989,591)として製造されてきた。しかし、これらの操作は有効物質の溶解性、したがってそれの生物学的利用能の、実質的変動をもたらす。他の配合方法は結晶性粉末を利用する。当技術分野で認識されている方法によれば、低溶解性薬物の結晶質形態からそれの非晶質形態への転移はそれの溶解性を著しく高める可能性がある。これはラパマイシンにも当てはまるが、非晶質形態は化学的にきわめて不安定である。非晶質ラパマイシン(シロリムス)を含む医薬剤形はWO 06/039237およびWO 06/094507に記載されている(シロリムスおよびモノステアリン酸グリセリルを49.25%濃度で含む改良放出配合物)。ラパマイシンの改良された安定な経口剤形がUS 8,053,444に記載されてい
る。この剤形は、シロリムスの放出速度に有害な影響を及ぼすことなくそれの安定性を高めるために、脂肪酸エステルおよびポリマー(たとえば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))を組成物中に用いている。US 8,053,444によれば、10% w/wを超える脂肪酸エステル濃度は配合物からのシロリムスの放出速度を抑え、それにより胃腸管からの吸収が不十分になるので、避けるべきである。脂肪酸エステル(グリセロールエステル)の好ましい濃度は1%〜5%または5%〜9%である。1態様において、本発明のエアロゾルラパマイシン組成物は脂肪酸エステルをポリマーとの組合わせでは含有しない。1態様において、本発明のエアロゾルラパマイシン組成物は、組成物の10%を超える、または12重量%を超える濃度の脂肪酸エステルを含有する。
【0052】
[51] 本発明の組成物および方法に使用するのに適したラパマイシンおよびその誘導体(アナログを含む)ならびにプロドラッグには、mTOR細胞シグナル伝達経路の阻害薬であり、好ましくはmTOR自体の阻害薬である、ラパマイシン(シロリムス)およびそのプロドラッグまたは誘導体が含まれる。1態様において、ラパマイシンの誘導体またはプロドラッグは、下記のものからなる群から選択されるmTOR阻害薬である:エベロリムス(everolimus)(Affinitor;RAD001)、テムシロリムス(CCI−779)、リダホロリムス(ridaforolimus)(以前はデホロリムス(deforolimus)として知られていた;AP23573)、ウミロリムス(umirolimus)(Biolimus A9)、ゾタロリムス(zotarolimus)(ABT−578)、ノボリムス(novolimus)、ミオリムス(myolimus)、AP23841、KU−0063794、INK−128、EX2044、EX3855、EX7518、AZD08055およびOSI027。さらなる誘導体が当業者に既知であり、たとえばシロリムスのシクロヘキシル環上のヒドロキシルが−ORにより置換されたO−置換誘導体が含まれる;ここで、Rは所望により、置換されたアルキル、アシルアミノアルキルまたはアミノアルキルである。
【0053】
[52] 1態様において、本発明のエアロゾル配合物および方法に使用するための化合物は、エベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス、ウミロリムスおよびゾタロリムスからなる群から選択されるラパマイシン誘導体である。エベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス、ウミロリムスおよびゾタロリムスの化学構造を下記に示す。
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
[53] 1態様において、本発明のエアロゾル配合物および方法に使用するための化合物は、KU−0063794、AZD8055、INK128およびOSI−027からなる群から選択されるmTOR阻害薬である。mTOR阻害薬 KU−0063794、AZD8055、INK128およびOSI−027の化学構造を下記に示す。
【0057】
【化4】
【0058】
[54] 本発明の方法および組成物に使用するのに特に好ましいものは、シロリムス、テムシロリムスおよびエベロリムスである。1態様において、本発明のエアロゾル配合物および方法に使用するための化合物は、シロリムス、テムシロリムスおよびエベロリムスからなる群から選択される。1態様において、化合物はシロリムスまたはエベロリムスである。
【0059】
吸入用組成物
[55] 本発明は、ラパマイシンまたはそのプロドラッグもしくは誘導体を含む、水溶液、乾燥粉末、または1種類以上の医薬的に許容できる噴射剤およびキャリヤーの混合物の形態の、吸入による投与に適合させた医薬組成物を提供する。1態様において、ラパマイシンは医薬的に許容できる化合物、材料またはマトリックスに封入される。1態様において、ラパマイシンはリポソーム配合物または非リポソーム配合物に封入される。
【0060】
[56] 本発明の組成物は、ヒト対象において吸入により肺に薬物送達するのに適した、ラパマイシンのエアロゾル化可能な配合物である。用語“エアロゾル”は、これに関して、分散した相が固体または液体粒子から構成され、分散媒体が気体である、コロイド系を意味するために用いられる。1態様において、気体は空気であり、配合物はネブライザーによる投与に適した溶液配合物、またはドライパウダーインヘラーデバイスによる投与に
適した乾燥粉末配合物である。一般に、呼吸可能な粒子または液滴は0.10〜10ミクロンの範囲の平均直径をもつであろう。粒子または液滴のサイズは、肺自体(すなわち、この場合は肺がターゲット組織である)または全身(この場合は、全身投与のための代替経路として肺が利用される)のいずれかへのターゲティッド送達を最大にするように選択される。サイズは、肺自体が療法ターゲットである場合は好ましくは約0.5〜5ミクロンの範囲であり、あるいは肺を介した全身送達については3ミクロン未満であろう。サイズは、当技術分野で既知の、たとえば米国薬局方、905および601章に記載されている方法に従って測定される。たとえば、それは空気力学的質量中央直径(Mass Median Aerodynamic Diameter)(MMAD)として測定される。1態様において、本明細書に記載する組成物を構成する粒子の平均直径(averageまたはmean diameter)はMMADとして測定される。
【0061】
[57] 1態様において、エアロゾルの分散相は液体粒子または液滴から構成される。これに関して、用語“液体粒子(liquid particle)”と“液滴(droplet)”は互換性をもって用いられる。この態様において、本発明の配合物は溶液配合物である。1態様において、エアロゾルの分散相は固体粒子から構成される。この態様において、本発明の配合物は乾燥粉末配合物である。このサイズの微細粒子は、当技術分野で既知の方法により、たとえば機械的摩砕(ミリング)、臨界未満または超臨界溶液からの沈殿、噴霧乾燥、凍結乾燥(freeze-dryingまたはlyophilization)により製造できる。
【0062】
[58] 一般に、吸入された粒子は2つのメカニズムのうちの1つにより沈着する:埋伏(impaction)、これは通常はより大きな粒子について優勢である;および沈降(sedimentation)、これは通常はより小さな粒子について優勢である。埋伏は、粒子が空気流に従わずに生体表面に衝突するほど吸入粒子の運動量(momentum)が十分に大きい場合に起きる。これに対し、沈降は、吸入された空気流と共に移動してきたきわめて小さな粒子が空気流内でのランダム拡散の結果として生体表面に衝突した際に、主に深部肺において起きる。本発明のエアロゾル配合物は、目的とする療法効果を達成するために、好ましくは埋伏(上気道に)または沈降(気胞に)のいずれかによるそれらの沈着を最大にするように適合される。
【0063】
[59] 送達デバイス、たとえばネブライザー、pMDIまたはDPIデバイスから患者へ送達される薬物の量は、送達量と呼ばれる。それは in vitro で模擬吸入法において送達デバイスから放出される薬物量を測定することにより推定できる。これは、当技術分野で既知の方法、たとえば米国および欧州薬局方、たとえばUSPの601章および905章に述べられたものに従って測定した放出量(ED)と呼ばれる。したがって、“放出量”は送達量と同等であるとみなされる。
【0064】
[60] 送達デバイスから患者の肺へ送達される薬物の量は、呼吸可能用量(respirable dose)と呼ばれる。それは in vitro でカスケードインパクター(cascade impactor)、た
とえば次世代インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)を用い、当技術分野で既知の方法、たとえば米国および欧州薬局方、たとえばUSPの601章および905章に述べられたものに従って細粒量(FPD)を測定することにより推定できる。
【0065】
[61] 送達デバイスから微細な吸入可能な(inharable)粒子状で放出される薬物の量は
、配合物の細粒分(FPF)と呼ばれる。FPFは、送達量中の潜在的に呼吸可能な(respirable)薬物の画分である。よって、FPFはED(放出量または送達量)に対するFPDの割合である。配合物のこれらの特性は当技術分野で既知の方法、たとえば米国および欧州薬局方、たとえばUSPの601章およびPharm Europaのモノグラフ2.9.18に述べられたものに従って測定される。
【0066】
[62] 1態様において、本発明のエアロゾル化可能なラパマイシン配合物は、長期貯蔵
後、たとえば1〜12か間後または1〜36か間後ですら20%を超えるFPFをもち、対応するFPDは10マイクログラムから2ミリグラムまでの範囲、好ましくは0.5ミリグラム未満である。1態様において、患者へ送達される量、送達量(DD)または放出量(ED)は、25マイクログラムから2.5ミリグラムまでの範囲、好ましくは0.5ミリグラム未満である。
【0067】
[63] ある態様において、ラパマイシンはは医薬的に許容できる化合物、材料またはマトリックスに封入される。1態様において、ラパマイシンはリポソーム配合物または非リポソーム配合物に封入される。
【0068】
水溶液組成物
[64] 1態様において、本発明のエアロゾル化可能な組成物は、ジェット、振動メッシュおよび静止メッシュを含むネブライザー、またはオリフィスネブライザーによる肺送達に適合させた、ラパマイシンの水溶液配合物である。よって、溶液配合物は前記のように約0.1ミクロンから10ミクロンまでの呼吸可能な範囲の直径のエアロゾル液滴形成を可能にするように適合される。1態様において、組成物は、水、エタノールおよび低分子量ポリオールに溶解され、所望により界面活性剤を含む、ラパマイシン(シロリムス)またはそのプロドラッグもしくは誘導体からなる霧化可能な(nebulizable)水溶液配合物で
ある。1態様において、水溶液配合物は20mPa−s未満、10mPa−s未満、または5mPa−s未満の粘度、および少なくとも45ダイン/cm、好ましくは60ダイン/cmを超える表面張力をもつ。好ましくは、配合物は5mPa−s未満の粘度および45ダイン/cmを超える表面張力をもつ。1態様において、組成物は20mPa−s未満の粘度、10mPa−s未満の粘度、または5mPa−s未満の粘度、および少なくとも45ダイン/cm、好ましくは60ダイン/cmを超える表面張力をもつ。
【0069】
[65] 1態様において、水溶液配合物は、ラパマイシン、水、エタノール、ならびにグリセロールおよびプロピレングリコールから選択される低分子量ポリオールからなる。1態様において、水溶液配合物はラパマイシン、水、ならびにグリセロールおよびプロピレングリコールから選択される低分子量ポリオールからなり、エタノールは任意選択的である。配合物は所望により非イオン界面活性剤、好ましくはPEG 100、またはポリソルベート、好ましくはポリソルベート80(“PS80”)、リン脂質、好ましくは天然リン脂質、たとえばレシチン、好ましくは水素化ダイズレシチン、および抗酸化剤または安定剤、好ましくはEDTA二ナトリウムを含有することもできる。1態様において、非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコール(PEG) PEG 100、PEG 1000、およびポリソルベート80(Tween(商標) 80、ソルビタンモノオエート、またはポリオキシエチレンソルビタンオレエートとも呼ばれる)、ならびにその混合物からなる群から選択される。
【0070】
[66] 水溶液中のラパマイシンの量は、溶液の総重量を基準として約0.001%から0.01重量%(% wtまたは% w/w)までである。1態様において、ラパマイシンは溶液中に約0.01mg/ml〜約0.1mg/mlの濃度で存在する。1態様において、ラパマイシンの量は、溶液の総重量を基準として0.001%から0.01% w/wまでである。
【0071】
[67] 1態様において、溶液中のラパマイシンの濃度は約0.01mg/mlから.1mg/mlまでであり、低分子量ポリオールの量は5% w/wから35% w/wまでであり、エタノールの量は5〜20% w/wの量で存在し、非イオン界面活性剤の量は1〜200百万分率(ppm)w/wである。好ましくは、非イオン界面活性剤の量は100ppm(w/w)未満である。任意選択的な抗酸化剤/安定剤の量はゼロから0.01% w/w未満までである。
【0072】
[68] 1態様において、本発明の水溶液配合物はポリエチレングリコール、レシチン、EDTA、ブロックコポリマー、およびシクロデキストリンからなる群から選択される1以上の添加剤または賦形剤を含有しない
【0073】
[69] 水溶液配合物は、ラパマイシンが完全に溶解した単相水溶液である。配合物中の主な補助溶媒は、エタノール、ならびにグリセロールおよびプロピレングリコールから選択される低分子量ポリオールである。ラパマイシンは懸濁液またはエマルジョン状ではなく、その溶液はコロイド溶液または分散液と記述することもできない。本発明の水溶液配合物はミセルまたはリポソームのようなコロイド構造をもたない。リン脂質が存在するとしても、それはリポソームを形成するには、またはラパマイシンを沈殿させるには少なすぎる。また、リン脂質と非イオン界面活性剤を合わせた量は、表面張力を変化させるには少なすぎる。その結果、リン脂質も非イオン界面活性剤も伝統的な意味での界面活性剤として作用するのに十分な量では存在しない。これに関して、界面活性剤という用語は、溶液の表面張力または溶液中の液体といずれかの固体薬物粒子の間の界面張力を低下させる作用をする剤を表わし、したがって界面活性剤はディタージェント、湿潤剤、乳化剤、または分散剤として作用する。これに対し、本発明の溶液配合物中の非イオン界面活性剤は、最終製品がパッケージされたポリエチレン容器への薬物の吸着をブロックする作用をし、それによって容器への吸着による薬物力価の損失を防止する。
【0074】
[70] したがって、1態様において、水溶液配合物はラパマイシンが完全に溶解した単相水溶液であり、この溶液はミセルまたはリポソームを含まず、この溶液はエマルジョン、分散液または懸濁液ではない。
【0075】
[71] 1態様において、溶液配合物は無菌である。1態様において、溶液配合物は0.2ミクロンフィルターにより無菌濾過される。1態様において、溶液配合物は熱により、たとえば高圧蒸気滅菌法により、または放射線照射により滅菌されることはない。
【0076】
[72] 1態様において、本発明は無菌水溶液配合物を充填した1以上の容器またはバイアル(これらの用語は互換性をもって用いられる)を収容したパッケージを提供する。好ましくは、容器は単位量容器である。1態様において、容器はポリマーバイアル、好ましくはポリエチレンバイアルである。1態様において、本発明の無菌水溶液配合物を充填した容器またはバイアルは、吹込み成形によりバイアルを作製し、その直後にバイアルに無菌濾過した本発明配合物を無菌条件下で充填し、続いてバイアルを充填直後にヒートシールする工程を含むプロセスにより製造される。
【0077】
[73] 1態様において、本発明の水性エアロゾル配合物は下記のものを含むかまたはそれらからなる:
ラパマイシン(またはそのプロドラッグもしくは誘導体) 約0.001%から0.01% w/wまで;
プロピレングリコール 約5%から35% w/wまで;
エタノール 約5%から20% w/wまで;
ポリソルベート80 約1ppmから200ppm w/wまで;
レシチン 約1ppmから100ppm w/wまで;および
水;
ここで、水の量は0.01〜0.1ミリグラム/ミリリットルのラパマイシン濃度を達成するのに十分なものである。所望により、安定性増強剤、たとえばEDTA二ナトリウムを、0.01% wt/wt未満のレベルで添加することができる。
【0078】
[74] 水性および他の非加圧液体系について、配合物をエアロゾル化するために多様な
ネブライザー(小容積ネブライザーを含む)を入手できる。コンプレッサー駆動式ネブライザーはジェット手法を採用し、圧縮空気を用いて液体エアロゾルを発生させる。そのようなデバイスは、たとえば下記から市販されている:Healthdyne Technologies,Inc.;Invacare,Inc.;Mountain Medical Equipment,Inc.;Pari Respiratory,Inc.;Mada Medical,Inc.;Puritan−Bennet;Schuco,Inc.,DeVilbiss Health Care,Inc.;およびHospitak,Inc.。超音波ネブライザーは、呼吸可能な液滴を発生させるのに圧電結晶の振動の形の機械的エネルギーに依存し、たとえば下記から市販されている:Omron
Healthcare,Inc.およびDeVilbiss Health Care,Inc.。
【0079】
[75] 1態様において、本発明の水性エアロゾル配合物はAerogen、Pari、PhilipsまたはOmronから入手できる振動式ネブライザーにより送達される。1態様において、本発明の水性エアロゾル配合物は、振動メッシュネブライザー、たとえばAeroneb(登録商標) Go(Aerogen,Philips Respironicsにより販売)、I−Neb(登録商標)(Philips)、もしくはE−Flow(登録商標)(Pari)、または類似のネブライザーで使用するのに適した容器にパッケージされる。1態様において、本発明の水性エアロゾル配合物は、オリフィスネブライザー、たとえばRespimat(登録商標)(Boeringher−Ingelheimから)により送達される。
【0080】
[76] よって、1態様において本発明は、ヒト対象への吸入による投与に適した霧化可能な水溶液の形態の医薬組成物を提供し、その水溶液は、ラパマイシンまたはそのプロドラッグもしくは誘導体、好ましくはシロリムス、エベロリムスおよびテムシロリムスから選択されるもの、水、エタノール、ならびに低分子量ポリオールからなる。1態様において、低分子量ポリオールはグリセロールもしくはプロピレングリコール、またはその混合物である。1態様において、組成物はさらに、PEG 100、PEG 1000およびポリソルベート80ならびにその混合物からなる群から選択される非イオン界面活性剤を含む。1態様において、配合物中の非イオン界面活性剤の量は、配合物の重量を基準として1ppmから200ppm w/wまで、好ましくは100ppm w/w未満である。1態様において、組成物はさらにリン脂質、抗酸化剤または化学的安定剤を含む。1態様において、配合物中の抗酸化剤または化学的安定剤の量は、配合物の重量を基準として0.01% w/w未満である。1態様において、抗酸化剤または化学的安定剤はEDTAである。1態様において、配合物中のラパマイシンの量は、配合物の重量を基準として0.001%から0.01% w/wまでである。
【0081】
[77] 1態様において、組成物は、ポリエチレングリコール、レシチン、EDTA、ブロックコポリマーおよびシクロデキストリンからなる群から選択される1種類以上の添加剤または賦形剤を含有しない。
【0082】
[78] 1態様において、組成物はミセルおよびリポソームから選択されるコロイド構造をもたない。
[79] 1態様において、組成物は、ジェットネブライザー、振動メッシュネブライザー、静止メッシュネブライザーおよびオリフィスネブライザーのうちのいずれか1つによる投与に適切である。
【0083】
[80] 1態様において、組成物は20mPa−s未満、好ましくは10mPa−s未満、最も好ましくは5mPa−s未満の粘度、および少なくとも45ダイン/cm、好ましくは少なくとも50ダイン/cmの表面張力をもつ。
【0084】
[81] 本発明はまた、霧化可能な水溶液の形態の本発明の医薬組成物の調製方法であって、0.2ミクロン以下のポアサイズをもつフィルターにより溶液を無菌濾過し、無菌濾液を採集容器に無菌条件下で採集することを含む方法を提供する。1態様において、調製方法はさらに、無菌濾液を容器クロージャー内へ無菌条件下で移すことを含む。1態様において、容器クロージャーは単位量ポリエチレンバイアルである。1態様において、バイアルは無菌濾液をバイアルへ移す直前に吹込み成形により製造される。1態様において、本方法はさらに、無菌濾液をバイアルに移した直後にバイアルをヒートシールする工程を含む。
【0085】
乾燥粉末組成物
[82] 1態様において、本発明のエアロゾル化可能な組成物は、微細なラパマイシン粒子またはそのプロドラッグもしくは誘導体を療法薬(“薬物”とも呼ぶ)として含む乾燥粉末であり、それらの粒子は0.1ミクロンから10ミクロンまでの直径、および約0.5〜4.5ミクロン、約1〜4ミクロン、約1〜3.5ミクロン、約1.5〜3.5ミクロン、または約2〜3ミクロンの平均直径をもつ。この乾燥粉末配合物はドライパウダーインヘラー(dry powder inhaler)(DPI)デバイスまたは加圧メータードーズインヘラー(pressurized metered dose inhaler)(pMDI)のいずれかに使用するのに適切である。乾燥粉末中のラパマイシンの量は、粉末の総重量を基準として約0.5%から20%(w/w)までである。1態様において、ラパマイシンの量は約1%または2%(w/w)である。
【0086】
[83] 1態様において、微細なラパマイシンは後記のように湿式研磨またはジェットミリングにより約0.5〜4.5ミクロン、約1〜4ミクロン、または約2〜3ミクロンの範囲の直径を生じるように製造され、これらのラパマイシン粒子をラクトースキャリヤー粒子に薬物/キャリヤーの割合0.5〜2% w/wの範囲、好ましい1%の割合でブレンドする。
【0087】
[84] 1態様において、脆いマトリックス中へ薬物粒子を軽く押し込み、それを送達デバイス(ドライパウダーインヘラー)に収容する。作動させると、送達デバイスは一部の薬物粒子をマトリックスから擦り取り(abrade)、それらを吸気に分散させて薬物粒子を気道へ送達する。あるいは、薬物粒子は送達デバイス(ドライパウダーインヘラー)のリザーバー内に収容されたさらさらした粉末であってもよい。リザーバーはデバイス内の一体チャンバーであってもよく、あるいは作動前にデバイスに挿入されるカプセル、ブリスターまたは類似の予備成形リザーバーであってもよい。作動させると、デバイスは一部の薬物粒子をリザーバーから分散させ、それらを吸気に分散させて薬物粒子を気道へ送達する。
【0088】
[85] 1態様において、乾燥粉末組成物は、薬物粒子、ならびにアラビノース、グルコース、フルクトース、リボース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、デンプン、デキストラン、マンニトール、ロイシン、リジン、イソロイシン、ジパルミチルホスファチジルコリン、レシチン、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−co−グルタミン酸)、およびキシリトール、または以上のいずれかの混合物からなる群から選択されるキャリヤーからなる。1態様において、キャリヤーはラクトース、特に1水和物の形態のものである。1態様において、乾燥粉末組成物は2種類以上のキャリヤーのブレンドを含む。
【0089】
[86] 1態様において、乾燥粉末組成物は、薬物、および少なくとも2種類の異なるキャリヤーのブレンドを含む。1態様において、キャリヤーに対する薬物の割合は約0.5%から20%(w/w)までの範囲である。1態様において、薬物粒子は0.1ミクロン
から10ミクロンまでの範囲の直径をもち、約1〜4、1〜3.5、または1.5〜3.5、または2〜3ミクロンの平均直径をもつ。キャリヤー粒子は2ミクロンから200ミクロンまでの範囲の直径をもつことができる。
【0090】
[87] 1態様において、組成物はブリスターパックまたはDPIデバイスのリザーバーに収容される。1態様において、乾燥粉末組成物は、DPIデバイスに使用するのに適したゼラチン、デンプン、セルロースもしくはポリマー製のカプセル、またはホイル/ホイルもしくはホイル/プラスチックブリスター内に予め装填される。それぞれのカプセルまたはブリスターは1ミリグラムから100ミリグラムまでの乾燥粉末組成物を収容することができる。カプセルまたはブリスターをドライパウダーインヘラー(DPI)デバイス、たとえばAerolizer(登録商標)、Plastiape(登録商標) RS01 Model 7、およびPlastiape(登録商標) RS00 Model 8、XCaps(登録商標)、FlowCaps(登録商標)、Arcus(登録商標)、Diskhaler(登録商標)またはMicrodose(登録商標)に挿入することができる。DPIデバイスを作動させると、カプセルまたはブリスターが破壊されて粉末が吸気に分散し、薬物が気道へ送達される。
【0091】
[88] 1態様において、乾燥粉末組成物は、Accuhaler(登録商標)、Conix(商標)、Rotahaler(登録商標)、TwinCaps(登録商標)、XCaps(登録商標)、FlowCaps(登録商標)、Turbuhaler(登録商標)、NextHaler(登録商標)、CycloHaler(登録商標)、Revolizer(商標)、Diskhaler(登録商標)、Diskus(登録商標)、Spinhaler、Handihaler(登録商標)、Microdose Inhaler、GyroHaler(登録商標)、OmniHaler(登録商標)、Clickhaler(登録商標)、Duohaler(登録商標)(Vectura)、およびARCUS(登録商標)インヘラー(Civitas Therapeutics)から選択されるドライパウダーインヘラー(DPI)デバイスに収容される。1態様において、本発明は本明細書に記載する乾燥粉末組成物を収容したDPIデバイスを提供する。1態様において、デバイスは、XCaps、FlowCaps、Handihaler、TwinCaps、Aerolizer(登録商標)、Plastiape(登録商標) RS01 Model 7、およびPlastiape(登録商標) RS00 Model 8からなる群から選択される。1態様において、組成物を収容したデバイスはGyroHaler(登録商標)、OmniHaler(登録商標)、Clickhaler(登録商標)、Duohaler(登録商標)、およびARCUS(登録商標) インヘラーからなる群から選択される。
【0092】
[89] キャリヤー粒子は、深部肺にキャリヤー材料が沈着するのを避けるために、好ましくは比較的大きいサイズのものである(5ミクロンより大きい)。1態様において、キャリヤー粒子は1ミクロンから200ミクロンまで、30ミクロンから100ミクロンまでの範囲、または10ミクロン未満の直径をもつ。1態様において、キャリヤー粒子は2種類のキャリヤー、一方は約30〜100ミクロンの粒子、他方は10ミクロン未満の粒子のブレンドである。2種類の異なるキャリヤーの比は3:97から97:3までの範囲である。1態様において、乾燥粉末組成物はキャリヤーに対して0.5〜20%(w/w)の割合の薬物からなり、薬物粒子は0.1ミクロンから10ミクロンまでの直径および3.5ミクロン未満の平均直径をもつ。1態様において、キャリヤー材料は結晶性キャリヤー材料である。好ましくは、結晶性キャリヤー材料は少なくとも90%、好ましくは95%以上が結晶性のものであり、その際、相対湿度80%以下、室温の条件下でキャリヤーは水を全く吸収しないかまたは実質的に吸収しない。そのような結晶性キャリヤーの例は、ラクトース1水和物およびグルコース1水和物である。キャリヤーの量は、粉末の乾燥重量で配合物の1%から99.0%までまたはそれ以上、好ましくは5〜99%、10
〜99%、20〜99%、30〜99%、40〜99%、または50〜99%である。
【0093】
[90] 1態様において、乾燥粉末組成物は送達デバイス(乾燥粉末インヘラー)のリザーバー内に収容される。リザーバーはデバイス内の一体チャンバーであってもよく、あるいは作動前にデバイスに挿入されるカプセル、ブリスターまたは類似の予備成形リザーバーであってもよい。作動させると、デバイスは一部の薬物粒子をリザーバーから分散させ、それらを吸気に分散させて薬物粒子を気道へ送達する。
【0094】
[91] 1態様において、薬物は微細な粉末として医薬的に許容できるキャリヤーと共に存在する。これに関して、用語“微細(fine)”は、前記で考察したように吸入可能な範囲の粒子サイズを表わす。好ましくは、薬物は粒子が10ミクロン以下の範囲の平均直径をもつように微細化される。1態様において、本明細書に記載する乾燥粉末組成物中のラパマイシン(またはそのプロドラッグもしくは誘導体)粒子の平均直径(MMADまたはDv50)は、0.5ミクロンから10ミクロンまで、0.5ミクロンから6ミクロンまで、1ミクロンから5ミクロンまで、1ミクロンから4ミクロンまで、1ミクロンから3ミクロンまで、または2ミクロンから3ミクロンまでである。MMADまたはDv50値は、その集団の体積の50%がそのサイズ未満に含まれる粒子サイズである。
【0095】
[92] 1態様において、ラパマイシンの乾燥粉末配合物はさらに、後記の添加剤から選択される1種類以上の添加剤を含む。1態様において、その1種類以上の添加剤はステアリン酸マグネシウムを含むかまたはそれからなる。この態様の1観点において、ステアリン酸マグネシウムは粉末の乾燥重量で0.001〜10%の量、好ましくは0.01%から5%まで、または0.01%から2%までの量で存在する。他の態様において、添加剤は、粉末の乾燥重量で0.1%〜1%、好ましくは0.2%〜0.6%の量のリン脂質、たとえばレシチン(それはホスファチジルコリンの混合物である)を含むかまたはそれからなる。この態様の1観点において、添加剤は、キャリヤーをラパマイシン粒子とブレンドする工程の前またはそれと同時にキャリヤー材料上にコートされる。これは、たとえばキャリヤーを添加剤でコートする高エネルギー混合工程により、あるいは長時間の低エネルギー混合、または低エネルギー混合と高エネルギー混合の組合わせを用いて達成でき、目的レベルのコートされたキャリヤー材料が得られる。乾燥粉末を混合してブレンドを調製するための低エネルギーデバイスは当技術分野で既知であり、たとえばV−ブレンダー、ダブルコーンブレンダー、スラントコーンブレンダー、キューブブレンダー、ビンブレンダー、水平または垂直ドラムブレンダー、スタティック連続ブレンダー(static continuous blender)、ダイナミック連続ブレンダー(dynamic continuous blender)が含まれる
。他のより高エネルギーのデバイスには、当業者に既知の高剪断ミキサーが含まれる。
【0096】
[93] ある態様において、乾燥粉末はカプセルに収容される。1態様において、カプセルはゼラチンカプセル、プラスチックカプセル、またはセルロースカプセルであり、あるいはホイル/ホイルまたはホイル/プラスチックブリスターの形態である。それぞれの場合、カプセルまたはブリスターはDPIデバイスに使用するのに適切であり、好ましくは各カプセル内の粉末の総重量を1mgから100mgまでにする量のキャリヤーと合わせた投与単位のものである。あるいは、乾燥粉末をマルチドーズDPIデバイスのリザーバーに収容することができる。
【0097】
[94] ラパマイシンの粒子サイズは、常法により、たとえばエアジェットミル、ボールミルもしくはバイブレーターミルでの磨砕により、湿式研磨、ミクロ沈殿、噴霧乾燥、凍結乾燥、または臨界未満もしくは超臨界溶液からの再結晶により、目的とするマイクロ粒子レベルにまで低減できる。これに関してジェットミリングまたは磨砕は、機械的手段による乾燥薬物粒子の微細化を表わす。微細化法は、薬物の溶液、スラリーまたは懸濁液の調製を必要としない。代わりに、薬物粒子のサイズを機械的に低減する。微細化に使われ
るエネルギーが比較的高いため、特定の態様においてはラパマイシンと共に微細化する混合物にキャリヤー材料を含有させることが望ましい。これに関して、キャリヤー材料は、さもなければラパマイシンの構造に有害な影響を及ぼす可能性がある微細化エネルギーをある程度吸収する。1態様において、1ミクロンから4ミクロンまで、または2ミクロンから3ミクロンまでのサイズ範囲のラパマイシン粒子がジェットミリング法により製造される。
【0098】
[95] US2013/0203717に記載される湿式研磨は、懸濁液またはスラリー中の薬物粒子のサイズを低減するために高剪断の使用を伴なう。湿式研磨には、薬物粒子のみ、またはミリング媒体と呼ばれる追加粒子を含めることができる。1態様において、湿式研磨法を用いてラパマイシンの粒子サイズを目的レベルにまで低減でき、それには湿式ミリング、具体的には高圧でのキャビテーションによるものが含まれ、その際、ラパマイシンをそれが不溶性である水または他の溶媒に懸濁し、次いでその後、懸濁液を噴霧乾燥してラパマイシンを乾燥粉末として得る。1態様において、ラパマイシンの懸濁液を調製し、その懸濁液にマイクロフルイダイゼーションを施し、得られた粒子を噴霧乾燥して乾燥粉末を形成することを含む湿式研磨法により、1ミクロンから4ミクロンまで、または2ミクロンから3ミクロンまでのサイズ範囲のラパマイシン粒子が製造される。ラパマイシンをプロピルアルコールまたはブチルアルコール、水、および酢酸エチルからなる群から選択される逆溶媒(anti-solvent)に懸濁することができる。1態様において、懸濁液は水性懸濁液である。
【0099】
[96] 噴霧乾燥は一般に、薬物の溶液、スラリーまたは懸濁液を調製し、その溶液、スラリーまたは懸濁液を霧化して粒子を形成し、次いで溶液、スラリーまたは懸濁液の媒体を蒸発させて粒子を形成することを伴なう。溶液、スラリーまたは懸濁液は、臨界未満もしくは超臨界条件下で調製できる。蒸発工程は、その中へ霧化が行なわれる雰囲気の温度を高めることにより、もしくは圧力を低下させることにより、または両方の組合わせにより達成できる。1態様において、ラパマイシンを含む粉末配合物は、ラパマイシンの水性分散液を噴霧乾燥させて、前記のように肺送達に適したサイズをもつラパマイシンの凝集粒子からなる乾燥粉末を形成することにより調製される。凝集粒子サイズは、深部肺または上部呼吸器部位(たとえば、上気管支領域または鼻粘膜)のいずれかをターゲティングするように調整(増大または低減)できる。これは、たとえば噴霧乾燥分散液中のラパマイシンの濃度を高めることにより、または噴霧乾燥器により発生する液滴のサイズを増大させることにより達成できる。
【0100】
[97] あるいは、乾燥粉末は水性の薬物溶液、分散液もしくはエマルジョンの凍結乾燥(freeze-drying, lyophilization)により、または噴霧乾燥と凍結乾燥の組合わせにより
調製できる。
【0101】
[98] 1態様において、乾燥粉末配合物はラパマイシンおよび1種類以上の任意選択的添加剤の水性分散液を凍結乾燥することにより調製できる。1態様において、粉末はラパマイシンおよび添加剤(存在するならば)の凝集物を含有し、その際、凝集物は前記のように呼吸可能なサイズ範囲内にある。
【0102】
[99] 1態様において、ラパマイシンおよび1種類以上の任意選択的添加剤の水性分散液はさらに、溶解した希釈剤、たとえばラクトースまたはマンニトールを含み、したがって分散液を凍結乾燥すると呼吸可能な希釈剤粒子が形成され、それらはそれぞれ少なくとも1種類の埋め込まれた薬物粒子および存在するならば添加剤粒子を含有する。
【0103】
[100] 1態様において、乾燥粉末はラパマイシンを装填したリポソームを含む。薬物
装填リポソームは当技術分野で既知の方法により、たとえばタクロリムスについてM. Cho
ugale, et al. Int. J. Nanomedicine 2:625-688 (2007)に記載された手法を用いて調製
できる。簡単に述べると、ラパマイシン、水素化ホスファチジルコリン(HSPC)およびコレステロールをメタノールとクロロホルムの混合物に溶解し、次いでたとえば回転蒸発器(Rotaevaporator)で乾燥薄膜形成を施す。これらのリポソームを水和し、リポソーム分散液をサイズ低減のために高圧ホモジナイザーに通す。得られたペレットをベシクルサイズおよび薬物捕獲率について分析し、目的のラパマイシン量に等しいペレットを適切な媒体に分散させ、噴霧乾燥して、吸入のための目的サイズの粒子を得る。噴霧乾燥粉末を投与のためのカプセル、キャニスターまたはブリスターパックに充填することができる。
【0104】
[101] 1態様において、乾燥粉末粒子は超臨界または臨界未満溶液からの沈殿により
調製できる。
[102] 乾燥粉末組成物は、適切なドライパウダーインヘラーデバイスに、またはその
ようなデバイスに使用するためのカプセルもしくはブリスターに収容することができる。そのようなデバイスの例は前記に示され、下記のものを含む:Accuhaler(登録商標)、Aerolizer(登録商標)、Plastiape(登録商標) RS01
Model 7、Plastiape(登録商標) RS00 Model 8、Conix(商標)、Rotahaler(登録商標)、TwinCaps(登録商標)、XCaps(登録商標)、FlowCaps(登録商標)、Turbuhaler(登録商標)、NextHaler(登録商標)、CycloHaler(登録商標)、Revolizer(商標)、Diskhaler(登録商標)、Diskus(登録商標)、Spinhaler、Handihaler(登録商標)、Microdose Inhaler、GyroHaler(登録商標)、OmniHaler(登録商標)、Clickhaler(登録商標)、もしくはDuohaler(登録商標)(Vectura)、または呼吸作動式(breath-actuated)ARCUS(登録商標)インヘラー(Civit
as Therapeutics)。1態様において、本発明は本明細書に記載する乾燥粉末組成物を収容したDPIデバイスを提供する。1態様において、デバイスはXCaps、FlowCaps、Handihaler、TwinCaps、Aerolizer(登録商標)、Plastiape(登録商標) RS01 Model 7、およびPlastiape(登録商標) RS00 Model 8からなる群から選択される。
【0105】
噴射剤ベースの配合物
[103] 本発明の他の態様において、ラパマイシンは噴射剤ベースの配合物中に配合さ
れ、それを本明細書中で“pMDI配合物”と総称することもできる。pMDI配合物は、たとえば加圧メータードーズインヘラー(pMDI)などのデバイスによる送達に適切である。1態様において、組成物はラパマイシン、噴射剤、および植物油または医薬的に許容できる植物油誘導体を含む。噴射剤は、好ましくは1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227)またはその混合物から選択される。1態様において、植物油はオリーブ油、サフラワー油およびダイズ油から選択される。ラパマイシンは噴射剤中に溶解または懸濁していてもよい。これに関して、“懸濁している”とは、ラパマイシンが噴射剤中に分散した粒子状で存在することを表わす。1態様において、ラパマイシンは微細化され、噴射剤中に懸濁した状態で存在する。1態様において、配合物はさらに湿潤剤または補助溶媒、たとえばエタノールを含む。1態様において、配合物はさらにポリヒドロキシアルコール、たとえばプロピレングリコールを含む。
【0106】
[104] 適切な噴射剤は当技術分野で既知であり、たとえばハロゲン置換炭化水素、た
とえばフッ素置換されたメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンまたはシクロブタン、特に1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227)、またはその混合物を含む。
【0107】
[105] 1態様において、配合物は微細なラパマイシン、エタノール、適切な噴射剤、
たとえばHFA 134a、HFA 227、または適切な噴射剤の混合物、および所望により1種類以上の界面活性剤を含む。1態様において、配合物はさらに滑沢剤を含む。
【0108】
[106] 1態様において、配合物はラパマイシン、噴射剤および植物油を含む。1観点
において、配合物は添加剤または界面活性剤を含まない。たとえば、配合物はエタノール、ポリヒドロキシアルコール(たとえば、プロピレングリコール)または界面活性剤(たとえば、トリオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタンまたはオレイン酸)を含まない。
【0109】
[107] 1態様において、噴射剤ベースの配合物は、圧縮空気、二酸化炭素、窒素、あ
るいはn−プロパン、n−ブタン、イソブタンもしくはその混合物、または1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227)もしくはその混合物からなる群から選択される液化噴射剤を含み、極性補助溶媒、たとえばアルコール類を含むかまたは含まない。組成物は溶液または懸濁液であってもよい。懸濁液について、薬物粒子は0.1ミクロンから10ミクロンまでの直径をもち、平均直径は3.5ミクロン未満である。
【0110】
[108] 噴射剤ベースの配合物は、当技術分野で既知の方法により、たとえば粗いラパ
マイシンおよび任意選択的な添加剤を、液体噴射剤中において周囲圧力または高圧条件下で湿式ミリングすることにより調製される。ある態様において、添加剤は界面活性剤であり、それは凝集(ケーキングまたは結晶化)を阻止し、均一な投薬を容易にし、かつ(あるいは)好ましい細粒分(FPF)を提供するのに役立つ。1観点において、界面活性剤はトリオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタンまたはオレイン酸から選択される。あるいは、薬物粒子を含有する乾燥粉末は、前記のように薬物粒子の水性分散液を噴霧乾燥または凍結乾燥し、得られた粉末を一般的な加圧メータードーズインヘラー(pMDI)に用いるのに適した噴射剤に分散させることにより調製される。1態様において、吸入デバイスはRespimat(商標)である。
【0111】
[109] 1態様において、本発明の噴射剤ベースのエアロゾルラパマイシン配合物は、
ラパマイシンの粒子サイズの生長または結晶形態の変化に対して長期間にわたって安定である。
【0112】
無菌単位剤形の製造方法
[110] 1態様において、本発明の組成物は無菌組成物である。1態様において、無菌
組成物は無菌単位剤形である。1態様において、無菌単位剤形はネブライザーデバイスに使用するのに適したカプセルである。
【0113】
[111] 1態様において、最終組成物をそれの容器クロージャー内で、熱、たとえば高
圧蒸気滅菌法により、または放射線照射により滅菌する。1態様において、組成物の成分部分をまず液体成分のための無菌濾過および固体または液体のための放射線照射または高圧蒸気滅菌法を含めた適切な方法により滅菌する;この方法はさらに、機密容器内にパッケージングすることにより無菌成分の無菌性を保持すること、適切な割合の成分を混合容器内で混和し、得られた製品を容器クロージャー内に充填することを含み、これらはすべて無菌スイートで実施される。この方法は経費がかかり、かつ難しい無菌的な取扱い法が必要であるという欠点をもつ。したがって、それは主に、滅菌のためにサブミクロンフィルターを通すことができない粒子懸濁液またはコロイド分散液、リポソーム配合物、またはエマルジョンを処理するために用いられる。最後に、1態様において、最終組成物をサブミクロンフィルター、好ましくは0.2ミクロンフィルターにより無菌濾過する。1態
様において、本発明の組成物は濾過滅菌プロセスにより滅菌された単相水溶液である。これに対し、エマルジョンおよびリポソーム配合物は一般に、濾過滅菌プロセスの高剪断条件下で必ずしも十分に安定ではないので、この方法には好ましくない。
【0114】
[112] 1態様において、本発明の組成物は、容器−クロージャー、たとえばポリマー
製、好ましくはポリエチレン製のバイアル、またはガラスバイアルに充填された単相水溶液である。バイアルがポリマーバイアルである場合は、薬物および/または配合賦形剤ならびに容器に不安定性が生じる可能性が高いので、また望ましくない不純物の生成のため、高圧蒸気滅菌および放射線照射は適切ではない。1態様において、本発明の組成物は、熱(高圧蒸気滅菌法)または放射線照射を含まず、代わりに濾過滅菌プロセスを含む方法により滅菌される。好ましくは、この態様によれば、0.2ミクロン以下のポアサイズをもつフィルターを通した濾過によりラパマイシンの単相水溶液を滅菌する。1態様において、無菌濾液を無菌スイート内にある採集容器に採集する。1態様において、無菌スイート内で無菌濾液を採集容器から容器クロージャー内へ移す。好ましくは、容器クロージャーはポリマーバイアル、好ましくは単位量バイアル、最も好ましくはポリエチレン製の単位量バイアルである。1態様において、ポリマーバイアルはそれに充填する直前に吹込み成形により形成され、次いで充填直後にヒートシールされる。この手法を“フォーム・フィル・シール(form-fill-seal)”または“ブロー・フィル(blow-fill)”と呼ぶこともで
きる。この手法は、ラパマイシンの単相水溶液である本発明組成物に関して特に有利である;この方法は熱または放射線照射(これらは両方とも薬物自体、配合物賦形剤または容器クロージャーのいずれかを破壊する可能性がある)を必要としないからである。
【0115】
肺への投与および投薬
[113] 本発明は、ラパマイシンを気道に、好ましくは肺に吸入により投与することに
よってLAMを治療および予防するための組成物および方法を提供する。肺送達は、好ましくは口および咽喉を経由して肺内へエアロゾルを吸入することにより達成されるが、鼻を経由したエアロゾル吸入によっても達成できる。よって、1態様において、エアロゾルは鼻腔内送達される。他の態様において、エアロゾルは経口送達される。
【0116】
[114] 本発明の組成物および方法は、療法有効量のラパマイシンの肺へのターゲティ
ッド送達を有利に提供し、一方では同時に血中および全身利用されるラパマイシンの量をきわめて低いレベルまたは検出できないレベルにまで低下させる。1態様において、単回量の本明細書に記載する乾燥粉末組成物中のラパマイシンの量は、約5マイクログラムから500マイクログラムまで、または約100マイクログラムから300マイクログラムまで、または約50マイクログラムから250マイクログラムまでである。全身曝露を最小限に抑えながら低用量ラパマイシンを肺へ直接にターゲティッド送達することは、経口剤形と比較して改善された療法指数を提供する。
【0117】
[115] 1態様において、本発明に従った吸入によるラパマイシンの投与は、ラパマイ
シンの療法指数を増大させる。これに関して、ヒト対象に適用するものとしての療法指数は、集団の50%において療法効果を生じる用量(ED50)と毒性を生じる用量(TD50)を比較する比である。この比をTD50/ED50として示す。1態様において、本発明に従った吸入によるラパマイシンの投与は、経口投与したラパマイシンに付随する1以上の毒性を低減し、それによりラパマイシンの療法指数を増大させる。
【0118】
[116] 本発明は、溶液および粉末の形態のエアロゾル化可能な配合物を含む。したが
って、ラパマイシンは本発明方法に従って水性エアロゾル、乾燥粉末エアロゾル、または噴射剤ベースのエアロゾルの形態で投与できる。
【0119】
[117] 1態様において、ラパマイシンの投与量は、対象において0.01ng/ml
から0.15ng/mlまで、0.075ng/mlから0.350ng/mlまで、0.150ng/mlから0.750ng/mlまで、0.750ng/mlから1.5ng/mlまで、または1.5ng/mlから5ng/mlまでの血中トラフレベル達成するのに十分なものである。1態様において、ラパマイシンの投与量は、対象において5ng/ml未満、2ng/ml未満、1ng/ml未満、または0.5ng/ml未満の血中トラフレベル達成するのに十分なものである。
【0120】
[118] 1態様において、ラパマイシンの投与量は、肺組織において1ng/gから1
ug/gまでの範囲のラパマイシン濃度を生じるのに十分なものである。
[119] 1態様において、ラパマイシンの投与量は、10マイクログラムから100マ
イクログラムまで、50マイクログラムから250マイクログラムまで、100マイクログラムから500マイクログラムまで(0.1〜0.5ミリグラム)、500マイクログラムから1000マイクログラムまで(0.5〜1ミリグラム)または1000マイクログラムから2000マイクログラムまで(1〜2ミリグラム)である。1態様において、ラパマイシンの投与量は、1ミリグラム未満、0.75ミリグラム未満、0.5ミリグラム未満、または0.25ミリグラム未満である。好ましくは、ラパマイシンの投与量は0.5ミリグラム未満である。
【0121】
[120] 1態様において、ラパマイシンを1日1回投与する。
[121] 1態様において、ラパマイシンの総日用量は10マイクログラムから100マ
イクログラムまで、50マイクログラムから250マイクログラムまで、100マイクログラムから500マイクログラムまで(0.1〜0.5ミリグラム)、500マイクログラムから1000マイクログラムまで(0.5〜1ミリグラム)または1000マイクログラムから2000マイクログラムまで(1〜2ミリグラム)の範囲である。1態様において、ラパマイシンの総日用量は1ミリグラム未満、100マイクログラム未満、50マイクログラム未満、10マイクログラム未満、または1マイクログラム未満である。1態様において、ラパマイシンの総日用量は500ナノグラム未満、250ナノグラム未満、100ナノグラム未満、50ナノグラム未満、または10ナノグラム未満である。1態様において、対象に投与するラパマイシンの総日用量は1日当たり2mg未満または1mg未満である。
【0122】
[122] 1態様において、本発明の組成物を1日1回、対象に投与する。1態様におい
て、本発明の組成物を1日2回または3回投与する。好ましくは、組成物を1日1回もしくは2回、または1日1回より少なく投与する。
【0123】
[123] 1態様において、本発明方法は、ラパマイシンを肺経路で、スタチン、プロゲ
ステロン、タモキシフェン、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト、ドキシサイクリン、src阻害薬、オートファジー阻害薬(たとえば、ヒドロキシクロロキン(hydroxy chloroquine))、VEGF−Cまたは−D阻害薬、およびVEGF受容体阻害薬からなる群から選択される1種類以上の追加療法薬と組み合わせて投与することを含む。1態様において、1種類以上の追加療法薬はスタチン、プロゲステロン、タモキシフェン、およびゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストから選択される。1態様において、1種類以上の追加療法薬はエストロゲンアンタゴニスト、スタチン、src阻害薬、およびVEGF−R阻害薬から選択される。1態様において、1種類以上の追加療法薬はレトロゾール、タモキシフェン、シンバスタチン、サラカチニブ、パゾパニブ、イマチニブ、およびその組合わせからなる群から選択される。1種類以上の追加療法薬は、ラパマイシンと同一または異なる経路により投与することができる。たとえば、その薬剤を吸入、鼻腔内、経口または静脈内に投与できる。
【0124】
[124] 1態様において、本発明方法はラパマイシンを肺経路で1以上の追加療法と組
み合わせて投与することを含む。1態様において、1以上の追加療法は抗エストロゲン療法、ホルモン療法、抗癌化学療法、および放射線療法から選択される。1態様において、本発明方法はラパマイシンを肺経路で抗エストロゲン療法またはホルモン療法と組み合わせて投与することを含む。
【0125】
[125] ある態様において、本方法は本発明組成物を主療法として肺投与することを含
む。他の態様において、本発明組成物の投与は補助療法である。いずれの場合も、本発明方法は、疾患または障害の処置のために本発明組成物を1以上の追加療法と組み合わせて投与することを考慮する。用語“療法(単数)”および“療法(複数)”は、疾患もしくは障害またはその1以上の症状の予防、治療、管理または改善に使用できるいずれかの方法、プロトコルおよび/または薬剤を表わす。ある態様において、療法は化学療法、放射線療法、ホルモン療法、および抗エストロゲン療法から選択される。
【0126】
[126] 好ましくは、本発明によるラパマイシンまたはそのプロドラッグもしくは誘導
体を含む医薬組成物を1以上の追加療法と組み合わせて投与することにより、LAMを伴なう対象において相乗的応答が得られる。これに関して、用語“相乗的”は、組合わせの有効性がいずれかの単一療法のみの効果の相加効果より有効であることを表わす。1態様において、本発明によるラパマイシン併用療法の相乗効果によって、組合わせのうちの少なくとも1つの療法を、その組合わせ以外でのそれの投与量および/または頻度と比較して、より低い投与量で使用すること、および/またはより低い頻度で投与することが可能になる。他の態様において、相乗効果はその組合わせのいずれかの療法の単独使用に付随する有害または目的外の副作用が回避または低減されることに現われる。
【0127】
ネブライザー送達
[127] 1態様において、ラパマイシンをネブライゼーションに適した水溶液として配
合し、ネブライザーにより送達する。水性および他の非加圧液体系について、配合物をエアロゾル化するための多様なネブライザー(小容量ネブライザーを含む)を入手できる。コンプレッサー駆動式ネブライザーは液体エアロゾルを発生させるためにジェット技術を採用し、圧縮空気を使用する。そのようなデバイスは、たとえばHealthdyne Technologies,Inc.;Invacare,Inc.;Mountain
Medical Equipment,Inc.;Pari Respiratory,Inc.;Mada Medical,Inc.;Puritan−Bennet;Schuco,Inc.,DeVilbiss Health Care,Inc.;およびHospitak,Inc.から市販されている。超音波ネブライザーは、呼吸可能な液滴を発生させるために圧電結晶の振動の形の機械的エネルギーに依存しており、たとえばOmron Healthcare,Inc.およびDeVilbiss Health Care,Inc.から市販されている。ネブライザーは、たとえば一般的な空気式(pneumatic)ネブライザー、たとえばエアジェットネブライザー、または超音波ネブライ
ザーであってもよく、それらはたとえば1mlから50mlまで、一般に1mlから10mlまでの溶液配合物を収容できる。
【0128】
[128] 1態様において、本発明の水溶液配合物を、振動または固定メッシュを含むネ
ブライザーで投与するために適合させる。たとえば、AERx(登録商標)(Aradigm)、RESPIMAT(登録商標)(Boehringer Ingelheim)、I−Neb(登録商標)(Philips)、またはMicroAire(登録商標)(Omron)などのデバイス;それらにおいて、薬剤溶液はピストンもしくは空気圧で、または圧電結晶で、オリフィスまたはメッシュを通して押し出される。あるいは振動メッシュネブライザー、たとえばE−Flow(登録商標)(Pari)またはAeroneb(登録商標) Go(Aerogen)により溶液を押し出すことができる。これらのデバイスによって、一般的なネブライザーよりはるかに小さなネブライズ体積、たとえ
ば10〜100ul、およびより高い送達効率が可能である。
【0129】
乾燥粉末送達
[129] 1態様において、本発明の乾燥粉末組成物は非噴射剤ベースのドライパウダー
インヘラー(DPI)デバイスにより送達される。1態様において、粉末は、DPIデバイスに使用するのに適したゼラチンもしくはプラスチックのカプセル内、またはブリスター内に収容される。1態様において、粉末は単位剤形でカプセル当たり粉末5mgから100mgまでの投与単位で供給される。他の態様において、乾燥粉末はマルチドーズ乾燥粉末吸入デバイスのリザーバー内に収容される。1態様において、インヘラーデバイスは、計量された用量、たとえば10〜100μl、たとえば25〜50μlの組成物を送達するように適合させたバルブを備えたエアロゾルバイアル、すなわちメータードーズインヘラーとして知られるデバイスを含む。
【0130】
[130] 1態様において、DPIデバイスはブリスターベースのデバイス、たとえばG
yroHaler(登録商標)またはOmniHaler(登録商標)(両方ともVecturaから)、リザーバーベースのデバイス、たとえばClickhaler(登録商標)またはDuohaler(登録商標)(Vectura)、およびARCUS(登録商標)インヘラー(Civitas Therapeutics)である。1態様において、DPIデバイスはPulmatrix(商標)ならびにHovione TwincapsおよびXCaps(商標)から選択される。1態様において、デバイスはXCaps、Plastiape(登録商標) RS01 Model 7、およびPlastiape(登録商標) RS00 Model 8からなる群から選択される。
【0131】
[131] 1態様において、DPIデバイスはAccuhaler(登録商標)、Aer
olizer(登録商標)、Plastiape(登録商標) RS01 Model 7、Plastiape(登録商標) RS00 Model 8、Conix(商標)、Rotahaler(登録商標)、TwinCaps(登録商標)、XCaps(登録商標)、FlowCaps(登録商標)、Turbuhaler(登録商標)、NextHaler(登録商標)、CycloHaler(登録商標)、Revolizer(商標)、Diskhaler(登録商標)、Diskus(登録商標)、Spinhaler、Handihaler(登録商標)、Microdose Inhaler、GyroHaler(登録商標)、OmniHaler(登録商標)、Clickhaler(登録商標)、もしくはDuohaler(登録商標)(Vectura)、または呼吸作動式ARCUS(登録商標)インヘラー(Civitas Therapeutics)からなる群から選択される。
【0132】
[132] 1態様において、DPIデバイスはArcus(商標)、Aspirair(
商標)、Axahaler(商標)、Breezhaler(商標)、Clickhaler(商標)、Conix Dry(商標)、Cricket(商標)、Dreamboat(商標)、Genuair(商標)、Gemini(商標)、Inspiromatic(商標)、iSPERSE(商標)、MicroDose(商標)、Next DPI(商標)、Prohaler(商標)、Pulmojet(商標)、Pulvinal(商標)、Solis(商標)、Taifun(商標)、Taper Dry(商標)、Trivai(商標)、Novolizer(商標)、Podhaler(商標)、Skyehaler(商標)、Spiromax(商標)、Twincaps/Flowcaps(商標)、およびTurbuhaler(商標)からなる群から選択される。1態様において、DPIデバイスは、投与単位の乾燥粉末を収容したカプセルもしくはブリスターから、またはたとえば1作動当たり5〜25mgの乾燥粉末を送達するように適合させたマルチドーズ乾燥粉末吸入デバイスから、乾燥粉末を送達するように適合される。
【0133】
pMDI送達
[133] 他の態様において、ラパマイシンは噴射剤ベースの配合物に関して前記に述べ
た適切な噴射剤を収容した加圧された容器またはディスペンサーからエアロゾル化粒子の形態で送達される。1態様において、インヘラーは噴射剤駆動式インヘラー、たとえばpMDIデバイスであり、それは各作動に際して計量された用量のラパマイシンを放出する。典型的なpMDIデバイスは、薬物を収容するキャニスター、薬物計量バルブ、およびマウスピースを含む。この態様の1観点において、ラパマイシンは噴射剤中の懸濁液として配合される。この態様に関して、ラパマイシンを微細粉末状にし、液化した噴射剤または噴射剤ブレンドにそれを懸濁する。この懸濁液を次いで密閉キャニスター内に、噴射剤を液状に保持するのに十分な圧力下で保存する。他の態様において、ラパマイシンは溶液として配合される。この態様に関して、液化した噴射剤または噴射剤ブレンドにラパマイシンを溶解する。1態様において、配合物はさらに、配合物の撹拌後に再現性のあるラパマイシン投与を可能にするのに十分な時間、配合物を沈降、クリーミングまたはフロキュレーションに対して安定化するのに適した量の安定剤を含む。安定剤はエアロゾル配合物の総重量100万部を基準として約10重量部〜約5000重量部の過剰量で存在してもよい。1態様において、液体キャリヤーは1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、またはその混合物である。他の態様において、液体キャリヤーは炭化水素(たとえば、n−ブタン、プロパン、イソペンタン、またはその混合物)である。組成物はさらに補助溶媒(たとえば、エタノール、または他の適切な補助溶媒)を含むことができる。
【0134】
[134] 本発明方法の1態様において、ラパマイシンを含むエアロゾル配合物は、さら
に追加薬物を含むことができる。この態様の1観点において、追加薬物はコルチコステロイド類、エストロゲン受容体アンタゴニスト、抗コリン作働薬、ベータ-アゴニスト、非
ステロイド系抗炎症薬、マクロライド系抗生物質、気管支拡張薬、ロイコトリエン受容体阻害薬、ムスカリンアンタゴニスト、硫酸クロモリン(cromolyn sulfate)、およびその組合わせからなる群から選択される。
【0135】
添加剤
[135] 本発明のエアロゾル組成物は、1種類以上の添加剤を、配合物中に存在するい
ずれかのキャリヤーまたは希釈剤(たとえば、ラクトースまたはマンニトール)のほかに含有することができる。1態様において、1種類以上の添加剤は1種類以上の界面活性剤を含むかまたはそれからなる。界面活性剤は一般に1以上の長い脂肪族鎖、たとえば脂肪酸をもち、それによりそれらは細胞の脂質構造体中へ直接挿入して薬物の透過および吸収を増強することができる。界面活性剤の相対的な親水性および疎水性を特徴づけるために一般に用いられる経験的パラメーターは、親水性−親油性バランス(“HLB”価)である。低いHLB価をもつ界面活性剤ほどより疎水性であって油中でより大きな溶解度をもち、一方で高いHLB価をもつ界面活性剤ほどより親水性であって水溶液中でより大きな溶解度をもつ。よって、親水性界面活性剤は一般に約10より大きいHLB価をもつ化合物であると考えられ、疎水性界面活性剤は一般に約10未満のHLB価をもつものである。しかし、多くの界面活性剤についてHLB価はHLB価を決定するために選択する経験的方法に応じて約8HLB単位も異なる可能性があるので、これらのHLB価は目安にすぎない。
【0136】
[136] 本発明のエアロゾル組成物中に用いる界面活性剤には、ポリエチレングリコー
ル(PEG)−脂肪酸ならびにPEG−脂肪酸モノおよびジエステル、PEGグリセロールエステル、アルコール−油エステル交換生成物、ポリグリセリル脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステロールおよびステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖およびそれの誘導体、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン−ポリオキシ
プロピレン(POE−POP)ブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤、脂溶性ビタミンおよびそれらの塩類、水溶性ビタミンおよびそれらの両親媒性誘導体、アミノ酸およびそれらの塩類、ならびに有機酸およびそれらのエステルおよび無水物が含まれる。これらのそれぞれをより詳細に以下に記載する。
【0137】
PEG脂肪酸エステル
[137] ポリエチレングリコール(PEG)自体は界面活性剤として機能しないが、多
様なPEG−脂肪酸エステルが有用な界面活性剤特性をもつ。PEG−脂肪酸モノエステルのうち、ラウリン酸、オレイン酸およびステアリン酸のエステルが本発明の態様において最も有用である。好ましい親水性界面活性剤には、PEG−8ラウレート、PEG−8オレエート、PEG−8ステアレート、PEG−9オレエート、PEG−10ラウレート、PEG−10オレエート、PEG−12ラウレート、PEG−12オレエート、PEG−15オレエート、PEG−20ラウレートおよびPEG−20オレエートが含まれる。HLB価は4〜20の範囲である。
【0138】
[138] ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルも、本発明の態様の組成物中に界面
活性剤として用いるのに適切である。最も好ましい親水性界面活性剤にはPEG−20ジラウレート、PEG−20ジオレエート、PEG−20ジステアレート、PEG−32ジラウレートおよびPEG−32ジオレエートが含まれる。HLB価は5〜15の範囲である。
【0139】
[139] 一般に、界面活性剤の混合物も本発明の態様に有用であり、それには2種類以
上の市販の界面活性剤の混合物および界面活性剤と他の添加剤または添加剤類の混合物が含まれる。幾つかのPEG−脂肪酸エステルが混合物またはモノ−およびジエステルとして市販されている。
【0140】
ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル
[140] 好ましい親水性界面活性剤は、PEG−20グリセリルラウレート、PEG−
30グリセリルラウレート、PEG−40グリセリルラウレート、PEG−20グリセリルオレエート、およびPEG−30グリセリルオレエートである。
【0141】
アルコール−油エステル交換生成物
[141] 疎水度または親水度が異なる多数の界面活性剤を、アルコール類またはポリア
ルコールと多様な天然油および/または水素化油との反応により製造できる。最も一般的には、使用する油はヒマシ油もしくは水素化ヒマシ油、または食用植物油、たとえばトウモロコシ油、オリーブ油、ラッカセイ油、パーム核油、杏仁油、もしくはアーモンド油である。好ましいアルコール類には、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、およびペンタエリトリトールが含まれる。これらのアルコール−油エステル交換界面活性剤のうち、好ましい親水性界面活性剤はPEG−35 ヒマシ油(Incrocas−35)、PEG−40 水素化ヒマシ油(Cremophor RH 40)、PEG−25 トリオレエート(TAGAT.RTM.TO)、PEG−60 トウモロコシグリセリド(Crovol M70)、PEG−60 アーモンド油(Crovol A70)、PEG−40 パーム核油(Crovol PK70)、PEG−50 ヒマシ油(Emalex C−50)、PEG−50 水素化ヒマシ油(Emalex HC−50)、PEG−8 カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Labrasol)、およびPEG−6 カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Softigen 767)である。このクラスの好ましい疎水性界面活性剤には、PEG−5 水素化ヒマシ油、PEG−7 水素化ヒマシ油、PEG−9 水素化ヒマシ油、PEG−6 トウモロコシ油(Labrafil.RTM. M 2125 CS)、PEG−6 アーモンド油(Labrafil.RTM. M 1966 CS)、
PEG−6 杏仁油(Labrafil.RTM. M 1944 CS)、PEG−6
オリーブ油(Labrafil.RTM. M 1980 CS)、PEG−6 ラッカセイ油(Labrafil.RTM. M 1969 CS)、PEG−6 水素化パーム核油(Labrafil.RTM. M 2130 BS)、PEG−6 パーム核油(Labrafil.RTM. M 2130 CS)、PEG−6 トリオレイン(Labrafil.RTM.b M 2735 CS)、PEG−8 トウモロコシ油(Labrafil.RTM. WL 2609 BS)、PEG−20 トウモロコシグリセリド(Crovol M40)、およびPEG−20 アーモンドグリセリド(Crovol A40)が含まれる。
【0142】
ポリグリセリル脂肪酸
[142] 脂肪酸のポリグリセロールエステルも、本発明の態様に用いるのに適した界面
活性剤である。ポリグリセリル脂肪酸エステルのうち、好ましい疎水性界面活性剤にはポリグリセリルオレエート(Plurol Oleique)、ポリグリセリル−2 ジオレエート(Nikkol DGDO)、ポリグリセリル−10 トリオレエート、ポリグリセリルステアレート、ポリグリセリルラウレート、ポリグリセリルミリステート、ポリグリセリルパルミテート、およびポリグリセリルリノレエートが含まれる。好ましい親水性界面活性剤には、ポリグリセリル−10 ラウレート(Nikkol Decaglyn 1−L)、ポリグリセリル−10 オレエート(Nikkol Decaglyn 1−0)、およびポリグリセリル−10 モノ、ジオレエート(Caprol.RTM.PEG 860)、ポリグリセリル−10 ステアレート、ポリグリセリル−10 ラウレート、ポリグリセリル−10 ミリステート、ポリグリセリル−10 パルミテート、ポリグリセリル−10 リノレエート、ポリグリセリル−6 ステアレート、ポリグリセリル−6 ラウレート、ポリグリセリル−6 ミリステート、ポリグリセリル−6 パルミテート、およびポリグリセリル−6 リノレエートが含まれる。ポリグリセリルポリリシノレエート(Polymuls)も好ましい界面活性剤である。
【0143】
プロピレングリコール脂肪酸エステル
[143] プロピレングリコールと脂肪酸のエステルは、本発明の態様に用いるのに適し
た界面活性剤である。この界面活性剤クラスにおいて、好ましい疎水性界面活性剤にはプロピレングリコールモノラウレート(Lauroglycol FCC)、プロピレングリコールリシノレエート(Propymuls)、プロピレングリコールモノオレエート(Myverol P−06)、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート(Captex.RTM.200)、およびプロピレングリコールジオクタノエート(Captex.RTM.800)が含まれる。
【0144】
ステロールおよびステロール誘導体
[144] ステロールおよびステロール誘導体は、本発明の態様に用いるのに適した界面
活性剤である。好ましい誘導体にはポリエチレングリコール誘導体が含まれる。このクラスの好ましい界面活性剤はPEG−24 コレステロールエーテル(Solulan C−24)である。
【0145】
ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル
[145] 多様なPEG−ソルビタン脂肪酸エステルを入手でき、それらは本発明の態様
において界面活性剤として用いるのに適切である。PEG−ソルビタン脂肪酸エステルのうち、好ましい界面活性剤には、PEG−20 ソルビタンモノラウレート(Tween−20)、PEG−20 ソルビタンモノパルミテート(Tween−40)、PEG−20 ソルビタンモノステアレート(Tween−60)、およびPEG−20 ソルビタンモノオレエート(Tween−80)が含まれる。
【0146】
ポリエチレングリコールアルキルエーテル
[146] ポリエチレングリコールとアルキルアルコールのエーテルは、本発明の態様に
用いるのに適した界面活性剤である。好ましいエーテルには、PEG−3 オレイルエーテル(Volpo 3)およびPEG−4 ラウリルエーテル(Brij 30)が含まれる。
【0147】
糖およびそれの誘導体
[147] 糖誘導体は、本発明の態様に用いるのに適した界面活性剤である。このクラスの好ましい界面活性剤には、スクロースモノパルミテート、スクロースモノラウレート、デカノイル−N−メチルグルカミド、n−デシル−β−D−グルコピラノシド、n−デシル−β−D−マルトピラノシド、n−ドデシル−β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、ヘプタノイル−N−メチルグルカミド、n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、n−ヘプチル−β−D−チオグルコシド、n−ヘキシル−β−D−グルコピラノシド、ノナノイル−N−メチルグルカミド、n−ノニル−β−D−グルコピラノシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、およびオクチル−β−D−チオグルコピラノシドが含まれる。
【0148】
ポリエチレングリコールアルキルフェノール
[148] 幾つかのPEG−アルキルフェノール系界面活性剤、たとえばPEG−10−
100 ノニルフェノールおよびPEG−15−100 オクチルフェノールエーテル、チロキサポール(Tyloxapol)、オクトキシノール、ノノキシノールを入手でき、それらは
本発明の態様に用いるのに適切である。
【0149】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(POE−POP)ブロックコポリマー
[149] POE−POP ブロックコポリマーは特異なクラスのポリマー系界面活性剤
である。親水性POE部分と疎水性POP部分を明確に定義された比率および位置で含むこの界面活性剤の特異な構造は、本発明の態様に用いるのに適した広範な界面活性剤を提供する。これらの界面活性剤は種々の商品名で入手でき、それにはSynperonic
PEシリーズ(ICI);Pluronic.RTM.シリーズ(BASF)、Emkalyx、Lutrol(BASF)、Supronic、Monolan、Pluracare、およびPlurodacが含まれる。これらのポリマーの一般名は“ポロキサマー(poloxamer)”(CAS 9003−11−6)である。これらのポリマーは次式を
もつ:HO(CO)(CO)(CO)H;ここで“a”および“b”はそれぞれポリオキシエチレン単位およびポリオキシプロピレン単位の数を表わす。
【0150】
[150] このクラスの好ましい親水性界面活性剤には、ポロキサマー108、188、
217、238、288、338、および407が含まれる。このクラスの好ましい疎水性界面活性剤には、ポロキサマー124、182、183、212、331、および335が含まれる。
【0151】
ソルビタン脂肪酸エステル
[151] 脂肪酸のソルビタンエステルは本発明の態様に用いるのに適した界面活性剤で
ある。これらのエステルのうち、好ましい疎水性界面活性剤にはモノラウリン酸ソルビタン(Arlacel 20)、モノパルミチン酸ソルビタン(Span−40)、モノオレイン酸ソルビタン(Span−80)、モノステアリン酸ソルビタンが含まれる。
【0152】
[152] モノパルミチン酸ソルビタン、すなわちビタミンCの両親媒性誘導体(ビタミ
ンC活性をもつ)は、可溶化系において2つの重要な機能を果たすことができる。第1に、それは微細環境を調節できる有効な極性基を備えている。これらの極性基は、入手でき
る最も水溶性の大きい有機固体化合物のひとつであるビタミンC自体(アスコルビン酸)を形成するものと同一の基である:アスコルビン酸は水に約30 wt/wt%まで溶解できる(たとえば塩化ナトリウムの溶解度にきわめて近い)。第2に、pHが上昇すると、それによりパルミチン酸アスコルビルの一部はより可溶性の塩、たとえばパルミチン酸アスコルビルナトリウムに変換される。
【0153】
イオン性界面活性剤
[153] カチオン性、アニオン性および双性イオン性界面活性剤を含めたイオン性界面
活性剤は、本発明の態様に用いるのに適した親水性界面活性剤である。好ましいイオン性界面活性剤には、第四級アンモニウム塩、脂肪酸塩および胆汁酸塩が含まれる。具体的には、好ましいイオン性界面活性剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セチルピリジニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシル硫酸ナトリウム、ジアルキルメチルベンジルアンモニウムクロリド、エドロホニウムクロリド(edrophonium chloride)、ドミフェンブロミド(domiphen bromide)、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、コール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムが含まれる。これらの第四級アンモニウム塩は好ましい添加剤である。それらは有機溶媒(たとえば、エタノール、アセトンおよびトルエン)と水の両方に溶解できる。これは、調製とコーティングのプロセスを簡素化し、かつ良好な接着性をもつので、医療用デバイスのコーティングに特に有用である。水不溶性薬物は一般に有機溶媒に溶解される。
【0154】
脂溶性ビタミンおよびその塩類
[154] ビタミンA、D、EおよびKは、それらの種々の形態およびプロビタミン形態
のものが脂溶性ビタミンとみなされ、これらのほか多数の他のビタミンおよびビタミン源または近縁物質も脂溶性であり、極性基および比較的高いオクタノール−水分配係数をもつ。明らかに、全般的クラスのそのような化合物が安全な使用歴および高いベネフィットリスク比をもち、それにより本発明の態様における添加剤として有用となる。
【0155】
[155] 以下の脂溶性ビタミン誘導体および/または供給源の例も添加剤として有用で
ある:アルファ−トコフェロール、ベータ−トコフェロール、ガンマ−トコフェロール、デルタ−トコフェロール、酢酸トコフェロール、エルゴステロール、1−アルファ−ヒドロキシコレカルシフェロール、ビタミンD2、ビタミンD3、アルファ−カロテン、ベータ−カロテン、ガンマ−カロテン、ビタミンA、フルスルチアミン(fursultiamine)、メ
チロールリボフラビン、オクトチアミン(octotiamine)、プロスルチアミン(prosultiamine)、リボフラビン、ビンチアモール(vintiamol)、ジヒドロビタミンK1、ジ酢酸メナジ
オール、ジ酪酸メナジオール、二硫酸メナジオール、メナジオール、ビタミンK1、ビタミンK1オキシド,ビタミンK2、およびビタミンK−S(II)。葉酸もこのタイプであり、それは生理的pHでは水溶性であるが、それを遊離酸形態で配合することができる。本発明の態様に有用な他の脂溶性ビタミン誘導体は、親水性分子との周知の化学反応によって容易に得ることができる。
【0156】
水溶性ビタミンおよびそれらの両親媒性誘導体
[156] ビタミンB、C、U、パントテン酸、葉酸、あるメナジオン関連ビタミン/プ
ロビタミンは、それらの多様な形態の多くが水溶性ビタミンとみなされる。これらを疎水性部分または多価イオンとコンジュゲートまたは錯体形成させて、比較的高いオクタノール−水分配係数および極性基をもつ両親媒性形態にすることもできる。この場合も、そのような化合物は低毒性および高いベネフィットリスク比のものである可能性があり、これによりそれらは本発明の態様における添加剤として有用である。これらの塩類も本発明の態様における添加剤として有用である。水溶性ビタミンおよび誘導体の例には、限定ではなく、アセチアミン(acetiamine)、ベンホチアミン(benfotiamine)、パントテン酸、セト
チアミン(cetotiamine)、シクロチアミン、デクスパンテノール(dexpanthenol), ナイア
シンアミド、ニコチン酸、ピリドキサール 5−リン酸、アスコルビン酸ニコチンアミド、リボフラビン、リン酸リボフラビン、チアミン、葉酸、二リン酸メナジオール、メナジオン亜硫酸水素ナトリウム、メナドキシム(menadoxime)、ビタミンB12、ビタミンK5、ビタミンK6、ビタミンK6、およびビタミンUが含まれる。同様に、前記に述べたように、葉酸は塩として、生理的pHを含む広範なpH範囲にわたって水溶性である。
【0157】
[157] アミノ基または他の塩基性基が存在する化合物は、疎水性基を含む酸、たとえ
ば脂肪酸(特に、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、または2−エチルヘキサン酸)、低溶解性アミノ酸、安息香酸、サリチル酸、または酸性脂溶性ビタミン(たとえば、リボフラビン)との単純な酸−塩基反応によって容易に修飾できる。他の化合物はそのような酸をビタミン上の他の基、たとえばヒドロキシル基と反応させてエステル結合などの連結を形成することにより得ることができる。酸性基を含む水溶性ビタミンの誘導体は、疎水性基を含む反応体、たとえばステアリルアミンまたはリボフラビンとの反応で本発明の態様に有用な化合物を作製することにより生成できる。ビタミンCへのパルミテート鎖の連結によりパルミチン酸アスコルビルが得られる。
【0158】
アミノ酸およびそれらの塩類
[158] アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチ
ン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、プロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、およびそれらの誘導体は、本発明の態様に有用な他の添加剤である。
【0159】
[159] あるアミノ酸は、それらの双性イオン性形態および/または一価もしくは多価
イオンとの塩形態において、極性基、比較的高いオクタノール−水分配係数をもち、本発明の態様に有用である。本発明の開示に関して、“低溶解性アミノ酸”は、非緩衝化水中において約4%(40mg/ml)未満の溶解度をもつアミノ酸を意味するものとする。これらには、シスチン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびメチオニンが含まれる。
【0160】
有機酸ならびにそれらのエステルおよび無水物
[160] 例は、酢酸および無水物、安息香酸および無水物、アセチルサリチル酸、ジフ
ルニサル(diflunisal)、2−ヒドロキシエチルサリチル酸、ジエチレントリアミン五酢酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物、マレイン酸および無水物、コハク酸および無水物、ジグリコール酸無水物、グルタル酸無水物、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、アスパラギン酸、ニコチン酸、2−ピロリドン−5−カルボン酸、ならびに2−ピロリドンである。
【0161】
[161] これらのエステルおよび酸無水物は、有機溶媒、たとえばエタノール、アセト
ン、メチルエチルケトン、酢酸エチルに可溶性である。水不溶性薬物は、これらのエステルおよび酸無水物を含む有機溶媒に溶解すると医療用デバイスに容易にコートすることができ、次いで高pH条件下で加水分解することができる。加水分解された酸無水物またはエステルは水溶性の酸またはアルコール類であり、それらは薬物をデバイスから離して効果的に管壁内へ運ぶことができる。
【実施例】
【0162】
[162] 本発明を以下の実施例にさらに記載する;それらは特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定しない。
実施例1:水性エアロゾル配合物
ラパマイシンの代表的な水性配合物を、下記の成分を用いて調製した。
【0163】
【表A】
【0164】
[163] ブレンディング法:1000mlのこはく色メスフラスコ内で、250のプロ
ピレングリコールと250のエタノールを均一になるまでブレンドする。次いでその後、まず100mgのラパマイシン、次いで20mgのポリソルベート80を、プロピレングリコールおよびエタノールの溶液に順次溶解する。水を添加して体積を1000mlにし、すべてのラパマイシンが均一に溶解するまで撹拌または音波処理する。管理した温度で遮光下に保存する。
【0165】
実施例2:乾燥粉末配合物
[164] バッチ06RP68.HQ00008および06RP68.HQ00009。
これら2配合物は、それぞれ微細な薬物(ラパマイシン)粒子のブレンドをラクトースキャリヤー粒子の表面に分散させたものである。各バッチの最終組成物は、それぞれ約2.60ミクロンおよび3.00ミクロンの平均直径をもつ1%(w/w)の薬物粒子を含む。適切なサイズ範囲をもつ薬物粒子は、下記のように湿式研磨(06RP68.HQ00008)またはジェットミリング(06RP68.HQ00009)により製造される。この例は1%(w/w)のラパマイシンを用いたが、0.5〜20%の範囲が実施可能である。キャリヤー粒子は2種類のキャリヤーのブレンドからなる:Respitose(登録商標) SV003、すなわち95.5%(w/w)で存在し、約30〜100ミクロン(同等な球体の直径)の粒子サイズをもつもの、およびRespitose(登録商標) LH300(Lactohale 300)、すなわち5.5%(w/w)で存在し、10ミクロン(同等な球体の直径)未満の粒子サイズをもつもの。ブレンディング後に、ブレンドをアッセイして均質性および1%の薬物含量を確認した。
【0166】
[165] 薬物粒子の凝集を減らし、薬物粒子のエアロゾル化を補助するために、他の数
種類の賦形剤を所望により含有させる。任意選択的な賦形剤には、リン脂質、たとえばジパルミチルホスファチジルコリン(DPPC)およびレシチン、ならびに脂肪酸の金属塩、たとえばステアリン酸マグネシウムが含まれる。これらをキャリヤー粒子上に、大型キャリヤー粒子に対する賦形剤の重量割合0.01%から0.5%までの範囲でコートすることができる。
【0167】
[166] カプセル充填:バッチ06RP68.HQ00008およびバッチ06RP6
8.HQ00009からの粉末ブレンド20ミリグラムをサイズ#3 HPMCカプセルに装填して、医薬製品を製造した。これらのブレンドについて、5ミリグラムから35ミリグラムまでの薬物を#3サイズのカプセルに装填し、Plastiape(登録商標)
RS01 Model 7またはPlastiape(登録商標) RS00 Model 8デバイスで作動させた際、装填したブレンドの95%より多量を毎分60リットルから100リットルまでの範囲の流速でカプセルから放出することができた。
【0168】
実施例3:C57BL6マウスに口腔咽頭吸引法(OPA)および経口胃管投与により
投与した後の肺および血液中のラパマイシンの測定
[167] この試験は、きわめて高い目標用量1mg/kgのラパマイシンを胃管投与お
よび口腔咽頭吸引法(OPA)により投与した後の雄C57BL/6マウスにおいてラパマイシンの濃度を評価するために実施された。マウスの血液および肺ホモジェネート中のラパマイシンの分析方法は、タンデム質量分析検出を伴なう液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)を用いて開発された。三重濃度を用いるラパマイシンの検量曲線を、マウス血液中において1ng/mL〜2000ng/mL、マウス肺ホモジェネート中において2ng/mL〜20,000ng/mLの間で分析した。正確度、精度および直線性は予想範囲内であった。
【0169】
[168] パイロット試験において、マウス当たり50μLの口腔咽頭吸引法による肺へ
のビヒクル送達の効率を、エバンスブルー色素の投与により評価した。肺のみに青色色素が存在するのが目視確認され、胃に青色色素が存在しないことは用いた方法で胃への送達が避けられたことを立証した。
【0170】
[169] ラパマイシンを雄C57BL/6マウス(N=6)に胃管により1.0mg/
kgの用量で経口投与またはOPA投与した。経口用量は医薬用経口液体配合物Rapamune Oral(登録商標)(Pfizer)を用いて配合された。OPA用ラパマイシンは、被験品を適宜な体積のエタノールに溶解し、次いで適宜な体積の水を添加して、1mgラパマイシン/mLの濃度の10%エタノール溶液を調製することにより調製された。ラパマイシンを6匹の雄C57BL/6マウスの2グループにイソフルラン麻酔下でOPAにより投与した。追加グループの6匹のマウスにビヒクルのみ(水中の10%エタノール)を投与した。投与後1時間目に経口およびOPAラパマイシン投与した6匹のマウスのグループを安楽死させ、心臓穿刺により血液を採取し、肺を摘出した。ラパマイシンまたはビヒクルのみをOPAにより投与した各グループの残りのマウスを、さらに3日間観察した。72時間目の剖検で、心臓穿刺により血液を採取し、肺を摘出した。投与後72時間目に、ラパマイシン処理またはビヒクル処理したマウスに有害作用はみられなかった。
【0171】
[170] 採集した血液および肺ホモジェネートにおいてラパマイシン濃度をLC−MS
/MSにより測定した。ラパマイシンのOPA後、1時間目に、ラパマイシンの濃度は肺組織(3794±1259ng/g 組織)の方が血液中(641±220ng/ml)より約6倍高かった。類似量のラパマイシンを経口投与した後、1時間目の肺および血液のラパマイシン濃度はそれぞれ71±43ng/gおよび23±16ng/mLであった。OPA後の肺ホモジェネート中の濃度は、同じ高い用量(1mg/kg)のラパマイシンを経口投与した後に測定したものより53倍高かった。このデータは、より低い用量のラパマイシン(組織を飽和しない用量レベル)を肺へ送達すると、経口投与により達成できるラパマイシンレベルを肺において生じ、ただし血液中のラパマイシンは経口投与で起きるより有意に少ないであろうということを示唆する。
【0172】
材料および方法
[171] 被検体:シロリムス(Rapamune,ラパマイシン) MW 914.1
72,C5179NO12,CAS番号:53123−88−9。供給業者(経口胃管投与用):Rapamune Oral(登録商標)(Pfizer)経口投与用,ロットNo.:MWGT,有効期限:07/16。供給業者(OPA用):ラパマイシン(シロリムス)固体,LC Laboratories,マサチュセッツ州ウーバン,ロットNo.:ASW−127,有効期限:12/2023。
【0173】
[172] 動物:雄C57BL/6マウス,おおよそ8週齢,Charles Rive
r Laboratories,Incから,ノースカロライナ州ローリー。動物にCe
rtified Purina Rodent Chow #5002を与え、水道水を自由に摂取させた。各バッチの餌の栄養素レベルおよび可能性のある混入物の分析を供給業者が実施し、試験ディレクターが検査し、試験記録に残した。餌をおおよそ60〜70°Fに保存し、使用期間はミリング日から6か月を超えなかった。マウスを(ケージ当たり1匹)、水ボトルを収容するステンレススチールバーリッド付きのポリカーボネートケージ内で飼育した。ケージサイズはおおよそ11.5”×7.5”×5”高さ(床スペース70平方インチ)マウス用である。床敷(contact bedding)はSani−Chips硬
材チップ(P.J.Murphy Forest Products Co.;ニュージャージー州モントビル)であった。マウスを試験に用いる前5日間、隔離した。動物を隔離から開放する前に獣医または資格をもつ被指定者が検査した。RTI動物室の温度および相対湿度は、自動システム(Siebe/Barber−Colman Network 8000 System,Revision 4.4.1 for Signal(登録商標)ソフトウェア付き[Siebe Environmental Controls(SEC)/Barber−Colman Company;イリノイ州ラヴズ・パーク])を用いて継続的にモニター、管理および記録された。目標環境範囲は、温度については64〜79°F(18℃〜26℃)、相対湿度30〜70%、1日につき12時間の明暗サイクルであった。存命期の終わりに二酸化炭素への過剰曝露によりマウスを安楽死させた。
【0174】
[173] 試験用化学物質の調製:エバンスブルーを無菌蒸留水中に0.5% w/vで
調製した。Rapamune Oral(登録商標)を供給されたままで経口投薬用として投与した。ラパマイシン(固体)をエタノールに溶解し、無菌蒸留水で希釈して10%エタノール中0.5mg/mLの最終濃度を得た。
【0175】
[174] 投薬:各動物を投薬前に秤量して投与量を決定した。単回胃管用量を、先端ボ
ール付き(ball-tipped)20−Gステンレススチール胃管投与針(Popper & S
ons Inc.,ニューヨーク州ニューハイド・パーク)を備えた100−μLガラス注射器(Hamilton,ネバダ州リノ)を用いて投与した。各動物に投与した量を充填注射器の重さマイナス空の注射器の重さから決定した。投薬時間を記録した。動物への投薬は適宜な時点で血液を採集できるように間隔をおいた。各グループに投与した配合物量を以下に示す。
【0176】
[175] 口腔咽頭吸引グループの動物には、単回量のラパマイシン(50μL)を各マ
ウスにイソフルラン麻酔下で先端ボール付き20−Gステンレススチール胃管投与針(Popper & Sons Inc.,ニューヨーク州ニューハイド・パーク)を備えた100μLガラス注射器(Hamilton,ネバダ州リノ)を用いて投与した。マウスを投薬前に秤量し、投与したラパマイシンの重量を記録した。各マウスをイソフルランで麻酔し、口を開いた状態で拘束した。鉗子で舌を口の片側へ保持し、投与量を徐々に口腔の遠位部内へ注入した。確実に吸入させるために、2呼吸の間、鼻孔を指で覆った(Rao et al., 2003)。
【0177】
【表1】
【0178】
[176] 血液および肺試料の採集:試験終了時(投薬の1または72時間後)、マウス
をCO曝露により麻酔し、抗凝固剤としてEDTA二カリウムを用いて心臓穿刺により血液を採集した。肺組織を切除し、右肺と左肺に分割した。左肺を分析に用い、右肺をさらなる分析用に液体窒素中で急速凍結して−70℃に保存した。
【0179】
[177] ラパマイシンについてのLC−MS/MSによる試料分析:肺および血液中の
ラパマイシンの分析のためのLC−MS/MS法を、公開されたWu et al. (2012)の方法に基づいて準備した。血液および肺の体積を公開された方法から実質的に減らした。トリアムシノロン(triamcinolone)を内部標準として用いた。
【0180】
[178] 秤量した肺試料をホモジナイザー内において2.8−mmボールベアリングで
組織+脱イオン水(1:3 w/v)を用いてSPEX SamplePrep 2010 Geno/Grinderでホモジナイズすることにより、肺ホモジェネートを調製した。
【0181】
[179] 各標準品が交互のストック標準品からのものになるように標準品の濃度を調整
した。それぞれ三重に作成した6点検量曲線を被検体定量に用いた。重み付きまたは重みなしの単純線形回帰モデルを曲線あてはめに用いた。測定した濃度範囲は血液では1〜2000ng/mL、肺ホモジェネートでは2〜2000ng/mLであった。
【0182】
[180] 下記の方法性能パラメーターを許容できるとみなした;濃度−応答関係につい
て≧0.98の決定係数(coefficient of determination)r;公称値の≦±15%(LOQを超える濃度について)または≦±20%(LOQにおける濃度について)の正確度。rはすべての分析において0.999より大きかった。
【0183】
[181] 30μLのマトリックス、30μLのスパイキング溶液(ブランクおよび試料
についてメタノール)、10μLの内部標準溶液(MeOH中)および90μLのMeOHをミクロ遠心チューブにピペットで入れ、短時間ボルテックス撹拌し、次いで10,000RPM、約4℃で6分間遠心した。アリコート(90μL)の上清をLCバイアルイ
ンサートへ移し、次いでLC−MS/MSにより分析した(表2)。
【0184】
【表2】
【0185】
[182] データの収集およびレポーティング:Debra(商標)システム バージョ
ン5.5.10.72(Lablogic Systems Ltd.,英国シェフィールド)で試験データを収集し、レポートした。これには、動物の体重、投与量、投与時間、および試料採集時間に関するデータが含まれる。投与量の計算および試料採集時間をDebra(商標)システムでレポートした。
【0186】
結果
[183] ラパマイシン分析:ラパマイシンの分析を、血液および肺ホモジェネートの試
料体積30μLに設定した。クロマトグラム例を血液および肺中のラパマイシンおよび内部標準について示す(1および2)。試験試料の調製前に、方法の性能を確認するために肺および血液について三重測定検量曲線を作成した。検量範囲は血液については1.0〜2000ng/mL、肺ホモジェネートについては1〜20,000ng/mLであった。3体積の水中でホモジナイズした肺組織1gを用いて肺ホモジェネートを調製して、1:4ホモジェネートを得た。血液、肺ホモジェネート、および溶媒について、検量曲線を3および4に示す。
【0187】
[184] 口腔咽頭吸引法:ラパマイシンを口腔咽頭吸引法により投与する前に、OPA
によりその用量が肺へ送達されたことを確認するためにエバンスブルーの投与を用いた。マウスをイソフルランで麻酔し、ブラントニードルを備えた注射器を用いてエバンスブルーをOPAにより投与した。OPA直後にマウスを安楽死させ、肺および胃を目視検査して、エバンスブルー色素が肺へ送達され、胃へは送達されなかったことを確認した。4匹のマウスに首尾よくエバンスブルーが投与されて、色素はすべて肺に存在すると思われ、胃には存在しなかった。
【0188】
[185] ラパマイシン投与:投与された投与溶液の重量は、投与溶液を装填した注射器
を投与前に秤量し、そして投与後に秤量することにより決定された。投与された投与溶液の重量を用いて、投与されたラパマイシンの量を計算した。投与時点を0として記録した。グループ2および3の動物を、投与後1時間目に安楽死させた。グループ4および5の
動物を投与後72時間観察した。いずれのグループにも有意の臨床徴候はみられなかった。
【0189】
[186] 血液および肺のラパマイシン分析:採集したすべての試料においてマウスの血
液および左肺ホモジェネート中のラパマイシンを分析した(6および7)。各動物からの右肺試料を可能性のあるさらなる分析のために残しておいた。試料の概要データを表3に示す。
【0190】
【表3】
【0191】
[187] すべての試料セットについて、標準品セット、重複測定試料1、標準品セット
、試料重複測定試料2、標準品セットの順で三重測定検量曲線を分析した。ラパマイシンのOPA後、1時間目に、ラパマイシンの濃度は肺組織(3794±1259ng/g 組織)の方が血液中(641±220ng/ml)より約6倍高かった。類似量のラパマイシンを経口投与した後、1時間目の肺および血液のラパマイシン濃度はそれぞれ71±43ng/gおよび23±16ng/mLであった。OPA後の肺ホモジェネート中の濃
度は、同じ高い用量(1mg/kg)のラパマイシンを経口投与した後より53倍高かった。
【0192】
考察
[188] この試験は、市販の経口配合物での胃管投与により、および10%水性エタノ
ール中に調製した懸濁液としての口腔咽頭投与(OPA)によりラパマイシンを投与した後の、血液および肺組織中のラパマイシンの濃度を調べた。ラパマイシン処理またはビヒクル処理したマウスに、OPAによる投薬の72時間後まで有害作用はみられなかった。ラパマイシンの投与前に、分析法を開発し、OPAにより肺内へ色素が投与されることを確認した。OPA後の肺におけるラパマイシンの濃度は血液中より6倍高かった。OPA後72時間目に、ラパマイシンは血液中では定量限界未満であったが、肺では検出可能であった。この試験は、ラパマイシンが肺投与後に全身に存在すること、および肺への送達後の初期および後期の時点で肺組織濃度が血液中の濃度を大幅に上回ることを示した。
【0193】
[189] これらの結果はさらに、肺へ直接送達されたラパマイシンは血液中と比較して
肺組織において予想外に高い局所薬物濃度を達成することを立証する。この結果は、ラパマイシンの薬理について知られていることからは全く予想されなかった;それによれば、ラパマイシンは身体組織全体に均一に分布し、それの高い親油性のため肺からは急速に消失するはずであることが知られているので、肺組織と血液中の濃度の薬物がほぼ等しいと予測される。したがって、これらの結果は、肺へのラパマイシンの直接投与は療法効果を得るのに十分なほど高い送達量を達成できるはずであり、一方で同時に、ほとんど検出できないほどの全身存在量を達成でき、それにより薬物の全身曝露によるものである経口投与に付随する毒性が排除されることを指摘する。以前の研究からみて肺自体に対する毒性も関心事であるが、ここでの結果はさらに予想外に、比較的高い量のラパマイシンが肺組織に対して急性毒性をもたなかったことを指摘する。
【0194】
参考文献
Crowe, A., Bruelisauer, A. & Duerr, L. (1999). Absorption and intestinal metabolism of SDZ-RAD and rapamycin in rats. Drug Metabolism and Disposition, 27, 627-632.
Rao, G. V. S., Tinkle, S., Weissman, D. N., Antonini, J. M., Kashon, M. L., Salmen, R., Hubbs, A. F. (2003). Efficacy of a technique for exposing the mouse lung to particles aspirated from the pharynx. Journal of Toxicology and Environmental Health. Part A, 66(15), 1441-52. doi:10.1080/15287390306417.
Wu, K., Cohen, E. E. W., House, L. K., Ramirez, J., Zhang, W., Ratain, M. J., & Bies, R. R. (2012). Nonlinear population pharmacokinetics of sirolimus in patients with advanced cancer. CPT: Pharmacometrics & Systems Pharmacology, 1(October), e17. doi:10.1038/psp.2012.18.
実施例4:ラパマイシンの経口およびOPA投与後のマウス肺におけるS6リン酸化
[190] 前記で考察したように、経口投与およびOPA後の肺および血液中におけるラ
パマイシンの組織分布を示す本発明者らの実験は、肺へのラパマイシンの直接投与は療法効果のために十分に高い送達量を達成できるはずであり、一方で同時に、きわめて低い全身薬物曝露が達成され、それにより同時に療法効果が改善されかつラパマイシンの経口投与に付随する毒性の多くが排除されることを立証した。この方法を確証するために、マウス肺組織におけるリン酸化されたS6タンパク質の存在をmTOR活性のバイオマーカーとして利用した。用いたマウス系統(C57bl/6)において、マウスの気道および肺胞上皮細胞は構成性活性(リン酸化された,“p”)S6タンパク質をもつ。S6タンパク質は一般に、mTORC1の下流にあるS6Kによりリン酸化され、成長因子、たとえば上皮成長因子(EGF)、AKT、ERKおよびRSKの下流で活性化される。mTORC1は、脂質、タンパク質およびオルガネラの生合成などの同化プロセスを刺激し、オ
ートファジーなどの異化プロセスを抑制することにより、細胞の成長および増殖を促進する。mTORC1経路は、タンパク質および脂質の合成ならびにオートファジーなどの広範なプロセスを調節するために、成長因子、酸素、アミノ酸およびエネルギー状態を含めた細胞内および細胞外シグナルを感知および統合する。mTORC1はラパマイシンに対して著しく感受性である。
【0195】
[191] この試験では、前記のようにビヒクル(n=6)、またはOPA(n=6)も
しくは経口胃管投与(n=6)により投与した1mg/kgのラパマイシンで処理したC57bl/6マウスから、投薬後の2時点、1時間目および72時間目に肺組織を採取した。前記で考察したように、OPA後1時間目に、ラパマイシンは血液中に641ng/ml、肺に3794ng/g(組織)で検出され、72時間目にもなお肺に12.5ng/gで検出でき、一方、血液中にはその時点で検出できなかった。逆に、経口(胃管)投与後、1時間目にラパマイシンは血液中に23ng/ml、肺に71ng/g(組織)で検出され、72時間目には肺または血液のいずれにも検出できなかった。図1および2のデータにより示すように、リン酸化されたS6(pS6)のレベルはOPAと経口投与の両方のラパマイシンによって1時間目には実質的に低下し、72時間目にはOPAについては抑制されたままであった。これらのマウスは構成性活性mTORシグナル伝達をもつので、pS6はビヒクル対照において最高であった。これらのデータは、肺において約70ng/gの薬物を達成するのに十分なラパマイシンの送達量がpS6タンパク質により測定した肺組織におけるmTORシグナル伝達を実質的に無効にすること、および12.5ng/gという低いレベルでmTORシグナル伝達が抑制状態を維持することを示す。これらの結果は、吸入ラパマイシンは経口投与ラパマイシンよりはるかに低い用量で送達でき、同時に高い療法効果およびきわめて低い毒性を達成することを立証することにより、異常に高いmTOR経路活性を特徴とする疾患および障害、たとえばLAMの処置のために吸入ラパマイシンを利用する本発明者らの方法を確証する。
【0196】
実施例5:吸入可能な組成物を得るためのラパマイシンのサイズ低減
[192] 湿式研磨またはジェットミリング法を用いて、ラパマイシンの粒子サイズを2
.0μm<Dv50<3.0μmの目標範囲に低減した。ジェットミリングには、実験室規模のMCOneユニット(Jetpharmaから)を下記の操作条件で用いた:ベンチュリ(venturi)圧力2〜4バール、ミリング圧力3〜5バール、供給速度90g/時。
湿式研磨のために、精製水を用いて供給材料懸濁液を調製した。マイクロフルイディクス高圧ホモジナイザー(microfluidics high pressure homogenizer)をサイズ低減工程に用
い、得られた懸濁液を噴霧乾燥した。湿式研磨法の詳細を以下に述べる。
【0197】
[193] 湿式研磨法のサイズ低減工程に用いた高圧ホモジナイザーは、補助加工モジュ
ール(200ミクロン)を備えたパイロット規模のマイクロフルイディクス高圧ホモジナイザーであり、100ミクロンのインタラクションチャンバーを用いた。このユニットを約455バール(増圧器モジュール液圧は約30バール)で作動させた。マイクロフルイダイゼーションの後、流体を噴霧乾燥により除去して乾燥粉末を製造した。実験室規模の噴霧乾燥器SD45(BUECHI,モデルB−290 Advanced)に2つの流体ノズル(キャップおよび直径は、それぞれ1.4および0.7mm)を取り付けた。直列の2つのサイクロン(第1は標準Buchiサイクロン、第2は高性能Buchiサイクロン)を用いて乾燥生成物を採集した。この噴霧乾燥ユニットを窒素で、シングルパスモードにおいて、すなわち乾燥用窒素の再循環なしに操作した。窒素を吹きとばすアスピレーターをそれの処理能力の100%に設定した(最大処理能力における流速はおおよそ40kg/時である)。霧化用窒素の流速をロータメーターにおける数値40±5mmに調整した。生成物懸濁液を供給する前に、噴霧乾燥器を精製水で安定化し、その間、流速を6ml/分(蠕動ポンプにおいて20%)に調整した。目標とする出口温度(45℃)に達するように入口温度を調整した。温度が安定化した後、噴霧乾燥器の供給材料を精製
水から生成物懸濁液に切り換え(安定化に際して用いたものと同じ流速を維持しながら)、目標とする出口温度に達するように入口温度を再び調整した。原料懸濁液が終わった時点で、供給ラインをすすいで制御下での運転停止を行なうために、供給材料を再び精製水に切り換えた。両サイクロン下の採集フラスコ内の乾燥生成物を秤量し、高圧ホモジナイザーに供給した懸濁液中の総固体に対する乾燥生成物の質量パーセントとして収率を計算した。
【0198】
[194] 粒度分布をレーザー回折により分析した。固相特性分析(多形および純度につ
いて)を高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、X線粉末回折(XRPD)、および示差走査熱量測定(mDSC)により実施した。含水率をカール−フィッシャー法により測定した。
【0199】
[195] ジェットミリングにより、下記の表に示すように1.5ミクロンのDv10、
2.7ミクロンのDV50、および4.9ミクロンのDv90をもつ単分散粒度分布の結晶性ラパマイシン粉末が製造された。
【0200】
[196] 湿式研磨により、1.0ミクロンのDv10、2.4ミクロンのDV50、お
よび5.0ミクロンのDv90をもつ単分散粒度分布の結晶性ラパマイシン粉末が製造された。
【0201】
[197] 両方法とも目標範囲内のラパマイシン粒子を製造し、いずれの方法もラパマイ
シンの多形および純度に対する影響を示さなかった。下記の表はジェットミリングおよび湿式研磨法についてのインプロセスコントロールデータを示す。このデータは、両方法ともAPI純度または多形に影響を及ぼすことなく目標範囲内のAPI粒子サイズを生成できたことを示す。
【0202】
【表4】
【0203】
【表5】
【0204】
実施例6:乾燥粉末組成物のエアロゾル性能試験
[198] 前記実施例で製造したカプセルを下記の表に示すデバイスに挿入して作動させ
た。デバイス/バッチ06RP68.HQ00008およびバッチ06RP68.HQ00009からのブレンドを収容したカプセルから送達されるエアロゾル性能を、USPの905および601章に記載される方法に従って次世代インパクター(NGI)を用いて特性分析した。エアロゾルを毎分60および100リットル(LPM)の速度で試験した。細粒量(FPD)および細粒分(FPF)を次表に示す。空気力学的質量中央直径(MMAD)および幾何標準偏差(geometric standard deviation)(GSD)をも示す。
【0205】
【表6】
【0206】
【表7】
【0207】
【表8】
【0208】
【表9】
【0209】
[199] これらのエアロゾル性能データに基づけば、湿式研磨した薬物粒子が好ましい
。それらは、より高い細粒量、より高い細粒分を生じ、中心および末梢の両方の肺領域内への侵入を示しかつ口腔沈着がより少ない粒度分布を生じる。
【0210】
実施例7:ラパマイシンの薬物動態モデリング
[200] 前記の06RP68.HQ00008(湿式研磨)+Plasitape RS01モデルのエアロゾル性能、および実施例3の動物実験の結果に基づいて、同様に吸入ラパマイシンのヒトの肺への直接送達は療法効果があるほど十分に高い持続的肺濃度をもたらし、ただし全身曝露は低く(低い血中濃度)、これにより全身曝露による副作用が効果的に抑えられると予想できる。反復QD(1日1回)投薬後のヒトの血液および肺における濃度を予測するために、表7の配合物およびDPIインヘラーを用いる2コンパートメント薬物動態モデルを開発した。薬物動態モデルについて、Rapamune(登録商標)(NDA 21−110、およびNDA 21−083)承認審査概要(summary basis for approval)からのヒトPKパラメーターを用いた:分布体積を780リットルと推定し、クリアランスは0.0003/分であり、排出半減期は42.3時間であった(ラパマイシン静脈内投薬との同等性を推定)。肺からのラパマイシン吸収半減期を、肺吸収データを入手できる他の高親油性化合物、たとえばプロピオン酸フルチカゾンと同様におおよそ0.5時間と推定した。肺に沈着するラパマイシンの生物学的利用能をおおよそ100%と推定した。口腔咽頭沈着により、または上気道からの粘液線毛クリアランス(mucociliary clearance)による離脱により胃腸経路で吸収されたラパマイシンの生物学的利用能を、Rapamune(登録商標)承認審査概要にレポートされたように14%と推定した。表7に示すように毎分60リットルの流速での一般的なヒト呼吸動作について、細粒量は57マイクログラムであり、細粒分は40%であった。
【0211】
[201] このモデルは、図8に示すように11日後に平均定常状態濃度に達すると予測
する。この図から、肺への1日1回、57マイクログラムの反復投薬によりおおよそ0.150ナノグラム/mlのトラフ血中濃度が生じることが分かる;これは、McCormack et
al. (2011), “Efficacy and safety of sirolimus in lymphangioleiomyomatosis”, N
Engl J Med 364:1595-1606に報告された5〜15ng/mlの濃度より実質的に低い。
肺組織質量は850グラムであり、肺における代謝はなく、肺吸収半減期は30分である
と仮定して、肺へ送達された57マイクログラムのラパマイシンは、肺組織においてラパマイシンの局所肺濃度おおよそ60ng/グラムを伴なう療法レベルをもたらすであろう。
【0212】
均等物
[202] 当業者はルーティン程度の実験を用いて本明細書に記載する本発明の特定の態
様に対する多数の均等物を認識し、あるいは確認できるであろう。そのような均等物は特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0213】
[203] 本明細書に引用したすべての参考文献は、個々の刊行物または特許もしくは特
許出願が具体的かつ個別にそれの全体をあらゆる目的で援用すると指示されたと同様に、それらの全体があらゆる目的で本明細書に援用される。
【0214】
[204] 本発明は本明細書に記載する特定の態様により範囲が限定されることはない。実際に、以上の記載および添付の図面から、本明細書に記載したもののほかに本発明の多様な改変が当業者に明らかになるであろう。そのような改変は特許請求の範囲に包含されるものとする。
一態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1] ヒト対象においてリンパ脈管筋腫症を処置する際に使用するための、ある量の薬物のマイクロ粒子、キャリヤーの粒子、および1種類以上の任意選択的な賦形剤を含み、薬物がラパマイシンまたはそのプロドラッグもしくは誘導体から選択される、肺送達のための医薬乾燥粉末組成物。
[態様2] マイクロ粒子が、0.1から10ミクロンまでの直径および1から5ミクロンまでの平均直径を有する薬物粒子からなる、態様1に記載の組成物。
[態様3] 粒子が、1.5から4ミクロンまで、1.5から3.5ミクロンまで、または2から3ミクロンまでの平均直径を有する、態様2に記載の組成物。
[態様4] キャリヤーが、アラビノース、グルコース、フルクトース、リボース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、デンプン、デキストラン、マンニトール、リジン、ロイシン、イソロイシン、ジパルミチルホスファチジルコリン、レシチン、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−co−グルタミン酸)、およびキシリトール、または以上のいずれかの混合物からなる群から選択される、態様1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
[態様5] キャリヤーの粒子が、1から200ミクロンまで、30から100ミクロンまでの範囲、または10ミクロン未満の直径を有する、態様1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
[態様6] キャリヤーが、2種類の異なるキャリヤー、第1キャリヤーおよび第2キャリヤーのブレンドを含むかまたはそれからなる、態様1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
[態様7] キャリヤーが、2種類の異なるラクトースキャリヤーのブレンドからなる、態様6に記載の組成物。
[態様8] 第1キャリヤーが約30〜100ミクロンの範囲の直径を有する粒子からなり、第2キャリヤーが10ミクロン未満の直径を有する粒子からなる、態様6または7に記載の組成物。
[態様9] 2種類の異なるキャリヤーの比が3:97から97:3までの範囲である、態様8に記載の組成物。
[態様10] 粉末中のキャリヤーに対する薬物の割合が0.5%から2%(w/w)までである、態様1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
[態様11] 粉末中のキャリヤーに対する薬物の割合が1%(w/w)である、態様10に記載の組成物。
[態様12] 薬物の量が、組成物の総重量を基準として0.5%から20%(w/w)までである、態様1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
[態様13] 薬物の量が約1%から2%(w/w)までである、態様12に記載の組成物。
[態様14] 1種類以上の任意選択的な賦形剤が存在し、リン脂質および脂肪酸金属塩から選択される、態様1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
[態様15] リン脂質が、ジパルミチルホスファチジルコリンおよびレシチンから選択される、態様14に記載の組成物。
[態様16] 脂肪酸金属塩がステアリン酸マグネシウムである、態様14に記載の組成物。
[態様17] 任意選択的な賦形剤または賦形剤類が、大型キャリヤー粒子に対する賦形剤の重量割合0.01%から0.5%までの範囲でキャリヤー粒子上にコートされている、態様14〜16のいずれか1項に記載の組成物。
[態様18] 薬物の量が、mTORC1の生物活性を阻害するのに有効な量である、態様1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
[態様19] 薬物の量が、S6タンパク質のリン酸化を阻害するのに有効な量である、態様18に記載の組成物。
[態様20] 薬物の量が、肺に送達される呼吸可能用量5マイクログラムから400マイクログラムを達成するのに有効な量である、態様1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
[態様21] 呼吸可能用量が約10、約50、約100または約250マイクログラムである、態様20に記載の組成物。
[態様22] 薬物の量が、対象において5ng/ml未満、2ng/ml未満、1ng/ml未満、0.5ng/ml未満、または0.25ng/ml未満の血中トラフレベルを生じるのに有効な量である、態様1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
[態様23] 血中トラフレベルが、1ng/ml未満、0.5ng/ml未満、または0.25ng/ml未満である、態様22に記載の組成物。
[態様24] 薬物の量が、肺組織において1ng/gから1ug/gまでの薬物濃度を生じるのに有効な量である、態様1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
[態様25] 肺組織における薬物の濃度が、約10ng/g、約25ng/g、約50ng/g、約100ng/g、または約200ng/gである、態様24に記載の組成物。
[態様26] 組成物中の薬物の量が、50ugから500ugまで、50ugから250ugまで、または50ugから150ugまでである、態様1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
[態様27] 薬物が投与後に肺において約1ng/g、約10ng/g、約25ng/g、約50ng/g、または約100ng/gの療法レベルで、ある期間存続し、その期間が約6〜10時間、約6〜14時間、約6〜24時間、および約6〜72時間から選択される、態様1〜26のいずれか1項に記載の組成物。
[態様28] 期間が約10時間、約14時間、約24時間、および約72時間から選択される、態様27に記載の組成物。
[態様29] 薬物がラパマイシンである、態様1〜28のいずれか1項に記載の組成物。
[態様30] 組成物が、1〜12か月間または1〜36か月間の貯蔵後に、20%を超える細粒分(FPF)を有し、対応する細粒量(FPD)は10マイクログラムから2ミリグラムまでの範囲、好ましくは0.5ミリグラム未満である、態様1〜29のいずれか1項に記載の組成物。
[態様31] さらに1種類以上の追加療法薬を含む、態様1〜30のいずれか1項に記載の組成物。
[態様32] 1種類以上の追加療法薬が、エストロゲンアンタゴニスト、スタチン、src阻害薬、およびVEGF−R阻害薬から選択される、態様31に記載の組成物。
[態様33] 1種類以上の追加療法薬が、レトロゾール、タモキシフェン、シンバスタチン、サラカチニブ、パゾパニブ、イマチニブ、およびその組合わせからなる群から選択される、態様31に記載の組成物。
[態様34] 組成物が、努力肺活量(FVC)および努力呼気量(FEV1)により測定した対象の肺機能を改善するのに有効な量の薬物を送達する、態様1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
[態様35] 組成物が、放射線検査により検出できる規模または量の胸膜滲出液を低減するのに有効な量の薬物を送達する、態様1〜34のいずれか1項に記載の組成物。
[態様36] 組成物を1日1回投与に適合させる、態様1〜35のいずれか1項に記載の組成物。
[態様37] 薬物の水性懸濁液を調製し、その薬物懸濁液にマイクロフルイダイゼーションを施し、得られた粒子を噴霧乾燥して乾燥粉末を形成する工程を含む、湿式研磨法により製造された、態様1〜36のいずれか1項に記載の組成物。
[態様38] 薬物がラパマイシンであり、キャリヤーが2種類の異なるラクトースキャリヤーのブレンドからなり、第1キャリヤーが約30〜100ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子からなり、第2キャリヤーが10ミクロン未満の平均直径を有する粒子からなり、2種類の異なるキャリヤーの比が約97:3〜3:97であり、ラパマイシンの量が25マイクログラムから1400マイクログラムまでである、態様1〜37のいずれか1項に記載の組成物。
[態様39] 態様1〜38のいずれか1項に記載の組成物を含み、薬物の量が約1マイクログラムから2500マイクログラムまで、25マイクログラムから250マイクログラムまで、50マイクログラムから150マイクログラムまでである、リンパ脈管筋腫症を処置するための単位剤形。
[態様40] 薬物の量が約50マイクログラムから250マイクログラムまでである、態様39に記載の単位剤形。
[態様41] 剤形が、ドライパウダーインヘラーデバイスに使用するのに適したカプセルである、態様39または40に記載の単位剤形。
[態様42] カプセルが1mgから100mgまでの粉末を収容している、態様39〜41のいずれか1項に記載の単位剤形。
[態様43] カプセルが10mgから40mgまでの粉末を収容している、態様42に記載の単位剤形。
[態様44] カプセルが、ゼラチン、プラスチック、ポリマーまたはセルロース系のカプセルであり、あるいはホイル/ホイルまたはホイル/プラスチックブリスターの形態である、態様39〜43のいずれか1項に記載の単位剤形。
[態様45] 態様1〜38のいずれか1項に記載の組成物、または態様39〜44のいずれか1項に記載の単位剤形、および使用のための指示を含む、医薬パッケージまたはキット。
[態様46] 態様1〜38のいずれか1項に記載の組成物、または態様39〜44のいずれか1項に記載の単位剤形を収容したリザーバーを含む、乾燥粉末送達デバイス。
[態様47] リザーバーが、デバイス内の一体チャンバー、カプセルまたはブリスターである、態様46に記載の乾燥粉末送達デバイス。
[態様48] デバイスが、Plastiape(登録商標) RS01 Model 7、Plastiape(登録商標) RS00 Model 8、XCaps(登録商標)、Handihaler(登録商標)、Flowcaps(登録商標)、TwinCaps(登録商標)、およびAerolizer(登録商標)から選択される、態様46または47に記載の乾燥粉末送達デバイス。
[態様49] そのような処置を必要とするヒト対象においてリンパ脈管筋腫症を処置するための方法であって、対象に態様1〜38のいずれか1項に記載の組成物または態様39〜44のいずれか1項に記載の単位剤形を吸入により投与することを含む方法。
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