【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル共重合体と、重合開始剤とを含有する硬化性粘着剤組成物であって、上記(メタ)アクリル共重合体は、下記一般式(1)で表される構成単位と、水酸基含有モノマーに由来する構成単位とを有する硬化性粘着剤組成物である。
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(1)中、R
1は炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基を表し、R
2はラジカル重合性不飽和結合を含有する基を2以上含有する基を表し、R
5は水素又はメチル基を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、(メタ)アクリル共重合体を含有し、重合開始剤の存在下で熱や光等の刺激によって硬化する硬化性粘着剤組成物において、(メタ)アクリル共重合体として、特定の構成単位、特に、ラジカル重合性不飽和結合を含有する基を2以上含有する基と、ウレタン結合とを有する構成単位を有する共重合体を用いることを検討した。このような硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、被着体への貼り合わせ時には柔軟性が高く、高い密着性で貼り合わせることができる。更に、本発明者らは、このような硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、重合開始剤の存在下で熱や光等の刺激によって硬化して弾性率が上昇し、粘着力が低下する一方で、熱分解が抑制されるため、高温での剥離が顕著に抑制され、また、工程終了後には容易に剥離できるとともに糊残りも顕著に抑制されることを見出した。これにより、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル共重合体と、重合開始剤とを含有する。
上記(メタ)アクリル共重合体は、下記一般式(1)で表される構成単位を有する。
【0013】
【化2】
【0014】
一般式(1)中、R
1は炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基を表し、R
2はラジカル重合性不飽和結合を含有する基を2以上含有する基を表し、R
5は水素又はメチル基を表す。
【0015】
上記一般式(1)で表される構成単位は、R
2で表されるラジカル重合性不飽和結合を含有する基を2以上含有する基と、ウレタン結合(−NH−COO−)とを有する構成単位である。
上記(メタ)アクリル共重合体が上記一般式(1)で表される構成単位を有することで、本発明の硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、被着体への貼り合わせ時には柔軟性が高く、高い密着性で貼り合わせることができる一方で、重合開始剤の存在下で熱や光等の刺激によって硬化して弾性率が上昇し、粘着力が低下する。このとき、ラジカル重合性不飽和結合を含有する基が2以上存在することで、ラジカル重合性不飽和結合を含有する基が1つしか存在しない場合と比べて、粘着剤層の硬化時の架橋密度が大きく増大するため、粘着剤層が高温でも熱分解しにくくなり、高温でも剥離しにくくなる。また、上記一般式(1)で表される構成単位に含まれるウレタン結合は高温でも比較的安定であることから、該ウレタン結合が存在することによっても、粘着剤層が高温でも剥離しにくくなる。
また、本発明の硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、重合開始剤の存在下で熱や光等の刺激によって硬化して弾性率が上昇し、粘着力が低下することで、工程終了後には容易に剥離することができ、糊残りを抑えることもできる。
【0016】
上記一般式(1)中、上記R
1で表される炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基は特に限定されず、例えば、上記炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記エーテル結合含有基又はエステル結合含有基としては、上記のような炭化水素基中に更にエーテル結合又はエステル結合を有する基等が挙げられる。なかでも、直鎖状又は分岐状の鎖式炭化水素基が好ましい。
上記直鎖状又は分岐状の鎖式炭化水素基は特に限定されず、炭素数1〜20のアルキレン基が好ましく、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル共重合体において、異なる複数の一般式(1)で表される構成単位におけるR
1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
上記一般式(1)中、上記R
2で表されるラジカル重合性不飽和結合を含有する基を2以上含有する基は特に限定されず、ラジカル重合性不飽和結合を含有する基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。上記R
2における2以上の上記ラジカル重合性不飽和結合を含有する基は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。上記R
2は、2以上の上記ラジカル重合性不飽和結合を含有する基を有していればよく、3以上の上記ラジカル重合性不飽和結合を含有する基を有していてもよい。
上記R
2で表されるラジカル重合性不飽和結合を含有する基を2以上含有する基として、具体的には例えば、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル基等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル共重合体において、異なる複数の一般式(1)で表される構成単位におけるR
2は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
上記一般式(1)中、上記R
5は、水素又はメチル基を表す。
【0019】
上記一般式(1)で表される構成単位は、より具体的には、熱分解をより抑制できることから、下記一般式(1−A)で表される構成単位であることが好ましい。
【0020】
【化3】
【0021】
一般式(1−A)中、R
1は炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基を表し、R
5は水素又はメチル基を表す。
上記一般式(1−A)におけるR
1及びR
5は、上記一般式(1)におけるR
1及びR
5と同様である。
【0022】
上記(メタ)アクリル共重合体に上記一般式(1)で表される構成単位を導入する方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル共重合体を構成するアクリル系モノマーとして、上記一般式(1)で表される構成単位となるアクリル系モノマーを用いる方法が挙げられる。
また、アクリル系モノマーとして、水酸基と、上記R
1で表される炭化水素基等とを含有するアクリル系モノマーを用い、得られたポリマーに存在する水酸基に対して、該水酸基と反応するイソシアネート基と、上記R
2で表されるラジカル重合性不飽和結合を含有する基を2以上含有する基とを有する化合物を反応させる方法も挙げられる。なお、このような水酸基とイソシアネート基との反応により、上記一般式(1)で表される構成単位に含まれるようなウレタン結合が形成される。以下、イソシアネート基と、上記R
2で表されるラジカル重合性不飽和結合を含有する基を2以上含有する基とを有する化合物を、「不飽和結合含有イソシアネート化合物」ともいう。
【0023】
上記水酸基と、上記R
1で表される炭化水素基等とを含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記不飽和結合含有イソシアネート化合物としては、例えば、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
上記(メタ)アクリル共重合体における上記一般式(1)で表される構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は2モル%、好ましい上限は25モル%である。上記構成単位の含有量が2モル%以上であれば、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、高温でもより剥離しにくくなり、また、工程終了後にはより容易に剥離できるとともに糊残りをより抑えることができる。上記構成単位の含有量が25モル%以下であれば、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層の凝集力、粘着力等に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。上記構成単位の含有量のより好ましい下限は4モル%、より好ましい上限は22モル%であり、更に好ましい下限は6モル%、更に好ましい上限は20モル%である。
なお、上記一般式(1)で表される構成単位の含有量は、上記(メタ)アクリル共重合体の質量分析及び
1H−NMR測定を行い、
1H−NMR測定により得られたラジカル重合性不飽和結合に由来する水素のピークの積分強度から算出することができる。
【0025】
上記(メタ)アクリル共重合体は、水酸基含有モノマーに由来する構成単位を有する。
上記(メタ)アクリル共重合体が上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位を有することで、本発明の硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、凝集力が高くなり、高温でもより剥離しにくくなる。また、本発明の硬化性粘着剤組成物がシリコーン化合物と、架橋剤とを含有する場合、上記(メタ)アクリル共重合体が上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位を有することで、上記(メタ)アクリル共重合体の水酸基が架橋剤を介してシリコーン化合物と充分に結合することができる。このため、シリコーン化合物がブリードアウトすることによる被着体の汚染を低減することができる。
【0026】
上記水酸基含有モノマーとしては特に制限されないが、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位は、より具体的には、高温での耐剥離性、凝集力の観点から、下記一般式(2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0027】
【化4】
【0028】
一般式(2)中、R
4は炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基を表し、R
5は水素又はメチル基を表す。
【0029】
上記一般式(2)中、上記R
4で表される炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基は特に限定されず、上記R
1で表される炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基と同様の基が挙げられる。
なお、上記一般式(2)で表される構成単位は、上記(メタ)アクリル共重合体に上記一般式(1)で表される構成単位を導入するための構成単位であってもよい。即ち、上記一般式(2)で表される構成単位の水酸基に対して、上記不飽和結合含有イソシアネート化合物を反応させることで、上記(メタ)アクリル共重合体に上記一般式(1)で表される構成単位を導入することができる。このため、上記R
1で表される炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基と、上記R
4で表される炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基とは、同じであってもよい。
ただし、上記一般式(2)で表される構成単位の水酸基のうち全ての水酸基が上記不飽和結合含有イソシアネート化合物と反応してしまうと、上記(メタ)アクリル共重合体は上記一般式(2)で表される構成単位を有することができなくなる。このため、上記不飽和結合含有イソシアネート化合物の種類、反応条件、反応比等を適宜調整することにより、反応性を調整する必要がある。
【0030】
上記(メタ)アクリル共重合体に上記一般式(2)で表される構成単位を導入する方法は特に限定されず、例えば、次の方法等が挙げられる。即ち、上記(メタ)アクリル共重合体を構成するアクリル系モノマーとして、上記一般式(2)で表される構成単位となる、水酸基と、上記R
4で表される炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基とを含有するアクリル系モノマーを用いる方法等が挙げられる。
上記水酸基と、上記R
4で表される炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基とを含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は20モル%である。上記構成単位の含有量が0.1モル%以上であれば、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、凝集力が充分に高くなり、高温でもより剥離しにくくなる。また、上記構成単位の含有量が0.1モル%以上であれば、本発明の硬化性粘着剤組成物がシリコーン化合物と、架橋剤とを含有する場合、上記(メタ)アクリル共重合体が架橋剤を介してシリコーン化合物とより充分に結合できるため、被着体の汚染を低減することができる。上記構成単位の含有量が20モル%以下であれば、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層が硬くなりすぎることを抑制することができる。上記構成単位の含有量のより好ましい下限は2モル%、より好ましい上限は17モル%である。
なお、上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位の含有量は、上記(メタ)アクリル共重合体の質量分析及び
1H−NMR測定から算出することができる。
【0032】
上記(メタ)アクリル共重合体は、更に、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル共重合体が上記カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位を有することで、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、凝集力が高くなり、高温でもより剥離しにくくなる。また、本発明の硬化性粘着剤組成物がシリコーン化合物と、架橋剤とを含有する場合、上記(メタ)アクリル共重合体が上記カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位を有することで、上記(メタ)アクリル共重合体のカルボキシル基が架橋剤を介してシリコーン化合物と充分に結合することができる。このため、シリコーン化合物がブリードアウトすることによる被着体の汚染を低減することができる。
【0033】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
上記カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位は、より具体的には、下記一般式(3)で表される構成単位であることが好ましい。
【0034】
【化5】
【0035】
一般式(3)中、R
5は水素又はメチル基を表す。
【0036】
上記(メタ)アクリル共重合体に上記一般式(3)で表される構成単位を導入する方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル共重合体を構成するアクリル系モノマーとして、上記一般式(3)で表される構成単位となる(メタ)アクリル酸を用いる方法が挙げられる。
【0037】
上記(メタ)アクリル共重合体における上記カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は5モル%である。上記構成単位の含有量が0.1モル%以上であれば、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、凝集力が充分に高くなり、高温でもより剥離しにくくなる。また、上記構成単位の含有量が0.1モル%以上であれば、本発明の硬化性粘着剤組成物がシリコーン化合物と、架橋剤とを含有する場合、上記(メタ)アクリル共重合体が架橋剤を介してシリコーン化合物とより充分に結合できるため、被着体の汚染を低減することができる。上記含有量が5モル%以下であれば、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層が硬くなりすぎることを抑制することができる。上記構成単位の含有量のより好ましい下限は1モル%、より好ましい上限は3モル%である。
なお、上記カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位の含有量は、上記(メタ)アクリル共重合体の質量分析及び
1H−NMR測定から算出することができる。
【0038】
上記(メタ)アクリル共重合体は、上記一般式(1)で表される構成単位、上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位及び上記カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位に加えて、他のラジカル重合性モノマーに由来する構成単位を有していてもよい。
【0039】
上記他のラジカル重合性モノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステルや、アミド基、ニトリル基等の極性官能基を有するモノマーや、ビニル化合物等が挙げられる。なかでも、凝集力、粘着力等の観点から、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
上記他のラジカル重合性モノマーに由来する構成単位は、より具体的には、下記一般式(4)で表される構成単位であることが好ましい。
【0040】
【化6】
【0041】
一般式(4)中、R
3は炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基を表し、R
5は水素又はメチル基を表す。
【0042】
上記一般式(4)中、上記R
3で表される炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基は特に限定されず、例えば、上記炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状の鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記エーテル結合含有基又はエステル結合含有基としては、上記のような炭化水素基中に更にエーテル結合又はエステル結合を有する基等が挙げられる。
上記直鎖状又は分岐状の鎖式炭化水素基は特に限定されず、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、イソミリスチル基、ステアリル基等が挙げられる。
上記脂環式炭化水素基は特に限定されず、例えば、シクロヘキシル基、イソボルニル基等が挙げられる。
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基は特に限定されず、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
上記エーテル結合含有基は特に限定されず、例えば、2−ブトキシエチル基、2−フェノキシエチル基、グリシジル基、テトラヒドロフルフリル基、ポリプロピレングリコール基等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル共重合体において、異なる複数の一般式(4)で表される構成単位におけるR
3は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0043】
上記一般式(4)中、上記R
5は、水素又はメチル基を表す。
【0044】
上記(メタ)アクリル共重合体に上記一般式(4)で表される構成単位を導入する方法は特に限定されず、例えば、次の方法等が挙げられる。即ち、上記(メタ)アクリル共重合体を構成するアクリル系モノマーとして、上記一般式(4)で表される構成単位となる、上記R
3で表される炭化水素基、エーテル結合含有基又はエステル結合含有基を含有するアクリル系モノマーを用いる方法等が挙げられる。
【0045】
上記(メタ)アクリル共重合体における上記一般式(4)で表される構成単位の含有量は特に限定されないが、上記一般式(4)で表される構成単位は、上記(メタ)アクリル共重合体の主成分となる構成単位であることが好ましい。上記一般式(4)で表される構成単位の含有量の好ましい下限は50モル%、好ましい上限は95モル%である。上記構成単位の含有量が上記範囲内であれば、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層の凝集力、粘着力等が充分に発揮される。上記構成単位の含有量のより好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は90モル%である。
なお、上記一般式(4)で表される構成単位の含有量は、上記(メタ)アクリル共重合体の質量分析及び
1H−NMR測定から算出することができる。
【0046】
上記他のラジカル重合性モノマーのうち、上記アミド基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。上記ニトリル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0047】
上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は30万、好ましい上限は200万である。上記重量平均分子量が上記範囲内であれば、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、柔軟性が高くなり、被着体への貼り合わせ時に高い密着性で貼り合わせることができるため、高温でもより剥離しにくくなる。上記重量平均分子量のより好ましい下限は40万、より好ましい上限は160万である。
【0048】
上記(メタ)アクリル共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、好ましい下限は1.5、好ましい上限は7.0である。上記分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内であれば、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層の凝集力、粘着力等が充分に発揮される。上記分子量分布(Mw/Mn)のより好ましい下限は2.0、より好ましい上限は6.0である。
【0049】
上記重量平均分子量及び上記分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲に調整するには、例えば、上記(メタ)アクリル共重合体の組成、重合方法、重合条件等を調整すればよい。
なお、上記重量平均分子量及び上記分子量分布(Mw/Mn)は、以下の方法により測定できる。
(メタ)アクリル共重合体の溶液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過する。得られた濾液をゲル浸透クロマトグラフ(例えば、Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1mL/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、共重合体のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量及び分子量分布(Mw/Mn)を求める。カラムとしては、例えば、GPC KF−806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては、示差屈折計を用いる。
【0050】
上記(メタ)アクリル共重合体は、モノマー混合物を共重合して得られる。上記モノマー混合物を共重合して上記(メタ)アクリル共重合体を得るには、上記モノマー混合物を、重合開始剤の存在下にてラジカル重合させればよい。上記モノマー混合物をラジカル重合させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。上記モノマー混合物をラジカル重合させる際の反応方式としては、例えば、リビングラジカル重合、フリーラジカル重合等が挙げられる。
【0051】
上記(メタ)アクリル共重合体は、リビングラジカル重合により得られた(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。リビングラジカル重合によれば、フリーラジカル重合と比較してより均一な分子量及び組成を有する共重合体が得られ、低分子量成分の生成を抑えることができる。このため、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、凝集力が高くなり、高温でもより剥離しにくくなる。
【0052】
上記リビングラジカル重合においては、種々の重合方式を採用してもよい。例えば、鉄、ルテニウムや銅触媒及びハロゲン系開始剤を用いたATRP法であってもよく、TEMPO等を用いたNMP法であってもよく、有機テルル重合開始剤を用いてもよい。
【0053】
上記モノマー混合物をラジカル重合させる際には、分散安定剤を用いてもよい。上記分散安定剤として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記モノマー混合物をラジカル重合させる際に重合溶媒を用いる場合、該重合溶媒は特に限定されない。該重合溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒や、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒を用いることができる。これらの重合溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、重合温度は、重合速度の観点から0〜110℃が好ましい。
【0054】
本発明の硬化性粘着剤組成物は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤等が挙げられる。なかでも、本発明の硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層を、被着体に加熱を伴う処理を施す際の熱によって硬化させることができるため別途粘着剤層を硬化させる工程を必要としないこと、また、光を通さない被着体に用いた場合であっても硬化が可能であることから、熱重合開始剤が好ましい。
【0055】
上記光重合開始剤は特に限定されず、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤として、例えば、アセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、フォスフィンオキシド誘導体化合物、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等が挙げられる。
上記アセトフェノン誘導体化合物として、例えば、メトキシアセトフェノン等が挙げられる。上記ベンゾインエーテル系化合物として、例えば、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。上記ケタール誘導体化合物として、例えば、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記熱重合開始剤は特に限定されず、例えば、熱により分解し、重合反応を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられる。具体的には例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。これらの熱重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記重合開始剤の含有量は特に限定されず、上記(メタ)アクリル共重合体及び上記重合開始剤の種類に応じて適宜決定されるが、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部であり、より好ましい下限が1重量部、より好ましい上限が8重量部である。
【0058】
本発明の硬化性粘着剤組成物は、更に、シリコーン化合物を含有することが好ましい。
上記シリコーン化合物を含有することで、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層においては、上記シリコーン化合物が分子移動して粘着剤層の表面に集まり、粘着剤層の表面が疎水的となる。これにより、粘着剤層と被着体とが相互作用しにくくなることから、高温でも粘着剤層の接着亢進を低減することができ、工程終了後には粘着剤層をより容易に剥離できるとともに糊残りをより抑えることができる。
【0059】
上記シリコーン化合物は、架橋性官能基を有することが好ましい。
上記シリコーン化合物が上記架橋性官能基を有することで、架橋剤を介して上記シリコーン化合物が上記(メタ)アクリル共重合体と結合することができる。これにより、上記シリコーン化合物がブリードアウトすることによる被着体の汚染を低減することができる。
上記架橋性官能基は特に限定されず、上記(メタ)アクリル共重合体と架橋可能な官能基であればよく、上記(メタ)アクリル共重合体に存在する官能基に合わせて適宜決定され、例えば、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基、水酸基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
【0060】
上記シリコーン化合物は、シロキサン結合を有する化合物であれば特に限定されず、具体的には例えば、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーン系グラフト共重合体、シリコーン系ブロック共重合体等が挙げられる。なかでも、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層の表面に集まりやすく、高温でも粘着剤層の接着亢進をより低減できることから、シリコーン系グラフト共重合体が好ましい。
上記変性シリコーンオイルは特に限定されず、例えば、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0061】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、シロキサン結合を含有するグラフト鎖を側鎖に有する共重合体である。
上記シリコーン系グラフト共重合体は特に限定されないが、シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。
上記シリコーンマクロモノマーは、シロキサン結合含有基を有するモノマーであれば特に限定されず、例えば、アクリル系シリコーンマクロモノマー、スチレン系シリコーンマクロモノマー等が挙げられる。なかでも、耐熱性及び耐候性に優れることから、アクリル系シリコーンマクロモノマーが好ましく、下記一般式(5)又は(6)に示す構造を有するアクリル系シリコーンマクロモノマーがより好ましい。
【0062】
【化7】
【0063】
ここで、Rは(メタ)アクリロイル基含有官能基を表し、X及びYはそれぞれ独立して、0又は1以上の整数を表す。
Rとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。X及びYの上限は特に限定されないが、X及びYは通常5000以下であり、500以下が好ましく、200以下がより好ましい。
【0064】
上記シリコーンマクロモノマーの重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は500、好ましい上限は5万である。上記重量平均分子量が上記範囲内であれば、上記シリコーン系グラフト共重合体によって形成される疎水的な表面層が厚くなることから、高温でも粘着剤層の接着亢進を低減することができ、工程終了後には粘着剤層をより容易に剥離できるとともに糊残りをより抑えることができる。上記重量平均分子量のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は2万である。
【0065】
上記シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、上記シリコーン系グラフト共重合体中の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は90重量%である。上記含有量が上記範囲内であれば、高温でも粘着剤層の接着亢進を低減することができ、工程終了後には粘着剤層をより容易に剥離できるとともに糊残りをより抑えることができる。上記含有量のより好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は80重量%であり、更に好ましい下限は10重量%、更に好ましい上限は60重量%である。
【0066】
上記シリコーン系グラフト共重合体が上記架橋性官能基を有する場合、上記架橋性官能基は、上記シリコーン系グラフト共重合体のグラフト鎖に存在してもよく、主鎖に存在してもよく、グラフト鎖及び主鎖に存在してもよい。
【0067】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、上記架橋性官能基を有するためには、上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。
上記架橋性官能基を有するモノマーは特に限定されず、上記架橋性官能基がカルボキシル基である場合、カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。上記架橋性官能基が水酸基である場合、水酸基を有するモノマーとしては、例えば、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記架橋性官能基がグリシジル基である場合、グリシジル基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。上記架橋性官能基がアミド基である場合、アミド基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。上記架橋性官能基がニトリル基である場合、ニトリル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、上記シリコーン系グラフト共重合体中の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記含有量が上記範囲内であれば、上記シリコーン系グラフト共重合体が上記(メタ)アクリル共重合体と充分に結合しながらも、上記(メタ)アクリル共重合体同士でも充分な架橋構造を構築することができるため、高温でも粘着剤層がより剥離しにくくなり、工程終了後には粘着剤層をより容易に剥離できるとともに糊残りをより抑えることができる。上記含有量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は15重量%である。
【0069】
また、上記架橋性官能基は、ラジカル重合性の不飽和結合であってもよい。この場合、上記シリコーン系グラフト共重合体が上記ラジカル重合性の不飽和結合を有するためには、上記シリコーン系グラフト共重合体に存在する官能基に対して、該官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物を反応させることが好ましい。
このような化合物は特に限定されず、上記シリコーン系グラフト共重合体に存在する官能基に応じて適宜選択することができる。上記シリコーン系グラフト共重合体に存在する官能基がカルボキシル基の場合は、エポキシ基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物、イソシアネート基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物等が用いられる。上記シリコーン系グラフト共重合体に存在する官能基が水酸基の場合は、イソシアネート基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物等が用いられる。上記シリコーン系グラフト共重合体に存在する官能基がエポキシ基の場合は、カルボキシル基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物、アミド基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物等が用いられる。上記シリコーン系グラフト共重合体に存在する官能基がアミノ基の場合は、エポキシ基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物等が用いられる。
【0070】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、上記シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位及び上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位に加えて、更に、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル化合物、他の極性官能基を有するモノマー等に由来する構成単位を有していてもよい。
【0071】
上記(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等も挙げられる。
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、適度な粘着力を付与できることから、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0072】
上記ビニル化合物は特に限定されず、例えば、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。これらのビニル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
上記シリコーン系グラフト共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい上限は40万である。上記重量平均分子量が40万以下であれば、上記シリコーン系グラフト共重合体が粘着剤層内で動きやすくなり、粘着剤層の表面に集まりやすくなることから、高温でも粘着剤層の接着亢進を低減することができ、工程終了後には粘着剤層をより容易に剥離できるとともに糊残りをより抑えることができる。上記重量平均分子量のより好ましい上限は30万、更に好ましい上限は25万、特に好ましい上限は20万であり、通常1万以上である。
【0074】
上記シリコーン系グラフト共重合体の製造方法は特に限定されず、モノマー混合物を共重合して得ることができる。上記モノマー混合物を共重合してシリコーン系グラフト共重合体を得る方法は特に限定されず、上記(メタ)アクリル共重合体の場合と同様の方法を用いることができる。
【0075】
上記シリコーン化合物の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記含有量が1重量部以上であれば、高温でも粘着剤層の接着亢進を低減することができ、工程終了後には粘着剤層をより容易に剥離できるとともに糊残りをより抑えることができる。上記含有量が20重量部以下であれば、粘着剤層の初期粘着力が高くなり、また、粘着剤層の白濁を抑えることもできる。上記含有量のより好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は15重量部であり、更に好ましい下限は3重量部、更に好ましい上限は10重量部である。
また、上記シリコーン化合物が上記シリコーン系グラフト共重合体である場合には、上記シリコーン系グラフト共重合体は粘着剤層の表面に集まりやすいため、上記シリコーン化合物のなかでは比較的少ない量で用いることができる。上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量は、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部であり、より好ましい下限が0.5重量部、より好ましい上限が5重量部であり、更に好ましい下限が1重量部である。
【0076】
本発明の硬化性粘着剤組成物は、更に、架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層が上記架橋剤を含有することで、上記(メタ)アクリル共重合体を架橋することによって粘着剤層の凝集力を調整しやすくなる。これにより、粘着剤層の初期粘着力が高くなり、また、高温でも粘着剤層がより剥離しにくくなり、工程終了後には粘着剤層をより容易に剥離できるとともに糊残りをより抑えることができる。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。なかでも、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層の凝集力が高まることから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0077】
上記架橋剤は、上記(メタ)アクリル共重合体及び上記シリコーン化合物と架橋可能な官能基を有することが好ましい。
上記架橋剤が上記(メタ)アクリル共重合体及び上記シリコーン化合物と架橋可能な官能基を有することで、上記架橋剤を介して上記シリコーン化合物が上記(メタ)アクリル共重合体と結合することができる。これにより、上記シリコーン化合物がブリードアウトすることによる被着体の汚染を低減することができる。
そのような架橋可能な官能基は特に限定されず、上記(メタ)アクリル共重合体及び上記シリコーン化合物に存在する官能基に合わせて適宜決定される。
【0078】
上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、より適度な凝集力とする観点及び上記(メタ)アクリル共重合体と上記シリコーン化合物とを充分に結合させる観点から、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が1重量部である。上記架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は0.5重量部である。
【0079】
本発明の硬化性粘着剤組成物は、更に、気体発生剤を含有してもよい。
上記気体発生剤を含有することで、熱や光等の刺激によって、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層と被着体との界面に気体が放出され、放出された気体の圧力によって粘着剤層の少なくとも一部が剥離されるため、工程終了後には粘着剤層をより容易に剥離することができる。
【0080】
上記気体発生剤は特に限定されないが、光照射により気体を発生する気体発生剤が好ましい。なかでも、本発明の硬化性粘着剤組成物が光硬化性である場合、光重合開始剤の吸収波長とは異なる吸収波長を有する気体発生剤がより好ましく、300nm以下の波長の光を照射することにより気体を発生する気体発生剤が更に好ましい。例えば365nm又は405nm近辺に吸収波長を有する光重合開始剤と、254nm近辺の波長を吸収する気体発生剤とを含有する場合、硬化性粘着剤組成物が硬化する際の光照射において意図せず気体発生剤から気体が発生し、剥離が生じることを抑制することができる。
【0081】
上記気体発生剤は、耐熱性の観点から、カルボン酸化合物、テトラゾール化合物、又は、これらの塩を含むことが好ましく、テトラゾール化合物又はその塩を含むことがより好ましい。
上記気体発生剤は、より具体的には、下記一般式(7)で表されるカルボン酸化合物、下記一般式(10)〜(12)で表されるテトラゾール化合物、又は、これらの塩を含むことが好ましい。これらの気体発生剤は、紫外線等の光を照射することにより気体(二酸化炭素又は窒素ガス)を発生する一方、200℃程度の高温下でも分解しない高い耐熱性を有する。
【0082】
【化8】
【0083】
一般式(7)中、R
1〜R
7は、それぞれ水素又は有機基を表す。R
1〜R
7は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R
1〜R
7のうちの2つが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。
【0084】
【化9】
【0085】
一般式(10)〜(12)中、R
21及びR
22は、それぞれ水素、炭素数が1〜7のアルキル基、アルキレン基、フェニル基、メルカプト基、水酸基又はアミノ基を表す。
【0086】
上記一般式(7)においてR
1〜R
7で表される有機基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基等のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。更に、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基等が挙げられる。更に、フェニル基等の芳香族基、ナフチル基、フルオレニル基、ピレニル基等の多環式炭化水素基、ビフェニル基等の環集合炭化水素基、キサンテニル基等のヘテロ環基等が挙げられる。なかでも、上記一般式(7)中のR
3〜R
7のうちの1つが、下記一般式(8)で表される有機基であるか、又は、上記一般式(7)中のR
3〜R
7のうちの隣り合う2つが互いに結合して下記一般式(9)で表される環状構造を形成していることが好ましい。
【0087】
【化10】
【0088】
一般式(8)中、R
8〜R
12は、それぞれ水素又は有機基を表す。R
8〜R
12は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R
8〜R
12のうちの2つが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。
一般式(9)中、R
13〜R
16は、それぞれ水素又は有機基を表す。R
13〜R
16は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R
13〜R
16のうちの2つが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。
また、上記一般式(7)中のR
1は、メチル基であることが好ましい。
【0089】
上記一般式(7)で表されるカルボン酸化合物の具体例としては、例えば、フェニル酢酸、ジフェニル酢酸、トリフェニル酢酸、2−フェニルプロピオン酸、2,2−ジフェニルプロピオン酸、2,2,2−トリフェニルプロピオン酸、2−フェニルブチル酸、α−メトキシフェニル酢酸、マンデリック酸、アトロラクトン酸、ベンジリック酸、トロピック酸、フェニルマロン酸、フェニルコハク酸、3−メチル−2−フェニル酪酸、オルトトルイル酢酸、メタトルイル酢酸、4−イソブチル−α−メチルフェニル酢酸、パラトルイル酢酸、1,2−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジ酢酸、1,4−フェニレンジ酢酸、2−メトキシフェニル酢酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、2−ニトロフェニル酢酸、3−ニトロフェニル酢酸、4−ニトロフェニル酢酸、2−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸、3−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸、4−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸、3,4−ジメトキシフェニル酢酸、3,4−(メチレンジオキシ)フェニル酢酸、2,5−ジメトキシフェニル酢酸、3,5−ジメトキシフェニル酢酸、3,4,5−トリメトキシフェニル酢酸、2,4−ジニトロフェニル酢酸、4−ビフェニル酢酸、1−ナフチル酢酸、2−ナフチル酢酸、6−メトキシ−α−メチル−2−ナフチル酢酸、1−ピレン酢酸、9−フルオレンカルボン酸又は9H−キサンテン−9−カルボン酸等が挙げられる。
【0090】
なかでも、上記一般式(7)で表されるカルボン酸化合物は、ケトプロフェン、2−キサントン酢酸であることが好ましい。
【0091】
上記一般式(7)で表されるカルボン酸化合物の塩は、上記一般式(7)で表されるカルボン酸化合物と塩基性化合物とを容器中で混合するだけで、複雑な合成経路を経ることなく簡単に調製することができる。
上記塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、アミン、ヒドラジン化合物、水酸化四級アンモニウム塩、ホスフィン化合物等が挙げられる。上記アミンは特に限定されず、一級アミン、二級アミン及び三級アミンのいずれをも用いることができる。なかでも、上記塩基性化合物は、モノアルキルアミン又はジアルキルアミンが好適である。モノアルキルアミン又はジアルキルアミンを用いた場合には、得られる上記一般式(7)で表されるカルボン酸化合物の塩の極性を低極性化でき、上記(メタ)アクリル共重合体等との溶解性を高めることができる。上記塩基性化合物は、炭素数6〜12のモノアルキルアミン又はジアルキルアミンであることがより好ましい。
【0092】
上記一般式(10)〜(12)で表されるテトラゾール化合物の塩も、上記一般式(10)〜(12)で表されるテトラゾール化合物に由来する骨格を有することから、光が照射されると窒素ガスを発生させることができる。
上記一般式(10)〜(12)で表されるテトラゾール化合物の塩は特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0093】
上記一般式(10)〜(12)で表されるテトラゾール化合物の塩は、上記一般式(10)〜(12)で表されるテトラゾール化合物と塩基性化合物とを容器中で混合するだけで、複雑な合成経路を経ることなく簡単に調製することができる。
上記塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、アミン、ヒドラジン化合物、水酸化四級アンモニウム塩、ホスフィン化合物等が挙げられる。上記アミンは特に限定されず、一級アミン、二級アミン及び三級アミンのいずれをも用いることができる。なかでも、上記塩基性化合物は、モノアルキルアミン又はジアルキルアミンが好適である。モノアルキルアミン又はジアルキルアミンを用いた場合には、得られる上記一般式(10) 〜(12)で表されるテトラゾール化合物の塩の極性を低極性化でき、上記(メタ)アクリル共重合体等との溶解性を高めることができる。上記塩基性化合物は、炭素数6〜12のモノアルキルアミン又はジアルキルアミンであることがより好ましい。
【0094】
上記一般式(10)で表されるテトラゾール化合物又はその塩は特に限定されないが、具体的には例えば、1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5,5−アゾビス−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−メチル−5−エチル−1H−テトラゾール、1−(ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール等が挙げられる。
【0095】
上記一般式(11)で表されるテトラゾール化合物又はその塩は特に限定されないが、具体的には例えば、5,5’−ビステトラゾールジアンモニウム塩、5,5’−ビステトラゾールナトリウム塩等が挙げられる。
【0096】
上記一般式(12)で表されるテトラゾール化合物又はその塩は特に限定されないが、具体的には例えば、5,5’−ビステトラゾールアミンモノアンモニウム塩等が挙げられる。
【0097】
上記気体発生剤の含有量は、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。上記気体発生剤の含有量が5重量部以上であれば、光照射等による気体の発生が充分となり、工程終了後には粘着剤層をより容易に剥離することができる。上記気体発生剤の含有量が50重量部以下であれば、上記気体発生剤と上記(メタ)アクリル共重合体等との溶解性を高めることができる。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は35重量部である。
【0098】
また、本発明の硬化性粘着剤組成物は、ヒュームドシリカ等の無機フィラー、光増感剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0099】
本発明の硬化性粘着剤組成物は、280℃、1時間加熱後の重量減少率の好ましい上限が15重量%である。上記加熱後の重量減少率が15重量%以下であれば、上記(メタ)アクリル共重合体由来のアウトガスの発生量が低下し、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層が高温でもより剥離しにくくなる。上記加熱後の重量減少率のより好ましい上限は12重量%、更に好ましい上限は10重量%である。上記加熱後の重量減少率の下限は特に限定されず、0重量%に近いほど高温でも粘着剤層が剥離しにくくなるため好ましい。
上記加熱後の重量減少率を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、上記(メタ)アクリル共重合体、上記シリコーン化合物等の種類、組成、物性、含有量等を調整すればよい。
なお、加熱後の重量減少率は、以下の方法により測定できる。
硬化性粘着剤組成物又は粘着剤層のみからなる測定サンプルを得た後、重量を測定する。窒素雰囲気下(窒素フロー、流量50mL/分)、示差熱熱重量同時測定装置(例えば、日立ハイテクサイエンス社製、TG−DTA;STA7200)を用いて、昇温速度10℃/minで測定サンプルを25℃から280℃まで加熱し、280℃に達してから、280℃を維持し1時間加熱する。放冷後、重量減少量を測定し、得られた重量減少量と加熱前の重量とから重量減少率を算出する。
【0100】
本発明の硬化性粘着剤組成物のスズ成分含有量は特に限定されないが、スズ換算での好ましい上限が0.05重量%である。本発明の硬化性粘着剤組成物に含まれるスズ成分とは、主に、上記(メタ)アクリル共重合体を製造する際に使用する触媒及び/又は上記((メタ)アクリル共重合体の側鎖にラジカル重合性不飽和結合を導入する際に使用する触媒に由来するものである。上記スズ成分含有量が0.05重量%以下であれば、高温でスズ成分が触媒となって上記(メタ)アクリル共重合体のアルキルエステル部分が分解され、アウトガスとなることを抑制することができるため、硬化性粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層が高温でもより剥離しにくくなる。上記スズ成分含有量のより好ましい上限は0.03重量%である。上記スズ成分含有量の下限は特に限定されず、0重量%に近いほど高温でも粘着剤層が剥離しにくくなるため好ましい。
上記スズ成分含有量を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、上記(メタ)アクリル共重合体を製造する際に使用する触媒の添加量を調整する方法、上記(メタ)アクリル共重合体を再沈殿等で精製する方法等が挙げられる。
なお、スズ成分含有量は、ICP発光分光分析装置(Agilent社製、5110 ICP−OES又はその同等品)により測定することができる。
【0101】
本発明の硬化性粘着剤組成物を含有する粘着剤層を有する粘着テープもまた、本発明の1つである。
本発明の粘着テープは、上記粘着剤層を有してさえいれば、他の層を有していてもよい。また、本発明の粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよく、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。本発明の粘着テープが基材を有する場合は、基材の少なくとも一方の面に上記粘着剤層を有していればよく、片面粘着テープであっても両面粘着テープであってもよい。本発明の粘着テープが基材を有する両面粘着テープである場合は、基材の少なくとも一方の面に上記粘着剤層を有してさえいれば、基材の他方の面にも上記粘着剤層と同様の粘着剤層を有していてもよいし、基材の他方の面には上記粘着剤層とは別の組成及び物性を有する粘着剤層を有していてもよい。
【0102】
上記粘着剤層は、23℃における硬化前の貯蔵弾性率G’が5.0×10
3Pa以上、2.0×10
8Pa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率が上記範囲であることによって、上記粘着剤層は適度な粘着力を発揮しつつも糊残りを抑えることができ、凹凸の大きい被着体に用いた場合であっても充分に追随することができる。上記貯蔵弾性率のより好ましい下限は0.1×10
5Pa、更に好ましい下限は0.2×10
5Pa、より好ましい上限は200×10
5Pa、更に好ましい上限は20×10
5Paである。
【0103】
上記粘着剤層は、23℃における硬化後の貯蔵弾性率G’が2.0×10
5Pa以上、2.0×10
8Pa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率が上記範囲であることによって、上記粘着剤層は適度な粘着力を発揮しつつも糊残りを抑えることができ、凹凸の大きい被着体に用いた場合であっても充分に追随することができる。上記貯蔵弾性率のより好ましい下限は1.0×10
6Pa、より好ましい上限は1.0×10
8Pa、更に好ましい上限は5.0×10
7Paである。
なお、粘着剤層が熱硬化性である場合、120℃で1時間加熱し、かつ、その後175℃で1時間加熱した後の状態を硬化後とし、粘着剤層が光硬化性である場合、超高圧水銀紫外線照射器を用いて405nmの紫外線を積算強度が2500mJ/cm
2となるように粘着剤層に照射した後の状態を硬化後とする。粘着剤層の23℃における硬化前及び硬化後の貯蔵弾性率は、JIS K 7244に準拠した方法で、動的粘弾性測定装置(例えば、DVA−200、アイティー計測制御社製)を用い、引張圧縮モード、角周波数1Hzの条件で測定することができる。
【0104】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は200μmである。上記粘着剤層の厚みが上記範囲内であれば、粘着テープを充分な粘着力で被着体に貼り付けることができ、工程終了後には糊残りを抑えることができる。上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は150μmである。
【0105】
本発明の粘着テープがノンサポートタイプである場合、その層構成は特に限定されず、上記粘着剤層からなる単層から構成されてもよく、上記粘着剤層を含む複数の層から構成されてもよい。
上記粘着剤層を含む複数の層から構成されるノンサポートタイプの粘着テープの構成としては、例えば、上記粘着剤層と他の粘着剤層とを積層した構成、気体発生剤を含有しない上記粘着剤層と気体発生剤を含有する上記粘着剤層とを積層した構成等が挙げられる。
【0106】
本発明の粘着テープがサポートタイプである場合、その層構成は特に限定されず、基材と上記粘着剤層とから構成される片面粘着テープであってもよく、基材と、該基材の少なくとも一方の面に積層された上記粘着剤層とを有する両面粘着テープであってもよい。
上記基材と、該基材の少なくとも一方の面に積層された上記粘着剤層とを有するサポートタイプの両面粘着テープの構成としては、例えば、基材の一方の面に上記粘着剤層を、他方の面に他の粘着剤層を有する構成、基材の両方の面に上記粘着剤層を有する構成等が挙げられる。なかでも、耐熱性及び工程終了後の易剥離性の観点から、基材の両方の面に上記粘着剤層を有する構成が好ましい。即ち、本発明の粘着テープは、基材と、該基材の両方の面に積層された上記粘着剤層とを有することが好ましい。
【0107】
上記基材と、該基材の両方の面に積層された上記粘着剤層とを有する粘着テープの構成は特に限定されず、用いられる半導体加工工程により選択することができる。なかでも、上記粘着剤層のうち少なくとも一方の粘着剤層が気体発生剤を含有する構成が好ましく、より具体的には例えば、基材の一方の面に気体発生剤を含有する上記粘着剤層を、他方の面に気体発生剤を含有しない光硬化性の上記粘着剤層を積層した構成等が挙げられる。更に、基材の一方の面に気体発生剤を含有する上記粘着剤層を、他方の面に気体発生剤を含有しない熱硬化性の上記粘着剤層を積層した構成等が挙げられる。
また、上記基材と、該基材の両方の面に積層された上記粘着剤層とを有する粘着テープの構成としては、上記粘着剤層のうち少なくとも一方の粘着剤層が熱硬化性である構成も好ましく、より具体的には例えば、基材の両方の面に気体発生剤を含有しない熱硬化性の上記粘着剤層を積層した構成等が挙げられる。
【0108】
本発明の粘着テープがサポートタイプである場合、上記基材を構成する材料は特に限定されないが、耐熱性を有する材料であることが好ましい。耐熱性を持つ材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れることから、ポリイミドが好ましい。
【0109】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は15μm、好ましい上限は250μmである。上記基材の厚みが上記範囲内であれば、取り扱い性に優れる粘着テープとすることができる。上記基材の厚みのより好ましい下限は25μm、より好ましい上限は125μmである。
【0110】
上記基材の紫外線透過率は特に限定されない。上記粘着剤層が紫外線硬化性である場合は、上記基材の紫外線透過率は50%以上であることが好ましい。上記基材の紫外線透過率が上記範囲であることで、上記粘着剤層の紫外線硬化が容易になる。上記基材の紫外線透過率は60%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましい。上記紫外線透過率の上限は特に限定されず、高ければ高いほどよく、通常、100%以下である。
【0111】
本発明の粘着テープの紫外線透過率は特に限定されない。上記粘着剤層が紫外線硬化性である場合、特に、本発明の粘着テープが基材と、該基材の両方の面に積層された上記粘着剤層とを有し、上記粘着剤層がいずれも紫外線硬化性である場合は、本発明の粘着テープの紫外線透過率は30%以上であることが好ましい。本発明の粘着テープの紫外線透過率が上記範囲であることで、上記粘着剤層の紫外線硬化及び紫外線照射による剥離が容易になる。本発明の粘着テープの紫外線透過率は40%以上であることがより好ましく、55%以上であることが更に好ましい。上記紫外線透過率の上限は特に限定されず、高ければ高いほどよく、通常、100%以下である。
なお、基材及び粘着テープの紫外線透過率は、分光光度計(U−3900、日立製作所社製、又はその同等品)を用いて測定することができる。
【0112】
本発明の粘着テープを製造する方法は特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、(メタ)アクリル共重合体の溶液にシリコーン系グラフト共重合体、架橋剤、重合開始剤及び必要に応じて他の添加剤を加えて混合することで粘着剤溶液を得る。次いで、離型フィルム上に粘着剤溶液を塗工し、乾燥させて粘着剤層を形成する。得られた粘着剤層を基材と貼り合わせて粘着テープを製造する。
【0113】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、半導体チップ、表示装置(OLED、液晶表示装置等)等の半導体デバイス又は電子部品の製造において、半導体加工工程に用いられることが好ましい。より具体的には、半導体デバイス又は電子部品の製造において、粘着テープ上にウエハや半導体チップ等の被着体を仮固定したり、粘着テープを介してウエハや半導体チップ等の被着体を支持板上に仮固定したりした後、仮固定された被着体に処理を施す際に用いられることが好ましい。
本発明の粘着テープは、被着体の加工工程中は高温でも剥離しにくく、工程終了後には容易に剥離できることから、ウエハや半導体チップ等の被着体に粘着テープを貼り合わせた状態で従来以上の高温、具体的には例えば250℃以上もの高温での加熱を伴う処理を施す際にも好適に用いることができる。
【0114】
本発明の粘着テープを用いた半導体ウエハの処理方法であって、本発明の粘着テープ上に半導体ウエハを仮固定する仮固定工程と、上記半導体ウエハの表面に250℃以上の加熱を伴う処理を施す半導体ウエハ処理工程と、上記半導体ウエハから本発明の粘着テープを剥離する粘着テープ剥離工程とを有する半導体ウエハの処理方法もまた、本発明の1つである。
【0115】
上記250℃以上の加熱を伴う処理において、加熱温度の上限は特に限定されず、実質的には400℃程度が上限であり、好ましい上限は300℃である。
上記250℃以上の加熱を伴う処理は特に限定されず、例えば、リフロー工程、スパッタリング工程、蒸着工程、エッチング工程、化学気相成長(CVD)工程、物理気相成長(PVD)工程、レジスト塗布工程、パターニング工程、モールド工程等の加熱処理又は発熱を伴う処理が挙げられる。
上記半導体ウエハから本発明の粘着テープを剥離する方法は特に限定されず、例えば、ピール剥離、レーザー剥離等が挙げられる。
上記半導体ウエハから本発明の粘着テープを剥離する粘着テープ剥離工程にかえて、ニードルピックアップによる剥離等の上記半導体ウエハを本発明の粘着テープから剥離する半導体ウエハ剥離工程としてもよい。
【0116】
本発明の粘着テープが両面粘着テープである場合、本発明の粘着テープを好適に用いることのできる半導体デバイスの製造方法として、より具体的には例えば、次の方法が挙げられる。即ち、本発明の粘着テープを介して半導体ウエハを支持体上に仮固定する仮固定工程と、上記半導体ウエハの表面に250℃以上の加熱を伴う処理を施す半導体ウエハ処理工程と、上記支持体若しくは上記半導体ウエハ又はその両方から本発明の粘着テープを剥離する粘着テープ剥離工程とを有する半導体デバイスの製造方法が挙げられる。このような半導体デバイスの製造方法もまた、本発明の1つである。
【0117】
上記仮固定工程において、本発明の粘着テープを介して半導体ウエハを支持体上に仮固定する方法は特に限定されないが、本発明の粘着テープにおける一方の粘着剤層とシリコンウエハ等の半導体ウエハとを貼り合わせ、次いで、他方の粘着剤層とガラス等の支持体とを貼り合わせる方法が好ましい。
上記仮固定工程において、本発明の粘着テープが気体発生剤を含有する粘着剤層を有する場合、気体発生剤を含有する粘着剤層と上記支持体とを貼り合わせることが好ましい。
【0118】
本発明の半導体デバイスの製造方法においては、上記仮固定工程の前又は後に、本発明の粘着テープにおける上記粘着剤層を硬化させる粘着剤層硬化工程を行ってもよい。上記粘着剤層硬化工程は、上記仮固定工程の前に行ってもよく、後に行ってもよい。
また、上記粘着剤層の接着亢進抑制の観点から、上記粘着剤層硬化工程は、上記半導体ウエハ処理工程の前に行うことが好ましい。具体的には例えば、本発明の粘着テープにおける一方の粘着剤層とシリコンウエハ等の半導体ウエハとを貼り合わせ、次いで、他方の粘着剤層とガラス等の支持体とを貼り合わせたのちに、上記粘着剤層硬化工程を行い、その後上記半導体ウエハ処理工程を行うことが好ましい。
【0119】
本発明の半導体デバイスの製造方法においては、上記仮固定工程の後に他の工程を行ってから上記半導体ウエハ処理工程を行ってもよい。
上記他の工程としては、例えば、半導体ウエハをバックグラインドにより薄化する工程、ウエハレベルのモールド工程等が挙げられる。
【0120】
上記粘着テープ剥離工程は特に限定されず、従来公知の方法により本発明の粘着テープを剥離することができる。即ち、半導体ウエハをニードルで突き上げるニードルピックアップ法、ニードルを用いないニードルレスピックアップ法等を用いてもよい。
【0121】
本発明の粘着テープが気体発生剤を含有する粘着剤層を有する場合には、上記粘着テープ剥離工程において刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させることにより、更に容易に本発明の粘着テープを剥離することができる。
例えば、上記気体発生剤として300nm以下の波長の光を照射することにより気体を発生する気体発生剤を用いた場合には、300nm以下の波長の光を照射することにより上記気体発生剤から気体を発生させて、本発明の粘着テープをより容易に剥離することができる。このような気体発生剤に対しては、例えば、波長254nmの光を5mW/cm
2以上の照度で照射することが好ましく、10mW/cm
2以上の照度で照射することがより好ましく、20mW/cm
2以上の照度で照射することが更に好ましく、50mW/cm
2以上の照度で照射することが特に好ましい。また、波長254nmの光を1000mJ/cm
2以上の積算照度で照射することが好ましく、1000mJ/cm
2以上、20J/cm
2以下の積算照度で照射することがより好ましい。波長254nmの光を1500mJ/cm
2以上、15J/cm
2以下の積算照度で照射することが更に好ましく、2000mJ/cm
2以上、10J/cm
2以下の積算照度で照射することが特に好ましい。
【0122】
上記粘着テープ剥離工程においては、レーザー照射により本発明の粘着テープを剥離するレーザー剥離工程を行ってもよい。レーザー照射により、気体発生剤を含有しない熱硬化性の上記粘着剤層を積層した粘着テープ等を用いた場合であっても、更に容易に本発明の粘着テープを剥離することができる。
本発明の粘着テープがレーザー剥離工程により剥離される場合、本発明の粘着テープのレーザー剥離工程により剥離される粘着剤層は、波長250〜400nmの範囲内に吸収ピークがあることが好ましい。上記範囲内に吸収ピークがあることで、レーザー照射による剥離をより確実に行うことができる。上記吸収ピークは、例えば、紫外線吸収剤等を添加することにより調整することができる。
なお、粘着剤層の吸収ピークは、分光光度計(U−3900、日立製作所社製、又はその同等品)を用いて測定することができる。
【0123】
上記支持体は特に限定されず、例えば、ガラス、ポリイミドフィルム、ガラスエポキシ基板等が挙げられる。