特許第6799324号(P6799324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799324
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】工具保持装置
(51)【国際特許分類】
   B25H 3/00 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   B25H3/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-100943(P2017-100943)
(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公開番号】特開2018-192606(P2018-192606A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】512120258
【氏名又は名称】株式会社トランストレード
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】林 敬二
(72)【発明者】
【氏名】岡本 元人
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−127072(JP,A)
【文献】 特開平10−66614(JP,A)
【文献】 特開平10−200614(JP,A)
【文献】 特開2001−239477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0178241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 3/00
A45C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面部にベルト(B)を挿通するベルト取付部(S1)を有しかつ正面部にホルダ(H)を装着する嵌入部(S2)を有する装着具(S)と、ホルダ(H)の背面に設けられていて前記装着具(S)の嵌入部(S2)に係脱自在に係合される係止体(3)とを有する工具保持装置であって、
前記装着具(S)は、背面部にベルト取付部(S1)を形成しかつ正面部にホルダ(H)の係止体(3)を上側から嵌め込み可能な嵌入部(S2)を形成したベース体(4)と、このベース体(4)の背壁前面に装着されていて嵌入部(S2)の背面を形成しかつ嵌入されたホルダ(H)の係止体(3)の下限位置を設定する中台(5)と、前記ベース体(4)内に配置されていて嵌入されたホルダ(H)の係止体(3)と係脱自在に係合して係止体(3)の抜け止めをする係合部材(6)とを有することを特徴とする工具保持装置。
【請求項2】
前記ホルダ(H)の係止体(3)は、板材の左右縁部に係合部材(6)と係合する被係止部(3A)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の工具保持装置。
【請求項3】
前記係合部材(6)は、ベース体(4)の背壁と中台(5)との間に配置されていて、中台(5)を貫通して嵌入部(S2)へ突出して係止体(3)の被係止部(3A)と係合する係合部(6A)と、嵌入部(S2)より外方まで突出していて係合部(6A)を後退可能な操作部(6B)とを有することを特徴とする請求項2に記載の工具保持装置。
【請求項4】
前記係合部材(6)は、係合部(6A)が係止体(3)の被係止部(3A)と係合しているときに中台(5)を貫通して嵌入部(S2)へ突出して係止体(3)の背面を弾圧する弾圧部(6C)を有することを特徴とする請求項3に記載の工具保持装置。
【請求項5】
前記ホルダ(H)の係止体(3)は、板材の中央側にベルト(B)を挿通可能なベルト孔部(3B)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の工具保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトに工具を保持しておく工具保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設、電気の現場作業者は、ペンチ、ハンマ、ニッパ等の工具を携帯するために、ベルトにカラビナ、差し込み筒等のホルダを取り付けて、そのホルダに工具を係合保持している。総ての工具を携帯することは困難であるため、作業内容に応じて必要な工具を用意し、その工具を保持するホルダをベルトに装着している。
この種の工具を保持する装置としては、特許文献1に開示されたツールホルダー具においては、上方向に解放される開放部を有し上下方向に延びる複数の係合部を当該片面側に設けたベース板と、前記開放部から前記係合部に着脱可能に差し込まれる差し込み部を当該背面側に突設させたホルダー部であって、前記係合部に前記差し込み部を差し込んで前記ベース板に支持されるとともにツールを保持するホルダー部と、を具備している(請求項1)。
【0003】
また、特許文献2に開示されたカラビナ工具差しにおいては、工具等を保持する環状取付具と、作業者のベルトに固定するベルト取付部を有するカラビナ工具差しであって、前記環状取付具は、周方向の一部の隙間と前記隙間に回転可能に取りつけられたゲートと、直線部を有し、前記ベルト取付部は、片側に開口部を有するベルトを通す2つのスリットと、前記開口部付近に設けられたベルトがはずれることを防ぐストッパと、前記ベルトを通す2つのスリットの間の環状取付具固定部を有し、前記環状取付具は、前記直線部で前記ベルト取付部の前記環状取付具固定部に固定されている(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−335030号公報
【特許文献2】特開2016−179528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記前者従来技術は、ベース板に対するホルダー部の着脱は容易であるが、不本意な離脱を防止することが困難であり、また、ベース板をベルトに装着するのが困難になっている。
前記後者従来技術は、カラビナ工具差しのベルト取付部をベルトに装着するのは容易であるが、不本意な離脱を防止することが困難であり、ベルトの特定の部位に種々のホルダを取り代えて装着するのは煩雑になっている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした工具保持装置を提供することを目的とする。
本発明は、ベルトに取り付けた装着具にホルダの背面の係止体を着脱自在に装着することにより、種々のホルダを取り代え自在にかつ確実に取り付けておける工具保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、背面部にベルトBを挿通するベルト取付部S1を有しかつ正面部にホルダHを装着する嵌入部S2を有する装着具Sと、ホルダHの背面に設けられていて前記装着具Sの嵌入部S2に係脱自在に係合される係止体3とを有する工具保持装置であって、
前記装着具Sは、背面部にベルト取付部S1を形成しかつ正面部にホルダHの係止体3を上側から嵌め込み可能な嵌入部S2を形成したベース体4と、このベース体4の背壁前面に装着されていて嵌入部S2の背面を形成しかつ嵌入されたホルダHの係止体3の下限位置を設定する中台5と、前記ベース体4内に配置されていて嵌入されたホルダHの係止体3と係脱自在に係合して係止体3の抜け止めをする係合部材6とを有することを特徴とする。
【0008】
第2に、前記ホルダHの係止体3は、板材の左右縁部に係合部材6と係合する被係止部3Aが形成されていることを特徴とする。
第3に、前記係合部材6は、ベース体4の背壁と中台5との間に配置されていて、中台5を貫通して嵌入部S2へ突出して係止体3の被係止部3Aと係合する係合部6Aと、嵌入部S2より外方まで突出していて係合部6Aを後退可能な操作部6Bとを有することを特徴とする。
【0009】
第4に、前記係合部材6は、係合部6Aが係止体3の被係止部3Aと係合しているときに中台5を貫通して嵌入部S2へ突出して係止体3の背面を弾圧する弾圧部6Cを有することを特徴とする。
第5に、前記ホルダHの係止体3は、板材の中央側にベルトBを挿通可能なベルト孔部3Bが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベルトに取り付けた装着具にホルダを取り代え自在にかつ確実に取り付けておける。
即ち、請求項1に係る発明は、装着具Sは、ベルト取付部S1と嵌入部S2とを形成したベース体4と、このベース体4の背壁前面に装着されていて嵌入部S2の背面を形成しかつ嵌入されたホルダHの係止体3の下限位置を設定する中台5と、ベース体4内で嵌入された係止体3と係脱自在に係合して抜け止めをする係合部材6とを有するので、ベルトBに取り付けた装着具SにホルダHを取り代え自在にかつ確実に取り付けておける。
【0011】
請求項2に係る発明は、ホルダHの係止体3は、板材の左右縁部に係合部材6と係合する被係止部3Aが形成されているので、装着具SにホルダHを確実に取り付けておける。
請求項3に係る発明は、係合部材6は、中台5を貫通して嵌入部S2へ突出して係止体3の被係止部3Aと係合する係合部6Aと、嵌入部S2より外方まで突出していて係合部6Aを後退可能な操作部6Bとを有するので、嵌入部S2内で係止体3を確実に抜け止めでき、かつ容易に抜け止めを解除できる。
【0012】
請求項4に係る発明は、係合部材6は嵌入部S2へ突出して係止体3の背面を弾圧する弾圧部6Cを有するので、嵌入部S2内で係止体3のガタツキを防止できる。
請求項5に係る発明は、ホルダHの係止体3は、板材の中央側にベルトBを挿通可能なベルト孔部3Bが形成されているので、装着具S無しで単独でベルトBに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態を示すホルダ装着状態の斜視図である。
図2】ホルダ装着状態の正面図である。
図3】ホルダと装着具を分離した状態の正面図である。
図4】工具保持装置の分解斜視図である。
図5】ホルダ装着状態の側面図である。
図6】ホルダ装着状態の平面図である。
図7図1のX−X線断面図である。
図8図1のY−Y線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜8において、工具保持装置1は作業者の腰に巻き付けるベルトBに取り付けられており、背面部にベルトBを挿通するベルト取付部S1を有しかつ正面部にホルダHを装着する嵌入部S2を有する装着具Sと、ホルダHの背面に設けられていて前記装着具Sの嵌入部S2に係脱自在に係合される係止体3とを有する。
【0015】
ホルダHはカラビナの背面に平板状の板材を固着したものであり、カラビナが工具を携帯保持するための保持本体H1となり、板材が係止体3となっており、板材の左右縁部に突起形状の被係止部3Aが形成され、板材の中央側にベルトBを挿通可能なベルト孔部3Bが形成されている。
保持本体H1としてのカラビナは、ペンチ、ハンマ、ニッパ等の工具に吊り輪が付いて
いる場合にその吊り輪を嵌めることができ、ペンチ、ハンマ、ニッパ等の工具を直接保持する場合は、差し込み筒を保持本体H1として係止体3の前面側に固定しておく。またその他の工具を保持したい場合は、その工具を収納しておける保持本体H1を係止体3に固定しておく。従って、ホルダHは保持本体H1の異なる複数種類のものが用意され、装着具Sに取り換え自在に装着される。
【0016】
ホルダHは係止体3にベルト孔部3Bを形成することにより、装着具Sとは関係なく、単独でベルトBに取り付けることができ、工具保持装置1専用とする場合は、ベルト孔部3Bを割愛することができる。
前記装着具Sは、大別してベース体4と中台5と係合部材6の3部材から構成されている。
【0017】
ベース体4は平坦な背壁4aの左右端から左右側壁4bが前方へ突出し、左右各側壁4bの前端から対向内方へ短前壁4cが突出しており、左右短前壁4c間は解放されており、ベース体4は平面視略C字形状になっている。
ベース体4の背壁4aには、上下に長い2条のベルト挿通孔によりベルト取付部S1が形成され、左右端の左右側壁4bとの境界部分には上下一対の止め穴4eが形成されている。また、背壁4aの下端には吊り輪部4fが設けられている。
【0018】
ベース体4は背壁4aの前面に中台5を装着することにより、その中台5の前側の正面部の空間がホルダHの係止体3を上側から嵌め込み可能な嵌入部S2となる。
図3、4に示すように、中台5は前壁5a、左右側壁5b及び上下壁等を有しており、左右側壁5bの後端には左右一対の上止め片5eと下鉤片5fが設けられ、これらの止め片5e及び下鉤片5fをベース体4の背壁4aの上下止め穴4eに挿入して溶着、カシメ等により中台5はベース体4に固定される。
【0019】
中台5の前壁5aの下部は切り起こして前上方へ折り曲げており、嵌入部S2の下端でホルダHの係止体3の下限位置を設定する受け部5gが形成されている。また、中台5の前壁5aの上部中央には窓5kが形成され、受け部5gと窓5kとの間の左右側縁部にはスリット5mが形成されている。
前記ベース体4の背壁4aと中台5の前壁5aとの間は空間となっており、この空間に係合部材6が配置されている。この係合部材6は、バネ板をU字状に折り曲げたものであり、背壁4aと当接する背部と前壁5aの背面に当接する前部とを有し、正面視も略U字形状になっている。
【0020】
係合部材6が正面視略U字形状で左右の両腕間隔が広いのは、ベース体4の背壁4aのベルト取付部S1にベルトBを挿通するのに障害にならないようにするためである。
前記係合部材6は、前部の左右両端に前方に突出した係合部6Aが形成され、前部の左右中央には弾圧部6Cが形成され、前部の下部には操作部6Bが形成されている。
前記係合部6Aはバネ板の側端突起を前方へ折り曲げたものであり、上部から下部に行くに従って突出高さが高くなっており、上部が中台5の前壁5aの左右スリット5mに挿入され、下部がスリット5mを貫通して嵌入部S2へ突出しており、嵌入部S2に上方から挿入される係止体3の被係止部3Aと係合可能であり、被係止部3Aと係合することにより係止体3の抜け止めをする。
【0021】
前記操作部6Bは、バネ板の前下部を屈曲して形成したものであり、中台5の前壁5aの受け部5gの下方を通って嵌入部S2より外方まで突出しており、この操作部6Bを押動すると、係合部材6の前部を後部側に弾力的に移動し、被係止部3Aと係合状態にある係合部6Aを後退することができ、被係止部3Aと係合部6Aの係合・離脱をすることができる。
【0022】
前記弾圧部6Cはバネ板の前中央に舌形状部分を形成して前方へ山形状に突出するように屈曲したものであり、中台5の窓5kから嵌入部S2内に突出している。
この弾圧部6Cは、係止体3が嵌入部S2内に挿入されるときは押しのけられ、係止体3が嵌入部S2内に挿入された状態では係止体3の背面を弾圧し、係止体3がガタツクのを防止し、嵌入部S2からの抜けにも抵抗を与えることができる。
【0023】
前記装着具Sは、中台5内に係合部材6を配置し、かつ係合部材6の左右係合部6Aを
中台5の前壁5aの左右スリット5mに挿入しておいて、それらをベース体4内に挿入し、中台5の止め片5e及び下鉤片5fをベース体4の背壁4aの上下一対の止め穴4eに係合して固着する。
この状態で装着具Sは、係合部材6の係合部6Aがスリット5mから嵌入部S2内に突出し、弾圧部6Cが窓5kから嵌入部S2内に突出し、操作部6Bが受け部5gの下方を通って嵌外方まで突出している。
【0024】
この状態の嵌入部S2にホルダHの係止体3を上側から嵌め込んでいくと、係止体3は左右側部が左右短前壁4cに案内されながら、かつ係合部6Aを押動しながら下降する。また、係止体3は左右中途部が弾圧部6Cを押しのけ、受け部5gに当接するまで下降し、係止体3が受け部5gに当接することにより嵌め込みが停止される。
係止体3が受け部5gにより下限位置が設定されるとき、押動されていた係合部6Aが復元して係止体3の被係止部3Aと係合して係止体3の抜け止めをし、弾圧部6Cが係止体3の背中を弾圧する。
【0025】
これにより、ホルダHは装着具Sに装着され、保持本体H1に種々の工具を吊り持ち可能になる。また、係合部材6の操作部6Bを押圧操作することにより、係合部6Aの係合及び弾圧部6Cの弾圧を解除することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、部材の形状、構成及び組み合わせ等を変更したりすることもできる。
【0026】
例えば、ホルダHの係止体3は、板材の下部の左右中途部に1つの被係止部3Aを形成し、中台5は下部の左右中途部に1つのスリット5mを形成してもよい。
また、ベース体4の嵌入部S2の公差を小さくして、係合部材6に弾圧部6Cがなくとも、ホルダHの係止体3をガタツキなく保持しておけるようにしてもよい。
さらに、ベース体4のベルト取付部S1は、ベルトBに上側から引っ掛けるフック形状のものであってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 工具保持装置
3 係止体
3A 被係止部
3B ベルト孔部
4 ベース体
4a 背壁
4b 側壁
4c 短前壁
4e 止め穴
4f 輪部
5 中台
5a 前壁
5b 側壁
5e 止め片
5f 下鉤片
5g 受け部
5k 窓
5m スリット
6 係合部材
6A 係合部
6B 操作部
6C 弾圧部
B ベルト
H ホルダ
H1 保持本体
S 装着具
S1 ベルト取付部
S2 嵌入部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8