(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ドーピング層は、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、3,6−ジフルオロ−2,5,7,7,8,8−ヘキサシアノキノジメタン、テトラシアノキノジメタン、2,5−ジフルオロ−テトラシアノキノジメタン、二酸化窒素、フッ化ペンタセン、ジアゾニウム塩、ベンジルビオロゲン若しくは塩化鉄若しくはこれらの任意の組み合わせ、又はポリエーテルイミド、フェロセン、コバルトセン若しくはテトラチアフルバレン若しくはこれらの任意の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、電界効果トランジスタを含む半導体装置に関する。
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す図である。
図1(a)は断面図であり、
図1(b)は
図1(a)中の一部の要素を示す平面図である。
図1(a)は
図1(b)のI−I線に沿った断面を示す。
【0012】
第1の実施形態に係る半導体装置100では、
図1(a)に示すように、第1導電型の半導体基板101に素子領域を区画する素子分離領域102が形成され、素子領域内に第2導電型のソース領域103s及びドレイン領域103dが形成されている。半導体基板101のソース領域103s及びドレイン領域103dの間の部分がチャネル領域101aである。例えば、半導体基板101の導電型はp型であり、ソース領域103s及びドレイン領域103dの導電型はn型である。半導体基板101上に絶縁膜104が形成されている。絶縁膜104にソース領域103s上の開口部104s及びドレイン領域103d上の開口部104dが形成されている。絶縁膜104上にチャネル領域101a上方のグラフェン膜111が形成されている。グラフェン膜111は、1又は2以上のグラフェンの単位層からなる。絶縁膜104のチャネル領域101a及びグラフェン膜111に挟まれた部分がゲート絶縁膜104aである。半導体基板101の導電型がn型、ソース領域103s及びドレイン領域103dの導電型がp型であってもよい。
【0013】
グラフェン膜111をドーピングするドーピング層112がグラフェン膜111上に形成されている。ドーピング層112は、例えば、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、3,6−ジフルオロ−2,5,7,7,8,8−ヘキサシアノキノジメタン(F2-HCNQ)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,5−ジフルオロ−テトラシアノキノジメタン(F2−TCNQ)、二酸化窒素(NO
2)、フッ化ペンタセン、ジアゾニウム塩、ベンジルビオロゲン若しくは塩化鉄又はこれらの任意の組み合わせを含む。ジアゾニウム塩として、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート(4-(N,N-Dimethylamino)benzenediazonium Tetrafluoroborate)及び4−ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート(4-Bromobenzenediazonium Tetrafluoroborate)が例示される。ドーピング層112が、ポリエーテルイミド(PEI)、フェロセン、コバルトセン若しくはテトラチアフルバレン(TTF)又はこれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。
【0014】
図1(a)及び(b)に示すように、絶縁膜104上に開口部104sを通じてソース領域103sと接する金属膜105s及び開口部104dを通じてドレイン領域103dと接する金属膜105dが形成されている。グラフェン膜111の上面は素子分離領域102上方でドーピング層112から露出している。そして、素子分離領域102上方で、グラフェン膜111に接する金属膜105gがグラフェン膜111上に形成されている。ドーピング層112を覆う保護膜113が半導体装置100に含まれる。保護膜113は、例えばアルミナ膜である。金属膜105sの少なくとも一部、金属膜105dの少なくとも一部及び金属膜105gの少なくとも一部が保護膜113から露出している。金属膜105s、金属膜105d、金属膜105gは、それぞれソースコンタクト電極、ドレインコンタクト電極、ゲートコンタクト電極として用いられる。
【0015】
ここで、グラフェンの特性について説明する。グラフェンが金属的な性質を示す一方で、
図2に示すように、グラフェンの状態密度はフェルミ準位付近で小さい。このため、グラフェンをドーピングすることにより仕事関数の値を自由に変化させることができる。グラフェンの状態密度とディラック点からのエネルギー差との関係は以下の式で与えられる。ここで、Eはエネルギー、v
Fはフェルミ速度(1×10
6m/s)、hはプランク定数、E
Diracはディラック点の位置である。
【0017】
例えば、この式から、フェルミ準位が丁度ディラック点にある場合、10
12cm
-2の電子でグラフェンをドーピングすることで仕事関数が120meV程度変化することが算出される。
【0018】
第1の実施形態では、ドーピング層112が、それが含有する材料及び量に応じてグラフェン膜111をドーピングする。従って、グラフェン膜111の仕事関数を自由に変化させ、トランジスタの閾値電圧をフレキシブルに調整することができる。また、ゲート絶縁膜104aにグラフェン膜111が接するため、金属ゲートが用いられた場合に懸念される界面準位の形成を回避できる。また、グラフェン膜111はドーピング層112に含まれる原子のゲート絶縁膜104aへの拡散を防止する。従って、このような拡散に伴うゲート絶縁膜104aの特性の変動を回避できる。
【0019】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法について説明する。
図3A乃至
図3Bは、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法を工程順に示す断面図であり、
図4は、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法を工程順に示す平面図である。
【0020】
先ず、
図3A(a)に示すように、半導体基板101にp型不純物をイオン注入して半導体基板101の導電型をp型とし、素子分離領域102を形成し、素子領域内にn型不純物をイオン注入してソース領域103s及びドレイン領域103dを形成する。次いで、半導体基板101の表面に絶縁膜104を形成する。絶縁膜104は、例えば熱酸化により形成することができる。
【0021】
その後、
図3A(b)に示すように、絶縁膜104上にグラフェン膜111を設ける。グラフェン膜111は、例えば成長基板上へのグラフェン膜の成長及び絶縁膜104上への転写により設けることができる。
【0022】
続いて、
図3A(c)及び
図4(a)に示すように、グラフェン膜111をパターニングする。グラフェン膜111は、例えばフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術によりパターニングすることできる。エッチング技術としては、例えば酸素プラズマを用いたリアクティブイオンエッチング(reactive ion etching:RIE)が挙げられる。
【0023】
次いで、
図3A(d)に示すように、絶縁膜104をパターニングして開口部104s及び開口部104dを形成する。絶縁膜104は、例えばフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術によりパターニングすることできる。
【0024】
その後、
図3B(e)及び
図4(b)に示すように、開口部104sを通じてソース領域103sと接する金属膜105s、開口部104dを通じてドレイン領域103dと接する金属膜105d、及び素子分離領域102上方でグラフェン膜111に接する金属膜105gを形成する。金属膜105s、金属膜105d及び金属膜105gの形成では、例えば、これらを形成する予定の領域を露出するマスクを形成し、真空蒸着法により金属膜を形成し、マスクをその上の金属膜と共に除去する。すなわち、金属膜105s、金属膜105d及び金属膜105gはリフトオフ法により形成することができる。金属膜の形成では、例えば、厚さがのTi膜を形成し、その上に厚さが200nmのAu膜を形成する。
【0025】
続いて、
図3B(f)及び
図4(c)に示すように、グラフェン膜111上にドーピング層112を形成する。ドーピング層112の形成では、例えば、F4−TCNQを真空蒸着する。トルエン等の溶媒にF4−TCNQを溶解させたF4−TCNQ溶液をスピンコートすることによりドーピング層112を形成してもよい。F4−TCNQ溶液を滴下することによりドーピング層112を形成してもよい。トランジスタの閾値電圧に応じてドーピング層112の厚さを調整する。
【0026】
次いで、
図3B(g)に示すように、ドーピング層112を覆う保護膜113を形成し、保護膜113に、金属膜105sの少なくとも一部、金属膜105dの少なくとも一部及び金属膜105gの少なくとも一部を露出する開口部を形成する。保護膜としては、例えば原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)法により形成することができる。
【0027】
このようにして第1の実施形態に係る半導体装置100を製造することができる。
【0028】
ここで、本願発明者が行った実験について説明する。この実験では、ドーピング層112の厚さを異ならせた3種類の半導体装置100を製造した。ドーピング層112の形成では、トルエンを溶媒とし濃度が0.05mMのF4−TCNQ溶液を準備し、このF4−TCNQ溶液を面積が約1cm
2の領域に面積に滴下し、F4−TCNQ溶液を乾燥させた。この際に、F4−TCNQ溶液の滴下量(10μl、40μl、70μl)でドーピング層112の厚さを調整した。参考のために、ドーピング層112を形成しない参考例の半導体装置も製造した。そして、これら半導体装置のゲート電圧とドレイン電流との関係を求めた。この結果を
図5に示す。
図5に示すように、ドーピング層112を含む半導体装置100の閾値電圧は、参考例の半導体装置の閾値電圧から約300meV変化していた。また、F4−TCNQ溶液の滴下量に応じて、つまりドーピング層112の厚さに応じて閾値電圧が変化した。本実験では10μlの滴下量でもF4−TCNQが十分堆積されていたため、閾値電圧の滴下量に応じた変化は比較的小さかった。しかし、滴下量をさらに小さくなる方向に変化させれば、様々な閾値のトランジスタが実現可能である。
【0029】
ドーピング層112が、F4−TCNQ、F2-HCNQ、TCNQ、F2−TCNQ、NO
2、フッ化ペンタセン、ジアゾニウム塩、ベンジルビオロゲン若しくは塩化鉄又はこれらの任意の組み合わせを含む場合、半導体装置100の閾値電圧は、ドーピング層112を含まない参考例の閾値電圧から正側にシフトする。一方、ドーピング層112が、PEI、フェロセン、コバルトセン若しくはTTF又はこれらの任意の組み合わせを含む場合、半導体装置100の閾値電圧は、ドーピング層112を含まない参考例の閾値電圧から負側にシフトする。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、電界効果トランジスタを含む半導体装置に関する。
図6は、第2の実施形態に係る半導体装置を示す図である。
図6(a)は断面図であり、
図6(b)は
図6(a)中の一部の要素を示す模式図である。
【0031】
図6(a)に示すように、第2の実施形態に係る半導体装置200には、第1の実施形態におけるドーピング層112に代えて、基部220及び自己組織化単分子層(self-assembled monolayer:SAM)230を含むドーピング層212が含まれる。自己組織化単分子層230には、
図6(b)に示すように、骨格部231及び官能基232が含まれており、官能基232がグラフェン膜111に接するようにドーピング層212が配置されている。官能基232は、例えばNH
2基、NH(CH
3)基、N(CH
3)
2基、CF
3基又はCOOH基である。基部220は、例えばアルミナからなる。そして、ドーピング層212が保護膜113に覆われている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0032】
第2の実施形態では、グラフェン膜111に官能基232が接しているため、グラフェン膜111中に電荷が発生する。つまり、ドーピング層212によりグラフェン膜111がドーピングされる。官能基232がNH
2基、NH(CH
3)基又はN(CH
3)
2基である場合、グラフェン膜111中に電子が発生し、官能基232がCF
3基又はCOOH基である場合、グラフェン膜111中に正孔が発生する。従って、第1の実施形態と同様に、グラフェン膜111の仕事関数を自由に変化させ、トランジスタの閾値電圧をフレキシブルに調整することができる。また、界面準位の形成及びゲート絶縁膜104aへの異物の拡散を回避することもできる。
【0033】
図7は、第2の実施形態におけるゲート電圧とドレイン電流との関係を示す図である。官能基232がN(CH
3)
2基である場合、グラフェン膜111中に電子が発生するため、ドーピング層212を含まない参考例よりも閾値電圧が負側にシフトする。
【0034】
次に、第2の実施形態に係る半導体装置200の製造方法について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る半導体装置200の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0035】
先ず、
図8(a)に示すように、第1の実施形態と同様にして、金属膜105s、金属膜105d及び金属膜105gの形成までの処理を行う。また、ドーピング層212を準備する。
図9は、ドーピング層212を準備する方法を工程順に示す模式図である。
【0036】
ドーピング層212の準備では、先ず、
図9(a)に示すように、支持基板240上にアルミナの基部220を形成する。支持基板240として、ニッケル箔、銅箔、ニッケル膜及び銅膜が例示される。表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコン基板を準備し、シリコン酸化膜上に厚さが200nm程度のアルミニウム膜を形成したものを支持基板240として用いてもよい。アルミナの基部220は、例えば前駆体としてのトリメチルアルミニウム(TMA)及び水を用いたALD法により形成することができる。基部220の厚さは、例えば20nm程度とする。
【0037】
基部220の形成後、
図9(b)に示すように、基部220上に自己組織化単分子層230を形成する。自己組織化単分子層230の形成では、自己組織化単分子層230の前駆体を入れた開放容器並びに支持基板240及び基部220の積層体を、グローブボックス内の密閉容器中に大気圧下で封入する。封入後、密閉容器を電気炉内に置いて加熱する。例えば、加熱時間は数時間とし、加熱温度は100℃程度とする。この加熱により、自己組織化単分子層230が形成される。加熱後、密閉容器を開封し、自己組織化単分子層230が形成された積層体の洗浄を行う。この洗浄では、エタノールを用いた洗浄、トルエンを用いた洗浄、水酸化カリウムを用いた洗浄及び硝酸を用いた洗浄を、それぞれ10分間程度行い、更に純水を用いた洗浄を行う。洗浄後、窒素(N
2)ブロー処理を行う。このようにして、ドーピング層212を準備することができる。
【0038】
金属膜105s、金属膜105d及び金属膜105gの形成並びにドーピング層212の準備の完了後、
図8(b)に示すように、官能基232がグラフェン膜111に接するようにして、支持基板240及びドーピング層212の積層体をグラフェン膜111上に設ける。
【0039】
次いで、
図8(c)に示すように、支持基板240を除去する。支持基板240としてニッケル箔が用いられている場合、支持基板240は塩酸で除去することができる。
【0040】
その後、第1の実施形態と同様にして、保護膜113の形成以降の処理を行う。このようにして第2の実施形態に係る半導体装置200を製造することができる。
【0041】
自己組織化単分子層230の前駆体としては、例えば、N−ジメチル−3−アミノプロピルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシ(エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルメトキシシラン、フッ化アルキルシラン、又はカルボン酸アルキルシランが用いられる。フッ化アルキルシランとして、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン(heptadecafluoro-1,1,2,2-tetrahydro-decyl-1-trimethoxysilane)及びトリエトキシトリデカフルオロオクチルシランが例示される。N−ジメチル−3−アミノプロピルメトキシシランが用いられた場合、官能基232はN(CH
3)
2基となり、3−アミノプロピルトリメトキシ(エトキシ)シランが用いられた場合、官能基232はNH
2基となり、N−メチル−3−アミノプロピルメトキシシランが用いられた場合、官能基232はNH(CH
3)基となる。フッ化アルキルシランが用いられた場合、官能基232はCF
3基となり、カルボン酸アルキルシランが用いられた場合、官能基232はCOOH基となる。自己組織化単分子層の形成方法は、例えば「H. Sugimura et al., Surf. Interf. Anal. 34, 550 (2002)」に詳しく説明されている。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、電界効果トランジスタを含む半導体装置に関する。
図10は、第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0043】
図10に示すように、第3の実施形態に係る半導体装置300には、第1の実施形態におけるドーピング層112に代えて、ドーピング層312が含まれる。ドーピング層312は、例えば、白金、金、銀、銅、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、オスニウム、イリジウム等の金属を含む。ドーピング層312は、金属単体の1又は2以上の膜を含んでいてもよく、合金の1又は2以上の膜を含んでいてもよく、これらの両方を含んでいてもよい。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0044】
第3の実施形態では、グラフェン膜111に金属を含むドーピング層312が接しているため、金属の仕事関数に応じた電荷の移動が生じる。つまり、ドーピング層312によりグラフェン膜111がドーピングされる。従って、第1の実施形態と同様に、グラフェン膜111の仕事関数を自由に変化させ、トランジスタの閾値電圧をフレキシブルに調整することができる。また、ゲート絶縁膜104aとドーピング層312との間にグラフェン膜111が介在するため、界面準位の状態はほとんど変化せず、ドーピング層312からゲート絶縁膜104aへの金属原子の拡散を回避することもできる。
【0045】
図11は、第3の実施形態におけるゲート電圧とドレイン電流との関係を示す図である。ドーピング層312が白金膜である場合、グラフェン膜111中に正孔が発生するため、ドーピング層312を含まない参考例よりも閾値電圧が正側にシフトする。
【0046】
第3の実施形態では、金属膜105gを省略して、ドーピング層312の一部をゲートコンタクト電極として用いてもよい。金属膜105gにバルク状の膜が用いられてもよく、金属ナノ粒子の集合体が用いられてもよい。
【0047】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、電界効果トランジスタを含む半導体装置に関する。
図12は、第4の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0048】
図12に示すように、第4の実施形態に係る半導体装置400には、第1の実施形態におけるドーピング層112に代えて、開口部412aが形成されたドーピング層412が含まれる。そして、保護膜113の一部が開口部412aを通じてグラフェン膜111に接している。ドーピング層412には、例えば、ドーピング層112、212又は312と同様の材料が用いられる。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0049】
第4の実施形態によっても、ドーピング層412の材料に応じて第1、第2又は第3の実施形態と同様の効果が得られる。第4の実施形態では、ドーピング層412に開口部412aが形成されているため、開口部412aが形成されていない場合とは異なる閾値電圧が得られる。つまり、ドーピング層412の材料が共通していても、ドーピング層412の面密度を変化させることで閾値電圧を調整できる。
【0050】
開口部412aは、例えばエッチングにより形成することができる。ドーピング層412にドーピング層212のように自己組織化単分子層が含まれる場合、自己組織化単分子層の成長サイトを制御することで開口部412aを形成することもできる。ドーピング層412に金属ナノ粒子が用いられる場合、金属ナノ粒子の個数密度が低ければ金属ナノ粒子同士の隙間が開口部412aに相当し得る。
【0051】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、電界効果トランジスタを含む半導体装置に関する。
図13は、第5の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0052】
図13に示すように、第5の実施形態に係る半導体装置500には、第1の実施形態におけるドーピング層112に代えて、ドーピング層512が含まれ、このドーピング層512の上にグラフェン膜111及びドーピング層512の組が設けられている。つまり、半導体装置500には、グラフェン膜111及びドーピング層512が2組含まれる。ドーピング層512には、例えば、ドーピング層112、212又は312と同様の材料が用いられる。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0053】
第5の実施形態によっても、ドーピング層512の材料に応じて第1、第2又は第3の実施形態と同様の効果が得られる。第5の実施形態では、2つのドーピング層512のうちチャネルに近いドーピング層512がグラフェン膜111に挟まれているため、ドーパントが不安定であっても、当該ドーパントの変成及び離脱を抑制しやすい。また、2つのグラフェン膜111が含まれているため、グラフェン膜111の数が1つの場合よりもゲート抵抗を低減することができる。更に、グラフェン膜111及びドーピング層512が2組含まれるため、1組のみ含まれる場合とは異なる閾値電圧が得られることがある。グラフェン膜111及びドーピング層512の組の数は限定されず、3組以上であってもよい。ドーピング層512の材料が共通していても、グラフェン膜111及びドーピング層512の組の数を変化させることで閾値電圧を調整できる場合がある。
【0054】
チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域の材料はバルク半導体でなくてもよい。例えば、二次元半導体材料がチャネル領域、ソース領域及びドレイン領域に用いられてもよい。チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域が薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)に含まれていてもよい。
【0055】
いずれの実施形態においても、グラフェン膜に含まれる単位層数は限定されない。
【0056】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0057】
(付記1)
チャネル領域、並びに前記チャネル領域を間に挟むソース領域及びドレイン領域と、
前記チャネル領域上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上のグラフェン膜と、
前記グラフェン膜をドーピングする前記グラフェン膜上のドーピング層と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【0058】
(付記2)
前記ドーピング層を覆う保護膜を有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0059】
(付記3)
前記ドーピング層は、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、3,6−ジフルオロ−2,5,7,7,8,8−ヘキサシアノキノジメタン、テトラシアノキノジメタン、2,5−ジフルオロ−テトラシアノキノジメタン、二酸化窒素、フッ化ペンタセン、ジアゾニウム塩、ベンジルビオロゲン若しくは塩化鉄若しくはこれらの任意の組み合わせ、又はポリエーテルイミド、フェロセン、コバルトセン若しくはテトラチアフルバレン若しくはこれらの任意の組み合わせを含むことを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0060】
(付記4)
前記ドーピング層は、前記グラフェン膜に接する官能基を備えた自己組織化単分子層を含むことを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0061】
(付記5)
前記官能基は、NH
2基、NH(CH
3)基、N(CH
3)
2基、CF
3基又はCOOH基であることを特徴とする付記4に記載の半導体装置。
【0062】
(付記6)
前記ドーピング層は、金属を含むことを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0063】
(付記7)
前記ドーピング層は、白金、金、銀、銅、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、オスニウム若しくはイリジウム又はこれらの任意の組み合わせを含むことを特徴とする付記6に記載の半導体装置。
【0064】
(付記8)
前記ドーピング層に開口部が形成され、
前記保護膜は前記開口部を通じて前記グラフェン膜に接していることを特徴とする付記2乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0065】
(付記9)
前記グラフェン膜はグラフェンの1つの単位層から構成されることを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0066】
(付記10)
前記ドーピング層上の第2のグラフェン膜と、
前記第2のグラフェン膜上の第2のドーピング層と、
を有することを特徴とする付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置。