【実施例】
【0020】
浮上力もしくは空気膜は空気圧と空気流量に依存する。これらの条件が同一でも、噴出孔13の周辺の円板12の形状によって浮上力がかなり変化することがわかった。そこで
図2、
図3に示すような板状体を用意して、実験を行った。
【0021】
図2(a)は、板状体の一例である板30の平面を示す。板30は、
図2(a)に示すように、縦横の寸法L
H,L
Vがそれぞれ280mmとされた正方形の輪郭を有する。
図2(b)は、板30の平面輪郭をもつ板P1の断面を示す。板P1は、
図2(b)に示すように、底面32がフラットになっている。
図2(c)は、板30の平面輪郭をもつ板P2を示す。板P2は、
図2(c)に示すように、底面の周囲34に幅W
1が20mmの縁を設け、かつ周囲34の内側35に0.05mmの段差(深さH
1の凹部)を設けた形状となっている。一方、
図3(a)は、板状体の一例である円板37の平面を示す。円板37は、外径Dが280mmとなっている。
図3(b)は、円板37の平面輪郭をもつ円板P3の断面を示す。円板P3は、底面38が段差なしのフラットになっている。
図3(c)は、円板37の平面輪郭をもつ円板P4の断面を示す。円板P4の底面には、周囲から中央に向けて中央で深さH
2が0.1mmとなる均一なテーパ状の凹部39が形成されている。
図3(d)は、円板37の平面輪郭をもつ円板P5の断面を示す。円板P5の底面には、周囲に形成された幅W
2が20mmのリング状平面部40と、その内側を中央での深さH
3が0.1mmとなるテーパ状に形成された凹部41とが形成されている。いずれも浮上部分の重量が150kgとなるように、板P1〜板P5の上面にウエイトを載せて調整した。
【0022】
供給する空気圧を変化させて浮上量を測定した。その結果を
図4、
図5に示す。
図4では、「△」のマークをプロットした曲線が板P1を用いた結果を、「×」のマークをプロットした曲線が板P2を用いた結果を示す。
図5では、「○」のマークをプロットした曲線が円板P3を用いた結果を、「□」のマークをプロットした曲線が円板P4を用いた結果を、「●」のマークをプロットした曲線が円板P5を用いた結果をそれぞれ示す。結果として、
図4に示す平面輪郭が正方形の板P1、板P2、および
図5に示す円板P4を用いた場合には、曲線が寝ていて、大きく浮上させるにはそれなりの高い空気圧が必要であるのに対して、
図5に示す円板P3および円板P5を用いた場合は曲線が立っていて、特に円板P5を用いた場合には圧力に対する浮上量が大きく、優れていることが認められた。
【0023】
目標浮上量を例えば0.03mmとして曲線を横にたどって見ると、
図4に示す板P1と板P2とを用いた場合には0.1〜0.2MPa程度の違いがあるし、
図5に示す円板P4と円板P5とを用いた場合にはさらに大きな差が認められる。
【0024】
結論として、円板P5を用いた場合、すなわち、
図3(d)に示したように、円板37の底面が、外縁のリング状平面部40と、リング状平面部40の内側に圧縮空気の噴出孔13を中心として形成される浅い円錐(テーパ)状の凹部41とで構成されているものが最も好ましいと言える。ここで、円錐状の凹部41の深さ(前記噴出孔13の部分における深さである最大深さ)は、0.1mm程度が好ましいが、通常生じることが想定される加工誤差があってもよい。
【0025】
板状体が正方形よりも円形であるほうが優れているのは、噴出孔13から縁部までが等距離であり、浮上効果を得るのに無駄がないことで理解できる。また,テーパ状の凹部41の周囲にリング状平面部40があると、噴出する空気流(空気膜)の厚みが保証され、設置面17の凹凸等によらず、浮上が安定することが想像できる。
【0026】
好ましい円板50の実施例を
図6および
図7に示す。
図6は円板50の側面を、
図7は円板50の底面を示す。
図6および
図7にて、符号51は中央の噴出孔、符号52は円錐状の凹部、符号53はリング状平面部である。円板50の直径は例えば280mm、厚さは例えば20mm、円錐状の凹部52のテーパ角度は例えば0.04244°(半径135mmで中央の深さ0.1mm)、リング状平面部53の幅は例えば20mm、噴出孔51は例えばM5のタップ孔である。
【0027】
本発明は、上述した原理的な実施例の下に、より具体的には以下のように構成されている。より具体的な円板50を図8および
図9に示す。
図8はこの実施例の円板50の側面を、
図9は円板50の底面を示す
。図8および図9に示す円板50には、凹部52の全面に亘って複数個の噴出孔が設けられている。符号51a、51b、51cはいずれも噴出孔を示し、それらの開口径は、凹部52の中心から外周のリング状平面53に近づくに従って小さくなっている。すなわち、凹部52の中心側のものほど大きい開口径になっている。その理由は、それぞれの孔から噴出する空気による浮上効果をなるべく均一にするためである。凹部52の中心の噴出孔51aは必ずしも設けなくてもよい。符号54は圧縮空気を各噴出孔に分配するためのフードである。
【0028】
以上、上記実施形態や実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態や実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。例えば上記実施形態や実施例では、外縁のリング状平面部53は、本体部である平板体の外周端に設けたが、これに限らず、本体部である平板体の外周端(外周縁)から所定の間隔を置いた内周側の位置に設けられていてよい。また、本発明は、上記実施形態や実施例に記載した数値に限定されるものではない。
【0029】
さらに、本発明に係る空気パッドは、免震対象物と設置面との間に圧縮空気を供給して浮上力を生じさせ、あるいは水平方向の摩擦力を低減するように構成されていればよい。したがって本発明に係る空気パッドは、上記の実施形態で示したように免震対象物の下面に設ける代わりに、免震対象物の下面と対向する設置面に、免震対象物の下面に向けて設けられていてもよい。すなわち、圧縮空気を上向きに噴射するように構成されていてもよい。その場合、本体部を設置面の上面とは面一に一致するように設置面に埋め込むことがあるが、本体部は、リング状平面部が設置面から上側に突出した状態に埋め込むことが好ましい。言い換えれば、本体部を上述したように円板として構成し、これを設置面に埋め込んだ状態に配置する場合には、本体部の上側の所定寸法の部分が設置面から上側に突き出た状態に配置することが好ましい。