(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1テンプレート画像および前記第2テンプレート画像は、画像中の前記特定部位の形状、大きさまたは前記特定部位と重畳して写る背景部分の少なくともいずれかが相違する画像である、請求項3に記載の放射線撮影装置。
前記記憶部には、呼吸の1周期をN分割(Nは2以上の自然数)した各々の呼吸位相における前記特定部位のテンプレート画像であるN種類の呼吸位相画像が記憶されており、
前記第1テンプレート画像は、N分割された呼吸位相のうちから選択された1または複数の呼吸位相における前記呼吸位相画像であり、
前記第2テンプレート画像は、前記第1テンプレート画像以外の呼吸位相における前記呼吸位相画像であり、
前記位置検出部は、N種類の呼吸位相画像の各々を用いて、前記放射線画像とのマッチングを行うことにより、前記特定部位を検出するように構成されている、請求項3または4に記載の放射線撮影装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、被検者の外部にレーザー距離計などを設ける必要があるため、装置構成が複雑になる。また、体表面の動きから呼吸位相を取得する場合、体表面の動きと特定部位の状態の変化とに時間的なずれを伴うなど、取得された呼吸位相と特定部位の状態とが必ずしも一致しない可能性がある。そこで、装置構成を複雑化することなく、所定の呼吸位相における特定部位を精度よく検出できるようにすることが望ましい。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置構成を複雑化することなく、所定の呼吸位相における特定部位を精度よく検出することが可能な放射線撮影装置および放射線画像検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における放射線撮影装置は、
被検体に治療ビームを照射することで治療を行う治療システムにおいて用いられる放射線撮影装置であって、被検体に放射線を照射する照射部と、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出部と、放射線検出部の検出信号に基づき放射線画像を
順次生成する画像生成部と、放射線画像から被検体の特定部位の位置を検出し、特定部位の動きを追跡する位置検出部と
、治療の計画時に設定される所定の呼吸位相であって、当該所定の呼吸位相は被検体の呼吸の状態が当該所定の呼吸位相に属する場合に治療ビームが照射されるものであり、当該所定の呼吸位相における特定部位の第1テンプレート画像を記憶する記憶部と、を備え、位置検出部は、
順次生成される放射線画像に対し第1テンプレート画像を適用する画像認識処理によって、当該放射線画像中から、所定の呼吸位相における特定部位を検出するように構成されている。
この発明の第2の局面における放射線撮影装置は、被検体に放射線を照射する照射部と、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出部と、放射線検出部の検出信号に基づき放射線画像を生成する画像生成部と、放射線画像から被検体の特定部位の位置を検出し、特定部位の動きを追跡する位置検出部と、呼吸の1周期を分割した複数の呼吸位相のうち、呼気相における最後の分割及び/又は吸気相における最初の分割を含むように予め設定された所定の呼吸位相における特定部位の第1テンプレート画像、または機械学習により所定の呼吸位相における特定部位を識別するように作成された識別器、を記憶する記憶部と、を備え、位置検出部は、第1テンプレート画像または識別器を用いた画像認識によって、放射線画像中から、所定の呼吸位相における特定部位を検出するように構成されている。
【0009】
この発明の第1
および第2の局面による放射線撮影装置では、上記のように、所定の呼吸位相における特定部位の画像に基づく画像認識によって、放射線画像中から、所定の呼吸位相における特定部位を検出するように位置検出部を構成する。これにより、予め所定の呼吸位相における特定部位の画像を取得しておけば、その画像に基づいて、所定の呼吸位相における特定部位を放射線画像中から直接検出することができる。そのため、体表面の動きから呼吸位相を検出する場合と比較して、所定の呼吸位相における特定部位を精度よく検出することができる。また、放射線画像から呼吸位相を把握できるので、被検体の外部に呼吸位相を検出するためのセンサを別途設けておく必要がない。これらによって、装置構成を複雑化することなく、所定の呼吸位相における特定部位を精度よく検出することができる。
【0010】
上記第1
または第2の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、
記憶部は、所定の呼吸位相で生成された特定部位の第1テンプレート画像と、所定の呼吸位相以外の呼吸位相で生成された特定部位の第2テンプレート画像と、をそれぞれ記憶
し、位置検出部は、画像生成部により生成された放射線画像と、第1テンプレート画像および第2テンプレート画像の各々とのマッチングにより、所定の呼吸位相における特定部位を検出するように構成されている。このように構成すれば、第1テンプレート画像とのマッチング結果(類似度)が第2テンプレート画像とのマッチング結果よりも高くなる場合に、所定の呼吸位相の特定部位を検出することができる。これにより、予め用意した第1テンプレート画像および第2テンプレート画像とのマッチング結果を比較するだけで、容易かつ高精度に、所定の呼吸位相における特定部位を検出することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、第1テンプレート画像および第2テンプレート画像は、画像中の特定部位の形状、大きさまたは特定部位と重畳して写る背景部分の少なくともいずれかが相違する画像である。このように第1テンプレート画像および第2テンプレート画像が呼吸位相の相違に起因して異なることから、第1テンプレート画像および第2テンプレート画像とのマッチング結果を比較するだけで、所定の呼吸位相の特定部位の画像であるか否かを精度よく識別することができる。
【0012】
上記記憶部
が第1テンプレート画像および第2テンプレート画像を記憶する構成において、好ましくは、記憶部には、呼吸の1周期をN分割(Nは2以上の自然数)した各々の呼吸位相における特定部位のテンプレート画像であるN種類の呼吸位相画像が記憶されており、第1テンプレート画像は、N分割された呼吸位相のうちから選択された1または複数の呼吸位相における呼吸位相画像であり、第2テンプレート画像は、第1テンプレート画像以外の呼吸位相における呼吸位相画像であり、位置検出部は、N種類の呼吸位相画像の各々を用いて、放射線画像とのマッチングを行うことにより、特定部位を検出するように構成されている。このように構成すれば、呼吸の1周期を区分する呼吸位相毎に、テンプレート画像(呼吸位相画像)を個別に用意することができる。この場合、様々な(不特定の)呼吸位相での特定部位の画像からテンプレート画像を作成する場合と比べて、各呼吸位相画像がそれぞれの呼吸位相における特定部位の状態をより正確に反映するため、呼吸位相毎の特定部位のマッチング精度を向上させることができる。その結果、所定の呼吸位相を含むそれぞれの呼吸位相での特定部位の検出精度を向上させることができる。
【0013】
上記第1
または第2の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、被検体の特定部位に治療ビームを照射するための放射線治療装置と接続された制御部をさらに備え、制御部は、位置検出部により所定の呼吸位相の特定部位が検出され、かつ、特定部位の検出位置が所定のビーム照射範囲内である場合に限り、治療ビームを照射するためのトリガー信号を放射線治療装置に出力するように構成されている。ここで、放射線治療時に特定部位がビーム照射範囲内に存在しても、呼吸位相が異なる場合には、治療ビーム(粒子線など)の飛程などが変化することに起因して、特定部位における照射線量分布が治療計画通りの分布にならない場合がある。これに対して、上記構成によれば、特定部位がビーム照射範囲内に存在する条件下で、所定の呼吸位相でのみ治療ビーム照射を実施させることができるので、より治療計画に沿った照射線量分布での治療が可能となる。
【0014】
この発明の第
3の局面における放射線画像検出方法は、
被検体に治療ビームを照射することで治療を行う治療システムにおいて実施され、放射線画像中から特定部位を検出するための放射線画像検出方法であって、
プロセッサが、放射線画像を
順次生成するステップと、
プロセッサが、放射線画像
中に写る特定部位の位置を検出し、特定部位の動きを追跡するステップと、を備え、特定部位の動きを追跡するステップは、
プロセッサが、治療の計画時に設定される所定の呼吸位相であって、当該所定の呼吸位相は被検体の呼吸の状態が当該所定の呼吸位相に属する場合に治療ビームが照射されるものであり、当該所定の呼吸位相における特定部位の第1テンプレート画像を取得するステップと、プロセッサが、順次生成される放射線画像に対し第1テンプレート画像を適用する画像認識処理によって、当該放射線画像中から、所定の呼吸位相における特定部位を検出するステップ
と、を含む。
この発明の第4の局面における放射線画像検出方法は、放射線画像中から特定部位を検出するための放射線画像検出方法であって、プロセッサが、放射線画像を順次生成するステップと、プロセッサが、順次生成される放射線画像中に写る特定部位の位置を検出し、特定部位の動きを追跡するステップと、を備え、特定部位の動きを追跡するステップは、プロセッサが、呼吸の1周期を分割した複数の呼吸位相のうち、呼気相における最後の分割及び/又は吸気相における最初の分割を含むように予め設定された所定の呼吸位相における特定部位の第1テンプレート画像、または機械学習により所定の呼吸位相における特定部位を識別するように作成された識別器、を取得するステップと、プロセッサが、第1テンプレート画像または識別器を用いた画像認識によって、放射線画像中から、所定の呼吸位相における特定部位を検出するステップと、を含む。
【0015】
この第
3および第4の局面による放射線画像検出方法では、上記のように所定の呼吸位相における特定部位の画像に基づく画像認識によって、放射線画像中から、所定の呼吸位相における特定部位を検出するステップを設ける。これにより、予め所定の呼吸位相における特定部位の画像を取得しておけば、その呼吸位相における特定部位を放射線画像中から直接検出することができるので、所定の呼吸位相における特定部位を精度よく検出することができる。また、放射線画像から呼吸位相を把握できるので、被検体の外部に呼吸位相を検出するためのセンサを別途設けておく必要がない。これらによって、装置構成を複雑化することなく、所定の呼吸位相における特定部位を精度よく検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、装置構成を複雑化することなく、所定の呼吸位相における特定部位を精度よく検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(放射線撮影装置の構成)
図1〜
図3を参照して、本発明の一実施形態による放射線撮影装置100の構成について説明する。
【0020】
図1および
図2に示すように、放射線撮影装置100は、人体などの被検体Tの外側から放射線を照射することによって、被検体T内を画像化した放射線画像を撮影するための装置である。放射線画像は、被検体Tを透過する放射線を用いて撮像した被検体Tの画像である。本実施形態では、放射線撮影装置100は、放射線の一例であるX線を用いてX線画像を撮影するX線撮影装置である。X線画像は、放射線画像の一例である。
【0021】
本実施形態では、放射線撮影装置100は、放射線治療装置110と組み合わせて、放射線治療を行うための放射線治療システムを構成している。放射線治療装置110は、患者である被検体Tに放射線ビーム(治療ビーム)を照射することが可能である。放射線撮影装置100は、被検体TのX線画像から、特定部位50の位置を検出する。この場合、特定部位50は、治療対象となる腫瘍などであり、被検体Tの体内の一部位である。本実施形態の放射線撮影装置100は、肺や横隔膜などの呼吸に関わる器官の付近にある特定部位50を、特に好適に検出することができる。このような特定部位50は、被検体Tの呼吸に伴って、時間経過と共に周期的に移動する。放射線撮影装置100は、マーカーレス(X線透過性の低いマーカー部材を利用しないこと)で、X線画像から特定部位50の位置を画像認識により直接検出し、特定部位50の移動を追跡する動体追跡を行う。動体追跡によって特定部位50が放射線治療装置110の照射位置に移動したタイミングで放射線治療装置110から治療ビームを照射することにより、特定部位50(腫瘍)の治療が行われる。
【0022】
放射線治療装置110は、天板3上の被検体Tに対して、X線、陽子線あるいは重粒子線などの放射線ビームを照射可能である。放射線治療装置110は、基台111と、基台111に対して揺動可能に設置されたガントリー112と、ガントリー112に設けられ、治療ビームを出射するヘッド113とを備える。放射線治療装置110は、ガントリー112が基台111に対して揺動することにより、ヘッド113から照射される治療ビームの照射方向を変更することができる。放射線治療装置110は、被検体Tの腫瘍等の特定部位50に対して、様々な方向から治療ビームを照射することができる。
【0023】
放射線撮影装置100は、被検体Tに放射線(X線)を照射する照射部1と、被検体Tを透過した放射線(X線)を検出するX線検出部2とを備えている。照射部1とX線検出部2とは、被検体Tが載置される天板(検診台)3を挟んで対向するように対(ペア)で配置されている。放射線撮影装置100は、照射部1および天板3を制御する制御部4を備えている。X線検出部2は、特許請求の範囲の「放射線検出部」の一例である。
【0024】
照射部1とX線検出部2とのペアは、複数設けられている。本実施形態では、照射部1aとX線検出部2aとのペア、および、照射部1bとX線検出部2bとのペアの2組が設けられている。各ペアは、互いに異なる方向から被検体Tを撮像する第1撮像系と第2撮像系とを構成している。各撮像系から生成されたX線画像に基づいて、特定部位50(腫瘍)の3次元位置を特定することができる。天板3は、たとえば、直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)に移動可能で、かつ、各軸周りに回動可能であり、6軸方向に移動することができる。また、照射部1とX線検出部2とのペアは、水平面内で天板3の周囲に移動可能であってもよい。
【0025】
照射部1は、高電圧が印加されることによりX線を発生させるX線管を有する。照射部1は、制御部4に接続されている。制御部4は、管電圧、管電流およびX線照射の時間間隔などの予め設定された撮影条件に従って照射部1を制御し、照射部1からX線を発生させる。
【0026】
X線検出部2は、照射部1から照射され、被検体Tを透過したX線を検出し、検出したX線強度に応じた検出信号を出力する。X線検出部2は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)により構成されている。また、放射線撮影装置100は、X線検出部2からX線検出信号を取得して、X線画像30(
図4参照)を生成する画像処理部5を備えている。X線検出部2は、所定の解像度の検出信号を画像処理部5に出力する。
【0027】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されたコンピュータである。制御部4は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、放射線撮影装置100の各部を制御する制御部として機能する。制御部4は、照射部1および画像処理部5の制御や、天板3の移動制御を行う。放射線撮影装置100は、表示部6を備える。表示部6は、たとえば液晶ディスプレイなどのモニタである。制御部4は、画像処理部5により生成された画像を表示部6に表示させる制御を行うように構成されている。また、制御部4は、被検体Tの特定部位50に治療ビームを照射するための放射線治療装置110と接続されている。制御部4は、画像処理部5により検出された特定部位50が放射線治療装置110の照射位置に到達すると、放射線治療装置110にトリガー信号を出力するように構成されている。これにより、特定部位50に対する治療ビームの照射が高精度に行われる。
【0028】
画像処理部5は、たとえば、CPUあるいはGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ5aと、ROMおよびRAMなどの記憶部5bとを含んで構成されるコンピュータである。すなわち、画像処理部5は、記憶部5bに記憶された画像処理プログラム21(
図3参照)をプロセッサ5aに実行させることにより構成される。画像処理部5は、制御部4と同一のハードウェア(CPU)に画像処理プログラムを実行させることにより、制御部4と一体的に構成されてもよい。
【0029】
画像処理部5は、プロセッサ5aが画像処理プログラム21を実行することによる機能として、画像生成部11と、位置検出部12とを含む。画像生成部11と位置検出部12とが専用のプロセッサにより個別に構成されていてもよい。
【0030】
画像生成部11は、X線検出部2の検出信号に基づきX線画像30(
図4参照)を生成するように構成されている。本実施形態では、X線画像30は動画像の形式で生成されるX線透視画像である。すなわち、照射部1から被検体Tに対してX線が所定時間間隔で断続的に照射され、被検体Tを透過したX線がX線検出部2により順次検出される。画像生成部11は、X線検出部2から順次出力される検出信号を画像化することにより、X線画像30を所定のフレームレートで生成する。フレームレートは、たとえば15FPS〜30FPS程度である。画像生成部11は、生成したX線画像30を制御部4に出力する。X線画像30は、制御部4により表示部6に表示される。
【0031】
位置検出部12は、画像生成部11により生成されたX線画像30から被検体Tの特定部位50の位置を検出し、特定部位50の動きを追跡するように構成されている。本実施形態では、位置検出部12は、テンプレートマッチングを用いた画像認識により特定部位50を検出する。検出された特定部位50の位置情報は、制御部4に出力される。
【0032】
図3に示すように、記憶部5bは、コンピュータを画像処理部5として機能させるためのプログラム21(画像処理プログラム)を記憶している。また、記憶部5bは、画像生成部11により生成されたX線画像30を記憶する。
【0033】
記憶部5bは、特定部位50の検出を行うためのテンプレートデータ40と、治療計画データ22とを記憶している。テンプレートデータ40および治療計画データ22は、放射線治療に先立って予め作成される。治療計画データ22は、CT(Computed Tomography)撮影によって被検体Tの3次元CT撮影を時間経過と共に連続して実施することにより、作成された4次元CTデータを含む。治療計画データ22から、被検体Tにおける特定部位50の位置、大きさ、形状、移動範囲などが把握される。テンプレートデータ40は、治療計画データ22に基づいて作成された治療計画に従って、被検体Tにおける特定部位50を放射線撮影装置100によって事前に撮像することによって取得される。テンプレートデータ40は、後述するテンプレート画像(呼吸位相画像43)の集合である。テンプレート画像は、予め取得されたX線画像30から特定部位50を含む画像部分を切り出して取得された画像である。
【0034】
(特定部位の検出処理)
次に、
図4〜
図7を参照して、画像処理部による特定部位の検出処理について説明する。
【0035】
治療時には、被検体Tの特定部位50がX線画像30中に写るように、照射部1、X線検出部2および天板3の相対位置関係が調整される。
図4に示すように、画像生成部11によって生成されるX線画像30には、被検体Tの骨などの構造部分60や他の器官の像(図示せず)から構成される背景部分31と重なった状態で特定部位50が写る。特定部位50は、被検体Tの呼吸に伴って移動する。被検体Tの呼吸は、息を吸う吸気動作と息を吐き出す呼気動作との繰り返しとなるため、呼吸に伴う特定部位50の移動は、周期的な移動となる。特定部位50の移動経路は3次元的なものであるため、X線画像30の撮像方向によって、様々である。
【0036】
治療ビームの照射位置は、治療計画データ22に従って設定され、X線画像30中に所定の広さを持ったビーム照射範囲32として設定される。ビーム照射範囲32は、特定部位50以外への照射を減らすために、できるだけ特定部位50の形状に近い形状の領域として設定され、各種の誤差要因によるマージンを考慮して特定部位50よりも若干大きく設定される。
【0037】
特定部位50は背景部分31と同一の動きをするわけではないため、呼吸に伴って特定部位50が移動する場合には、X線画像30中で背景部分31に対する特定部位50の位置が変化する。また、呼吸による体内器官の移動は、肺の拡張および収縮などのように、器官の形状変化に伴って生じるものである。そのため、
図5に実線、破線、一点鎖線で互いに異なる輪郭形状として示したように、X線画像30中の特定部位50は、呼吸によって形状が変化する。したがって、特定部位50の状態は、たとえビーム照射範囲32内に収まった状態でも、どの呼吸位相にあるかによって、異なるものとなる。呼吸位相とは、呼吸周期における周期内のタイミング(時間位置)を意味する。
【0038】
そこで、本実施形態では、位置検出部12は、所定の呼吸位相における特定部位50の画像に基づく画像認識によって、X線画像30中から、所定の呼吸位相における特定部位50を検出するように構成されている。そして、制御部4は、位置検出部12により所定の呼吸位相の特定部位50が検出され、かつ、特定部位50の検出位置が所定のビーム照射範囲32内である場合に限り、治療ビームを照射するためのトリガー信号を放射線治療装置110に出力するように構成されている。この結果、特定部位50の呼吸位相および位置との両方が特定された状態で、放射線治療装置110による治療ビーム照射が可能となる。
【0039】
画像認識による特定部位50の検出は、記憶部5bに記憶されたテンプレート画像を用いたX線画像30とのテンプレートマッチングにより行われる。本実施形態では、所定の呼吸位相の特定部位50を識別するため、記憶部5b(
図3参照)には、所定の呼吸位相で生成された特定部位50の第1テンプレート画像41と、所定の呼吸位相以外の呼吸位相で生成された特定部位50の第2テンプレート画像42とが、それぞれ記憶されている。
【0040】
第1テンプレート画像41および第2テンプレート画像42は、異なる呼吸位相で撮影されたX線画像30から特定部位50の部分を切り出した画像である。そのため、第1テンプレート画像41および第2テンプレート画像42は、画像中の特定部位50の形状(
図5参照)、大きさまたは特定部位50と重畳して写る背景部分31(
図4参照)の少なくともいずれかが相違する画像である。
【0041】
図6に示すように、本実施形態では、記憶部5bには、呼吸の1周期をN分割(Nは2以上の自然数)した各々の呼吸位相における特定部位50のテンプレート画像であるN種類の呼吸位相画像43が記憶されている。
図6では、N=10として、1周期を10位相に分割した例を示している。1周期の呼吸動作は、まず、息を吸い込む吸気相と、息を吐き出す呼気相とに大別できる。
図6では、吸気相を5つの呼吸位相In1〜In5に分割し、呼気相を5つの呼吸位相Ex1〜Ex5に分割している。そして、これらの呼吸位相毎に、呼吸位相画像43が複数枚ずつ記憶されている。テンプレートマッチングに際しては、同一の呼吸位相における複数の呼吸位相画像43から、1枚の平均画像(テンプレート)が作成され、平均画像を用いてマッチングが行われる。
【0042】
この場合、第1テンプレート画像41は、N分割された呼吸位相のうちから選択された1または複数の呼吸位相における呼吸位相画像43であり、第2テンプレート画像42は、第1テンプレート画像41以外の呼吸位相における呼吸位相画像43である。
【0043】
図6の例では、10種類(10位相)の呼吸位相画像43のうち、呼気相の終期の呼吸位相Ex5および吸気相の初期の呼吸位相In1の各呼吸位相画像43が、第1テンプレート画像41として設定されている。1周期の呼吸動作のうち、息の吐き終わり(呼吸位相Ex5)と息の吸い始め(呼吸位相In1)との間が、最も位置変動(肺などの変位)が少なく特定部位50の位置が安定するためである。そのため、ビーム照射範囲32(
図4参照)は、呼吸位相Ex5および呼吸位相In1における特定部位50の位置に合わせて設定されている。
【0044】
10種類(10位相)の呼吸位相画像43のうち、残りの8位相(In2〜In5、Ex1〜Ex4)の各呼吸位相画像43が、第2テンプレート画像42として設定されている。
【0045】
位置検出部12は、画像生成部11により生成されたX線画像30と、第1テンプレート画像41および第2テンプレート画像42の各々とのマッチングにより、所定の呼吸位相における特定部位50を検出するように構成されている。位置検出部12は、特定部位50の検出に際して、X線画像30と第1テンプレート画像41とのマッチング結果(スコア値)と、X線画像30と第2テンプレート画像42とのマッチング結果(スコア値)とをそれぞれ算出する。位置検出部12は、各スコア値を比較することにより、所定の呼吸位相における特定部位50を検出する。
【0046】
具体的には、
図7に示すように、位置検出部12は、画像生成部11により生成されたX線画像30に設定した検出窓30a内の画像部分と、各テンプレート画像(呼吸位相画像43)とのスコア値を算出する。スコア値は、検出窓30a内の画像部分と、テンプレート画像との類似度を表し、たとえば各々の画像の対応画素同士の画素値の差の2乗和などにより定義される。
【0047】
位置検出部12は、検出窓30aを移動させて、順次、スコア値を算出する。この際、治療計画データ22から、予め特定部位50が移動する推定範囲は分かっているため、検出窓30aの移動範囲は、X線画像30の一部に限定される。検出窓30aの移動範囲は、たとえば特定部位50が移動する推定範囲に、所定のマージンを加えた範囲として設定される。
【0048】
位置検出部12は、たとえば、検出窓30aの移動範囲内で算出したスコア値のうちで最大値を有する位置を、特定部位50の検出位置として出力する。このとき、第1テンプレート画像41および第2テンプレート画像42の各々を用いてマッチングすることにより、それぞれのテンプレート画像に対するスコア値が検出される。位置検出部12は、第1テンプレート画像41のスコア値が第2テンプレート画像42のスコア値よりも大きい場合(第1テンプレート画像41のスコア最大値が全てのテンプレート画像のスコア値のうちで最大になる場合)に、第1テンプレート画像41のスコア最大値が算出された位置を所定の呼吸位相における特定部位50の検出位置として出力する。
【0049】
なお、本実施形態では、位置検出部12は、N種類の呼吸位相画像43の各々を用いて、X線画像30とのマッチングを行うことにより、特定部位50を検出するように構成されている。したがって、
図7の場合、位置検出部12は、検出窓30aの画像部分に対して、10種類の呼吸位相画像43とのマッチングにより10種類のスコア値を算出する。その結果、検出窓30aの探索が終了すると、呼吸位相In1〜In5、Ex1〜Ex5の各々の呼吸位相画像43について、それぞれ最大スコア値Sm(In1)〜Sm(In5)、Sm(Ex1)〜Sm(Ex5)が得られる。位置検出部12は、10種類の最大スコア値Smのうちの最も大きい値(maxSm)を採用し、その呼吸位相画像43の呼吸位相をX線画像30の呼吸位相として決定するとともに、最大スコア値が得られたときの検出窓30aの位置を、特定部位50の検出位置とする。
【0050】
たとえば
図6において、あるX線画像30に対してマッチングを行ったとき、各呼吸位相画像43についての最大スコア値Sm(In1)〜Sm(In5)、Sm(Ex1)〜Sm(Ex5)のうちで、最大スコア値Sm(Ex5)が最大(maxSm)になったとする。その場合、位置検出部12は、呼吸位相(Ex5)の呼吸位相画像43の最大スコア値Sm(Ex5)が算出された際の検出窓30aの位置を、そのX線画像30における特定部位50の検出位置として決定する。また、位置検出部12は、最大スコア値Sm(Ex5)が算出された呼吸位相(Ex5)を、そのX線画像30(特定部位50)が取得されたときの呼吸位相であると決定する。
【0051】
したがって、本実施形態では、位置検出部12は、今回取得されたX線画像30について、所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)か、所定の呼吸位相以外か、を検出するだけでなく、どの呼吸位相におけるX線画像30か(In1〜In5、Ex1〜Ex5のどの状態のX線画像か)を検出するように構成されている。
【0052】
特定部位50の検出位置は、制御部4(
図1参照)に出力される。位置検出部12は、放射線治療中に所定のフレームレートで生成されるX線画像30の各々についてマッチング処理を行う。制御部4は、取得されたX線画像30に、特定部位50の検出位置を表す識別表示を重畳して、表示部6に表示する。識別表示としては、たとえば
図4に示したような、特定部位50の輪郭を示す線などである。制御部4は、新たなX線画像30および新たな検出位置を画像処理部5から取得する度に、表示部6を更新表示させ、リアルタイムの動画像形式でX線画像30および検出位置を表示させる。
【0053】
(放射線撮影装置の処理動作)
次に、
図8を参照して、放射線撮影装置100の処理動作について説明する。各ステップの処理は、基本的には画像処理部5(画像生成部11および位置検出部12)と制御部4との協働により実施される。
図8では、治療前の準備処理として、呼吸位相毎のテンプレート画像(呼吸位相画像43)を作成するための処理(ステップS1、S2)と、治療中の特定部位50の追跡処理およびトリガー信号出力処理(ステップS3〜S8)とを示している。
【0054】
ステップS1において、画像処理部5が、X線画像30を取得する。すなわち、治療前の準備として、事前にX線画像30が撮像される。被検体Tの呼吸位相毎の特定部位50の画像が得られるように、X線画像30は、1周期以上の所定の期間にわたって複数枚撮像される。
【0055】
ステップS2において、X線画像30中から特定部位50を含む領域が切り出されることにより、呼吸位相画像43が取得される。すなわち、ステップS1において取得された複数のX線画像30が、呼吸位相毎に10種類に分類され、トリミングされることにより、呼吸位相が異なる10種類の呼吸位相画像43が作成される。呼吸位相画像43は、画像処理部5が切り出し処理をして作成してもよいし、別途作成された呼吸位相画像43が図示しないネットワークあるいは記録媒体から読み出されてもよい。
【0056】
作成された10位相の呼吸位相画像43は、記憶部5bに記憶される。呼吸位相画像43のうち、所定の呼吸位相(Ex5およびIn1)が第1テンプレート画像41であり、所定の呼吸位相以外の位相(In2〜In5、Ex1〜Ex4)が第2テンプレート画像42である。
【0057】
以降のステップS3〜S8が、放射線治療時の処理である。ステップS3において、画像処理部5が、X線画像30を取得する。すなわち、照射部1が被検体Tに放射線を照射し、X線検出部2が被検体Tを透過した放射線を検出して、X線検出部2からの検出信号に基づいて、画像生成部11がX線画像30を生成する。X線画像30は、位置検出部12および制御部4に出力される。
【0058】
ステップS4において、画像処理部5が、マッチング処理を実施する。すなわち、位置検出部12が、各テンプレート画像(呼吸位相画像43)と、画像生成部11により生成されたX線画像30とを用いたマッチングを行う。位置検出部12は、検出窓30aを移動させて、X線画像30中の各位置において、呼吸位相画像43の各々のスコア値を算出する。そして、位置検出部12が、10種類の呼吸位相画像43のうちで最大のスコア値(maxSm)が算出された検出窓30aの位置を、特定部位50の位置として検出する。また、最大のスコア値(maxSm)を示した呼吸位相画像43の呼吸位相を、そのX線画像30の呼吸位相として決定する。なお、照射部1とX線検出部2とのペアが2組設けられているため、特定部位50の検出は、それぞれのX線画像30について行われる。
【0059】
ステップS5において、画像処理部5が、各X線画像30において検出した呼吸位相および特定部位50の検出位置を、制御部4に出力する。制御部4は、各X線画像30における特定部位50の検出位置に基づいて、特定部位50の3次元位置を取得する。制御部4は、今回取得されたX線画像30に、特定部位50の検出位置を示す識別表示を重ねて表示部6に表示(更新表示)する。
【0060】
ステップS6において、制御部4が、放射線治療装置110による治療ビームの照射タイミングか否かを判断する。すなわち、制御部4は、今回取得された特定部位50の3次元位置が、治療計画によって予め設定されたビーム照射範囲32に含まれるか否かを判断する。また、制御部4は、今回検出された呼吸位相が、所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)に該当するかどうかを判断する。
【0061】
所定の呼吸位相の特定部位50が検出され、かつ、特定部位50の検出位置が所定のビーム照射範囲32内である場合、制御部4は、ステップS7において、放射線治療装置110にトリガー信号を出力する。特定部位50がビーム照射範囲32からずれている場合、または、所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)でない場合は、制御部4は、トリガー信号を出力せずに、ステップS8に処理を進める。
【0062】
ステップS8において、制御部4が、放射線治療を終了するか否かを判断する。放射線治療が継続して行われる場合、ステップS3〜S8の各処理が繰り返し実行されることにより、特定部位50の追跡が行われる。今回の放射線治療が完了した場合には、検出処理および放射線治療に関する制御が終了する。
【0063】
(本実施形態の作用)
以上の検出動作の結果、
図9に示すように、時間経過に伴う特定部位50の検出位置と呼吸位相とが、位置検出部12によって検出される。
図9は、横軸に時間をとり、縦軸に特定部位50の検出位置をとって、時間経過(呼吸)に伴う特定部位50の位置変動を示したものである。吸い込み時(吸気相)では、検出位置が
図9の下側に向かって移動し、吐き出し時(呼気相)では、検出位置が
図9の上側に向かって移動する。
図9においてハッチングを付して示した帯状領域が、ビーム照射範囲32である。
【0064】
ここで、放射線治療は、一般に、所定の期間(1週間など)毎に複数回に分けて実施される。たとえば1回目の放射線治療では、検出位置が
図9中の実線部のように変動する場合でも、K回目(12回目など)の放射線治療では、
図9中の一点鎖線部のように、1回目とは異なる位置で特定部位50が検出される場合が少なくない。呼吸位相を考慮せずに特定部位50の検出位置のみに基づいてビーム照射を行う場合には、1回目の放射線治療では、呼気相終期から吸気相初期(Ex3〜In3)でビーム照射が行われるのに対して、K回目の治療(一点鎖線部)では吸気相終期から呼気相初期(In4〜Ex2)で行われることになる。ビーム照射時の呼吸位相が異なる場合には、放射線ビームの飛程などの相違に起因して、特定部位50における放射線の線量分布が変化するため、特定部位50の検出位置のみに基づいてビーム照射を行う場合には、治療計画通りの線量分布が得られない可能性がある。
【0065】
これに対して、本実施形態の場合、K回目(一点鎖線部)の放射線治療では、特定部位50の検出位置がビーム照射範囲32内に入った場合(In4〜Ex2)でも、呼吸位相が所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)とは異なることから、ビーム照射は行われない。そのため、放射線治療の際に、1回目の放射線治療と同様の状況で照射線治療が行われるように、適切な位置合わせが実施されることになる。医師等により位置合わせが実施されれば、治療計画通りの線量分布で放射線治療を行えるようになる。
【0066】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態では、上記のように、所定の呼吸位相(Ex5およびIn1)における特定部位50の画像に基づく画像認識によって、X線画像30中から、所定の呼吸位相(Ex5およびIn1)における特定部位50を検出するように位置検出部12を構成する。これにより、予め所定の呼吸位相(Ex5およびIn1)における特定部位50の画像を取得しておけば、その画像に基づいて、所定の呼吸位相における特定部位50をX線画像30中から直接検出することができる。そのため、体表面の動きから呼吸位相を検出する場合と比較して、所定の呼吸位相における特定部位50を精度よく検出することができる。また、X線画像30から呼吸位相を把握できるので、被検体の外部に呼吸位相を検出するためのセンサを別途設けておく必要がない。これらによって、装置構成を複雑化することなく、所定の呼吸位相における特定部位50を精度よく検出することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、所定の呼吸位相(Ex5およびIn1)で生成された特定部位50の第1テンプレート画像41と、所定の呼吸位相以外の呼吸位相で生成された特定部位50の第2テンプレート画像42と、を記憶部5bにそれぞれ記憶させる。そして、位置検出部12を、画像生成部11により生成されたX線画像30と、第1テンプレート画像41および第2テンプレート画像42の各々とのマッチングにより、所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)における特定部位50を検出するように構成する。これにより、第1テンプレート画像41でのスコア値が第2テンプレート画像42でのスコア値よりも高くなる場合に、所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)の特定部位50を検出することができる。その結果、第1テンプレート画像41および第2テンプレート画像42とのマッチング結果を比較するだけで、容易かつ高精度に、所定の呼吸位相における特定部位50を検出することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、第1テンプレート画像41および第2テンプレート画像42は、画像中の特定部位50の形状、大きさまたは特定部位50と重畳して写る背景部分31の少なくともいずれかが相違する画像である。このように第1テンプレート画像41および第2テンプレート画像42が呼吸位相の相違に起因して異なることから、第1テンプレート画像41および第2テンプレート画像42とのマッチング結果を比較するだけで、所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)の特定部位50の画像であるか否かを精度よく識別することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、記憶部5bには、呼吸の1周期をN分割(N=10)した各々の呼吸位相(In1〜In5、Ex1〜Ex5)における特定部位50のテンプレート画像であるN種類の呼吸位相画像43を記憶させる。第1テンプレート画像41を、N分割された呼吸位相のうちから選択された1または複数の呼吸位相(Ex5またはIn1)における呼吸位相画像43とし、第2テンプレート画像42を、第1テンプレート画像41以外の呼吸位相における呼吸位相画像43とする。そして、N種類の呼吸位相画像43の各々を用いて、X線画像30とのマッチングを行うことにより、特定部位50を検出するように位置検出部12を構成する。これにより、呼吸の1周期を区分する呼吸位相毎に、テンプレート画像(呼吸位相画像43)を個別に用意することができる。この場合、様々な呼吸位相における特定部位50の画像からテンプレート画像を作成する場合と比べて、各呼吸位相画像43がそれぞれの呼吸位相における特定部位50の状態をより正確に反映するため、呼吸位相毎の特定部位50のマッチング精度を向上させることができる。その結果、所定の呼吸位相(Ex5およびIn1)を含むそれぞれの呼吸位相での特定部位50の検出精度を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4を、位置検出部12により所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)の特定部位50が検出され、かつ、特定部位50の検出位置が所定のビーム照射範囲32内である場合に限り、治療ビームを照射するためのトリガー信号を放射線治療装置110に出力するように構成する。これにより、特定部位50がビーム照射範囲32内に存在する条件下で、所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)でのみ治療ビーム照射を実施させることができるので、より治療計画に沿った照射線量分布での治療が可能となる。
【0072】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0073】
たとえば、上記実施形態では、位置検出部12が、動画像の形式のX線画像30について、フレーム毎に特定部位50の検出を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、動画像でフレームレートが大きい場合などには、フレーム毎ではなく、複数フレームに対して1回の割合で特定部位の検出を行ってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、放射線撮影装置の一例として、X線を用いてX線画像30を撮影するX線撮影装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、X線以外の放射線を用いて撮影を行う装置に適用してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、1周期をN区分した各呼吸位相を、対応する呼吸位相画像43を用いて検出した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、呼吸位相毎の呼吸位相画像43を用いなくてもよい。すなわち、少なくとも、所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)に該当するか、所定の呼吸位相には該当しないかが検出できればよい。そのためには、所定の呼吸位相の特定部位50の画像からなる第1テンプレート画像41と、所定の呼吸位相以外の特定部位50の画像からなる第2テンプレート画像42とを比較するだけでよい。したがって、所定の呼吸位相(Ex5またはIn1)の呼吸位相画像43をまとめて1つの平均画像を作成して第1テンプレート画像41とし、残りの8位相(In2〜In5、Ex1〜Ex4)の各呼吸位相画像43をまとめて1つの平均画像を作成して第2テンプレート画像42としてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、呼吸の1周期をN分割した例として、N=10とした例を示したが、本発明はこれに限られない。呼吸位相の数Nは、10以外でもよい。呼気相と吸気相とで、異なる数の呼吸位相が設定されていてもよい。その場合、呼吸位相は、1周期を等分割して設定される必要はない。たとえば、第2テンプレート画像42に割り当てられる呼吸位相In2〜In5およびEx1〜Ex4については、8つの呼吸位相ではなく、2つまたは3つの呼吸位相のみを設定してもよい。また、たとえば、照射タイミング近傍(Ex4、Ex5、In1、In2)の呼吸位相について、より細分化して5つ以上の呼吸位相を設定してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、位置検出部12が、テンプレート画像(第1テンプレート画像41、第2テンプレート画像42、呼吸位相画像43)を用いたテンプレートマッチングにより、特定部位50の検出を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置検出部12が、機械学習による識別器を用いて、所定の呼吸位相の特定部位50と、所定の呼吸位相以外の特定部位50とを識別してもよい。たとえば、
図7において、各呼吸位相画像43からなるテンプレートの代わりに、各呼吸位相画像43を教師画像として用いて機械学習を行った識別器を作成し、位置検出部12が各識別器を用いて検出窓30aの画像の画像認識を行う。これにより、呼吸位相画像43に対応する特定部位50であるか否かのスコア値が、識別器毎に取得できる。そのため、X線画像30において最大のスコア値を示した識別器による検出位置を採用し、その識別器が学習した呼吸位相画像43の呼吸位相を、そのX線画像30(特定部位50)の呼吸位相であると決定できる。識別器は、SVM(サポートベクターマシーン)、ニューラルネットワーク、Haar−Like特徴量を用いたAdaBoostなど、どのような手法で構成されていてもよい。機械学習による識別器を用いる場合、記憶部5bには、機械学習の学習結果データとして、学習済みの各識別器のデータが記憶される。
【0078】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、画像処理部の処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理部の処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。