特許第6799388号(P6799388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6799388発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799388
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   C08J9/18CET
   C08J9/18CEQ
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-104233(P2016-104233)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-210538(P2017-210538A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田村 充宏
(72)【発明者】
【氏名】逸見 龍哉
【審査官】 鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−052331(JP,A)
【文献】 特開昭60−250047(JP,A)
【文献】 特表2013−542302(JP,A)
【文献】 特開2004−315806(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00 − 9/42
B29C 44/00 − 44/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系モノマーとブタジエンを共重合した樹脂からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、製造後40日以上経過し、150℃、30分乾燥した際に揮発する揮発分が0.1重量%以上6.5重量%以下である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を100重量部としたときに発泡剤を0.1重量部以上7.4重量部以下添加し、150℃、30分乾燥した際に揮発する揮発分を6.6重量%以上8.0重量%以下とする工程を有し、
添加する発泡剤が、少なくともノルマルペンタン及びイソペンタンを含むことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
スチレン系モノマーとブタジエンを共重合した樹脂からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、製造後40日以上経過し、150℃、30分乾燥した際に揮発する揮発分が0.1重量%以上6.5重量%以下である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を100重量部としたときに発泡剤を0.1重量部以上7.4重量部以下添加し、150℃、30分乾燥した際に揮発する揮発分を6.6重量%以上8.0重量%以下とする工程を有し、
添加する発泡剤の添加温度が95℃以上115℃以下あることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
密閉容器中で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を水中に分散させ、次いで炭素数7以下の低級脂肪族炭化水素からなる1つ以上の発泡剤を添加することにより発泡剤を該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含浸させることを特徴とする請求項1記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、スチレン系モノマーが85重量部部以上98重量部以下と、ブタジエン2重量部以上15重量部以下(スチレン系モノマーとブタジエンの合計量が100重量部である)を共重合した樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
添加する発泡剤が、少なくともノルマルペンタン及び/またはイソペンタンを含むことを特徴とする請求項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
添加する発泡剤の添加温度が95℃以上115℃以下あることを特徴とする請求項1,3,4のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
発泡剤を添加した後、該密閉容器内を95℃以上115℃以下の温度まで昇温し、1時間以上保持することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造後40日以上経過し発泡力の低下した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を再含浸する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、比較的安価で、特殊な方法を用いずに蒸気等で発泡成形ができ、高い緩衝・断熱の効果が得られる為、社会的に有用な材料である。得られた発泡成形体は、魚箱、農産箱、食品用容器、家電製品等の緩衝材、建材用断熱材等の幅広い用途に使用されている。
【0003】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレンに易揮発性の炭化水素類(ブタン、ペンタンなど)を発泡剤として含浸することにより製造される。その後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を蒸気等の熱媒体により加熱し、ポリスチレンの軟化と発泡剤の膨張により発泡することで、低密度で所望の形状の発泡成形体を製造することができる。従って、低密度で良好な成形体を得るには発泡剤は必要不可欠であるが、低沸点であることから在庫期間中に発泡剤が逸散してしまうため、長期間の保管したものを使用することは不可能であった。
【0004】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を長期保管するために、保管方法や保管環境(冷温保管等)が検討されてきた。また、長期保管されたものを押出機等で混錬してペレット化し、通常のポリスチレンとして再利用する方法は一般的に知られている。しかしながら、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子として再利用した例はほぼ無かった。これは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に再び発泡剤を含浸することにより、成形性や成形体の品質が悪化することから、元の品質と同等の品質を得ることの難易度の高さに由来すると考える。
【0005】
かかる問題に対し特許文献1及び2では、本発明とは目的が異なるが発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を水中に分散させ、炭素数7以下の低級脂肪族炭化水素の発泡剤を密閉容器中に添加し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に着色する方法が提案されている。しかしながら、長期保管し発泡力の低下した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子への再含浸ではないため、発泡力を回復させるには至っていなかった。
【0006】
また、特許文献3では、時間の経過とともに揮発性発泡剤が気散した場合には、発泡粒子に揮発性有機発泡剤を追加含浸することが記載されている。しかしながら、概念としてはあるものの、製造後の経過日数や、揮発分の含有量等の具体的な数値は記載されておらず、更には発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−224104号公報
【特許文献2】特開2007−099790号公報
【特許文献3】特開平08−333471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、長期保管され発泡剤が逸散し、発泡力が低くなった発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に、再度発泡剤を含浸して、該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡力を回復させる製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは上記従来技術の問題点を改善するため鋭意検討した結果、再含浸の条件を精査に検討することで、成形性を損なうことなく、成形体強度等の成形体品質を維持し、発泡力を回復させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る製造方法を見出した。
【0010】
すなわち、本発明の第1は、スチレン系モノマーとブタジエンを共重合した樹脂からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、製造後40日以上経過し、150℃、30分乾燥した際に揮発する揮発分が0.1重量%以上6.5重量%以下である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を100重量部としたときに発泡剤を0.1重量部以上7.4重量部以下添加し、150℃、30分乾燥した際に揮発する揮発分を6.6重量%以上8.0重量%以下とすることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
【0011】
本発明の第2は、密閉容器中で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を水中に分散させ、次いで炭素数7以下の低級脂肪族炭化水素からなる1つ以上の発泡剤を添加することにより発泡剤を該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含浸させることを特徴とする第1の発明記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造法に関する。
【0012】
本発明の第3は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、スチレン系モノマーが85重量部部以上98重量部以下と、ブタジエン2重量部以上15重量部以下(スチレン系モノマーとブタジエンの合計量が100重量部である)を共重合した樹脂であることを特徴とする第1または2の発明記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造法に関する。
【0013】
本発明の第4は、添加する発泡剤が、少なくともノルマルペンタン及び/またはイソペンタンを含むことを特徴とする第1〜3の発明記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造法に関する。
【0014】
本発明の第5は、添加する発泡剤の添加温度が95℃以上115℃以下あることを特徴とする第1〜4の発明記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造法に関する。
【0015】
本発明の第6は、発泡剤を添加した後、該密閉容器内を95℃以上115℃以下の温度まで昇温し、1時間以上保持することを特徴とする第1〜5の発明記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長期保管された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面性の悪化や成形体強度を損なうことなく発泡力に優れた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、製造後40日以上経過し、発泡力が低下した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に再び発泡剤を含浸し、発泡力を回復させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得るための製造方法である。
【0018】
本発明における発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、スチレン系モノマーとブタジエンを共重合した樹脂からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子である。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、及び、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体が挙げられる。
【0019】
さらにスチレンと共重合が可能な成分として、例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体も包含する。これら共重合が可能な成分をブタジエンに加え、さらに1種又は2種以上使用し共重合に供しても良い。
【0020】
本発明における発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、スチレン系モノマーが85重量部部以上98重量部以下と、ブタジエン2重量部以上15重量部以下(スチレン系モノマーとブタジエンの合計量が100重量部である)を共重合した樹脂であることが好ましい。
【0021】
ブタジエンはスチレン系モノマーと共重合することで分子内に架橋構造を形成し、成形体の強度を向上させる役割を持つ。従い、ブタジエンが2重量部未満であると、成形体の強度が悪化する傾向にある。ブタジエンが15重量部を超えると発泡、成形時の収縮が大きく、高倍の発泡体を得難いばかりか成形体が収縮し、表面性を損なう傾向がある。
【0022】
前記基材樹脂を発泡するための発泡剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタン等の脂肪族炭化水素類、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等のオゾン破壊係数がゼロであるハイドロフルオロカーボン類等の揮発性発泡剤、空気、窒素、炭酸ガス等の無機ガス、水等があげられる。そのようにして得られた発泡粒子は金型内に充填し、スチーム等を吹き込んで加熱し発泡させることで発泡成形体とすることができる。これら発泡剤の中でも、炭素数7以下の低級脂肪族炭化水素が好ましく、更にはノルマルペンタン及びイソペンタンのいずれか、または2つを含むことが好ましい。
【0023】
本願でいう揮発分とは、150℃、30分で乾燥した後揮発する成分であり、揮発する成分としては、炭化水素類を始めとする発泡剤、発泡助剤、低沸点の可塑剤、残存するモノマー類等を含んでいる。実際の測定は樹脂の乾燥前後の重量差より算出され、その実測を持って揮発分と定義する。
【0024】
本発明における発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は製造後40日以上経過したものである。一般的に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は易揮発性の発泡剤を含浸させているため、経時変化と共に発泡剤が逸散し、発泡力が低下する。そのため、製造後40日を越えて使用することは困難であった。本発明において、実質的には製造後40日での揮発分は5.8重量%、60日で5.2重量%、180日で4.7重量%、1年で4.5重量%程度であった。このことから、製造後1年後、若しくは2年後でも発泡力を回復させることが可能であり、場合によっては5年後でも本発明を利用することで発泡力の回復が可能である。
【0025】
本発明において発泡力を回復させる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は製造後40日以上経過したものであり、揮発分が0.1重量%以上6.5重量%以下のものである。好ましくは、1.0重量%以上6.0重量%以下である。揮発分が0.1重量%未満であると、基材樹脂の軟化点が高く発泡剤の含浸がし難くなる傾向にある。揮発分が6.5重量%を超える場合には、十分な発泡力があるため、再含浸により発泡力を回復させる必要がない。
【0026】
本発明における発泡剤の添加量は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を100重量部としたときに、0.1重量部以上7.4重量部以下であり、好ましくは、1.0重量部以上6.0重量部以下である。発泡剤量が0.5重量部未満であると、含浸される発泡剤量が少なく発泡力を回復させるには至らない。発泡剤量が7.4重量部を超えると、成形体にした場合に張れや膨れといった三次発泡が起こり見栄えを損なうか、成形時の冷却時間が長くなり生産性が悪化する。
【0027】
また、発泡剤の添加量は発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、目標揮発分と含浸前の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の揮発分の差である。
【0028】
本発明における含浸後に得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の揮発分は6.6重量%以上8.0重量%以下である。揮発分が6.6重量%未満であると、再含浸後の乾燥工程等で揮発分が低くなることを考慮すると、揮発分が低くなり発泡力が低くなる。揮発分が8.0重量%を超える場合は、成形体にした場合に張れや膨れといった三次発泡が起こり見栄えを損なうか、成形時の冷却時間が長くなり生産性が悪化する。
【0029】
本発明における発泡剤の添加温度とは発泡剤を添加するときの温度であり、95℃以上115℃以下であることが好ましい。発泡剤の添加温度が95℃未満であると、発泡剤が液状のまま添加される可能性があり、セル構造が変化し強度が悪化する傾向にある。発泡剤の添加温度が115℃を超えると、特に問題はないが、生産性が悪くなることからあまり好ましくない。
【0030】
本発明における発泡剤の含浸温度とは発泡剤を添加した後密閉容器内を一定時間保持するときの温度であり、95℃以上115℃以下であることが好ましい。含浸温度が95℃未満であると、発泡剤の含浸効率が悪くなり、発泡力が不足する。発泡剤の含浸温度が115℃を超えると、特に問題はないが、生産性が悪くなることからあまり好ましくない。
【0031】
本発明においては、発泡剤を添加した後、密閉容器内を95℃以上115℃以下の温度まで昇温し、1時間以上保持することが好ましい。1時間未満であると、発泡剤が含浸し樹脂内を拡散する時間としては短いために、含浸効率が悪化し含浸後の揮発分が低くなる傾向にある。
【0032】
本発明においては、発泡剤の圧力若しくは不活性の気体の圧力により、密閉容器内で発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が発泡することのないようにしなければならない。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、水中であっても温度が上昇し、樹脂粒子の軟化と同時に粒子内部の圧力が上昇すると発泡する。これを抑制するために、例えば、発泡剤を密閉容器内の温度以上かつ発泡剤の沸点以上に加温し、気体状態で添加する方法が挙げられる。また、密閉容器を加温する前に不活性気体を添加し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子内部の発泡剤の蒸気圧以上に密閉容器内の圧力を高める方法等が挙げられる。発泡を抑制するための不活性気体としては、窒素、ヘリウム等であり、好ましくは窒素である。
【0033】
特に、本発明の製造方法としては、密閉容器中で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を水中に分散させ、次いで炭素数7以下の低級脂肪族炭化水素からなる1つ以上の発泡剤を添加することにより発泡剤を該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含浸させることが好ましい。
【0034】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に添加可能な添加物として可塑剤、造核剤、難燃剤、難燃助剤、外添剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で使用してもよい。
【0035】
本発明において用いられる可塑剤としては、例えば、ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、グリセリントリステアレート、グリセリントリカプリレート、ヤシ油、パーム油、菜種油などが挙げられる。これら可塑剤のうちでも、医療分野あるいは直接食品に接触する包装材料分野向けに使用する場合には、食用油であるのが好ましく、さらには、やし油、パーム油、菜種油がより好ましい。
【0036】
本発明においては、可塑剤を、スチレン系樹脂粒子の重合工程、発泡剤を含浸させる工程、等にて添加してもよい。
【0037】
本発明において用いられる造核剤としては、例えば、メタクリル酸メチル系共重合体、ポリエチレンワックス、タルク、脂肪酸ビスアマイド、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、等が挙げられる。脂肪酸ビスアマイドの具体的例としては、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド等である。
【0038】
本発明において用いられる難燃剤および難燃助剤としては、公知慣用のものが使用できる。
【0039】
難燃剤の具体例としては、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロヘキサン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、2,4,6−トリブロモフェノール等の臭素化フェノール類、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス[4'(2”,3”−ジブロモアルコキシ)−3',5'−ジブロモフェニル]−プロパン等の臭素化フェノール誘導体、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、臭素化スチレン・ブタジエングラフと共重合体などの臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、Chemtura社製EMERALD3000、若しくは、特表2009−516019号公報に開示されている)などが挙げられる。これら難燃剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
難燃助剤の具体例としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチルー2,3−ジフェニルブタン等の開始剤を使用してもよい。
【0041】
外添剤の具体例としては、例えば、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライドなどの脂肪酸トリグリセライド、ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどの脂肪酸ジグリセライド、ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライドなどの脂肪酸モノグリセライド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレエート等の非イオン界面活性剤などが挙げられる。これら外添剤及び添付剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合しても良い。また、これら外添剤及び添付剤は発泡剤含浸時に水系に添加してもよいし、脱水後に若しくは乾燥後に添加し被覆してもよく、被覆方法によらない。好ましい被覆方法は、乾燥後に添付し、混合撹拌することにより被覆する方法である。
【0042】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の方法で発泡させて、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが出来る。例えば、一旦予備発泡粒子を作製し、その後型に該予備発泡粒子を充填し成形する方法や、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を直接型に充填し発泡成型する方法等が挙げられる。発泡成形体の製造方法の例としては下記のような方法が挙げられる。本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用いて80〜110℃程度で加熱することにより、嵩倍率が30〜100ml/g程度の予備発泡粒を得、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内に充填し、水蒸気などを用いて105〜145℃程度で加熱することによりポリスチレン系樹脂発泡成形体とすることができる。 このようにして得られた、本発明のポリスチレン系樹脂発泡成形体は、難燃性を有し、且つ残存スチレン系単量体量も少ないものとなる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例および比較例を挙げるが、本発明は、これらによって制限されるものではない。 なお、測定評価法は、以下の通りに実施した。
【0044】
(揮発分測定)
乾燥機:送風定温乾燥機(東京理化器械株式会社製:WFO−700)
乾燥条件:150℃×30分
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の重量W1(g)を測定し、150℃の乾燥機に30分静置して、再度重量W2(g)を測定する。この乾燥前後の重量差(W1−W2)が発泡性ポリスチレン系樹脂粒子内の揮発分量である。
揮発分は、下記の式により、算出する。
【0045】
揮発分(wt%)=(W1−W2)/W1。
【0046】
(表面性評価)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡機(大開工業社製:BHP−300)で0.08MPaの水蒸気により加熱し、嵩倍率が50ml/gの予備発泡粒を得る。次に、この予備発泡粒を室温で1日養生させた後、ダイセン工業社製のKR−57成形機にて平板状発泡体を成形した。
【0047】
得られた熱可塑性樹脂発泡体の表面状態を目視観察し、以下の基準にて表面性を評価した。
◎:表面の溶融、粒間が無く、非常に美麗。
○:表面の溶融、粒間が少なく、美麗。
△:表面の溶融、粒間があり、外観やや不良。
×:表面の溶融、粒間が多く、外観不良。
【0048】
(落球衝撃高さ測定)
JIS K7211に準拠して以下の通り落球衝撃高さを測定する。
50倍の発泡成形体を温度35℃で1日間乾燥した後、この発泡成形体から40mm×200mm×20mm(厚さ)の試験片を切り出し、恒温恒湿(25℃×50%)の部屋に一晩以上放置する。
【0049】
次いで、支点間の間隔が150mmになるように試験片の両端をクランプで固定し、重さ321g(42.8mmφ)の剛球を所定の高さから試験片の中央部に落下させて、試験片の破壊の有無を観察する。 試験片5個が全数破壊する最低の高さから全数破壊しない最高の高さまで5cm間隔で剛球の落下高さ(試験高さ)を変えて試験して、落球衝撃高さ(cm)、すなわち50%破壊高さを次の計算式により算出する。
【0050】
H50=Hi+d[Σ(i・ni)/N±0.5]
式中の記号は次のことを意味する。
H50:50%破壊高さ(cm)
Hi:高さ水準(i)が0のときの試験高さ(cm)であり、試験片が破壊することが予測される高さ
d:試験高さを上下させるときの高さ間隔(cm)
i:Hiのときを0とし,1つずつ増減する高さ水準(i=…−3、−2、−1、0、1、2、3…)
ni:各水準において破壊した(又は破壊しなかった)試験片の数で、いずれか多いほうのデータを使用。尚、同数の場合はどちらを使用してもよい。
N:破壊した(又は破壊しなかった)試験片の総数(N=Σni)で、いずれか多いほうのデータを使用。尚、同数の場合はどちらを使用してもよい。
±0.5:破壊したデータを使用するときは負の数、破壊しなかったデータを使用するときは正の数を採用する。
○:落球衝撃高さが14cm以上
×:落球衝撃高さが14cm未満
【0051】
(コーナーパッド落下衝撃試験)
試験片:120mm×120mm×120mm、厚み50mm(箱の四隅部(コーナー)の形状)
保管条件:25度×50%1の環境下に5時間以上放置
測定方法:成形体外側(落下の際の衝突面)にダンボールをかぶせた状態で、3kgの錘を加え、69cmの高さから落下させ衝撃を与え、成形体の割れ率を測定する。
○:割れ率が20%以下
×:割れ率が20%を超える
【0052】
(実施例1)
基材樹脂として、生産後180日以上経過した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(カネパールHS:株式会社カネカ製。揮発分4.7重量%含有。)を用いた。
【0053】
先ず、撹拌機つき6Lオートクレーブに純水92重量部、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム0.7重量部とα−オレフィンスルフォン酸ナトリウム0.015重量部を投入し、撹拌をスタートした後、発泡を抑制するため窒素により密閉容器内を加圧した。
【0054】
次に、オートクレーブを113℃まで昇温した後、添加温度113℃でイソペンタン/ノルマルペンタン=60/40の比率のものを2.8重量部を窒素で圧入した。その後、含浸温度を113℃とし60分間保持し、その後60分で40℃迄冷却した。冷却終了後オートクレーブから取出し、脱水、及び、乾燥して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0055】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を篩分けして、粒子径0.6mm〜1.2mmを分取した。 分取した発泡性熱可塑性樹脂粒子を、予備発泡機[大開工業製、BHP−300]を用いて、吹き込み蒸気圧0.08MPaの条件にて嵩倍率50倍に予備発泡を実施した。その後、常温下で1日放置して、養生乾燥を行った。
【0056】
得られたスチレン系樹脂予備発泡粒子を、成形機[ダイセン製、KR−57]を用いて、平板形状の金型内に充填し、型内成形を行い、発泡成形体を得た。
【0057】
成形体強度は、落球衝撃高さが18cm、コーナーパッド割れ率が2%であり、いずれも合格であった。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(実施例2〜9、比較例1〜4)
表1に記載のとおり、基材樹脂(ブタジエンを含有しないものはカネパールNSG:株式会社カネカ製を使用)、発泡剤組成、発泡剤量、添加温度、含浸温度を変更した以外は、実施例1と同様の方法で発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得て、同様の評価を実施した。尚、添加した発泡剤の圧力若しくは不揮発性の気体の圧力により、発泡剤添加前に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が密閉容器内で発泡することを抑制した。