特許第6799450号(P6799450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799450
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   G01R33/09
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-240418(P2016-240418)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2018-96779(P2018-96779A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉彦
【審査官】 小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−81314(JP,A)
【文献】 特開2007−309694(JP,A)
【文献】 特表2015−524919(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0180089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00−33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場の方向の変化に応じて抵抗値が変化し、2つの円弧によって囲まれて同じ幅となる形状を有する感磁部と、
扇形の感磁領域の径方向と交差するように前記感磁領域に並べられた複数の前記感磁部を有し、前記感磁領域を90°ずつ回転させ、それぞれが電気的に接続されてブリッジ回路を形成する複数の磁気センサ素子と、
を備え
前記感磁部は、前記2つの円弧がセンサ中心を中心とする同心円の円弧よりも曲率が大きい円弧である、
磁気センサ。
【請求項2】
前記感磁領域は、1つの円を8等分した扇形の領域であり、
前記磁気センサ素子は、8つの前記感磁領域に形成されて出力信号の位相が異なる2つの前記ブリッジ回路を形成する、
請求項1に記載の磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、基板に形成され、2つのブリッジ回路を形成する8つの感磁膜を有する磁気センサを備えたロータリエンコーダが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このロータリエンコーダは、基板に対向配置され、抵抗値が飽和する磁場強度を有する磁石を有し、ブリッジ回路により得られた第1相と第2相の2相の出力信号に基づいて、基板と磁石との相対的な角度位置を検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−190895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のロータリエンコーダの磁気センサは、飽和する磁場強度が印加されたとしても出力信号が歪んで理想的な正弦波からずれ、角度精度が低下する問題がある。
【0006】
従って本発明の目的は、角度精度を向上させることができる磁気センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、磁場の方向の変化に応じて抵抗値が変化し、2つの円弧によって囲まれて同じ幅となる形状を有する感磁部と、扇形の感磁領域の径方向と交差するように感磁領域に並べられた複数の感磁部を有し、感磁領域を90°ずつ回転させ、それぞれが電気的に接続されてブリッジ回路を形成する複数の磁気センサ素子と、を備えた磁気センサを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、角度精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、実施の形態に係る磁気センサの一例を示す概略図であり、図1(b)は、MR素子の一例を説明するための概略図である。
図2図2(a)は、実施の形態に係る磁気センサの一例を示す等価回路図であり、図2(b)は、磁気センサと磁場ベクトルの角度の一例について説明するための概略図である。
図3図3(a)は、実施の形態に係る磁気センサの第1のブリッジ回路及び第2のブリッジ回路の出力電圧の一例を説明するためのグラフであり、図3(b)は、算出された角度の一例を説明するためのグラフであり、図3(c)は、実際の角度の差である角度精度の一例を説明するためのグラフである。
図4図4(a)は、比較例1に係る感磁部が直線形状を有する場合の感磁部と磁場ベクトルの関係を示す概略図であり、図4(b)は、感磁部が直線形状を有する場合の角度精度のグラフである。
図5図5(a)は、実施の形態に係る磁気センサの感磁部が曲線形状を有する場合の感磁部と磁場ベクトルの関係を示す概略図であり、図5(b)は、感磁部が曲線形状を有する場合の角度精度のグラフである。
図6図6(a)は、比較例2に係る磁気センサを示す概略図であり、図6(b)は、比較例2の1つのMR素子を拡大した概略図であり、図6(c)は、比較例2の磁気ベクトルの角度と角度精度のグラフである。
図7図7(a)は、実施例1に係る磁気センサを示す概略図であり、図7(b)は、実施例1の1つのMR素子を拡大した概略図であり、図7(c)は、実施例1の磁気ベクトルの角度と角度精度のグラフである。
図8図8(a)は、実施例2に係る磁気センサを示す概略図であり、図8(b)は、実施例2の1つのMR素子を拡大した概略図であり、図8(c)は、実施例2の磁気ベクトルの角度と角度精度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る磁気センサは、磁場の方向の変化に応じて抵抗値が変化し、2つの円弧によって囲まれて同じ幅となる形状を有する感磁部と、扇形の感磁領域の径方向と交差するように感磁領域に並べられた複数の感磁部を有し、感磁領域を90°ずつ回転させ、それぞれが電気的に接続されてブリッジ回路を形成する複数の磁気センサ素子と、を備えて概略構成されている。
【0011】
この磁気センサは、感磁部が2つの直線で囲まれた直線的な形状ではなく、2つの円弧で囲まれた曲線的な形状を有しているので、感磁部が直線的な形状である場合と比べて、検出する磁場の角度の誤差の一部が打ち消し合って角度精度が向上する。
【0012】
[実施の形態]
(磁気センサ1の概要)
図1(a)は、実施の形態に係る磁気センサの一例を示す概略図であり、図1(b)は、MR素子(Magneto Resistive Device)の一例を説明するための概略図である。図2(a)は、実施の形態に係る磁気センサの一例を示す等価回路図であり、図2(b)は、磁気センサと磁場ベクトルの角度の一例について説明するための概略図である。なお、以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率は、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
磁気センサ1は、例えば、図1(a)に示すように、基板7に形成されている。この磁気センサ1は、パッド40〜パッド45を有し、このパッド40〜パッド45を介して後述するオペアンプOP及びオペアンプOPに接続されている。
【0014】
磁気センサ1は、例えば、図1(a)〜図2(b)に示すように、磁場の方向の変化に応じて抵抗値が変化し、2つの円弧105及び円弧106によって囲まれて同じ幅Wとなる形状を有する感磁部100と、扇形の感磁領域10の径方向と交差するように感磁領域10に並べられた複数の感磁部100を有し、感磁領域10を90°ずつ回転させ、それぞれが電気的に接続されてブリッジ回路を形成する複数の磁気センサ素子と、を備えて概略構成されている。なお本実施の形態では、磁場の方向を磁場ベクトル5として表している。
【0015】
本実施の形態の感磁領域10は、1つの円を8等分した扇形の領域である。従って磁気センサ1は、第1のMR素子21〜第4のMR素子24、及び第5のMR素子31〜第8のMR素子34を有している。そして第1のMR素子21〜第4のMR素子24、及び第5のMR素子31〜第8のMR素子34は、出力信号の位相が異なる2つの第1のブリッジ回路20及び第2のブリッジ回路30を形成している。なお以下では、第1のMR素子21〜第4のMR素子24、及び第5のMR素子31〜第8のMR素子34の基本的な構成が変わらないことから、これらを表現する場合にMR素子と記載する。
【0016】
(MR素子の構成)
本実施の形態のMR素子の感磁部100は、2つの円弧105及び円弧106がセンサ中心11を中心とする同心円の円弧として構成されている。そして本実施の形態の感磁部100は、等間隔で並んでいる。
【0017】
この感磁部100は、例えば、Ni、Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の薄膜として形成されている。また径方向に沿って隣り合う感磁部100は、例えば、図1(b)に示すように、接続部101によって端部が交互に接続されている。この接続部101は、例えば、磁場ベクトル5の方向の変化によって抵抗が変化しないアルミニウムなどの金属膜である。
【0018】
第1のブリッジ回路20は、第1のMR素子21〜第4のMR素子24によって形成されている。この第1のMR素子21〜第4のMR素子24は、90°ずつ回転した形状を有している。
【0019】
第1のMR素子21と第3のMR素子23の接続点であるノード25は、図2(a)に示すように、電源電圧VCCに電気的に接続される。この電源電圧VCCは、パッド40及び配線400を介して供給される。第2のMR素子22と第4のMR素子24の接続点であるノード26は、GNDと電気的に接続される。このGNDは、パッド41及び配線410と電気的に接続される。
【0020】
第1のMR素子21と第2のMR素子22は、ハーフブリッジ回路を形成する。このハーフブリッジ回路は、第1のMR素子21と第2のMR素子22のノード27における中点電位Vを出力する。この中点電位Vは、配線420及びパッド42を介してオペアンプOPの非反転入力端子(+側)に入力する。
【0021】
また第3のMR素子23と第4のMR素子24は、ハーフブリッジ回路を形成する。このハーフブリッジ回路は、第3のMR素子23と第4のMR素子24のノード28における中点電位Vを出力する。この中点電位Vは、配線430及びパッド43を介してオペアンプOPの反転入力端子(−側)に入力する。このオペアンプOPは、非反転入力端子に入力した中点電位Vと、反転入力端子に入力した中点電位Vと、を差動増幅した出力信号Sを制御部8に出力する。
【0022】
第2のブリッジ回路30は、第5のMR素子31〜第8のMR素子34によって形成されている。この第5のMR素子31〜第8のMR素子34は、90°ずつ回転した形状を有している。また第2のブリッジ回路30は、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、第1のブリッジ回路20を45°回転させたものとなっている。
【0023】
第5のMR素子31と第7のMR素子33の接続点であるノード35は、図2(a)に示すように、電源電圧VCCに電気的に接続される。第6のMR素子32と第8のMR素子34の接続点であるノード36は、GNDと電気的に接続される。
【0024】
第5のMR素子31と第6のMR素子32は、ハーフブリッジ回路を形成する。このハーフブリッジ回路は、第5のMR素子31と第6のMR素子32のノード37における中点電位Vを出力する。この中点電位Vは、配線440及びパッド44を介してオペアンプOPの非反転入力端子(+側)に入力する。
【0025】
また第7のMR素子33と第8のMR素子34は、ハーフブリッジ回路を形成する。このハーフブリッジ回路は、第7のMR素子33と第8のMR素子34のノード38における中点電位Vを出力する。この中点電位Vは、配線450及びパッド45を介してオペアンプOPの反転入力端子(−側)に入力する。このオペアンプOPは、非反転入力端子に入力した中点電位Vと、反転入力端子に入力した中点電位Vと、を差動増幅した出力信号Sを制御部8に出力する。
【0026】
このオペアンプOP及びオペアンプOPは、例えば、制御部8と共に基板7に配置されている。
【0027】
(制御部8の構成)
図3(a)は、実施の形態に係る磁気センサの第1のブリッジ回路及び第2のブリッジ回路の出力電圧の一例を説明するためのグラフであり、図3(b)は、算出された角度の一例を説明するためのグラフであり、図3(c)は、実際の角度の差である角度精度の一例を説明するためのグラフである。図3(a)は、横軸が角度θ(deg)であり、縦軸が電圧Vである。図3(b)は、横軸が角度θ(deg)であり、縦軸がAtan(deg)である。図3(c)は、横軸が角度θ(deg)であり、縦軸が角度精度(deg)である。図3(b)及び図3(c)の太い実線は、算出された角度を示している。
【0028】
この制御部8は、例えば、取得したデータに演算、加工などを行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などから構成されるマイクロコンピュータである。制御部8は、取得した出力信号S及び出力信号Sに基づいて磁場ベクトル5の角度、言い換えるなら回転磁場の回転角度を算出する。
【0029】
この磁場ベクトル5の角度は、例えば、図2(b)に一点鎖線で示す基準50に対する角度θとして表される。この角度θは、図2(b)に示すように、時計回りを正としている。磁場ベクトル5を生成する磁石は、センサ中心11を中心として回転するように磁気センサ1と対向して配置される。そして磁石は、例えば、円柱形状を有し、円筒を縦に分割した一方がN極、他方がS極に着磁されている。
【0030】
基準50は、第2のMR素子22と第3のMR素子23を二分割すると共にセンサ中心11を通るようにされている。従って第1のブリッジ回路20から出力される中点電位V及び中点電位Vを差動増幅した出力信号Sは、図3(a)に示すように、cosθとなる。また第2のブリッジ回路30から出力される出力信号Sは、出力信号Sと位相が異なるsinθとなる。このcosθ及びsinθは、180°周期となっている。
【0031】
制御部8は、この出力信号S及び出力信号Sに基づいてtanθを算出し、さらにAtan(tan−1=−S/S)を算出してθを求める。図3(b)に示す理想直線12は、横軸の理想の角度と縦軸の算出された角度とが一致する直線である。図3(c)は、理想の角度と算出された角度の差(角度精度)を示したものであり、理想的には、理想直線13と一致する。そして角度精度は、例えば、図3(c)に示すように、理想直線13からのずれで示される。
【0032】
以下では、感磁部100が曲線である場合と直線である場合のシミュレーション結果について説明する。
【0033】
図4(a)は、比較例1に係る感磁部が直線形状を有する場合の感磁部と磁場ベクトルの関係を示す概略図であり、図4(b)は、感磁部が直線形状を有する場合の角度精度のグラフである。図5(a)は、実施の形態に係る磁気センサの感磁部が曲線形状を有する場合の感磁部と磁場ベクトルの関係を示す概略図であり、図5(b)は、感磁部が曲線形状を有する場合の角度精度のグラフである。図4(b)及び図5(b)は、横軸が角度(deg)であり、縦軸が角度精度(deg)である。比較例1の感磁部100bの角度精度は、実測されたものであり、本実施の形態の感磁部100の角度精度は、シミュレーションの結果である。
【0034】
まず本実施の形態の感磁部100と比較例1の感磁部100bの幅は、同じである。また本実施の形態の感磁部100と比較例1の感磁部100bの長さは、図4(a)及び図5(a)に示すように、Lである。さらに本実施の形態の感磁部100と比較例1の感磁部100bに作用する磁場ベクトル5の強度は、同じである。
【0035】
比較例1の感磁部100bの抵抗値をR(θ)とすると、一律の方向で磁場ベクトル5が作用することから以下の式(1)が成り立つ。なおr(θ)は、感磁部100bの任意の位置における抵抗値である。従ってR(θ)は、任意の位置におけるr(θ)の総和である。
R(θ)=r(θ)+r(θ)+r(θ)…
R(θ)=Σn=1…m+1r(θ)・・・(1)
ただしmは任意の整数であり、式(1)は、m+1個のr(θ)の総和を求める式となる。
【0036】
一方図5(a)に示す感磁部100は、比較例1の抵抗値r(θ)が得られた任意の位置に対応させてパターンを複数の直線に分割し、±nα回転させて曲線が表現されている。R(θ)は、感磁部100と磁場ベクトル5が直交する位置の抵抗値をr(θ)、その直交する位置を中心として左右の抵抗値の総和としている。
R(θ)=r(θ)+r(θ+α)+r(θ−α)+r(θ+2α)+r(θ−2α)…
R(θ)=r(θ)+Σn=1…m/2r(θ+nα)+Σn=1…m/2r(θ−nα)・・・(2)
【0037】
比較例1は、抵抗R(θ)がr(θ)の項のみで構成されるため、およそ45°周期で角度の誤差が生じ、角度の誤差を十分に打ち消すことができず、角度の誤差、つまり角度精度が低かった。
【0038】
一方曲線的な本実施の形態の式(2)は、式(1)とは第二項及び第三項が異なっている。この第二項及び第三項は、感磁部100の中央に対して対称であることから、角度の誤差が一部で打ち消し合って抑制され、角度精度が比較例1と比べて向上したものと考えられる。
【0039】
続いて以下に実際に作成した比較例2、実施例1及び実施例2の角度精度について説明する。この角度精度の計測は、比較例2、実施例1及び実施例2の磁気センサにヘルムホルツコイルを使用して均一方向の磁場ベクトル5を作用させて行われた。またMR素子の配置やブリッジ回路の構成は、比較例2、実施例1及び実施例2とも同じである。
【0040】
(比較例2)
図6(a)は、比較例2に係る磁気センサを示す概略図であり、図6(b)は、比較例2の1つのMR素子を拡大した概略図であり、図6(c)は、比較例2の磁気ベクトルの角度と角度精度のグラフである。
【0041】
比較例2の磁気センサ9は、図6(a)及び図6(b)に示すように、感磁部100bが直線形状となっている。
【0042】
そして磁気センサ9は、磁気センサ1と同様に、第1のMR素子21b〜第4のMR素子24b、第5のMR素子31b〜第8のMR素子34bによって2つのブリッジ回路が形成されている。
【0043】
この感磁部100bは、接続部101bによって端部が交互に接続されている。この感磁部100bと接続部101bは、実施例1の感磁部100と接続部101、及び実施例2の感磁部100aと接続部101aと材料、幅、厚みが同じとなるように形成されている。
【0044】
比較例2の磁気センサ9は、図6(c)に示すように、角度精度がおよそ±0.22と計測された。
【0045】
(実施例1)
図7(a)は、実施例1に係る磁気センサを示す概略図であり、図7(b)は、実施例1の1つのMR素子を拡大した概略図であり、図7(c)は、実施例1の磁気ベクトルの角度と角度精度のグラフである。
【0046】
この磁気センサ1は、第1のMR素子21〜第4のMR素子24、第5のMR素子31〜第8のMR素子34によって2つのブリッジ回路が形成されている。
【0047】
感磁部100は、図7(a)及び図7(b)に示すように、実施の形態の感磁部100と同様にセンサ中心11を中心とする同心円の円弧形状となっている。この実施例1の磁気センサ1は、上記の式(2)に示すように、角度の誤差を打ち消す成分があるので誤差が抑制される。従って実施例1の磁気センサ1は、図7(c)に示すように、角度精度が比較例2より優れたおよそ±0.15と計測された。
【0048】
(実施例2)
図8(a)は、実施例2に係る磁気センサを示す概略図であり、図8(b)は、実施例2の1つのMR素子を拡大した概略図であり、図8(c)は、実施例2の磁気ベクトルの角度と角度精度のグラフである。
【0049】
この磁気センサ1aは、磁気センサ1と同様に、第1のMR素子21a〜第4のMR素子24a、第5のMR素子31a〜第8のMR素子34aによって2つのブリッジ回路が形成されている。
【0050】
この実施例2の磁気センサ1aの感磁部100aは、図8(a)及び図8(b)に示すように、2つの円弧(円弧105a及び円弧106a)がセンサ中心11を中心とする同心円の円弧よりも曲率が大きい円弧となっている。
【0051】
この実施例2の磁気センサ1aは、上記の式(2)に示すように、角度の誤差を打ち消す成分があることと曲率が大きくなっている影響でさらに角度の誤差が打ち消し合い、角度精度が比較例2及び実施例1より優れたおよそ±0.11と計測された。
【0052】
以上のことより、感磁部が直線形状であるよりも曲線形状である方が角度精度に優れ、さらに曲率が高いほど角度精度がより向上することが分かった。
【0053】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る磁気センサ1は、角度精度を向上させることができる。具体的には、この磁気センサ1は、感磁部100が2つの直線で囲まれた直線的な形状ではなく、2つの円弧105及び円弧106で囲まれた曲線的な形状を有しているので、感磁部が直線的な形状である場合と比べて、検出される磁場ベクトル5の角度の誤差の一部が打ち消し合って角度精度が向上する。
【0054】
実施例2の磁気センサ1aは、2つの円弧105a及び円弧106aがセンサ中心11を中心とする同心円の円弧105及び円弧106よりも曲率が大きい円弧とすることで、さらに角度精度を向上させることができる。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び実施例を説明したが、これらの実施の形態及び実施例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。また、これら実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び実施例は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1,1a,9…磁気センサ、5…磁場ベクトル、7…基板、8…制御部、10…感磁領域、11…センサ中心、12…理想直線、13…理想直線、20…ブリッジ回路、21〜24,21a〜24a,21b〜24b…第1のMR素子〜第4のMR素子、25〜28…ノード、30…第1のブリッジ回路、31〜34,31a〜34a,31b〜34b…第5のMR素子〜第8のMR素子、35〜38…ノード、40〜45…パッド、50…基準、100,100a,100b…感磁部、101,101a,101b…接続部、105,105a…円弧、106,106a…円弧、400〜450…配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8