特許第6799453号(P6799453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツバの特許一覧

<>
  • 特許6799453-電動車椅子 図000002
  • 特許6799453-電動車椅子 図000003
  • 特許6799453-電動車椅子 図000004
  • 特許6799453-電動車椅子 図000005
  • 特許6799453-電動車椅子 図000006
  • 特許6799453-電動車椅子 図000007
  • 特許6799453-電動車椅子 図000008
  • 特許6799453-電動車椅子 図000009
  • 特許6799453-電動車椅子 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799453
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】電動車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20201207BHJP
   A61G 5/08 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   A61G5/04 710
   A61G5/08 701
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-242452(P2016-242452)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-94146(P2018-94146A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年6月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年10月12日 第43回国際福祉機器展にて、電動車椅子を公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】阿部 純
(72)【発明者】
【氏名】萩原 伸一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 龍之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 里美
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0024843(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0114560(KR,A)
【文献】 特開平11−192266(JP,A)
【文献】 特開2011−041650(JP,A)
【文献】 特開2000−237246(JP,A)
【文献】 特開平10−201796(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0053739(KR,A)
【文献】 特開平07−075656(JP,A)
【文献】 実開昭50−049854(JP,U)
【文献】 特開2011−055954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00− 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に間隔をあけて設けられ、前記車幅方向に接離可能に連結された一対の車体フレームと、
一対の前記車体フレームの間に配置され、使用者が着座する座部と、
一対の前記車体フレームのそれぞれに回転自在に支持された主車輪と、
一対の前記車体フレームのそれぞれにおいて、前記主車輪に対して前後方向に間隔をあけて配置された補助車輪と、
前記主車輪に対して前記主車輪の径方向外側から接触する駆動輪を有し、前記主車輪を回転駆動させる駆動モータと、
前記駆動モータの作動を制御する制御装置と、
前記駆動モータに電力を供給するバッテリーと、
前記車体フレームに固定されたベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられた支柱周りに、前記ベースプレートに沿った面内で回動可能に支持されて前記主車輪に前記径方向に沿って接離可能に設けられ、前記駆動モータが固定されたモータ支持プレートと、
モータ支持プレートに設けられたブロック部材と、
前記駆動モータおよび前記モータ支持プレートを前記主車輪に対する接離方向に移動させるとともに、前記ブロック部材に接離可能なプッシャー部を有するモータ移動機構と、
を備え、
前記駆動モータは、前後方向から見たときに、前記駆動モータの全体が前記主車輪の車軸の両端の間の領域に重なる位置に配置されており、
前記モータ移動機構は、前記プッシャー部によって前記ブロック部材を前記主車輪に向かって押圧し、前記主車輪の径方向外側から前記駆動輪を接触させる
ことを特徴とする電動車椅子。
【請求項2】
前記制御装置および前記バッテリーは、それぞれ直方体状の筐体に収容されるとともに、前記筐体の最も短い辺を前記車幅方向に向けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電動車椅子。
【請求項3】
前記制御装置および前記バッテリーは、それぞれ、前記前後方向から見たときに、その少なくとも一部が前記車体フレームと重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動車椅子。
【請求項4】
前記制御装置および前記バッテリーは、前記車幅方向から側面視したときに、その少なくとも一部が前記主車輪と重なる位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の電動車椅子。
【請求項5】
前記制御装置は、一方の前記車体フレームに設けられ、前記バッテリーは、他方の前記車体フレームに設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電動車椅子。
【請求項6】
前記駆動モータは、ハイポサイクロイド減速機を前記駆動輪の径方向内側に備えていることを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項に記載の電動車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車輪をモータで駆動する電動車椅子が知られている。
例えば、特許文献1には、モータの回転軸に取り付けた駆動用ローラを、バネの弾力によって車椅子の車輪のタイヤに押し付けて接触させることにより、車輪をモータによって回転駆動させる構成が開示されている。このような構成において、モータは、車椅子の車幅方向一方の側のフレームに設けられている。また、モータに電力を供給するバッテリーは、車椅子の車幅方向他方の側のフレームに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−267157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された構成においては、モータの回転軸が車輪の車軸と平行とされているため、モータが、車椅子のフレームに対して車幅方向内側に突出している。
また、バッテリーも、車椅子のフレームに対し、車幅方向の内側に突出している。
このため、車椅子のフレームの内側に突出したモータやバッテリーの干渉を避けようとすると、電動車椅子を、車幅方向においてコンパクトに折り畳むことができない。
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、モータや、モータを動作させるための各種の機器を装備しても、車幅方向にコンパクトに折り畳むことができる電動車椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の電動車椅子は、車幅方向に間隔をあけて設けられ、前記車幅方向に接離可能に連結された一対の車体フレームと、一対の前記車体フレームの間に配置され、使用者が着座する座部と、一対の前記車体フレームのそれぞれに回転自在に支持された主車輪と、一対の前記車体フレームのそれぞれにおいて、前記主車輪に対して前後方向に間隔をあけて配置された補助車輪と、前記主車輪に対して前記主車輪の径方向外側から接触する駆動輪を有し、前記主車輪を回転駆動させる駆動モータと、前記駆動モータの作動を制御する制御装置と、前記駆動モータに電力を供給するバッテリーと、前記車体フレームに固定されたベースプレートと、前記ベースプレートに設けられた支柱周りに、前記ベースプレートに沿った面内で回動可能に支持されて前記主車輪に前記径方向に沿って接離可能に設けられ、前記駆動モータが固定されたモータ支持プレートと、モータ支持プレートに設けられたブロック部材と、前記駆動モータおよび前記モータ支持プレートを前記主車輪に対する接離方向に移動させるとともに、前記ブロック部材に接離可能なプッシャー部を有するモータ移動機構と、を備え、前記駆動モータは、前後方向から見たときに、前記駆動モータの全体が前記主車輪の車軸の両端の間の領域に重なる位置に配置されており、前記モータ移動機構は、前記プッシャー部によって前記ブロック部材を前記主車輪に向かって押圧し、前記主車輪の径方向外側から前記駆動輪を接触させる
【0006】
このような構成によれば、前後方向から見たときに、駆動モータの全体が主車輪の車軸の両端の間の領域に重なる位置に配置されているので、車体フレームの内側に駆動モータが突出するのを抑えることができる。これによって、一対の車体フレーム同士を車幅方向に折り畳んだときに、駆動モータが車体フレームや他の機器等に干渉するのを抑えることができる。
また、モータ移動機構によって、駆動モータと、駆動モータが固定されたモータ支持プレートとを、ベースプレートに沿って主車輪に対して接離させることができる。これによって、駆動モータの駆動輪を、主車輪に対して接離させることにより、駆動モータの駆動力の主車輪に対しての伝達を断続することができる。したがって、電動車椅子を、手動および電動で選択的に移動させることができる。
【0007】
また、本発明の電動車椅子は、前記制御装置および前記バッテリーが、それぞれ直方体状の筐体に収容されるとともに、前記筐体の最も短い辺を前記車幅方向に向けて配置されているのが好ましい。
【0008】
このような構成によれば、制御装置とバッテリーの筐体が、筐体の最も短い辺の方向、つまり扁平方向を車幅方向に向けている。これにより、制御装置とバッテリーとが車幅方向においてスペースを占めるのを抑えることができる。したがって、一対の車体フレーム同士を車幅方向に折り畳んだときに、制御装置やバッテリーが、車体フレームや他の機器等に干渉するのを抑えることができる。
【0009】
また、本発明の電動車椅子は、前記制御装置および前記バッテリーが、それぞれ、前記前後方向から見たときに、その少なくとも一部が前記車体フレームと重なる位置に配置されていてもよい。
【0010】
このような構成によれば、制御装置およびバッテリーが、車体フレームから車幅方向に突出するのを抑えることができる。これにより、一対の車体フレーム同士を車幅方向に折り畳んだときに、制御装置やバッテリーが、車体フレームや他の機器等に干渉するのを抑えることができる。
【0011】
また、本発明の電動車椅子は、前記制御装置および前記バッテリーが、前記車幅方向から側面視したときに、その少なくとも一部が前記主車輪と重なる位置に配置されていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、制御装置およびバッテリーが、主車輪に対して前後方向に突出するのを抑えることができる。
【0013】
また、本発明の電動車椅子は、前記制御装置が、一方の前記車体フレームに設けられ、前記バッテリーが、他方の前記車体フレームに設けられていてもよい。
【0014】
このような構成によれば、制御装置とバッテリーとを、一対の車体フレームの両側に振り分けることで、制御装置やバッテリーを車幅方向にバランス良く配置することができる。
【0017】
また、本発明の電動車椅子は、前記駆動モータが、ハイポサイクロイド減速機を前記駆動輪の径方向内側に備えていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、ハイポサイクロイド減速機は、扁平に形成することができるので、駆動モータを車幅方向に扁平なものとすることができる。これによって、駆動モータが、車体フレームの内側に駆動モータが突出するのを抑えることができる。これによって、一対の車体フレーム同士を車幅方向に折り畳んだときに、駆動モータが車体フレームや他の機器等に干渉するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、モータや、モータを動作させるための各種の機器を装備しても、電動車椅子を、車幅方向にコンパクトに折り畳むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における電動車椅子の全体構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態における電動車椅子のフレームの構成を左前方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態における電動車椅子のフレームの構成を右前方から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態における電動車椅子の一方の側のフレームに設けられた駆動モータ、制御装置を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態における電動車椅子において、主車輪の車軸に対する駆動モータの配置を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態における駆動モータを示す側面図である。
図7】本発明の実施形態における駆動モータおよびモータ移動機構の構成を示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態における駆動モータおよびモータ移動機構の構成を示す側面図である。
図9】本発明の実施形態における駆動モータおよびモータ移動機構の構成を示す図であり、駆動モータの駆動輪を主車輪のタイヤに接触させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態に係る電動車椅子について、図面を参照して説明をする。
【0022】
図1は、本発明の実施形態における電動車椅子1の全体構成を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態における電動車椅子1の車体フレーム10R,10Lの構成を左前方から見た斜視図である。図3は、本発明の実施形態における電動車椅子1の車体フレーム10R,10Lの構成を右前方から見た斜視図である。なお、以下の説明では、電動車椅子1に使用者が着座した状態で前方となる方向を単に前方、後方となる方向を後方、電動車椅子1の車幅方向を単に車幅方向、重力方向上下方向を単に上下方向と称して説明する場合がある。
【0023】
図1図3に示すように、電動車椅子1は、車幅方向に配置された一対の車体フレーム10R,10Lと、これら車体フレーム10R,10Lに跨るように設けられた座部20と、各車体フレーム10R,10Lに設けられた主車輪30、補助車輪40、駆動モータ60、制御装置70、およびバッテリー80と、を主として備えている。
【0024】
一対の車体フレーム10R,10Lは、車幅方向Dwに間隔をあけて設けられている。車体フレーム10R,10Lのそれぞれは、車幅方向Dwに直交する鉛直面内に位置している。図1に示すように、これら一対の車体フレーム10R,10Lは、座部20を構成する座板21、背板22、下部サポート部材23等を介して、車幅方向Dwに接離可能に連結されている。
【0025】
図2図3に示すように、車体フレーム10R,10Lのそれぞれは、前後方向に延びる横杆11,12と、横杆11,12の後端から上方に向かって延びる後部縦杆13と、横杆11,12の前部から上下方向に沿って延びる前部縦杆14と、前部縦杆14の上端から後方に向かって延びる上部横杆15と、横杆11,12の前端から下方に向かって延びる前部杆体16と、を一体に備えている。
【0026】
横杆11,12は、上下方向Dvに間隔をあけて互いに平行に配置されている。下方の横杆12は、上方の横杆11よりも、前方に突出するよう延びている。また、後部縦杆13に、上方の横杆11の後端部と、上部横杆15の後端部とが接合されている。後部縦杆13の上端部には、グリップ部17が装着されている。さらに、前部縦杆14は、上方の横杆11、および前部縦杆14の前端部に接合されている。
【0027】
上部横杆15は、前部縦杆14の上端部から後方に湾曲して前後方向Dfに延び、後端部が前記後部縦杆13に接合されている。この上部横杆15上には、肘掛け部18が取り付けられている。
【0028】
前部杆体16は、上方の横杆11の前端部に接合され、前方に向かって斜め下方に延び、下方の横杆12の前端部が接合されている。前部杆体16の下端部16bは、下方の横杆12よりもさらに下方に延びている。前部杆体16の下端部16bには、使用者の足を載せるステップ部材19が設けられている。このステップ部材19は、軸19sを介して車幅方向Dwを含む鉛直面内で回動し、前部杆体16の下端部16bに沿った状態に折り畳み可能となっている。
【0029】
図1に示すように、座部20は、車体フレーム10R,10Lの上方の横杆11,11の間に設けられた座板21と、座板21の後方において後部縦杆13,13の間に設けられた背板22と、前部杆体16,16の間に設けられた下部サポート部材23と、を備えている。これら座板21、背板22、下部サポート部材23は、車幅方向Dwに折り畳み可能な材料で形成されている。
座部20は、車体フレーム10R,10Lのそれぞれに、座板21よりも上方において、前部縦杆14と後部縦杆13との間に設けられた側部サポート板24,24をさらに備えている。
【0030】
主車輪30は、一対の車体フレーム10R,10Lのそれぞれに回転自在に支持されている。主車輪30は、車体フレーム10R,10Lに対し、車幅方向Dwの外側に配置されている。
【0031】
図4は、本発明の実施形態における電動車椅子の一方の側のフレームに設けられた駆動モータ、制御装置を示す斜視図である。
同図に示すように、主車輪30は、後部縦杆13の下部に連結された車軸31と、車軸31周りに回転自在に設けられたホイール32と、ホイール32の外周部に装着され、床面や地面に接地するタイヤ33と、ホイール32に対し、車幅方向Dwの外側に設けられた円環状のハンドリム34と、を備えている。
ここで、車軸31は、後部縦杆13から車幅方向Dwの外側に向かって突出するよう延びている。
【0032】
図5は、本発明の実施形態における電動車椅子において、主車輪の車軸に対する駆動モータの配置を示す平面図である。
同図に示すように、車軸31は、ホイール32のリム32rおよびタイヤ33よりも車幅方向Dwの幅寸法が大きく設定されている。
この主車輪30は、使用者がハンドリム34を手で回転させることで回転し、電動車椅子1を手動で走行させることができる。
【0033】
図3図4に示すように、補助車輪40は、一対の車体フレーム10R,10Lのそれぞれに、主車輪30に対して前後方向Dfに間隔をあけて配置されている。補助車輪40は、車体フレーム10R,10Lに対し、車幅方向Dwの外側に配置されている。
【0034】
図4に示すように、補助車輪40は、前部縦杆14の下端部に固定された軸部材41と、軸部材41に対して鉛直軸周りに回転可能に設けられたサポート部材42と、サポート部材42の下端部に回転自在に設けられ、床面や地面に接地する車輪本体43と、を備える。車輪本体43は、主車輪30よりも小径とされている。このような補助車輪40は、車幅方向Dw両側の主車輪30,30の回転にともなって走行する電動車椅子1の進行方向に応じて、車輪本体43の向きが軸部材41周りに変わる。
【0035】
駆動モータ60は、主車輪30を回転駆動させる。図2図3に示すように、駆動モータ60は、主車輪30に対して前方に配置されている。駆動モータ60は、車体フレーム10R,10Lのそれぞれに固定されたベースプレート51に、モータ支持プレート52(図7参照)を介して、主車輪30の径方向外側からタイヤ33に対して接離可能に支持されている。
【0036】
図6は、本発明の実施形態における駆動モータを示す側面図である。図7は、本発明の実施形態における駆動モータおよびモータ移動機構の構成を示す斜視図である。
図2図3図6に示すように、ベースプレート51は、車幅方向Dwに直交する鉛直面内に位置し、上方の横杆11と、下方の横杆12と、前部縦杆14とに取付金具53A,53B,53Cを介して装着されている。
【0037】
ここで、上方の横杆11に固定される取付金具53Aと、下方の横杆12に固定される取付金具53Bは、前後方向Dfに沿って、その取付位置が調整可能となっている。また、図6図7に示すように、ベースプレート51には、前後方向Dfに連続するスリット51kが形成され、前部縦杆14に固定される取付金具53Cは、このスリット51kに沿って前後方向Dfの位置が調整可能となっている。これにより、ベースプレート51は、車体フレーム10R,10Lに対する取付位置を、前後方向Dfに調整できるようになっている。
【0038】
図8は、本発明の実施形態における駆動モータおよびモータ移動機構の構成を示す側面図である。
図7図8に示すように、モータ支持プレート52は、例えば車幅方向Dwからみた側面視形状が十字状とされている。
【0039】
モータ支持プレート52は、その下端部が、ベースプレート51に固定された軸支ボルト51a周りに、ベースプレート51に沿った面内で回動可能に支持されている。また、モータ支持プレート52には、その上端部に、前後方向Dfに連続するスリット53sが形成されている。このスリット53sには、ベースプレート51に固定された係止ボルト51bが、スリット53sが連続する方向に相対的に移動可能に係止されている。
【0040】
図9は、本発明の実施形態における駆動モータおよびモータ移動機構の構成を示す図であり、駆動モータの駆動輪を主車輪のタイヤに接触させた状態を示す側面図である。
図8図9に示すように、このスリット53sおよび係止ボルト51bによって、モータ支持プレート52の軸支ボルト51a周りの回動範囲が規制されている。
【0041】
駆動モータ60は、モータ支持プレート52に固定されたモータ部61と、モータ部61によって回転駆動される円環状の駆動輪62と、を備える。
モータ部61は、バッテリー80から供給される電力によって出力軸63sを回転駆動させるモータ本体63と、出力軸の回転を減速させるハイポサイクロイド減速機64と、を備える。このモータ部61の出力軸63sおよびハイポサイクロイド減速機64は、円環状の駆動輪62の内側に収容されている。
図7に示すように、駆動モータ60は、モータ部61と駆動輪62とが、車幅方向Dwにおいて扁平状をなしている。
【0042】
図8図9に示すように、このような駆動モータ60は、上記モータ支持プレート52に固定されることで、モータ支持プレート52と一体に軸支ボルト51a周りに回動する。これによって、駆動輪62は、主車輪30のタイヤ33に対して径方向外側から接離可能となる。
【0043】
駆動モータ60には、前後方向Dfの前方に向かって突出するブロック部材65が、モータ部61およびモータ支持プレート52に固定されている。
【0044】
図5に示すように、この駆動モータ60は、平面視した状態で、駆動モータ60の全体が主車輪30の車軸31の車幅方向Dwの両端31a,31bの間の領域Aに収まるよう、設けられている。すなわち、この駆動モータ60は、前後方向Dfから見たときに、駆動モータ60の全体が主車輪30の車軸31の両端31a,31bの間の領域Aに重なる位置に配置されている。
【0045】
また、図6に示すように、駆動モータ60は、モータカバー66によって覆われている。このモータカバー66は、ベースプレート51に固定され、主車輪30に臨む後方と、前方とに開口する開口部66r,66fが形成されている。駆動モータ60が後方に移動したとき、後方に開口した開口部66rを通して、駆動輪62と主車輪30のタイヤ33とが接触する。また、上記ブロック部材65の一部が、モータカバー66の前方に開口した開口部66fから前方に突出している。
【0046】
上記したような駆動モータ60は、モータ移動機構50によって、主車輪30に対して接離される。
図7図9に示すように、モータ移動機構50は、トグルレバー55と、リンクアーム56と、アーム部材57と、を備えている。
【0047】
トグルレバー55は、ベース部材55aと、ベース部材55aに基端部が固定されたレバーシャフト55bと、レバーシャフト55bの先端部に設けられたグリップ部55cと、を備えている。ベース部材55aは、車幅方向Dwから見た側面視形状が台形状で、前後方向Dfの前端部が、回動軸58を介して、ベースプレート51に固定されたレバー基部材59に、ベースプレート51に沿った鉛直面内で回動自在に連結されている。
この実施形態において、レバー基部材59は、ベースプレート51に形成された前後方向Dfに延びる長孔51hに対し、長孔51hの範囲内で前後方向Dfにおける取付位置が調整可能とされている。これにより、モータ移動機構50は、前後方向Dfの位置を調整できるようになっている。
【0048】
リンクアーム56は、その一端部が、トグルレバー55のベース部材55aの前後方向Dfの後端部に、リンクピン56aを介して、ベースプレート51に沿った鉛直面内で回動自在に連結されている。リンクアーム56は、後方に向かって斜め可能に延びている。
【0049】
アーム部材57は、その基端部が、レバー基部材59に対し、リンクピン57aを介してベースプレート51に沿った鉛直面内で回動自在に連結されている。アーム部材57は、下方に向かって延び、その中間部に、前記リンクアーム56の他端部がリンクピン56bを介して回動自在に連結されている。
アーム部材57の先端部には、前記ブロック部材65を後方に向かって押すプッシャー部57pが一体に形成されている。
【0050】
図8図9に示すように、このようなモータ移動機構50は、トグルレバー55のレバーシャフト55bを前後方向Dfの後方(図8図9において左方(矢印Y1)参照)に向かって押すと、レバーシャフト55bの基端部に設けられたベース部材55aが、前端部側の回動軸58周りに、後端部側のリンクピン56aが下降する方向に回動する。すると、リンクアーム56を介してアーム部材57が後方に向かって押圧され、アーム部材57が、リンクピン57a周りに、先端部が後方に移動する方向に回動する。
【0051】
これによって、アーム部材57の先端部に設けられたプッシャー部57pが、ブロック部材65を後方に向かって押す。その結果、駆動モータ60のモータ部61および駆動輪62が、モータ支持プレート52とともに回動し、後方に移動する(図9における矢印Y2参照)。駆動モータ60の駆動輪62が主車輪30のタイヤ33に径方向外側(前方)から接近して接触すると、駆動モータ60によって主車輪30を回転駆動させることができる。
【0052】
また、トグルレバー55のレバーシャフト55bを前後方向Dfの前方(図8図9において右方)に向かって押すと、ベース部材55aが、前端部側の回動軸58周りに、後端部側のリンクピン56aが上昇する方向に回動する。すると、リンクアーム56を介してアーム部材57が前方に向かって引っ張られ、アーム部材57が、先端部が前方に移動する方向に回動する。
【0053】
これによって、アーム部材57の先端部に設けられたプッシャー部57pが、ブロック部材65から前方に離間する。その結果、駆動モータ60のモータ部61および駆動輪62が、モータ支持プレート52とともに、不図示のスプリング等の復帰部材によって前方に押圧され、 前方に移動する。そして、駆動モータ60の駆動輪62が主車輪30のタイヤ33から径方向外側(前方)に離間し、駆動モータ60による主車輪30の回転駆動が停止される。
【0054】
また、ベースプレート51には、主車輪30の回転を手動により停止させるブレーキ機構90が設けられている。図8に示すように、このブレーキ機構90は、ブレーキレバー91,リンク部材92,およびシュー部材93を備えている。
【0055】
図2図4に示す制御装置70は、図示しないケーブルを介して各駆動モータ60に接続され、各駆動モータ60の作動を制御する。制御装置70は、直方体状の筐体71に収容されている。この制御装置70は、一方の車体フレーム10Rの下方の横杆12の後端部と後部縦杆13の下端部に、ブラケット73を介して固定されている。
制御装置70は、筐体71の最も短い辺71sを車幅方向Dwに向けて配置されている。つまり、制御装置70は、その扁平方向を車幅方向Dwに一致させて配置されている。制御装置70は、下方の横杆12の上方、かつ後部縦杆13の後方に配置され、車幅方向Dwへの突出寸法が最小限に抑えられている。これにより、制御装置70は、前後方向Dfから見たときに、その少なくとも一部が車体フレーム10Rと重なる位置に配置されている。
【0056】
図3に示すバッテリー80は、図示しないケーブルを介して制御装置70に接続され、さらに制御装置70から各駆動モータ60に接続されて、制御装置70および各駆動モータ60に電力を供給する。バッテリー80は、直方体状の筐体81に収容されている。このバッテリー80は、他方の車体フレーム10Lの下方の横杆12の後端部と後部縦杆13の下端部に、ブラケット83を介して固定されている。バッテリー80は、筐体81の最も短い辺81sを車幅方向Dwに向けて配置されている。つまり、バッテリー80は、その扁平方向を車幅方向Dwに一致させて配置されている。
バッテリー80は、下方の横杆12の上方、かつ後部縦杆13の後方に配置され、車幅方向Dwへの突出寸法が最小限に抑えられている。これにより、バッテリー80は、前後方向Dfから見たときに、その少なくとも一部が車体フレーム10Lと重なる位置に配置されている。
【0057】
また、これら制御装置70、バッテリー80は、車幅方向Dwから側面視したときに、その少なくとも一部が、主車輪30と重なるように配置されている。この実施形態において、制御装置70、バッテリー80は、車幅方向Dwから側面視したときに、その全部が、主車輪30と重なるように配置されている。これにより、制御装置70およびバッテリー80が、主車輪30に対して前後方向Dfに突出するのを抑えている。
【0058】
また、車幅方向Dwの一方の側の肘掛け部18上には、操作ユニット75が設けられている。この操作ユニット75は、不図示のケーブルを介した有線、または無線によって、制御装置70に通信可能に接続されている。操作ユニット75は、使用者によってなされた操作に応じて、電動車椅子1の進行方向、走行速度等を制御するための信号を制御装置70に転送する。制御装置70は、操作ユニット75から受信した信号に応じて、車幅方向Dwの両側に設けられた駆動モータ60のモータ部61の回転方向、回転速度等を個別に調整することにより、電動車椅子1の進行方向や走行速度を制御する。
【0059】
上記したような電動車椅子1においては、駆動モータ60の駆動輪62を主車輪30から離間させた状態としたときには、手動により走行移動可能となっている。このときには、使用者がハンドリム34を手で回転させるか、またはサポート者がグリップ部17を掴んで電動車椅子1を後方から押すことで、電動車椅子1を手動によって所望の方向に移動させることができる。
【0060】
また、電動車椅子1において、トグルレバー55を所定の方向(後方)に向かって倒すと、モータ移動機構50によって、駆動モータ60の駆動輪62が後方に移動して主車輪30に突き当たる。この状態で、使用者が操作ユニット75を操作すると、その操作内容に応じて制御装置70が駆動モータ60のモータ部61の回転方向や回転速度を制御し、これによって、電動車椅子1を所望の方向に移動させることができる。
【0061】
このように、上述の電動車椅子1の駆動モータ60は、前後方向Dfから見たときに、駆動モータ60の全体が主車輪30の車軸31の両端31a,31bの間の領域Aに重なる位置に配置されている。
このような構成によれば、車体フレーム10L,10Rの内側に駆動モータ60が突出するのを抑えることができる。これによって、一対の車体フレーム10L,10R同士を車幅方向Dwに折り畳んだときに、駆動モータ60が車体フレーム10L,10Rや他の機器等に干渉するのを抑えることができる。
【0062】
また、制御装置70とバッテリー80は、それぞれ直方体状の筐体71,81に収容されるとともに、筐体71,81の最も短い辺71s,81sを車幅方向Dwに向けて配置されている。
このような構成によれば、制御装置70とバッテリー80とが車幅方向Dwにおいてスペースを占めるのを抑えることができる。したがって、一対の車体フレーム10L,10R同士を車幅方向Dwに折り畳んだときに、制御装置70やバッテリー80が、車体フレーム10L,10Rや他の機器等に干渉するのを抑えることができる。
【0063】
また、制御装置70およびバッテリー80は、それぞれ、前後方向Dfから見たときに、その少なくとも一部が車体フレーム10L,10Rと重なる位置に配置されている。
このような構成によれば、制御装置70およびバッテリー80が、車体フレーム10L,10Rから車幅方向Dwに突出するのを抑えることができる。これにより、一対の車体フレーム10L,10R同士を車幅方向Dwに折り畳んだときに、制御装置70やバッテリー80が、車体フレーム10L,10Rや他の機器等に干渉するのを抑えることができる。
【0064】
また、制御装置70およびバッテリー80は、車幅方向Dwから側面視したときに、その少なくとも一部が主車輪30と重なる位置に配置されている。
このような構成によれば、制御装置70およびバッテリー80が、主車輪30に対して前後方向Dfに突出するのを抑えることができる。
【0065】
また、制御装置70は、一方の車体フレーム10Rに設けられ、バッテリー80は、他方の車体フレーム10Lに設けられている。
このような構成によれば、制御装置70とバッテリー80とを、一対の車体フレーム10L,10Rの両側に振り分けることで、制御装置70やバッテリー80を車幅方向Dwにバランス良く配置することができる。
【0066】
また、電動車椅子1は、車幅方向Dwに直交する面内に位置し、車体フレーム10L,10Rに固定されたベースプレート51と、ベースプレート51に対し、主車輪30に径方向に沿って接離可能に設けられ、駆動モータ60が固定されたモータ支持プレート52と、駆動モータ60およびモータ支持プレート52を主車輪30に対する接離方向に移動させるモータ移動機構50と、を備えている。
このような構成によれば、モータ移動機構50によって、駆動モータ60と、駆動モータ60が固定されたモータ支持プレート52とを、ベースプレート51に沿って主車輪30に対して接離させることができる。これによって、駆動モータ60の駆動輪62を、主車輪30に対して接離させ、駆動モータ60の駆動力の主車輪30に対しての伝達を断続することができる。したがって、電動車椅子1を、手動および電動で選択的に移動させることができる。
【0067】
また、駆動モータ60は、ハイポサイクロイド減速機64を駆動輪62の径方向内側に備えている。
このような構成によれば、ハイポサイクロイド減速機64は、扁平に形成することができるので、駆動モータ60を車幅方向Dwに扁平なものとすることができる。これによって、駆動モータ60が、車体フレーム10L,10Rの内側に駆動モータ60が突出するのを抑えることができる。これによって、一対の車体フレーム10L,10R同士を車幅方向Dwに折り畳んだときに、駆動モータ60が車体フレーム10L,10Rや他の機器等に干渉するのを抑えることができる。
【0068】
このようにして、駆動モータ60や、駆動モータ60を動作させるための各種の機器として制御装置70やバッテリー80等を装備しても、電動車椅子1を、車幅方向Dwにコンパクトに折り畳むことが可能となる。
【0069】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0070】
例えば、上記実施形態において、駆動モータ60を、モータ支持プレート52と一体に回動することによって、駆動輪62を主車輪30のタイヤ33に対して接離させるようにしたが、これに限らない。駆動モータ60の全体を、前後方向Dfに沿ってスライドさせることで、駆動輪62を主車輪30のタイヤ33に対して接離させるようにしてもよい。
【0071】
また、駆動モータ60、モータ移動機構50、制御装置70、操作ユニット75,バッテリー80等の具体的な構成については、それぞれに所要の機能を発することができるのであれば、いかなる構成であっても良い。
【0072】
さらに、上記実施形態では、駆動モータ60を、モータ移動機構50の手動操作によって主車輪30のタイヤ33に対して接離させるようにしたが、これに限らない。駆動モータ60を主車輪30のタイヤ33に対して接離させるためのアクチュエータ等を備え、使用者の操作によってアクチュエータ等を作動させ、駆動モータ60を自動的に主車輪30のタイヤ33に対して接離させるようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、駆動モータ60を主車輪30のタイヤ33に対して接離させるようにしたが、これに限らない。駆動モータ60を主車輪30のタイヤ33に対して常に接触させ、電動車椅子1を、常に電動で駆動するようにしても良い。
【0074】
また、例えば、電動車椅子1の車体フレーム10L,10Rや座部20等の構成は、適宜変更することが可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…電動車椅子
10L…車体フレーム
10R…車体フレーム
20…座部
30…主車輪
31…車軸
31a,31b…両端
40…補助車輪
50…モータ移動機構
51…ベースプレート
51a…軸支ボルト(支柱)
52…モータ支持プレート
57p…プッシャー部
60…駆動モータ
62…駆動輪
64…ハイポサイクロイド減速機
65…ブロック部材
70…制御装置
71、81…筐体
71s、81s…辺
75…操作ユニット
80…バッテリー
A…領域
Df…前後方向
Dw…車幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9