【実施例】
【0059】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実験例(example)を提示する。ただし、下記の実験は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明が下記の実験例によって限定されるものではない。
【0060】
以下で用いられる構造誘導物質はSDAと表記する。
【0061】
<製造例1:ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(SDA1)を用いたゼオライトの製造>
蒸留水にNaOHを溶解させた後、アルミニウム酸化物及びシリカを含むゼオライトUSY(このとき、SiO
2/Al
2O
3のモル比=30)を添加し、均一溶液になるまで混合して混合溶液を調製した。ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(SDA1)を前記混合溶液に添加した後、均一溶液になるまで混合して、次のようなモル比の組成を有する水和ゲルを製造した。
SiO
2:NaOH:SDA1:H
2O=1:0.2:0.2:22.62
【0062】
前記水和ゲルを、140℃にて20rpm〜60rpmで回転しながら4日〜10日間水熱合成した後、遠心分離して試料を回収した。
【0063】
<製造例2:ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(SDA2)を用いたゼオライトの製造>
蒸留水にNaOHを溶解させた後、アルミニウム酸化物及びシリカを含むゼオライトUSY(このとき、SiO
2/Al
2O
3のモル比=30)を添加し、均一溶液になるまで混合して混合溶液を調製した。ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(SDA2)を前記混合溶液に添加した後、均一溶液になるまで混合して、次のようなモル比の組成を有する水和ゲルを製造した。
SiO
2:NaOH:SDA2:H
2O=1:0.4:0.4:22.62
【0064】
前記水和ゲルを、140℃にて20rpm〜60rpmで回転しながら4日〜10日間水熱合成した後、遠心分離して試料を回収した。
【0065】
<製造例3:ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(SDA3)を用いたゼオライトの製造>
蒸留水にNaOHを溶解させた後、アルミニウム酸化物及びシリカを含むゼオライトUSY(このとき、SiO
2/Al
2O
3のモル比=30)を添加し、均一溶液になるまで混合して混合溶液を調製した。ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(SDA3)を前記混合溶液に添加した後、均一溶液になるまで混合して、次のようなモル比の組成を有する水和ゲルを製造した。
SiO
2:NaOH:SDA3:H
2O=1:0.4:0.4:22.62
【0066】
前記水和ゲルを、140℃にて20rpm〜60rpmで回転しながら4日〜10日間水熱合成した後、遠心分離して試料を回収した。
【0067】
<製造例4:ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(SDA1)及びベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド(SDA4)を用いたゼオライトの製造>
蒸留水にNaOHを溶解させた後、アルミニウム酸化物及びシリカを含むゼオライトUSY(このとき、SiO
2/Al
2O
3のモル比=30)を添加し、均一溶液になるまで混合して混合溶液を調製した。ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(SDA1)及びベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド(SDA4)を前記混合溶液に添加した後、均一溶液になるまで混合して、次のようなモル比の組成を有する水和ゲルを製造した。
SiO
2:NaOH:SDA1:SDA4:H
2O
=1:0.2:0.2:0.01:22.62
【0068】
前記水和ゲルを、140℃にて20rpm〜60rpmで回転しながら4日〜10日間水熱合成した後、遠心分離して試料を回収した。
【0069】
<製造例5:ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(SDA1)及びNa
2SO
4を用いたゼオライトの製造>
蒸留水にNaOHを溶解させた後、アルミニウム酸化物及びシリカを含むゼオライトUSY(このとき、SiO
2/Al
2O
3のモル比=30)を添加し、均一溶液になるまで混合して混合溶液を調製した。ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(SDA1)及びNa
2SO
4を前記混合溶液に添加した後、均一溶液になるまで混合して、次のようなモル比の組成を有する水和ゲルを製造した。
SiO
2:NaOH:SDA1:H
2O:Na
2SO
4
=1:0.2:0.2:22.62:0.1
【0070】
前記水和ゲルを、140℃にて20rpm〜60rpmで回転しながら1日〜4日間水熱合成した後、遠心分離して試料を回収した。
【0071】
<製造例6:SiO
2/Al
2O
3のモル比が500であるゼオライトUSYを用いたゼオライトの製造>
蒸留水にNaOHを溶解させた後、アルミニウム酸化物及びシリカを含むゼオライトUSY(このとき、SiO
2/Al
2O
3のモル比=500)を添加し、均一溶液になるまで混合して混合溶液を調製した。ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(SDA1)を前記混合溶液に添加した後、均一溶液になるまで混合して、次のようなモル比の組成を有する水和ゲルを製造した。
SiO
2:NaOH:SDA1:H
2O=1:0.3:0.2:22.62
【0072】
前記水和ゲルを、140℃にて20rpm〜60rpmで回転しながら4日〜10日間水熱合成した後、遠心分離して試料を回収した。
【0073】
下記表1に、前記製造例1〜6で用いられた混合物の組成を纏めた。
【0074】
【表1】
【0075】
<比較例>
常用化されたSSZ−13形態のゼオライトとして、N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウム水酸化物を含んだ水和ゲルを、水熱合成して製造した。
【0076】
図2は、前記製造例1及び比較例のゼオライトのXRDパターン並びに
29Si−NMRスペクトルを示した図である。
【0077】
図2を参照すると、SiO
2/Al
2O
3のモル比が30であるゼオライトUSYを用いた場合、SSZ−13(Standard Oil Synthetic Zeolite−13)形態のゼオライトが製造されたことが分かる。
【0078】
また、
図2の(a)を参照すると、高価なアダマンタン系列の構造誘導物質を用いなくとも、結晶性に優れたSSZ−13形態のゼオライトが製造されたことが確認できる。
【0079】
図2の(b)を参照すると、製造例1の製造過程を通じてSi/Alのモル比が大きいSSZ−13形態のゼオライトが製造されたことが確認できる。
【0080】
したがって、原料のSiO
2/Al
2O
3のモル比が5〜600である場合、SSZ−13形態のゼオライトが製造されることが確認できる。
【0081】
このように、アダマンタン系列の構造誘導物質ではないベンジル基を含む構造誘導物質を用いることで、相対的に高価なアダマンタン系列の構造誘導物質が不必要となるので、原資材費用が節減され、工程時間も短縮されて、水熱合成に所与される費用が減少する等の効果が得られる。
【0082】
図3は、比較例、製造例1、及び製造例4のゼオライトのSEMイメージである。
【0083】
図3の(a)を参照すると、既存のSSZ−13ゼオライトは、1μm以上の平均粒子直径を有することが確認できる。
【0084】
図3の(b)を参照すると、製造例1で製造されたゼオライトは、ナノサイズの粒子直径を有するもので、特に、0.2μm〜0.5μmの平均粒子直径を有することが確認できる。すなわち、製造例1によって、粒子サイズが小さいゼオライトが製造されたことが分かる。
【0085】
図3の(c)を参照すると、製造例4で製造されたゼオライトは、0.2μm〜1.0μmの平均粒子直径を有することが確認できる。すなわち、分子鎖が長いベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムを添加することで、マイクロ細孔とメソ細孔とを同時に有するゼオライトが製造されたことが分かる。
【0086】
したがって、炭素数8〜炭素数20のアルキル基を有するベンジル基を含む第2構造誘導物質を追加で用いることで、マイクロ細孔とメソ細孔とを同時に有するゼオライトを製造することができる。それによって、反応物の拡散が容易になり、多様な触媒反応に適用できることを確認することができる。
【0087】
図4は、製造例1、製造例2、製造例3、製造例4、及び製造例5のゼオライトのXRDパターンである。
【0088】
図4を参照すると、製造例1、製造例2、製造例3、製造例4、及び製造例5で製造されたゼオライトは、全てSSZ−13構造であることが分かる。
【0089】
したがって、本発明の好ましい実施例によって、ベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物、ベンジルトリエチルアンモニウム水酸化物、ベンジルトリプロピルアンモニウム水酸化物、ベンジルトリブチルアンモニウム水酸化物、ベンジルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、ベンジルトリエチルアンモニウムハロゲン化物、ベンジルトリプロピルアンモニウムハロゲン化物、及びベンジルトリブチルアンモニウムハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも1種の構造誘導物質を用いてゼオライトを製造する場合、同一の構造を有するゼオライトが製造されることが分かる。
【0090】
一方、製造例5で、Na
2SO
4を水和ゲルに添加することで、1日〜4日間の水熱合成だけでも、4日〜10日間水熱合成したゼオライトと同一の構造を有するゼオライトを製造できることが分かる。
【0091】
したがって、硫酸イオンを含む化合物をさらに含む場合、水熱反応速度が高くなってゼオライトの合成時間が短くなり、それによって、工程時間が短縮され得る。
【0092】
図5は、製造例6のゼオライトのXRDパターン及びSEMイメージである。
【0093】
図5の(a)及び
図5の(b)を参照すると、SiO
2/Al
2O
3のモル比が500であるゼオライトUSYを用いた場合、BEA(Zeolite Beta)形態のゼオライトが製造されたことが分かる。
【0094】
したがって、ゼオライトUSYのSiO
2/Al
2O
3のモル比が特定数値である場合、SSZ−13形態のゼオライト以外に他の形態のゼオライトが製造され得ることを確認することができる。一実施例で、SiO
2/Al
2O
3のモル比が490〜510である原料で製造されたゼオライトは、BEA(Zeolite Beta)形態であることが分かる。
【0095】
図6は、比較例及び製造例1のゼオライトにそれぞれ銅が担持された銅担持ゼオライトのXRDパターンである。
【0096】
具体的に、製造例1で製造されたゼオライト及び比較例のゼオライトに銅を担持させた後、750℃及び900℃でそれぞれ水熱処理(Hydrothermal Aging、HTA)し、水熱処理されていない銅担持ゼオライト(fresh)とともにXRDパターンを確認した。
【0097】
図6の(a)を参照すると、銅が担持された比較例、すなわち、既存のCu−SSZ−13の場合、900℃の水熱処理過程を経ると、ゼオライトピークが消えて石英ピークが現われることが分かる。
【0098】
図6の(b)を参照すると、銅が担持された製造例1、すなわち、本発明のCu−SSZ−13の場合、900℃の水熱処理過程を経た後も、ゼオライトピークが消えないことが分かる。
【0099】
したがって、本発明の実施例によって製造されたゼオライトは、Si/Alのモル比が10〜100であり、アルミニウムの含量が少なく、水熱安定性に優れ、既存のゼオライトの構造的破壊が始まる温度である750℃以上の水熱処理工程でも、ゼオライトの構造的変化が起きないことが確認できる。また、既存のゼオライトの構造が完全に破壊される温度である900℃でも、ゼオライト特性ピークが維持されていることが確認できる。
【0100】
図7は、比較例及び製造例1のゼオライトにそれぞれ銅が担持された銅担持ゼオライトに水熱処理を行った後のイメージである。
【0101】
具体的に、製造例1で製造されたゼオライト及び比較例のゼオライトに銅を担持させた後、900℃で水熱処理した状態を示した。
【0102】
図7の(a)及び
図7の(b)を参照すると、銅が担持された比較例(既存のCu−SSZ−13)の場合、900℃で水熱処理に供すると、肉眼でも区分できる程度にゼオライトの特性を失うが。一方、銅が担持された製造例1(本発明のCu−SSZ−13)の場合、900℃で水熱処理した後も銅担持されたゼオライト特有の青色を帯びることが分かる。
【0103】
したがって、既存のゼオライトの構造が完全に破壊される温度である900℃でも、ゼオライトの特徴が維持されることが確認できる。
【0104】
図8は、比較例及び製造例1のゼオライトにそれぞれ銅が担持された銅担持ゼオライトのSCR反応活性を示したグラフである。
【0105】
具体的に、製造例1で製造されたゼオライト及び比較例のゼオライトに銅を担持させた後、750℃又は900℃で水熱処理(HTA)し、水熱処理しない銅担持ゼオライト(fresh)と比較した。
【0106】
図8の(a)を参照すると、銅が担持された比較例(既存のCu−SSZ−13)の場合、750℃で水熱処理(HTA)すると、SCR反応活性が少し低くなり、900℃で水熱処理すると、SCR反応活性を失う。
【0107】
一方、
図8の(b)を参照すると、銅が担持された製造例1(既存のCu−SSZ−13)の場合、750℃で水熱処理(HTA)しても、SCR反応活性に変化がなく、900℃で水熱処理しても、SCR反応活性が比較的高く維持されることが分かる。
【0108】
したがって、本発明のゼオライトは、750℃以上の水熱処理工程でもゼオライトの構造的変化が起きないので、銅が担持されたSSZ−13形態のゼオライト(Cu−SSZ−13)を製造して、既存の銅が担持されたSSZ−13形態のゼオライトが変形される温度である750℃以上の温度で、SCR触媒として用いられ得ることが確認できる。
【0109】
具体的に、本発明の一実施例による銅が担持されたSSZ−13(Cu−SSZ−13)形態のゼオライトは、既存の銅が担持されたSSZ−13形態のゼオライトがSCR反応活性を失い始める750℃以上の温度から、SCR反応活性を完全に喪失する900℃の温度まで、SCR触媒として用いられ得ることが確認できる。
【0110】
上述したように、本発明は、低価格のベンジル基を含む構造誘導物質(SDA)を用いたゼオライトの製造方法に関するものであり、それによって、原資材費用の減少、工程費用の減少等の効果を得ることができる。
【0111】
また、アルミニウム酸化物及びシリカを含む原料のSiO
2/Al
2O
3のモル比を調節して、多様な形態のゼオライトを製造することができ、第2構造誘導物質及び硫酸イオンを含んだ化合物等の添加による追加的な効果を得ることもできる。
【0112】
一方、既存のゼオライトは、750℃以上の高温で熱処理すると、結晶構造が崩壊されてゼオライトの特性を失う。一方、本発明で製造したゼオライトは、水熱安定性及び触媒活性が遥かに向上した。これを確認するために、10%のH
2Oを含有した空気状態にて900℃で水熱処理した後に、物性を測定した。特に、ゼオライトの微細細孔の維持可否を示す比表面積と、自動車の排気ガスの有害成分であるNOxを除去するための選択的触媒還元反応の活性を調査した。