【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月15−17日東京理科大学野田キャンパスにおいて開催された公益社団法人精密工学会2016年度精密工学会春季大会学術講演会で発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サブマイクロ粒子層と前記ナノ粒子層との間に、前記第1及び第2のシリコン微粒子が混在する厚さ0.1μm〜2μmの遷移層を更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコン構造体。
前記被処理基体が、銅粉末、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンフラーレン、グラファイト及び炭素系微粒子の少なくともいずれかを更に含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のシリコン構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を貼付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
また、本明細書において、「上面」「下面」等の「上」「下」の定義は、図示した断面図上の単なる表現上の問題であって、例えば、Si構造体の方位を反時計回りに90°変えて観察すれば「上」「下」の称呼は「左」「右」になり、180°変えて観察すれば「上」「下」の称呼の関係は逆になることは勿論である。また、本明細書において、「粒子径」とは、SEM写真から求めた平均粒子径を意味する。
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るSi構造体は、
図1(a)〜
図1(c)に示すように、支持基板11と、支持基板11上に設けられ、サブマイクロメートルオーダの粒子径を有する第1のSi微粒子12aを含むサブマイクロ粒子層12と、サブマイクロ粒子層12上に設けられ、第1のSi微粒子12aよりも粒子径が小さい第2のSi微粒子13aを含むナノ粒子層13とを備える。
【0018】
図1(a)に示す支持基板11としては、銅(Cu)箔又はアルミニウム(Al)箔等の金属箔や、ガラス基板等が使用可能である。支持基板11として金属箔を使用した場合には、金属箔を集電体としてそのまま使用できるため、リチウムイオン電池の負極やリチウムイオンキャパシタの材料として好適である。支持基板11としてガラス基板を使用した場合には、太陽電池の材料としてそのまま使用できるため好適である。なお、本発明の第1の実施形態に係るSi構造体は、サブマイクロ粒子層12及びナノ粒子層13からなる複合層のみを備え、支持基板11が無い構造であってもよい。
【0019】
サブマイクロ粒子層12の厚さは5μm〜10μm程度である。本発明の第1及び第2の実施形態で定義される「サブマイクロメートルオーダの粒子径」とは0.1μm〜1μm程度の粒子径の意であり、厳密に1μm以下を常に要求されるものではない。好ましくは、「サブマイクロメートルオーダ」とは0.2μm〜0.8μm程度である。例えば、
図1(b)に模式的に示すように、サブマイクロ粒子層12を構成する第1のSi微粒子12aは例えば0.4μm〜0.6μm程度の粒子径を有する球状のサブマイクロ粒子である。サブマイクロ粒子層12は、第1のSi微粒子12aの他にも、炭素(C)や銅(Cu)等の微粒子を更に含んでいてもよい。
【0020】
サブマイクロ粒子層12は、第1のSi微粒子12a間に隙間を有する多孔質(ポーラス)構造を有する。第1のSi微粒子12aは、後述するようにSiの溶融・再凝固によって形成されるが、Siが再凝固して第1のSi微粒子12aとなるときに第1のSi微粒子12aと支持基板11との間に強固な結合ができる。サブマイクロ粒子層12はポーラス構造となるため、サブマイクロ粒子層12と支持基板11との界面では第1のSi微粒子12aと支持基板11との強固な結合がネットワーク状に形成される。このネットワーク状の第1のSi微粒子12aと支持基板11との強固な結合により、サブマイクロ粒子層12と支持基板11とは強固に直接接合している。
【0021】
図1(a)に示すナノ粒子層13の厚さは2μm程度である。本発明の第1及び第2の実施形態で定義される「ナノメートルオーダの粒子径」とは1nm〜100nm程度、好ましくは、20nm〜80nm程度である。
図1(c)に模式的に示す例においては、ナノ粒子層13を構成する第2のSi微粒子13aに関しては、例えば10nm〜100nm程度を「ナノメートルオーダ」として定義したナノ粒子を採用可能である。
【0022】
図1(c)に模式的に示すように、第2のSi微粒子13aは、互いに網目状(ネットワーク状)に繋がった構造をなしていてもよい。ナノ粒子層13は、第2のSi微粒子13aの他にも、CやCu等の微粒子を更に含んでいてもよい。ナノ粒子層13は、第1のSi微粒子12aよりも小さい第2のSi微粒子13aを含むため表面積が相対的に大きく、例えばリチウムイオン電池の場合、電解液との界面面積が増加するため、電気的特性がより良好となる。また、太陽電池へ応用する場合、光の吸収性が大幅に向上する。
【0023】
サブマイクロ粒子層12とナノ粒子層13とは遷移層を介して強固に直接接合している。サブマイクロ粒子層12とナノ粒子層13の間の遷移層は、サブマイクロ粒子層12を構成する第1のSi微粒子12aと、ナノ粒子層13を構成する第2のSi微粒子13aとが混合した組成の層となっている。サブマイクロ粒子層12とナノ粒子層13の間の遷移層の厚さは0.1μm〜2μm程度であり、例えば1μm程度である。
【0024】
本発明の第1の実施形態に係るSi構造体によれば、サブマイクロ粒子層12及びナノ粒子層13からなる複合構造を有するので、光学的特性及び電気的特性が良好な材料を実現できる。例えば、サブマイクロ粒子層12及びナノ粒子層13からなる複合構造をリチウムイオン電池の負極(Si負極)及びリチウムイオンキャパシタとして用いた場合には、充放電による激しい体積膨脹・収縮に起因する電極の割れや寿命低下を防ぐことができる。また、電解液との界面面積が増加するため、電気的特性がより良好となる。したがって、長寿命・高容量の高性能のリチウムイオン電池及びリチウムイオンキャパシタなどを実現可能とする。また、太陽電池へ応用する場合、光の吸収性が大幅に向上するため、極めて高い効率の太陽光発電が可能となる。
【0025】
<製造装置>
本発明の第1の実施形態に係るSi構造体を製造するには、例えば
図3に示すような製造装置を用いることが可能である。本発明の第1の実施形態に係るSi構造体の製造装置は、被処理基体(10,11)を載置可能なステージ2と、被処理基体(10,11)の上面にプロセスガスを導入して反応空間を定義する反応容器1と、被処理層10上にパルスレーザ光L1を照射するレーザ照射装置3と、レーザ照射装置3を制御する制御装置4とを備える。レーザ照射装置3の射出端には光ファイバ3aが接続されている。制御装置4は、レーザ照射装置3のパルスレーザ光L1の出力、繰り返し周波数及び走査速度等を調整する。
【0026】
反応容器1には、窒素(N
2)ガス又はアルゴン(Ar)ガス等のプロセスガスを反応容器1内に流入させるガス導入口1aと、プロセスガスを反応容器1外に排出するガス排出口1bが設けられている。反応容器1のステージ2の上方の位置には、レーザ照射窓1cが設けられている。レーザ照射窓1cは、レーザ照射装置3からのパルスレーザ光L1を透過可能なガラス等の材料からなる。
【0027】
図3に示すように、レーザ照射装置3は、光ファイバ3a等を介してNd:YAGレーザ等のパルスレーザ光L1を被処理層10に照射する。これにより、被処理層10の一部がアブレーションされ、蒸発し、プラズマP1となる。パルスレーザ光L1の照射条件としては、例えば大気をプロセスガスとした場合には、Nd:YAGレーザのガウシアンビームを照射し、波長を532nm、パルス幅を15.3nsec、繰り返し周波数を10kHz、ビーム径を42.5μm、レーザフルエンスを325mJ/cm
2に設定できる。パルスレーザ光L1の照射角度θ1は例えば0°〜45°程度の範囲で適宜設定可能である。パルスレーザ光L1の照射角度θ1は、被処理層10の上面の法線に対する角度である。
【0028】
パルスレーザ光L1は、走査速度1mm/秒〜15mm/秒程度で被処理層10上を2次元方向に走査する。
図3では、被処理層10の左側から中央付近まで、パルスレーザ光L1が走査方向S1に走査した場合を例示している。パルスレーザ光L1の走査は、光ファイバ3aを移動させることで行ってもよい。或いは、被処理層10を搭載したステージ2を移動させることにより、被処理層10に対してパルスレーザ光L1を相対的に走査してもよい。大気をプロセスガスとして用いる代わりに、反応容器1内にNガス又はArガスをプロセスガスとして流して、パルスレーザ光L1を照射してもよい。また、反応容器1内のプロセスガスの圧力を例えば0.2Pa程度等の減圧状態としてもよい。
【0029】
<製造方法>
本発明の第1の実施形態に係るSi構造体の製造方法は、
図2に示すように、支持基板11上にSi粉末を含む被処理層10を厚さ10μm〜50μm程度、より好ましくは10μm〜20μm程度に設定した被処理基体(10,11)を用意する。被処理層10の形成方法は特に限定されない。例えば、Si粉末をバインダと混合してスラリーを作製し、塗工機等を用いて支持基板11上にスラリーを塗布し、その後乾燥させてもよい。
【0030】
Si粉末としては、例えば純Siが使用可能であることは勿論であるが、純Siの代わりに廃Si粉末を使用することができる。廃Si粉末は、半導体産業及び太陽電池産業等でSiインゴットを切断するときに大量に排出されている。即ち、Siインゴットをワイヤソーやバンドソー等で切断するときに、ワイヤソーの直径の分あるいはバンドソーの厚みの分だけ切り屑が大量に発生し、Siウェハの厚みを考慮すると約半分の材料ロスとなる。廃Si粉末は、砥粒等の不純物を含むことからSiインゴット生産へは再利用できず、産業廃棄物として処理されている。
【0031】
これに対して、Si粉末として廃Si粉末を使用すれば、産業廃棄物を有効活用でき、且つ安価にSi微粒子を製造することができる。なお、廃Si粉末にはSiCやダイヤモンド等の砥粒が極微量混在するが、電気的特性や光学的特性への影響は無視し得る程度に小さいと考えられる。廃Si粉末は不均一で歪な形状をしており、廃Si粉末の粒子径は例えば1〜3μm程度である。
【0032】
次に、
図3に示すSi構造体の製造装置を用いて、パルスレーザ光L1を被処理層10に照射することにより、被処理層10の上部の一部10aを蒸発させて、上方にプラズマP1のプルーム(
図3の矢印で図示)を形成する。プルームに含まれる構成物質(蒸発物質)は反応容器1内のプロセスガスと触れることで冷却されて、凝固及び凝集し、ナノメートルオーダの粒子径となってパルスレーザ光L1の照射領域周辺へ堆積する。これにより、第2のSi微粒子13aからなるナノ粒子層13が
図3に示すように形成される。
【0033】
一方、被処理層10の下部の一部10bはパルスレーザ光L1を吸収して温度が融点を超えて溶融し、溶融したSiが表面張力により球状となる。溶融したSiは、プラズマの衝撃力(反動圧力)によって下方に飛散し、微細な液滴になりナノ粒子層13の下に凝固する。この結果、サブマイクロメートルオーダの第1のSi微粒子12aからなるサブマイクロ粒子層12が、ナノ粒子層13の下側に形成される。即ち、サブマイクロ粒子層12及びナノ粒子層13の複合構造を同一のプロセスで一括して形成することができる。以上のようにして、
図1に示したSi構造体が完成する。なお、サブマイクロ粒子層12の下面の支持基板11は溶剤等を用いて剥離してもよい。
【0034】
本発明の第1の実施形態に係るSi構造体の製造装置及び製造方法によれば、パルスレーザ光L1の出力、走査速度及び繰り返し周波数等を調整し、パルスレーザ光L1を被処理基体(10,11)上に走査しながら照射することにより、2種類の粒子径が異なるサブマイクロ粒子層12及びナノ粒子層13の複合構造を安定的に効率よく製造可能となる。更に、純Siウェハの代わりに、半導体産業等でSiインゴットを切断するときに大量に排出されている廃Si粉末を使用することにより、産業廃棄物から極めて低い原料コストを実現可能となる。
【0035】
更に、金属箔やガラス基板等の支持基板11上に塗布した廃Si粉末にレーザ照射を行うことにより、支持基板11と、サブマイクロ粒子層12及びナノ粒子層13からなる複合層とによる構造体を実現できる。支持基板11を含む構造体はそのままリチウムイオン電池や太陽電池等の材料として使用することも可能であり、生産性が非常に高い。
【0036】
更に、パルスレーザ光L1の出力、パルスレーザ光L1の照射角度θ1、第1のSi微粒子12aや第2のSi微粒子13aの粒子径、結晶性及び堆積厚さ等を安定的に制御可能である。例えば、パルスレーザ光L1の走査速度が遅いほど、同じ箇所に照射されるパルス数が増加し、プラズマの発生及びそれに伴う反動圧力の回数が増大するため、液滴が細かく分断され、第1のSi微粒子12aの粒子径が小さくなる。したがって、パルスレーザ光L1の走査速度やパルスレーザ光L1の繰り返し周波数を調整することにより、第1のSi微粒子12aの粒子径を制御することができる。
【0037】
また、本発明の第1の実施形態に係るSi構造体の製造装置は、
図4に示すように、被処理層10の上面の法線方向(換言すれば、照射角度θ1=0°)にパルスレーザ光L1を照射してもよい。レーザ照射装置3は、
図3に示した光ファイバ3aを有していなくてもよく、レーザ照射装置3内の光学系のレンズやガルバノミラー等からパルスレーザ光L1を直接照射してもよい。例えばレーザ照射装置3内の光学系のガルバノミラーの角度を変化させることにより、パルスレーザ光L1を走査することもできる。
【0038】
また、
図2に示した被処理層10は、主原料であるSi粉末の他にも、Cu粉末、C粉末、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンフラーレンやその誘導体、グラファイト又は炭素系微粒子を混合してもよい。
【0039】
また、本発明の第1の実施形態に係るSi構造体の製造装置及び製造方法を用いて、例えば反応容器1内のプロセスガスの流量を増大させること等により、パルスレーザ光L1により蒸発したSi微粒子を飛ばして支持基板11上に堆積させないようにできる。一方、パルスレーザ光L1により液滴化したSiは、支持基板11上で凝固する。この結果、
図1(a)に示したサブマイクロ粒子層12上のナノ粒子層13を形成せずに、
図5(a)に示すように、支持基板11上にサブマイクロ粒子層12を単層で形成することができる。
【0040】
また、本発明の第1の実施形態に係るSi構造体の製造装置及び製造方法を用いて、パルスレーザ光L1の出力を増大させたり、パルスレーザ光L1の走査速度を低下させたりすること等により、パルスレーザ光L1が照射された箇所の被処理層10のすべてを蒸発させることができる。この結果、
図1(a)に示したサブマイクロ粒子層12を形成せずに、
図5(b)に示すように、支持基板11上にナノ粒子層13を単層で形成することができる。
【0041】
本発明の第1の実施形態に係るSi構造体を廃Si粉末から実際に製造し、SEMにより観察した結果を
図6〜
図9に示す。
図6は、製造したSi構造体を上面から見たSEM像を示し、
図7は、
図6の一部を更に拡大したSEM像を示し、
図8は、断面から見たSEM像を示す。
図6〜
図8から、下側の第1のSi微粒子からなるサブマイクロ粒子層12が、上側の第2のSi微粒子からなるナノ粒子層13に覆われているのが分かる。特に
図7から、上側のナノ粒子層13を構成する第2のSi微粒子がネットワーク状に繋がっていることが分かる。
【0042】
図9は、製造したSi構造体の
図8とは異なる箇所を断面から見たSEM像を示す。
図9から、上側のネットワーク状に繋がっている第2のSi微粒子からなるナノ粒子層13が一部剥がれて、下側の第1のSi微粒子からなるサブマイクロ粒子層12が露出しているのが分かる。
【0043】
図10は、
図5(a)に示すように支持基板11上に単層のサブマイクロ粒子層12のみを形成したSi構造体を廃Si粉末から実際に製造し、製造したSi構造体を上面から見たSEM像を示す。
図10から、被処理層10の上部から蒸発したSiはプロセスガスにより飛ばされて、サブマイクロ粒子層12のみが残存しているのが分かる。
【0044】
また、ラマン分光光度計によって、レーザ照射前後の廃Si粉末からなる試料表面のラマン散乱を測定した。ラマンスペクトルの測定結果を
図11に示す。
図11では、比較のために、単結晶Siウェハの測定結果も示す。
図11から、Siのラマンピーク位置は、単結晶Siが520cm
−1前後であり、結晶性が低下するにつれてピーク位置が低波数側へシフトし、半値幅が大きくなる。
図11から分かるように、レーザを照射することでピークが単結晶側にシフトし、且つ半値幅が小さくなっている。このことから、レーザ照射により廃Si粒子の結晶性よりも結晶性の良い微粒子が形成されていることが分かる。これは、レーザ照射により廃Siが溶融し、微粒子に凝固する際に再結晶が行われた結果であると考えられる。
【0045】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るSi構造体は、
図12に示すように、支持基板21と、支持基板21上に設けられ、Si微粒子を含むナノ粒子層22とを備える。支持基板21としては、例えばガラス基板等の透明基板が使用可能である。ナノ粒子層22を構成するSi微粒子は、本発明の第1の実施形態に係るSi構造体のナノ粒子層13を構成する第2のSi微粒子と同様に、ナノメートルオーダの粒子径を有するナノ粒子である。ナノ粒子層22を構成するSi微粒子は、例えば10nm〜100nm程度の粒子径を有していてもよい。なお、本発明の第2の実施形態に係るSi構造体は、支持基板21が無く、ナノ粒子層22の単体構造であってもよい。
【0046】
本発明の第2の実施形態に係るSi構造体によれば、ナノメートルオーダの粒子径を有するナノ粒子を含むナノ粒子層22を有するので、光学的特性及び電気的特性が良好な材料を実現できる。例えば、ナノ粒子層22をリチウムイオン電池の負極(Si負極)として用いて、充放電による激しい体積膨脹・収縮に起因する電極の割れや寿命低下を防ぐことができる。したがって、長寿命・高容量の高性能の次世代リチウムイオン電池及びリチウムイオンキャパシタを実現可能とする。また、太陽電池へ応用する場合、光の吸収性が大幅に向上するため、極めて高い効率の太陽光発電が可能となる。
【0047】
<製造装置>
本発明の第2の実施形態に係るSi構造体の製造には、例えば
図14に示すような製造装置を用いることが可能である。本発明の第2の実施形態に係るSi構造体の製造装置は、
図3に示した本発明の第1の実施形態に係るSi構造体の製造装置と同様に、被処理基体(31,32)を載置可能なステージ2と、被処理基体(31,32)の上面にプロセスガスを導入して反応空間を定義する反応容器1と、被処理基体(31,32)にパルスレーザ光L2を照射するレーザ照射装置3と、レーザ照射装置3を制御する制御装置4とを備える。レーザ照射装置3にはプロセスファイバ30aが接続されている。制御装置4は、レーザ照射装置3のパルスレーザ光L2の出力、繰り返し周波数及び走査速度等を調整する。
【0048】
本発明の第2の実施形態に係るSi構造体の製造装置は、
図14に示すように、ステージ2上の被処理基体(31,32)の被処理層32と下面が対向する位置に配置された透明基板(支持基板)21を更に備える点が、
図3に示した本発明の第1の実施形態に係るSi構造体の製造装置の構成と異なる。支持基板31と透明基板21との距離Dは例えば2mm程度である。透明基板21は、レーザ照射装置3からのパルスレーザ光L2を透過可能な材料からなり、透明基板21として例えばガラス基板が使用可能である。
【0049】
レーザ照射装置3は、パルスレーザ光L2を透明基板21を透過させて、被処理層32に照射する。これにより、被処理層32の一部32aがアブレーションされ、プラズマP2となる。パルスレーザ光L2は、例えば出力が1W〜3W、スポット径が100μm、ビーム品質がTEM_00、波長が532nm、繰り返し周波数が4.8kHz、パルス幅が15.4nsecである。パルスレーザ光L2の照射角度θ2は、例えば0°〜45°程度の範囲で適宜設定可能である。パルスレーザ光L2の照射角度θ2は、被処理層32の上面の法線に対してなす角度である。なお、パルスレーザ光L2の照射角度θ2は、支持基板31の下面にSi微粒子が堆積したときに、堆積したSi微粒子によりパルスレーザ光L2が遮断されるのを回避するように、所定の角度を有していることが好ましい。
【0050】
パルスレーザ光L2は、走査速度0.8mm/秒〜800mm/秒程度で被処理層32上を2次元方向に走査する。
図14では、被処理層32の左側から中央付近まで、パルスレーザ光L2が走査方向S2に走査した場合を例示している。パルスレーザ光L2の走査は、光ファイバ3aを移動させてもよく、被処理基体(31,32)を搭載したステージ2を移動させてもよい。パルスレーザ光L2の照射時には、反応容器1内にN
2ガス又はArガス等のプロセスガスを導入してもよい。また、反応容器1内のプロセスガスの圧力を0.2Pa程度としてもよい。
【0051】
<製造方法>
本発明の第2の実施形態に係るSi構造体の製造に際しては、
図13に示すように、支持基板(下基板)31上にSi粉末を含む被処理層32を厚さ数十μm〜1mm程度に設定した被処理基体(31,32)を用意する。被処理層32の形成方法は特に限定されない。例えば、Si粉末をバインダと混合してスラリーを作製し、塗工機等を用いて支持基板31上にスラリーを塗布し、その後乾燥させてもよい。Si粉末の粒子径は例えば1〜3μm程度である。Si粉末としては、例えば純Siが使用可能であることは勿論であるが、純Siの代わりに廃Si粉末を使用することができる。
【0052】
そして、
図14に例示したような第2の実施形態に係るSi構造体の製造装置を用いて、パルスレーザ光L2のエネルギにより被処理層32の上部の一部32aを蒸発させてプラズマP2を生成する。蒸発したSiは反応容器1内のプロセスガスに触れて凝固及び凝集することにより結晶化し、被処理層32の上方に位置する支持基板21の下面に堆積する。この結果、Si粉末よりも粒子径が小さいナノメートルオーダの粒子径のSi微粒子を含むナノ粒子層22が形成され、
図12に示したSi構造体が完成する。なお、ナノ粒子層22を堆積した支持基板21は溶剤等を用いてナノ粒子層22から剥離してもよい。
【0053】
本発明の第2の実施形態に係るSi構造体の製造装置及び製造方法によれば、ナノメートルオーダの粒子径のSi微粒子を含むナノ粒子層22を効率よく製造可能となる。更に、純Siウェハの代わりに、半導体産業でSiインゴットを切断するときに大量に排出されている廃Si粉末を使用することにより、産業廃棄物から極めて低い原料コストを実現可能となる。
【0054】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。