(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、着座者の身体の状態をセンサにより検出し、その状態に応じて着座者に振動刺激を与えるには、センサにより検出された信号に基づいて振動モータを制御する電子制御部(ECU)が用いられる。椅子の軽量化のためにも、こうした電子制御部を衝撃から保護するカバーを、少ない部品点数で実現することが課題となっている。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動装置を制御する電子制御部を保護するカバーの構成部品点数を削減した椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、座部を有する椅子本体と、前記座部に着座する着座者を覚醒させる覚醒機器とを備える椅子であって、前記覚醒機器は、前記着座者の身体信号を検出するセンサと、前記着座者に振動刺激を加える振動装置と、前記センサにより検出した身体信号に基づいて前記振動装置を制御する電子制御部と、前記電子制御部を保持する保持部材と、を有し、前記保持部材は、前記電子制御部を被覆するカバー本体と、前記カバー本体と一体に形成され、前記電子制御部が取り付けられる電子制御部取付部と、前記保持部材を前記椅子本体に取り付けるための保持部材取付部と、を有
し、前記保持部材は、前記振動装置が取り付けられる振動装置取付部と、前記振動装置取付部に取り付けられる前記振動装置の露出部分を被覆する振動装置カバー部材と、を有し、前記振動装置カバー部材の前記椅子本体側の端部が、前記電子制御部に比べて、前記椅子本体側に近いことを特徴とする椅子により解決される。
【0008】
上記の椅子によれば、振動装置を制御する電子制御部を保護することができる。また、電子制御部を椅子本体に取り付けるための保持部材の構成部品点数を削減できる。これにより、保持部材を小型化できる。
また、椅子本体側からの衝撃を振動装置カバー部材が受け、電子制御部を保護できる。
上記の課題は、座部を有する椅子本体と、前記座部に着座する着座者を覚醒させる覚醒機器とを備える椅子であって、前記覚醒機器は、前記着座者の身体信号を検出するセンサと、前記着座者に振動刺激を加える振動装置と、前記センサにより検出した身体信号に基づいて前記振動装置を制御する電子制御部と、前記電子制御部を保持する保持部材と、を有し、前記保持部材は、前記電子制御部を被覆するカバー本体と、前記カバー本体と一体に形成され、前記電子制御部が取り付けられる電子制御部取付部と、前記保持部材を前記椅子本体に取り付けるための保持部材取付部と、を有し、前記保持部材取付部は、前記カバー本体から延出するフランジとして構成され、前記保持部材取付部と、前記カバー本体とを連結する少なくとも1つのリブを有し、前記リブの表面を延出させた平面と、前記振動装置の少なくとも一部が重なることを特徴とする椅子により解決される。
上記の椅子によれば、保持部材の強度を向上させることができるとともに、振動装置からの振動を、リブを介して椅子本体に効率良く伝達することができる。
【0009】
上記の椅子において、前記カバー本体は、前記椅子本体側に凹んだ凹部を有し、前記電子制御部取付部は、前記凹部のうち、前記椅子本体と対向する面側に設けられることとしてよい。
こうすることで、電子制御部を椅子本体と凹部の間に保持し、電子制御部を外部の衝撃から保護できる。
【0010】
上記の椅子において、前記覚醒機器に電力を供給する電源部を有し、前記電源部は、前記凹部のうち、前記椅子本体と対向する面の裏面側に配置されることとしてよい。
こうすることで、内部電源により覚醒機器を動作させることができる。これにより、椅子の設置自由度を向上できる。
【0011】
上記の椅子において、前記電子制御部取付部は、前記凹部のうち前記椅子本体と対向する面から、前記椅子本体側に突出する第1の突出部と第2の突出部を有し、前記第1の突出部と前記第2の突出部に取り付けられる前記電子制御部と、前記凹部のうち前記椅子本体と対向する面とが離間していることとしてよい。
こうすることで、電子制御部の放熱性を高めることができる。
【0012】
上記の椅子において、前記第1の突出部と前記第2の突出部は、前記電子制御部の対角に配されることとしてよい。
こうすることで、電子制御部の取り付けを安定させることができる。
【0013】
上記の椅子において、前記凹部のうち前記椅子本体と対向する面に貫通孔を形成したこととしてよい。
こうすることで、電子制御部の放熱性を高めることができる。また、貫通孔から覚醒機器の内部を確認することができる。
【0014】
上記の椅子において、前記保持部材は、前記振動装置が取り付けられる振動装置取付部と、前記振動装置取付部に取り付けられる前記振動装置の露出部分を被覆する振動装置カバー部材と、を有し、前記振動装置カバー部材の前記椅子本体側の端部が、前記電子制御部に比べて、前記椅子本体側に近いこととしてよい。
こうすることで、椅子本体側からの衝撃を振動装置カバー部材が受け、電子制御部を保護できる。
【0015】
上記の椅子において、前記保持部材取付部は、前記カバー本体から延出するフランジとして構成され、前記保持部材取付部と、前記カバー本体とを連結する少なくとも1つのリブを有
し、前記リブの表面を延出させた平面と、前記振動装置の少なくとも一部が重なることとしてよい。
こうすることで、保持部材の強度を向上させることができる
とともに、振動装置からの振動を、リブを介して椅子本体に効率良く伝達することができる。
【0017】
上記の椅子において、前記電子制御部は、無線通信端末と無線通信を行う無線通信部を有することとしてよい。
こうすることで、無線通信機能を備える電子制御部を椅子本体に取り付けるための保持部材の構成部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、振動装置を制御する電子制御部を保護するカバーの構成部品点数を削減できる。
【0019】
本発明の一態様によれば、電子制御部を椅子本体と凹部の間に保持し、電子制御部を外部の衝撃から保護できる。
【0020】
本発明の一態様によれば、椅子の設置自由度を向上できる。
【0021】
本発明の一態様によれば、電子制御部の放熱性を高めることができる。
【0022】
本発明の一態様によれば、電子制御部の取り付けを安定させることができる。
【0023】
本発明の一態様によれば、貫通孔から覚醒機器の内部を確認することができる。
【0024】
本発明の一態様によれば、椅子本体側からの衝撃を振動装置カバー部材が受け、電子制御部を保護できる。
【0025】
本発明の一態様によれば、保持部材の強度を向上させることができる。
【0026】
本発明の一態様によれば、振動装置からの振動を、リブを介して椅子本体に効率良く伝達することができる。
【0027】
本発明の一態様によれば、無線通信機能を備える電子制御部を椅子本体に取り付けるための保持部材の構成部品点数を削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1乃至
図21を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る振動機能を備える椅子Sについて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0030】
以下、本実施形態に係る椅子Sについて、
図1乃至
図9を参照しながら説明する。なお、以下において、前後、左右、上下の各方向は、椅子Sの着座者から見た各方向と一致することとする。
【0031】
[椅子Sの全体構成について]
まず、
図1及び
図2に基づいて、椅子Sの主な構成について説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係る椅子Sの外観図、
図2は椅子Sを構成する座部S1の下面を示す下側斜視図である。
【0032】
図1に示されるように、椅子Sは、主に、座部S1、背もたれ部S2、支柱S3、脚部S4、キャスターS5、及び覚醒機器Dを備える。
【0033】
座部S1は、着座者の臀部を支持する座面を構成する部材である。背もたれ部S2は座部S1と連結し、着座者の腰部、背部を支持する背もたれ面を構成する部材である。なお、本実施形態においては、座部S1と背もたれ部S2からなる部分を椅子本体Bとする。
【0034】
支柱S3は、座部S1の下面に取り付けられており、座部S1を支持する部材である。脚部S4は、支柱S3の下部に取り付けられ、支柱S3を支持する部材である。また、脚部S4の各脚の先端部には、椅子Sの移動を容易とするために、キャスターS5が取り付けられている。
【0035】
覚醒機器Dは、メインユニット10、着座者の身体信号を検出する生体センサ30、生体センサ30の検出信号をメインユニット10に伝送するためのハーネス31を備える。メインユニット10は、生体センサ30による検出信号に基づいて着座者に振動刺激を与える主要機能を有するとともに、無線通信端末2と無線通信する機能も有している。なお、本実施形態では、生体センサ30は、着座者を支持する圧力の変化によって着座者の呼吸に関する情報を検出する呼吸センサを用いる例を示しているが、これ以外にも心拍センサ、体温センサ等を用いてもよい。
【0036】
無線通信端末2は、タブレット端末、携帯端末(スマートフォンを含む)、パーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、メインユニット10と双方向の無線通信をすることにより、メインユニット10から情報を取得したり、メインユニット10を制御したりすることが可能となっている。
【0037】
ここで、
図2及び
図3に示されるように、メインユニット10は、座部S1の下面に取り付けられる。
図2に示されるように、座部S1の下面を構成する樹脂プレート40のうち、支柱S3の連結部分よりも前方において、メインユニット10のカバー部材となる保持部材11が取り付けられている。ここで、保持部材11の下面中央部にはメインユニット10の電源となる乾電池を取り付けるために着脱可能に設けられた電池カバー21が設けられており、保持部材11の下面の四隅に設けられた通し孔15にタッピングネジ(締結部材)を挿通して締結することで、メインユニット10が座部S1の下面に取り付けられる。
【0038】
また、
図3に示されるように、座部S1を構成するパッド部41の上面には、生体センサ30が配置されている。生体センサ30に接続するハーネス31は、ウレタン等のクッション材からなるパッド部41に形成されたガイド孔42、及び樹脂プレート40に形成された抜き孔43を通じて、メインユニット10に接続している。
【0039】
[メインユニット10について]
次に、
図4乃至
図9に基づいて、覚醒機器Dを構成するメインユニット10の詳細について説明する。
図4は、メインユニット10を椅子Sから取り外した状態におけるメインユニット10の斜視図であり、
図5は、メインユニット10の分解斜視図である。
図6は、メインユニット10の上面図であり、
図7は、メインユニット10からECU12を外した状態におけるメインユニット10の上面図である。
図8は、
図6のVIII-VIII断面図であり、
図9は、メインユニット10の側面図である。
【0040】
図4及び
図5に示されるように、メインユニット10は主に、ECU12(電子制御部)、振動モータ13、ECU12及び振動モータ13を内部に収容した状態で保持する保持部材11を備える。
【0041】
保持部材11は、カバー本体11A、ECU取付部11B、保持部材取付部11C、振動モータ取付部11Dを備える。保持部材11は、例えば樹脂材料で形成される。
【0042】
カバー本体11Aは、上方が開放された鉛直断面が略U字形状に形成され、覚醒機器Dの筐体として機能する。また、カバー本体11Aの下面部においては、内方に凹む凹部17が設けられている。凹部17の側壁には電池端部プレート20が取り付けられ、電池端部プレート20に対向する向きに電極を配した状態で凹部17内に乾電池23が収容される。なお、乾電池23は、ECU12及び振動モータ13の電源として機能するものである。また、電池カバー21は、凹部17の下方側の開口と係合し、凹部17に収容した乾電池23を被覆する部材である。なお、電池カバー21を取り外すことで、乾電池23を露出させることができるため、乾電池23の交換を容易に行うことができる。
【0043】
凹部17の座部S1側の面上には、ECU取付部11B(第1取付部11Ba及び第2取付部11Bb)と、ECU支持部19が座部S1側に突出する形状に形成されている。ECU取付部11B及びECU支持部19はそれぞれ、カバー本体11Aと一体に形成され、ECU12を支持する部材である。また、ECU取付部11Bの中心部には固定ネジ18と螺合するネジ穴が形成されている。ECU取付部11BとECU支持部19の周囲にはそれぞれリブが形成されており、これによりECU取付部11BとECU支持部19の強度を高めている。
【0044】
また、
図5に示されるように、ECU12の基板の四隅のうち一方の対角上にネジ挿通孔12Bが形成され、他方の対角上に支持部挿通孔12Cが形成される。そして、ECU12のネジ挿通孔12BとECU取付部11Bとを対向させると共に、支持部挿通孔12CとECU支持部19とを対向させるように配置した状態で、ECU取付部11Bの上部に形成されたネジ穴に固定ネジ18を螺合させることで、ECU12を保持部材11に対して取り付けることができる。
【0045】
ここで、ECU12と凹部17は離間しており、このようにECU12と凹部17との間に空間を設けることにより、ECU12の放熱性を高めることができる。
【0046】
また、
図7に示すように、凹部17の上面中央部には貫通孔17Aが形成されており、これにより、ECU12からの排熱を逃がす構造となっているため、より放熱性を高めることができる。また、貫通孔17Aを通じて、メインユニット10の内部、又は乾電池23の取り付け状態を確認することができる。
【0047】
また、カバー本体11Aには、カバー本体11Aの内面と、凹部17とを連結する複数のリブ22が形成されており、これらのリブ22によりカバー本体11Aの剛性を向上させることができる。
【0048】
保持部材取付部11Cは、メインユニット10を座部S1に取り付けるための部分であり、カバー本体11Aの両側に延出したフランジとして形成される。保持部材取付部11Cには、複数の通し孔15が形成されており、それぞれの通し孔15にタッピングねじが通されて座部S1の下面に保持部材取付部11Cが固定される。これにより、メインユニット10が座部S1の下側に取り付けられる。
【0049】
振動モータ取付部11Dは、振動モータ13が取り付けられ、振動モータ13が収容される収容溝を有する。振動モータ13は、本発明に係る振動装置に相当し、ECU12から受信した制御信号に基づいて駆動と停止が切り替えられる。例えば、振動モータ13には、アンバランスマス型のモータを用いることしてよい。
【0050】
図8に示すように、振動モータ13は収容溝に収容された状態で、上部に振動モータカバー部材14が配され、振動モータカバー部材14により振動モータ13の上面が被覆される。また、振動モータ取付部11Dと振動モータカバー部材14により振動モータ13の上下を挟み込むようにしたことで、駆動状態においても振動モータ13の位置ずれを抑制することができる。
【0051】
また、
図8に示すように、振動モータカバー部材14の上端部、すなわち座部S1側の端部は、ECU12よりも座部S1に近い位置となっている。これにより、座部S1側又は保持部材11の下面側からの衝撃を受けた場合においても、座部S1の下面を構成する樹脂プレート40に対し、ECU12よりも先に振動モータカバー部材14が当接しやすくなるため、ECU12の上部に保護部材を設けなくとも、ECU12を好適に保護可能となる。このように、ECU12の上部に保護部材を設けることを要しないことで、メインユニット10の構成部品点数を削減することができる。
【0052】
なお、ECU12は、覚醒機器Dを制御する制御装置であり、本実施形態においては、生体センサ30により検出された呼吸の間隔を示すデジタル信号に変換された電位差信号を基に、振動モータ13を駆動制御する機能を有する。また、ECU12は、演算制御用のCPU、ROM、RAMと共に、無線通信を行う無線通信部12Aを有しており、無線通信部12Aにより無線通信端末2と双方向通信が可能となっている。そして、無線通信端末2から受信する制御信号(駆動信号、停止信号等)に基づいて、ECU12は、振動モータ13の動作を制御することとしてよい。
【0053】
なお具体的には、ECU12に入力される信号は、信号処理回路によってデジタル信号に変換された電位差信号であり、出力されるものは、振動モータ13を駆動するための電力である。RAMは、演算制御中の信号及び入出力される信号を含むパラメータを一時記憶するもので、デジタル信号に変換された電位差信号その他の信号を格納する格納部として機能する。
【0054】
ROMは、CPUが実行するプログラム及び所定のパラメータを記憶するものであり、上記プログラムには、例えば、所定の基準値を設定するための設定プログラム、基準値に基づき覚醒状態を判定するための判定プログラム、及び振動モータ13を駆動するための駆動プログラム等が含まれる。
【0055】
ここでECU12は、CPUの指示に応じて電力を供給することにより振動モータ13を駆動する機能を有する。このCPUの指示信号は、生体センサ30(呼吸センサ)からの信号を演算することにより生成される。つまり、CPUは、生体センサ30から送信される信号に基づいて、着座者の覚醒状態を判断し、低覚醒状態(すなわち覚醒状態ではない)と判断した場合に、振動モータ13を駆動するための信号を振動モータ13に出力する。これにより、着座者が低覚醒状態にある場合に、振動刺激を与えることで、覚醒状態に回復、又は覚醒状態を維持しやすくなる。
【0056】
また、
図9に示されるように、カバー本体11Aの外面において、カバー本体11Aと保持部材取付部11Cとを接続するリブ16が複数形成されている。これにより、保持部材11の剛性を高めることができる。また、
図9に示されるように、少なくとも1つのリブ16の表面を延出させた平面が振動モータ13と重なるようになっている。換言すれば、メインユニット10の側面視において、振動モータ13と前後方向において重なる位置にあるリブ16が少なくとも1つ存在し、このように構成することにより振動モータ13からの振動を、保持部材取付部11Cを介して、座部S1に効率良く伝達可能となっている。
【0057】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。以下においては、上記の実施形態に係る椅子Sの変形例について説明する。
【0058】
[第1の変形例]
図10に基づいて、第1の変形例について説明する。
図10は、生体センサ30の配置を示す、座部S1の模式的な上面図である。
図10に示されるように、第1の変形例においては、生体センサ30を座部S1に支柱S3を跨いで複数設けた点で上記の実施形態と相違する。
【0059】
生体センサ30の検出感度や耐圧能力によっては、着座者の荷重が最も加わる位置を避けて、着座者の呼吸の際に着座者から加わる圧力の変動が大きい部位に、生体センサ30を配置する方が身体信号を好適に検出できる場合がある。このような場合を想定すると、着座者が座部S1に浅く(座部S1の前側に)着座しているとき、つまり、上記の最大荷重領域が支柱S3よりも前側に位置するときには、生体センサ30は、支柱S3の中心よりも後ろ側に配置されていると身体信号を好適に検出できる。
【0060】
一方、着座者が座部S1に深く(座部S1の後ろ側に)着座しているとき、つまり、上記の最大荷重領域が支柱S3よりも後ろ側に位置するときには、生体センサ30は、支柱S3よりも前側に配置されていると身体信号を好適に検出できる。
【0061】
そして、両方の姿勢を取る着座者を想定する場合に、支柱S3の中心に対して前側と後ろ側の両側に複数の生体センサ30を配置すると好ましい。
【0062】
[第2の変形例]
次に、
図11に基づいて、第2の変形例について説明する。第2の変形例においては、メインユニット10を座部S1ではなく、背もたれ部S2の後面に取り付けた点で上記の実施形態と相違する。
【0063】
図11には、メインユニット10を取り付けた背もたれ部S2の後面を示した。
図11に示されるように、メインユニット10は、保持部材取付部11Cを固定ネジ50によって背もたれ部S2の後面部に取り付けている。
【0064】
このように、振動モータ13を備えるメインユニット10を背もたれ部S2の後面に取り付けることで、背もたれ部S2を振動させ、着座者の上体に振動を伝達させることができるため、着座者の覚醒効果を高めることができる。
【0065】
さらに、背もたれ部S2の下部は着座者の腰部に対向することが多く、着座者の腰部は姿勢によって離れることが少ない。このため、メインユニット10を背もたれ部S2の下部に取り付けることで、着座者の腰部に安定して刺激を伝播させることが可能となり覚醒効果を向上させることができる。
【0066】
[第3の変形例]
次に、
図12及び
図13に基づいて、第3の実施例について説明する。第3の実施例においては、アームレストS6を備えたアームレスト付椅子Saにメインユニット10を取り付けた点で上記の実施形態と相違する。
【0067】
図12は、アームレストS6を備えるアームレスト付椅子Saの模式的な正面図であり、
図13は、アームレスト付椅子Saの模式的な下面図である。
図12に示されるように、アームレストS6は、座部S1の両サイドに取り付けられている。また、
図13に示されるように、アームレストS6を座部S1の下面部に取り付けるためのアームレスト取付部60は、前後方向においてメインユニット10と重なる位置となるように、座部S1の下面部に取り付けられることとしてよい。
【0068】
[第4の変形例]
次に、
図14に基づいて、第4の実施例について説明する。第4の実施例においては、アームレストS6のアームレスト取付部60の取付位置において上記の第3の実施例と相違する。すなわち、
図14に示されるように、アームレストS6を座部S1の下面部に取り付けるためのアームレスト取付部60は、前後方向においてメインユニット10と重ならない位置となるように、座部S1の下面部に取り付けられることとしてよい。
【0069】
[第5の変形例]
次に、
図15乃至
図21に基づいて、第5の実施例について説明する。
【0070】
図15は、第5の実施例に係る椅子Sの座部S1の構成についての説明図であり、座部S1をその構成部品に分解した図である。
図15に示されるように、座部S1は、樹脂フレーム59Bの上にパッド材54を載置し、このパッド材54を表皮材59Aで覆うことによって構成されている。樹脂フレーム59Bは、パッド材54を下方から支えるのに十分なサイズを有する。
【0071】
パッド材54と表皮材59Aの間には生体センサ30Aの主要部品が配置されるとともに、生体センサ30Aの下方に延びる配線がパッド材54に形成された貫通スリット56、樹脂フレーム59Bの貫通孔を通じて、座部S1の下側に取り付けられるメインユニット61に接続されている。
【0072】
以下、
図16乃至
図18を参照しながら、生体センサ30A及び生体センサ30の取付構造について説明する。
【0073】
図16は、表皮材59Aを取り外した状態における座部S1の上面図を示した。
図16に示されるように、パッド材54の上には生体センサ30Aが設けられる。生体センサ30Aは、着座者の身体信号を検出するデバイスであり、検出部55、第1伝送路51、第2伝送路52、接続部53を備える。
【0074】
検出部55は、パッド材54の中央部の4箇所に設けられる圧力センサである。
第1伝送路51は、4つの検出部55にそれぞれ接続し、検出部55において検知された信号を伝送する配線である。
第2伝送路52は、メインユニット10のECU12に接続し、検出部55で検知された信号をECU12に入力する配線である。
接続部53は、第1伝送路51及び第2伝送路52を接続する伝送路であり、第1伝送路51と第2伝送路52に対して幅が広い平板状の伝送路となっている。
図16に示す例では、接続部53は第1伝送路51との連結部に対して、第2伝送路52との連結部の幅が狭くなっている。具体的には、接続部53の第2伝送路52との連結部は、第2伝送路52側が細くなるテーパー形状をなしている。
【0075】
図16及び
図17に示されるように、パッド材54の前後方向中央部57よりも前方には、貫通スリット56を厚み方向に貫通する貫通スリット56が形成されている。
ここで、前後方向中央部57は、座部S1の両サイドに設けられるフレーム部材58と前後方向において重なる位置にある。すなわち、検出部55及び第1伝送路51は、座部S1の両サイドに設けられるフレーム部材58と前後方向において重なる位置にある。
また、貫通スリット56は、後方上部から前方下部に向けて傾斜している。すなわち、貫通スリット56の上端部56Aは、貫通スリット56の下端部56Bよりも後方に位置している。
【0076】
貫通スリット56には、平板状の接続部53が配置されており、接続部53の上面及び下面は、パッド材54に当接した状態で配置されている。
このように、接続部53が、パッド材54に接した状態で配置されることで、座部S1のクッション性を損なうことを抑制できる。
また、パッド材54内において接続部53の配置スペースをコンパクトにできる。
更に、貫通スリット56は前後方向中央部57、すなわち乗員の臀部を支持する部位より前方に設けられているため、貫通スリット56を設けた場合においても着座感を損なうことを抑制できる。
【0077】
貫通スリット56の下端には、第2伝送路52が接続されており、第2伝送路52は、座部S1のフレームの穴を通じてメインユニット10に接続している。
【0078】
図18には、生体センサ30Aの構成を示した。
図18に示されるように、4つの検出部55ごとに対応する第1伝送路51が接続されている。更に、それぞれの第1伝送路51には、接続部53の対応する伝送路53Aが接続されている。
ここで、接続部53のそれぞれの伝送路53Aは、接続部53に沿った平面上に離間して配置されている。このように構成することにより、接続部53の厚みを薄くし、貫通スリット56において上下のパッド材54に接した状態で配置可能となる。
そして、各伝送路53Aは、第2伝送路52で束ねられて、メインユニット10のECU12に接続される。
【0079】
次に、
図19乃至
図21に基づいて変形例に係るメインユニット61の構成について説明する。
図19は、メインユニット61を上方から見た図である。
図20は、メインユニット61を下方から見た図である。
図21は、メインユニット61の組み立て図である。
【0080】
メインユニット61は、
図19に図示した外観を有し、座部S1の下部に取り付けられる。メインユニット61は、着座者に対して物理的刺激としての振動を付与することにより、着座者の覚醒度合いを高める機構である。メインユニット61の具体的な構成について説明すると、メインユニット61は、
図19、
図20及び
図21に示すように、振動付与装置62と、ECU70と、バッテリ72と、保持器80と、を有する。
【0081】
振動付与装置62は、着座者の覚醒度合いを高めるために振動付与動作(所定の動作に相当)を行う。この振動付与装置62は、アンバランスマス型のモータからなり、
図21に示すように、モータ63と、モータ63の回転軸に取り付けられた半円柱状の回転子64とによって構成されている。そして、モータ63が起動して回転子64が回転することで、座部S1の周期的な振動が発生する。この振動は、保持器80や取り付けブラケットを介して座部S1に伝達され、最終的に座部S1に着座している着座者に到達する。
【0082】
ECU70は、制御機構に相当し、振動付与装置62を制御する。より詳しく説明すると、ECU70は、制御基板からなり、ターミナル端子71を介して検出部55から延出した導線の末端部に接続されている。ECU70は、検出部55から出力された信号(すなわち、着座圧の計測結果)を受信し、当該信号に基づいて着座者の現在の覚醒度合いを演算する処理を実行する。そして、ECU70は、演算した覚醒度合いに応じた強度及び頻度にて振動が発生するように振動付与装置62を制御する。つまり、ECU70は、検出部55の計測結果に応じて振動付与装置62を制御する。
【0083】
ちなみに、着座圧の計測結果に基づいて着座者の覚醒度合いを判定する方法としては、公知の判定方法が利用可能である。例えば、検出部55の計測結果から着座圧の周期的変化を示す波形を特定し、当該波形の周期(分かり易くは、上記波形においてピークが出現する間隔)の長さから着座者の覚醒度合いを判定することができる。
【0084】
なお、ターミナル端子71は、
図19に示すように、ECU70の前端部に設けられている。つまり、検出部55から延出した導線の末端部は、ECU70の前側からECU70に向けて引き込まれてターミナル端子71に接続されている。
【0085】
バッテリ72は、振動付与装置62及びECU70に電力を供給する機器である。なお、本実施形態に係るバッテリ72は、
図21に図示のように略直方体の外観形状をなしている。保持器80は、振動付与装置62、ECU70及びバッテリ72を保持する容器(ケース)であり、
図21に図示した外観を有する。以下、保持器80の構成について詳しく説明する。
【0086】
保持器80は、略舟形状に成形された樹脂製容器であり、上端には開口を有する。この開口は、保持器80の前端の上方部分にまで至っている。また、保持器80の底壁の下部には、当該底壁の下面が略直方体状に窪んで形成されたバッテリ収容スペース(不図示)が設けられている。このバッテリ収容スペース内にバッテリ72が嵌め込まれ、ビス等によってバッテリ72が保持器80の底壁に固定される。これにより、
図20に示すように、バッテリ72が保持器80の底壁に保持されるようになる。
【0087】
保持器80は、底壁の周りに側壁80aを有している。この側壁80aは、保持器80の底壁を取り囲むように設けられている。そして、保持器80において側壁80aと底壁によって囲まれる空間(以下、保持器80の内部空間)には、
図21に示すように、振動付与装置62及びECU70が保持(収容)される。具体的に説明すると、保持器80の内部空間のうち、後側に位置する領域には複数のボス81が設けられている。ボス81は、ECU70をビス止めするために設けられたものであり、ECU70をなす略矩形状の制御基板の角部に対応する位置に4つ設けられている。そして、
図21に示すように、保持器80の内部空間の後方部分にECU70が収容され、ECU70の角部に形成されたビス止め孔にビスが挿入され、当該ビスがボス81に締結される。これにより、ECU70は、保持器80の内部空間に収められた状態で、保持器80に保持されるようになる。
【0088】
なお、保持器80の内部空間では、
図19に示すように、ECU70が保持器80の底壁において、上述したバッテリ収容スペースを形成するために略直方体状に盛り上がった部分よりも上方に保持されている。
【0089】
保持器80の内部空間のうち、前側に位置する領域にはモータ保持部82が設けられている。このモータ保持部82は、底壁から立ちあがった一対の垂直壁と、それぞれの垂直壁に対して直交するように設けられた一対の直交壁とを有する。そして、垂直壁と直交壁とによって囲まれる格子状のスペース内に振動付与装置62のモータ63が嵌まり込まれる。その後、モータ63の外表面に
図21に図示の押さえ板83が係合される。さらに、押さえ板83は、保持器80の所定部分(厳密には、保持器80の底壁において、上述したバッテリ収容スペースを形成するために略直方体状に盛り上がった部分)に固定される。これにより、モータ63を含む振動付与装置62が押さえ板83によってモータ保持部82に押さえ付けられた状態でモータ保持部82に保持されるようになる。
【0090】
上述のように、保持器80は、振動付与装置62、ECU70及びバッテリを保持するように構成されている。これにより、本実施形態では、上記3つの機器に対して保持器を個別に設ける構成と比較して、部品点数(保持器の個数)がより少なくなっている。
【0091】
以上説明した本発明に係る椅子の一態様は以下の通りである。
(1)着座者が着座する座部と、
前記着座者の身体信号を検出する検出部と、
前記検出部に接続され、前記身体信号を伝送する第1伝送路と、
前記身体信号に基づく制御を実行する電子制御部に接続され、前記身体信号を前記電子制御部に入力する第2伝送路と、
前記第1伝送路と前記第2伝送路とを接続する接続部と、を備え、
前記接続部は、前記座部に設けられるパッド材に形成された、厚み方向に貫通する貫通スリット内に配置され、
前記貫通スリットの上端と下端の位置は、前記座部の面内方向でずれており、
前記接続部の上面と下面はそれぞれ、前記貫通スリット内の前記パッド材の少なくとも一部に当接することを特徴とする椅子。
(1)に記載の椅子によれば、貫通スリットの上方と下方のパッド材と接続部とが接するように配置することで、座部のクッション性能を維持しつつも検出部から電子制御部に信号を伝送するための伝送路の配置スペースをコンパクトにすることができる。
【0092】
(2)上記の(1)に記載の椅子において、前記貫通スリットは、前記座部の前後方向中央部よりも前方に形成されると好適である。
(2)に記載の椅子によれば、貫通スリットを着座者からの荷重が入力されにくい位置に形成することで、着座感を損なうことを抑制できる。
【0093】
(3)上記の(1)又は(2)に記載の椅子において、
複数の前記検出部と、
前記複数の前記検出部に接続される複数の前記第1伝送路と、を備え、
前記接続部は、前記複数の前記第1伝送路とそれぞれ接続し、前記貫通スリットに沿った平面上に配置される複数の伝送路を有すると好適である。
(3)に記載の椅子によれば、接続部を薄く構成することで、検出部から電子制御部に信号を伝送するための伝送路の配置スペースの厚みをコンパクトにすることができる。
【0094】
なお、
図3に示すガイド孔42は、上記の貫通スリットの一例に相当する。すなわち、
図3に示す椅子Sは、上記の(1)に係る椅子の一例に相当するものである。
【0095】
以上説明した本実施形態に係る椅子S(及びアームレスト付椅子Sa)によれば、振動モータ13を制御するECU12を保持部材11により保護することができる。また、ECU12を椅子本体Bに取り付けるためのECU取付部11Bをカバー本体11Aと一体化したことにより、保持部材11の構成部品点数を削減できる。これにより、メインユニット10を小型、軽量化できる。
【0096】
また、本実施形態に係る椅子Sによれば、ECU12を椅子本体Bと凹部17との間に保持することで、ECU12を外部の衝撃から保護できる。
【0097】
また、本実施形態に係る椅子Sによれば、覚醒機器Dを乾電池23により動作させることができる。これにより、椅子Sの設置自由度を向上できる。
【0098】
また、本実施形態に係る椅子Sによれば、ECU取付部11Bに取り付けられるECU12と、凹部17が離間していることにより、ECU12の放熱性を高めることができる。
【0099】
また、本実施形態に係る椅子Sによれば、ECU12を取り付ける第1取付部11Baと第2取付部11Bbが、ECU12の対角に配されることで、ECU12の取り付けを安定させることができる。
【0100】
また、本実施形態に係る椅子Sによれば、凹部17のうち椅子本体Bと対向する面に貫通孔17Aを形成したことで、ECU12の放熱性を高めることができる。また、貫通孔17Aからメインユニット10の内部を確認することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る椅子Sによれば、振動モータカバー部材14の椅子本体B側の端部が、ECU12に比べて、椅子本体B側に近いことで、椅子本体B側からの衝撃を振動モータカバー部材14が受けることにより、ECU12を保護できる。
【0102】
また、本実施形態に係る椅子Sによれば、保持部材11の保持部材取付部11Cと、カバー本体11Aとを連結するリブ16を設けたことで、保持部材11の剛性を向上させることができる。
【0103】
また、本実施形態に係る椅子Sによれば、リブ16の表面を延出させた平面と、振動モータ13の少なくとも一部が重なるように配置したことで、振動モータ13からの振動を、リブ16を介して椅子本体Bに効率良く伝達することができる。
【0104】
また、本実施形態に係る椅子Sによれば、ECU12は、無線通信端末2と無線通信を行う無線通信部12Aを有することで、無線通信機能を備えるECU12を椅子本体Bに取り付けるための保持部材11の構成部品点数を削減することができる。