(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゼオライトは、X型、ベータ型、MFI型、フェリエライト型、モルデナイト型、L型及びY型からなる群より選ばれる少なくとも1種の結晶構造を有する請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0013】
<塗料組成物>
本実施形態に係る塗料組成物は、樹脂エマルション組成物(a)と、無機多孔質顔料(b)とを含む。
【0014】
[樹脂エマルション組成物(a)]
本実施形態に係る樹脂エマルション組成物(a)は、結合剤として働く成分である。具体的には、酢酸ビニル樹脂エマルション、塩化ビニル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、あるいはこれらの複合系等の樹脂成分からなる合成樹脂エマルションが使用できる。本実施形態に係る樹脂エマルション組成物(a)は、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂エマルションが好ましく用いられる。
【0015】
本実施形態に係るアクリル樹脂エマルションは、(メタ)アクリル酸エステル系のモノマーを、水を媒体とする乳化重合法等の公知の重合方法によって得ることができる。また、樹脂エマルション組成物(a)の形態は特に限定されず、1液型、2液型の何れであってもよい。
【0016】
本実施形態に係る(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n一アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等が挙げられる。
なお、これらのモノマーには、適宣、ヒドロキシル基、カルボニル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、メチロール基、イソシアネート基等の反応基を付与したものも、用いることができる。
【0017】
樹脂エマルション組成物(a)のガラス転移温度(Tg)は、塗膜物性の観点から、−50〜50℃であることが好ましい。エマルション樹脂のガラス転移温度(Tg)が−50〜50℃の範囲であれば、建築物の内装面等を塗装する際の室温環境下において、良好な塗膜形成を行うことができる。
【0018】
樹脂エマルション組成物(a)の酸価は、5〜25が好ましく、10〜20がより好ましい。5未満では塗膜の十分な硬化が得られない恐れがあり、また25を超えると、貯蔵安定性が悪くなる恐れがあるためである。
【0019】
樹脂エマルション組成物(a)のpHは、安定性の観点から、必要に応じて塩基で中和することによりpHが5〜10の範囲内で用いられることが好ましい。中和は、アンモニア、ジメチルエタノールアミン等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を添加することにより行われる。
【0020】
樹脂エマルション組成物(a)を含む塗料固形分は1〜90質量%であることが好ましい。塗料固形分がこの範囲内であることにより、塗装後の乾燥工程における塗膜収縮に伴う、塗膜の欠損を防ぐことができる。より好ましい塗料固形分は、10〜50質量%である。
【0021】
樹脂エマルション組成物(a)の粘度は50〜10,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは、同条件下における粘度が300〜8,000mPa・sである。なお、上記粘度は、例えば、E型粘度計を用いて測定した値を意味する。
【0022】
[無機多孔質原料(b)]
本実施形態に係る無機多孔質顔料(b)は、臭気成分等を多孔質部分に保持することが可能な空隙を有する無機化合物としては、例えば、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。本実施形態では、ゼオライトが使用される。
無機多孔質顔料(b)は、塗料組成物中に含まれる未反応モノマーや造膜助剤中に含まれる揮発性有機化合物が揮散することによる塗料組成物自体の臭気や、塗装後の吸着サイトの未充填量に応じて、空気中のアンモニアやホルムアルデヒドを吸着できる。無機多孔質顔料(b)は、塗料組成物中に所定重量添加されることにより、塗装前後の臭気を吸着し、臭気の抑制効果の高い塗料組成物を提供することができる。
【0023】
本実施形態に係るゼオライトは、天然ゼオライト及び人工的に製造される合成ゼオライトの何れも利用することが可能であり、特に、イオン交換の容易さ等に鑑み、合成ゼオライトを用いることが好ましい。
【0024】
本実施形態に係るゼオライトは、X型、ベータ型、MFI型、フェリエライト型、モルデナイト型、L型及びY型からなる群より選ばれる少なくとも1種の結晶構造を有するゼオライトが好ましく用いられる。
上記ゼオライトは、結晶構造の違いにより吸着可能な臭気成分が変わる。そのため、上記の結晶構造のうち、2種以上の結晶構造が選択されることがより好ましい。
【0025】
本実施形態に係るゼオライトには、市販品を使用することも可能である。例えば、X型ゼオライトには東ソー株式会社製:F9シリーズ、ベータ型ゼオライトには東ソー株式会社製:HSZ900シリーズ、MFI型ゼオライトには東ソー株式会社製:HSZ800シリーズ、フェリエライト型には東ソー株式会社製:HSZ700シリーズ、モルデナイト型には東ソー株式会社製:HSZ600シリーズ、L型ゼオライトには東ソー株式会社製:HSZ500シリーズ、Y型ゼオライトにはHSZ300シリーズを、それぞれ使用することが可能である。
【0026】
合成によりゼオライトを製造する場合、従来公知の方法であればいずれも適用できる。例えば、シリカ源、アルミナ源、4級アンモニウム塩、アルカリ源及び水を含む組成物を結晶化することにより、合成ゼオライトを得る方法が知られている。具体的には、純水、水酸化ナトリウム、ゼオライト及び種結晶のゼオライトを35%4級アンモニウム塩水溶液に添加し、150℃で8日間攪拌することにより原料組成物を結晶化させ後、この結晶を固液分離及び純水洗浄した後に回収し、110℃で乾燥することにより合成ゼオライトを得ることができる。
【0027】
また、上述の天然ゼオライトや合成ゼオライトの基本骨格は負に帯電していることから、イオン交換サイトには、アルカリ金属イオンを有する場合がある。そこで、臭気の抑制という観点から、このイオン交換サイトには、プロトン及びCuイオン、Agイオン、Auイオン等のアルカリ金属以外の金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種のイオン交換種を含むことが好ましい。特に、臭気を抑制するという観点から、臭気成分の吸着や臭気成分の分解が可能なCu、Ag及びAu等の金属イオンに置換されたゼオライトがより好ましい。イオン交換は公知の方法で行うことができる。
【0028】
本実施形態のゼオライト中のイオン交換は、従来公知の方法であればいずれも適用できる。例えば、Y型ゼオライトのイオン交換サイトにプロトン(H
+)を付加する場合、一度、Y型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合、攪拌し、アンモニアでイオン交換した後、これを焼成することにより、プロトン型のY型ゼオライトが得られる。また、Cu等の金属イオンにイオン交換する場合、塩化銅水溶液等のCu溶液とY型ゼオライトを接触させた後、イオン交換水で洗浄し、その後乾燥させる。これにより、イオン交換サイトにCuイオンが存在するY型ゼオライトが得られる。
【0029】
また、塗料組成物から放出される臭気成分には有機溶剤由来のものが含まれており、これらの臭気成分の吸着性の観点から、ゼオライトのシリカ/アルミナ(mol/mol)比は、15以上に調整される。シリカ/アルミナ(mol/mol)比が高くなるにつれ、ゼオライト自体の性質が疎水性になる。それにより、ゼオライト中の吸着点には、水分子よりも臭気成分多く吸着させることができるようになる。そのため、ゼオライトのシリカ/アルミナ(mol/mol)比は、30以上に調整されることがより好ましい。また、シリカ/アルミナ比が5000以上に調整すると、ゼオライト中の臭気成分の吸着点が極端に減少し、吸着量が減少してしまう。このことからシリカ/アルミナ比は5000以下が好ましい。
【0030】
ゼオライトのシリカ/アルミナ(mol/mol)比の調整は、例えば、上述の製造段階の場合、ゼオライトの原料組成物の混合比率を調整により行うことができ、製品化後の場合、ゼオライトに対して水熱処理等により行うことができる。例えば、製品化後のゼオライトであれば、水熱処理法、鉱酸処理法、珪素置換法やEDTA処理により、アルミニウムイオンを取り除き、シリカ/アルミナ(mol/mol)比を高める方法等が知られている。また、シリカ/アルミナ(mol/mol)比を下げる場合は、ゼオライトをアルミニウム源に接触させた後、イオン交換水で洗浄し、乾燥させる方法等が知られている。本実施形態では、シリカ/アルミナ(mol/mol)比の調整は、これらに限定されず公知の方法であればいずれも適用できる。
【0031】
ゼオライトの分散粒度は、0.1〜100μmの範囲であることが好ましい。ゼオライトは粒状の物質であるため分散粒度が100μmよりも大きいと、塗膜にゼオライトに基づく凹凸の外観が現れ、塗膜の意匠性が悪化する。また、ゼオライトの分散粒度が、0.1μmよりも小さいと、塗膜内に埋没し、ゼオライトの細孔が塗膜表面に露出されない場合がある。
【0032】
本実施形態に係る無機多孔質顔料(b)の含有量は、樹脂エマルション組成物(a)の固形分100質量部に対して、無機多孔質顔料(b)の含有量が0.1質量部〜500質量部である。無機多孔質顔料(b)の含有量が0.1質量部未満である場合、形成される塗膜について、好ましい臭気の抑制効果が得られない。また、無機多孔質顔料(b)の含有量が500質量部を超えた場合、塗料組成物の粘度が高くなりすぎて、塗膜が形成され難くなる。また、必要量以上の無機多孔質顔料(b)の添加は無用なコスト増にもつながる。そのため、無機多孔質顔料(b)の含有量が1質量部〜500質量部であることが好ましい。
【0033】
[その他成分]
本実施形態に係る塗料組成物は、必要に応じて、その他成分を含んでいてもよい。例えば塗料組成物は、上述の樹脂エマルション組成物(a)、無機多孔質顔料(b)以外の成分として、通常用いられる公知の着色顔料、体質顔料、骨材、繊維、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、粘性調整剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、吸着剤、光触媒等を、単独あるいは併用して配合することができる。
【0034】
上述した着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、酸化第二鉄、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、クロムグリーン、オーカー、群青、紺青、コバルトグリーン、コバルトブルー等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、パール顔料、アルミニウム顔料、金属又は金属酸化物をコーティングしたガラスフレーク又は樹脂フィルム、ホログラム顔料、コレステリック結晶ポリマー顔料等の光輝性顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。なお、顔料容積濃度は、適宜設定することができる。
【0035】
体質顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土、寒水石、陶土、チャイナクレー、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン等が挙げられる。
【0036】
本実施形態に係る塗料組成物は、緻密な塗膜を形成し、初期の乾燥性、耐久性に優れ、かつ造膜性にも優れることから、用途に応じて、上塗材、中塗材、下塗材等に適用することも可能である。それにより、本実施形態に係る塗料組成物は、本発明以外の塗料組成物から放出されるアンモニアやホルムアルデヒド等の各成分を吸収することができる。
【0037】
<塗料組成物の製造方法>
塗料組成物の製造方法としては、当業者において通常用いられる方法を適用することができる。樹脂エマルション組成物(a)、無機多孔質顔料(b)及びその他成分はそれぞれ、ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル、プラネタリーミキサー等で混合することにより調製することができる。所定量の樹脂エマルション組成物(a)、無機多孔質顔料(b)及びその他成分を混合することで、塗料組成物を調製できる。
【0038】
<塗膜の形成方法>
本実施形態に係る塗料組成物により塗膜を形成する方法は、特に限定されず、例えば、浸漬、刷毛、ローラー、ロールコーター、エアースプレー、エアレススプレー、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、ダイコーター等の一般に用いられている塗装方法を挙げることができる。これらの塗装方法は塗装対象や用途に応じて適宜選択することができる。
【0039】
本実施形態に係る塗料組成物は、建築物の外装面や内装面に適用することが可能である。内装面としては、例えば、モルタル、コンクリート、石膏ボード、サイディングボード、押出成形板、スレート板、石綿セメント板、繊維混入セメント板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、焼成タイル、磁器タイル、プラスチック板、壁紙、合成樹脂等の基材、あるいは基材上に形成された塗膜等に対し、適用することができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、単位は質量基準である。
【0041】
[樹脂エマルション組成物(a)の調製]
従来公知の重合反応を利用して、pH:8.5、酸価AV:15、塗料固形分(NV):50質量%、粘度:2000mPa・sのアクリル樹脂エマルション(a)を得た。
【0042】
[ゼオライト(b−1)の調製]
無定形アルミノケイ酸塩189g、固形水酸化ナトリウム1.4g、固形水酸化カリウム3.5g、及び水酸化テトラエチルアンモニウム20%水溶液480gを30分攪拌混合し、β型ゼオライトの原料とした。この原料に水酸化ナトリウム水溶液、塩化セシウム、水、及び種晶として東ソー株式会社製ベータ型ゼオライト(HSZ930NHA)を加え、十分に攪拌混合し、原料スラリーを得た。当該原料スラリーを150℃で96時間結晶化した。結晶化後のスラリー状混合物を固液分離し、十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。次いで乾燥粉末を空気流通下600℃で焼成した。シリカ/アルミナ(mol/mol)比が36のベータ型ゼオライトを得た。
得られたベータ型ゼオライトを、シリカ/アルミナ(mol/mol)比が30となるようにアルミニウム濃度を調整した溶剤に浸漬した後、イオン交換水で洗浄、乾燥することにより、シリカ/アルミナ(mol/mol)比を30に調整したゼオライト(b−1)を得た。
【0043】
[ゼオライト(b−2)の調製]
X型ゼオライトの種晶として東ソー株式会社製X型ゼオライト(F−9:分散粒度10μm)を用いた以外は、ゼオライト(b−1)と同種の手順を用いて、X型ゼオライトを取得した。その後、シリカ/アルミナ(mol/mol)比を15に調整することにより、ゼオライト(b−2)を得た。
【0044】
[ゼオライト(b−3)の調製]
MFI型ゼオライトの種晶として東ソー株式会社製MFI型ゼオライト(HSZ800:分散粒度10μm)を用いた以外は、ゼオライト(b−1)と同種の手順を用いて、MFI型ゼオライトを取得した。その後、シリカ/アルミナ(mol/mol)比を100に調整することにより、ゼオライト(b−3)を得た。
【0045】
[ゼオライト(b−4)の調製]
X型ゼオライトの種晶として東ソー株式会社製X型ゼオライト(F−9:分散粒度5μm)を用いた以外は、ゼオライト(b−1)と同種の手順を用いて、X型ゼオライトを取得した。その後、シリカ/アルミナ(mol/mol)比を100に調整し、更に、Cuへのイオン交換を行い、洗浄することにより、ゼオライト(b−4)を得た。
【0046】
[ゼオライト(b−5)の調製]
X型ゼオライトの種晶として東ソー株式会社製X型ゼオライト(F−9:分散粒度5μm)を用いた以外は、ゼオライト(b−1)と同種の方法を用いて、X型ゼオライトを取得した。その後、シリカ/アルミナ(mol/mol)比を5に調整することにより、ゼオライト(b−5)を得た。
【0047】
<塗膜組成物の調整>
[実施例1〜9、比較例1〜3の調整]
上記のようにして得られたアクリル樹脂エマルション(a)200質量部に対して、表1に記載の酸化チタン200質量部、炭酸カルシウム300質量部、顔料分散剤20質量部、消包材2質量部、粘性剤10質量部、防藻防カビ材1質量部、水400質量部、及び合成樹脂エマルション(a)の固形分100質量部に対してゼオライト(b−1)50質量部となるようにそれぞれ混合し、2時間、ディスパーを使用して、十分に攪拌して実施例1の塗膜組成物を得た。
上記実施例1と同様に、アクリル樹脂エマルション(a)の固形分100質量部に対して表2に示す各ゼオライトを所定の比率で、混合し、各実施例及び比較例の塗膜組成物を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
続いて、実施例1から9及び比較例1から3で得られた塗料組成物について下記の評価を行った。
【0050】
<塗料組成物の臭気性の評価>
各実施例及び比較例で作製した塗料組成物の臭気を下記の評価基準で評価した。評価者は10人とし、10人の評価の平均値に基づいて、臭気を評価した。臭気評価が3であれば、臭気性は良好である。つまり臭気をほとんど感じないものと評価される。結果を表1に示した。
[評価]
3:無臭
2:非常に弱い臭いを感じる
1:若干臭いを感じる
0:臭いを感じる
【0051】
<成膜状態評価>
居住空間の内壁を想定し、成膜の可否について評価した。450mm×900mm×3mmのスレート板に対して、所定の領域に、実施例及び比較例に係る塗料組成物を厚さが0.1mm程度になるように刷毛で塗布した。成膜の有無について観察した。結果を表1に示した。
[評価]
2:塗膜が形成された。
1:塗膜が形成されなかった。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例1〜9と、比較例1との比較から、塗料組成物中にシリカ/アルミナ(mol/mol)比の高いゼオライトを含む実施例1〜9の塗料組成物は、シリカ/アルミナ(mol/mol)比の低いゼオライトを含む比較例1の塗料組成物と比較して、臭気性評価試験の結果に優れることが分かった。この結果から、樹脂エマルション組成物(a)に所定のシリカ/アルミナ(mol/mol)比よりも高いゼオライトが含まれることで、臭気が抑制されることが確認された。
【0054】
実施例1〜5と、比較例2との比較から、少なくとも塗料組成物中にゼオライト(b−1)を1質量部以上含む実施例1〜5の塗料組成物は、ゼオライト(b−1)が1質量部未満である比較例2の塗料組成物と比較して、臭気性評価試験の結果に優れることが分かった。この結果から、樹脂エマルション組成物(a)に1質量部以上、特に15質量部以上の無機多孔質顔料(b)が含まれることで、臭気が抑制されることが確認された。
【0055】
また、ゼオライト(b−1)を600質量部含有する比較例3の塗料組成物は塗膜が形成されなかった。樹脂エマルション組成物(a)の固形分100質量部に対して、無機多孔質顔料(b)は0.1〜500質量部の範囲内であることで、形成される塗膜の優れた臭気の抑制効果が得られ、実用的な塗料組成物を得ることができることが確認された。
【0056】
実施例8により、2種のゼオライト(b−1)及びゼオライト(b−3)を含む塗料組成物は、臭気性評価試験に優れることが確認された。
【0057】
実施例9により、Cuイオンにイオン交換されたゼオライト(b−4)を含む塗料組成物は、臭気性評価試験に優れることが確認された。