(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799458
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】樹脂チューブ成形機における気泡除去装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/90 20190101AFI20201207BHJP
B29C 48/885 20190101ALI20201207BHJP
B29C 48/09 20190101ALI20201207BHJP
【FI】
B29C48/90
B29C48/885
B29C48/09
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-250196(P2016-250196)
(22)【出願日】2016年12月23日
(65)【公開番号】特開2018-103408(P2018-103408A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【弁理士】
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】磯 浩幸
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−058074(JP,U)
【文献】
実開平05−035244(JP,U)
【文献】
実開平06−027124(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形用金型から押し出された樹脂チューブをサイジングダイに導き、その後、冷却水槽に導いて冷却して所定寸法の樹脂チューブに成形する樹脂チューブ成形機における気泡除去装置であって、上記気泡除去装置は、上記サイジングダイと冷却水槽との間に設置された内周面に間隔をおいて複数個の噴出穴が形成されたシャワーリングであり、該シャワーリングは、その内径Dが通過する樹脂チューブの外径dの3〜8倍、長さLが通過する樹脂チューブの外径dの1.0〜3.5倍に形成され、上記シャワーリングの内周面に形成された噴出穴が、シャワーリングの5cm×5cmの壁面に10〜55個形成されており、該シャワーリングへの冷却水の供給水量が、100〜300cm3/secに設定されており、該シャワーリングの上流側に存在する上記サイジングダイ及び該サイジングダイを出た直後の樹脂チューブに対して、前記噴出穴から冷却水を噴射するように構成されていることを特徴とする、樹脂チューブ成形機における気泡除去装置。
【請求項2】
上記サイジングダイの後方端が、上記シャワーリングの前方開口に挿入されていることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂チューブ成形機における気泡除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂チューブ成形機に設置される気泡除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、押出成形用金型から押し出された樹脂チューブをサイジングダイに導き、その後、冷却水槽に導入して所定寸法の樹脂チューブに成形する樹脂チューブ成形機が用いられている。
かかる樹脂チューブ成形機においては、冷却水槽内の冷却水中に高温状態の樹脂チューブを通過させるものであるため、冷却水が加熱されること等により冷却水中に気泡が発生し、発生した気泡が樹脂チューブの表面に付着してその部分が冷却不良となり、製造された樹脂チューブの表面にクレーター状の凹凸が生じるという問題があった。
【0003】
上記したことを防止するため、特許文献1には、冷却水供給口を備えた水冷リングを冷却水槽内に設け、該水冷リング内を通過する樹脂チューブと水冷リングの端部との間隙のうち少なくとも挿入側の間隙より冷却水を噴出させ、該噴出する冷却水により樹脂チューブの表面に付着した気泡を除去する構造の気泡除去装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−353426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に開示された技術にあっては、単に樹脂チューブの表面に沿って冷却水を噴出させ、該噴出水の圧力により表面に付着した気泡を除去する構造の装置であり、気泡の発生それ自体を抑えることができるものではなかった。そのため、樹脂チューブの表面に付着した気泡を除去するためには、それなりの冷却水の噴射圧力及び噴射水量が要求され、装置が大掛かりなものとなっていたとともに、ランニングコストも掛かるものであった。
【0006】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑み成されたものであって、その目的とするところは、気泡の発生それ自体も抑制することができ、且つ、効率的に樹脂チューブの表面に付着する気泡を無くすことができる樹脂チューブ成形機における気泡除去装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成すべく、本発明者らは鋭意研究を進めた結果、冷却水中に発生する気泡は、高温の樹脂チューブとの接触により発生するものの他、高温の樹脂チューブを正規の管形状に賦形するサイジングダイとの接触により発生するものも少なからず存在すること、また早い時期に樹脂チューブを冷却させれば、それ以降の気泡の付着は起きにくいとの知見を得、次の(1)〜(
2)に記載の本発明に係る樹脂チューブ成形機における気泡除去装置を完成させた。
(1)押出成形用金型から押し出された樹脂チューブをサイジングダイに導き、その後、冷却水槽に導いて冷却して所定寸法の樹脂チューブに成形する樹脂チューブ成形機における気泡除去装置であって、
上記気泡除去装置は、上記サイジングダイと冷却水槽との間に
設置された内周面に間隔をおいて複数個の噴出穴が形成されたシャワーリング
であり、該シャワーリングは、その内径Dが通過する樹脂チューブの外径dの3〜8倍、長さLが通過する樹脂チューブの外径dの1.0〜3.5倍に形成され、上記シャワーリングの内周面に形成された噴出穴が、シャワーリングの5cm×5cmの壁面に10〜55個形成されており、該シャワーリングへの冷却水の供給水量が、100〜300cm3/secに設定されており、該シャワーリングの上流側に存在する上記サイジングダイ及び該サイジングダイを出た直後の樹脂チューブに対して、前記噴出穴から冷却水を噴射するように構成されていることを特徴とする、樹脂チューブ成形機における気泡除去装置。
(2)上記サイジングダイの後方端が、上記シャワーリングの前方開口に挿入されていることを特徴とする、上記(1)に記載の樹脂チューブ成形機における気泡除去装置。
【発明の効果】
【0008】
上記した本発明によれば、サイジングダイと冷却水槽との間に、内周面に間隔をおいて複数個の噴出穴を形成したシャワーリングを設け、該シャワーリングの上流側に存在する上記サイジングダイ及びサイジングダイを出た直後の樹脂チューブに対して、前記噴出穴から冷却水を噴射する構造の気泡除去装置としたので、樹脂チューブのみならずサイジングダイの冷却が図れ、気泡の発生それ自体を抑えることができるとともに、早い時期において樹脂チューブの冷却が図れ、気泡が付着し難いものとすることができる。また、噴射する冷却水によって、冷却水中を浮遊する気泡が樹脂チューブの表面に付着することを防止し、且つ、樹脂チューブの表面に付着した気泡を除去することができるため、効率的に樹脂チューブの表面に付着する気泡を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】樹脂チューブ成形機の全体を模式的に示した側面図である。
【
図2】サイジングダイ部とシャワーリング部を示した斜視図である。
【
図3】サイジングダイ部とシャワーリング部とを組み付けた状態の縦断面図である。
【
図4】本発明に係る装置の要部を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る樹脂チューブ成形機における気泡除去装置の一実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、樹脂チューブ成形機の全体を模式的に示した図である。
この樹脂チューブ成形機1は、金型を備えた押出機2と、該押出機2より押し出された樹脂チューブPを冷却する冷却水槽3と、冷却水槽3にて冷却されるとともに、所定寸法に成形された樹脂チューブPを引き取る引取機4と、製造された樹脂チューブPを所定の長さに切断する切断機5とから構成されている。そして、上記冷却水槽3の入口には、押出機2より押し出された高温の樹脂チューブPを所定の管形状に賦形するサイジングダイ部10と、該サイジングダイ部10の出口側に配設されたシャワーリング部20とを備えている。
【0012】
上記サイジングダイ部10は、
図2及び
図3に示したように、サイジングダイ11と、該サイジングダイ11を支持固定する固定部材12とからなる。サイジングダイ11は、内周面が樹脂チューブPを所定の管形状に賦形するように形成された円筒状部13と、この円筒状部13の入口部外周に設けられた環状部14及び円筒状部13の途中に設けられたフランジ部15とが一体的に形成されたものである。このサイジングダイ11は、固定部材12に水密に取り付けられることにより、上記環状部14とフランジ部15との間にキャビティ16が画成され、該キャビティ16に連通する水路17が固定部材12に穿設されている。また、サイジングダイ11の前記円筒状部13の入口部内周には、前記キャビティ16に連通する小穴18が複数個形成され、外部から水路17を介して前記キャビティ16に導いた冷却水を、各小穴18から噴出させることができるように構成されている。更に、サイジングダイ11の円筒状部13の後方端は露出するように上記固定部材12に取り付けられ、固定部材12の後方内周面には、上記露出したサイジングダイ11の円筒状部13に向かって徐々に狭くなる傾斜部19が形成されている。
【0013】
一方、シャワーリング部20は、やはり
図2、
図3に示したように、シャワーリング21と、該シャワーリング21を支持固定する固定部材22とからなる。シャワーリング21は、上記サイジングダイ11の円筒状部13の外径よりも大きな内径に形成されたリング状本体部23と、このリング状本体部23の後方端外周に設けられたフランジ部24とからなり、前記リング状本体部23の壁面には、複数個の噴出穴25がシャワーリング21の周方向と軸方向のそれぞれに間隔をおいて穿設されている。噴出穴25の間隔は、周方向に等間隔かつ軸方向に等間隔であることが望ましい。このシャワーリング21は、固定部材22に水密に取り付けられることにより、固定部材22との間にキャビティ26が画成され、該キャビティ26に連通する水路27が固定部材22に穿設されており、外部から該水路27を介してキャビティ26に導いた冷却水を、シャワーリング21の前記各噴出穴25から噴出させることができるように構成されている。
【0014】
上記したサイジングダイ部10及びシャワーリング部20は、
図4及び
図5に示したように、冷却水槽3の入口に水密に取り付けられ、本発明に係る気泡除去装置を有する樹脂チューブ成形機に構成される。この際、
図5に示したように、上記サイジングダイ11の円筒状部13の後方端が、上記シャワーリング21のリング状本体部23の前方開口に挿入された状態で取り付けられることが好ましい。また、サイジングダイ部10の固定部材12の後方内周面に形成された上記傾斜部19が、シャワーリング21のリング状本体部23の前方開口から連なる傾斜面になるように取り付けられることが好ましく、これによって、シャワーリング21の噴出穴25から噴射された冷却水が、よりサイジングダイ11側に流入し易いものとすることができる。
【0015】
続いて、上記したように構成された樹脂チューブ成形機1の作動について説明する。
【0016】
冷却水槽3には、図示しない冷却手段にて冷却された冷却水が供給され、その排水は再び冷却手段に送られて冷却され、所定温度の冷却水が循環するように構成されている。また、サイジングダイ部10に画成されたキャビティ16、シャワーリング部20に画成されたキャビティ26にそれぞれ連通する水路17,27にも、冷却手段から上記冷却水槽3に供給される給水管から分岐した給水管が接続されて冷却水が供給され、サイジングダイ11の入口部内周に形成された上記小穴18、シャワーリング21の壁面に形成された上記噴出穴25からそれぞれ冷却水が噴出されている。
なお、サイジングダイ部10及びシャワーリング部20に供給される冷却水は、それぞれ冷却水槽3に供給される冷却水とは別系統のものとしてもよい。また、特にシャワーリング部20に供給される冷却水は、水量計を設置してその水量を任意に変更できるように構成されていることは好ましい。
【0017】
先ず、押出機2にて樹脂を混練、溶融し、金型に供給してその環状の樹脂流路から溶融樹脂を押し出して樹脂チューブPに成形する。次いで、金型から押し出された高温の樹脂チューブPは、サイジングダイ部10のサイジングダイ11を通過することにより、製造しようとする樹脂チューブPの外径に規制される。この際、サイジングダイ11の入口部内周に形成された小穴18から上記したように冷却水が供給されると、該冷却水は樹脂チューブPの表面に付着した状態でサイジングダイ11内に引き込まれ、樹脂チューブPの外周面とサイジングダイ11の内周面との間に均一な水膜が形成され、この水膜の潤滑作用によって樹脂チューブPはサイジングダイ11をスムースに通過し、所定の管形状に賦形される。なお、上記小穴18から噴出させる冷却水の作用効果から、該小穴18から噴出させる冷却水の噴射圧力及び噴射水量は微小なもので十分である。
【0018】
続いて、サイジングダイ部10を通過した樹脂チューブPがシャワーリング部20に導かれると、
図5に示したように、シャワーリング21の各噴出穴25から樹脂チューブPの外周面に向けて冷却水が噴射される。噴射された冷却水は、樹脂チューブPのみならずサイジングダイ11の冷却も図れ、気泡の発生を抑えることができるとともに、早い時期において樹脂チューブPの冷却が図れ、気泡が付着し難いものとすることができる。また、噴射する冷却水によって、冷却水中を浮遊する気泡が樹脂チューブPの表面に付着することを防止し、且つ、樹脂チューブPの表面に付着した気泡を除去することができるため、効率的に樹脂チューブPの表面に付着する気泡を無くすことができる。
【0019】
すなわち、押出機2から押し出された直後の樹脂チューブPは約200℃、サイジングダイ11を通過した直後の樹脂チューブPは約180℃であり、該高温の樹脂チューブPと接触したサイジングダイ11も当然同程度の温度に加熱されている。そのため、これらの高温状態の樹脂チューブP、サイジングダイ11が冷却水に接触して冷却水が温められると、該冷却水中に溶け込んでいた空気が気泡となって発生することとなる。本発明においては、これらの高温状態の樹脂チューブPのみならず、サイジングダイ11にも冷却水を噴射してその温度を下げることができるので、気泡の発生それ自体を抑えることができる。また、噴射した冷却水は、サイジングダイ11を通過した直後の樹脂チューブPを速やかに冷却して冷却水中を浮遊する気泡が樹脂チューブPの表面に付着することを防止し、且つ、樹脂チューブPの表面に付着した気泡を除去することができるため、効率的に樹脂チューブPの表面に付着する気泡を無くすことができる。
上記したシャワーリング11に期待される作用効果から、シャワーリング11の内径Dは、通過する樹脂チューブPの外径dの1.5〜12.5倍、長さLは、通過する樹脂チューブPの外径dの0.5〜5.0倍に設定されていることが好ましく、内径Dは3〜8倍、長さLは1.0〜3.5倍に設定されていることが更に好ましい。また、噴出穴25は、シャワーリング11の5cm×5cmの壁面に10〜55個〔単位面積(1cm×1cm)に換算すると0.4〜2.2個〕形成されていることが好ましく、20〜45個〔単位面積に換算すると0.8〜1.8個〕形成されていることが更に好ましい。更に、シャワーリング11への冷却水の供給水量は100〜300cm
3/secに設定されていることが好ましく、供給水量は200〜270cm
3/secに設定されていることが更に好ましい。
【0020】
次いで、シャワーリング部20を通過した樹脂チューブPは、表面に気泡が付着していない状態で冷却水槽3の冷却水によって冷却が継続されるとともに、所定寸法に規定されて引き取られる。この結果、表面に凹凸のない樹脂チューブPを、確実に製造することができる。
【0021】
以上、本発明に係る樹脂チューブ成形機の気泡除去装置の実施形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形、変更を加えた実施形態とすることが可能であることは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、気泡が成形途中の樹脂チューブの表面に付着することによる凹凸の発生を確実に防止することができることから、不良率を削減し、効率よく樹脂チューブを製造することができ、樹脂チューブ成形機における気泡除去装置として、広く使用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 樹脂チューブ成形機
2 押出機
3 冷却水槽
4 引取機
5 切断機
10 サイジングダイ部
11 サイジングダイ
12 固定部材
13 円筒状部
14 環状部
15 フランジ部
16 キャビティ
17 水路
18 小穴
19 傾斜部
20 シャワーリング部
21 シャワーリング
22 固定部材
23 リング状本体部
24 フランジ部
25 噴出穴
26 キャビティ
27 水路