特許第6799429号(P6799429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799429
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】回路基板に表面実装される電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/00 20060101AFI20201207BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   H01L25/00 A
   H01L23/12 Z
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-194284(P2016-194284)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-56504(P2018-56504A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】関口 貴之
(72)【発明者】
【氏名】荻野 剛士
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 隆夫
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−065284(JP,A)
【文献】 特開2000−013167(JP,A)
【文献】 特開平08−204051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/00
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に表面実装される電子部品であって、
実装時に前記回路基板と対向する実装面と、互いに対向するように配置され前記実装面によって連結された第1の端面及び第2の端面と、を有する絶縁性の基体と、
前記基体の内部に設けられた内部導体と、
前記内部導体と電気的に接続されるように前記基体の前記実装面に設けられた第1の外部電極と、
前記内部導体と電気的に接続されるように前記基体の前記実装面に設けられた第2の外部電極と、
を備え、
前記第1の外部電極には第1の突起が形成され、前記第2の外部電極には第2の突起が形成されており、
前記第1の外部電極は、前記基体の前記実装面と面一となるように設けられた第1の電極部分と、前記基体の前記第1の端面に設けられた第2の電極部分と、を有し、
前記第2の外部電極は、前記基体の前記実装面と面一となるように設けられた第3の電極部分と、前記基体の前記第2の端面に設けられた第4の電極部分と、を有し、
前記第1の突起は、第1の外部電極の前記第1の電極部分に形成され、前記第2の突起は、前記第2の外部電極の前記第3の電極部分に形成されている、
電子部品。
【請求項2】
前記第1の突起は、前記第1の外部電極のうち前記第1の端面側の端部に形成されており、前記第2の突起は、前記第2の外部電極のうち前記第2の端面側の端部に形成されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1の突起及び前記第2の突起はそれぞれ、前記基体の前記実装面からの高さが5μm以上となるように形成される、請求項1または請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1の突起及び前記第2の突起はそれぞれ、前記基体の前記実装面からの高さが50μm以下となるように形成される、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記基体は、前記実装面と対向するように配置され前記第1の端面及び前記第2の端面によって前記実装面と連結される上面と、互いと対向するように配置され前記実装面によって連結された第1の側面及び第2の側面とを有し、
前記基体は、前記第1の端面と前記第2の端面との間隔が前記第1の側面と前記第2の側面との間隔よりも大きく、且つ、前記第1の側面と前記第2の側面との間隔が前記上面と前記実装面との間隔よりも大きくなるように形成された、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記基体は、前記実装面と対向するように配置され前記第1の端面及び前記第2の端面によって前記実装面と連結される上面と、互いと対向するように配置され前記実装面によって連結された第1の側面及び第2の側面とを有し、
前記基体は、間隔前記第1の端面と前記第2の端面との間隔が前記第1の側面と前記第2の側面との間隔よりも大きく、且つ、前記上面と前記実装面との間隔が前記第1の側面と前記第2の側面との間隔よりも大きくなるように形成された、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記基体は、絶縁性の樹脂とフィラーとを含む、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記絶縁性の樹脂は透明樹脂である、請求項7に記載の電子部品。
【請求項9】
前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極の各々の表層にSn層が設けられている、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項10】
前記Sn層は、Ni層を介して前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極の各々に設けられている、請求項9に記載の電子部品。
【請求項11】
前記第1の突起は、前記第2の突起に向かって湾曲している、請求項2に記載の電子部品。
【請求項12】
前記第2の突起は、前記第1の突起に向かって湾曲している、請求項11に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板に表面実装される電子部品に関する。より具体的には、本開示は、回路基板にはんだ接続される電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に表面実装される電子部品は、一般に、絶縁性の基体と、当該基体の内部に埋め込まれた回路素子(インダクタ、コンデンサ等)と、この回路素子と電気的に接続された外部電極とを備える。電子部品は、多くの場合、はんだにより回路基板に接合される。電子部品を回路基板にはんだ付けするためには、当該電子部品と当該回路基板との間にはんだを充填するための空隙(本明細書において「スタンドオフ」と呼ばれることがある。)が必要とされる。
【0003】
従来の電子部品は、その基体の実装面と外部電極とが面一となるように構成されることがある。特に、フォトリソグラフィ法を用いて作製される電子部品は、その製法上、基体の実装面と外部電極とが面一となるように構成される。フォトリソグラフィ法を用いて作製される従来の電子部品が特開2006−324489号公報に開示されている。同公報の図1に示されている電子部品は、絶縁性樹脂104と外部電極100とが面一となるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−324489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基体の実装面と外部電極とが平坦に構成されると、電子部品と回路基板との間にはんだを充填するための空隙(スタンドオフ)を確保することができない。また、基体の実装面と外部電極とが平坦に構成されると、コンタクトプローブを用いた検査時に、当該外部電極に形成されている酸化皮膜が除去されにくくなってしまい、その結果、コンタクトプローブの接触抵抗値が高くなって検査を正しく行うことができないという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、はんだを充填するためのスタンドオフが確保された電子部品を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、コンタクトプローブを用いた検査時に、電子部品の外部電極に形成されている酸化皮膜を除去しやすくすることである。本発明のこれら以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る電子部品は、回路基板に表面実装されるように構成される。当該電子部品は、絶縁性の基体と、前記基体の内部に設けられた内部導体と、前記内部導体と電気的に接続されるように前記基体の前記実装面に設けられた第1の外部電極と、前記内部導体と電気的に接続されるように前記基体の前記実装面に設けられた第2の外部電極と、を備える。本発明の一実施形態において、当該基体は、互いと対向するように位置する一組の主面と、互いと対向するように位置する一組の端面と、互いと対向するように位置する一組の側面と、を有する。これらの一組の主面、一組の端面、及び一組の側面により、当該基体の外面が画定される。当該基体の当該一組の主面のうち、実装時に回路基板と対向する面は、本明細書において当該基体の「実装面」と呼ばれることがある。また、当該一組の主面を互いと区別する必要があるときには、その一方を実装面と呼び、実装面以外の面を上面と呼ぶことがある。当該一組の端面は、第1の端面及び第2の端面から成る。当該一組の側面は、第1の側面及び第2の側面から成る。
【0008】
本発明の一実施形態において、上記第1の外部電極は、前記基体の前記実装面と面一となるように設けられた第1の電極部分と、前記基体の前記第1の端面に設けられた第2の電極部分と、を有するように構成される。本発明の一実施形態において、上記第2の外部電極は、前記基体の前記実装面と面一となるように設けられた第3の電極部分と、前記基体の前記第2の端面に設けられた第4の電極部分と、を有するように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記第1の外部電極には第1の突起が形成され、前記第2の外部電極には第2の突起が形成される。この第1の突起及び第2の突起により、第1の外部電極及び第2の外部電極並びに基体の実装面と回路基板との間に、はんだを充填するためのスタンドオフを確保することができる。また、コンタクトプローブを用いて当該電子部品の電気特性を検査する時には、第1の突起及び第2の突起の位置において当該コンタクトプローブから電子部品に対して作用する圧力が強くなる。この圧力によって、第1の外部電極及び第2の外部電極に形成された酸化皮膜を押しのけることができるので、コンタクトプローブの接触抵抗値の上昇が抑制され、検査を正しく行うことができるようになる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記第1の突起は、前記第1の外部電極のうち前記第1の端面側の端部に形成され、また、前記第2の突起は、前記第2の外部電極のうち前記第2の端面側の端部に形成される。これにより、前記基体の実装面と回路基板との間にスタンドオフを大きくとることができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記第1の突起及び前記第2の突起はそれぞれ、前記基体の前記実装面からの高さが5μm以上となるように形成される。第1の外部電極及び第2の外部電極の表面に薄膜(例えば、Niめっき層やSnめっき層)が形成される場合には、前記第1の突起及び前記第2の突起の高さは、当該薄膜を含まない高さを意味する。例えば、第1の外部電極及び第2の外部電極の表面にSnめっき層が形成される場合、前記第1の突起及び前記第2の突起は、前記基体の前記実装面からの高さが当該Snめっき層を含まなくとも5μm以上となるように形成される。本発明の一実施形態において、前記第1の突起及び前記第2の突起はそれぞれ、前記基体の前記実装面からの高さが50μm以下となるように形成される。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記基体は、前記第1の端面と前記第2の端面との間隔が前記第1の側面と前記第2の側面との間隔よりも大きく、且つ、前記第1の側面と前記第2の側面との間隔が前記上面と前記実装面との間隔よりも大きくなるように形成される。これにより、低背の電子部品においても、第1の外部電極の第1の電極部分及び第2の外部電極の第3の電極部分並びに基体の実装面と回路基板との間に、はんだを充填するためのスタンドオフを確保することができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記基体は、前記第1の端面と前記第2の端面との間隔が前記第1の側面と前記第2の側面とのよりも大きく、且つ、前記上面と前記実装面との間隔が前記第1の側面と前記第2の側面との間隔よりも大きくなるように形成される。これにより、高背の電子部品においても、第1の外部電極の第1の電極部分及び第2の外部電極の第3の電極部分並びに基体の実装面と回路基板との間に、はんだを充填するためのスタンドオフを確保することができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記基体は、絶縁性の樹脂とフィラーとを含む。当該実施形態によれば、前記樹脂よりも低密度のフィラーを用いることにより、当該電子部品を軽量化することができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記絶縁性の樹脂は透明樹脂である。当該実施形態によれば、当該樹脂内に設けられた内部導体を視認することができるので、電子部品の実装時にその方向が正しいことを確認することができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極の各々の表層にSn層が設けられる。これにより、前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極のはんだ濡れ性を向上させることができる。当該Sn層は、Ni層を介して前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極の各々に設けられ得る。
【発明の効果】
【0017】
本明細書の開示によれば、はんだを充填するためのスタンドオフが確保された電子部品を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、コンタクトプローブを用いた検査時に、電子部品の外部電極に形成された酸化皮膜を除去しやすくすることである。基体の実装面と外部電極とが面一となるように構成された電子部品において、はんだを充填するためのスタンドオフを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の概略透視斜視図である。
図2図1の電子部品の概略透視側面図である。
図3図1の電子部品の概略透視上面図である。
図4図1の電子部品の実装面付近を拡大した拡大断面図である。
図5図1の電子部品を実装面側から見た斜視図である。
図6図1の電子部品の上下を反転して示す概略透視側面図である。
図7図1の電子部品を構成する各電極層の概略上面図である。
図8A】ウェハーをチップ化して図1の電子部品を得るためのチップ化工程を示す模式図である。
図8B】ウェハーをチップ化して図1の電子部品を得るためのチップ化工程を示す模式図である。
図8C】ウェハーをチップ化して図1の電子部品を得るためのチップ化工程を示す模式図である。
図8D】ウェハーをチップ化して図1の電子部品を得るためのチップ化工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品の概略透視斜視図、図2はその概略透視側面図、図3はその概略透視上面図である。これらの図には、電子部品の一例として、表面実装用のコイル部品が示されている。このコイル部品は、電子回路において、例えばノイズを除去するために用いられる。このコイル部品は、電源ラインに組み込まれるパワーインダクタであってもよいし、信号ラインにおいて用いられるインダクタであってもよい。また、本発明を適用可能な電子部品はコイル部品に限られない。本発明は、コイル部品以外にも、例えば、コンデンサ部品、抵抗部品、多層配線基板、及びこれら以外の各種電子部品に適用可能である。
【0021】
電子部品100は、基体10と、内部導体20と、外部電極30とを備える。本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、電子部品100の「幅」方向、「長さ」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、図1の「X」方向、「Y」方向、及び「Z」方向とする。
【0022】
基体10は、第1の主面101、第2の主面102、第1の端面103、第2の端面104、第1の側面105、及び第2の側面106を有する。基体10は、これらの6つの面によってその外面が画定される。第2の主面102は回路基板(不図示)と対向するので、本明細書において「実装面」と呼ばれることがある。
【0023】
本発明の一実施形態において、基体10は、概ね直方体形状に形成される。基体10は、X軸方向に幅方向、Y軸方向に長さ方向、Z軸方向に高さ方向を有する直方体形状に形成される。基体10は、例えば、幅寸法(X方向の寸法)が0.05〜0.3mm、長さ寸法(Y方向の寸法)が0.1〜0.6mm、高さ寸法(Z方向の寸法)が0.05〜0.5mmとなるように形成される。
【0024】
本発明の一実施形態において、基体10は、その長さ寸法が幅寸法よりも大きく、且つ、その幅寸法が高さ寸法よりも大きくなるように形成される。この場合、電子部品100は低背となる。本発明の一実施形態において、基体10は、その高さ寸法が長さ寸法よりも大きく、且つ、その長さ寸法が幅寸法よりも大きくなるように形成される。この場合、電子部品100は高背となる。
【0025】
基体10は、絶縁体本体11と上面層12とを有する。内部導体20は、絶縁体本体11に埋め込まれている。本発明の一実施形態において、上面層12は、文字や数字(例えば電子部品100の型番)が印刷される印刷層である。
【0026】
本発明の一実施形態において、絶縁体本体11は、多数のフィラー粒子を分散させた樹脂から成る。本発明の他の実施形態において、絶縁体本体11は、フィラー粒子を含まない樹脂から成る。本発明の一実施形態において、絶縁体本体11に含まれる樹脂は、絶縁性に優れた熱硬化性の樹脂である。
【0027】
本発明の一実施形態において、上面層12は、絶縁体本体11と同様に、多数のフィラー粒子を分散させた樹脂から成る。上面層12は、樹脂フィルムで構成されてもよい。
【0028】
絶縁体本体10に用いられる熱硬化性樹脂の例としては、ベンゾシクロブテン(BCB)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂(PI)、ポリフェニレンエーテルオキサイド樹脂(PPO)、ビスマレイミドトリアジンシアネートエステル樹脂、フマレート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリビニルベンジルエーテル樹脂が挙げられる。
【0029】
絶縁体本体10の材料として用いられる樹脂材料は、各種の透明樹脂であってもよい。絶縁体本体10の材料として透明樹脂を用いることにより、内部導体20を電子部品100の外部から視認することができる。これにより、電子部品100の実装時にその方向が正しいことを目視で確認することができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、絶縁体本体10に用いられるフィラー粒子は、例えば、フェライト材料の粒子、金属磁性粒子、SiO2やAl23などの無機材料粒子、又はガラス系粒子である。絶縁体本体10に用いられるフェライト材料の粒子は、例えば、Ni−Znフェライトの粒子又はNi−Zn−Cuフェライトの粒子である。絶縁体本体10に用いられる金属磁性粒子は、酸化されていない金属部分において磁性が発現する材料であり、例えば、酸化されていない金属粒子や合金粒子を含む粒子である。本発明に適用可能な金属磁性粒子には、例えば、Fe、合金系のFe−Si−Cr、Fe−Si−Al、もしくはFe−Ni、非晶質のFe―Si−Cr−B−CもしくはFe−Si−B−Cr、またはこれらの混合材料の粒子が含まれる。これらの粒子から得られる圧粉体も絶縁体本体10用の金属磁性粒子として用いることができる。さらに、これらの粒子または圧粉体の表面に熱処理して酸化膜を形成したものも絶縁体本体10用の金属磁性粒子として利用することができる。絶縁体本体10用の金属磁性粒子は、例えばアトマイズ法で製造される。また、絶縁体本体10用の金属磁性粒子は、アトマイズ法以外の公知の方法を用いて製造することができる。また、絶縁体本体10用の金属磁性粒子として市販されている金属磁性粒子を用いることもできる。市販の金属磁性粒子として、例えば、エプソンアトミックス(株)社製PF−20F、日本アトマイズ加工(株)社製SFR−FeSiAlがある。
【0031】
絶縁体本体10に用いられるフィラー粒子は、当該絶縁体本体10に用いられる樹脂よりも低密度の材料から成る粒子としてもよい。これにより、電子部品100を軽量化することができる。
【0032】
内部導体20は、基体10の内部に設けられる。本発明の一実施形態において、内部導体20は、複数の柱状導体21と、複数の連結導体22とを有し、これら複数の柱状導体21及び連結導体22とによりコイル部20Lが構成される。
【0033】
複数の柱状導体21は、Z軸方向に平行な軸心を有する略円柱形状に形成される。本発明の一実施形態において、複数の柱状導体21は、その軸直方向(軸心に垂直な方向)の断面形状が円形、楕円形または長円形となるように構成される。複数の柱状導体21の軸直方向の断面が楕円形または長円形に形成される場合には、その長軸/短軸の比が3以下となる。複数の柱状導体21は、概略Y軸方向に互いに離間して配置される2つの導体群で構成される。このうち一方の導体群は、複数の第1の柱状導体211を備える。この複数の第1の柱状導体211の各々は、隣接する第1の柱状導体211とX軸方向に所定の間隔をおいて配列される。他方の導体群は、複数の第2の柱状導体212を備える。この複数の第2の柱状導体212も同様に、隣接する第2の柱状導体212とX軸方向に所定の間隔をおいて配列される。
【0034】
第1及び第2の柱状導体211,212は、それぞれ略同一径及び略同一高さで構成される。図示の例において第1及び第2の柱状導体211,212は、それぞれ5本ずつ設けられている。後述するように、第1及び第2の柱状導体211,212は、複数のビア導体をZ軸方向に積層することで構成される。なお、略同一径とは、抵抗の増加を抑制するためのもので、同一方向で見た寸法のバラツキが例えば10%以内に収まっていることをいい、略同一高さとは、各層の積み上げ精度を確保するためのもので、高さのバラツキが例えば10μmの範囲に収まっていることをいう。
【0035】
複数の連結導体22は、XY平面に平行に形成され、Z軸方向に相互に対向する2つの導体群で構成される。このうち一方の導体群は、複数の第1の連結導体221を有し、他方の導体群は、複数の第2の連結導体222を有する。図示の実施形態において、第1の連結導体221は5つの連結導体で構成され、第2の連結導体222は4つの連結導体で構成される。
【0036】
複数の第1の連結導体221の各々は、第1の柱状導体211と第2の柱状導体212との間に配置される。複数の第1の連結導体221の各々は、Y軸方向に沿って延び、隣接する第1の連結導体221とX軸方向に間隔をおいて配列される。この複数の第2の連結導体222の各々は、第1の柱状導体211と第2の柱状導体212との間に配置される。複数の第2の連結導体222の各々は、Y軸方向に対して所定角度傾斜して延び、隣接する第2の連結導体222とX軸方向に間隔をおいて配列される。
【0037】
第1の連結導体221は、所定の一組の柱状導体211,212の各々の上端に接続され、第2の連結導体222は、所定の一組の柱状導体211,212の各々の下端に接続される。第1及び第2の柱状導体211,212と第1及び第2の連結導体221,222は、X軸方向のまわりに矩形の螺旋を描くように相互に接続される。これにより、基体10の内部において、X軸方向に軸心(コイル軸)を有する開口形状が矩形のコイル部20Lが形成される。
【0038】
内部導体20は、引出し部23と、櫛歯ブロック部24とをさらに有し、これらを介してコイル部20Lが外部電極30(31,32)へ接続される。
【0039】
内部導体20は、例えば、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Ag(銀)等の導電性に優れた金属材料から形成される。
【0040】
引出し部23は、第1の引出し部231と、第2の引出し部232とを有する。第1の引出し部231は、コイル部20Lの一端を構成する第1の柱状導体211の下端に接続され、第2の引出し部232は、コイル部20Lの他端を構成する第2の柱状導体212の下端に接続される。第1及び第2の引出し部231,232は、第2の連結導体222と同一のXY平面上に配置されており、Y軸方向に平行に形成される。
【0041】
櫛歯ブロック部24は、第1の櫛歯ブロック部241及び第2の櫛歯ブロック部242を有する。第1の櫛歯ブロック部241と第2の櫛歯ブロック部242とは、Y軸方向において互いから離間するように配置される。第1の櫛歯ブロック部241及び第2の櫛歯ブロック部242はそれぞれ複数の歯を有する。第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242は、図1に示すように、その各々の歯の先端が図1における上方へ向くように構成される。基体10の両端面103,104及び実装面102には、櫛歯ブロック部241,242の一部が露出している。第1の櫛歯ブロック部241の各々の歯はその下端付近又はそれ以外の位置で隣接する歯と電気的に接続されており、同様に、第2の櫛歯ブロック部242の各々の歯はその下端付近又はそれ以外の位置で隣接する歯と電気的に接続されている。
【0042】
第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242各々の所定の歯の間には、第1及び第2の引出し部231,232がそれぞれ接続される(図3参照)。
【0043】
第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242各々の底部には、外部電極30の下地層を構成する導体層301,302がそれぞれ設けられる(図2参照)。導体層301,302は、例えば、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Ag(銀)等の金属材料から形成される。
【0044】
導体層301及び導体層302はいずれも平板状に形成される。導体層301の第1の端面103側の端部には突出部301aが形成され、導体層302の第2の端面104側の端部には突出部302aが形成される。この突出部301a及び突出部302aは、後述するように、電子部品をウェハーから個片化する過程でダイシングソーのブレードによって形成されてもよい。本発明の一実施形態において、突出部301aは、電子部品100の内側に向かって(すなわち、突出部302aに向かって)湾曲するように形成される。同様に、突出部302aは、電子部品100の内側に向かって(すなわち、突出部301aに向かって)湾曲するように形成される。
【0045】
この導体層301及び導体層302の表面には、外部電極30が形成される。外部電極30は、表面実装用の外部端子である。外部電極30は、第1の外部電極31と第2の外部電極32とを有する。第1の外部電極31と第2の外部電極32とは、Y軸方向において互いから離間するように配置されている。第1の外部電極31及び第2の外部電極32は、基体10の実装面102に形成される。第1の外部電極31は、基体10の実装面102に加えて端面103にも形成されてもよい。また、第2の外部電極32は、基体10の実装面102に加えて端面104にも形成されてもよい。
【0046】
本発明の一実施形態において、第1及び第2の外部電極31,32は、図2に示すように、絶縁体層10の実装102のY軸方向両端部を被覆する第1の電極部分30Aと、絶縁体層10の両端面103,104を所定の高さにわたって被覆する第2の電極部分30Bとを有する。第1の電極部分30Aは、導体層301,302を介して第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242の底部に電気的に接続される。第2の電極部分30Bは、第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242の側部を被覆するように絶縁体層10の端面103,104に形成される。第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242の側部が第1の端面103及び第2の端面104から露出している場合には、第2の電極部分30Bは、第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242の側部とも電気的に接続される。
【0047】
本発明の一実施形態において、第1の外部電極31の第1の端面103側の端部には突起305が形成され、第2の外部電極32の第2の端面104側の端部には突起306が形成される。本発明の一実施形態において、突起305は、Y方向において、導体層301の突出部301aに対応する位置に形成される。また、突起306は、Y方向において、導体層302の突出部302aに対応する位置に形成される。
【0048】
本発明の一実施形態において、第1の外部電極31及び第2の外部電極32は、2層のめっき層で構成される。この2層のめっき層は、例えば、導体層301、導体層302、及び絶縁体層10の両端面103,104を所定の高さにわたって被覆する第1のめっき層と、この第1のめっき層を覆うように形成される第2のめっき層と、を有する。第1のめっき層は、導体層301及び導体層302を保護するために、導体層301及び導体層302の下面全体を覆うように形成される。本発明の一実施形態において、第1のめっき層は、ニッケル(Ni)を含むニッケルめっき層である。本発明の一実施形態において、第2のめっき層は、スズ(Sn)を含むスズめっき層である。
【0049】
本発明の一実施形態において、第1の外部電極31及び第2の外部電極32は、導電性材料のペーストから形成される。この導電性ペーストは、例えば、Agペーストである。
【0050】
図4及び図5を参照して、本発明の一実施形態による電子部品100の第1の外部電極31及び第2の外部電極32についてさらに説明する。図4は、電子部品100の実装面付近を拡大して示す拡大断面図であり、図5は、電子部品100を実装面側から見た斜視図である。
【0051】
図示のように、第1の外部電極31及び第2の外部電極32の第1の電極部分30Aは、平坦な平坦面30A1と、この平坦面30A1の端面103側の端部に連結され、湾曲した面からなる湾曲面30A2とを有する。本発明の一実施形態において、第1の外部電極31及び第2の外部電極32の平坦面30A1は、絶縁体本体11の底面102と面一になるように形成される。第1の外部電極31の湾曲面30A2によって突起305の外面が画定され、第2の外部電極32の湾曲面30A2によって突起306の外面が画定される。
【0052】
本発明の一実施形態において、突起305は、導体層301の下面からの高さH2(すなわち、電子部品100の実装面102からの高さ)が5μm以上50μm以下、6μm以上30μm以下、又は7μm以上15μm以下となるように形成される。このような突起305の高さを実現するため、導体層301の突出部301aは、導体層301の下面からの高さH1が1μm以上45μm以下、2μm以上25μm以下、又は3μm以上10μm以下となるように形成される。
【0053】
本発明の一実施形態において、突起305は、その電子部品100の長さ方向(Y方向)の寸法L2が、電子部品100の長さ方向の寸法L1の1/100〜1/10となるように形成される。
【0054】
突起306は、突起305と同等の寸法を有するように形成される。
【0055】
このように、外部電極31の表面に突起305を形成し外部電極32の表面に突起306を形成することにより、電子部品100の実装102と実装基板200との間には、スタンドオフSが形成される。このスタンドオフSは、電子部品100の実装面102、実装基板200の表面、及び第1の外部電極31・第2の外部電極32の平坦面30A1・湾曲面30A2によって画定される。電子部品100が実装基板200に半田付けされる際には、このスタンドオフSにはんだが充填される。
【0056】
また、コンタクトプローブ(不図示)を用いて当該電子部品の電気特性を検査する時には、突起305及び突起306の位置において当該コンタクトプローブから電子部品100に対して作用する圧力が強くなる。この圧力によって、第1の外部電極31及び第2の外部電極32に形成された酸化皮膜を押しのけることができるので、コンタクトプローブの接触抵抗値の上昇が抑制され、検査を正しく行うことができるようになる。
【0057】
次に、図6及び図7を参照して、電子部品100の積層構造について説明する。図6は、電子部品100の上下を反転して示す概略透視側面図であり、図7A図7Fはそれぞれ、図6におけるフィルム層L1及び電極層L2〜L6の概略上面図である。ただし、図6及び図7においては、外部電極30は省略されている。
【0058】
電子部品100は、図6に示すように、フィルム層L1と、複数の電極層L2〜L6の積層体で構成される。電極層L2〜L6は、接合面S1〜S4(図6)を介して高さ方向に積層されている。フィルム層L1及び電極層L2〜L6は、当該各層を構成する基体10及び内部導体20の要素を含む。このフィルム層L1と複数の電極層L2〜L6とを積層して成る積層体は、ビルドアップ工法により製造される。本実施形態では、上面101から実装面102に向けてフィルム層L1及び電極層L1〜L6をZ軸方向に順次積層することで作製される。これとは逆に、フィルム層L1及び電極層L1〜L6は、実装面102から上面101に向けて順次積層されてもよい。また、層の数は特に限定されず、ここでは6層として説明する。フィルム層L1及び電極層L1〜L6が積層された積層体は、素子単位(部品単位)ではなく、多数の素子(部品)を含むウェハー単位で作成される。図6には、ウェハー単位で作成される積層体のうち、一つの素子に対応する部分のみが示されている。
【0059】
フィルム層L1は、基体10の上面101を形成する上面層12で構成される(図6A)。電極層L2は、基体10(絶縁体本体11)の一部を構成する絶縁層110(112)と、第1の連結導体221とを含む(図6B)。電極層L3は、絶縁層110(113)と、柱状導体211,212の一部を構成するビア導体V1とを含む(図6C)。電極層L4は、絶縁層110(114)、ビア導体V1のほか、櫛歯ブロック部241,242の一部を構成するビア導体V2を含む(図6D)。電極層L5は、絶縁層110(115)、ビア導体V1,V2のほか、引出し部231,232や第2の連結導体222を含む(図6E)。そして、電極層L6は、絶縁層110(116)と、ビア導体V2とを含む(図6F)。
【0060】
続いて図8A図8Dを参照して、電子部品100の製造工程について説明する。まず、図8Aに示すように、例えば上述したビルドアップ工法を用いて、図6に示した積層構造を有するウェハーWを作成する。
【0061】
次に、このウェハーWを単位部品の大きさにカットする。ウェハーWのカットは、例えば、ダイシングソーのブレードDBを用いて行われる。ウェハーWの電極層L2〜L6の各々は、特定の単位部品の導体層301と、当該特定の単位部品と長さ方向において隣接する他の単位部品の導体層302との間隔W2が、ダイシングソーのブレードDBの幅W1よりも若干狭くなるように構成されている。本発明の一実施形態においては、この間隔W2は、W1に比べて0.1%〜10%ほど大きい。本発明の一実施形態においては、W2は、W1に比べて0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、20.0%、又は 30.0%だけ大きい。
【0062】
ブレードDBは、紙面の手前から奥に向かって、または、紙面の奥から手前に向かって、ウェハーWに形成された特定の単位部品の導体層301と当該特定の単位部品と長さ方向に隣接する他の単位部品の導体層302との間に侵入する。これにより、ウェハーWは、図8Bに示すように、素子単位に個片化(チップ化)される。
【0063】
ウェハーWは幅W1のブレードDBを用いて個片化されるので、ウェハーWの切断時にブレードDBが導体層301及び導体層302の側面に接触する。これにより、図8Bに示すように、個片化された積層体100Aにおいては、導体層301及び導体層302の端部の各々にバリ401a及びバリ402aが形成される。
【0064】
次に、このバリ401a及びバリ402aを積層体100Aの内側に向かって湾曲させて、突出部301a及び突出部302aを形成する。このようにして形成された突出部301a及び突出部302aは、図8Cに示すように、互いに近づく方向に湾曲している。バリ401a及びバリ402aを湾曲させる工程は、例えば、バレル加工により行われる。
【0065】
次に、図8Dに示すように、突出部301aが形成された導体層301及び突出部302aが形成された導体層302に、外部電極31及び外部電極32がそれぞれ形成される。外部電極31及び外部電極32は、例えば、Niめっき層とSnめっき層から成る2層のめっき層である。これにより、外部電極31の突出部301aに相当する位置には突起305が形成され、外部電極32の突出部302aに相当する位置には突起306が形成される。本発明の一実施形態において、導体層301と突出部301aおよび、導体層302と突出部302aは同一の材料で連続的に形成される。
【0066】
このように、多数の電子部品(外部電極31、32を除く)が形成されたウェハーを個片化し、この個片化された積層体に外部電極31、32を形成することにより電子部品100が得られる。
【0067】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0068】
10 基体
11 絶縁体本体
12 上面層
30 外部電極
301、302 導体層
301a、302a 突出部
305、306 突起
100 電子部品
200 回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D