特許第6799274号(P6799274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6799274-圧電音響装置 図000002
  • 特許6799274-圧電音響装置 図000003
  • 特許6799274-圧電音響装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799274
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】圧電音響装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   H04R17/00
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-205526(P2016-205526)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2018-67811(P2018-67811A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 里志
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−219499(JP,A)
【文献】 特開2017−228958(JP,A)
【文献】 特開2003−304598(JP,A)
【文献】 特開昭56−106497(JP,A)
【文献】 実公昭45−001343(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面と、当該第1端面とは反対側に位置する第2端面とを持つ積層型圧電素子と、
前記積層型圧電素子の第1端面に取り付けられる錘部材と、
前記積層型圧電素子の前記第2端面に取り付けられ、前記積層型圧電素子の振動が伝達する第1振動伝達部と、
前記第1振動伝達部に固定されて前記第1振動伝達部からの振動を、周囲に存在する流体に伝達する第2振動伝達部とを有し、
前記錘部材の重量は、前記積層型圧電素子の重量と前記第1振動伝達部の重量との合計よりも大きく、
前記第1振動伝達部がシャフトであり、前記第2振動伝達部が薄板状部材であり、前記シャフトの基端部が前記積層型圧電素子の前記第2端面に固定してあり、前記シャフトの先端部近くに、前記薄板状部材の中央部付近が固定してあり、
前記第2振動伝達部の外形サイズは、前記第1振動伝達部の外形サイズよりも大きいことを特徴とする圧電音響装置。
【請求項2】
第1端面と、当該第1端面とは反対側に位置する第2端面とを持つ積層型圧電素子と、
前記積層型圧電素子の第1端面に取り付けられる錘部材と、
前記積層型圧電素子の前記第2端面に取り付けられ、前記積層型圧電素子の振動が伝達する第1振動伝達部と、
前記第1振動伝達部に固定されて前記第1振動伝達部からの振動を、周囲に存在する流体に伝達する第2振動伝達部とを有し、
前記錘部材の重量は、前記積層型圧電素子の重量と前記第1振動伝達部の重量との合計よりも大きく、
前記積層型圧電素子の内部では、前記第1端面または前記第2端面に略平行な平面をそれぞれ持つ第1内部電極および第2内部電極が、圧電層を挟んで、前記第1内部電極および前記第2内部電極に略垂直な方向に向けて積層してあり、
前記第2振動伝達部の外形サイズは、前記第1振動伝達部の外形サイズよりも大きいことを特徴とする圧電音響装置。
【請求項3】
第1端面と、当該第1端面とは反対側に位置する第2端面とを持つ積層型圧電素子と、
前記積層型圧電素子の第1端面に取り付けられる錘部材と、
前記積層型圧電素子の前記第2端面に取り付けられ、前記積層型圧電素子の振動が伝達する第1振動伝達部と、
前記第1振動伝達部に固定されて前記第1振動伝達部からの振動を、周囲に存在する流体に伝達する第2振動伝達部とを有し、
前記錘部材の比重は、前記積層型圧電素子の比重以上で、前記第1振動伝達部の比重よりも大きく、
前記第1振動伝達部がシャフトであり、前記第2振動伝達部が薄板状部材であり、前記シャフトの基端部が前記積層型圧電素子の前記第2端面に固定してあり、前記シャフトの先端部近くに、前記薄板状部材の中央部付近が固定してあり、
前記第2振動伝達部の外形サイズは、前記第1振動伝達部の外形サイズよりも大きく、
前記第2振動伝達部は、内部電極を有する前記積層型圧電素子と、前記第1振動伝達部と、を介して前記錘部材に接続される以外には、前記錘部材に接続されていないことを特徴とする圧電音響装置。
【請求項4】
第1端面と、当該第1端面とは反対側に位置する第2端面とを持つ積層型圧電素子と、
前記積層型圧電素子の第1端面に取り付けられる錘部材と、
前記積層型圧電素子の前記第2端面に取り付けられ、前記積層型圧電素子の振動が伝達する第1振動伝達部と、
前記第1振動伝達部に固定されて前記第1振動伝達部からの振動を、周囲に存在する流体に伝達する第2振動伝達部とを有し、
前記錘部材の比重は、前記積層型圧電素子の比重以上で、前記第1振動伝達部の比重よりも大きく、
前記積層型圧電素子の内部では、前記第1端面または前記第2端面に略平行な平面をそれぞれ持つ第1内部電極および第2内部電極が、圧電層を挟んで、前記第1内部電極および前記第2内部電極に略垂直な方向に向けて積層してあり、
前記第2振動伝達部の外形サイズは、前記第1振動伝達部の外形サイズよりも大きく、
前記第2振動伝達部は、前記第1内部電極および前記第2内部電極を有する前記積層型圧電素子と、前記第1振動伝達部と、を介して前記錘部材に接続される以外には、前記錘部材に接続されていないことを特徴とする圧電音響装置。
【請求項5】
前記第2振動伝達部の前記流体への振動伝達面積は、前記第1振動伝達部の振動伝達面積よりも大きい請求項1〜4のいずれかに記載の圧電音響装置。
【請求項6】
前記第2振動伝達部の厚みは、前記第1振動伝達部の厚みよりも薄い請求項1〜5のいずれかに記載の圧電音響装置。
【請求項7】
前記第1振動伝達部と前記第2振動伝達部とは、別部材で構成してあり、直接または間接的に接合している請求項1〜6のいずれかに記載の圧電音響装置。
【請求項8】
前記第1振動伝達部および前記第2振動伝達部は、前記錘部材には、接続されていない請求項1〜7のいずれかに記載の圧電音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型圧電素子を利用した圧電音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型圧電素子を用いた圧電音響装置としては、たとえば特許文献1に示すものが知られている。この特許文献1に示す圧電音響装置では、積層型圧電素子の周囲を金属製ケースで囲み、圧電素子の振動をケースの薄い底板に振動を伝え、そこから振動を振動板に伝えて振動板を振動させて音を発生させている。
【0003】
しかしながら、従来の圧電音響装置では、圧電素子の振動を薄い底板に伝えてから厚い振動板を振動させて音を発生しているために、ブザー音などの単純な音を発生させるには十分であるが、音楽などの複雑な音を発生させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−119504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、積層型圧電素子を用いて音楽などの複雑な音を発生させることができる圧電音響装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧電音響装置は、
第1端面と、当該第1端面とは反対側に位置する第2端面とを持つ積層型圧電素子と、
前記積層型圧電素子の第1端面に取り付けられる錘部材と、
前記積層型圧電素子の前記第2端面に取り付けられ、前記積層型圧電素子の振動が伝達する第1振動伝達部と、
前記第1振動伝達部に固定されて前記第1振動伝達部からの振動を、周囲に存在する流体に伝達する第2振動伝達部とを有し、
前記第2振動伝達部の外形サイズは、前記第1振動伝達部の外形サイズよりも大きいことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る圧電音響装置では、積層型圧電素子の振動は、錘部材ではなく、主として第1振動伝達部に大きく伝わる。その後に、第1振動伝達部から、その第1振動伝達部の外形サイズよりも大きな外形サイズを持つ第2振動伝達部に振動が伝達する。本発明者は、積層型圧電素子の振動を、この順序で伝達させることにより、音楽などの複雑な音を発生させることができることを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。なお、外形サイズとは、外郭形状が円形である場合には、外径を意味し、その他の形状である場合には、外郭形状の外接円の直径を意味する。たとえば外郭形状が多角形である場合には、最大の対角線の長さが外形サイズとなる。
【0008】
特に本発明の圧電音響装置では、上記のような構成を採用することにより、共振周波数を50kHz以上、好ましくは60kHz以上にすることが容易であり、装置に求められる40kHz以上の高域再生性能が安定的に確保できるため、ハイレゾ(High Resolution)音源データの再生が容易である。なお、ハイレゾ音源とは、音楽用CD(CD−DA)を超える音質の音楽データの総称であり、サンプリング周波数および量子化ビット数の内、いずれかがCD−DAスペック(44.1kHz/16ビット)またはDATスペック(48kHz/16ビット)を超えていればハイレゾ音源と見なされる。
【0009】
また、本発明の圧電音響装置は、従来のスピーカに用いるコイルと磁石の組合せを用いないため、構造が単純で消費電力が少ない。また、積層型圧電素子を用いるために、高周波特性に優れている。
【0010】
好ましくは、前記第2振動伝達部の前記流体への振動伝達面積は、前記第1振動伝達部の振動伝達面積よりも大きい。このような構成とすることで、第2振動伝達部から周囲流体への振動(音)の伝達量が大きくなり、音の出力が大きくなる。
【0011】
好ましくは、前記第2振動伝達部の厚みは、前記第1振動伝達部の厚みよりも薄い。このような構成とすることで、共振周波数を50kHz以上、好ましくは60kHz以上にすることが容易であり、ハイレゾ(High Resolution)音源データの再生がさらに容易である。また、第2振動伝達部から周囲流体への振動(音)の伝達量が大きくなり、音の出力が大きくなる。
【0012】
好ましくは、前記錘部材の重量は、前記積層型圧電素子の重量と前記第1振動伝達部の重量との合計よりも大きい。このように構成することにより、積層型圧電素子の振動は、錘部材ではなく、第1振動伝達部に大きく伝達する。好ましくは、前記錘部材の重量は、前記第1振動伝達部の重量の5倍以上、さらに好ましくは10倍以上である。
【0013】
好ましくは、前記錘部材の比重は、前記積層型圧電素子の比重以上で、前記第1振動伝達部の比重よりも大きい。錘部材の比重は、好ましくは7以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。
【0014】
好ましくは、前記第1振動伝達部と前記第2振動伝達部とは、別部材で構成してあり、直接にまたは間接的に接合している。直接に接合とは、たとえばねじ止めや係合などで直接に接触して接合している場合であり、間接的に接合とは、たとえば接着剤などを介して接合している場合などである。いずれにしても、第1振動伝達部から第2振動伝達部に向けて振動が効率的に伝達するように、第1振動伝達部と第2進同伝達部とは接合してある。これらを別部材で構成することにより、たとえば第1振動伝達部材は、積層型圧電素子からの振動を伝達させやすい部材で構成し、第2振動伝達部材は、空気などの周囲流体に振動を伝達させやすい部材で構成することができる。
【0015】
好ましくは、前記第1振動伝達部がシャフトであり、前記第2振動伝達部が薄板状部材であり、前記シャフトの基端部が前記積層型圧電素子の前記第2端面に固定してあり、前記シャフトの先端部近くに、前記薄板状部材の中央部付近が固定してある。このように構成することで、ハイレゾ音源などを高品質で再生して発生させることができる。
【0016】
好ましくは、前記第1振動伝達部および前記第2振動伝達部は、前記錘部材には、接続されていない。このように構成することで、積層型圧電素子からの振動は、第1振動伝達部のみに主として伝わり、高品質の音を発生させることができる。
【0017】
好ましくは、前記積層型圧電素子の内部では、前記第1端面または前記第2端面に略平行な平面をそれぞれ持つ第1内部電極および第2内部電極が、圧電層を挟んで、前記第1内部電極および前記第2内部電極に略垂直な方向に向けて積層してある。このように構成することで、より大きな振動を第1振動伝達部に伝達することができる。
【0018】
なお、積層型圧電素子の内部では、前記第1端面または前記第2端面に略垂直な平面をそれぞれ持つ第1内部電極および第2内部電極が、圧電層を挟んで、前記第1内部電極および前記第2内部電極に略垂直な方向に向けて積層してあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明の一実施形態に係る圧電音響装置の概略断面図である。
図2図2図1に示す圧電音響装置の分解斜視図である。
図3図3は本発明の他の実施形態に係る圧電音響装置の一部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0021】
図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係る圧電音響装置10は、たとえばハイレゾ音源の音楽を聞くためのスピーカとして用いられる。圧電音響装置10は、薄板状部材14と、シャフト16と、積層型圧電素子20と、錘部材30とを有する。
【0022】
シャフト16は、第1振動伝達部材として機能し、本実施形態では、円柱形状であるが、角柱形状や楕円柱形状ても良い。また、本実施形態では、シャフト16は、中実柱形状であるが、中空柱形状であっても良い。シャフト16は、たとえばカーボン強化プラスチック、ステンレス等の鋼材、アルミニウム、ポリアミドイミドなどの非鉄金属などで構成される。
【0023】
シャフト16のZ軸方向の先端部(上端部)16aには、シャフト16の外径よりも小径の小径凸部17が形成してあり、この小径凸部17が薄板状部材14の略中央部に形成してある貫通孔14aに挿通して係合してある。薄板状部材14は、シャフト16の先端部16aに形成してある小径凸部17の周囲の段差部18に接着剤などにより固定してある。なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸は、シャフト16の軸方向にも一致する。
【0024】
薄板状部材14は、シャフト16からの振動を、周囲に存在する空気に音として伝達する部材であり、本実施形態では、一般的なスピーカに用いられるコーン形状を有するが、その形状は特に限定されず、円板形状、楕円板形状、3角以上の多角板形状、星形などの凹凸形状などであってもよい。第2振動伝達部材としての薄板状部材14の厚みtは、第1振動伝達部材としてのシャフト16の厚み(外径dとも言う)よりも薄い。また、第2振動伝達部材としての薄板状部材14の外形サイズ(外径D)は、第1振動伝達部材としてのシャフト16の外形サイズ(外径d)よりも大きい。なお、外形サイズの定義は前述した通りである。
【0025】
また、本実施形態では、薄板状部材14は、その内表面と外表面とが空気に接触する振動伝達面積となり、シャフト16の外表面の振動伝達面積(空気に接する部分の面積)よりも大きな振動伝達面積を有する。本実施形態では、空気に対する薄板状部材14の振動伝達面積は、シャフト16のそれに比べて、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは4倍以上である。
【0026】
薄板状部材14の材質は、特に限定されないが、たとえば紙、樹脂、金属、あるいはフィルム状部材、レーヨン、ポリエチレン、カーボンファイバー、ガラス繊維等、繊維又はその複合物などであっても良い。
【0027】
図2に示すように、積層型圧電素子20は、略角柱状(本実施形態では四角柱)の外観形状を有する素子本体21と第1外部電極26と第2外部電極27とを有する。素子本体21は、Z軸方向に相互に反対側に位置する第1端面21aと第2端面21bとを有する。第1端面21aには、接着剤を介して錘部材30の上面が接着してある。また、第2端面21bには、シャフト16の基端部16bが接着剤などにより接合してある。
【0028】
素子本体21の内部には、第1端面21aおよび第2端面21bに略平行な平面(本実施形態ではX軸およびY軸に平行な軸を含む平面)を持つ第1および第2内部電極24,25が、圧電体層22を挟んで、Z軸方向に向けて交互に積層してある。第1内部電極24と第2内部電極25とが交互に積層してある圧電体層22の部分が、Z軸方向に伸縮変形する活性部となる。なお、素子本体21の外観形状は、角柱状に限定されず、円柱状、楕円柱状その他の形状であってもよい。
【0029】
第1内部電極24は、第1外部電極26に接続される。第2内部電極25は、第2外部電極27に接続される。第1外部電極26と第2外部電極27とは、素子本体21のX軸方向に反対側の側面にそれぞれ形成してある。
【0030】
図2に示すように、錘部材30のZ軸方向上面には、フレキシブル配線基板(FPC)45が積層型圧電素子20の第1端面21aが接着される接合部位30aを避けるように配置してあり、接合部位30aのX軸方向の両側縁に沿って第1配線45aと第2配線45bとが位置するようになっている。図1に示すように、第1配線45aは、接続部材48aに接続してあり、接続部材48aは、第1外部電極26に接続してある。第2配線45bは、接続部材48bに接続してあり、接続部材48bは、第2外部電極27に接続してある。
【0031】
接続部材48a,48bとしては、特に限定されないが、たとえば導電性ペーストあるいはハンダなどで構成され、第1配線45aと第1外部電極26とを電気的に接続すると共に、第2配線45bと第2外部電極27とを電気的に接続する。
【0032】
図2に示す第1配線45aと第2配線45bとは、フレキシブル配線基板45の内部で絶縁され、それぞれ図1に示す駆動回路50に接続してある。なお、第1配線45aと第2配線45bとは、錘部材30のZ軸方向の上面に、それぞれ直接に形成してある回路パターンであっても良い。これらの回路パターンは、錘部材30の上面を絶縁処理した後に、金属ペーストの焼付け法、メッキ法、またはスパッタ法などにより形成することができる。
【0033】
第1内部電極24および第2内部電極25を構成する導電材としては、たとえば、Ag、Pd、Au、Pt等の貴金属およびこれらの合金(Ag−Pdなど)、あるいはCu、Ni等の卑金属およびこれらの合金などが挙げられるが、特に限定されない。
【0034】
第1外部電極26および第2外部電極27を構成する導電材料も特に限定されず、内部電極を構成する導電材と同様の材料を用いることができる。なお、第1外部電極26および第2外部電極27は、たとえば導電ペーストの焼付けなどにより素子本体21の外面に形成され、その表面には、上記各種金属のメッキ層やスパッタ層が形成してあってもよい。外部電極26,27の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.5〜50μmである。
【0035】
また、圧電体層22の材質は、圧電効果あるいは逆圧電効果を示す材料であれば、特に制限されず、たとえば、PbZrTi1−x 、BaTiOなどが挙げられる。また、特性向上等のための成分が含有されていてもよく、その含有量は、所望の特性に応じて適宜決定すればよい。
【0036】
図2に示すように、圧電音響装置10では、素子本体21のZ軸方向の下端面である第1端面21aに対して対向するように、錘部材30のZ軸方向の上面が配置してある。錘部材30は、全体として直方体形状であるが、その形状は、特に限定されない。
【0037】
錘部材30は、シャフト16に振動を与えるための慣性体として好適に機能するように、タングステン等の比較的比重の大きい金属材料等を含むことが好ましいが特に限定されず、たとえば鉄、鋼材、貴金属、アルミニウムなどの導体で構成してもよい。なお、錘部材30はプラスチック、セラミックなどの絶縁材料で構成してもよい。
【0038】
特に本実施形態では、錘部材の重量は、積層型圧電素子20の重量とシャフト16の重量との合計よりも大きい。このように構成することにより、積層型圧電素子20の振動は、錘部材30ではなく、シャフト16に大きく伝達する。好ましくは、錘部材30の重量は、シャフト16の重量の5倍以上、さらに好ましくは10倍以上である。
【0039】
好ましくは、錘部材30の比重は、積層型圧電素子20の比重以上であり、シャフト16の比重よりも大きい。錘部材30の比重は、好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。たとえば錘部材30は、タングステン、モリブデン、ステンレスなどの金属で構成される。あるいは、積層型圧電素子20の不動部(非活性部)を所望の重さ(厚さ)にすることで一体的に錘部としても良い。
【0040】
また、本実施形態では、図1に示すように、錘部材30のZ軸方向寸法L1と、積層型圧電素子20のZ軸方向寸法L2と、シャフト16のZ軸方向寸法L3との合計寸法L0は、好ましくは1〜50mmである。また、錘部材30のZ軸方向寸法L1は、好ましくは0.5〜20mmである。さらに、積層型圧電素子20のZ軸方向寸法L2は、好ましくは0.4〜25mmである。さらにまた、シャフト16のZ軸方向寸法L3は、好ましくは0.1〜10mmである。また、シャフト16の基端部16bから薄板状部材14との接合部までのZ軸方向寸法L4は、好ましくは0.1〜9mmである。
【0041】
これらの寸法L0〜L4は、圧電音響装置10の全体としての1次共振周波数が、好ましくは50kHz以上、さらに好ましくは100kHz以上と成るように決定される。これらの寸法L0〜L4は、短いほど、共振周波数が高くなる傾向にある。
【0042】
図1に示す駆動回路50は、積層型圧電素子20に駆動電圧を印加するための回路である。駆動回路50が出力する電圧波形は特に限定されないが、サイン波の駆動信号よりも鋭い振動を与える三角波や、所定のデューティ比の矩形波形の駆動信号であることが好ましい。駆動回路50から積層型圧電素子20に印加される駆動信号は、ハイレゾ音源に基づく駆動波形を持ち、サンプリング周波数は40kHz以上が好ましく、または量子化ビット数は24ビット以上が好ましい。駆動回路50は、たとえば矩形波形の電圧波形を出力することにより、積層型圧電素子20の変形量およびこれに伴うシャフト16の変位量を越える変形量を、薄板状部材14に発生させることができる。
【0043】
本実施形態に係る圧電音響装置10では、積層型圧電素子20の振動は、錘部材30ではなく、主としてシャフト16に大きく伝わる。その後に、振動は、シャフト16の基端部16bから軸方向に先端部16aに伝わり、そこからシャフト16の外径サイズ(外径d)よりも大きな外形サイズ(外径D)を持ち、シャフト16よりも薄い薄板状部材14の略中心から外周方向に、部材14の板面に沿って伝達する。積層型圧電素子20の振動を、この順序で伝達させることにより、音楽などの複雑な音を薄板状部材14から空気中に伝達することができることを、本発明者は新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
【0044】
特に本実施形態の圧電音響装置10では、上記のような構成を採用することにより、共振周波数を50kHz以上、好ましくは60kHz以上にすることが容易であり、ハイレゾ(High Resolution)音源データの再生が容易である。
【0045】
また本実施形態では、薄板状部材14の空気への振動伝達面積は、シャフト16の振動伝達面積よりも大きい。このような構成とすることで、薄板状部材14から周囲空気への振動(音)の伝達量が大きくなり、音の出力が大きくなる。
【0046】
さらに本実施形態では、シャフト16と薄板状部材14とは、別部材で構成してあり、直接にまたは間接的に接合している。これらを別部材で構成することにより、たとえばシャフト16は、積層型圧電素子20からの振動を伝達させやすい金属などで構成し、薄板状部材は、空気などの周囲流体に振動を伝達させやすい紙や樹脂などで構成することができる。
【0047】
また本実施形態では、シャフト16および薄板状部材14は、錘部材30には、接続されていない。このように構成することで、積層型圧電素子20からの振動は、シャフト16のみに主として伝わり、そこから薄板状部材14に伝わり、高品質の音を発生させることができる。
【0048】
さらに本実施形態では、積層型圧電素子20の内部では、X軸およびY軸に略平行な平面をそれぞれ持つ第1内部電極および第2内部電極が、圧電層を挟んで、Z軸方向に向けて積層してある。このように構成することで、より大きな振動をシャフト16に伝達することができる。ただし、本発明の他の実施形態では、積層型圧電素子20の内部に、X軸およびY軸に略垂直な平面をそれぞれ持つ第1内部電極および第2内部電極が、圧電層を挟んで、Y軸またはX軸方向に向けて積層してあってもよい。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0050】
たとえば、上述した実施形態では、薄板状部材14の略中央部を接着剤を用いしてシャフト16の先端部16aに固定して接合してあるが、接合の構造は、これに限定されず、たとえば図3に示すように、キャップ12などを用いても良い。図3に示す例では、小径凸部17の外周に雄ねじを形成し、キャップ12の内周面に雌ねじを形成し、これらをねじ結合させてある。そして、薄板状部材14の貫通孔14aの周縁を、キャップ12と段差部18とで挟み込み、薄板状部材14をシャフト16の先端部16aに、接着剤を用いることなく直接に接合させている。
【0051】
あるいは、小径凸部17およびキャップ12にねじを形成することなく、樹脂製のキャップ12をシャフト16の先端部に熱融着することなどで、薄板状部材14をシャフトの先端部16aに接合させてもよい。
【0052】
また本発明の他の実施形態では、シャフト16以外、たとえばブロックなどで第1振動伝達部材を構成してもよい。ただし、第1振動伝達部材の厚みは、第2振動伝達部材のそれよりも厚いことが好ましい。また、上述した実施形態に示すように、第2振動伝達部材の厚みを、第1振動伝達部材の厚みよりも薄く構成してあることが好ましいが、その逆であっても良い。
【0053】
さらに本発明の他の実施形態では、シャフト16と薄板状部材14とは、一体成形により形成してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、圧電音響装置10は、たとえばスピーカとして用いられるが、薄板状部材14の部分をイヤフォン型に構成することで、イヤフォンあるいは補聴器などとしても利用が可能である。
【符号の説明】
【0055】
10… 圧電音響装置
12… キャップ
14… 薄板状部材
14a… 貫通孔
16… シャフト
16a… 先端部
16b… 基端部
17… 小径凸部
18… 段差部
20… 積層型圧電素子
21… 素子本体
21a… 第1端面
21b… 第2端面
22… 圧電層
24… 第1内部電極
25… 第2内部電極
26… 第1外部電極
27… 第2外部電極
30… 錘部材
45… 配線基板
45a… 第1配線
45b… 第2配線
48a,48b… 接続部材
50… 駆動回路



図1
図2
図3