特許第6799281号(P6799281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大真空の特許一覧

<>
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000002
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000003
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000004
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000005
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000006
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000007
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000008
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000009
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000010
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000011
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000012
  • 特許6799281-波長変換素子およびレーザ照射装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799281
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】波長変換素子およびレーザ照射装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   G02F1/37
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-71274(P2017-71274)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173523(P2018-173523A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 和也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智織
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−268245(JP,A)
【文献】 特開平10−282531(JP,A)
【文献】 特開2008−040293(JP,A)
【文献】 特開2018−169422(JP,A)
【文献】 米国特許第05321718(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第101980073(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125,1/21−7/00
H01S 3/00−3/02,3/04−3/0959,3/098−3/102,3/105−3/131,3/136−3/213,3/23−4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形光学特性を有する結晶による分極反転構造が形成されてなる疑似位相整合を有する波長変換素子であって、
前記結晶には水晶が用いられ、複数の水晶板を貼り合わせた構造とされており、
前記波長変換素子の第1の主面及び第2の主面内の第1方向に沿ってレーザ光を反射させながら移行させ、前記第1の主面と前記第2の主面との間でレーザ光を繰り返し反射させる第1反射手段と、
前記波長変換素子の前記第1方向の両端部に配置され、前記第1方向の端部に到達したレーザ光を、前記第1の主面及び前記第2の主面内の前記第1方向と直交する方向である第2方向に沿って反射させながら移行させる第2反射手段とを、備えており、
前記第1反射手段によるレーザ光の繰り返し反射と、前記第2反射手段によるレーザ光の反射とを交互に行わせることによって、レーザ光の進行経路を3次元空間内に形成可能であることを特徴とする波長変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の波長変換素子であって、
前記第1反射手段は、レーザ光の入射面側および出射面側にそれぞれ配置される複数の第1プリズムであり、
前記複数の第1プリズムは、所定の入射角度でレーザ光が入射された場合に、前記レーザ光を前記波長変換素子の前記第1の主面側のプリズムと前記第2の主面側のプリズムとの間で繰り返し反射させ、かつ、前記波長変換素子内において前記第1の主面側から前記第2の主面側に進むレーザ光の光路と、前記第2の主面側から前記第1の主面側に進むレーザ光の光路とが平行となるようにレーザ光を反射させることが可能な構成となっており、
前記第2反射手段は、レーザ光の入射面側および出射面側にそれぞれ配置される複数の第2プリズムであり、
前記複数の第2プリズムは、前記第1方向から入射するレーザ光を、前記波長変換素子内において前記第1の主面側から前記第2の主面側に進むレーザ光の光路と、前記第2の主面側から前記第1の主面側に進むレーザ光の光路とが平行となるようにレーザ光を反射させ、かつ、前記第1方向と直交する方向である第2方向に沿って反射させながら移行させることが可能な構成となっていることを特徴とする波長変換素子。
【請求項3】
請求項2に記載の波長変換素子であって、
前記複数の第1プリズムは、前記波長変換素子の入射面の所定の位置から入射面に対してブリュースター角となる入射角度でレーザ光が入射された場合に、前記レーザ光を前記波長変換素子の前記第1の主面側のプリズムと前記第2の主面側のプリズムとの間で繰り返し反射させることが可能な構成となっており、
前記複数の水晶板は、貼り合わされる全ての水晶板の重心に対する近似直線が、該波長変換素子の光入射面に対してレーザ光がブリュースター角で入射された場合の屈折光の光路と平行となるように貼り合わされていることを特徴とする波長変換素子。
【請求項4】
請求項2に記載の波長変換素子であって、
前記複数の第1プリズムは、前記波長変換素子の入射面の所定の位置から入射面に対して垂直となる入射角度でレーザ光が入射された場合に、前記レーザ光を前記波長変換素子の前記第1の主面側のプリズムと前記第2の主面側のプリズムとの間で繰り返し反射させることが可能な構成となっていることを特徴とする波長変換素子。
【請求項5】
請求項2から4の何れか一項に記載の波長変換素子であって、
貼り合わされた前記複数の水晶板と、前記第1プリズムおよび第2プリズムとを、両側から挟み込んで固定するパッケージを有しており、
前記第1プリズムおよび第2プリズムは、前記パッケージによって前記水晶板に対して位置決めされることを特徴とする波長変換素子。
【請求項6】
請求項1に記載の波長変換素子であって、
前記第1反射手段は、
前記波長変換素子におけるレーザ光の前記第1の主面側に形成され、所定の波長を有する基準レーザ光、および前記基準レーザ光の第2高調波である変換レーザ光の両方を反射する反射膜と、
前記波長変換素子におけるレーザ光の前記第2の主面側に形成され、前記基準レーザ光を反射し、前記変換レーザ光を透過させる反射/透過膜とからなり、
前記第2反射手段は、プリズムであることを特徴とする波長変換素子。
【請求項7】
請求項6に記載の波長変換素子であって、
貼り合わされた前記複数の水晶板と、前記プリズムとを、両側から挟み込んで固定するパッケージを有しており、
前記プリズムは、前記パッケージによって前記水晶板に対して位置決めされることを特徴とする波長変換素子。
【請求項8】
レーザ光源と波長変換素子とを有し、前記レーザ光源から発射される基準レーザ光を前記波長変換素子に透過させ、該透過によって波長変換された変換レーザ光を外部に照射するレーザ照射装置であって、
前記波長変換素子は、前記請求項1から7のいずれか一項に記載された波長変換素子であることを特徴とするレーザ照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光の波長を短波長に変換して出射する波長変換素子と、この波長変換素子を用いたレーザ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造加工や医療等の分野でレーザ照射装置が多用されている。これらの分野では、より微細な加工を行うためには波長の短いレーザが必要であり、紫外域における高出力なものとしてはエキシマレーザが実用化されている。しかしながら、希ガスレーザであるエキシマレーザは、安定性および安全性の面から煩雑なメンテナンスが必要となる。また、エキシマレーザは、装置が大型であるといった課題もある。このため、安定・安全性に優れ、小型化可能なレーザ照射装置が望まれる。
【0003】
安定・安全性に優れ、小型化可能なレーザ照射装置を得るには、固体のレーザ発振素子(例えばYAGレーザ)を用いることが好ましいが、200nm以下の波長域では、固体のレーザ発振素子自体が存在しない。しかしながら、波長変換素子を用いれば、レーザ発振素子から出射されるレーザ光(基本波)の波長を変換し、より短波長のレーザ光を得ることが可能となる。一般的には、YAGレーザから出射された基本波(1064nm:赤外光)を波長変換素子に透過させ、第2高調波(532nm:緑色光)に変換して出力するレーザ照射装置が知られている。
【0004】
レーザ光の波長を変換するために用いられる波長変換素子には非線形光学特性を有する結晶(非線形結晶)が用いられ、一般的な非線形結晶材料としては、LT(LiTaO3)、LN(LiNbO3)、LBO(LiB35)、KTP(KTiOPO4)、CLBO(CsLiB610)等が挙げられる。
【0005】
しかしながら、これらの非線形結晶材料を用いた波長変換素子には以下のような課題がある。
・LTは、260nm以下の波長のレーザに対し、レーザ透過時の吸収量が多く、また、レーザを照射した際の損傷が激しい。
・LN、LBOは、レーザを照射した際の損傷が激しく、また、300nm以下の波長への変換が困難である。
・KTPは、300nm以下の波長への変換が困難である。
・CLBO、LBOは、潮解性を有するため、湿度対策が必要となる。
・その他の非線形結晶材料の多くも、レーザに対する損傷に弱い、潮解性を有する、変換できる波長域に制限がある(波長の透過域が狭い)等の問題を有している。
【0006】
一方、特許文献1,2には、非線形結晶材料として水晶を用いた波長変換素子が開示されている。水晶は、上述の波長変換素子に比べ、
・レーザ耐性が高い(損傷しにくい)、
・潮解性が無い、
・短波長の透過域が広い、
・熱耐久性が高い、
・安価、メンテナンスフリー、小型化が容易、
といった多くのメリットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−233143号公報
【特許文献2】特開2008−268245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非線形結晶材料としての水晶は、上述した多くのメリットを有している一方、変換効率が低いといったデメリットも有している(例えば、LTと比較すると変換効率は1/100程度)。
【0009】
ここで、水晶を用いて波長変換素子を作製するには、分極反転構造が形成されてなる疑似位相整合を形成する。具体的には、図12に示すように、波長変換素子100は、複数の水晶板(x板)110を、結晶の分極が周期的に反転するように積層した(貼り合わせた)構造とすることが考えられる。波長変換素子100に、レーザ光源(レーザ発振素子)200からの基本波L1を照射すると、その透過光において第2高調波(波長が基本波の1/2)L2が得られる。尚、波長変換素子100における分極反転周期Λは、基本波L1の波長に応じて設定される。
【0010】
水晶板による疑似位相整合を用いた波長変換素子では、水晶板の積層数(貼り合わせ枚数)を増加し、レーザ光が透過する水晶板の枚数を増加することで、波長変換素子としての変換効率を増加させることができる。但し、水晶を用いた波長変換素子では、実用レベルの変換効率を得るには数千オーダーの積層数が必要とされる。このように、水晶板の貼り合わせ枚数を単に増加させる構成では、波長変換素子が大型化するといった問題がある。
【0011】
特許文献2では、水晶板の積層体の一方の主面に反射膜を、他方の主面に透過・反射膜(ダイクロイックミラー)を設け、上記積層体に入射されたレーザ光を、反射膜と透過・反射膜との間で繰り返し反射(多重反射)させる構成が開示されている。このような多重反射構造により、上記積層体における水晶板の積層数を抑制しながら、変換効率を向上させることができる。
【0012】
しかしながら、特許文献2の構成では、レーザ光の反射を水晶板の主面内の一方向(反射方向)に沿って行うものとなっている。このため、波長変換素子に使用する水晶板の主面は、上記反射方向にのみサイズが大きくなる。
【0013】
また、水晶を用いた波長変換素子は、水晶ウェハを所定サイズにカットしてなる水晶板を貼り合わせて作成されるものであり、その水晶板の主面サイズは、当然ながら元の水晶ウェハのサイズに制限を受ける。そのため、水晶板の一方向(反射方向)に沿って反射の繰り返し回数を大幅に増やすことは困難であり、変換効率の向上にも水晶ウェハのサイズによる制限が生じる。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、水晶を用いた波長変換素子において、水晶板の貼り合わせ枚数を抑制しつつ、レーザ光の変換効率を大幅に向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明は、非線形光学特性を有する結晶による分極反転構造が形成されてなる疑似位相整合を有する波長変換素子であって、前記結晶には水晶が用いられ、複数の水晶板を貼り合わせた構造とされており、前記波長変換素子の第1の主面及び第2の主面内の第1方向に沿ってレーザ光を反射させながら移行させ、前記第1の主面と前記第2の主面との間でレーザ光を繰り返し反射させる第1反射手段と、前記波長変換素子の前記第1方向の両端部に配置され、前記第1方向の端部に到達したレーザ光を、前記第1の主面及び前記第2の主面内の前記第1方向と直交する方向である第2方向に沿って反射させながら移行させる第2反射手段とを、備えており、前記第1反射手段によるレーザ光の繰り返し反射と、前記第2反射手段によるレーザ光の反射とを交互に行わせることによって、レーザ光の進行経路を3次元空間内に形成可能であることを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、波長変換素子にレーザ光を入射させると、該レーザ光は第1反射手段による繰り返し反射を受けて第1方向に沿って波長変換素子内を進行する。そして、第1方向の端部に到達したレーザ光は、第2反射手段によって第2方向に沿って移行するように反射される。上記反射を繰り返すことで、レーザ光の進行経路は、(第1方向×第2方向×素子厚み方向)の空間内に形成される3次元的経路となる。
【0017】
波長変換素子に用いられる水晶板は、ある程度決まった平面サイズで製造されるため、2次元的経路のみで繰り返し反射させる構成では、レーザ光の反射回数の増加(すなわち、変換効率の増加)にも限界がある。これに対し、3次元的経路による繰り返し反射構造を用いることでレーザ光の反射回数を飛躍的に増加させることができ、レーザ光の変換効率を大幅に向上させることができる。
【0018】
また、上記波長変換素子では、前記第1反射手段は、レーザ光の入射面側および出射面側にそれぞれ配置される複数の第1プリズムであり、前記複数の第1プリズムは、所定の入射角度でレーザ光が入射された場合に、前記レーザ光を前記波長変換素子の前記第1の主面側のプリズムと前記第2の主面側のプリズムとの間で繰り返し反射させ、かつ、前記波長変換素子内において前記第1の主面側から前記第2の主面側に進むレーザ光の光路と、前記第2の主面側から前記第1の主面側に進むレーザ光の光路とが平行となるようにレーザ光を反射させることが可能な構成となっており、前記第2反射手段は、レーザ光の入射面側および出射面側にそれぞれ配置される複数の第2プリズムであり、前記複数の第2プリズムは、前記第1方向から入射するレーザ光を、前記波長変換素子内において前記第1の主面側から前記第2の主面側に進むレーザ光の光路と、前記第2の主面側から前記第1の主面側に進むレーザ光の光路とが平行となるようにレーザ光を反射させ、かつ、前記第1方向と直交する方向である第2方向に沿って反射させながら移行させることが可能な構成とすることができる。
【0019】
上記の構成によれば、第1反射手段にプリズムを用いることで、往路のレーザ光と復路のレーザ光とを平行にすることが可能であり、波長変換素子の面積増加を抑制しつつ、反射の繰り返し回数を増やす(レーザ光の変換効率を向上させる)ことが可能となる。
【0020】
また、上記波長変換素子では、前記複数の第1プリズムは、前記波長変換素子の入射面の所定の位置から入射面に対してブリュースター角となる入射角度でレーザ光が入射された場合に、前記レーザ光を前記波長変換素子の前記第1の主面側のプリズムと前記第2の主面側のプリズムとの間で繰り返し反射させることが可能な構成となっており、前記複数の水晶板は、貼り合わされる全ての水晶板の重心に対する近似直線が、該波長変換素子の光入射面に対してレーザ光がブリュースター角で入射された場合の屈折光の光路と平行となるように貼り合わされている構成とすることができる。
【0021】
上記の構成によれば、ブリュースター角で入射されるレーザ光に対して繰り返し反射を行うことで、波長変換素子の面積増加を抑制しつつ、反射の繰り返し回数を増やす(レーザ光の変換効率を向上させる)ことが可能となる。入射角をブリュースター角に合わせることでレーザ光の反射を抑制し、変換効率の低下も抑制できる。また、水晶板の貼り合わせ枚数が多くなり、波長変換素子の厚みが大きくなる場合であっても、各水晶板の面積を必要以上に大きくすることなく、レーザ光を波長変換素子の入射面から出射面まで透過させることができる。
【0022】
また、上記波長変換素子では、前記複数の第1プリズムは、前記波長変換素子の入射面の所定の位置から入射面に対して垂直となる入射角度でレーザ光が入射された場合に、前記レーザ光を前記波長変換素子の前記第1の主面側のプリズムと前記第2の主面側のプリズムとの間で繰り返し反射させることが可能な構成とすることができる。
【0023】
上記の構成によれば、垂直に入射されるレーザ光に対して繰り返し反射を行うことで、波長変換素子の面積増加を抑制しつつ、反射の繰り返し回数を増やす(レーザ光の変換効率を向上させる)ことが可能となる。
【0024】
また、上記波長変換素子は、貼り合わされた前記複数の水晶板と、前記第1プリズムおよび第2プリズムとを、両側から挟み込んで固定するパッケージを有しており、前記前記第1プリズムおよび第2プリズムは、前記パッケージによって前記水晶板に対して位置決めされる構成とすることができる。
【0025】
上記の構成によれば、プリズムをパッケージによって固定する構造とすることで、プリズムを水晶板に対して固定(接着)することなく位置決めできる。このため、プリズムの設計変更やプリズムの小型化が可能になった場合に、プリズムの交換を容易に行うことができる。
【0026】
また、上記波長変換素子では、前記第1反射手段は、前記波長変換素子におけるレーザ光の前記第1の主面側に形成され、所定の波長を有する基準レーザ光、および前記基準レーザ光の第2高調波である変換レーザ光の両方を反射する反射膜と、前記波長変換素子におけるレーザ光の前記第2の主面側に形成され、前記基準レーザ光を反射し、前記変換レーザ光を透過させる反射/透過膜とからなり、前記第2反射手段は、プリズムである構成とすることができる。
【0027】
上記の構成によれば、第1反射手段に使用される反射膜および反射/透過膜は形成が容易であり、また、レーザに対して特に高精度の位置合わせも要求されない。このため、波長変換素子の構成を簡略化でき、製造コストも抑制できる。
【0028】
また、上記波長変換素子は、貼り合わされた前記複数の水晶板と、前記プリズムとを、両側から挟み込んで固定するパッケージを有しており、前記プリズムは、前記パッケージによって前記水晶板に対して位置決めされる構成とすることができる。
【0029】
上記の構成によれば、プリズムをパッケージによって固定する構造とすることで、プリズムを水晶板に対して固定(接着)することなく位置決めできる。このため、プリズムの設計変更やプリズムの小型化が可能になった場合に、プリズムの交換を容易に行うことができる。
【0030】
また、本発明のレーザ照射装置は、レーザ光源と波長変換素子とを有し、前記レーザ光源から発射される基準レーザ光を前記波長変換素子に透過させ、該透過によって波長変換された変換レーザ光を外部に照射するレーザ照射装置であって、前記波長変換素子は、
上記記載された波長変換素子であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0031】
本発明の波長変換素子およびレーザ照射装置は、波長変換素子に入射させられたレーザ光の進行経路を、(第1方向×第2方向×素子厚み方向)の空間内に形成される3次元的経路とすることで、レーザ光の反射回数を飛躍的に増加させることができ、レーザ光の変換効率を大幅に向上させることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施の形態1に係る波長変換素子の平面図であり、(a)は波長変換素子の第1の主面における反射手段の配置を示す図であり、(b)は波長変換素子の第2の主面における反射手段の配置を第1の主面側から透過して示す図である。
図2図1の波長変換素子をY2方向側から見た断面図であり、(a)は図1のA−A断面図、(b)は図1のB−B断面図、(c)は図1のC−C断面図である。
図3図1の波長変換素子をX2方向側から見た断面図であり、(a)は図1のD−D断面図、(b)は図1のE−E断面図である。
図4図1に示す波長変換素子における金属拡散層の配置パターンの一例を示す平面図である。
図5】実施の形態2に係る波長変換素子の平面図であり、(a)は波長変換素子の第1の主面における反射手段の配置を示す図であり、(b)は波長変換素子の第2の主面における反射手段の配置を第1の主面側から透過して示す図である。
図6図5の波長変換素子をY2方向側から見た断面図であり、(a)は図5のA−A断面図、(b)は図5のB−B断面図、(c)は図5のC−C断面図である。
図7】実施の形態3に係る波長変換素子の平面図であり、(a)は波長変換素子の第1の主面における反射手段の配置を示す図であり、(b)は波長変換素子の第2の主面における反射手段の配置を第1の主面側から透過して示す図である。
図8図5の波長変換素子をY2方向側から見た断面図であり、(a)は図5のA−A断面図、(b)は図5のB−B断面図、(c)は図5のC−C断面図である。
図9】実施の形態4に係る波長変換素子の概略構成を示す断面図である。
図10図6の波長変換素子を用いたレーザ照射装置の概略構成を示す図である。
図11図8の波長変換素子を用いたレーザ照射装置の概略構成を示す図である。
図12】非線形結晶として水晶を用いた波長変換素子の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態1に係る波長変換素子10−1の平面図であり、(a)は波長変換素子10−1の第1の主面における反射手段の配置を示す図であり、(b)は波長変換素子10−1の第2の主面における反射手段の配置を第1の主面側から透過して示す図である。図2は、図1の波長変換素子10−1をY2方向側から見た断面図であり、(a)は図1のA−A断面図、(b)は図1のB−B断面図、(c)は図1のC−C断面図である。図3は、図1の波長変換素子10−1をX2方向側から見た断面図であり、(a)は図1のD−D断面図、(b)は図1のE−E断面図である。尚、ここでの説明において、X方向(X1およびX2方向)およびY方向(Y1およびY2方向)は、波長変換素子10−1の主面内で互いに直交する2方向である。
【0034】
波長変換素子10−1は、図1に示すように、複数の水晶板11を金属拡散層12によって貼り合わせてなる構造である。すなわち、水晶板11は、拡散接合によって貼り合わされる。また、波長変換素子10−1において、水晶板11は、図12に示すような疑似位相整合を形成するように貼り合わされている。尚、図2,3は図面の簡略化のため、水晶板11の枚数を大幅に少なくして描画しているが、実際には、数百枚程度の枚数で水晶板11が貼り合わされる。金属拡散層12による水晶板11の具体的な貼り合わせ構造については後述する。
【0035】
波長変換素子10−1は多重反射構造を有しており、そのため、第1の主面(図2,3では上面)および第2の主面(図2,3では下面)の両方に、第1反射手段である複数の第1プリズム13と、第2反射手段である複数の第2プリズム14とが配置されている。尚、本実施の形態において、プリズム(第1および第2プリズム13,14)の材質としては石英ガラス等が使用可能であり、また、プリズムの幅方向サイズは1mm以上であることが好ましい。また、波長変換素子10−1の主面のサイズは、例えば25mm×30mmである。
【0036】
複数の第1プリズム13は、同じ形状かつ同じサイズであり、両主面の中央付近領域において同一の向きかつ同一のピッチで配列されている。具体的には、各第1プリズム13は、Y方向に直交する断面が直角二等辺三角形となる三角柱プリズムであり、その長手方向はY方向である。
【0037】
各第1プリズム13は、図2に示すように、三角柱の3つの側面のうちの一つの側面13aが、最上層および最下層の水晶板11の表面と接触するように配置されている。そして、残り2つの側面13b,13cのなす角が90°に設定されている。また、第1の主面および第2の主面のそれぞれにおいて、第1プリズム13の配置ピッチをP1とした場合、第1の主面に配置される第1プリズム13と、第2の主面に配置される第1プリズム13とは、その配列方向(X方向)にP1/2ずれて配置されている。
【0038】
複数の第2プリズム14は、同じ形状かつ同じサイズであり、両主面において同一の向きかつ同一のピッチで配列されている。具体的には、各第2プリズム14は、X方向に直交する断面が直角二等辺三角形となる三角柱プリズムである。第2プリズム14は、第1の主面では、第1プリズム13の配置領域のX1方向側の端部領域のみに配列されており、第2の主面では、第1プリズム13の配置領域のX2方向側の端部領域のみに配列されている。
【0039】
各第2プリズム14は、図3に示すように、三角柱の3つの側面のうちの一つの側面14aが、最上層および最下層の水晶板11の表面と接触するように配置されている。そして、残り2つの側面14b,14cのなす角が90°に設定されている。また、第1の主面および第2の主面のそれぞれにおいて、第2プリズム14の配置ピッチをP2とした場合、第1の主面に配置される第2プリズム14と、第2の主面に配置される第2プリズム14とは、その配列方向(Y方向)にP2/2ずれて配置されている。第1プリズム13の長手方向(Y方向)の長さは、第2プリズム14の配置領域の配列方向(Y方向)の長さよりも長くされている。
【0040】
第1プリズム13および第2プリズム14は、水晶板11に対して、例えば接着剤を用いた接着により、所定の位置に固定することができる。
【0041】
波長変換素子10−1では、第1の主面の所定の入射位置から所定の入射角度(図1図3の例では0°、すなわち垂直入射)にてレーザ光(基本波L1:図2(a),図3(a)参照)が入射された場合に、所望の波長変換効果が得られるように設計されている。具体的には、第1の主面において、図1に示されるA−A断面とD−D断面との交差箇所が基本波L1の入射位置とされている。尚、この入射位置には第1プリズム13および第2プリズム14は設けられていない。代わりに、この入射位置には反射防止膜15が設けられていることが好ましい。また、図示は省略しているが、貼り合わされる水晶板11間においても、レーザ光の透過領域に反射防止膜が設けられていることが好ましい。
【0042】
上記入射位置から波長変換素子10−1に垂直入射されたレーザ光は、波長変換素子10−1の第2の主面を透過し、最初に第2の主面側に配置された第1プリズム13の一つ(図1(b),図2(a)における右端の第1プリズム13)に入射する。第1プリズム13に入射したレーザ光は、2つの側面13b,13cにおいて折り返し反射され、第2の主面から波長変換素子10−1に再び垂直入射される。この時、側面13b,13cに対するレーザ光の入射角は45°であり、レーザ光は第1プリズム13において全反射される。また、第1プリズム13による反射の前後では、第1の主面側から第2の主面側に進むレーザ光の光路(以下、往路レーザ光)と、第2の主面側から第1の主面側に進むレーザ光(以下、復路レーザ光)の光路とが平行となる。第2の主面側に配置された第1プリズム13によって折り返し反射されたレーザ光は、波長変換素子10−1の第1の主面を透過し、第1の主面側に配置された第1プリズム13の一つに入射し、同様に折り返し反射される。
【0043】
第1プリズム13によって折り返し反射されるレーザ光は、折り返しのたびに、第1プリズム13の配列方向(X方向)に沿ってP1/2ずつ光路がずれる。そのため、図2(a)に示すように、波長変換素子10−1に入射されたレーザ光は、第1の主面側に配置された第1プリズム13と第2の主面側に配置された第1プリズム13との間で反射を繰り返しながら素子内をX2方向に進行する。尚、図2においては、素子内を進行するレーザ光の光路を破線矢印にて示している。
【0044】
図2(a)に示されるレーザ光(図1中のA−A断面内を進行するレーザ光)は、X2方向側の最後の第1プリズム13(図1(a),図2(a)における左端の第1プリズム13)で反射を受けた後、波長変換素子10−1の第2の主面を透過し、第2の主面側に配置された第2プリズム14の一つ(図1(b)における下端,図3(b)における右端の第2プリズム14)に入射する。
【0045】
第2プリズム14に入射したレーザ光は、2つの側面14b,14cにおいて折り返し反射され、第2の主面から波長変換素子10−1に再び垂直入射される(図3(b)参照)。この時、側面14b,14cに対するレーザ光の入射角は45°であり、レーザ光は第2プリズム14において全反射される。また、第2プリズム14による反射の前後でも、第1の主面側から第2の主面側に進むレーザ光の光路(往路レーザ光)と、第2の主面側から第1の主面側に進むレーザ光(往路レーザ光)の光路とが平行となる。第2プリズム14によって折り返し反射されるレーザ光は、折り返しによって、第2プリズム14の配列方向(Y方向)に沿ってP2/2光路がずれる。
【0046】
図2(a)に示されるレーザ光は、第2プリズム14による反射によってP2/2光路がずれるため、今度は、図2(b)に示されるレーザ光(図1中のB−B断面内を進行するレーザ光)として素子中を進行する。すなわち、再び第1の主面側に配置された第1プリズム13と第2の主面側に配置された第1プリズム13との間で反射を繰り返しながら素子内をX1方向に進行する。素子内をX1方向に進行するレーザ光は、X1方向側の端部に到達すると、第1の主面側に配置された第2プリズム14によって再び反射を受ける(図3(a)参照)。
【0047】
波長変換素子10−1に入射されたレーザ光は、第1プリズム13および第2プリズム14によって繰り返し反射を受けながら素子内を進行し、最終的には図2(c)に示すように、波長変換素子10−1の第2の主面から素子外に出射される。この出射レーザ光には、基本波L1が波長変換されてなる第2高調波L2と、最後まで変換されずに残った基本波L1とが含まれるが、透過・反射板(例えばダイクロイックミラー)の使用によって第2高調波L2を基本波L1から分離し、第2高調波L2のみを波長変換波として利用できる。
【0048】
尚、図1〜3の例では、レーザ光を最後に折り返し反射する第1プリズム13は第1の主面側に設けられており、出射レーザ光は波長変換素子10−1の第2の主面から出射されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、レーザ光を最後に折り返し反射する第1プリズム13が第2の主面側に設けられ、出射レーザ光が第1の主面から出射される構成であってもよい。尚、この場合には、X2方向側に設けられる第2プリズム14は、第2の主面側ではなく、第1の主面側に設けられる。
【0049】
このように、第1プリズム13および第2プリズム14を用いて多重反射構造を行う波長変換素子10−1は、各水晶板11に対してレーザ光を複数回透過させることができるため、水晶板11の積層数を抑制しながら波長変換素子の変換効率を増大させることができる。
【0050】
また、波長変換素子10−1にレーザ光を入射させると、該レーザ光は第1プリズム13による繰り返し反射を受けてX方向(第1方向)に沿って素子内を進行する。そして、X方向の端部に到達したレーザ光は、第2プリズム14によってY方向(第2方向)に沿って移行されつつ、X方向に逆向きで折り返し反射される。上記反射を繰り返すことで、レーザ光の進行経路は、(X方向×Y方向×素子厚み方向)の空間内に形成される3次元的経路となる。
【0051】
波長変換素子10−1に用いられる水晶板11は、ある程度決まった平面サイズ(例えば25mm×30mm)で製造されるため、2次元的経路のみで繰り返し反射させる構成では、レーザ光の反射回数の増加(すなわち、変換効率の増加)にも限界がある。これに対し、3次元的経路による繰り返し反射構造を用いることでレーザ光の反射回数を飛躍的に増加させることができ、レーザ光の変換効率を大幅に向上させることができる。
【0052】
また、波長変換素子10−1では、レーザ光の反射手段として第1プリズム13および第2プリズム14を用いることにより、第1の主面から第2の主面に向かうレーザ光(往路レーザ光)と、第2の主面から第1の主面に向かうレーザ光(復路レーザ光)とが平行となるように反射を行うことができる。これにより、水晶板11の貼り合わせ枚数を多くしても反射回数が減ることはなく、より小さな面積内でより多数の繰り返し反射を行うことができ、波長変換素子の面積増加を抑制しつつ、反射の繰り返し回数を増やす(レーザ光の変換効率を向上させる)ことが可能となる。
【0053】
尚、波長変換素子10−1は、多重反射されながら素子内を進行するレーザ光の透過領域を確保するため、その有効面積は多重反射構造を用いない波長変換素子に比べて大面積化することが要求される。言い換えれば、反射の繰り返し回数をより増やすためには大面積に作成された水晶板11を用いることが必要となる。
【0054】
水晶は、従来の波長変換素子で用いられている他の非線形結晶(LT,LN等)に比べ、大面積に作成することが比較的容易である。非線形結晶に水晶を用いた場合、多重反射構造を用いた波長変換素子10−1も作成しやすく、このことも波長変換素子に水晶を用いることのメリットであると言える。
【0055】
続いて、金属拡散層12による水晶板11の具体的な貼り合わせ構造について図4を参照して説明する。図4は、波長変換素子10−1における金属拡散層12の配置パターンの一例を示す。但し、波長変換素子10−1において、金属拡散層12による水晶板11の貼り合わせは必須の構成ではなく、水晶板11同士を直接接合するものであってもよい。
【0056】
金属拡散層12は、図4に示すように、水晶板11の主面(貼り合わせ面)に対して全面に形成されるものではなく、一部の領域に形成される。すなわち、水晶板11の主面には金属拡散層12の存在しない領域(開口領域)が設けられる。また、金属拡散層12は主に水晶板11の主面の外周部に形成され、水晶板11の内部領域の殆どは金属拡散層12の存在しない開口領域とされることが好ましい。
【0057】
水晶板を用いた波長変換素子において、水晶板の貼り合わせを接着層や金属拡散層を用いて水晶板の主面全体で行った場合、波長変換素子を透過するレーザ光は水晶板だけでなく接着層や金属拡散層をも透過する必要がある。そして、レーザ光が接着層や金属拡散層を透過する際の吸収や、接着層または金属拡散層と水晶板との界面での反射等により、レーザ光の透過率が低下する。接着剤を用いる方法では、水晶板間のギャップ制御が難しい、レーザ光の波長によっては透過率が大きく低下する等の問題がある。このレーザ光の低下は、特にUV硬化型の接着剤を用いた場合には顕著である。
【0058】
これに対し、本実施の形態1に係る波長変換素子10−1では、水晶板11は金属拡散層12によって貼り合わされ、しかも、水晶板11の主面には金属拡散層12の存在しない領域(開口領域)が設けられる。このため、波長変換素子10−1において、金属拡散層12の存在しない開口領域をレーザ透過領域として使用することで、金属拡散層12による吸収や反射を無くし、波長変換素子10−1に対してレーザ光を効率よく透過させることができる。
【0059】
また、金属拡散層12は、主に水晶板11の主面の外周部に形成され、水晶板11の内部領域の殆どは金属拡散層12の存在しない開口領域とされる。これにより、波長変換素子10−1の内部領域をレーザ透過領域として使用しやすくなる。また、水晶板11の外周部で貼り合わせを行うことで、波長変換素子10−1の機械的強度も確保しやすくなるといった効果もある。
【0060】
波長変換素子10−1では、水晶板11の貼り合わせを金属拡散層12による拡散接合によって行うことで、接着剤を用いた貼り合わせを行う場合に比べて以下のような利点もある。すなわち、接着剤を用いた貼り合わせでは、接着剤の存在しない開口領域を形成するために水晶板の一部領域に接着剤を塗布しても、貼り合わせ時の加圧によって接着剤が塗布領域以上に拡がり、設計通りの開口領域を得ることが困難となる。拡散接合では、金属拡散層が不所望に拡がることはなく、設計通りの開口領域を得ることが容易である。
【0061】
金属拡散層12による拡散接合は、例えば、以下の工程にて実施される。
【0062】
まず、接合される2枚の水晶板11には、それぞれの接合面において下地膜および接合膜が形成される。下地膜は、水晶板11の平坦平滑面(鏡面加工)に下地金属(TiやNi等)を物理的気相成長させて形成される。接合膜は、下地膜上にAuやPt等の拡散接合可能な金属を物理的気相成長させて積層形成される。
【0063】
こうして、下地膜および接合膜が形成された2枚の水晶板11を重ね合せると、接合膜同士が拡散接合され、2枚の水晶板11同士が貼り合わされる。この場合、下地膜および接合膜が金属拡散層12となる。接合膜の厚みは、40nm〜1μmの範囲とすることが好ましく、水晶板11同士を密着させるためには、40nm〜500nmの範囲とすることがさらに好ましい。そして、金属拡散層12の厚みは、80nm〜2μmの範囲とすることが好ましく、80nm〜1000nmの範囲とすることがさらに好ましい。金属拡散層12の厚みを80nm以上とすることで、金属の柔軟性により水晶板11に反りがあっても、この反りを吸収することができ、積層数を多くすることができる。また、接合面に異物等があっても柔軟に接合することが可能となる。また、金属拡散層12の厚みを1000nm以下とすることで、金属膜の膜応力による水晶板11の反りを少なくすることができ、貼り合わせの積層数を多くすることが可能となる。
【0064】
また、図4に示す金属拡散層12は水晶板11の外周全体を囲むようには形成されておらず、貼り合わされた水晶板11の内部領域(ギャップ空間)を外部と通気させるための通気部12aが設けられている。これは、通気部12aを設けることで水晶板11間に密封空間を形成しない構造とし、該密封空間に水分が封入されることを防止するためである。水晶板11間に水分が封入された密封空間が存在すると、温度によっては結露が発生する恐れがあり、この結露にレーザ光が当たると不所望な屈折が生じて、透過レーザにおけるエネルギ損失が生じる。また、貼り合せ面の外周部に開口部(通気部12a)を設けることで、貼り合せ面の応力を緩和することが可能となり、積層数を多くした場合の素子の変形を防止することが可能となる。
【0065】
また、水晶板11のギャップ空間での結露を防止する方法としては、貼り合わされた水晶板11のギャップ空間を、真空もしくは窒素等の不活性ガスが充填された密閉空間とする方法もある。このようにすれば、該密封空間に水分が封入されることは無く、結露を防止することができる。
【0066】
〔実施の形態2〕
実施の形態1で示した波長変換素子10−1のように、複数の水晶板11を金属拡散層12によって貼り合わせ、かつ、金属拡散層12の存在しない開口領域を設ける構造では、この開口領域において、貼り合わされる水晶板11の間にギャップ空間が形成される。このギャップ空間内の媒質(ギャップ内媒質)と水晶板11との屈折率が異なる場合、ギャップ内媒質と水晶板11との界面で反射が生じ、この反射によって透過レーザにおけるエネルギ損失が生じる可能性がある。
【0067】
上記反射を防止する有効な手段としては、波長変換素子に入射されるレーザ光の入射角(水晶板11の主面に対する入射角)をブリュースター角とすることが考えられる。このように、波長変換素子にブリュースター角でレーザ光を入射させることで、反射によるエネルギ損失を大幅に抑制できる。
【0068】
図5図6は、レーザ光の入射角をブリュースター角とする場合に対応する波長変換素子10−2の平面図および断面図である。図5は、本実施の形態2に係る波長変換素子10−2の平面図であり、(a)は波長変換素子10−2の第1の主面における反射手段の配置を示す図であり、(b)は波長変換素子10−2の第2の主面における反射手段の配置を第1の主面側から透過して示す図である。図6は、図5の波長変換素子10−2をY2方向側から見た断面図であり、(a)は図5のA−A断面図、(b)は図5のB−B断面図、(c)は図5のC−C断面図である。尚、ここでの説明において、X方向(X1およびX2方向)およびY方向(Y1およびY2方向)は、波長変換素子10−2の主面内で互いに直交する2方向である。
【0069】
波長変換素子10−2は多重反射構造を有しており、そのため、第1の主面(図6では上面)および第2の主面(図6では下面)の両方に、第1反射手段である複数の第1プリズム16と、第2反射手段である複数の第2プリズム17とが配置されている。
【0070】
複数の第1プリズム16は、同じ形状かつ同じサイズであり、両主面の中央付近領域において同一の向きかつ同一のピッチで配列されている。具体的には、各第1プリズム16は、Y方向に直交する断面が四角形となる四角柱プリズムであり、その長手方向はY方向である。
【0071】
各第1プリズム16は、図6に示すように、四角柱の4つの側面のうちの一つの側面16aが、最上層および最下層の水晶板11の表面と接触するように配置されている。そして、レーザ光の反射面として利用される2つの側面16b,16cのなす角は90°に設定されている。
【0072】
複数の第2プリズム17は、同じ形状かつ同じサイズであり、両主面において同一の向きかつ同一のピッチで配列されている。第2プリズム17は、第1の主面では、第1プリズム16の配置領域のX1方向側の端部領域のみに配列されており、第2の主面では、第1プリズム16の配置領域のX2方向側の端部領域のみに配列されている。
【0073】
各第2プリズム17は、図6に示すように、一つの側面17aが、最上層および最下層の水晶板11の表面と接触するように配置されている。そして、レーザ光の反射面として利用される2つの側面17b,17cのなす角が90°に設定されている。
【0074】
第1プリズム16および第2プリズム17は、水晶板11に対して、例えば接着剤を用いた接着により、所定の位置に固定することができる。
【0075】
図5,6に示す波長変換素子10−2では、第1の主面の所定の入射位置から入射角α(図6(a)参照)がブリュースター角であるレーザ光(基本波L1)が入射された場合に、所望の波長変換効果が得られるように設計されている。具体的には、第1の主面において、図5に示されるA−A断面の右端側に基本波L1の入射位置が設けられている。尚、この入射位置には第1プリズム16および第2プリズム17は設けられていない。また、入射角αをブリュースター角とすることで、上記入射位置において反射防止膜も必要とせず、水晶板11間における反射防止膜も必要としない。
【0076】
上記入射位置から波長変換素子10−2にブリュースター角で入射されたレーザ光は、波長変換素子10−2の第2の主面を透過し、第2の主面側に配置された第1プリズム16の一つ(図6では、右端の第1プリズム16)に入射する。第1プリズム16に入射したレーザ光は、2つの側面16b,16cにおいて折り返し反射され、第2の主面から波長変換素子10−2に再びブリュースター角で入射される。この時、側面16b,16cに対するレーザ光の入射角は45°であり、レーザ光は第1プリズム16において全反射される。また、第1プリズム16による反射の前後では、第1の主面側から第2の主面側に進むレーザ光の光路(往路レーザ光)と、第2の主面側から第1の主面側に進むレーザ光(復路レーザ光)の光路とが平行となる。第2の主面側に配置された第1プリズム16によって折り返し反射されたレーザ光は、波長変換素子10−2の第1の主面を透過し、第1の主面側に配置された第1プリズム16の一つに入射し、同様に折り返し反射される。
【0077】
第1プリズム16によって折り返し反射されるレーザ光は、折り返しのたびに、第1プリズム16の配列方向(X方向)に沿って所定ピッチずつ光路がずれる。具体的には、第1の主面および第2の主面のそれぞれにおける第1プリズム16の配置ピッチをP1とした場合、折り返し反射されるレーザ光はP1/2ずつ光路がずれる。そのため、図6(a)に示すように、波長変換素子10−2に入射されたレーザ光は、第1の主面側に配置された第1プリズム16と第2の主面側に配置された第1プリズム16との間で反射を繰り返しながら素子内をX2方向に進行する。尚、図6においては、素子内を進行するレーザ光の光路を破線矢印にて示している。
【0078】
図6(a)に示されるレーザ光(図5中のA−A断面内を進行するレーザ光)は、X2方向側の最後の第1プリズム16(図5(a),図6(a)における左端の第1プリズム16)で反射を受けた後、波長変換素子10−2の第2の主面を透過し、第2の主面側に配置された第2プリズム17の一つ(図1(b)における下端,図3(b)における右端の第2プリズム17)に入射する。
【0079】
第2プリズム17に入射したレーザ光は、2つの側面17b,17cにおいて折り返し反射され、第2の主面から波長変換素子10−2に再びブリュースター角で入射される(図6(b)参照)。この時、側面17b,17cに対するレーザ光の入射角は45°であり、レーザ光は第2プリズム17において全反射される。また、第2プリズム17による反射の前後でも、第1の主面側から第2の主面側に進むレーザ光の光路(往路レーザ光)と、第2の主面側から第1の主面側に進むレーザ光(往路レーザ光)の光路とが平行となる。第2プリズム17によって折り返し反射されるレーザ光は、折り返しによって、第2プリズム17の配列方向(Y方向)に沿って所定ピッチずつ光路がずれる。具体的には、第1の主面および第2の主面のそれぞれにおける第2プリズム17の配置ピッチをP2とした場合、折り返し反射されるレーザ光はP2/2ずつ光路がずれる。
【0080】
図6(a)に示されるレーザ光は、第2プリズム17による反射によってP2/2光路がずれるため、今度は、図6(b)に示されるレーザ光(図5中のB−B断面内を進行するレーザ光)として素子中を進行する。すなわち、再び第1の主面側に配置された第1プリズム16と第2の主面側に配置された第1プリズム16との間で反射を繰り返しながら素子内をX1方向に進行する。素子内をX1方向に進行するレーザ光は、X1方向側の端部に到達すると、第1の主面側に配置された第2プリズム17によって再び反射を受ける。
【0081】
波長変換素子10−2に入射されたレーザ光は、第1プリズム16および第2プリズム17によって繰り返し反射を受けながら素子内を進行し、最終的には図6(c)に示すように、波長変換素子10−2の第2の主面から素子外に出射される。この出射レーザ光には、基本波L1が波長変換されてなる第2高調波L2と、最後まで変換されずに残った基本波L1とが含まれるが、透過・反射板(例えばダイクロイックミラー)の使用によって第2高調波L2を基本波L1から分離し、第2高調波L2のみを波長変換波として利用できる。
【0082】
このように、第1プリズム16および第2プリズム17を用いて多重反射構造を行う波長変換素子10−2は、各水晶板11に対してレーザ光を複数回透過させることができるため、水晶板11の積層数を抑制しながら波長変換素子の変換効率を増大させることができる。また、波長変換素子10−2でも、四角柱形状である第1プリズム16を用いることにより、第1の主面から第2の主面に向かうレーザ光(以下、往路レーザ光)と、第2の主面から第1の主面に向かうレーザ光(以下、復路レーザ光)とが平行となるように反射を行うことができる。これにより、より小さな面積内でより多数の繰り返し反射を行うことができ、波長変換素子の面積増加を抑制しつつ、反射の繰り返し回数を増やす(レーザ光の変換効率を向上させる)ことが可能となる。
【0083】
尚、波長変換素子10−2のように、レーザ光を水晶板11の主面に対して垂直でなく斜めに入射する場合、図6に示すように、レーザの入射角に合わせて水晶板11を斜めにずらした貼り合わせとしてもよい。ここでの「斜めにずらした貼り合わせ」とは、全ての水晶板11が同一形状かつ同一寸法であり、貼り合わされる全ての水晶板11の重心に対する近似直線が、水晶板11の主面に対して斜めに傾くような貼り合わせ構造を意味する。また、上記近似直線は、入射されるレーザ光の入射角αをブリュースター角とした場合に、水晶板11中を進行する屈折光の光路と平行となるように設定されることが好ましい。
【0084】
このように、レーザの入射角に合わせて水晶板11を斜めにずらした貼り合わせとすることにより、各水晶板11の面積を低減することができ、波長変換素子10−2の小型化および軽量化に寄与する。また、本形態では、同じ形状で同じ面積の水晶板11を用いることで、加工が容易になり材料効率も高まるため、コストダウンにも有効である。
【0085】
〔実施の形態3〕
実施の形態1,2で示した波長変換素子10−1,10−2は、第1反射手段として第1プリズム13,16を用いた構成を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1反射手段として反射膜(透過・反射膜を含む)を用いることも可能である。
【0086】
図7図8は、第1反射手段として反射膜を用いた波長変換素子10−3の平面図および断面図である。図7は、本実施の形態3に係る波長変換素子10−3の平面図であり、(a)は波長変換素子10−3の第1の主面における反射手段の配置を示す図であり、(b)は波長変換素子10−3の第2の主面における反射手段の配置を第1の主面側から透過して示す図である。図8は、図7の波長変換素子10−3をY2方向側から見た断面図であり、(a)は図7のA−A断面図、(b)は図7のB−B断面図、(c)は図7のC−C断面図である。尚、ここでの説明において、X方向(X1およびX2方向)およびY方向(Y1およびY2方向)は、波長変換素子10−3の主面内で互いに直交する2方向である。
【0087】
波長変換素子10−3は多重反射構造を有しており、そのため、第1の主面(図8では上面)には、第1反射手段の一部である反射膜18と、第2反射手段である複数の第2プリズム17とが配置されている。第2の主面(図8では下面)には、第1反射手段の一部である透過・反射膜19と、第2反射手段である複数の第2プリズム17とが配置されている。
【0088】
反射膜18は、第1の主面の中央領域に広範囲に成膜され、基本波(基準レーザ光)L1と、第2高調波(基本波が波長変換素子を通過する過程で波長変換されて発生する変換波:変換レーザ光)L2との両方を反射する特性を有する。また、透過・反射膜19は、第2の主面の中央領域に広範囲に成膜され、基本波L1を反射し、第2高調波L2を透過する特性を有する。
【0089】
反射膜18は、基本波L1と第2高調波L2との両方に対して高い反射率(例えば、反射率99%以上)を有することが好ましい。反射膜18の材質は特に限定されるものではなく、金属反射膜等も使用可能であるが、上記のような高い反射率を実現するには誘電体多層膜を用いることが好ましい。
【0090】
また、透過・反射膜19は、基本波L1に対して高い反射率(例えば、反射率99%以上)を有し、第2高調波L2に対して高い透過率(例えば、透過率99%以上)を有することが好ましい。上記のような光学特性を実現するには、透過・反射膜19には誘電体多層膜を用いることが好ましい。
【0091】
複数の第2プリズム17は、実施の形態2における波長変換素子10−2と同様の構成とすることができる。第2プリズム17は、第1の主面では、反射膜18の形成領域のX1方向側の端部領域のみに配列されており、第2の主面では、透過・反射膜19の形成領域のX2方向側の端部領域のみに配列されている。
【0092】
図7,8に示す波長変換素子10−3では、第1の主面の所定の入射位置から入射角α(図8(a)参照)がブリュースター角であるレーザ光(基本波L1)が入射された場合に、所望の波長変換効果が得られるように設計されている。具体的には、第1の主面において、図7に示されるA−A断面の右端側に基本波L1の入射位置が設けられている。尚、この入射位置には反射膜18および第2プリズム17は設けられていない。また、入射角αをブリュースター角とすることで、上記入射位置において反射防止膜も必要としない。
【0093】
上記入射位置から波長変換素子10−3にブリュースター角で入射されたレーザ光は、反射膜18と透過・反射膜19との間で反射を繰り返しながら素子内をX2方向に進行する。尚、図8においては、素子内を進行するレーザ光の光路を破線矢印にて示している。
【0094】
図8(a)に示されるレーザ光(図7中のA−A断面内を進行するレーザ光)は、反射膜18による最後の反射を受けた後、波長変換素子10−3の第2の主面を透過し、第2の主面側に配置された第2プリズム17の一つ(図7(b)における下端,図8(a)における下端の第2プリズム17)により反射されながらY方向に移行する。こうして反射されたレーザ光は、今度は、図8(b)に示されるレーザ光(図7中のB−B断面内を進行するレーザ光)として素子中を進行する。すなわち、再び反射膜18と透過・反射膜19との間で反射を繰り返しながら素子内をX1方向に進行する。素子内をX1方向に進行するレーザ光は、X1方向側の端部に到達すると、第1の主面側に配置された第2プリズム17によって折り返し反射を受ける。
【0095】
基本波L1が水晶板11を透過する際には、基本波L1が波長変換されて第2高調波L2が発生する。波長変換素子10−3では、発生した第2高調波L2は、透過・反射膜19を透過して互いに平行な複数のレーザ光(図8(a)〜(c)のそれぞれでは、3本のレーザ光)として出射される。こうして出射される第2高調波L2は、例えば集光レンズ等によって集光することで、増幅された波長変換波として利用できる。
【0096】
尚、本実施の形態3に係る波長変換素子10−3において、第2プリズム17によって折り返し反射されるレーザ光は、レーザ光をY方向に沿って移行させる光路長が、基本波L1の波長の整数倍である必要がある。これは、透過・反射膜19から複数のレーザ光として出射される第2高調波L2の位相を揃えるための条件である。透過・反射膜19から出射される第2高調波L2の位相がそろっていなければ、第2高調波L2を集光レンズによって集光しても、増幅された波長変換波として利用することはできない。
【0097】
また、波長変換素子10−3への入射後、最後まで変換されることのない基本波L1は、最終的には、最後の第2プリズム17(図7(b)における上端,図8(c)における左端の第2プリズム17)で反射された後、波長変換素子10−3の第1の主面から出射される。このため、反射膜18は、基本波L1の出射部には形成されず、この部分は開口されている。
【0098】
このように、反射膜18、透過・反射膜19および第2プリズム17を用いて多重反射構造を行う波長変換素子10−3は、各水晶板11に対してレーザ光を複数回透過させることができるため、水晶板11の積層数を抑制しながら波長変換素子の変換効率を増大させることができる。また、第1反射手段に使用される反射膜18および透過・反射膜19は、実施の形態1,2における第1プリズム13,16に比べ、形成が容易であり、また、レーザに対して特に高精度の位置合わせも要求されない。このため、波長変換素子10−3の構成を簡略化でき、製造コストも抑制できる。
【0099】
〔実施の形態4〕
実施の形態1〜3に係る波長変換素子10−1ないし10−3において、第1プリズム13,16および第2プリズム14,17は、水晶板11に対して、例えば接着剤を用いた接着により、所定の位置に固定することができる。しかしながら、このような接着によるプリズム固定方法では、プリズムの設計変更やプリズムの小型化が可能となった場合、プリズムのみの交換が不可能であり、素子全体の交換が必要となる。
【0100】
本実施の形態4では、プリズムのみの交換を可能とする波長変換素子の構成について説明する。図9は、本実施の形態4に係る波長変換素子10−4の断面図である。
【0101】
波長変換素子10−4は、水晶板11に対して第1プリズム13および第2プリズム14を接着固定せず、図9に示すように、水晶板11を金属拡散層12で貼り合わせてなる積層体(以下、水晶板積層体)と第1プリズム13および第2プリズム14とをパッケージ20にて挟持して、これらの相対位置関係を保持する構成である。
【0102】
パッケージ20は、第1の主面側に配置される第1パッケージ部材201と、第2の主面側に配置される第2パッケージ部材202とから構成されている。第1パッケージ部材201および第2パッケージ部材202は、その両端にフランジ部20aを有しており、このフランジ部20aをボルト21で締結することにより、水晶板積層体、第1プリズム13および第2プリズム14を間に挟持して保持できる構成となっている。また、パッケージ20には、波長変換素子10−4におけるレーザ光の入射位置と出射位置とに対応して、レーザ入射窓(図示せず)とレーザ出射窓(図示せず)とが形成されている。
【0103】
尚、図9に示すパッケージ20は、実施の形態1における第1プリズム13および第2プリズム14を保持する形状のものを例示しているが、パッケージ20の形状を変えれば、異なる形状のプリズムを水晶板積層体に対して位置合わせした状態で保持することも可能である。例えば、実施の形態2における第1プリズム16および第2プリズム17や、実施の形態3における第2プリズム17を保持する形状とすることもできる。
【0104】
このように、パッケージ20を用いれば、プリズムを水晶板積層体に対して固定(接着)することなく位置決めできる。このため、プリズムの設計変更やプリズムの小型化が可能になった場合に、プリズムの交換を容易に行うことができる。
【0105】
〔実施の形態5〕
本実施の形態5では、本発明が適用されたレーザ照射装置について図10図11を参照して説明する。
【0106】
図10は、実施の形態2に示す波長変換素子10−2を用いたレーザ照射装置50−1の概略構成を示す図である。レーザ照射装置50−1は、レーザ光源(レーザ発振素子)51からの基本波(基準レーザ光)L1を波長変換素子10−2に照射し、第2高調波(波長が基本波の1/2:変換レーザ光)L2を得る構成である。
【0107】
図10に示すレーザ照射装置50−1において、波長変換素子10−2に入射されるレーザ光(基本波L1)は、波長変換素子10−2の入射面(第1の主面)に対し、所定の入射位置から所定の入射角度(ブリュースター角)で入射される必要がある。このため、レーザ照射装置50−1では、レーザ光源51は、波長変換素子10−2に対してレーザ光を正確に入射できるように適切に位置決めされる。尚、レーザ照射装置50−1は、レーザ光源51を高精度に位置決めするための微調整手段を有していてもよい。
【0108】
レーザ照射装置50−1においては、波長変換素子10−2から出射されるレーザ光は、基本波L1と第2高調波L2とを含んでいる。このため、レーザ照射装置50−1は、波長変換素子10−2の後段に透過・反射板(例えばダイクロイックミラー)52を設け、基本波L1と第2高調波L2とを分離して、分離した第2高調波L2のみを出力レーザ光として利用する構成とされている。尚、図10における透過・反射板52は、第2高調波L2を透過し、基本波L1を反射するものを例示しているが、これとは逆に、第2高調波L2を反射し、基本波L1を透過するものであってもよい。
【0109】
また、レーザ照射装置50−1においては、波長変換素子10−2で繰り返し反射を受けた後に出射される第2高調波L2は、完全には重ならず、幾分拡がって出射される場合がある。このため、レーザ照射装置50−1では、波長変換素子10−2の後段に集光レンズ53が設けられていてもよい。これにより、波長変換素子10−2から出射される第2高調波L2は、集光レンズ53によって集光され、増幅された波長変換波として利用できる。尚、図10では、集光レンズ53を透過・反射板52の後段に配置した場合を例示しているが、集光レンズ53を透過・反射板52の前段に配置してもよい。
【0110】
尚、図10に示すレーザ照射装置50−1において、波長変換素子10−2を、実施の形態1に示す波長変換素子10−1に代えてもよい。
【0111】
図11は、実施の形態3に示す波長変換素子10−3を用いたレーザ照射装置50−2の概略構成を示す図である。レーザ照射装置50−2は、レーザ光源(レーザ発振素子)51からの基本波L1を波長変換素子10−2に照射し、第2高調波(波長が基本波の1/2)L2を得る構成である。レーザ照射装置50−2において、波長変換素子103に入射されるレーザ光(基本波L1)の入射角はブリュースター角とすることが好ましい。この場合、反射によるエネルギ損失を大幅に抑制できる。
【0112】
レーザ照射装置50−2においては、波長変換素子10−3から出射される第2高調波L2は、複数のレーザ光として出射される。この時、波長変換素子10−3内の奇数列の光路から出射される第2高調波L2(例えば、図8(a),(c)における出射光)は互いに平行であり、偶数列の光路から出射される第2高調波L2(例えば、図8(b)における出射光)も互いに平行である。しかしながら、奇数列の光路から出射される第2高調波L2と、偶数列の光路から出射される第2高調波L2とは、X方向において逆向きの出射光となっている。このため、レーザ照射装置50−2は、反射板54を備えており、反射板54によって偶数列の光路から出射される第2高調波L2を反射することで、全ての第2高調波L2が平行となるようにしている。尚、反射板54は、奇数列の光路から出射される第2高調波L2を反射することで、全ての第2高調波L2を平行とするものであってもよい。
【0113】
また、レーザ照射装置50−2では、波長変換素子10−3および反射板54の後段に集光レンズ55が配置される。集光レンズ55は、互いに平行とされた全ての第2高調波L2を集光する。すなわち、波長変換素子10−3から出射される第2高調波L2は、集光レンズ55によって集光され、増幅された波長変換波として利用できる。
【0114】
また、図10に示すレーザ照射装置50−2において、集光レンズ55は、その光軸方向に沿って平行移動可能であり、焦点位置を調整可能な構成であってもよい。
【0115】
レーザ照射装置50−1および50−2において、レーザ光源51は固体レーザ発振素子であることが好ましく、例えばYAGレーザを用いることが好ましい。YAGレーザから照射される基本波L1の波長は1064nmであり、第2高調波L2の波長は532nmである。尚、図10,11では、使用する波長変換素子の数を一つとした場合を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、レーザ光の光路に沿って複数の波長変換素子を配置する構成であってもよい。
【0116】
例えば、図10に示すレーザ照射装置50−1において、波長変換素子10−2をレーザ光の光路に沿って複数配置すれば、波長が1064nmの基本波L1を、532nm,266nm,…と順次変換することができ、最終的には紫外光域の短波長レーザ光を得ることができる。このことは、図11に示すレーザ照射装置50−2においても同様である。
【0117】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0118】
10−1〜10−3 波長変換素子
11 水晶板
12 金属拡散層
12A,12B 金属パターン
13,16 第1プリズム
14,17 第2プリズム
15 反射防止膜
18 反射膜
19 透過・反射膜
20 パッケージ
201 第1パッケージ部材
202 第2パッケージ部材
50−1,50−2 レーザ照射装置
51 レーザ光源
52 透過・反射板
53 集光レンズ
54 反射板
55 集光レンズ
L1 基本波(基準レーザ光)
L2 第2高調波(変換レーザ光)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12