(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記の試薬チップを回転させることにより発生する遠心力で、試薬チップの液体試料貯留部から流路に搬入された液体試料を試薬反応室に搬送させる液体試料搬送方法であって、
前記試薬チップは、下記を備えており、
搬入孔から搬入された液体試料を貯留可能な液体試料貯留部、
試薬を収納しており、前記液体試料と当該試薬を反応させるための試薬反応室、
前記液体試料貯留部と前記試薬反応室とを連結する第1の流路、
前記試薬反応室と外部連絡空気孔とを連結する第2の流路、
前記液体試料貯留部は、前記試薬反応室と外部連絡空気孔を結んだ直線から外れた位置に配置され、これにより、前記第2の流路は前記第1の流路によって、前記第1の流路の途中から分岐され、かつ、かかる分岐位置から前記試薬反応室までの前記第2の流路は前記第1の流路と共用されており、
前記液体試料貯留部に搬入された液体試料が、前記第2の流路における分岐点まで搬入されることにより、前記試薬反応室および前記第1の流路と前記第2の流路の共用流路内に空気の閉空間が形成された状態で、前記閉空間内の空気と前記液体試料との入れ替わる程度の遠心力を発生させることにより、前記試薬反応室内に前記液体試料を導くとともに、前記閉空間内の空気を前記外部連絡空気孔から外部に放出すること、
を特徴とする液体試料搬送方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2007-278741号公報に記載された方法は、以下のような問題があった。
【0005】
試薬チャンバー24に狙った量の液体試料を搬入する制御が困難である。また、与える遠心力が大きすぎると、試薬チャンバー24/測定チャンバー25から流路29へ液体試料が流出してしまうおそれがある。これは、試薬チャンバー24/測定チャンバー25の遠心力外側方向に伸びている流路29が存在し、かつ、その端部に空気穴29aがあるからである。
【0006】
本発明は、液体試料を試薬反応室から流出させることなく、試薬反応室内に導くことのできる試薬チップまたは液体試料搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明にかかる液体試料搬送方法は、下記の試薬チップを回転させることにより発生する遠心力で、試薬チップの液体試料貯留部から流路に搬入された液体試料を試薬反応室に搬送させる液体試料搬送方法であって、前記試薬チップは、下記を備えており、搬入孔から搬入された液体試料を貯留可能な液体試料貯留部、試薬を収納しており、前記液体試料と当該試薬を反応させるための試薬反応室、前記液体試料貯留部と前記試薬反応室とを連結する第1の流路、前記試薬反応室と外部連絡空気孔とを連結する第2の流路、前記液体試料貯留部に搬入された液体試料が前記第1の流路の途中まで搬入され、これにより、前記試薬反応室および前記第1の流路内に空気の閉空間が形成された状態で、前記閉空間内の空気と前記液体試料との入れ替わる程度の遠心力を発生させることにより、前記試薬反応室内に前記液体試料を導くとともに、前記閉空間内の空気を前記空気孔から外部に放出する。
【0008】
したがって、前記分岐位置から前記試薬反応室までを閉空間とできるとともに、前記試薬チップを回転によって生ずる遠心力が閾値をこえると、前記閉空間内の空気と前記液体試料を入れ替えることができる。
【0009】
(2)本発明にかかる液体試料搬送方法においては、流体移動力により前記液体試料貯留部から流路への前記液体試料が搬入される。かかる流体移動力により流路へ前記液体試料を搬入することができる。
【0010】
(3)本発明にかかる液体試料搬送方法においては、前記流体移動力は、前記試薬チップを回転させることにより生ずる、閉空間内の空気と前記液体試料との入れ替わる程度の遠心力よりも小さな遠心力である。したがって、2段階の遠心力を与えるだけで、上記前記閉空間内の空気と前記液体試料を入れ替えることができる。
【0011】
(4)本発明にかかる液体試料搬送方法においては、前記液体試料貯留部の容量は、前記小さな遠心力により圧力平衡に達した時に、前記液体試料貯留部の液体供給口および前記空気孔まで、液体試料が達しないように、各流路の容積が決定されている。したがって、前記液体供給口および前記空気孔から前記液体試料が漏れることがない。
【0012】
(5)本発明にかかる液体試料搬送方法においては、前記流路の一部が途中で回転中心Oに向かって近づくように斜めに折れ曲がっている。したがって、前記反応室が複数ある場合でも、前記第2の遠心力がかかっている状態での混入状態が起こりにくい。
【0013】
(6)本発明にかかる液体試料搬送方法においては、前記流体移動力は毛細管力である。したがって、簡易の構成で前記流路まで液体試料を搬送することができる。
【0014】
(7)本発明にかかる液体試料搬送方法においては、前記液体試料は遠心分離により分離される比重の大きい成分を含んでおり、A)前記試薬チップは、さらに、下記a1)〜a5)を備えており、a1)前記液体試料のうち比重の大きい成分を溜める大比重成分溜め部、a2)前記液体試料貯留部と前記大比重成分溜め部とを連結する大比重成分溜め部用流路、a3)前記大比重成分溜め部と外部連絡空気孔とを連結する外部連絡空気孔用流路、a4)前記大比重成分溜め部用流路または前記外部連絡空気孔用流路の途中から分岐する分岐流路、a5)前記液体試料貯留部、前記大比重成分溜め部用流路、前記大比重成分溜め部、および前記外部連絡空気孔用流路は、前記液体試料貯留部に搬入された液体試料を、前記大比重成分溜め部用流路、前記大比重成分溜め部、および前記外部連絡空気孔用流路まで搬入するとともに、これにより、前記試薬反応室に空気の閉空間が形成された状態とするように構成されており、B)前記大比重成分溜め部用流路、前記大比重成分溜め部、および前記外部連絡空気孔用流路に搬入された液体試料に含まれる大比重成分を、前記大比重成分溜め部に移動させる程度の第1の遠心力を前記試薬チップに与え、C)その後、前記第1の遠心力よりも大きな第2の遠心力を前記試薬チップに与え、これにより、前記閉空間内の空気と前記大比重成分が除去された液体試料とを入れ替える。
【0015】
したがって、前記液体試料が比重の大きい成分を含んでいても、事前の分離作業なしで、比重の大きい成分を含まない液体試料を、前記試薬反応室に送り込むことができる。
【0016】
(8)本発明にかかる液体試料搬送方法においては、前記分岐流路は、前記外部連絡空気孔用流路の途中から分岐しており、前記分岐流路と前記外部連絡空気孔との間に、さらに、液体溜部を有する。これにより、外部連絡空気孔用流路の途中に分岐流路を設けた場合でも、十分な量の液体試料を、前記試薬反応室に送り込むことができる。
【0017】
(9)本発明にかかる試薬チップは、搬入孔から搬入された液体試料を貯留可能な液体試料貯留部、試薬を収納しており、前記液体試料と当該試薬を反応させるための試薬反応室、前記液体試料貯留部と前記試薬反応室とを連結する第1の流路、前記試薬反応室と外部連絡空気孔とを連結する第2の流路、を備え、前記液体試料貯留部から流路に搬入された液体試料が、回転によって発生する遠心力によって前記試薬反応室に搬送される試薬チップにおいて、前記第1の流路は、前記発生する遠心力に抗しない方向で前記試薬反応室と前記液体試料貯留部を連結する形状であり、前記第2の流路の前記試薬反応室からの流出方向は、前記発生する遠心力によって前記液体試料が流出しない方向であり、前記第2の流路は、前記第1の流路の途中から分岐されており、かかる分岐位置から前記試薬反応室までの前記第2の流路は前記第1の流路と共用されている。
【0018】
したがって、前記分岐位置から前記試薬反応室までを閉空間とできるとともに、前記試薬チップを回転によって生ずる遠心力が閾値をこえると、前記閉空間内の空気と前記液体試料を入れ替えることができる。
【0019】
(10)本発明にかかる試薬チップにおいては、流体移動力により前記液体試料貯留部から流路への前記液体試料が搬入される。かかる流体移動力により流路へ前記液体試料を搬入することができる。
【0020】
(11)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記第1の流路および前記第2の流路は、毛細管力が生ずる程度の細さであり、かつ、親水処理がなされている。したがって、簡易の構成で前記流路まで液体試料を搬送することができる。
【0021】
(12)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記外部連絡空気孔と前記回転の中心との距離L1、前記搬入孔と前記回転の中心との距離L2、前記試薬反応室と前記回転の中心との距離L3は、L2<L3、かつL1<L3の関係にある。したがって、前記試薬チップの回転によって生ずる遠心力により、前記試薬反応室へ前記液体試料を搬入することができるとともに、前記試薬反応室から前記液体試料が流出することがない。
【0022】
(13)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記外部連絡空気孔と前記回転の中心との距離L1と、前記搬入孔と前記回転の中心との距離L2とは等しい。したがって、前記外部連絡空気孔および前記搬入孔からの前記液体試料の流出を防止できる。
【0023】
(14)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記第1の流路との分岐点と前記空気孔との間の前記第2の流路には、前記液体試料貯留部から前記試薬反応室に搬送される前に前記液体試料を事前反応させる試薬が収納された事前試薬反応室が設けられている。これにより、2段階の反応が可能となる。
【0024】
(15)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記事前試薬反応室と前記回転の中心との距離L4が、前記L1〜L3との関係において、L1<L4<L3、かつ、L2<L4<L3、である。したがって、この試薬チップを回転させて、前記液体試料貯留部に搬入された液体試料を、前記第1の流路の途中まで搬入させた場合に、前記事前試薬反応室へ、前記液体試料を確実に搬入することができる。
【0025】
(16)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記試薬反応室を複数有しており、かつ、各試薬反応室への第1の流路を有する。したがって、1の試薬チップにおいて、複数種類の試薬との反応を検出することができる。
【0026】
(17)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記空気孔が、前記複数の試薬反応室に対応して、設けられている。したがって、前記液体試料を試薬反応室により確実に導くことができる。
【0027】
(18)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記空気孔が、前記複数の試薬反応室で一部または全部で共用されている。これにより簡易な構造で、前記液体試料を試薬反応室に導くことができる。
【0028】
(19)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記複数の試薬反応室の配置位置は、前記回転の中心からの距離が等しい。したがって、ほぼ等しい遠心力を各試薬反応室に与えることができる。これにより、ばらつきを減らすことができる。
【0029】
(20)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記各第2の流路は直線であり、かつ、これらの直線は、前記回転の中心と各試薬反応室とを結んだ線上に位置する。したがって、前記液体試料とスムーズに試薬反応室に導くことができる。
【0030】
(21)本発明にかかる試薬チップにおいては、前記第1の流路との分岐点と前記空気孔との間の前記第2の流路には、前記液体試料貯留部から前記試薬反応室に搬送される前に前記液体試料を事前反応させる試薬が収納された事前試薬反応室が設けられている。したがって、1の試薬チップにて、2段階反応を複数平行して、反応させることができる。
【0031】
この発明の特徴、他の目的、用途、効果等は、実施形態および図面を参酌することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1. 第1実施形態
図2に、本発明にかかる試薬チップ1の構成を示す。試薬チップ1は、上シート11、スペーサ20、下シート31を備えた3層構造で構成されている。
【0034】
上シート11は、厚み188μmのペットフィルムで、貫通の検体供給孔13および、貫通の空気抜き孔14を有する。試薬反応室形成面15には試薬が塗布されている。
【0035】
スペーサ20は、
図3に示すように、厚み125μmのペットフィルム21の両側表面に、両面テープ22、23がラミネートされている。両面テープ22,23は、厚み2μmの糊層と、厚み6μmの心材であるペットフィルムと、厚み2μmの糊層の3層で構成されている(図示せず)。スペーサ20は、
図2に示すように、貫通の抜き加工により、流路用壁24、試薬反応室形成壁25、検体供給室壁26、および空気孔形成壁27が形成されている。
【0036】
下シート31は、厚み188μmのペットフィルムで、試薬反応室形成面35には試薬が塗布されている。
【0037】
既に説明した両面テープ22,23により、スペーサ20と、上シート11および下シート33が接着されている。
図3に、
図2における体供給孔13から、第1の流路を通って、試薬反応室5へ至る断面を示す。これにより、
図3に示すように、反応室5、流路4、検体供給室2、が形成されている。たとえば、試薬反応室5は、スペーサ20の試薬反応室形成壁25、上シート11および下シート33の試薬反応室形成面15,35により、構成される。流路4は、スペーサ20の流路用壁24(
図2参照)、上シート11および下シート33の平面により、形成されている。検体供給室2は、検体供給室壁26(
図2参照)および下シート33の平面により形成されている。
【0038】
また、上シート11および下シート33のスペーサ20と接する面は、親水処理がなされている。流路4は、毛細管力が生ずる程度の幅で構成されている。
【0039】
各シートの厚みについては、上記に限定されない。
【0040】
なお、この実施形態では、試薬反応室が2つであり、異なる試薬が塗布されている場合について説明するが、かかる試薬反応室の個数については任意である。
【0041】
また、
図3では空気孔は示されていないが、空気孔形成壁27および空気抜き孔14で外部連絡空気孔を構成している。ただし、これに限定されず空気抜き孔14だけで外部連絡空気孔を構成してもよい。
【0042】
流路の形状と試薬反応室5の関係について
図4を用いて説明する。
【0043】
本実施形態においては、流路は、検体供給室2と試薬反応室5を連結する第1の流路4aと、空気孔14aと試薬反応室5aとを連結する第2の流路で、構成した。本実施形態においては、第1の流路4aはクランク型であり、第2の流路4bは直線状であり、両者の交点Q1から試薬反応室5aまでは、両者が共用されている。また、交点Q1から交点Q2を通って試薬反応室5bに液体試料を導く第1の流路4cと、直線状の第2の流路4dを有する。両者の交点Q2から試薬反応室5bまでの第1の流路4cと直線状の第2の流路4dは共用されている。
【0044】
この試薬チップ1が回転する中心Oとの関係について説明する。空気孔14と回転の中心Oからの距離L1、検体供給孔13と回転の中心Oからの距離L2、試薬反応室5と回転の中心Oからの距離L3は、L1<L2<L3の関係にある。
【0045】
また、第1の流路4aは、前記発生する遠心力に抗しない方向で試薬反応室5と液体試料貯留部2を連結する形状となっている。前記遠心力に抗しない方向で試薬反応室5と液体試料貯留部2を連結するとは、
図5に示すように、試薬反応室5へ流入する流路4aと試薬反応室5との交点Pを通過し、かつ、回転の中心Oを中心とする仮想円S1を定義し、かかる仮想円S1の内側から試薬反応室5へ入ることを意味する。これにより、遠心力がかかっても、試薬反応室5への液体試料の導入がスムーズに行われるからである。
【0046】
また、第2の流路4bにおける試薬反応室5からの流出方向は、前記発生する遠心力によって前記液体試料が流出しない方向である。このように、試薬反応室5から液体試料が流出しない方向に、第2の流路4bを設けることにより、後述するように、液体試料を流出させることなく、試薬反応室内の空気と液体試料を入れ替えることができる。
【0047】
また、本実施形態においては、第1の流路4aと第2の流路4bの交点Q1から試薬反応室5aまでは、第1の流路4aと第2の流路4bは共用されてる。したがって、交点Q1をこえて、液体試料が侵入すると、試薬反応室5は閉構造となる。これにより、液体試料は、存在する空気によって試薬反応室5に侵入することができない。
【0048】
このように、交点Q1から試薬反応室5aまでの流路および試薬反応室5aを閉空間とすることにより、毛細管力だけでは、試薬反応室5へは液体試料は流入しない。
【0049】
試薬チップ1の上シート11は、PETフィルムであるので、スペーサ20に形成されている流路などは、透けて見える。
【0050】
試薬チップ1の使用方法について説明する。
【0051】
液体試料貯留部2に液体試料が滴下されると、毛管作用によって、流路4aへ検体である液体試料が侵入する。液体試料が第1の流路4aから第2の流路4bの分岐点Q1まで達すると、試薬反応室5aは閉構造となるので、存在する空気によって、液体試料はそれ以上、侵入することができない。そこで、液体試料は分岐点Q1から、空気抜き孔14aに向けて侵入する。また、液体試料は、第1の流路4cから第2の流路4dの分岐点Q2の方に侵入する。液体試料が第1の分岐点Q2まで達すると、試薬反応室5bは閉構造となるので、存在する空気によって、液体試料はそれ以上、侵入することができない。そこで、液体試料は分岐点Q2から、空気抜き孔14bに向けて侵入する。
【0052】
なお、液体試料の量が少ない場合には、途中で停止する
その後、試薬チップ1を、回転中心Oを中心として回転させる。本実施形態においては、回転中心から試薬反応室との距離が、40mmであったので、3000RPMで1分間回転させた。これにより遠心力が発生し、かかる遠心力により、試薬反応室5a,b内の空気と流路内の液体試料が入れ替わって、液体試料は試薬反応室5a,bに搬入される。
【0053】
試薬反応室5a,bに液体試料が搬入されると、従来と同様にして、試薬反応室5a,bにおける呈色反応などを検知するようにすればよい。
【0054】
本実施形態においては、毛細管力だけでは試薬反応室5a,bに液体試料は搬入されない。これは、試薬反応室5a,bが閉構造となり、かつ、空気が存在するためである。したがって、反応時間の制御も可能である。
【0055】
このように、本実施形態においては、第2の流路4bにおける試薬反応室5からの流出方向は、前記発生する遠心力によって前記液体試料が流出しない方向に設けられている。すなわち、試薬反応室5は遠心力がかかる方向には閉状態であるので、流入した液体試料が試薬反応室外へ流出することがない。これにより、試薬反応室5内の空気と液体試料を入れ替える時に、液体試料が試薬反応室5から流出することがない。
【0056】
本実施形態においては、
図4に示すように、流路が回転中心Oを中心として、放射状または円周状に配置されている。これにより、複数の試薬反応室がある場合でも、各試薬反応室まで、より均等な力を与えることができる。
【0057】
2. 第2実施形態
図6に事前試薬反応室を有する実施形態である試薬チップ70を示す。試薬チップ70においては、事前試薬反応室以外は第1実施形態と同様である。試薬チップ70は、
図6Aに示すように、試薬反応室5aと,空気抜き孔14aの間に、事前試薬反応室18aが、試薬反応室5bと,空気抜き孔14bの間に、事前試薬反応室18bが設けられている点で第1実施形態と異なる。
【0058】
事前試薬反応室18a,bの断面構成は、
図6Bに示すように、試薬反応室5a、bと同様である。すなわち、上シート11の事前試薬反応室形成面75には試薬が塗布されており、スペーサ20は、貫通の抜き加工により、事前試薬反応室形成壁76が形成されており、下シート31の試薬反応室形成面77には試薬が塗布されている。
【0059】
試薬チップ70の使用方法については、第1実施形態とほぼ、同様である。液体試料貯留部2に液体試料が滴下されると、毛管作用によって、流路4aを通って、液体試料が侵入する。同様にして、液体試料の侵入により試薬反応室5aは閉構造となるので、液体試料は存在する空気によって試薬反応室5aには侵入することができない。液体試料は第1の流路4aから第2の流路4bの分岐点Q1、Q2から、空気抜き孔14a、bに向けて侵入する。これにより、事前試薬反応室18a、bに液体試料が流入する。事前試薬反応室18a、bにおいて、必要な時間、反応を起こさせてから、試薬チップ70を第1実施形態と同様に、回転させ、遠心力を与える。これにより、事前試薬反応室18a、bに存在する液体試料が、試薬反応室5a,bに搬入される。
【0060】
このように、第1の反応をさせてから、第2の反応をさせる2段階の反応が必要がある検知も可能となる。たとえば、試料中に存在する妨害物質の除去反応、2段階で行う検出反応の1段目の反応等である。
【0061】
このような事前試薬反応室を設ける場合には、それぞれに空気抜き孔を設けるとともに、中心Oと各試薬反応室を結ぶ放射方向に、空気抜き孔、事前試薬反応室、試薬反応室を配置することが望ましい。
【0062】
このように試薬チップ70においては、毛細管力により、事前試薬反応室まで液体試料を搬送させ、遠心力によって試薬反応室まで液体試料を搬送することができる。すなわち、事前試薬反応室への搬入方法と、事前試薬反応室から試薬反応室への搬入方法が異なることにより、事前試薬反応室における反応と、試薬反応室における反応について、それぞれの時間管理も簡易にできる。
【0063】
3. 第3実施形態
図7に、試薬チップ100を示す。試薬チップ100は、第2実施形態として説明した事前試薬反応室が設けられている試薬反応室、事前試薬反応室が設けられていない試薬反応室が、不規則に中心Oと各試薬反応室を結ぶ放射線上に配置されている。
【0064】
液体試料貯留部2に滴下された液体試料は、毛管作用によって、円弧状の流路104aを侵入する。各試薬反応室105は閉構造となっているので、存在する空気によって液体試料は侵入することができない。したがって、液体試料は流路104aを進む。分岐点Q100aから、一部は空気抜き孔114aに向けて侵入する。また、他はさらに流路104aを進み、分岐点Q100bから、一部は空気抜き孔114bに向けて侵入する。これにより、事前試薬反応室118bに液体試料が流入する。以下同様にして、液体試料は事前試薬反応室への流入する。なお、
図7において、流路104aを矢印α方向へ流入するとして説明したが、矢印αの逆方向にも液体試料は流入する。
【0065】
その後、試薬チップ1を、回転中心Oを中心として回転させると、第2実施形態と同様に、流路内および事前試薬反応室内の液体試料が試薬反応室内に流入する。
【0066】
本実施形態においては、試薬チップ100の中央部は、軽量化のために、貫通穴としたが、これは任意である。
【0067】
4. 第4実施形態
上記各実施形態においては、液体試料貯留部に滴下された液体試料が、第1の流路から第2の流路との分岐点を超えるのを、毛管作用によって実現する場合について説明したが、かかる分岐までの侵入については、毛管力以外を用いてもよい。たとえば、第1実施形態における試薬反応室内の空気と液体試料を入れ替える程度の遠心力を生じさせる回転よりも弱い回転をさせることにより、第1の流路から第2の流路との分岐点を超える力を、液体試料に与えることができる。このように、流路の進行方向のベクトルを有する力を与えることにより、試薬反応室を閉状態とすることができる。
【0068】
たとえば、第1実施形態では、試薬反応室内の空気と液体試料を入れ替える程度の遠心力を生じさせるために、3000RPMで1分間回転させたが、その半分程度の1500回転で回転させればよい。これらは液体試料の粘度によっても異なる。
【0069】
また、前記分岐までの搬入については、回転以外でも、なんらかの力を与えられればよく、たとえば、空気による圧力なども可能である。
【0070】
また、第1段階として、前記弱い遠心力を用いる場合で、かつ、事前試薬反応室を用いる場合には、事前試薬反応室の位置については、中心からの距離L4が、L1、L2、L3と下記の関係に配置することが望ましい。
【0072】
これは、検体供給孔13よりも事前試薬反応室の方が、中心から遠い方が事前試薬反応室へ液体試料を搬入しやすいからである。
【0073】
かかる事前試薬反応室を採用する場合、毛管作用を用いる場合と比べて、事前試薬反応室への搬入を積極的にコントロールできるので、事前試薬反応室における反応時間をコントロールできるメリットがある。
【0074】
なお、この実施形態では、毛管作用を用いないので、上シート11および下シート33のスペーサ20と接する面を親水処理すると、毛管作用が生じてしまうので、かかる親水処理をしないか、または別途、疎水処理をするようにすればよい。
【0075】
なお、毛管作用を用いるとともに、前記弱い回転を併用するようにしてもよい。
【0076】
5. 第5実施形態
図8に示すような血球/血漿分離部81を検体供給孔13の上に設置するようにしてもよい。これにより下記に説明するように、全血試料を適用することが可能となる。
【0077】
血球/血漿分離部81には血球捕捉膜84が設けられる。血球捕捉膜としては、ポリサルフォンあるいはポリエーテルサルフォン素材による非対称性の多孔性膜や、ポリエステルあるいはポリカーボネート素材によるトラックエッチング加工フィルム等が適用できる、いずれも孔径は1.0μm以下が望ましい。
【0078】
血球/血漿分離部81の使用方法について説明する。血球/血漿分離部81の全血滴下域に適量の全血を滴下し、遠心操作を行う。これにより、供給された全血は血球捕捉膜84を乗り越えて血球貯留域85まで達する。血球は遠心力の作用で血球貯留域85に留まるが、血漿成分は血球捕捉膜84上に拡がり、遠心力の垂直方向のベクトル成分によって血球捕捉膜84を通過して検体供給孔13に流入する。
【0079】
滴下する全血量と血球貯留域の容積をコントロールすることで、血球捕捉膜84上に存在する血液中の血球成分量を効果的に低下させ、血球捕捉膜84によって捕捉される血球による目詰まりを低減することができる。
【0080】
全血量の約1/2が血球成分であるので、血球貯留域の滴下全血量の約1/2の容積となるように血球貯留域の形状を決定すればよい。
【0081】
かかる血球/血漿分離部81を装着することで、分析素子に滴下する試料を全血対応とすることができる
6. 第6実施形態
第5実施形態では、血球/血漿分離部81を検体供給孔13の上に設置したが、これに限定されず、
図9に示すように、流路の途中に設けるとともに、遠心力を用いて分離するようにしてもよい。
【0082】
以下、試薬チップ150について、説明する。試薬チップ150の断面構造は
図3に示す試薬チップ1と同様である。試薬チップ1との違いは、
図9に示すように流路の途中に大比重成分溜め部である血球貯留部85が設けられている点である。断面形状は同じである。血球貯留部85は試薬チップ1と同様に、図のスペーサ20に貫通の抜き加工により、血球貯留部用壁が形成されており、上シート22および下シート33の平面により、形成される。
【0083】
試薬チップ150の使用方法について説明する。検体供給孔152に液体試料である全血試料を滴下する。この全血試料は、毛管作用によって大比重成分溜め部用流路である主流路154aへ侵入する。全血試料が主流路154aから分岐流路154bの分岐点Q10まで達すると、反応部160は閉構造となるので、存在する空気によって、全血試料はそれ以上、侵入することができない。そこで、全血試料は分岐点Q10から、血球貯留部158へ向けて侵入し、さらに、血球貯留部158を通過して外部連絡空気孔用流路である主流路154Cを通過して、空気抜き孔14まで到達する。
【0084】
この状態で、回転中心Oを中心として、血漿と血球とを分離する程度の遠心力(以下、第1遠心力という)を加える。分離された血球は、血漿と比べると比重が大きいので、前記遠心力により血球貯留部158へ集められる。
【0085】
本実施形態においては、検体供給孔から空気抜き孔までの主流路154a、154c及び血球貯留部158を含めた全容積に対して、血球貯留部158の容積を60%になるようにした。これは、血球成分は全血量の30〜60%の範囲であり、最大時でも血球貯留部158にその全量を収容するためである。たとえば、前記全容積が3CCの場合、血球貯留部158の容積を1.8CCとすればよい。
【0086】
これにより、遠心操作後の主流路154a、154cと、検体供給孔152には血漿成分しか存在していない状態となる。さらに、そのまま、第1遠心力よりも大きな遠心力で回転させる。これにより、第1実施形態と同様に、反応部160内の空気と流路内の血漿成分が入れ替わって、血漿成分は反応部160に搬入される。反応部160における呈色反応などは第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0087】
このように、第1遠心力により血漿成分を血球貯留部158へ集め、さらに強いGを加えることで、主流路及び検体供給孔の血漿成分を、閉鎖空間とした分岐流路及び反応部160に導入する。
【0088】
本実施形態においては、反応室160の位置を、検体供給孔152と血球貯留部158の間に位置させた。すなわち、空気孔14と回転の中心Oとの距離L1、検体供給孔152と回転の中心Oとの距離L2、試薬反応室5と回転の中心Oとの距離L3、血球貯留部158と回転の中心Oとの距離L5とした場合、L1<L3<L5、かつ、L2<L3<L5とした。しかしこれに限定されず、L1<L5、かつ、L2<L3<L5であってもよい。
【0089】
上記実施形態では、前記液体試料として、血球成分と血漿成分とを分離する場合について説明したが、これに限定されず、比重の大きい成分を含む液体試料であれば、どのようなものでも適用可能である。
【0090】
この実施形態では、検体供給孔152と血球貯留部158との間の主流路154aに分岐流路154b及び反応部160を設けた場合について説明したが、空気抜き孔14と血球貯留部158との間の主流路154cに、分岐流路154b及び反応部160を設けてもよい。この場合、
図10に示すように、液体溜部161をさらに設けるようにしてもよい。主流路154cに、分岐流路154b及び反応部160を設けると、反応室160に送り込む液体の量が足りなくなるおそれがあるからである。
【0091】
なお、
図9、
図10の実施形態では、主流路154aおよび主流路154cの一方にだけ、分岐流路154bおよび反応室160を設けたが、主流路154aおよび主流路154cのいずれにも、それぞれ分岐流路154bおよび反応室160を設けてもよい。これにより異なる試薬反応をまとめて検査することができる。
【0092】
7. 第7実施形態
図11に試薬チップ170を示す。
図6に示す実施形態においては、2つの試薬反応室の片側から検体を導入するようにしたが、試薬チップ170は、中央から左右に分岐するとともに、さらに流路が一部斜めに形成されている。
【0093】
以下、詳述する。対応する部位については、試薬チップ50と同じ符号を付している。
【0094】
試薬チップ170では、流路を、検体供給室2と試薬反応室5とを連結する第1の流路4aと、空気孔14aと試薬反応室5aとを連結する第2の流路4bとで、構成した。
【0095】
本実施形態においては、第1の流路4aは交点Q1にて左右に分離し、途中で回転中心Oに向かって近づくように斜めに折れ曲がっている。第2の流路4bは直線状であり、両者の交点Q1から試薬反応室5aまでは、上記各実施形態と同様に、両者が共用されている。第2の流路4bの交点Q1と空気孔14aの間には、事前試薬反応室18aが設けられている。 交点Q0から逆側の流路についても、同様である。
【0096】
また、試薬チップ170は、第4実施形態に示すように、第1の遠心力を用いて、事前試薬反応室18a,bに検体を導入されるので、流路は疎水処理されている。
【0097】
試薬チップ170の使用方法について説明する。
【0098】
検体供給室2の開口部2aに液体試料をたらすと、検体供給室2に液体試料がたまる。これは、上シート11および下シート33のスペーサ20と接する面は、第4実施形態と同様に、親水処理をしないか、または別途、疎水処理がなされているからである。
【0099】
この状態で、試薬チップ170を回転させて、第4実施形態と同様に、第1の遠心力を生じさせる。これにより、液体試料は、点Q0方向へ第1の流路4aを進む。液体試料は、点Q0で2つに分かれて、点Q1まで進むと、事前試薬反応室18aの方に進む。これは、点Q1まで進むことで、反応室5aが閉状態となり、かつ、事前試薬反応室18aの先には空気孔14aが存在するからである。反対側も同様に、点Q2まで進むと、事前試薬反応室18bの方に進む。これにより、事前試薬反応室18a、bの試薬と第1の反応が生ずる。
【0100】
この状態で、所定時間経過後、試薬チップ170の回転速度を上げると、液体試料に第2の遠心力よりも大きな第1の遠心力が与えられる。これにより、上記各実施形態と同様に、事前試薬反応室18aの試薬と第1の反応がなされた液体試料と、反応室5aの空気が入れ替わる。第1の反応がなされた液体試料は反応室5aにて、第2の反応がおこる。
【0101】
事前試薬反応室18bの試薬と反応がなされた液体試料についても、同様にして、反応室5b内に搬入されて、反応室5bの試薬との反応がおこる。あとは、所定時間経過後、上記各実施形態と同様に、呈色反応などを調べればよい。
【0102】
この実施形態において、流路4aが途中で回転中心Oに向かって近づくように斜めに折れ曲がっているのは、以下の理由による。試薬チップ170の事前反応室18a,bは、それぞれ、試薬反応室5a,bと対応する試薬が塗布されている。したがって、事前反応室18aで反応させた液体試料が反応室5bへ搬入される混入状態が生ずるのは、好ましくない。なお事前反応室18bで反応させた液体試料が反応室5aへ混入するのは同様に好ましくない。
【0103】
試薬チップ170では、回転中心Oに向かって近づくように斜めに折れ曲がっているので、前記第2の遠心力がかかっている状態では、前記混入状態が起こりにくい。
【0104】
なお、かかる試薬チップ170において、事前試薬反応室18a,bを省略するようにしてもよい。その場合、第1の遠心力を発生させることなく、上記第2の遠心力を発生させるように試薬チップ170を回転させればよい。これにより、検体供給室2にたまった液体試料が反応室5a、5bへ搬入される。
【0105】
上記各実施形態においては、空気孔14と回転の中心Oからの距離L1、検体供給孔13と回転の中心Oからの距離L2は、L1<L2とした。これは、液体試料の量が規定量を超えた場合に以下のおそれがあるからである。以下説明する。
【0106】
上記各実施形態においては、いずれも、一旦、試薬反応室を閉構造とさせた後は、流路または事前試薬反応室に存在する液体試料を、試薬反応室に搬入するのに遠心力を用いている。したがって、上記規定量を超えた液体試料が検体供給室に与えられると、上記遠心力がかかった場合に、空気孔から液体試料が漏れ出すおそれがあるからである。これは試薬反応室を閉構造とした状態で、試薬チップを点Oを中心に回転させると、生じた遠心力により、供給部の検体と空気孔の検体が回転中心Oに対して同じ距離になろうとするからである。
【0107】
L1<L2であれば、上記遠心力がかかった場合に、空気孔から液体試料が漏れるおそれはないが、検体供給室の検体供給孔から液体試料が漏れるおそれがある。これを防ぐためには、L1=L2とすればよい。
【0109】
流路への液体試料の搬入を毛管作用で行う実施形態では、検体供給室に供給された液体試料は毛管作用により、流路へ供給される。この場合、液体試料があらかじめ想定した規定量を超えて供給されなければ、L1<L2でもL1>L2でも特に問題はない。これに対して、前記規定量が守られないおそれがある場合、L1=L2としておけば、空気孔および検体供給孔から液体試料が漏れることはない。
【0110】
これに対して、流路への液体試料の搬入を遠心力により行う実施形態では、検体供給室に液体試料を供給しても、当該領域に液体試料は滞留したままとなる。これは流路が疎水処理(または親水処理がされていない)されているためである。かかる状態で、遠心力がかかり、閉空間ができた状態でも、空気孔および検体供給孔まで達しないように、検体供給室の容積と流路の体積を規定することで、距離L1、L2に関係なく、空気孔および検体供給孔からの液体試料漏れを防止できる。
【0111】
検体供給室の容量は、遠心力がかかり、その結果、圧力平衡に達した時の「供給部とこれに繋がる流路」+「空気孔とそれに繋がる流路」の総容積>供給部の容積とすればよい。かかる関係について、
図12を用いて説明する。
【0112】
図12Aは、検体供給室に液体試料を供給された状態である。
図12Bは遠心力がかかり、圧力平衡に達した状態である。かかる状態で、液体供給口および空気孔まで、液体試料が達しないように、「供給部とこれに繋がる流路」+「空気孔とそれに繋がる流路」の総容積を決定すればよい。
【0113】
本実施形態においては、第1の流路4a、および第2の流路4bについて、両者の交点Q1から試薬反応室5aまでは、両者が共用されていると説明したが、検体供給室2から交点Q1まで、および検体供給室2から交点Q2までを、第1の流路とし、交点Q1から試薬反応室5aまで、および交点Q2から試薬反応室5bまでを試薬反応室流入流路として把握することもできる。
【0114】
これは
図6の試薬チップ70についても同様である。
【0115】
液体試料を検体供給室から流路まで移動させる流体移動力について説明する。第1実施形態では、毛管力を流体移動力として採用したが、第4実施形態では弱い遠心力を採用した。しかしこれに限定されず、たとえば、空気の圧力を与えるようにしてもよい。
【0116】
8. その他の実施形態
上記実施形態においては、第1の流路の形状をクランク型としたが、発生する遠心力に抗しない方向で試薬反応室5へ流入する形状であれば、かかる形状については任意である。
【0117】
なお、第1実施形態においては、第1の流路4aはクランク型とし、第1の流路4cは交点Q1からほぼ直行する形状として説明したが、検体供給室2と交点Q2までを共通流路とし、交点Q1から試薬反応室5aまで、および交点Q2から試薬反応室5bまでを試薬反応室流入流路として把握することもできる。
【0118】
また、上記実施形態においては、流路が回転中心Oを中心として、放射状または円周状に配置されている場合について説明したが、直線で構成してもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、事前試薬反応室を複数設ける場合に、第1と第2の流路の分岐点から事前試薬反応室までの距離を、それぞれ等しくしている。しかし、検体供給孔から離れる事前試薬反応室ほど、第1と第2の流路の分岐点から事前試薬反応室までの距離を、短くなるようにしてもよい。これにより、事前試薬反応室における反応時間のばらつきを少しでも抑えることができる。
【0120】
実施形態においては、試薬反応室5a,bに対応するように、空気抜き孔を設けている。したがって、各試薬反応室内の空気と液体試料とを、より確実に入れ替えることができる。
【0121】
しかし、これに限定されず、空気抜き孔は複数の試薬反応室で共用するようにすることも可能である。
【0122】
上記実施形態においては、空気孔14と回転の中心Oからの距離L1、検体供給孔13と回転の中心Oからの距離L2、試薬反応室5と回転の中心Oからの距離L3は、L1<L2<L3の関係としたが、L1<L2、かつL1<L3であってもよい。
【0123】
上記実施形態においては、各試薬反応室は、前記回転の中心からの距離が等しくなるように配置されている。しかし、これに限定されない。
【0124】
上記実施形態においては、3枚のシートで試薬チップを構成した場合について説明した。これはスペーサ20を打ち抜きで形成する方が、製造が簡易だからである。したがって、かかる要請がない場合には、3枚のシートで構成しなくてもよい。
【0125】
流路の容積について説明する。第1の流路4aと第2の流路4bの流入した液体試料が、発生した遠心力により、試薬反応室5へ導入される。したがって、試薬反応室5の容積を決定する際に、前記流路の総容積が決まるように設計すればよい。たとえば、両者が等しくなるように設計することで、必要最小限の試料を供給口に滴下するだけで、目的となる検出を行うことができる。
【0126】
また、試薬反応室を回転中心からの円周上に配置すれば、各試薬反応室への液体試料導入は均等に行われるため、試薬チップの大きさを拡大して、多くの試薬反応室を設けることにより多数の項目を測定することができる。
【0127】
また、上記実施形態においては、流路を放射状または円周状としたが、これに限定されず、たとえば、一部または全部を直線で構成してもよい。
【0128】
上記においては、本発明を好ましい実施形態として説明したが、限定のために用いたのではなく、説明のために用いたものであって、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、添付のクレームの範囲において、変更することができるものである。