(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合性化合物(D)が、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを、前記インクジェットインキ全量中20〜60質量%含む、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
光重合開始剤(E)としてα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤(E−1)を少なくとも1種含む、請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
請求項1〜3いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキと、活性エネルギー線硬化型インクジェットイエローインキと、活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキとを含む活性エネルギー線硬化型インキセット。
請求項1〜3いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ、または、請求項4記載の活性エネルギー線硬化型インキセットを記録媒体に印刷してなる印刷物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記背景技術でも説明したように、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキに含まれるC.I.ピグメントブルー15:6は、ブルー領域の色再現性に優れることが知られている。またC.I.ピグメントブルー15:6を、適宜、他の顔料と併用することで、目的とする色に調整することも知られている。
【0022】
活性エネルギー線硬化型インキの場合、これらの顔料は、適切な分散剤と併用され、重合性化合物中に分散された形態で使用される。一般には、前記分散剤として、顔料分散樹脂が使用される。顔料分散樹脂は、分子構造中に存在する官能基が顔料表面と相互作用を起こすことで、前記顔料分散樹脂が前記顔料表面に吸着し、一方でその他の構造部分が、顔料粒子間での立体障害を形成して、分散状態を安定化している。C.I.ピグメントブルー15:6の場合は、分子構造中に多くの窒素原子を有しているため、前記官能基として、カルボキシル基などの酸性基を有する顔料分散樹脂が使用されている。
【0023】
一方、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、これら顔料分散樹脂が持つ官能基、特に酸性基は、インクジェットヘッド内部に用いられるエポキシ系接着剤への浸食を起こす原因となることが判明した。また後述する重合性化合物によっては、前記エポキシ系接着剤内部にインキが浸透してしまうことがあり、その結果として、インクジェットヘッドの耐用寿命の低下を招くという技術的課題がある。
【0024】
上記問題を避けるべく、酸性基を持たない分散剤を使用することも可能ではあるが、上記の通り、着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:6を使用する場合は特に、顔料の分散安定性が不十分となり、また長期の分散安定性やインクジェット吐出適性にも劣ってしまう。以上のように初期の分散安定性、長期の分散安定性、インクジェット吐出適性、更には、インクジェットヘッド内部に用いられるエポキシ系接着剤に対する浸食防止のすべてを、実用レベルで満たすことは当業者にとっての大きな課題といえる。
【0025】
そこで本発明者らが鋭意検討した結果、C.I.ピグメントブルー15:6とキナクリドン系顔料を、特定範囲の酸価とアミン価を有する顔料分散樹脂(C)及びキナクリドン系顔料誘導体存在下で分散することで、初期の分散安定性、長期間の分散安定性、インクジェット吐出適性、エポキシ系接着剤への低浸食性のすべてを兼ね備えた活性エネルギー線硬化型インクジェットインキとなることを見出した。
【0026】
まず、本発明のインキは、顔料(A)として、C.I.ピグメントブルー15:6と、キナクリドン系顔料とを含む。上述の通り、目的とする色を得るために、複数の顔料を併用することは一般的であるが、C.I.ピグメントブルー15:6、及び、キナクリドン系顔料は、どちらも分子構造内に複数の芳香環や窒素原子を有しているため、両者の親和性は高いと考えられる。その結果、長期保管時であっても、両者が分離などすることがなく、高い分散安定性を維持することができる。なお本発明者らが鋭意検討した結果、色再現性と、分散安定性とを両立するためには、C.I.ピグメントブルー15:6の配合量と、キナクリドン系顔料の配合量との総量を、インキ中3質量%以上とし、更に、C.I.ピグメントブルー15:6とキナクリドン系顔料の質量比率を3:1〜1:3とすることが好適であることを見出した。
【0027】
また本発明のインキは、上記顔料(A)に加え、特定範囲の酸価とアミン価とを有する顔料分散樹脂(C)、及び、色素誘導体(B)を含む。上記材料を併用することで、分散安定性、インクジェット吐出適性、エポキシ系接着剤への低浸食性の全てを兼ね備えたインキとなる。ここで、顔料分散樹脂中に存在する塩基性基は、顔料と吸着していない遊離顔料分散樹脂の酸性基に吸着し、それによって、分散安定性を損なうことなくエポキシ系接着剤への浸食を緩和させると考えられる。ただし、酸性基が塩基性基に比べて過剰に存在してしまうと、顔料分散樹脂の顔料への吸着まで阻害してしまう可能性がある。従って本発明における顔料分散樹脂(C)は、顔料分散樹脂(C)の酸価をC1(mgKOH/g)とし、前記顔料分散樹脂(C)のアミン価をC2(mgKOH/g)としたとき、C1≧C2>0となるものである。
【0028】
一方色素誘導体(B)は、分散安定性の向上のため使用され、一般に、併用される顔料と同種の構造を有するものが好ましく使用されている。本発明のインキの場合、銅フタロシアニン系顔料誘導体であっても、分散安定性の向上には有効であると考えられるが、本発明者らは、キナクリドン系顔料誘導体を使用すると、更に、インクジェット吐出適性や、エポキシ系接着剤への低浸食性にも優れたインキとなることを見出した。
【0029】
キナクリドン系構造は、フタロシアニン系構造と異なり、窒素原子に水素原子が結合していることから、顔料分子や、顔料分散樹脂中に存在する酸性基と水素結合を形成しやすいと考えられる。その結果、構造類似性による吸着以上に、前記顔料分子や顔料分散樹脂と強く結びつくことができ、結果として分散安定性の特段の向上、更には、粘弾性の好適化による吐出適性の向上が発現すると考えられる。また、エポキシ系接着剤への浸食性が低減される理由は定かではないが、キナクリドン系顔料誘導体が、顔料と吸着をしていない遊離顔料分散樹脂の酸性基に吸着することで、分散安定性を損なうことなくエポキシ系接着剤への浸食を緩和させるためと推察している。
【0030】
以上のように、初期の分散安定性、長期間の分散安定性、インクジェット吐出適性、エポキシ系接着剤への低浸食性のすべてを兼ね備えた活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを得るためには、本発明のインキの構成が必須不可欠である。
【0031】
更に本発明者らは、インキ中に使用する重合性化合物(D)として、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを用いることで、エポキシ系接着剤への浸食性が更に低減し、かつ顔料の長期分散安定性が増すことを見出した。
【0032】
アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルは、分子構造中に、エチレンオキサイド基及びビニル基を有し、インキの低粘度化及び高反応性に寄与する材料である。しかしながら、どちらの基も求核性を有するため、分散安定性の悪化に影響を及ぼす可能性がある。また25℃における表面張力が約34mN/mと低く、エポキシ系接着剤の内部に浸透する恐れがある。
【0033】
本発明では、顔料分散樹脂(C)中に含まれる塩基性基が、エチレンオキサイド基及びビニル基と弱い相互作用を形成することで、分散安定性の悪化を防いでいると考えられる。一方、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを用いた本発明のインキが、エポキシ系接着剤への浸食性が低減している理由は定かではないが、インキ中に存在している顔料中に存在する芳香環などと相互作用を起こすことで、内部への浸透が抑制されていると考えられる。
【0034】
一実施形態において、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを紫外線照射にて硬化させる場合、インキ中に光重合開始剤(E)を配合する。後述するように、使用できる光重合開始剤の種類に特に制限はなく、公知の光重合開始剤を用いることができるが、中でもα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤(E−1)を配合した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、インキの長期の分散安定性と吐出安定性に特に優れるため、本発明において好適である。
【0035】
光重合開始剤(E)としてα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤(E−1)を含む場合に長期の分散安定性と吐出安定性が優れる理由として、開始剤中に存在する水酸基が顔料表面の官能基と水素結合を形成することで、系内で安定した顔料分散状態を維持する効果を補助し、その結果として顔料凝集が抑制され、インクジェットヘッドからの吐出安定性も改善するものと思われる。
【0036】
続いて以下に、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを構成する各成分について説明する。
【0037】
<顔料(A)>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、C.I.ピグメントブルー15:6と、キナクリドン系顔料の双方を含む。これらはどちらも市販のものを用いることができる。またキナクリドン系顔料は特に限定されるものではないが、C.I.ピグメントレッド122、202、209、282、C.I.ピグメントバイオレット19などを用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0038】
なお、色再現性と分散安定性との両立を図る観点から、C.I.ピグメントブルー15:6の比表面積は、30〜150m
2 /gであることが好ましく、50〜100m
2 /gであることがより好ましい。なお前記比表面積はBET法により測定した値である。
【0039】
また、本発明者らが検討を行った結果、C.I.ピグメントブルー15:6の固体状態でのかさ密度が、0.5kg/l以下であることが好ましく、0.3kg/l以下であることがより好ましいことを見出した。詳細な理由は不明であるが、かさ密度は、顔料自身の体積に加えて、前記顔料同士が形成する空隙の体積なども考慮した値であることから、インキ中での顔料の分散状態を総合的に判断できる指標として利用できるものと考えられる。なお、かさ密度は、定容積測定法により測定した値である。
【0040】
色再現性に優れた印刷物を得、またインキの分散安定性を確保する観点から、C.I.ピグメントブルー15:6の配合量と、キナクリドン系顔料の配合量の総量は、前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ全量に対し、2〜10質量%であり、3〜6質量%であることが好ましい。また、上述の通り、前記C.I.ピグメントブルー15:6と、前記キナクリドン系顔料との質量比率は、3:1〜1:3である。
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、C.I.ピグメントブルー15:6、及び、キナクリドン系顔料以外の顔料(以下、「その他の顔料」ともいう)を使用してもよい。前記その他の顔料として、C.I.ピグメントブルー15:6と同種である、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、16、C.I.ピグメントグリーン7、36などのフタロシアニン系顔料や、前記C.I.ピグメントブルー15:6と類似した部分構造を有する、C.I.ピグメントレッド175、176、185、208、C.I.ピグメントイエロー120、151、154、175、180、181、194などのベンズイミダゾロン系顔料が使用できる。ただし、その他の顔料を使用する場合、その配合量は、C.I.ピグメントブルー15:6及びキナクリドン系顔料の効果を阻害しない程度であることが好ましい。具体的には、その他の顔料の配合量は、顔料(A)全量中50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
<色素誘導体(B)>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキに用いる色素誘導体(B)は、キナクリドン骨格を有する顔料誘導体である。具体的には、キナクリドン顔料を基本骨格とし、分子内に置換基を導入した、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
一般式(1)中、Pqはn
1価のキナクリドン残基を表し、n
1は1以上の整数、Z
1はSO
3H、またはCOOHを表す。n
1は1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2である。
【0046】
一般式(2)中、Pqはn
2価のキナクリドン残基を表し、
n
2は1以上の整数を表し、
Z
2はSO
3-またはCOO
-を表し、
Z
3は、アルカリ金属カチオン、第1級アミンカチオン、第2級アミンカチオン、第3級アミンカチオン、または第4級アンモニウムカチオンを表す。
n
2は1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2である。
【0048】
一般式(3)中、Pqはn
3価のキナクリドン残基を表し、
n
3は1以上の整数を表し、
mは1以上の整数を表し、
R
1は(m+1)価の有機残基を表し、
R
2は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数あるR
2は同一でも異なっても良い。
n
3は1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2である。
また、R
1はメチレン基であることが好ましく、R
2は全て水素原子であることが好ましい。
【0049】
なお、上記一般式(1)〜(3)中、Pqで表されるキナクリドン残基として、無置換キナクリドン、モノメチルキナクリドン、ジメチルキナクリドン、モノクロロキナクリドン、ジクロロキナクリドン、モノメトキシキナクリドン、ジメトキシキナクリドンなどに由来する残基が挙げられる。
【0050】
上記の色素誘導体は、例えば特公昭46−10069号公報、特公昭50−4019号公報、特公昭53−13651号公報、特開昭55−108466号公報に記載された方法で調製することができる。上記の中でも、一般式(1)または(2)で表される色素誘導体が好ましく、前記一般式(1)においてZ
1がSO
3Hであるもの、または、前記一般式(2)においてZ
2がSO
3-であるものがより好ましい。更に、下記一般式(4)〜(5)で表される化合物が特に好ましい。
【0052】
一般式(4)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。
【0054】
一般式(5)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。
【0055】
本発明における色素誘導体(B)は、キナクリドン系顔料の分散を補助するのみならず、顔料に吸着していない遊離顔料分散樹脂の酸性基と吸着することで、インキ中の成分がインクジェットヘッドのエポキシ系接着剤を浸食することを緩和する効果があるものと推察される。このような効果を得るためには、前記色素誘導体(B)の配合量は前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ中に含まれる顔料の総量に対し、1〜20質量%含有することが好ましく、2〜10質量%含有することがより好ましい。
【0056】
<顔料分散樹脂(C)>
本発明において、顔料の初期分散性及び長期の分散安定性のために、顔料分散樹脂(C)を使用する。本発明に用いることができる顔料分散樹脂(C)は、顔料分散樹脂(C)の酸価をC1(mgKOH/g)とし、顔料分散樹脂(C)のアミン価をC2(mgKOH/g)としたとき、C1≧C2>0となるものである。
【0057】
「酸価」とは、顔料分散樹脂(C)の固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めた値である。「アミン価」とは、顔料分散樹脂(C)の固形分1gあたりのアミン価を表し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した値である。
【0058】
本発明に用いる顔料分散樹脂(C)は市販されているものを使用することもできるし、公知の方法で合成したものを使用することもできる。市販品の具体的な例としては、ビックケミー社製のDisperbyk(登録商標)−145、106、ルーブリゾール社製のソルスパース(登録商標)J−180などが挙げられる。また例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの酸基含有単量体と、アクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有単量体と、必要に応じてその他の単量体とを、有機溶剤中で共重合させた樹脂のうち酸価とアミン価が上記条件を満たすものを、本発明の顔料分散樹脂(C)として用いてもよい。
【0059】
本発明では、C.I.ピグメントブルー15:6と、キナクリドン系顔料の双方に対する分散性及びエポキシ系接着剤への低浸食性を両立する観点から、主鎖がポリアミンまたはポリイミンである櫛型顔料分散樹脂を使用することが好適であり、主鎖がポリイミンである櫛型顔料分散樹脂を使用することが特に好適である。前記ポリアミンとして、ポリビニルアミンやポリアリルアミンが例示でき、また、前記ポリイミンとして、ポリエチレンイミンやポリプロピレンイミンが例示できる。なお、上記市販品の例のうち、主鎖がポリアミンまたはポリイミンである櫛型顔料分散樹脂として、Disperbyk(登録商標)−145及びソルスパース(登録商標)J−180がある。また、前記主鎖がポリアミンまたはポリイミンである櫛型顔料分散樹脂を合成する場合、例えば特表2003−531001号公報記載の方法が利用できる。
【0060】
本発明における顔料分散樹脂(C)の添加量は前記顔料(A)の総量に対して、20〜100質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。顔料分散樹脂(C)の添加量を上記範囲内に収めることで、初期の分散性が十分良好となり、更に顔料に吸着していない顔料分散樹脂(C)の影響による吐出安定性の悪化、及び、エポキシ系接着剤への浸透も低減できる。
【0061】
<重合性化合物(D)>
本発明における重合性化合物(D)とは、後述する光重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合または架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0062】
重合性化合物(D)としては、上記特性を有するものであれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができる。なお「オリゴマー」及び「ポリマー」とは、モノマーが複数個結合した重合体であり、両者は重合度によって分類される。すなわち本明細書では、前記重合度が2〜5であるものを「オリゴマー」と呼び、6以上であるものを「ポリマー」と呼ぶ。
【0063】
重合性化合物(D)が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリレート基、ビニルエーテル基、アリル基、ビニル基(ただし、前記ビニルエーテル基及びアリル基を除く)、不飽和カルボン酸基などが挙げられる。
【0064】
本発明では、重合性化合物(D)として(メタ)アクリレート化合物を用いることが好ましい。
【0065】
本発明では、重合性化合物(D)が、単官能の重合性化合物であっても、二官能以上の多官能の重合性化合物であってもよい。また、反応速度、硬化膜の物性、インキの物性などを調整する目的で、重合性化合物(D)を1種のみ使用してもよいし、複数の重合性化合物(D)を混合して用いることもできる。単官能の重合性化合物の割合が大きいと硬化膜は柔軟なものになりやすく、多官能の重合性化合物の割合が大きいと硬化性に優れる傾向がある。従って、複数の重合性化合物(D)を用いる場合、単官能の重合性化合物と多官能の重合性化合物との割合は用途に応じて任意に決定される。
【0066】
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリレート」及び、「(メタ)アクリル」、といった記載は、それぞれ、「アクリレート及び/またはメタクリレート」及び「アクリロイル及び/またはメタクリロイル」を意味する。また本明細書において「単官能」とは、1分子中に重合性基を1つのみ有する化合物を指す。また「二官能」「三官能」は、それぞれ、1分子中に重合性基を2つまたは3つ有する化合物を指し、二官能以上を総称して「多官能」と呼ぶこととする。
【0067】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、o−フェニルフェノールEO変性アクリレート、2−エチルヘキシルEO変性アクリレート、β−カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどが挙げられる。
【0068】
(メタ)アクリロイル基を2つ有する化合物(「二官能の(メタ)アクリレート化合物」)としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ(またはプロポキシ)化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0069】
また、(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を1個ずつ持つ二官能の重合性化合物として、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルなどが挙げられる。
【0070】
三官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート(例えば、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレートなど)、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。硬化性の点から、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートが好ましい。
【0071】
四官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でもペンタエリスリトールテトラアクリレートが好ましい。
【0072】
五官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0073】
六官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でもジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0074】
なお本明細書において「EO」とは「エチレンオキサイド」を指し、「PO」とは「プロピレンオキサイド」を指す。
【0075】
上述の通り、本発明においては、エポキシ系接着剤への浸食性が更に低減し、かつ顔料の長期分散安定性が向上する観点から、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを用いることが好ましい。その場合、全インキ質量に対して20〜60質量%の(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むことが、長期の分散安定性向上とエポキシ系接着剤への浸食緩和とが、良好なレベルで両立できる効果を得る観点から好ましい。
【0076】
<光重合開始剤(E)>
本発明のインキを紫外線にて硬化させる場合には、インキに光重合開始剤を配合することが好ましい。本発明で用いることができる光重合開始剤(E)は、公知の光重合開始剤であってよく、例えば、分子開裂型や水素引き抜き型でラジカルを発生させる光重合開始剤を使用することが好ましい。本発明において、光重合開始剤(E)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ラジカルを発生させる光重合開始剤とカチオンを発生させる光重合開始剤とを併用してもよい。
【0077】
光重合開始剤(E)の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IGM RESINS社製「OMNIRADBDK」)などのベンジルジメチルケタール系光重合開始剤;
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(IGM RESINS社製「OMNIRAD184」)などのα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤;
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(IGM RESINS社製「OMNIRAD1173」)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IGM RESINS社製「OMNIRAD659」)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(IGM RESINS社製「OMNIRAD127」)、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)(IGM RESINS社製、「ESACUREONE」「ESACUREKIP160」)などのα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤;
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IGM RESINS社製「OMNIRAD907」)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(IGM RESINS社製「OMNIRAD369」)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(IGM RESINS社製「OMNIRAD379」)などのα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM RESINS社製「OMNIRAD819」)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(IGM RESINS社製「OMNIRADTPO」)、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM RESINS「OMNIRADTPO−L」)などのアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;
フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(IGM RESINS社製「OMNIRADMBF」)などの分子内水素引き抜き型光重合開始剤;
1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASF社製「IRGACUREOXE01」)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(BASF社製「IRGACUREOXE02」)などのオキシムエステル系光重合開始剤;
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド(IGM RESINS社製「OMNIRADBMS」)、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン(IGM RESINS社製「ESACURE1001M」)などのベンゾフェノン系光重合開始剤などが挙げられる。
【0078】
本発明においては、上記の通り、α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤(E−1)を用いることが、顔料の長期分散安定性及びインクジェットの吐出安定性の観点から好ましい。また、前記α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤(E−1)の配合量は、本発明の効果を好適に得る観点から、全インキ質量に対して1〜12質量%の範囲であることが好ましく、1〜8質量%の範囲であることがより好ましい。
【0079】
<その他の成分>
本発明における活性エネルギー線硬化型インクジェットインキには上記の成分以外に、重合禁止剤、溶剤、表面調整剤、及びその他の添加剤を目的に応じて併用することができる。
【0080】
<重合禁止剤>
インキの経時での粘度安定性、経時後の吐出安定性、インクジェット記録装置内での粘度安定性を高めるため、重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が特に好適に使用される。具体的には、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩などが挙げられる。硬化性を維持しつつ経時安定性を高める点から、インキ全体に対して0.01〜2質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
【0081】
<有機溶剤>
本発明では、インキの低粘度化、記録媒体への濡れ広がり性を向上させるために、有機溶剤を含有させてもよい。有機溶剤を含む場合、インキ全重中0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が更に好ましい。また、乾燥性及び記録媒体への濡れ広がり性の点から、沸点が140〜300℃の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0082】
前記有機溶剤として、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、アルキレングリコールジアセテート類、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルカンジオール類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、ラクタム類、ラクトン類、その他含窒素系有機溶剤、含酸素系有機溶剤が使用できる。
【0083】
中でも、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。特に、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましく、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルから選択される少なくとも1種を含むことが最も好ましい。
【0084】
<表面調整剤>
本発明において、インキには、記録媒体に対する濡れ広がり性の向上及びハジキの防止を目的として表面調整剤を添加することが好ましい。表面調整剤として、例えば、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤などが挙げられる。表面張力低下の能力、重合性化合物(D)との相溶性との観点から、シリコーン系表面調製剤を使用することが好ましい。
【0085】
シリコーン系表面調整剤として、例えば、ジメチルシロキサン骨格を有する化合物、及びその変性体が使用できる。中でも、ポリエーテル変性シロキサン系表面調整剤が好ましく使用できる。ポリエーテルとは例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドをいい、分子中にどちらか片方のみが含まれていてもよいし、両方が含まれていてもよい。市販品としては、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シロキサン(コポリマー)、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンなどとして販売されているものが挙げられ、例えばビックケミー社製のBYK(登録商標)−378、348、349などのポリエーテル変性シロキサン;
BYK―UV3500、UV3510などのポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン;
エボニックデグサ社製のTEGO(登録商標)GLIDE450、440、435、432、410、406、130、110、100などのポリエーテル変性シロキサンコポリマー;
を好ましく使用できる。これらの中でも、良好な画質形成の観点から、BYK−378、348、UV3510;TEGO GLIDE450、440、432、410などのポリエーテル変性シロキサン系表面調整剤が好ましく使用できる。
【0086】
シリコーン系表面調整剤の含有量は、全インキ質量中0.1〜5.0質量%が好ましい。含有量を0.1質量%以上にすることにより、インキの記録媒体への濡れ広がり性を容易に向上できる。一方、含有量を5.0質量%以下にすることより、インキの保存安定性、吐出安定性を確保することが容易となる。
【0087】
<インキの製造方法>
本発明のインキは従来既知の方法によって製造することができるが、具体的には、以下のように行われる。まず始めに、C.I.ピグメントブルー15:6、キナクリドン系顔料、顔料分散樹脂(C)、色素誘導体(B)、重合性化合物(D)、及び、必要に応じて表面調整剤、重合禁止剤、溶剤などを混合した後、ペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機などによって分散処理を行い、顔料分散体を調製する。
【0088】
なお、前記色素誘導体(B)は、前記顔料分散樹脂(C)と同時に添加してもよいし、前記顔料分散樹脂(C)との混合前に、あらかじめ、前記C.I.ピグメントブルー15:6及び/または前記キナクリドン系顔料と、混合または処理しておいてもよい。本発明の場合は、長期間の分散安定性を確保するとともに、色素誘導体(B)のインキ中への脱離を防止し、エポキシ系接着剤へのダメージを抑制する観点から、前記色素誘導体(B)は、あらかじめ、前記C.I.ピグメントブルー15:6及び/または前記キナクリドン系顔料と、混合または処理しておくことが好ましい。
【0089】
次いで、得られた顔料分散体に対して、所望のインキ特性を有するように、重合性化合物(D)の残部や、その他必要に応じて、光重合開始剤(E)や、その他添加剤(例えば表面調整剤、重合禁止剤、溶剤など)を添加し、よく混合したのち、フィルターなどで濾過し粗大粒子を濾別することで得られる。
【0090】
<インキセット>
上述したように、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを使用することで、ブルー領域の色を良好に再現することができる。また、前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキと、以下に示す活性エネルギー線硬化型インクジェットイエローインキ(以下、単に「イエローインキ」ともいう)と、活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキ(以下、単に「マゼンタインキ」ともいう)とを含む活性エネルギー線硬化型インキセット(以下、単に「インキセット」ともいう)を使用することで、鮮明性及び発色性に優れ、グリーン〜ブルー〜レッド領域にかけての色再現性が良好な印刷物を得ることができる。
【0091】
<活性エネルギー線硬化型インクジェットイエローインキ>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキと組み合わせて使用することで、グリーン領域の色再現性に優れた印刷物が得られる観点から、本発明のインキセットを構成するイエローインキに含まれるイエロー顔料は、下記一般式(6)で表される部分構造を有するイエロー顔料、及び/または、下記一般式(7)で表される部分構造を有するイエロー顔料を含むことが好ましい。なおこれらの顔料は、1種類のみ含んでもよいし、2種類以上を併用してもよい。また2種類以上を併用する際は、混晶状態になっているものを使用してもよい。
【0093】
ただし、一般式(6)は、少なくとも1つの結合手を有する。
また、一般式(6)中、X
1及びX
2は、ともに=Oであるか、ともに=CR
12R
13であるか、X
1が=OかつX
2が=NR
14である。
また、R
7〜R
10は、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表し、
R
11は、水素原子または結合手を表し、
R
12〜R
14は、それぞれ結合手を表す。
【0095】
一般式(7)中、R
15は結合手を表す。
【0096】
上記一般式(6)で表される部分構造として、フタルイミド(一般式(6)において、X
1及びX
2がともに=Oである場合。例えば、C.I.ピグメントイエロー138が挙げられる。)、イソインドリノン(一般式(6)において、X
1が=OかつX
2が=NR
14である場合。例えば、C.I.ピグメントイエロー109、110が挙げられる。)、イソインドリン(一般式(6)において、X
1及びX
2がともに=CR
12R
13である場合。例えば、C.I.ピグメントイエロー139、185が挙げられる)などがある。
【0097】
上記で例示した顔料の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキと組み合わせた際の、グリーン領域の色再現性に優れる観点、及び、優れた着色力を有しており、画像濃度に優れた印刷物が得られる観点から、イソインドリン系イエロー顔料として知られる、C.I.ピグメントイエロー139、及び、185からなる群より選択される1種以上が、特に好ましく選択される。
【0098】
一方、上記一般式(7)で表される部分構造としてベンズイミダゾロンがあり、例えば、C.I.ピグメントイエロー120、151、154、175、180、181、194などが挙げられる。
【0099】
上記で例示した顔料の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキと組み合わせた際の、グリーン領域の色再現性に優れる観点、及び、優れた着色力を有しており、画像濃度に優れた印刷物が得られる観点から、C.I.ピグメントイエロー175、180、及び、194からなる群より選択される1種以上が、特に好ましく選択される。
【0100】
なお、色再現性と分散安定性との両立を図る観点から、上記一般式(6)で表される部分構造を有するイエロー顔料、及び/または、上記一般式(7)で表される部分構造を有するイエロー顔料の比表面積は、20〜100m
2/gであることが好ましく、30〜70m
2/gであることがより好ましい。なお前記比表面積は、上記C.I.ピグメントブルー15:6と同様の方法により測定できる。
【0101】
上記一般式(6)で表される部分構造を有するイエロー顔料、及び、上記一般式(7)で表される部分構造を有するイエロー顔料の配合量の総量は、イエローインキ全量中1〜10質量%である。また、イエローインキを長期間保存した際の分散安定性や、吐出安定性を考慮すると、1.5〜9質量部であることがより好ましく、2〜8質量%であることが特に好ましい。
【0102】
本発明のインキセットを構成するイエローインキは、上述したイエロー顔料のほかに、色素誘導体、顔料分散樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、及び、その他の成分(重合禁止剤、溶剤、表面調整剤など)を含んでもよい。これらの構成要素に関する詳細は、上述した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの場合と同様である。
【0103】
<活性エネルギー線硬化型インクジェットマゼンタインキ>
一方、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキと組み合わせて使用することで、レッド領域の色再現性に優れた印刷物が得られる観点から、本発明のインキセットを構成するマゼンタインキに含まれるマゼンタ顔料は、下記一般式(8)で表される部分構造を有するマゼンタ顔料を含むことが好ましい。なおこれらの顔料は、1種類のみ含んでもよいし、2種類以上を併用してもよい。また2種類以上を併用する際は、混晶状態になっているものを使用してもよい。
【0105】
一般式(8)中、R
16、R
17、R
18は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アニリド基、カルバモイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、スルホンアミド基のいずれを表す。
またR
19は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、または、下記一般式(9)で表される構造を表す。
【0107】
一般式(9)中、R
20は、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アミノ基、または、ニトロ基を表す。
また、R
21、R
22は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基のいずれかを表すか、R
21とR
22とが互いに結合し、イミダゾリジノン環を形成している。
また*は結合手を表し、この位置に、前記一般式(8)で表される部分構造が結合する。
【0108】
上記で例示した顔料の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ、及び、上記イエローインキと組み合わせた際の、レッド領域の色再現性に優れる観点、及び、優れた着色力を有しており、画像濃度に優れた印刷物が得られる観点から、C.I.ピグメントレッド146、147、150、170、及び、184からなる群より選択される1種以上が、特に好ましく選択される。
【0109】
なお、色再現性と分散安定性との両立を図る観点から、上記一般式(8)で表される部分構造を有するマゼンタ顔料の比表面積は、20〜100m
2/gであることが好ましく、30〜80m
2/gであることがより好ましい。なお前記比表面積は、上記C.I.ピグメントブルー15:6と同様の方法により測定できる。
【0110】
上記一般式(8)で表される部分構造を有するマゼンタ顔料の配合量の総量は、マゼンタインキ全量中1〜10質量%である。また、マゼンタインキを長期間保存した際の分散安定性や、吐出安定性を考慮すると、1.5〜9質量部であることがより好ましく、2〜8質量%であることが特に好ましい。
【0111】
本発明のインキセットを構成するマゼンタインキは、上述したマゼンタ顔料のほかに、色素誘導体、顔料分散樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、及び、その他の成分(重合禁止剤、溶剤、表面調整剤など)を含んでもよい。これらの構成要素に関する詳細は、上述した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの場合と同様である。
【0112】
<その他のインキ>
本発明のインキセットは、色再現性を高めるため、更に、グリーンインキ、ブラウンインキなどを組み合わせてもよい。また、ブラックインキを併用することで、インキの使用量を抑制しながら、コントラストの大きい黒色が表現できる。更に、ホワイトインキを併用することで、透明または有色の記録媒体に対して、良好な視認性を有する印刷物が形成できる。また、ライトブルーインキ、ライトマゼンタインキ、ライトイエローインキ、ライトブラックインキなどの淡色インキを併用することもできる。
【0113】
ただし、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキと、上述したイエロー顔料を含むイエローインキと、上述したマゼンタ顔料を含むマゼンタインキとからなるインキセットを使用すれば、他の有彩色(彩度を有する全ての色)インキを使用せずとも、特にグリーン〜ブルー〜レッド領域の色再現性に優れた印刷物を得ることができることから、前記その他のインキとして、ブラックインキ、ライトブラックインキ、ホワイトインキから選択される1種以上のみを使用することが好ましい。
【0114】
<記録方法>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ、または、前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを含む活性エネルギー線硬化型インキセットを用いて印刷物を製造する記録方法としては、前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを吐出し記録媒体に付与する工程(印刷工程)と、前記記録媒体上に付与した前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキに、活性エネルギー線を照射して、前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを硬化させる工程(硬化工程)とを含む。
【0115】
<印刷工程>
本発明の記録方法における印刷工程は、生産性の観点から、シングルパスのインクジェット方式を採用することが好ましい。またその際の印刷速度は、35m/min以上が好ましく、50m/min以上がより好ましく、75m/min以上が特に好ましい。
【0116】
<硬化工程>
活性エネルギー線の発生源には特に制限はなく、従来既知のものを用いることができる。具体的には、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、UV−LED、紫外線レーザーダイオード(UV−LD)などのLED(発光ダイオード)やガス・固体レーザーなどが挙げられる。中でも、UV−LEDを使用することが好ましい。
【0117】
<記録媒体>
本発明の記録方法で使用される記録媒体として、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリスチレン、アクリル(PMMAなど)などの材料からなるプラスチック基材;アートコート紙、セミグロスコート紙、キャストコート紙などの紙基材;アルミニウム蒸着紙などの金属基材などが例示できる。
【0118】
前記記録媒体は、その表面が滑らかであっても、凹凸の形状を有しても良く、透明、半透明、または不透明のいずれであっても良い。また、記録媒体は、上記多種の基材の2種以上を互いに貼り合わせたものでも良い。更に、記録媒体は、印字面の反対側に剥離粘着層などの機能層を有していてもよい。
【実施例】
【0119】
以下に、本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。特に断らない限り、部は質量部を、%は質量%を表す。
【0120】
[実施例1]
インキ作製に先立ち、顔料分散体を作製した。顔料(A)としてC.I.ピグメントブルー15:6(比表面積が95m
2/g、かさ密度が0.1kg/lであるもの)を12部、及びC.I.ピグメントレッド122(キナクリドン系顔料)を8部、顔料分散樹脂(C)としてBYK−145を10部、色素誘導体(B)として前記一般式(4)で表され、R
3 、R
4 がともに水素原子である化合物を1.25部、重合性化合物(D)としてジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を68.75部、をタンクへ投入し、ハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌した後、横型サンドミルで約1時間分散することによって顔料分散体を作製した。次いで、得られた顔料分散体を、表1の実施例1に記載した配合となるよう、重合性化合物(D)の残部、光重合開始剤(E)、添加剤、重合禁止剤を順次撹拌しながら加え、光重合開始剤が溶解するまで混合した。そして、孔径1μmのデプスタイプフィルターを用いて濾過を行い、粗大粒子を除去することで、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1を得た。
【0121】
続いて、得られた活性エネルギー線硬化型インクジェットインキについて、下記の方法で評価を行った。
【0122】
<色再現性>
京セラ社製ヘッド(解像度600dpi×600dpi)を搭載したインクジェット吐出装置(トライテック社製OnePassJET)を用い、上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1を、インキ液滴量14pl、印字率100%の印字条件で、リンテック社製基材 PET K2411上へ印刷した。そして、GEW社製240W/cmメタルハライドランプを用い、積算光量200mJ/cm
2の条件で前記印刷物に照射し、前記インキを硬化させることで、印刷サンプルを作成した。なお、印刷から硬化までの一連の工程は、50m/minの印刷速度の下に行った。
得られた印刷サンプルをX−Rite社製のX−Rite eXactで測定し、色再現性を評価した。なお測定条件は、視野角2°、光源D50、CIE表色系とした。評価においては下記条件を満たすか否かでOK及びNGの判定とし、OKのものを色再現性評価の観点で実用可能領域とした。
OK:L≦35の領域においてHue角が270°〜330°であった
NG:L≦35の領域においてHue角が270°未満または330°超であった
【0123】
<初期分散安定性>
上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1について、マイクロトラック・ベル社製 Nanotrac WaveIIを用い、体積基準の累積50%粒子径(D50)、及び、累積99%粒子径(D99)を測定した。なお測定に際しては、測定可能な濃度となるよう、DPGDAを用いて適宜希釈を行い、測定を行った。測定の結果は、下記1〜5の評点で採点し、3点以上を実用可能領域とした。
5:D99/D50の値が4以下、かつ、D50<150nm
4:D99/D50の値が5以下、かつ、D50<180nm(ただし上記5点に該当するものを除く)
3:D99/D50の値が5以下、かつ、D50<200nm(ただし上記4点に該当するものを除く)
2:粒子径は測定できたが、上記3点の条件から外れていた
1:均一な分散体が得られず、粒子径が測定できなかった
【0124】
<長期の分散安定性>
上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1を、ガラス容器に、容器容量の85%の充填率になるよう充填し、容器を密閉及び遮光した状態で、60℃の環境下にて10日間保管した。その後、マイクロトラック・ベル社製 Nanotrac WaveIIを用い、体積基準の累積50%粒子径(D50)、及び、累積99%粒子径(D99)を測定した。なお測定に際しては、測定可能な濃度となるよう、DPGDAを用いて適宜希釈を行い、測定を行った。測定の結果は、下記1〜5の評点で採点し、3点以上を実用可能領域とした。
5:D99/D50の値が4以下、かつ、D50<150nm
4:D99/D50の値が5以下、かつ、D50<180nm(ただし上記5点に該当するものを除く)
3:D99/D50の値が5以下、かつ、D50<200nm(ただし上記5点または4点に該当するものを除く)
2:粒子径は測定できたが、上記3条件から外れていた
1:インキが固化もしくはゲル化し、粒子径が測定できなかった
【0125】
<吐出安定性>
上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1を、トライテック社製DotView(京セラ社製30kHzインクジェットヘッド搭載)に充填し、インクジェットヘッドからの吐出の様子を観察した。吐出時のヘッド温度を40℃に設定し、ヘッド電圧を調整することで液滴速度を変化させ、サテライト滴が発生するときの液滴速度を調べることで、吐出安定性の評価を行った。評価結果は下記1〜5の評点で採点し、3点以上を実用可能領域とした。なお、一般的に液滴速度が高速になるほどサテライト滴が発生しやすい傾向にある。
5:液滴速度7.5m/sにおいてサテライト滴が発生しなかった
4:液滴速度7.0m/s以上7.5m/s未満のときにサテライト滴が発生した
3:液滴速度6.0m/s以上7.0m/s未満のときにサテライト滴が発生した
2:液滴速度5.0m/s以上6.0m/s未満のときにサテライト滴が発生した
1:液滴速度5.0m/s未満の速度でサテライト滴が発生した
【0126】
<エポキシ接着剤浸食性>
まず、特開2002−210964号公報の段落番号0091に記載の方法で接着剤Aを調整し、ガラス板上に約2g滴下した。その後、ガラス板ごと120℃のオーブンにて2時間乾燥させ、接着剤硬化物を作成した。このガラス板に付着した接着剤硬化物を、ガラス板ごと、上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1中に浸漬させ、60℃の環境下で4週間保管した。その後インキを拭き取り、浸漬前後の形状変化及び質量変化を確認し、エポキシ接着剤に対する活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの浸食性を評価した。評価結果は下記1〜5の評点で採点し、3点以上を実用可能領域とした。
5:接着剤硬化物の外観に著しい変形がなく、質量変化率が1%未満
4:接着剤硬化物の外観に著しい変形がなく、質量変化率が1%以上2%未満
3:接着剤硬化物の外観に著しい変形がなく、質量変化率が2%以上4%未満
2:接着剤硬化物の外観が変形、もしくは、質量変化率が4%以上6%未満
1:接着剤硬化物の外観が著しく変形、もしくは、質量変化率が6%以上
【0127】
[実施例2〜28、比較例1〜13]
表1及び表2記載の配合となるようにした以外は、上述の実施例1と同様の方法でインキを調製し、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ2〜41を得た。その後、上記記載の方法で各評価を実施した。
【0128】
【表1】
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
なお、表1及び表2に記載した略称及び商品名の詳細は、下記の通りである。
・Solsperse12000:銅フタロシアニンスルホン酸(ルーブリゾール社製の銅フタロシアニン構造を有する顔料誘導体)
・BYK−145:ビックケミー社製顔料分散樹脂(酸価76mgKOH/g、アミン価71mgKOH/g)
・SolsperseJ180:ルーブリゾール社製顔料分散樹脂(酸価35mgKOH/g、アミン価30mgKOH/g)
・BYK−106:ビックケミー社製顔料分散樹脂(酸価132mgKOH/g、アミン価74mgKOH/g)
・BYK−140:ビックケミー社製顔料分散樹脂(酸価73mgKOH/g、アミン価76mgKOH/g)
・Solsperse32000:ルーブリゾール社製顔料分散樹脂(酸価20mgKOH/g、アミン価26mgKOH/g)
・BYK−108:ビックケミー社製顔料分散樹脂(アミン価71mgKOH/g)
・BYK−118:ビックケミー社製顔料分散樹脂(酸価36mgKOH/g)
・DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
・HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
・PEGDA:ポリエチレングリコールジアクリレート
・VEEA:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル
・PEA:2−フェノキシエチルアクリレート
・OMNIRAD659:1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IGM RESINS社製)
・ESACUREONE:オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)(IGM RESINS社製)
・OMNIRAD819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM RESINS社製)
・OMNIRADTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(IGM RESINS社製)
・OMNIRADBMS:4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド(IGM RESINS社製)
・OMNIRADEDB:エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(IGM RESINS社製)
・TEGO GLIDE 450:ポリエーテル変性シロキサン系表面調整剤(エボニックデグサ社製)
・BYK UV 3510:ポリエーテル変性シロキサン系表面調整剤(ビックケミー社製)
【0132】
評価の結果、顔料(A)と、色素誘導体(B)と、顔料分散樹脂(C)と、重合性化合物(D)とを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであって、前記顔料(A)が、C.I.ピグメントブルー15:6と、キナクリドン系顔料とを含み、前記顔料(A)がインキ中2〜10質量%であり、C.I.ピグメントブルー15:6とキナクリドン系顔料の質量比率が3:1〜1:3であり、前記色素誘導体(B)が、キナクリドン系顔料誘導体を含み、前記顔料分散樹脂(C)の酸価をC1(mgKOH/g)とし、前記顔料分散樹脂(C)のアミン価をC2(mgKOH/g)としたとき、C1≧C2>0である場合に、色再現性、初期分散性、長期の分散安定性、インクジェット吐出安定性、及びエポキシ系接着剤への低浸食性のすべてで実用可能な品質を有していることが確認された。
【0133】
また、重合性化合物(D)としてアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含む実施例2〜4では長期の分散安定性及びエポキシ系接着剤への低浸食性の点でアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含まない実施例1と比較して優れていることが確認された。
【0134】
また、光重合開始剤(E)として、α―ヒドロキシアセトフェノン系開始剤(E−1)を含む場合、長期の分散安定性と吐出安定性の観点でより優れていることが確認された。(例えば、実施例1と実施例13)
【0135】
一方で、色素誘導体を使用しない場合(比較例1)や、キナクリドン系顔料誘導体以外の色素誘導体を使用した際(比較例2〜3)では初期の分散性が不十分であり、所望の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを得ることができなかった。
【0136】
また、顔料分散樹脂として、顔料分散樹脂の酸価をC1’(mgKOH/g)とし、前記顔料分散樹脂のアミン価をC2’(mgKOH/g)としたとき、C1’<C2’、C1’=0、およびC2’=0のいずれかであるものを使用した場合(比較例4〜7)、初期の分散安定性及びエポキシ系接着剤への低浸食性の観点で劣ることが確認された。
【0137】
また、比較例8はC.I.ピグメントブルー15:6の代わりにC.I.ピグメントブルー15:4を使用した例であり、比較例9および10はC.I.ピグメントブルー15:6とキナクリドン系顔料を質量比率3:1〜1:3以外の範囲で配合した例である。いずれも所望の色域を再現することができず、本発明の目的であるブルー領域の色を良好に再現することができる活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを得ることはできなかった。
【0138】
比較例11は特許文献2の表2のB2を再現したものであり、比較例12は特許文献4の実施例2のBlueインクNo.16(d)を再現したものであり、比較例13は特許文献5の表5記載の実施例39を模したインキである。いずれも所望の色域を再現することができず、また長期の分散安定性やエポキシ接着剤への進捗性が著しく劣るため、実用に耐えうる活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを得ることはできなかった。
【0139】
続いて、本発明のインキセットの効果を確認するため、以下に示すイエローインキ、マゼンタインキ、及び、ブラックインキを調製したのち、上記で調製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ(ブルーインキ)と組み合わせ、鮮明性・発色性を評価した。
【0140】
[イエローインキ1の調製]
イエローインキ作製に先立ち、イエロー顔料分散体を作製した。
C.I.ピグメントイエロー139を15部、顔料分散樹脂としてBYK−145を10部、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を75部、をタンクへ投入し、ハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌した後、横型サンドミルで約1時間分散することによってイエロー顔料分散体を作製した。
次いで、得られたイエロー顔料分散体を15部、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を40部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを30部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM RESINS社製「OMNIRAD819」)を4部、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)(IGM RESINS社製「ESACUREONE」)を4部、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド(IGM RESINS社製「OMNIRADBMS」)を4部、ポリエーテル変性シロキサン系表面調整剤(エボニックデグサ社製「TEGO GLIDE 450」)を2.5部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.5部、を順次撹拌しながら加え、光重合開始剤が溶解するまで混合した。そして、孔径1μmのデプスタイプフィルターを用いて濾過を行い、粗大粒子を除去することで、イエローインキ1を得た。
【0141】
[イエローインキ2〜6の調製]
また、使用した顔料を表3記載のものにした以外は、上記のイエローインキ1と同様の方法で、イエローインキ2〜6を調製した。
【0142】
【表3】
【0143】
[マゼンタインキ1の調製]
マゼンタインキ作製に先立ち、マゼンタ顔料分散体を作製した。
C.I.ピグメントレッド122を15部、顔料分散樹脂としてBYK−145を10部、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を75部、をタンクへ投入し、ハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌した後、横型サンドミルで約1時間分散することによってマゼンタ顔料分散体を作製した。
次いで、得られたマゼンタ顔料分散体を20部、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を35.5部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを30部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM RESINS社製「OMNIRAD819」)を4部、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)(IGM RESINS社製、「ESACUREONE」)を4部、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド(IGM RESINS社製「OMNIRADBMS」)を4部、ポリエーテル変性シロキサン系表面調整剤(エボニックデグサ社製「TEGO GLIDE 450」)を2部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.5部、を順次撹拌しながら加え、光重合開始剤が溶解するまで混合した。そして、孔径1μmのデプスタイプフィルターを用いて濾過を行い、粗大粒子を除去することで、マゼンタインキ1を得た。
【0144】
[マゼンタインキ2〜5の調製]
また、使用した顔料を表4記載のものにした以外は、上記のマゼンタインキ1と同様の方法で、マゼンタインキ2〜5を調製した。
【0145】
【表4】
【0146】
[ブラックインキの調製]
ブラックインキ作製に先立ち、ブラック顔料分散体を作製した。
カーボンブラックを15部、顔料分散樹脂としてBYK−145を5部、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を80部、をタンクへ投入し、ハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌した後、横型サンドミルで約1時間分散することによってブラック顔料分散体を作製した。
次いで、得られたブラック顔料分散体を15部、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を41部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを30部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM RESINS社製「OMNIRAD819」)を4部、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)(IGM RESINS社製、「ESACUREONE」)を4部、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド(IGM RESINS社製「OMNIRADBMS」)を4部、ポリエーテル変性シロキサン系表面調整剤(エボニックデグサ社製「TEGO GLIDE 450」)を1.5部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.5部、を順次撹拌しながら加え、光重合開始剤が溶解するまで混合した。そして、孔径1μmのデプスタイプフィルターを用いて濾過を行い、粗大粒子を除去することで、ブラックインキを得た。
【0147】
[実施例29〜39、比較例14]
<鮮明性・発色性>
上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ(ブルーインキ)、イエローインキ、マゼンタインキ、及び、ブラックインキを、表5記載のように組み合わせ、京セラ社製ヘッド(解像度600dpi×600dpi)を4個搭載したインクジェット吐出装置(トライテック社製OnePassJET)に充填した。次いで、リンテック社製基材 PET K2411上に、高精細カラーデジタル標準画像データ(ISO/JIS−SCID JIS X 9201準拠)のN5(自転車)画像を印刷したのち、GEW社製240W/cmメタルハライドランプを使用して前記N5画像を硬化させ、自転車印刷物を作製した。なお、印刷時のヘッド温度は40℃とし、また印刷から硬化までの一連の工程は、50m/minの印刷速度の下に行った。
そして、得られた自転車印刷物を目視で観察し、下記1〜4の評点で採点することで、鮮明性及び発色性を評価した。なお、2点以上を実用可能領域とした。
4:実施例33で作製した自転車印刷物と比べて、鮮明性や発色性に優れていた。
3:実施例33で作製した自転車印刷物と同程度の鮮明性・発色性であった。
2:実施例33で作製した自転車印刷物と比べて、やや鮮明性や発色性に劣るものの、実使用上、問題ないレベルであった。
1:鮮明さが明らかに低く、濃度も低い印刷物であった。
【0148】
【表5】
【0149】
表5の通り、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキと、一般式(6)で表される部分構造を有するイエロー顔料、及び/または、一般式(7)で表される部分構造を有するイエロー顔料を含むイエローインキと、一般式(8)で表される部分構造を有するマゼンタ顔料を含むマゼンタインキとを有するインキセット(実施例34〜37の組み合わせ)では、鮮明性及び発色性に特段に優れた印刷物が得られた。
【課題】本発明の目的は、ブルー領域の色を良好に再現することができる活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであって、初期の分散性、長期間保存時の分散安定性、吐出安定性、及びインクジェットヘッドに用いられるエポキシ系接着剤への低浸透性といった全ての課題を解決できるインクジェットインキを提供することにある。
【解決手段】顔料(A)と、色素誘導体(B)と、顔料分散樹脂(C)と、重合性化合物(D)とを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであって、前記顔料(A)が、C.I.ピグメントブルー15:6と、キナクリドン系顔料とを、特定の量及び比率で含み、前記色素誘導体(B)が、キナクリドン系顔料誘導体を含み、前記顔料分散樹脂(C)の酸価とアミン価が特定の範囲である、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキである。