(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799328
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】光ファイバ保持装置及びこれを有するレーザ発振器
(51)【国際特許分類】
G02B 6/46 20060101AFI20201207BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20201207BHJP
H01S 3/02 20060101ALI20201207BHJP
H01S 3/042 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
G02B6/46
H01S3/067
H01S3/02
H01S3/042
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-524987(P2017-524987)
(86)(22)【出願日】2016年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2016068765
(87)【国際公開番号】WO2016208703
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-128491(P2015-128491)
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 政直
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】服部 聡史
【審査官】
佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−153673(JP,A)
【文献】
特開2007−173648(JP,A)
【文献】
特開2013−168435(JP,A)
【文献】
国際公開第03/009435(WO,A1)
【文献】
特開2001−274489(JP,A)
【文献】
特開2016−12621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00−6/54
H01S 3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを冷却するヒートシンク上に配置され、光ファイバを保持する光ファイバ保持装置であって、
前記ヒートシンクに接触して配置される第1ホルダと、
表面の一部が前記第1ホルダの表面に当接する第2ホルダと、
前記第1ホルダと前記第2ホルダとの間において、前記光ファイバを挟みこむように配置され、変形可能かつ熱伝導性を有する板状金属の第1熱伝導部材及び第2熱伝導部材と、
を備え、
前記第1ホルダは、
前記第2ホルダと対向する面において光ファイバの先端側に対応する位置に形成され、前記第1熱伝導部材を収容可能な第1凹部と、
前記第1凹部内に形成され、前記第1熱伝導部材と前記第2熱伝導部材とによって挟み込まれた光ファイバを前記第1熱伝導部材とともに収容する第1溝と、
前記第1凹部が形成された以外の部分に形成された平坦部と、
を有し、
前記第2ホルダは、前記第1ホルダの第1凹部及び平坦部を覆う長さに形成されるとともに、前記第1ホルダと対向する面における前記第1凹部に対応する位置に前記第2熱伝導部材を収容可能な第2凹部を全長にわたって有している、
光ファイバ保持装置。
【請求項2】
前記第2ホルダは、前記第2凹部内に形成され、前記第1熱伝導部材と前記第2熱伝導部材とによって挟み込まれた光ファイバを前記第2熱伝導部材とともに収容する第2溝を有している、請求項1に記載の光ファイバ保持装置。
【請求項3】
前記第1ホルダの平坦部には、前記光ファイバの横方向の移動を規制するための規制溝が形成されている、請求項1又は2に記載の光ファイバ保持装置。
【請求項4】
前記第1熱伝導部材及び第2熱伝導部材はインジウムで構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ保持装置。
【請求項5】
励起光源と、
励起光源からの励起光が導入され、レーザ光を出力する発振用光ファイバと、
前記発振用光ファイバの一部を保持する請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバ保持装置と、
前記光ファイバ保持装置が載置されるヒートシンクと、
を備えたレーザ発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ保持装置及びこれを有するレーザ発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを利用したレーザ発振器が広く用いられている。このレーザ発振器は、光源から発振される励起光を利用して、光ファイバによってレーザ光を発振する。このレーザ発振器に用いられる光ファイバは、例えば、エルビウムなどのレーザ活性物質がドープされたZBLANガラスなどのフッ化物ガラスによって形成される。
【0003】
ここで、光ファイバに含まれるレーザ活性物質は励起光を吸収することによって発熱するため、この発熱によって光ファイバが損傷する場合がある。特に、フッ化物ファイバでは、石英ファイバと比較して耐熱性が低い。
【0004】
そこで、例えば特許文献1の
図4には、光ファイバを2枚の板状のインジウムで挟みこみ、さらにその外側からホルダとホルダ押えとで光ファイバ及び2枚のインジウムを挟みこむようにしている。また、ホルダには、一般的にヒートシンクが接触して設けられている。
【0005】
このような構成では、光ファイバからの熱は、インジウム及びホルダを介してヒートシンクに伝達される。これにより、光ファイバの熱が放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−153673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構造では、インジウムは、柔らかい金属であるため、小片同士で光ファイバを挟みこむことによって変形する。このため、ファイバ及びホルダとの隙間が少ない状態で1対のインジウムが接触し、伝熱により冷却を行うことができる。
【0008】
しかし、2枚のインジウムで光ファイバを挟みこむことによって、ホルダとホルダ押えとの間に2枚のインジウム分の隙間が形成される。このため、ホルダとホルダ押えとの間での伝熱性が劣ることになる。このため、ホルダへの伝熱性が阻害され、効率よく放熱を行うことができない。
【0009】
本発明の課題は、光ファイバの発熱を効率よく放熱することができる光ファイバの保持装置を提供することにある。また、この保持装置を有するレーザ発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一側面に係る光ファイバ保持装置は、光ファイバを冷却するヒートシンク上に配置され、光ファイバを保持する装置である。この保持装置は、第1ホルダと、第2ホルダと、板状の第1熱伝導部材及び第2熱伝導部材と、を備えている。第1ホルダはヒートシンクに接触して配置される。第2ホルダは表面の一部が第1ホルダの表面に当接する。第1熱伝導部材及び第2熱伝導部材は、第1ホルダと第2ホルダとの間において、光ファイバを挟みこむように配置され、変形可能かつ熱伝導性を有する。そして、第1ホルダは、第1凹部と、第1溝と、平坦部と、を有している。第1凹部は、第2ホルダと対向する面において光ファイバの先端側に対応する位置に形成され、第1熱伝導部材を収容可能である。第1溝は、第1凹部内に形成され、第1熱伝導部材と第2熱伝導部材とによって挟み込まれた光ファイバを第1熱伝導部材とともに収容する。平坦部は第1凹部が形成された以外の部分に形成されている。また、第2ホルダは、第1ホルダの第1凹部及び平坦部を覆う長さに形成されるとともに、第1ホルダと対向する面における第1凹部に対応する位置に第2熱伝導部材を収容可能な第2凹部を全長にわたって有している。
【0011】
この装置では、光ファイバの先端部は、第1熱伝導部材と第2熱伝導部材とに挟持された状態で、これらの熱伝導部材とともに第1ホルダ及び第2ホルダの各凹部及び第1溝に収容されている。そして、第1ホルダと第2ホルダとは、一部の表面が当接している。
【0012】
ここでは、第1ホルダと第2ホルダとの間に第1熱伝導部材及び第2熱伝導部材が挟持されているが、2つの熱伝導部材は両ホルダに形成された凹部に収容されている。このため、第1ホルダと第2ホルダとは、一部の表面が当接しており、互いの間の熱伝導性が良好になる。したがって、光ファイバの発熱を効率よく放熱することができる。
【0013】
また、第1ホルダは、光ファイバの先端側に対応する位置に第1凹部が形成されるとともに、第1凹部が形成された以外の部分に平坦部を有している。すなわち、光ファイバは、第1ホルダの平坦部と第2ホルダの凹部とによって挟み込まれて保持されている。このため、光ファイバを第1ホルダにしっかり密着させて、光ファイバ及び熱伝導部材の浮き上がりを防止できる。このため、冷却効率を高めることができる。
【0014】
(2)好ましくは、第2ホルダは、第2凹部内に形成され、第1熱伝導部材と第2熱伝導部材とによって挟み込まれた光ファイバを第2熱伝導部材とともに収容する第2溝を有している。
【0015】
この場合は、光ファイバは第1及び第2凹部に形成された第1及び第2溝に、第1及び第2熱伝導部材とともに収容されるので、左右方向のずれを防止できる。したがって、光ファイバは各熱伝導部材とともに第1ホルダ及び第2ホルダに密着して保持され、冷却効率をより高めることができる。また、光ファイバ先端の位置精度を高めることができる。
【0016】
(3)好ましくは、第1ホルダの平坦部には、光ファイバの横方向の移動を規制するための規制溝が形成されている。
【0017】
この場合は、第1ホルダの平坦部に形成された規制溝によって光ファイバが左右にずれるのを防止でき、光ファイバ先端の位置精度をより高めることができる。
【0018】
(4)好ましくは、第1熱伝導部材及び第2熱伝導部材はインジウムで構成されている。
【0019】
(5)本発明の一側面に係るレーザ発振器は、励起光源と、励起光源からの励起光が導入されレーザ光を出力する発振用光ファイバと、発振用光ファイバの一部を保持する前述の光ファイバ保持装置と、光ファイバ保持装置が載置されるヒートシンクと、を備えている。
【発明の効果】
【0020】
以上のような本発明では、光ファイバの発熱を効率よく放熱することができる。また、光ファイバ及び熱伝導部材が、第1及び第2ホルダから浮き上がるのを防止でき、冷却効率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[レーザ発振器の構成]
図1は、本発明の一実施形態によるレーザ発振器の概略構成図である。レーザ発振器1は、励起光源2、第1〜第3レンズ3a,3b,3c、第1及び第2ダイクロイックミラー4a,4b、ダンパ5、光ファイバ6、筐体7、並びにチラー装置8を備えている。
【0023】
励起光源2は、励起光を発振するものであり、例えばランプ又は半導体レーザなどによって構成することができる。励起光源2にて発振された励起光は、励起光伝送ファイバ2aを介して出力される。
【0024】
第1レンズ3aは、コリメートレンズとして機能するレンズであり、励起光伝送ファイバ2aと、後述する筐体7の第1窓部7aとの間に配置されている。第1レンズ3aは、励起光源2からの励起光を発散光の状態から平行光の状態に変換する。
【0025】
第2レンズ3bは、集光レンズ及びコリメートレンズとして機能するレンズであり、第1ダイクロイックミラー4aと光ファイバ6の第1端部11との間に配置されている。第2レンズ3bは、第1レンズ3aによって平行光の状態とされた励起光を集光して光ファイバ6に放射するとともに、光ファイバ6から放射されたレーザ光を平行光の状態に変換する。
【0026】
第3レンズ3cは、集光レンズ及びコリメートレンズとして機能するレンズであり、第2ダイクロイックミラー4bと光ファイバ6の第2端部12との間に配置されている。第3レンズ3cは、光ファイバ6からの励起光及びレーザ光を平行光の状態に変換するとともに、第2ダイクロイックミラー4bからのレーザ光を集光して光ファイバ6に放射する。
【0027】
第1ダイクロイックミラー4aは、第1レンズ3aと第2レンズ3bとの間に配置されている。第1ダイクロイックミラー4aは、励起光源2からの励起光を透過するとともに、光ファイバ6からのレーザ光の進行方向を変更するように反射する。
【0028】
第2ダイクロイックミラー4bは、第3レンズ3cとダンパ5との間に配置されている。第2ダイクロイックミラー4bは、光ファイバ6からの励起光を透過するとともに、光ファイバ6からのレーザ光を反射するように構成されている。
【0029】
ダンパ5は、第2ダイクロイックミラー4bの下流側に配置されており、第2ダイクロイックミラー4bが透過した励起光を吸収する部材である。
【0030】
光ファイバ6は、詳細は省略するが、コアと、コアを覆うように形成されたクラッドと、を有している。光ファイバ6の第1端部11の端面には第1エンドキャップ(図示せず)が熱融着されており、また第2端部12の端面には第2エンドキャップ(図示せず)が熱融着されている。
【0031】
光ファイバ6の第1エンドキャップ及び第2エンドキャップの内側(端面から離れる側)には、
図2に示すように、保持装置60が設けられている。
図2は、第1端部11に設けられた保持装置60の斜視図である。また、
図3に保持装置60の断面図を、
図4及び
図5にその分解図を示している。なお、第2端部12に設けられた保持装置も同様の構成である。
【0032】
図2〜
図5に示すように、保持装置60は、ホルダ14(第1ホルダ)と、ホルダ押え(第2ホルダ)15と、これらと光ファイバ6との間に配置された第1インジウム(第1熱伝導部材)18及び第2インジウム(第2熱伝導部材)19と、を有している。
【0033】
ホルダ14は銅製のブロック状の部材である。ホルダ14の一方の表面14aには、第1インジウム18を収容するための第1凹部14bが形成されている。第1凹部14bは、
図5に示すように、光ファイバ6の先端側の一部にのみ形成されており、第1凹部14bが形成されていない部分は平坦部(すなわち表面14a)になっている。また、第1凹部14bには、光ファイバ6の一部(径方向の半分)と第1インジウム18とを収容するための第1溝14cが形成されている。第1溝14cは、第1凹部14bの底面において幅方向中央部に形成されている。
【0034】
第1凹部14bは、第1インジウム18を収容した状態で、端部に隙間が形成されるような寸法に設定されている。具体的には、
図3において、第1インジウム18の左右方向の幅w0に対して、第1凹部14bの同方向の幅はw0より大きいw1に設定されている。
【0035】
ホルダ押え15は、光ファイバ6の延びる方向の寸法が異なるが、基本的な構成はホルダ14と同様である。すなわち、ホルダ押え15の一方の表面15aには、第2インジウム19を収容するための第2凹部15bが形成され、第2凹部15bには、光ファイバ6の一部及び第2インジウム19を収容するための第2溝15cが形成されている。第2溝15cの形状はホルダ14の第1溝14cと同様である。また、第1凹部15bの左右幅方向の寸法は第1凹部14bと同様であり、第2インジウム19を収容した状態で、端部に隙間が形成されるような寸法に設定されている。
【0036】
ホルダ押え15の光ファイバ6の延びる方向の長さは、ホルダ14の第1凹部14bの同方向の長さより長く形成されている。すなわち、ホルダ押え15は、ホルダ14の第1凹部14b及び平坦部14aの一部を覆う長さに形成されている。そして、第2凹部15b及び第2溝15cは、ホルダ押え15の全長にわたって形成されている。
【0037】
なお、第1インジウム18の長さはホルダ14の第1凹部14bの長さとほぼ同じに形成されている。また、同様に、第2インジウム19の長さはホルダ押え15の第2凹部15bの長さと同じに形成されている。
【0038】
ホルダ押え15には4つの貫通孔15dが形成され、ホルダ14には貫通孔15dに対応する位置に4つのタップ穴14dが形成されている。
【0039】
以上のような構成により、ホルダ押え15の貫通孔15dを貫通するボルト(図示せず)をホルダ14のタップ穴14dにねじ込むことによって、第1及び第2インジウム18,19で光ファイバ6を挟み込んだ状態で、これらをホルダ14とホルダ押え15との間に保持することができる。
【0040】
ここで、ホルダ14の溝14cの表面14aからの深さと、ホルダ押え15の溝15cの表面15aからの深さと、の合計d(
図3参照)は、第1インジウム18及び第2インジウム19の厚みと光ファイバ6の直径よりも小さい。したがって、
図3に示すように、ホルダ14とホルダ押え15との間に第1及び第2インジウム18,19と光ファイバ6とを挟み込んだ場合、第1及び第2インジウム18,19は、光ファイバ6の外周に密着しながら変形する。そして、この変形分は、第1及び第2インジウム18,19と各凹部14b,15bとの間に形成された隙間(w1−w0)に吸収されることになる。
【0041】
筐体7は、
図1に示すように、直方体状の箱体であって、第2及び第3レンズ3b,3c、第1及び第2ダイクロイックミラー4a,4b、ダンパ5、並びに光ファイバ6を収容している。筐体7は、光透過性を有する第1窓部7a及び第2窓部7bを有する。光源2からの励起光は、第1窓部7aを介して筐体7内に進入し、光ファイバ6へと送られる。また、光ファイバ6からのレーザ光は、第2窓部7bを介して、筐体7の外部に出力される。
【0042】
また、筐体7は、底面にヒートシンクとしてのベース部70を有する。ベース部70は内部に冷媒が流れる流路が形成されている。このベース部70上に、ホルダ14が設置されているため、ホルダ14を含む保持装置60が冷却される。
【0043】
なお、筐体7の内部は、窒素によって充填されている。また、筐体7内の水分を除去するために、筐体7内に乾燥剤が入れられている。
【0044】
チラー装置8は、筐体7と配管8aを介して接続されている。チラー装置8は、筐体7のベース部内を流れる冷媒の温度を調整する。具体的には、筐体7のベース部から配管8aを介して送られてきた冷媒をチラー装置8が冷却する。チラー装置8において冷却された冷媒は配管8aを介して筐体7のベース部に戻される。
【0045】
[動作]
励起光源2において発振された励起光は、励起光伝送ファイバ2aから出力され、第1レンズ3aにおいて平行光の状態となり、第1窓部7aを介して筐体7内に進入する。筐体7内に進入した励起光は、第1ダイクロイックミラー4aを透過し、第2レンズ3bにて集光されて光ファイバ6の第1端部11から光ファイバ6に入射する。
【0046】
光ファイバ6に入射した励起光は、コア内を伝播し、コアにドープされたレーザ活性物質が励起してレーザ光が出力される。そして、光ファイバ6の第2端部12から放射された励起光は、第3レンズ3c、第2ダイクロイックミラー4bを透過し、ダンパ5に吸収される。
【0047】
一方、光ファイバ6のコア内で生成されたレーザ光は、光ファイバ6の第2端部12から放射され、第3レンズ3cで平行光の状態に変換される。そして、レーザ光は、第2ダイクロイックミラー4bで反射され、第3レンズ3cで集光されて、第2端部12側から光ファイバ6に入射する。光ファイバ6内に入射したレーザ光は、コア内を伝播し、光ファイバ6の第1端部11から放射される。そして、レーザ光は、第2レンズ3bによって平行光の状態に変換され、第1ダイクロイックミラー4aに反射されて第2窓部7bに向かうように進行方向が変更され、第2窓部7bを介して筐体7の外部へ放射される。
【0048】
以上のレーザ発振動作において、光ファイバ6は発熱するが、光ファイバ6は、ベース部70に密着して保持されているので、ベース部21内を流れる冷媒によって効率よく冷却される。
【0049】
また、第1端部11及び第2端部12の保持装置60では、ホルダ14及びホルダ押え15と、第1及び第2インジウム18,19と、によって光ファイバ6を保持し、熱伝導によって冷却しているので、光ファイバ6で発生した熱を放熱させることができる。しかも、第1及び第2インジウム18,19をホルダ14とホルダ押え15に形成された第1及び第2凹部14b,15bに収容しているので、ホルダ14とホルダ押え15の表面を互いに接触させることができ、両者の間の伝熱性が良好になる。したがって、効率よく光ファイバ6を冷却することができる。
【0050】
さらに、保持装置60においては、ホルダ押え15によって光ファイバ6をホルダ14の平坦部14aに押し付けているので、光ファイバ6の浮き上がりを防止でき、冷却効率をより高めることができる。
【0051】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0052】
(a)ホルダ14の第1凹部14bが形成されていない部分を平坦にしたが、第1凹部14bに沿った方向に、
図6に示すようなV字状の溝14e’を形成してもよい。この場合は、光ファイバ6の左右方向のズレを防止でき、光ファイバ端面の位置の精度を高くすることができる。なお、この溝の形状はV字状に限定されない。
【0053】
(b)前記実施形態では、ホルダ押え15の第2凹部15bに第2溝15cを形成したが、第2熱伝導部材の変形の程度によっては、この第2溝15cを省略することも可能である。
【0054】
(c)光ファイバを挟みこむ熱伝導部材としてインジウムを用いたが、変形可能な熱伝導性の良い部材であればよく、特にインジウムに限定されない。
【0055】
(d)前記実施形態では保持装置をレーザ発振器に適用したが、本発明の保持装置は、他の光ファイバ装置において光ファイバを保持する際に用いることができる。
【0056】
(e)保持すべき光ファイバの構成は前記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0057】
1 レーザ発振器
2 励起光源
6 光ファイバ
14 ホルダ(第1ホルダ)
14a 表面(平坦部)
14b 第1凹部
14c 第1溝
15 ホルダ押え(第2ホルダ)
15b 第2凹部
15c 第2溝
60 保持装置
70 ベース部(ヒートシンク)