(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記先行技術の場合、圧縮空気の切換弁の設置場所について言及されていない。仮に、この切換弁がガスタービンエンジン本体から離れた場所に設置される場合には、ガスタービンエンジン本体と切換弁の間を接続する配管やそれに伴う部品などの設備構成が大掛かりとなり、広いスペースが必要でコスト高にもなる。また、仮に、ガスタービンエンジン本体に近接した場所に切換弁が設置される場合には、ガスタービンエンジンからの熱による悪影響を受けて、切換弁の誤作動や早期の劣化を招く。
【0005】
本発明の目的は、空気通路を切り替える切替装置の信頼性が高く、省スペースかつコンパクトな構成で配置したガスタービンエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係るガスタービンエンジンは、圧縮機で圧縮した圧縮空気を燃焼器で燃焼させ、発生した高温高圧の燃焼ガスにより、回転軸で連結されたタービンを駆動するガスタービンエンジンであって、前記ガスタービンエンジン内の異なる部分間を連通させる複数の空気通路と、前記複数の空気通路間で空気の流路を切り替える切替装置とを備え、前記複数の空気通路はエンジンケーシングの外側に設けられた空気管によって形成され、前記切替装置は遮熱部材を介して前記エンジンケーシングの外面に取り付けられている。
【0007】
この構成によれば、複数の空気通路を形成する空気管および切替装置がエンジンケーシングの外側に設けられることで、設置スペースに余裕があるため、エンジンケーシング内部の高温による熱的悪影響を受けにくい配置が容易となる。また、遮熱部材による遮熱効果によって切替装置の高温化がさらに効果的に防止される。したがって、高温化による切替装置の誤作動や劣化がなく、その信頼性が高いレベルで確保される。
【0008】
本発明のガスタービンエンジンにおいて、前記切替装置がステーを介してエンジンケーシング表面から離間して取り付けられてもよい。この場合、ステーの存在による切替装置の隔離によって、さらなる高温化抑制効果が期待できる。
【0009】
本発明のガスタービンエンジンにおいて、他の付属機器のサポート部材に前記切替装置が取り付けられていてもよい。この場合、同一のサポート部材の共有化による省スペース、コスト低減を図ることができる。
【0010】
本発明のガスタービンエンジンにおいて、前記他の付属機器が燃料マニホールドであってもよい。この場合、燃料マニホールドと切替装置が近接するので、燃料マニホールド内を流れる低温の燃料によって切替装置の高温化が抑制される。
【0011】
本発明のガスタービンエンジンにおいて、前記切替装置が圧縮機ケーシングの外面に取り付けられていてもよい。この場合、圧縮機ケーシングは高温となるタービンおよび燃焼器から離れているので、タービンおよび燃焼器からの熱影響を大きく受けず、切替装置の過熱防止が図られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の空気通路を形成する空気管および切替装置がエンジンケーシングの外側に設けられることで、設置スペースに余裕があるため、エンジンケーシング内部の高温による熱的悪影響を受けにくい配置が容易となる。また、遮熱部材によって切替装置の高温化がさらに効果的に防止される。その結果、高温化による切替装置の誤作動や劣化がなく、その信頼性が高いレベルで確保される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るガスタービンエンジン(以下、単にガスタービンという場合がある)について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るガスタービンエンジンの概略構成図を示す。同図において、ガスタービン1は、外部からの導入空気A1を圧縮機2で圧縮して圧縮空気CAにして燃焼器3に導き、この圧縮空気CAを燃焼器3内に噴射される燃料Fと混合して燃焼させ、得られた高温高圧の燃焼ガスGにより、タービン5を駆動する。なお、以下の説明において、ガスタービン1の軸心方向Cの圧縮機2側を「前側」、タービン5側を「後側」という場合がある。
【0015】
圧縮機2とタービン5は回転軸6で連結され、タービン5が圧縮機2を駆動する。回転軸6の前部は軸受室7に収容された軸受によって支持され、回転軸6の後部は軸受室8に収容された軸受によって支持されている。このガスタービン1は、
図2に示すように、回転軸6が軸方向に複数、この例では6A〜6Cの3つに分割された一軸型であるが、圧縮機2とタービン5は単一の回転軸6で連結されていてもよい。また、本発明は、軸方向に複数に分割された圧縮機2と軸方向に複数に分割されたタービン5とを同心状の複数の回転軸で連結する、いわゆる複数軸型のガスタービンにも適用できる。
【0016】
図1の圧縮機2の高圧段側(例えば10段目)とタービン5との間は冷却空気供給路10で連絡され、圧縮機2の高圧段側から取り出した圧縮空気CAの一部が内部冷却用の空気としてタービン5の内部各所に送り込まれるようになっている。
【0017】
圧縮機2は、ガスタービンエンジン1内の異なる部分間を連通させる複数の空気通路として、その低圧段側(例えば4段目)から軸受室7,8にシール用の圧縮空気CAを供給する低圧空気供給路11と、圧縮機2内の高圧段側から軸受室7,8へシール用の圧縮空気CAを供給する高圧空気供給路12とを備えている。この高圧空気供給路12は前記冷却空気供給路10から分岐させて設けられている。高圧空気供給路12は合流点Pで低圧空気供給路11と合流しており、低圧空気供給路11における合流点Pよりも上流側に逆止弁13が設けられている。合流点Pよりも下流側は空気供給路18となっており、この空気供給路18に、空気中の異物を除去するフィルタ15と、ドレイン排出器16とが設けられている。
【0018】
合流点Pの上流側の高圧空気供給路12には、低圧空気供給路11と高圧空気供給路12を適宜切り替え可能な切替装置17が設けられている。弁体空気供給路18は途中で、前側空気供給路18Aと後側空気供給路18Bとに分岐しており、前側空気供給路18Aは前側の軸受室7に、後側空気供給路18Bは後側の軸受室8にそれぞれ接続されている。前記切替装置17は自動切替弁で構成されている。この自動切替弁17は、高圧空気供給路12の内部に配置された弁体43と、これを駆動するアクチュエータ44とを有する。アクチュエータ44は、例えば電気式であり、ソレノイドバルブによって選択的に弁駆動用空気を導入し、その空気圧により弁駆動ロッド44aを移動させることによって弁体43を開閉動作させる。
【0019】
ガスタービン1の回転速度は、軸受室7に取り付けた回転速度センサ20により検出され、シール用の圧縮空気CAの圧力は、空気供給路18に設置した圧力センサ21により検出される。前記回転速度センサ20は、ガスタービン1の回転速度を検出できる部位であれば、軸受室7以外の部位に設けてもよい。
【0020】
ガスタービン1には、適切な運転制御を可能とするコントローラ22が付設されており、このコントローラ22に回転速度センサ20により検出したエンジンの回転速度や圧力センサ21により検出した圧力が監視情報として入力され、これらの情報を演算処理した結果に基づいて切替装置17を動作させ、低圧空気供給路11と高圧空気供給路12のうち、いずれか適切な方に適宜切替え制御できるようになっている。
【0021】
図2はガスタービンエンジン1の部分破断側面図を示す。同図を参照しながら、
図1に示すガスタービンエンジン1をより具体的に説明する。
図2に示すように、このガスタービンエンジン1では、圧縮機2として軸流型のものを用いている。この軸流型圧縮機2は、ガスタービン1の回転部分の前部を構成する圧縮機ロータ23Aの外周面に、多数の動翼25が配置されており、これら動翼25と、圧縮機ケーシング(エンジンケーシングの一部)26の内周面に多数配置された静翼27との組合せにより、前部開口から吸入した空気A1を圧縮する。圧縮空気CAは、圧縮機2の下流側に設けたディフューザ30を経由して燃焼器3に向けて送給される。
【0022】
燃焼器3は、ガスタービン1の周方向に沿って複数個(例えば8個)が等間隔に配置されている。燃焼器3では、圧縮機2から送給された圧縮空気CAが、燃焼器3内に噴射された燃料Fと混合されて燃焼され、これにより生成した高温高圧の燃焼ガスGがタービン5内に流入する。
【0023】
タービン5は、ガスタービン1の回転部分の軸方向中央部と後部をそれぞれ構成するタービンロータ23Bおよび23Cと、これらロータ23B,23Cを覆うタービンケーシング(エンジンケーシングの一部)32とを備えている。タービンロータ23Bは圧縮機ロータ23Aに一体回転するように連結されている。タービンケーシング32の後部には、排気路37を形成する排気路ケーシング(エンジンケーシングの一部)38が連結されている。
【0024】
ロータ23A,23Bは前部の回転軸6を形成しており、圧縮機ケーシング26およびタービンケーシング32に、前部および中央部の軸受室7,9を介して回転自在に支持されている。また、ロータ23Cは後部の回転軸6Aを形成しており、排気路ケーシング38に、後部の軸受室8を介して回転自在に支持されている。両回転軸6,6Aは、ギヤカップリング60により、一体回転するように連結されている。
【0025】
このような構成のガスタービン1において、前出の
図1で説明した複数の空気通路の一つである
図2の低圧空気供給路11は、圧縮機ケーシング26における圧縮機2の低圧段側に相当する部位に抽気口(図示せず)を設け、この抽気口に低圧空気供給路11を形成する空気管を接続する。一方、空気通路の一つである高圧空気供給路12は、エンジンケーシングの前部を構成する圧縮機ケーシング26における圧縮機2の高圧段側に相当する部位に抽気口(図示せず)を設け、この抽気口に冷却空気供給路10を形成する空気管を接続することで形成される。低圧空気供給路11を形成する空気管および高圧空気供給路12を形成する空気管は、いずれも圧縮機ケーシング26の外側に設けられる。
【0026】
低圧空気供給路11と高圧空気供給路12の空気の流路を切り替える切替装置17の自動切替弁が閉じられると、高圧空気供給路12が閉路され、常時開路されている低圧空気供給路11からの圧縮空気CAが空気供給路18を通って軸受室7,8に供給される。また、切替装置17の自動切替弁が開かれると、高圧空気供給路12が開路され、その圧縮空気CAによって低圧空気供給路11が遮断され,高圧空気供給路12からの圧縮空気CAが空気供給路18を通って軸受室7,8に供給される。回転速度センサ20で検出した回転速度信号20aや圧力センサ21で検出した情報がコントローラ22に入力され、演算処理の結果によって、軸受室7,8への圧縮空気CAの供給を低圧空気供給路11で行うか、あるいは高圧空気供給路12で行うかが判断される。その結果に基づき、コントローラ22からの指令22aにより切替装置17のアクチュエータ44が作動して、開閉が切り替えられる。
【0027】
低圧空気供給路11と高圧空気供給路12のうち、いずれが選択された場合でも、空気供給路18と連通して、圧縮空気CAが軸受室7,8を取り囲む壁と回転軸6,6Aの外周面との間に供給されて、軸受室7,8からのオイル漏れを防止するエアシールがなされる。なお、中央部の軸受室9は別系統でエアシールされている。
【0028】
つぎに、切替装置17の具体的構成を
図3により説明する。
図3は切替装置17が取り付けられた圧縮機ケーシング26の下面側から見た斜視図であり、同図において、切替装置17は圧縮機ケーシング26の下半部の外面に取り付けられている。圧縮機2の高圧段側(例えば10段目)に冷却空気供給路10を形成する空気管が接続されて、タービン5(
図1)に冷却空気が供給される。この冷却空気供給路10から高圧空気供給路12を形成する空気管が分岐して設けられている。
【0029】
圧縮機ケーシング26の下部の外面には他の付属機器である
図5の燃料マニホールド53を支持するためのサポート部材40の取付座40bが固着されている。サポート部材40の取付座40bには燃料マニホールド53が取り付けられる。このサポート部材40に、ステー42を介して切替装置17が取り付けられている。
【0030】
サポート部材40は、圧縮機ケーシング26に取り付けられる下部の取付座40aと、上部のT字状のマニホールド取付座40bと、両取付座40a,40bを連結する柱部40cとを有している。柱部40cにステー42がボルト・ナットのような締結部材46(
図4)によって固定され、このステー42にボルトのような締結部材47(
図4)によって取り付けた熱遮蔽カバーからなる遮熱部材50が、圧縮機ケーシング26から離間した状態、つまり、隙間S(
図5)を開けた状態で取り付けられている。これにより、切替装置17全体も圧縮機ケーシング26から離間した状態となっている。
【0031】
前記遮熱部材50は、
図4に示すように、アクチュエータ44の圧縮機ケーシング26側を覆う背壁50a、ステー42側を覆う上壁50bおよび前後面側を覆う2つの端壁50c,50cを有している。遮蔽部材50における上壁50bに対向する下部は、アクチュエータ44の弁駆動ロッド44aが延びているので、壁が設けられておらず、開放されている。遮断部材50における圧縮機ケーシング26と反対側も壁がなく、開放されている。切替装置17のアクチュエータ44には複数のスペーサ63が、これに設けられたねじ体63aのねじ込みによって取り付けられている。このスペーサ63に、ステー42の取付座42aと遮熱部材50の上壁50bとを貫通して前記締結部材47がねじ込まれている。これによって、前記締結部材47により、ステー42に、遮熱部材50と切替装置17とが、その間にスペーサ63を介在させた状態で取り付けられている。遮熱部材50とスペーサ63は、例えばステンレス製である。
【0032】
図2に示す圧縮機2の低圧空気供給路11または高圧空気供給路12から空気供給路18に入った圧縮空気CAの一部は、後側空気供給路18Bを経て後側の軸受室8へ供給され、圧縮空気CAの他の一部は分岐点Hで分岐して、前側空気供給路18Aを経て前側の軸受室7へ供給される。
【0033】
このように構成されるガスタービンエンジン1の制御動作について説明する。まず、
図2のガスタービンエンジン1の始動時には、コントローラ22により、切替装置17の弁を開き、圧縮機2の高圧段側から高圧空気供給路12と空気供給路18を通って圧縮空気CAを軸受室7,8に供給する。このとき、低圧空気供給路11は逆止弁13により、圧縮空気CAが低圧空気供給路11内に逆流するのが防止される。
【0034】
始動時を経て所定の回転速度に達したとき、コントローラ22が回転速度センサ20からの回転速度信号20aによって定常運転に入ったと判断し、切替装置17の弁を閉じて高圧空気供給路12からの圧縮空気CAの使用を停止し、低圧空気供給路11と空気供給路18とを通って圧縮空気CAを軸受室7,8に供給する。
【0035】
また、ガスタービンエンジン1が停止に向けて減速しているとき、前記所定の回転速度未満になると、コントローラ22により、切替装置17の弁を開き、高圧空気供給路12から圧縮空気CAを軸受室7,8に供給する。なお、ガスタービンエンジン1の停止時には、軸受室7,8からのオイル漏れが発生しにくいのでエアシールの必要性がなく、圧縮空気CAは軸受室7,8に供給されない。
【0036】
以上のように構成されるガスタービンエンジン1は、
図2の複数の空気通路11,12を形成する空気管および切替装置17が圧縮機ケーシング26の外側に設けられることで、設置スペースに余裕があるため、圧縮機ケーシング26内部の高温による熱的悪影響を受けにくい配置が容易となる。また、遮熱部材50による遮熱効果によって切替装置17の高温化がさらに効果的に防止される。したがって、高温化による切替装置17の誤作動や劣化がなく、その信頼性が高いレベルで確保される。
【0037】
図5に示すように、切替装置17がステー42を介して圧縮機ケーシング26表面から離間して取り付けられており、このステー42の存在による切替装置17の隔離によって、さらなる遮熱効果が期待できる。また、切替装置17を覆う遮熱部材50の背壁50aと圧縮機ケーシング26の外表面から隙間Sだけ離れているので、遮熱部材50自体の高温化も抑制されるので、遮熱部材50による切替装置17の高温化抑制効果が一層大きくなる。
【0038】
他の付属機器である燃料マニホールド53を支持するサポート部材40に切替装置17が取り付けられているから、同一のサポート部材40の共有化による省スペース、コスト低減を図ることができる。燃料マニホールド53と切替装置17が近接するので、燃料マニホールド53内を流れる低温の燃料によって切替装置17の高温化が抑制される。
【0039】
図3に示すように、切替装置17が圧縮機ケーシング26に取り付けられており、この圧縮機ケーシング26は
図2に示す高温部の燃焼器3およびタービン5から離れているので、これら燃焼器3およびタービン5からの熱影響を受けず、切替装置17の過熱防止が図られる。
【0040】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、切替装置17とその遮蔽部材50は、圧縮機ケーシング26とともにエンジンケーシングを構成するタービンケーシング32または排気路ケーシング38の外面に取り付けてもよい。また、切替対象の空気通路は、軸受室のエアシール用に限定されず、例えばタービンに冷却空気を供給する空気通路であってもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。