特許第6799275号(P6799275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799275
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システム
(51)【国際特許分類】
   B61C 15/08 20060101AFI20201207BHJP
   B60F 1/04 20060101ALI20201207BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   B61C15/08
   B60F1/04
   B61D15/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-210447(P2016-210447)
(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公開番号】特開2018-69875(P2018-69875A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】新 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳典
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−230494(JP,A)
【文献】 特開2014−192921(JP,A)
【文献】 特開2014−192927(JP,A)
【文献】 特開2007−037294(JP,A)
【文献】 特開2014−192931(JP,A)
【文献】 特開平11−048959(JP,A)
【文献】 特開2015−196480(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0261066(US,A1)
【文献】 特許第2742354(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 15/08
B60F 1/04
B61D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌陸車の鉄輪の空転及び/又は滑走を検出する軌陸車の空転滑走検出システムであって、
前記鉄輪の回転数を検出する回転数検出器であって、すべての前記鉄輪に取り付けられる、回転数検出器と、
検出されたすべての前記鉄輪の回転数に基づいて相対的な回転数を比較することによって、前記鉄輪が空転又は滑走していると判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、検出されたすべての前記鉄輪の回転数から特定の基準回転数を選択し、他の回転数が前記基準回転数に対して所定の回転数幅を超えて相違すると、前記鉄輪が空転又は滑走していると判定するようになっており、
前記鉄輪を加速させるアクセルと、前記アクセルが操作されたことを検出する操作検出器と、をさらに備え、前記判定部は、前記アクセルが操作されている場合には、検出されたすべての前記鉄輪の回転数から2番目に低速の回転数を前記基準回転数として選択するようになっている、軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システム。
【請求項2】
軌陸車の鉄輪の空転及び/又は滑走を検出する軌陸車の空転滑走検出システムであって、
前記鉄輪の回転数を検出する回転数検出器であって、すべての前記鉄輪に取り付けられる、回転数検出器と、
検出されたすべての前記鉄輪の回転数に基づいて相対的な回転数を比較することによって、前記鉄輪が空転又は滑走していると判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、検出されたすべての前記鉄輪の回転数から特定の基準回転数を選択し、他の回転数が前記基準回転数に対して所定の回転数幅を超えて相違すると、前記鉄輪が空転又は滑走していると判定するようになっており、
前記鉄輪を加速させるアクセルと、前記アクセルが操作されたことを検出する操作検出器と、をさらに備え、前記判定部は、前記アクセルが操作されていない場合には、検出されたすべての前記鉄輪の回転数から2番目に高速の回転数を前記基準回転数として選択するようになっている、軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システム。
【請求項3】
前記判定部によって、前記鉄輪が空転又は滑走していると判定されると、運転手に警報するようにされている警報手段をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載された、軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路走行時には道路走行用車輪を用いて走行し、軌道走行時には軌道走行用鉄輪を用いて走行するように構成された「軌陸車」が知られている。この軌陸車の上部には、高所作業装置あるいはクレーン作業装置などが架装される。
【0003】
軌陸車を含む鉄道車両は、鉄輪もレールも鉄であるため摩擦係数が小さく、空転が発生しやすい状況にある。このため、鉄輪とレールとの間に、雨などの水分やレール自身の錆、雑草、落葉、虫等が介在することによって、摩擦係数が大幅に低下すると空転を発生させる場合がある。
【0004】
他方で、軌陸車を含む鉄道車両では、ブレーキをかけたときに鉄輪がロックして軌道(レール)上を回転せずに滑走する場合がある。滑走すると制動距離が長くなるとともに操縦安定性が損なわれてしまう。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1には、回転センサが検知した回転数が低下したことによって鉄輪が滑ったことを検知し、ブレーキ力を弱めるようになっている滑走防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2742354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の滑走防止装置では、鉄輪の回転状態を回転センサによって検出しているものの、ブレーキ作動中の速度や減速度等の値があらかじめ設定された数値を超過したときに滑走していると判定している。そのため、車体重量、重心、又は外部環境の変化によって誤って判定してしまう可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、車体重量、重心、又は外部環境の影響を受けることなく、鉄輪の空転及び/又は滑走を確実に検出することのできる、軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムは、軌陸車の鉄輪の空転及び/又は滑走を検出する軌陸車の空転滑走検出システムであって、前記鉄輪の回転数を検出する回転数検出器であって、すべての前記鉄輪に取り付けられる、回転数検出器と、検出されたすべての前記鉄輪の回転数に基づいて相対的な回転数を比較することによって、前記鉄輪が空転又は滑走していると判定する判定部と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムは、すべての鉄輪に取り付けられる回転数検出器と、検出されたすべての鉄輪の回転数に基づいて相対的な回転数を比較することによって鉄輪が空転又は滑走していると判定する判定部と、を備えている。このような構成によれば、車体重量、重心、又は外部環境の影響を受けることなく、鉄輪の空転及び/又は滑走を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】軌陸車の側面図である。
図2】軌陸車の油圧回路である。
図3】実施例1の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムのブロック図である。
図4】実施例1の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムのフローチャートである。
図5】実施例2の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムの検出速度の数値例を示した表である。(a)は加速時の数値例であり、(b)は減速時の数値例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施例では、軌陸車として、作業台を有する高所作業車に軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムを適用した場合について説明するが、これに限定されるものではなく、クレーン装置を有する移動式クレーンなど、軌陸車であれば本発明を適用することができる。
【実施例1】
【0013】
(軌陸車の構成)
まず、図1を用いて本発明の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムSを備える軌陸車1の全体構成を説明する。軌陸車1は、車両部4と、車両部4の上部に架装された作業装置5と、から構成されている。
【0014】
車両部4は、道路走行時に使用される4つの車輪2(タイヤ)と、軌道走行時に使用される4つの鉄輪3と、を備えている。そして、前側の鉄輪3は、シリンダを伸縮することで張出・格納自在に構成される前側軌道走行装置10を介して車両部4に取り付けられている。同様に、後側の鉄輪3は、シリンダを伸縮することで張出・格納自在に構成される後側軌道走行装置11を介して車両部4に取り付けられている。なお、図1は、軌道走行用鉄輪3の張出時の状態を示しており、格納時の状態は2点鎖線で示している。
【0015】
車両部4は、さらに、運転室12と、車両フレーム13と、エンジン14と、を備えている。エンジン14は、道路走行用車輪2を駆動するだけでなく、PTO(不図示)を介して作業装置5及び軌道走行装置10、11の油圧アクチュエータに圧油を供給するための油圧ポンプを駆動する。車両フレーム13の上部には、サブフレーム15が設置されている。サブフレーム15には、上述した前側軌道走行装置10及び後側軌道走行装置11に加えて、前側アウトリガ16及び後側アウトリガ17と、中央部に配置された転車台18と、が配置されている。
【0016】
本実施例では、作業装置5として高所作業装置の例が示されている。すなわち、サブフレーム15の後部には旋回ベアリングを介して旋回台20が旋回自在に搭載されており、旋回台20には伸縮ブーム21が起伏自在に支承されている。伸縮ブーム21は、起伏シリンダ22を伸縮することによって起伏駆動されるようになっている。伸縮ブーム21の先端には、レベリング手段23を介して作業台24が配置されている。図1において、作業装置5は、伸縮ブーム21が全縮小して前方に最倒伏した格納姿勢となっている。
【0017】
(油圧回路の構成)
次に、油圧回路の構成について説明する。図2に示すように、軌陸車1の軌道走行用油圧回路は、主な構成として、油圧ポンプ50とそれぞれ鉄輪3a〜3dに対応して設置される油圧モータ45a〜45dとを備え、全体として閉回路を構成している。油圧ポンプ50は、PTO(不図示)を介してエンジン14によって回転駆動される。油圧ポンプ50は、いわゆるアキシャルピストンポンプであり、回転方向が一定方向であっても、斜板の傾点角度を正負角度方向に変更することにより、吸入・吐出方向を変更できるようになっている。なお、油圧供給セクションは閉回路のものに限られず、オープン回路であってもよい。
【0018】
油圧ポンプ50の両側には、第1ポンプ油路51と第2ポンプ油路52とが接続されている。第1ポンプ油路51と第2ポンプ油路52の間には、右側アクチュエータセクション53と左側アクチュエータセクション54が並列に接続されている。右側アクチュエータセクション53は、右前油圧モータ45bと右後油圧モータ45dとを直列に含む。同様に、左側アクチュエータセクション54は、左前油圧モータ45aと左後油圧モータ45cとを直列に含む。
【0019】
(軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムの構成)
次に、軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムSの構成について説明する。図3に示すように、軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムSは、主として、それぞれ左前鉄輪3a、右前鉄輪3b、左後鉄輪3c、右後鉄輪3dの回転数を検出する回転数検出器31〜34と、鉄輪が空転又は滑走していることを判定する判定部60と、によって構成されている。さらに、判定部60には、入力系としてアクセル70が操作されたことを検出する操作検出部71と、出力系として運転手に警報するための警報手段72と、が接続されている。警報手段72は、例えば、運転室12内に配置された警告音発生装置(ブザー)や、警告灯(ランプ)や、表示装置内の警告画像などである。
【0020】
そして、本実施例の判定部60は、基準回転数を決定(選択)する基準回転数決定部61と、基準回転数との比較に基づいて空転又は滑走を判定する空転・滑走判定部62と、を備えている。
【0021】
基準回転数決定部61は、検出されたすべての鉄輪3a〜3dの回転数から特定の基準回転数を選択する。その際、後述するように操作検出器71によってアクセル70が操作されたか否かによって基準回転数として選択する回転数を変えるようになっている。
【0022】
具体的には、アクセル70が操作されているときは加速時であるから、空転のおそれがあるため、低速回転数を基準とする必要がある。一方で、回転数検出器31〜34の故障(発振、断線・短絡)時の誤検出を防止するため、最低回転数は基準としない。結果として、検出されたすべての鉄輪3a〜3dの回転数の中から2番目に低速の回転数を基準回転数として選択するようになっている。
【0023】
他方、アクセル70が操作されていないときは減速時であるから、滑走(ロック)のおそれがあるため、高速回転数を基準とする必要がある。一方で、回転数検出器31〜34の故障(発振、断線・短絡)時の誤検出を防止するため、最高回転数は基準としない。結果として、検出されたすべての鉄輪3a〜3dの回転数の中から2番目に高速の回転数を基準回転数として選択するようになっている。
【0024】
空転・滑走判定部62は、他の回転数が基準回転数に対して所定の回転数幅を超えて相違すると、鉄輪3a〜3dが空転又は滑走していると判定する。所定の回転数幅は、回転数検出器31〜34の精度のばらつきや誤差などを考慮して設定される。
【0025】
(作用)
次に、図4のフローチャートを用いて、本実施例の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムSの流れについて説明する。
【0026】
はじめに、回転数検出器31〜34によって、すべての鉄輪3a〜3dの回転数が検出されて、得られた回転数情報が判定部60の基準回転数決定部61へ送信される(ステップS1)。
【0027】
次に、操作検出部71によってアクセル70が操作されたか否かが検出されて、得られた操作情報が判定部60の基準回転数決定部61へ送信される(ステップS2)。
【0028】
そして、基準回転数決定部61は、アクセル70が操作されているか、又は、操作されていないか、を判断する(ステップS3)。アクセル70が操作されている場合(ステップS3のYES)にはステップS4〜S6の空転の検出フローへ進み、アクセル70が操作されていない場合(ステップS3のNO)にはステップS7〜S9の滑走の検出フローへ進む。
【0029】
アクセル70が操作されている場合(ステップS3のYES)には、基準回転数決定部61は、2番目に低速の回転数を基準回転数として選択する(ステップS4)。そして、基準回転数に所定の回転数幅を加えて次の判断に備える。
【0030】
次に、空転・滑走判定部62は、基準回転数の鉄輪以外の鉄輪の回転数の中で、基準回転数から所定の回転数幅を超えて高速となっているものがないか判定する(ステップS5)。基準回転数から所定の回転数幅を超えて高速となっているものがあれば(ステップS5のYES)、警報手段72によって空転を警報する(ステップS6)。基準回転数から所定の回転数幅を超えて高速となっているものがなければ(ステップS5のNO)、ステップS1へ戻る。
【0031】
アクセル70が操作されていない場合(ステップS3のNO)には、基準回転数決定部61は、2番目に高速の回転数を基準回転数として選択する(ステップS7)。そして、基準回転数から所定の回転数幅を差し引いて次の判断に備える。
【0032】
次に、空転・滑走判定部62は、基準回転数の鉄輪以外の鉄輪の回転数の中で、基準回転数から所定の回転数幅を超えて低速となっているものがないか判定する(ステップS8)。基準回転数から所定の回転数幅を超えて低速となっているものがあれば(ステップS8のYES)、警報手段72によって滑走を警報する(ステップS9)。基準回転数から所定の回転数幅を超えて低速となっているものがなければ(ステップS8のNO)、ステップS1へ戻る。
【0033】
(効果)
次に、本実施例の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムSの奏する効果を列挙して説明する。
【0034】
(1)上述してきたように、軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムSは、軌陸車1の鉄輪3a〜3dの空転及び/又は滑走を検出する軌陸車の空転滑走検出システムSであって、鉄輪3a〜3dの回転数を検出する回転数検出器31〜34であって、すべての鉄輪3a〜3dに取り付けられる、回転数検出器31〜34と、検出されたすべての鉄輪3a〜3dの回転数に基づいて相対的な回転数を比較することによって、鉄輪3a〜3dが空転又は滑走していると判定する判定部60と、を備えている。このような構成によれば、車体重量、重心、又は外部環境の影響を受けることなく、鉄輪3a〜3dの空転及び/又は滑走を確実に検出することができる。さらに、回転数検出器31〜34の出力不良(検出不良)を検知することができる。
【0035】
つまり、一般的な鉄道車両と異なり、作業装置5を備える軌陸車1では、重量物を積載することがあるため重量自体が大きく変わり、それに伴って重心も移動する。そのため、事前に空転や滑走の可能性を推測することが難しく、実測値を用いなければ正確に判定できない。そこで本発明を用いれば、実測値であるすべての鉄輪3a〜3dの回転数に基づいて相対的な回転数を比較することによって、鉄輪3a〜3dが空転又は滑走していると判定するため、空転・滑走を正確に判断することができる。
【0036】
(2)また、判定部60は、検出されたすべての鉄輪3a〜3dの回転数から特定の基準回転数を選択し、他の回転数が基準回転数に対して所定の回転数幅を超えて相違すると、鉄輪3a〜3dが空転又は滑走していると判定するようになっている。このような構成によれば、基準回転数を基準として空転・滑走を判定できるため判定が迅速かつ容易になる。したがって、走行中であってもリアルタイムの空転・滑走の検出が可能となる。
【0037】
(3)また、鉄輪3a〜3dを加速させるアクセル70と、アクセル70が操作されたことを検出する操作検出器71と、をさらに備え、判定部60は、アクセル70が操作されている場合には、検出されたすべての鉄輪3a〜3dの回転数から2番目に低速の回転数を基準回転数として選択するようになっている。このような構成によれば、加速時の空転を正確に捉えることができる。また、回転数検出器31〜34の故障(発振、断線・短絡)時の誤検出を防止できる。さらに、加速時の2輪同時の空転も検出可能となる。
【0038】
(4)また、鉄輪3a〜3dを加速させるアクセル70と、アクセル70が操作されたことを検出する操作検出器71と、をさらに備え、判定部60は、アクセル70が操作されていない場合には、検出されたすべての鉄輪3a〜3dの回転数から2番目に高速の回転数を基準回転数として選択するようになっている。このような構成によれば、減速時の滑走を正確に捉えることができる。また、回転数検出器31〜34の故障(発振、断線・短絡)時の誤検出を防止できる。さらに、ブレーキ時(減速時)の2輪同時の滑走も検出可能となる。
【0039】
(5)さらに、判定部60によって、鉄輪3a〜3dが空転又は滑走していると判定されると、運転手に警報するようにされている警報手段72をさらに備えることができる。このような構成によれば、運転手が空転又は滑走が生じていることを認識できるため、アクセルやブレーキを弱めるなどの必要な運転操作をとることができる。
【実施例2】
【0040】
本実施例では、図5(a)、(b)の表を用いて、実際に検出された回転数に基づく速度の例を用いて、空転滑走検出システムSの作用について説明する。以下の実施例では、回転数に基づいて算定された速度が基準速度から1(km/h)以上ずれている場合に異常と判定する場合について説明する。
【0041】
まず、加速時の作用について説明する。図5(a)には、加速時の検出速度の数値を示す。加速時の正常時では、4輪ともほぼ同様の速度となっている。すなわち、すべての鉄輪3a〜3dが滑走も空転もしていないため、軌陸車の速度と鉄輪の速度は一致する。具体的には、2番目に低速である左前鉄輪3aの基準速度19.5(km/h)から1(km/h)以上ずれている鉄輪がないため、空転滑走検出システムSによって警報は出されない。
【0042】
加速時の異常時である1輪空転時では、2番目に低速である左前鉄輪3aの基準速度19.5(km/h)から1(km/h)以内の範囲、すなわち18.5(km/h)から20.5(km/h)まで、に左後鉄輪3cの速度19.8(km/h)と右後鉄輪3dの速度19.4(km/h)が入っているが、右前鉄輪3bの速度21.2(km/h)が範囲外となっており、高速側にずれているために空転していると判定されて、空転滑走検出システムSによって空転状態の警報が出される。
【0043】
加速時の異常時である2輪空転時では、2番目に低速である右前鉄輪3bの基準速度20.3(km/h)から1(km/h)以内の範囲、すなわち19.3(km/h)から21.3(km/h)まで、に右後鉄輪3dの速度19.4(km/h)が入っているが、左前鉄輪3aの速度21.6(km/h)及び左後鉄輪3cの速度22.8(km/h)が範囲外となっており、高速側にずれているために空転していると判定されて、空転滑走検出システムSによって2輪空転状態の警報が出される。なお、このような2輪空転状態は、積荷が左右どちらかに偏っているときやカーブを曲がるときなどに発生しやすい。
【0044】
加速時の異常時である検出器の断線・短絡時の一例として、右後鉄輪3dの回転数検出器34が故障している場合を想定する。なお、空転と故障が同時に発生する確率は極めて低いため、考慮しなくてよい。この場合、2番目に低速である左前鉄輪3aの基準速度19.5(km/h)から1(km/h)以内の範囲、すなわち18.5(km/h)から20.5(km/h)まで、に右前鉄輪3bの速度20.3(km/h)と左後鉄輪3cの速度19.8(km/h)が入っているが、右後鉄輪3dの速度0.1(km/h)が範囲外となっており、低速側にずれているために故障していると判定されて、空転滑走検出システムSによって故障状態の警報が出される。このように2番目に遅い速度を基準速度として採用することで、異常値(この例では0.1(km/h))を基準速度とすることがなくなる。
【0045】
次に、減速時の作用について説明する。図5(b)には、減速時の検出速度の数値を示す。減速時の正常時では、4輪ともほぼ同様の速度となっている。すなわち、すべての鉄輪3a〜3dが滑走も空転もしていないため、軌陸車の速度と鉄輪の速度は一致する。具体的には、2番目に高速である左後鉄輪3cの基準速度19.8(km/h)から1(km/h)以上ずれている鉄輪がないため、空転滑走検出システムSによって警報は出されない。
【0046】
減速時の異常時である1輪滑走時では、2番目に高速である左前鉄輪3aの基準速度19.5(km/h)から1(km/h)以内の範囲、すなわち18.5(km/h)から20.5(km/h)まで、に左後鉄輪3cの速度19.8(km/h)と右後鉄輪3dの速度19.4(km/h)が入っているが、右前鉄輪3bの速度18.2(km/h)が範囲外となっており、低速側にずれているために滑走していると判定されて、空転滑走検出システムSによって滑走状態の警報が出される。
【0047】
減速時の異常時である2輪滑走時では、2番目に高速である右後鉄輪3dの基準速度19.4(km/h)から1(km/h)以内の範囲、すなわち18.4(km/h)から20.4(km/h)まで、に左後鉄輪3cの速度19.8(km/h)が入っているが、左前鉄輪3aの速度17.5(km/h)及び右前鉄輪3bの速度18.1(km/h)が範囲外となっており、低速側にずれているために滑走していると判定されて、空転滑走検出システムSによって2輪滑走状態の警報が出される。なお、このような2輪滑走状態は、積荷が左右どちらかに偏っているときやカーブを曲がるときなどに発生しやすい。
【0048】
減速時の異常時である検出器の信号発振状態の一例として、左後鉄輪3cの回転数検出器33が発振している場合を想定する。なお、滑走と発振が同時に発生する確率は極めて低いため考慮しなくてよい。この場合、2番目に高速である右前鉄輪3bの基準速度20.3(km/h)から1(km/h)以内の範囲、すなわち19.3(km/h)から21.3(km/h)まで、に左前鉄輪3aの速度19.5(km/h)と右後鉄輪3dの速度19.4(km/h)が入っているが、左後鉄輪3cの速度34.4(km/h)が範囲外となっており、高速側にずれているために発振していると判定されて、空転滑走検出システムSによって発振状態の警報が出される。このように2番目に早い速度を基準速度として採用することで、異常値(この例では34.4(km/h))を基準速度とすることがなくなる。
【0049】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0050】
例えば、上述の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムSを用いれば、空転や滑走を自動的に判定できるため、ABSやASR機能へも応用することができる。
【0051】
また、実施例1、2では4輪駆動の軌陸車1について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明の軌陸車の鉄輪の空転滑走検出システムSは2輪駆動の軌陸車にも適用することができる。さらに、6輪駆動や8輪駆動といった4輪駆動以上の軌陸車にも適用することができる。
【0052】
また、実施例2に示した具体例では、検出された回転数に基づいて速度を算定し、基準速度と各鉄輪3a〜3dの速度とを比較・判定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、基準回転数と各鉄輪3a〜3dの回転数を比較・判定することももちろんできる。
【符号の説明】
【0053】
1:軌陸車; 4:車両部; 5:作業装置;
2:車輪;
3:鉄輪;
3a:左前鉄輪; 3b:右前鉄輪; 3c:左後鉄輪; 3d:右後鉄輪;
31〜34:回転数検出器;
60:判定部; 61:基準回転数決定部; 62:空転・滑走判定部;
70:アクセル; 71:操作検出部; 72:警報手段
図1
図2
図3
図4
図5