【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造推進事業(CREST)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<配向性を有する短繊維−細胞複合凝集塊の製造方法>>
一実施形態において、本発明は、配向性を有する短繊維−細胞複合凝集塊を製造するための方法であって、0.1質量%未満の短繊維と、5.0×10
4個/mL以上1.0×10
5個/mL以下の細胞とを含む培養液を調製し、培養することで配向性を持たせながら凝集させる培養工程を備え、前記短繊維の平均長が10μm以上500μm以下であり、かつ平均直径が200nm以上4μm以下であり、前記短繊維の表面にポリマーブラシが形成されている製造方法を提供する。
【0019】
本実施形態の製造方法によれば、繊維及び細胞の配向性が制御された短繊維−細胞複合構造を有する凝集塊を簡便に製造することができる。
【0020】
従来の短繊維−細胞複合凝集塊では、配向性を持たせるために、特定方向の圧力、又は磁場等の外部場を与えることが必要であった(参考文献:特開2010−148691号公報、特表2012−519537号公報、及び特開2008−6128号公報等)。
これに対し、本実施形態の製造方法では、短繊維及び細胞を特定の濃度で混合培養することにより、一定の方向に配向された短繊維−細胞複合構造を自己組織的に構成された短繊維−細胞複合凝集塊を得ることができる。さらに、得られた短繊維−細胞複合凝集塊同士を所望の角度、例えば、細胞として角膜実質細胞を用いた短繊維−細胞複合凝集塊同士を90度ずらして積層しラメラ構造を形成させることで、角膜の再生等に使用することができる。
【0021】
<短繊維>
本実施形態の製造方法に用いられる短繊維は、従来の微粒子等の足場材料と比較して、大きなアスペクト比を有する。これにより、細胞と共に凝集させると、従来の微粒子等の足場材料では微粒子同士が密集してしまうのに対し、短繊維同士が密集することなく、一定の配向性を持ちながら、短繊維間に十分な隙間を残した状態で凝集が起こる。従って、このようにして形成された短繊維−細胞複合凝集塊は、多数の孔が自己形成された多孔質城となるので、形成された短繊維−細胞複合凝集塊のサイズが大きい場合でも、表面から内部までの酸素や栄養の供給、又は細胞からの老廃物や有用産物の外部への放出のための循環系として機能する多数の経路を有することができる。
【0022】
短繊維のサイズとしては、生体内に存在するコラーゲン線維等の細胞外マトリックスのサイズに近しい短繊維であって、細胞よりも短繊維の平均長が長いことが好ましく、使用する細胞の種類に応じて適宜調整すればよい。より具体的には、短繊維のサイズは平均長が10μm以上500μm以下であることが好ましい。また、その平均直径は200nm以上4μm以下であることが好ましい。
短繊維の平均長が上記下限値以上であることにより、初期の細胞密度の制御や異方性の制御することができる。一方、短繊維の平均長が上記上限値以下であることにより、短繊維の絡み合いが起こることを防ぎ、短繊維の充分な分散状態を得ることができる。
また、短繊維の平均直径が上記下限値以上であることにより、細胞同士の接着を抑制することができ、大きな細胞凝集塊を作成した場合に、内部への栄養供給を担保することができる。一方、短繊維の平均直径が上記上限値以下であることにより、形成細胞凝集塊における細胞の占める割合が少なくなることを防ぎ、高機能な細胞凝集塊を得ることができる。
【0023】
本実施形態の製造方法に用いられる短繊維の材料としては、細胞毒性のないものであればよく、繊維表面に細胞が接着するもの、及び水(培地)中での分散性があるものが好ましい。例えば、短繊維の材料としては、無機化合物、天然有機高分子化合物、合成高分子有機化合物、及びこれらの複合体等が挙げられる。
また、これらの材料には、細胞の接着性を促進させる官能基(例えば、アミン基、カルボキシ基、チオール基等)を有する、又は細胞の接着性を促進させる低分子化合物(例えば、RGDモチーフ等)が吸着若しくは結合していてもよい。
また、短繊維の材料としては、生体適合性を有する材料であることが好ましく、生体吸収性を有する材料であることがより好ましい。
【0024】
なお、本明細書において、「生体適合性」とは、生体組織と材料との適合性を示す評価基準を意味し、「生体適合性を有する」とは、材料それ自体が毒性を有さず、内毒素等の微生物由来の成分を有さず、生体組織を物理的に刺激することなく、生体組織を構成するタンパク質や細胞等と相互作用しても拒絶されない状態を意味する。
また、本明細書において、「生体吸収性」とは、生体内に一定期間、材料がその形状又は物性を保持し、その後分解及び吸収されることで生体内への導入部分から消失しうる性質を意味する。
【0025】
生体適合性を有する無機化合物としては、例えば、炭素の同素体(例えば、フラーレン等)、セラミックス(例えば、ヒドロキシアパタイト等)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0026】
生体適合性を有する天然有機高分子化合物としては、例えば、細胞外マトリックス由来成分、多糖類(例えば、アルギネート、セルロース、デキストラン、プルラン(pullulane)、ポリヒアルロン酸、及びそれらの誘導体等)、キチン、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(特に、ポリ(β−ヒドロキブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート))、ポリ(3−ヒドロキシ脂肪酸)、フィブリン、寒天、アガロース等が挙げられ、これらに限定されない。
前記細胞外マトリックス由来成分としては、例えば、コラーゲン(例えば、I型、II型、III型、V型、XI型等)、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ゼラチン等が挙げられ、これらに限定されない。
前記セルロースには、合成により改質されたものも含み、例えば、セルロース誘導体(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、キトサン等)等が挙げられる。より具体的なセルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローススルフェートナトリウム塩等が挙げられる。
【0027】
生体適合性を有する合成有機高分子化合物としては、例えば、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド(例えば、ナイロン等)、ポリエステルアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ無水物、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアクリレート(アクリル樹脂)、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン等)、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール等)、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド等)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオルトエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンゼン、4−ポリビニルベンゼン−2−ブロモプロピオネート、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリヒドロキシ酸(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド等)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリ[ラクチド−co−(ε−カプロラクトン)]、ポリ[グリコリド−co−(ε−カプロラクトン)]等)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、及びこれらのコポリマー等が挙げられ、これらに限定されない。
前記ポリアクリレート(アクリル樹脂)としてより具体的には、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)等が挙げられる。
【0028】
中でも、本実施形態における短繊維としては、合成有機高分子化合物を材料とする電界紡糸ファイバー、セルロースを材料とするセルロースナノファイバー、又はフラーレンを材料とするフラーレンナノウィスカが好ましい。
【0029】
短繊維の製造方法としては、例えば、各種材料からナノファイバーを簡便に製造できる電界紡糸法によって長い繊維を作製し、次いで、得られた長繊維を切断し、短繊維である短繊維を製造する方法等が挙げられる。切断方法としては、例えば、液−液界面に繊維を置いてホモジナイザー等の回転刃により行う方法等が挙げられる。また、使用したい材料を所望の平均直径に紡糸できるのであれば、他の公知の紡糸方法を使用してもよい。
【0030】
その他の短繊維の製造方法としては、例えば、材料がセルロースである場合、セルロースナノファイバーを製造する公知の方法を用いて製造することができる。具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル(TEMPO)等による酸化処理を含む工程により製造することができる。セルロースがTEMPOにより酸化されると、微小繊維の表面のC6位のヒドロキシル基がカルボン酸ナトリウムに変換される。これにより、エネルギー消費の低い穏やかな条件下で、浸透圧や静電気的な反発力等により微小繊維を個々にほぐし、セルロースナノファイバーを得ることができる。
【0031】
また、その他の短繊維の製造方法としては、例えば、材料がフラーレンである場合、フラーレンナノウィスカを製造する公知の方法を用いて製造することができる。具体的には、液−液界面析出法(液−液界面法、液−液法、liquid−liquid interfacial precipitation method、LLIP 法)によって、常温で合成することができるフラーレンナノウィスカを得ることができる。液−液界面析出法とは、トルエン、メタキシレン、ピリジン等のフラーレンの良溶媒飽和溶液に、フラーレンの貧溶媒であるアルコール(例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブチルアルコール等)を加えて液−液界面を形成し、フラーレンナノウィスカの析出と成長を行わせる方法である。液−液法によるフラーレンナノウィスカの合成は、ガラスビンにフラーレンの上記飽和溶液を入れ、その上にアルコールを重層して、約20℃以下の冷所に静置することによって行うことができる。
【0032】
また、短繊維は表面にポリマーブラシが形成されていることが好ましい。さらに、前記ポリマーブラシは親水性を有する材料からなることが好ましい。
表面にポリマーブラシが形成された短繊維を使用することにより、短繊維表面に親水性を付与して水流への分散性を向上させること、又は細胞との親和性を向上させることができる。
前記ポリマーブラシを構成する親水性を有する材料としては、天然有機高分子化合物の誘導体(例えば、細胞と特異的に結合可能な糖鎖等を側鎖に有する天然高分子化合物等)であってもよく、合成有機高分子化合物であってもよい。
前記無機化合物としては、短繊維の材料として上述したものと同様のものが挙げられる。
前記天然有機高分子化合物としては、短繊維の材料として上述したものと同様のものが挙げられる。
前記合成有機高分子化合物としては、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリスチレンスルホン酸塩(例えば、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸カルシウム等)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール等)、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド等)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオルトエステル、ポリビニルエーテル、ポリヒドロキシ酸(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド等)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリ[ラクチド−co−(ε−カプロラクトン)]、ポリ[グリコリド−co−(ε−カプロラクトン)]等)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、及びこれらのコポリマー等が挙げられ、これらに限定されない。
【0033】
<細胞>
本実施形態の製造方法において用いられる細胞としては、例えば、生殖細胞(精子、卵子等)、生体を構成する体細胞、幹細胞、前駆細胞、生体から分離されたがん細胞、生体から分離され不死化能を獲得して体外で安定して維持される細胞(細胞株)、生体から分離され人為的に遺伝子改変された細胞、生体から分離され人為的に核が交換された細胞等が挙げられ、これらに限定されない。
【0034】
生体を構成する体細胞としては、例えば、皮膚、腎臓、脾臓、副腎、肝臓、肺、卵巣、膵臓、子宮、胃、結腸、小腸、大腸、膀胱、前立腺、精巣、胸腺、筋肉、結合組織、骨、軟骨、血管組織、血液、心臓、眼、脳、神経組織等の任意の組織から採取される細胞等が挙げられ、これらに限定されない。体細胞として、より具体的には、例えば、線維芽細胞、骨髄細胞、免疫細胞(例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、好中球、マクロファージ、単球、等)、赤血球、血小板、骨細胞、骨髄細胞、周皮細胞、樹状細胞、表皮角化細胞(ケラチノサイト)、脂肪細胞、間葉細胞、上皮細胞、表皮細胞、内皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、肝細胞、膵島細胞(例えば、α細胞、β細胞、δ細胞、ε細胞、PP細胞等)、軟骨細胞、卵丘細胞、グリア細胞、神経細胞(ニューロン)、オリゴデンドロサイト、マイクログリア、星状膠細胞、心筋細胞、食道細胞、筋肉細胞(例えば、平滑筋細胞、骨格筋細胞等)、メラニン細胞、単核細胞等が挙げられ、これらに限定されない。
【0035】
幹細胞とは、自己を複製する能力と他の複数系統の細胞に分化する能力を兼ね備えた細胞である。幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞、胚性生殖幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、腸幹細胞、がん幹細胞、毛包幹細胞等が挙げられ、これらに限定されない。
【0036】
前駆細胞とは、前記幹細胞から特定の体細胞又は生殖細胞に分化する途中の段階にある細胞である。
【0037】
がん細胞とは、体細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞であり、周囲の組織に浸潤し、または転移を起こす悪性新生物である。がん細胞の由来となる癌としては、例えば、乳癌(例えば、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌等)、前立腺癌(例えば、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌等)、膵癌(例えば、膵管癌等)、胃癌(例えば、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌等)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫等)、結腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、直腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、大腸癌(例えば、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍等)、小腸癌(例えば、非ホジキンリンパ腫、消化管間質腫瘍等)、食道癌、十二指腸癌、舌癌、咽頭癌(例えば、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌等)、頭頚部癌、唾液腺癌、脳腫瘍(例えば、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫等)、神経鞘腫、肝臓癌(例えば、原発性肝癌、肝外胆管癌等)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、腎盂と尿管の移行上皮癌等)、胆嚢癌、胆管癌、膵臓癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌(例、上皮性卵巣癌、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍等)、膀胱癌、尿道癌、皮膚癌(例えば、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌等)、血管腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病等)、メラノーマ(悪性黒色腫)、甲状腺癌(例えば、甲状腺髄様癌等)、副甲状腺癌、鼻腔癌、副鼻腔癌、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、ユーイング腫瘍、子宮肉腫、軟部組織肉腫等)、転移性髄芽腫、血管線維腫、隆起性皮膚線維肉腫、網膜肉腫、陰茎癌、精巣腫瘍、小児固形癌(例えば、ウィルムス腫瘍、小児腎腫瘍等)、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、慢性骨髄増殖性疾患、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病等)等が挙げられ、これらに限定されない。
また、本明細書において、「癌」とは、診断名を表す際に用いられ、「がん」とは、悪性新生物の総称を表す際に用いられる。
【0038】
細胞株とは、生体外での人為的な操作により無限の増殖能を獲得した細胞である。細胞株としては、例えば、HCT116、Huh7、HEK293(ヒト胎児腎細胞)、HeLa(ヒト子宮頸がん細胞株)、HepG2(ヒト肝がん細胞株)、UT7/TPO(ヒト白血病細胞株)、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞株)、MDCK、MDBK、BHK、C−33A、HT−29、AE−1、3D9、Ns0/1、Jurkat、NIH3T3、PC12、S2、Sf9、Sf21、High Five、Vero等が挙げられ、これらに限定されない。
【0039】
中でも、細胞としては、繊維状に伸びる細胞であることが好ましく、具体的には、線維芽細胞、筋細胞、骨芽細胞、又はそれらに分化し得る細胞であることがより好ましい。
なお、一般に、「線維芽細胞」とは、結合組織の固有細胞であって、コラーゲン等の細胞外マトリックスを産生することが知られている。
前記結合組織は、固有結合組織、特殊結合組織、及び胚性結合組織に分類される。本実施形態の製造方法によって得られる短繊維−細胞複合凝集塊は、主に固有結合組織の再生に有用である。
前記固有結合組織は、さらに、疎性結合組織(器官や上皮を保持し、コラーゲンやエラスチンを含む多様なタンパク質性の細胞外マトリックスを有する。)、密性結合組織(靭帯や腱を形成し、強力な伸長強度を示すコラーゲン線維が詰め込まれている。繊維の配列に基づいて交織繊維性と平行線維性との2種類に細分される。)、脂肪組織(脂肪細胞で構成され、緩衝材、断熱材、潤滑剤、エネルギー貯蔵の役割を果たす。)、及び細網組織(リンパ器官(例えば、リンパ節、骨髄、脾臓等)を支持する軟骨格を形成する。)に分類される。
【0040】
例えば、靭帯は強靭な結合組織の短い束であって、主成分はコラーゲン線維であり、骨と骨とをつなぎ、関節を形成させる。
よって、本実施形態の製造方法において、細胞として線維芽細胞を使用し、一定の方向に配向させながら凝集させた短繊維−細胞複合凝集塊は靭帯の再生に有用である。
【0041】
例えば、角膜に存在する線維芽細胞は、角膜実質細胞と呼ばれ、細胞外マトリックスとしてI型コラーゲンを多く含み、コラーゲン線維が、きわめて整然と配列しており、直径及び線維間の距離が均一であることが特徴である。また、上述の通り、コラーゲン線維が規則正しく配向して密に会合した層が多数積層した構造が形成されており、上下の層がラメラ構造を形成しているために、透明度と物理的強度を維持している。
よって、本実施形態の製造方法では、使用する短繊維は平均長及び平均直径が制御されたものであり、さらに角膜実質細胞と共に培養することで、一定の方向に配向させながら凝集させた短繊維−細胞複合凝集塊を製造することができるため、得られた短繊維−細胞複合凝集塊は角膜実質の再生に有用である。
【0042】
また、線維芽細胞は、結合組織だけでなく、上皮組織(例えば、気管上皮、肺胞上皮、消化管上皮、胆管上皮、尿細管上皮、角膜上皮等)の直下、筋組織、神経組織中にも分布しており、最近の研究では、分化誘導により、血管内皮細胞、筋線維芽細胞、神経細胞(例えば、ドパミン作動性ニューロン等)、脂肪細胞等に分化させることが明らかとなった。
前記筋線維芽細胞とは、線維芽細胞の亜種であり、筋細胞にも分類される細胞である。皮膚の創傷治癒過程において、線維芽細胞がαアクチンを発現する強い収縮能をもつ筋線維芽細胞へと分化し、さらに盛んな免疫応答をかねそなえた平滑筋様の細胞へと変化することが知られている。
よって、本実施形態の製造方法において、細胞として線維芽細胞を使用し、線維芽細胞を筋線維芽細胞に分化させて、一定の方向に配向させながら凝集させた短繊維−細胞複合凝集塊を製造することができる。さらに、得られた短繊維−細胞複合凝集塊と筋細胞とを共培養することで、骨格筋又は内臓筋等の筋系の器官を構築することができる。
【0043】
また、本明細書において、「それらに分化し得る細胞」とは、線維芽細胞、筋細胞、又は骨芽細胞に分化することができる未分化細胞を意味する。線維芽細胞、筋細胞、又は骨芽細胞に分化し得る細胞としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞、胚性生殖幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、間葉系幹細胞等が挙げられる。
【0044】
[培養工程]
まず、短繊維と細胞とを含む培養液を調製する。次いで、前記調製した培養液を培養することで、短繊維と細胞とを配向性を持たせながら凝集させる。
【0045】
培養液に含まれる短繊維の濃度としては、0.1質量%未満であり、0.01質量%以上0.1質量%未満であることが好ましく、0.02質量%以上0.1質量%未満であることがより好ましい。
培養液に含まれる短繊維の濃度が上記範囲であることにより、細胞と共培養させた際に、一定の方向に配向させながら凝集することができる。
【0046】
培養液に含まれる細胞濃度としては、5.0×10
4個/mL以上1.0×10
5個/mL以下であり、6.0×10
4個/mL以上8.0×10
4個/mL以下であることが好ましい。
培養液に含まれる細胞濃度が上記範囲であることにより、短繊維と共培養させた際に、一定の方向に配向させながら凝集することができる。
【0047】
本実施形態の培養工程において用いられる培養液は、細胞の生存増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン)等を含む基礎培養液であればよく、細胞の種類により適宜選択することができる。前記培養液としては、例えば、DMEM、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI−1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium:Nutrient Mixture F−12(DMEM/F−12)、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0048】
また、本実施形態の培養工程において、前記培養液はさらに血清、又は成長因子を含んでいてもよい。
前記血清としては、例えば、FBS/FCS(Fetal Bovine/Calf Serum)、NCS(Newborn Calf serum)、CS(Calf Serum)、HS(Horse Serum)等が挙げられ、これらに限定されない。
細胞培養液に含まれる血清の濃度は、例えば2質量%以上10質量%以下であればよい。
【0049】
また、本実施形態の培養工程におい 前記成長因子としては、例えば、細胞増殖因子、分化誘導因子、細胞接着因子等が挙げられ、これらに限定されない。例えば、分化誘導因子を含むことにより、注入する細胞が幹細胞、又は前駆細胞等である場合、該幹細胞、又は前駆細胞を分化誘導し、所望の組織を再現した短繊維−細胞複合凝集塊を構築させることができる。
前記成長因子としてより具体的には、例えば、血管内皮成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor:VEGF)、内皮細胞成長因子(Endothelial cell growth factor:ECGF)、内皮細胞増殖因子(Endothelial cell growth supplement:ECGS)、内皮細胞由来成長因子(Endothelial cell−derived growth factor:ECDGF)、上皮成長因子(Epidermal growth factor:EGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(acidic fibroblast growth factor:aFGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、インスリン様成長因子−1(Insulin―like growth factor−1:IGF−1)、マクロファージ由来成長因子(Macrophage−derived growth factor:MDGF)、血小板由来成長因子(Platelet−derived growth factor:PDGF)、腫瘍血管新生因子(Tumor angiogenesis factor:TAF)等が挙げられる。これらの成長因子を単独で含んでいてもよく、複数組み合わせて含んでいてもよい。
培養液に含まれる成長因子の濃度は、特別な限定はなく、例えば1ng/mL以上10μg/mL以下であればよい。
【0050】
培養液にはさらに、以下に例示するホルモン、抗生物質等のその他の添加物を含有していてもよい。
【0051】
培養液に含まれるホルモンとしては、例えば、インシュリン、グルカゴン、トリヨードチロニン、副腎皮質ホルモン等が挙げられる。これらのホルモンを単独で含んでいてもよく、複数組み合わせて含んでいてもよい。細胞培養用培地に含まれるホルモンの濃度は、特別な限定はなく、例えば1ng/mL以上10μg/mL以下であればよい。
【0052】
培養液に含まれる抗生物質としては、例えば、ゲンタマイシン、アンフォテリシン、アンピシリン、ミノマイシン、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタシン、タイロシン、オーレオマイシン等、通常の動物細胞の培養に用いられるものが挙げられる。これらの抗生物質を単独で含んでいてもよく、複数組み合わせて含んでいてもよい。細胞培養用培地に含まれる抗生物質の濃度は、特別な限定はなく、例えば0.1μg/mL以上100μg/mL以下であればよい。
【0053】
本実施形態の培養工程において、培養条件としては、培養する細胞の種類により適宜選択することができる。
培養温度としては、例えば25℃以上40℃以下であってもよく、例えば30℃以上39℃以下であってもよく、例えば35℃以上39℃以下であってもよい。
また、培養環境は、例えば約5%のCO
2条件下であってもよい。
培養時間としては、細胞の種類、細胞数等により適宜選択することができ、例えば1日以上10日以下であってもよく、例えば2日以上8日以下であってもよく、例えば4日以上14日以下であってもよい。
【0054】
本実施形態の製造方法により得られた短繊維−細胞複合凝集塊は、膜厚が大きく、例えば、10μm以上500μm以下となる。
また、短繊維−細胞複合凝集塊内において、短繊維と細胞とは均一に分散した状態で配向している。
【0055】
<紡糸繊維−細胞複合凝集塊の用途>
本実施形態の製造方法により得られた短繊維−細胞複合凝集塊は、一定の配向を有する組織(例えば、角膜、靭帯等)の再生に用いることができる。また、得られた短繊維−細胞複合凝集塊同士を所望の角度ずらして積層させることで、複雑な構造を有する組織を再生することができる。より具体的には、例えば、細胞として角膜実質細胞を用いた短繊維−細胞複合凝集塊同士を90度ずらして積層しラメラ構造を形成させることで、角膜の再生等に使用することができる。
【0056】
本明細書において、「組織」とは、1種類の幹細胞が分化していく一定の系譜に基づいたパターンで集合した構造の単位を示し、全体として一つの役割を有する。例えば、表皮角化細胞は、表皮の基底層に存在する幹細胞が有棘層を経て顆粒層を構成する細胞へと分化し、終末分化して角質層を形成することで、表皮としてのバリア機能を発揮している。
よって、本実施形態の製造方法により得られた短繊維−細胞複合凝集塊は、1つの細胞系譜に由来する1種類の細胞を含む短繊維−細胞複合凝集塊を構築することにより、例えば、上皮組織、結合組織(例えば、角膜実質、靭帯等)、筋組織、神経組織等を再現することができる。
また、本明細書において、「器官」とは、2種類以上の組織から構成され、全体として一つの機能を担う。よって、本実施形態の製造方法により得られた短繊維−細胞複合凝集塊は、細胞系譜の異なる少なくとも2種類の細胞を含む短繊維−細胞複合凝集塊を構築することにより、例えば、角膜、骨格筋、胃、腸、肝臓、腎臓等を再現することができる。
【0057】
また、本実施形態の製造方法により得られた短繊維−細胞複合凝集塊から、細胞を任意の方法を用いて除去することで、配向性を持った短繊維集合体を得ることができる。このような短繊維集合体はランダムな構造の短繊維集合体と比較して、良好な光学特性、機械強度等を有する。
よって、前記短繊維集合体は、細胞と共に再度共培養することで、手間をかけずに細胞に配向性を付与できる。そのため、配向性を必要とする組織(例えば、角膜実質、靭帯等)の再生のための足場材料として再利用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
[製造例1]
(1)短繊維の製造
(1−1)繊維の調製工程
まず、以下の式(1)に示す反応により、原始移動ラジカル重合(ATRP)の開始基を有する4-ビニルベンゼン−2-ブロモプロピオネート(4−vinylbenzyl−2−bromopropionate)(VBP)とスチレン(ST)のランダム共重合を行った。得られた共重合体であるポリ(ST−r−VBP)(Mn=175300、Mw/Mn=2.54)を用いて電界紡糸を行い、直径1.45〜1.54μmの電界紡糸繊維(不織布)を得た。
【0060】
【化1】
【0061】
(2)ポリマーブラシ形成工程(濃厚ポリマーブラシのグラフト重合)
図1は、短繊維の製造方法でのポリマーブラシ形成工程及び切断工程を示す概略図である。
図1に示す工程に従い、(1)で得られた不織布から短繊維を製造した。
具体的には、この不織布を含むスチレンスルホン酸ナトリウム(styrene sodium sulfonate;SSNa)、フリー開始剤(ブロモポリエチレングリコール)、Cu(I)Br、Cu(II)Br
2、2,2−ビピリジン(2,2’−bipyridine)の1/3v/v%メタノール/水の溶液をAr雰囲気下、30℃で4時間加熱撹拌した。以下の表1にMn、Mn/Mw、理論分子量(Mn,c)、及びグラフト密度を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から、分子量分布が1.3程度と比較的狭く、重合率から算出される理論分子量がGPCの結果とほぼ一致することから、重合がリビング的に進行していることがわかった。
また、グラフト密度から、電界紡糸繊維表面から伸びているポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)ブラシは濃厚ポリマーブラシであることが確認できた。
なお、No.1〜4の繊維を実施例1に使用し、No.5、6の繊維を実施例2及び3において使用した。
【0064】
(3)切断工程
次いで、得られた表面にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが被覆された短繊維(不織布)を水とヘキサンとの液−液界面に置き、この状態でホモジナイザーにより、3時間かけて切断を行った。切断後の短繊維化した短繊維の平均長は100〜150μmであった。
【0065】
[実施例1]ヒヨコ角膜実質細胞を用いた短繊維−細胞複合凝集塊の調製
(1)短繊維懸濁培地の調製
製造1において得られた短繊維を70%エタノールに1時間分散させ、簡易的に滅菌を行った。次いで、クリーンベンチ内において、リン酸化緩衝液で十分に洗浄し、アルコールを除去した。これに10%FBSを含むEagle MEM培地を加え、短繊維懸濁培地を作成した。
【0066】
(2)培養工程
ヒヨコ角膜実質細胞を用いて、細胞播種密度を6×10
4個/mLに固定し、短繊維濃度が0.2質量%、0.1質量%、及び0.02質量%になるよう調製した。ここでは、参照サンプルとして、培養1日のみ、直径1μm又は10μmの直径が異なるシリカ粒子に濃厚PSSNaブラシをグラフトしたものを用意し、同様に細胞と共に培養した。
次いで、各混合溶液を細胞培養用シャーレに播種し、炭酸ガスインキュベーター内で37℃、1、2、及び7日間静置し、短繊維−細胞複合凝集塊を得た。なお、7日のサンプルは培養4日目に培地交換を行った。
【0067】
(3)位相差顕微鏡及び走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)による観察
培養開始から1日後の短繊維−細胞複合凝集塊、又は直径1μm若しくは10μmのシリカ粒子−細胞複合凝集塊を、位相差顕微鏡を用いて観察した結果を
図3に示す。
また、培養開始から1日後、2日後、及び7日後の短繊維−細胞複合凝集塊、又は直径1μm若しくは10μmのシリカ粒子−細胞複合凝集塊を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて観察した結果を
図4〜6に示す。なお、
図6において、縦の系列の画像はそれぞれ、一番上の画像について拡大倍率を上げて観察していたものである。
【0068】
図3及び4から、シリカ粒子を使用したものでは、凝集塊が形成されていなかった。一方、短繊維を使用したものでは、細胞と自己凝集していることが確認できた。
【0069】
また、
図5及び6から、培養2日後及び7日後においても培養1日後と同様に、凝集塊が観察された。特に、培養7日後では、短繊維濃度が0.02質量%の凝集塊において、一方向に繊維が配向していることが確認された(
図6における0.02質量%の系列の画像の白矢印参照。)。また、0.1、0.2質量%の凝集塊においても一部、繊維の配向が認められた。
このことから、短繊維と細胞の濃度を調整することで、繊維を自発的に配向できることが明らかとなった。
【0070】
[実施例2]マウス繊維芽細胞(L929細胞)を用いた短繊維−細胞複合凝集塊の調製
(1)短繊維懸濁培地の調製
製造1において得られた短繊維を70%エタノールに1時間分散させ、簡易的に滅菌を行った。次いで、クリーンベンチ内において、リン酸化緩衝液で十分に洗浄し、アルコールを除去した。これに10%FBSを含むDMEM培地を加え、短繊維懸濁培地を作成した。
【0071】
(2)培養工程
マウス繊維芽細胞(L929細胞)を用いて、細胞播種密度を8×10
4個/mLに固定し、短繊維濃度が0.1質量%、及び0.02質量%になるよう調製した。
次いで、各混合溶液を細胞培養用シャーレに播種し、炭酸ガスインキュベーター内で37℃、2、9、及び14日間静置し、短繊維−細胞複合凝集塊を得た。なお、それぞれのサンプルについて2日おきに培地交換を行った。
【0072】
(3)SEMによる観察
培養開始から2日後、9日後、及び14日後の短繊維−細胞複合凝集塊を、SEMを用いて観察した結果を
図7〜9に示す。なお、
図7〜9において、縦の系列の画像はそれぞれ、一番上の画像について拡大倍率を上げて観察していたものである。
【0073】
図7〜9から、凝集塊内の全体は不明であるが、凝集塊内上部の一部において配向していることが確認された。
【0074】
(4)共焦点レーザー顕微鏡による観察
次に、培養開始から9日後の短繊維−細胞複合凝集塊内部の3次元構造を共焦点レーザー顕微鏡により観察した。観察に先立ち、細胞の核を青(
図10では灰色)、細胞骨格を赤(
図10では白色)に蛍光染色した。結果を
図10に示す。
【0075】
図10から、短繊維濃度が0.02質量%の凝集塊では、内部で細胞が一方向に配向している(
図10における0.02質量%の画像の白矢印参照。)のことが確認できた。また、0.1質量%の凝集塊においても、一部配向が認められた。
また、配向性については培養開始から9日後に確かめられたが、培養開始から14日後においても配向性を保ちながらマウス繊維芽細胞(L929細胞)を培養できることが確かめられた。
【0076】
[実施例3]ヒト骨肉腫細胞(MG63細胞)を用いた短繊維−細胞複合凝集塊の調製
(1)短繊維懸濁培地の調製
製造1において得られた短繊維を70%エタノールに1時間分散させ、簡易的に滅菌を行った。次いで、クリーンベンチ内において、リン酸化緩衝液で十分に洗浄し、アルコールを除去した。これに10%FBSを含むMEM培地を加え、短繊維懸濁培地を作成した。
【0077】
(2)培養工程
ヒト骨肉腫細胞(MG63細胞)を用いて、細胞播種密度を8×10
4個/mLに固定し、短繊維濃度が0.1質量%、及び0.02質量%になるよう調製した。
次いで、各混合溶液を細胞培養用シャーレに播種し、炭酸ガスインキュベーター内で37℃、2、及び4日間静置し、短繊維−細胞複合凝集塊を得た。なお、それぞれのサンプルについて2日目に培地交換を行った。
【0078】
(3)SEMによる観察
培養開始から4日後の短繊維−細胞複合凝集塊を、SEMを用いて観察した結果を
図11に示す。
図11において、縦の系列の画像はそれぞれ、一番上の画像について拡大倍率を上げて観察していたものである。
【0079】
図11から、短繊維濃度が0.02質量%の凝集塊では、凝集塊の上部が配向していることが確認できた(
図11における0.02質量%の画像の白矢印参照。)。
【0080】
(4)共焦点レーザー顕微鏡による観察
次に、培養開始から4日後の短繊維−細胞複合凝集塊内部の3次元構造を共焦点レーザー顕微鏡により観察した。観察に先立ち、細胞の核を青(
図12では灰色)、細胞骨格を赤(
図12では白色)に蛍光染色した。結果を
図12に示す。
【0081】
図12から、短繊維濃度が0.02質量%の凝集塊では、凝集塊内部が配向している様子が確認できた(
図12における0.02質量%の画像の白矢印参照。)。