(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1金属元素は、パラジウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、バナジウム、ランタン、レニウム、ニオブ、コバルト、及び、アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の水素センサ。
前記第1金属体が延びる方向と交差する方向の前記第1中間領域の第1厚さは、0.1nm以上100nm以下である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の水素センサ。
前記第2金属体が延びる方向と交差する方向の前記第2中間領域の第2厚さは、0.1nm以上100nm以下である、請求項10〜13のいずれか1つに記載の水素センサ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る水素センサに含まれる第1センサ素子を例示する模式斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る水素センサに含まれる第1センサ素子を例示する模式図である。
図1、及び、
図2には、一部が断面として示されている。
図1、及び、
図2には、第1方向と、第2方向と、が示される。本明細書では、第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向と交差、例えば、直交する方向を第2方向とする。第2方向は、r軸方向である。r軸方向は、Z軸を中心とした放射方向(例えば半径方向)である。
【0009】
図1に示すように、第1実施形態に係る水素センサ110は、第1センサ素子100aを含む。第1センサ素子100aは、第1金属体1と、第1膜2と、第1中間領域3と、を含む。
【0010】
第1金属体1は、第1金属元素を含む。第1金属体1は、水素吸蔵能力を有する。第1金属元素は、例えば、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ランタン(La)、レニウム(Re)、ニオブ(Nb)、コバルト(Co)、及び、アルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも1つの金属を含む。第1金属体は、Pd、Mg、Ti、Zr、Mn、Ni、V、La、Re、Nb、Co、及び、Alからなる群より選択される少なくとも1つを含む合金であってもよい。第1実施形態では、第1金属体1は、Pdである。
【0011】
第1膜2は、第1非金属元素の化合物を含む。第1非金属元素は、例えば、シリコン(Si)やホウ素(B)などである。第1実施形態では、第1非金属元素は、シリコンである。第1非金属元素の化合物は、第1非金属元素と、水素と発熱反応を起こす第2非金属元素と、を含む。第2非金属元素は、例えば、酸素(O)や窒素(N)などである。第1実施形態では、第2非金属元素は、酸素である。第1実施形態では、第1膜2は、シリコン酸化物(SiOx、例えば、SiO
2)である。第1実施形態では、r軸方向に沿った第1膜2の第3厚さT3は、例えば、約50nmである。第3厚さT3は、約50nmに限られるものではない。
【0012】
第1中間領域3は、第1金属体1と、第1膜2と、の間に設けられている。第1中間領域3は、第1金属元素と、第1非金属元素と、を含む。第1実施形態では、第1金属元素は、Pdである。第1非鉄金属元素は、Siである。第1中間領域3は、パラジウム珪化物(PdySi、例えば、Pd
2Si)を含む。r軸方向に沿った第1中間領域3の第1厚さT1は、例えば、0.1nm以上100nm以下である。第1実施形態では、例えば、約10nmである。
【0013】
第1実施形態において、第1金属体1は、短軸方向と、短軸方向と交差、例えば、直交する長軸方向と、を有したワイヤ状である。Z軸方向が長軸方向である。ワイヤ状の第1金属体1は、Z軸方向に延びる。ワイヤ状の第1金属体1の短軸方向に沿った断面は、例えば、円形である。Z軸は、第1金属体1の円形断面の中心を通る。第1実施形態では、第1金属体1の第1直径D1は、例えば、約50μmである。第1直径D1は、約50μmに限られるものではない。
【0014】
第1膜2の形状は、Z軸方向に延びたチューブ状である。第1膜2は、r軸方向において第1金属体1と離れている。第1膜2は、Z軸方向に沿って、ワイヤ状の第1金属体1の周囲の一部、或いは、全部を覆う。
【0015】
第1中間領域3は、Z軸方向に沿って、ワイヤ状の第1金属体1と、チューブ状の第1膜2と、の間に設けられている。第1金属体1、第1膜2、及び、第1中間領域3は、水素検出ワイヤ50を構成する。第1実施形態では、水素検出ワイヤ50は、例えば、フレキシブルである。
【0016】
図2に示すように、第1センサ素子100aは、筒状部材60を、さらに備えている。フレキシブルな水素検出ワイヤ50は、筒状部材60に巻かれている。
図2中の枠I内に示された断面は、
図1に示された短軸方向に沿った水素検出ワイヤ50の断面に対応する。水素検出ワイヤ50は、筒状部材60に、第1固定部材61と、第2固定部材62と、によって固定されている。筒状部材60は、絶縁性である。筒状部材60は、例えば、アルミニウム酸化物(例えば、Al
2O
3)を含む。水素検出ワイヤ50の、例えば、両端の各々は、電気配線を介して、測定装置に接続されている。
図2では、電気配線、及び、測定装置は、省略されている。電気配線、及び、測定装置については、後述する。
【0017】
図3(a)、及び、
図3(b)は、
図1中の枠III内の拡大図である。
図3(a)、及び、
図3(b)は、水素検出ワイヤ50の製造方法を例示している。なお、
図3(a)、及び、
図3(b)において、それぞれ、紙面左側の図は、長軸(Z軸)方向に沿った水素検出ワイヤ50の断面を示し、紙面右側の図は、水素検出ワイヤ50の組成を示している。
図3(a)は、アニール前の水素検出ワイヤ50を示し、
図3(b)は、アニール後の水素検出ワイヤ50を示している。
【0018】
図3(a)に示すように、第1金属体1の上に、第1非金属層3aを形成する。本製造方法の例において、第1非金属層3aは、第1非金属元素を含む。第1非金属元素は、例えば、Siである。第1非金属層3aは、例えば、Si層である。Si層は、例えば、PECVD法を用いて、第1金属体1の上に、Siを、例えば、5nm程度堆積することで形成される。
【0019】
次いで、第1非金属層3aの上に、第1膜2を形成する。第1実施形態の第1膜2は、例えば、SiO
2膜である。SiO
2膜は、例えば、PECVD法を用いて、第1非金属層3aの上に、SiO
2を、例えば、50nm程度堆積することで形成される。
図3(a)に示す状態では、第1非金属層3aのSiは、境界“B”を挟んで、第1金属体1のPdと分離している。第1非金属層3aの組成“C”は、Siが実質的に100%である。第1金属体1の組成“C”は、Pdが実質的に100%である。
【0020】
次に、
図3(b)に示すように、第1金属体1、第1膜2、及び、第1非金属層3aを、アニールする。アニール温度は、例えば、500℃である。アニール時間は、例えば、100hである。
【0021】
図4は、X線光電子分光分析法の結果を示す図である。
図4において、横軸は結合エネルギー(Bindng Energy)を示し、縦軸は光電子の強度(Photoelectron Intensity)を示している。
図4は、境界“B”付近の第1金属体1の組成を、アニールの前後で比較している。
【0022】
図4に示すように、アニール前(Pd-ini)において、境界“B”付近の第1金属体1の組成は、ほぼPdである。これは、
図3(a)に示す状態を示している。
【0023】
アニール後(PD-anl)、境界“B”付近の第1金属体1の組成は、Pdが減少し、Pdと、Siと、の結合(Pd−Si)が増加している。これは、アニールによって、Pdと、Siと、が結合し、第1非金属層3aが、第1中間領域3に変化したことを示している。
【0024】
アニールによって、第1金属体1と、第1非金属層3aと、の間では、第1金属体1に含まれた第1金属元素(例えば、Pd)と、第1非金属層3aに含まれた第1非金属元素(例えば、Si)と、の相互拡散が起こる。これにより、
図3(b)に示すように、第1非金属層3aは、第1金属元素と、第1非金属元素と、が混在した第1中間領域3に変化する。本製造方法の例では、相互拡散によって、r軸方向の厚さが5nm程度であった第1非金属層3aは、r軸方向に沿った第1厚さT1が約10nm程度の第1中間領域3に変化する。本製造方法の例では、例えば、Pd
2Si等のPd珪化物が、第1金属体1と第1膜2との間に、約10nm程度の範囲にわたって広がった第1中間領域3が得られる。
【0025】
このように、水素検出ワイヤ50は、例えば、第1金属体1の上に、第1非金属層3aを形成した後、アニールすることで形成できる。アニールは、第1膜2を第1非金属層3aの上に形成する前、後のどちらに行ってもよい。アニールを、第1膜2を第1非金属層3aの上に形成した後に行うと、第1非金属層3aが含む第1非金属元素のアウトディフュージョンが、第1膜2によって抑制され、第1中間領域3を、より確実に形成できる。例えば、r軸方向に沿った第1厚さT1を、より確実に、設計値の通りの厚さにできる。
【0026】
水素検出ワイヤ50において、第1膜2は、水素と発熱反応を起こす第2非金属元素をブロックする。第2非金属元素は、例えば、酸素である。酸素が、第1金属体1に到達し難くすることで、第1金属体1において、水素と、酸素と、の発熱反応が抑制される。第1金属体1の抵抗値の変化、例えば、抵抗値の増加は、抑制される。
【0027】
第1センサ素子100aは、高温環境下、例えば、300〜350℃の環境下において使用されることがある。高温環境下においても、安定した感度を得るために、水素検出ワイヤ50では、第1膜2を成膜した後、例えば、温度500℃、時間100hのアニール処理が施される。しかし、従来は、第1金属体1と、第1膜2と、の間に、第1中間領域3が無い。このため、アニール処理において、第1膜2に、微小な剥がれを生ずることがある。第1膜2が剥がれた部分では、酸素のブロック効果が低下する。第1膜2に、微小な剥がれを生じた水素検出ワイヤ50では、感度が安定しにくい。
【0028】
水素検出ワイヤ50は、第1中間領域3を、第1金属体1と、第1膜2と、の間に備えている。第1金属体1は、第1金属元素を含む。第1実施形態では、第1金属体1はPdである。第1膜2は、第1非金属元素と、水素と発熱反応を起こす第2非金属元素と、を含む。第1実施形態では、第1非金属元素はSiである。第2非金属元素は、例えば、酸素である。第1中間領域3は、第1金属元素と、第1非金属元素と、を含む。例えば、第1中間領域3は、Pdと、Siと、を含む。第1中間領域3があることによって、アニール処理を施した後、第1中間領域3が無い場合に比較して、第1膜2は、剥がれ難くなる。
【0029】
したがって、第1センサ素子100aによれば、高温環境下において、感度を安定させることが可能となる。このような第1センサ素子100aを備えた第1実施形態に係る水素センサ110によれば、高温環境下においても、感度を安定させることができる。
【0030】
図5は、第1実施形態に係る水素センサ110を例示する模式図である。
図5に示すように、第1実施形態に係る水素センサ110は、第1センサ素子100aと、第1測定装置200aと、を含む。
【0031】
第1センサ素子100aは、水素濃度が測定される測定空間150内に設けられる。第1センサ素子100aの第1金属体1は、第1無機絶縁ケーブル151aに電気的に接続されている。第1無機絶縁ケーブル151aは、電気配線である。測定空間150は、例えば、隔壁152によって、外部から遮蔽されている。隔壁152には、電気ペネトレーション153が設けられている。第1無機絶縁ケーブル151aは、電気ペネトレーション153を介して、第1測定装置200aに電気的に接続されている。
【0032】
第1測定装置200aは、第1計測部201と、第1演算部202と、を含む。第1計測部201は、第1金属体1の第1電気抵抗値r1を計測する。第1演算部202は、第1電気抵抗値r1に基づいて、測定空間200内の水素濃度を算出する。
【0033】
第1測定装置200aは、さらに、制御部203と、表示部204と、記録部205と、操作部206と、を含む。制御部203は、第1計測部201、第1演算部202、表示部204、及び、記録部205を、例えば、操作者の指示に基づいて制御する。操作者の指示は、例えば、操作部206を介して行われる。表示部204は、算出された水素濃度の値や、計測された第1電気抵抗値r1の値等を、例えば、ディスプレイ等の表示装置を介して可視化して表示する。記録部205は、算出された水素濃度や、計測された第1電気抵抗値r1等を記録する。
【0034】
第1センサ素子100aは、例えば、
図5に示すような水素センサに用いることができる。水素濃度が測定される測定空間150は、例えば、高温環境の空間であってもよい。測定空間150は、例えば、原子炉格納容器内の空間であってもよい。
【0035】
第1実施形態によれば、高温環境下において、感度を安定させることが可能な水素センサを提供できる。
【0036】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る水素センサに含まれる第2センサ素子を例示する模式斜視図である。
図7は、第2実施形態に係る水素センサに含まれる第2センサ素子を例示する模式図である。
【0037】
図6に示すように、第2実施形態に係る水素センサ120は、第2センサ素子100bを、さらに、含む。第2センサ素子100bは、第2金属体4と、第2膜5と、第2中間領域6と、を含む。
【0038】
第2金属体4は、第2金属元素を含む。第2金属体4は、第1金属体1よりも水素を吸蔵し難い。第2金属元素は、例えば、プラチナ(Pt)、金(Au)、及び、銅(Cu)からなる群より選択される少なくとも1つの金属を含む。第2金属体4は、Pt、Au、Cuからなる群より選択される少なくとも1つを含む合金であってもよい。
【0039】
第2膜5は、第1非金属元素の化合物を含む。第1非金属元素は、例えば、Siである。第1非金属元素の化合物は、第1非金属元素と、水素と発熱反応を起こす第3非金属元素と、を含む。第3非金属元素は、例えば、酸素や窒素などである。第2実施形態では、第3非金属元素は、酸素である。第2実施形態では、第2膜5は、シリコン酸化物(SiOx、例えば、SiO
2)である。第2実施形態では、r軸方向に沿った第2膜5の第4厚さT4は、例えば、約50nmである。第4厚さT4は、約50nmに限られるものではない。
【0040】
第2中間領域6は、第2金属体4と、第2膜5と、の間に設けられている。第2中間領域6は、第2金属元素と、第1非金属元素と、を含む。第2実施形態では、第2金属元素は、Ptである。第1非鉄金属元素は、Siである。第2中間領域6は、プラチナ珪化物(PtSi)を含む。r軸方向に沿った第2中間領域6の第2厚さT2は、例えば、0.1nm以上100nm以下である。第2実施形態では、例えば、約10nmである。
【0041】
第2実施形態において、第2金属体4は、短軸方向と、短軸方向と、例えば、直交する長軸方向と、を有したワイヤ状である。Z軸方向が長軸方向である。ワイヤ状の第2金属体4の短軸方向に沿った断面は、例えば、円形である。Z軸は、第2金属体4の中心を通る。第2実施形態では、第2金属体4の第2直径D2は、例えば、約50μmである。第2直径D2は、約50μmに限られるものではない。
【0042】
第2膜5の形状は、Z軸方向に延びたチューブ状である。第2膜5は、r軸方向において第2金属体4と離れている。第2膜5は、Z軸方向に沿って、ワイヤ状の第2金属体4の周囲の一部、あるいは、全部を覆う。
【0043】
第2中間領域6は、Z軸方向に沿って、ワイヤ状の第2金属体4と、チューブ状の第2膜5と、の間に設けられている。第2金属体4、第2膜5、及び、第2中間領域6は、温度検出ワイヤ51を構成する。第2実施形態では、温度検出ワイヤ51は、例えば、フレキシブルである。
【0044】
図7に示すように、第2センサ素子100bは、
図1に示した水素検出ワイヤ50と、同じく
図1に示した筒状部材60と、を、さらに備えている。bフレキシブルな水素検出ワイヤ50と、フレキシブルな温度検出ワイヤ51と、は、互いに平行に、筒状部材60に巻かれている。
図7に示す巻き方は、例えば、“共巻き”と呼ばれる。
図7中の枠VI内に示された断面は、
図1に示された短軸方向に沿った水素検出ワイヤ50と、
図6に示された短軸方向に沿った温度検出ワイヤ51の断面と、に対応する。水素検出ワイヤ50、及び、温度検出ワイヤ51は、筒状部材60に、第1固定部材61と、第2固定部材62と、によって固定されている。水素検出ワイヤ50の、例えば、両端の各々、及び、温度検出ワイヤ51の、例えば、両端の各々は、電気配線を介して、測定装置に接続されている。
図7では、電気配線、及び、測定装置は、省略されている。電気配線、及び、測定装置については、後述する。
【0045】
温度検出ワイヤ51は、水素検出ワイヤ50と同様に、例えば、
・第2非金属層の形成
・第2膜5の形成
・アニール処理
の工程を経て、製造することができる。なお、第2非金属層は、特に図示しないが、例えば、
図3(a)に示した第1非金属層3aと同じSi層でよい。
【0046】
より具体的には、PECVD法を用いて、第2金属体4の上に、第2非金属層を形成する。第2非金属層は、第1非金属元素、例えば、Si、を含む。第2非金属層は、例えば、厚さ5nm程度のSi層である。
【0047】
次に、PECVD法を用いて、第2非金属層の上に、第2膜5を形成する。第2膜5は、第1非金属元素の化合物を含む。第2膜5は、例えば、厚さ50nm程度のSiO
2膜である。
【0048】
第2金属体4、第2膜5、及び、第2非金属層を、アニールする。アニール温度は、例えば、500℃である。アニール時間は、例えば、100hである。
【0049】
図8は、X線光電子分光分析法の結果を示す図である。
図8は、
図4と同様の図である。
図8に示すように、アニール前(Pt-ini)において、第2金属体4の組成は、ほぼPtである。
【0050】
アニール後(pt-anl)、第2金属体4の組成は、Ptが減少し、Ptと、Siと、の結合(Pt−Si)が増加している。このように、アニールによって、Ptと、Siと、が結合する。第2非金属層は、第2中間領域6に変化する。
【0051】
温度検出ワイヤ51においても、アニールによって、第2金属体4と、第2非金属層と、の間で、第2金属元素(例えば、Pt)と、第1非金属元素(例えば、Si)と、の相互拡散が起こる。これにより、厚さが約5nm程度であった第2非金属層は、厚さが約10nm程度の第2中間領域6に変化する。例えば、PtSi等のPt珪化物が、第2金属体4と第2膜5との間に、約10nm程度の範囲にわたって広がった第2中間領域6が得られる。
【0052】
温度検出ワイヤ51は、例えば、第2金属体4の上に、第2非金属層を形成した後、アニールすることで形成できる。アニールは、第2膜5を第2非金属層の上に形成する前、後のどちらに行ってもよい。ただし、アニールは、第2膜5を形成した後に行うことが好ましい。第2膜5によって、第2非金属層が含む第1非金属元素のアウトディフュージョンが抑制され、第2中間領域6を、より確実に形成できる。例えば、r軸方向に沿った第2厚さT2を、より確実に、設計値の通りの厚さにできる。
【0053】
温度検出ワイヤ51が備えた第2金属体4は、第1金属体1に比較して、水素を吸蔵し難い。第2金属体4は、水素の吸蔵に伴った電気抵抗値の変化が少ない。温度検出ワイヤ51は、水素検出ワイヤ50とペアで用いることにより、水素センサの温度補償用センサ素子として、有効である。水素検出ワイヤ50と、温度検出ワイヤ51と、を備えた第2センサ素子100bは、高温環境下、例えば、300℃から350℃の環境下、において、使用される。
【0054】
温度検出ワイヤ51は、第2中間領域6を、第2金属体4と、第2膜5と、の間に備えている。例えば、高温環境下でも第2センサ素子100bに、安定した感度を得るために、温度検出ワイヤ51に対して、アニール処理を施した場合であっても、第2中間領域6が無い場合に比較して、第2膜5は、剥がれ難くなる。
【0055】
したがって、第2センサ素子100bによれば、高温環境下において、感度を安定させることが可能となる。このような第2センサ素子100bを備えた第2実施形態に係る水素センサ120によれば、高温環境下においても、感度を安定させることができる。
【0056】
図9は、第2実施形態に係る水素センサ120を例示する模式図である。
図9に示すように、第2実施形態に係る水素センサ120は、第2センサ素子100bと、第2測定装置200bと、を含む。
【0057】
第2センサ素子100bは、水素濃度が測定される測定空間150内に設けられる。第2センサ素子100bの第1金属体1は、第1無機絶縁ケーブル151aに電気的に接続されている。第2金属体4は、第2無機絶縁ケーブル151bに電気的に接続されている。第1無機絶縁ケーブル151a、及び、第2無機絶縁ケーブル151bは、それぞれ、電気配線である。第1無機絶縁ケーブル151a、及び、第2無機絶縁ケーブル151bは、それぞれ、電気ペネトレーション153を介して、第2測定装置200bに電気的に接続されている。
【0058】
第2測定装置200bは、第1計測部201と、第2計測部207と、第2演算部208と、を含む。第1計測部201は、第1金属体1の第1電気抵抗値r1を計測する。第2計測部207は、第2金属体1の第2電気抵抗値r2を計測する。第2演算部208は、第1電気抵抗値r1と、第2電気抵抗値r2と、に基づいて、測定空間200内の水素濃度を算出する。例えば、第2演算部208は、第2電気抵抗値r2に基づいて、測定空間200内の温度を算出し、第1電気抵抗値r1と、算出した温度と、に基づいて、測定空間200内の水素濃度を算出する。第2電気抵抗値r2に基づいて、算出された測定空間200内の温度は、例えば、水素センサの温度補償用のデータとして使用される。これにより、第2測定装置200aは、例えば、第1測定装置200aに比較して、第1金属体1の温度変化に伴う第1電気抵抗値r1の変化が補償され、水素濃度を、より厳密に測定することが可能となる。
【0059】
第2測定装置200bは、第1測定装置200aと同様に、制御部203と、表示部204と、記録部205と、操作部206と、を含む。第2測定装置200bにおいては、表示部204は、算出された水素濃度の値、計測された第1電気抵抗値r1の値、及び、計測された第2電気抵抗値r2の値等を、例えば、ディスプレイ等の表示装置を介して可視化して表示する。記録部205は、算出された水素濃度、計測された第1電気抵抗値r1、計測された第2電気抵抗値r2等を記録する。
【0060】
第2センサ素子100bは、例えば、
図9に示すような水素センサに用いることができる。
【0061】
第2実施形態によれば、高温環境下において、感度を安定させることが可能な水素センサを提供できる。
【0062】
以上、実施形態によれば、高温環境下において、感度を安定させることが可能な水素センサを提供できる。
【0063】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、実施形態の水素センサが含む第1金属体1と、第1膜2と、第1中間領域3等の各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。特に、第1金属体1と、第1膜2と、第1中間領域3が含む元素については、適宜変更することが可能である。
【0064】
第1実施形態、及び、第2実施形態において、第1金属体1は、ワイヤ状としたが、第1金属体1の形状は、ワイヤ状に限られるものではない。同じく、第2実施形態において、第2金属体4は、ワイヤ状としたが、第2金属体4の形状も、ワイヤ状に限られるものではない。第1金属体1の形状は、ワイヤ状以外の、例えば、棒状や、帯状等であってもよい。第2金属体4の形状も、第1金属体1と同様に、棒状や、帯状等であってもよい。
【0065】
第1センサ素子100aでは、第1金属体1を含む水素検出ワイヤ50を、筒状部材60に巻きつけた。第2センサ素子100bでは、第1金属体1を含む水素検出ワイヤ50と、第2金属体4を含む温度検出ワイヤ51と、を、筒状部材60に巻きつけた。第1センサ素子100a、及び、第2センサ素子100bにおいて、筒状部材60は、必ずしも必要でない。
【0066】
第1センサ素子100aを、複数設け、互いに並列に接続することも可能である。第2センサ素子100bにおいても、複数設け、互いに並列に接続することも可能である。第2センサ素子100bにおいて、水素検出ワイヤ50と、温度検出ワイヤ51と、は“1対1”である必要もない。例えば、複数の水素検出ワイヤ50に対して、1つの温度検出ワイヤ51を設けるようにしてもよい。
【0067】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施形態として上述した水素センサを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての水素センサも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例、及び、修正例に想到し得るものであり、それら変更例、及び、修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0068】
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。