(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799480
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】油圧システム
(51)【国際特許分類】
F15B 20/00 20060101AFI20201207BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20201207BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20201207BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20201207BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
F15B20/00 G
F15B11/00 H
F15B11/08 A
F15B11/02 C
E02F9/22 R
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-43489(P2017-43489)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-146074(P2018-146074A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】村岡 英泰
(72)【発明者】
【氏名】畑 直希
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−061604(JP,A)
【文献】
特開2004−360898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 20/00
E02F 9/22
F15B 11/00
F15B 11/02
F15B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部に対する操作量に応じた操作信号を出力する操作装置と、
前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど油圧アクチュエータへ作動油を供給する通路の開口面積を増大させる制御弁と、
供給ラインにより前記制御弁と接続された可変容量型のポンプと、
前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど高い二次圧を出力する第1電磁比例弁と、
前記第1電磁比例弁から出力される二次圧が高くなるほど前記ポンプの傾転角を増大させるレギュレータと、
前記供給ラインから分岐するアンロードラインに設けられた、パイロットポートを有するアンロード弁であって、前記パイロットポートに導かれるパイロット圧が高くなるほど全開状態から全閉状態に向かって開口面積が減少するアンロード弁と、
前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど高い二次圧を出力する第2電磁比例弁であって、同一の操作信号に対して当該第2電磁比例弁の二次圧が前記第1電磁比例弁の二次圧よりも高く設定された第2電磁比例弁と、
前記第1電磁比例弁から出力される二次圧と前記第2電磁比例弁から出力される二次圧のうち高い方を選択して前記アンロード弁のパイロットポートへ導く高圧選択弁と、
を備える、油圧システム。
【請求項2】
前記アンロード弁は、パイロット圧がゼロから第1設定値まで上昇するときに開口面積が最大値から中間値まで第1の傾きで減少し、かつ、パイロット圧が前記第1設定値から第2設定値まで上昇するときに開口面積が前記中間値からゼロまで前記第1の傾きよりも緩やかな第2の傾きで減少するように構成されている、請求項1に記載の油圧システム。
【請求項3】
前記アンロード弁は、パイロット圧がゼロから第1設定値まで上昇するときに開口面積が最大値から中間値まで第1の傾きで減少し、かつ、パイロット圧が前記第1設定値から第2設定値まで上昇するときに、開口面積が前記中間値からゼロまで前記第1の傾きよりも緩やかな第2の傾きの直線に対して上向きに凸となる曲線に沿って減少するように構成されている、請求項1に記載の油圧システム。
【請求項4】
操作部に対する操作量に応じた操作信号を出力する操作装置と、
前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど油圧アクチュエータへ作動油を供給する通路の開口面積を増大させる制御弁と、
供給ラインにより前記制御弁と接続された可変容量型のポンプと、
前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど高い二次圧を出力する第1電磁比例弁と、
前記第1電磁比例弁から出力される二次圧が高くなるほど前記ポンプの傾転角を増大させるレギュレータと、
前記供給ラインから分岐するアンロードラインに設けられた、パイロットポートを有するアンロード弁と、
前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど高い二次圧を前記アンロード弁のパイロットポートへ出力する第2電磁比例弁と、を備え、
前記アンロード弁は、前記第2電磁比例弁から出力される二次圧が第1設定値と前記第1設定値よりも大きな第2設定値との間で変化するときは開口面積が全開状態と全閉状態との間で連続的に変化し、前記二次圧が前記第1設定値よりも小さな第3設定値以下のときおよび前記第2設定値よりも大きな第4設定値以上のときは開口面積が全開状態と全閉状態との間の中間値となるように構成されている、油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ポジコン方式の油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設機械や産業機械などでは、電気ポジコン方式の油圧システムが採用されている。例えば、特許文献1には、
図6に示すような建設機械の油圧システム100が開示されている。
【0003】
この油圧システム100では、可変容量型のポンプ110から制御弁120を介して各油圧アクチュエータ130へ作動油が供給される。制御弁120は、油圧アクチュエータ130へ作動油を供給する通路の開口面積を、対応する操作装置140の操作部(
図6では操作レバー)に対する操作量が大きくなるほど増大させる。
【0004】
ポンプ110の傾転角は、レギュレータ111によって調整される。レギュレータ111は、第1電磁比例弁112と接続されている。第1電磁比例弁112は、操作装置140の操作部に対する操作量が大きくなるほど高い二次圧を出力する。これにより、操作装置140の操作部に対する操作量が大きくなるほどポンプ110の吐出流量が増大する。
【0005】
油圧システム100には、スタンバイ時(全ての操作装置140が操作されていない状態)にポンプ110から吐出される作動油をタンクへ逃すためのアンロード弁150が設けられている。アンロード弁150は、パイロットポートを有し、パイロットポートに導かれるパイロット圧が高くなるほど全開状態から全閉状態に向かって開口面積が減少するように構成されている。アンロード弁150のパイロットポートは、第2電磁比例弁160と接続されている。第2電磁比例弁160は、操作装置140の操作部に対する操作量が大きくなるほど高い二次圧を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−61604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図6に示す油圧システム100では、第2電磁比例弁160が故障した場合に、第2電磁比例弁160の二次圧がゼロになるか一次圧と等しくなる。第2電磁比例弁160の二次圧がゼロとなった場合には、アンロード弁150が全開状態となる。従って、操作装置140の操作部が操作されてもポンプ110の吐出圧が上昇せずに、油圧アクチュエータを作動させることができない。一方、第2電磁比例弁160の二次圧が一次圧と等しくなった場合は、アンロード弁150が全閉状態となる。従って、スタンバイ時にポンプ110の吐出圧が過大となる(リリーフ圧と等しくなる)。
【0008】
そこで、本発明は、アンロード弁用の電磁比例弁が故障してその電磁比例弁の二次圧がゼロとなった場合でも油圧アクチュエータを作動させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、一つの側面から、操作部に対する操作量に応じた操作信号を出力する操作装置と、前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど油圧アクチュエータへ作動油を供給する通路の開口面積を増大させる制御弁と、供給ラインにより前記制御弁と接続された可変容量型のポンプと、前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど高い二次圧を出力する第1電磁比例弁と、前記第1電磁比例弁から出力される二次圧が高くなるほど前記ポンプの傾転角を増大させるレギュレータと、前記供給ラインから分岐するアンロードラインに設けられた、パイロットポートを有するアンロード弁であって、前記パイロットポートに導かれるパイロット圧が高くなるほど全開状態から全閉状態に向かって開口面積が減少するアンロード弁と、前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど高い二次圧を出力する第2電磁比例弁であって、同一の操作信号に対して当該第2電磁比例弁の二次圧が前記第1比例弁の二次圧よりも高く設定された第2電磁比例弁と、前記第1電磁比例弁から出力される二次圧と前記第2電磁比例弁から出力される二次圧のうち高い方を選択して前記アンロード弁のパイロットポートへ導く高圧選択弁と、を備える、油圧システムを提供する。
【0010】
上記の構成によれば、第2電磁比例弁が正常な場合は、アンロード弁のパイロットポートには第2電磁比例弁の二次圧が導かれるために、第2電磁比例弁によってアンロード弁の開口面積を制御することができる。一方、第2電磁比例弁が故障して第2電磁比例弁の二次圧がゼロとなった場合は、アンロード弁のパイロットポートには第1電磁比例弁の二次圧が導かれる。従って、アンロード弁の開口面積は操作信号が大きくなるほど減少する。その結果、操作装置の操作部に対する操作量に応じてポンプの吐出圧が上昇し、油圧アクチュエータを作動させることができる。
【0011】
前記アンロード弁は、パイロット圧がゼロから第1設定値まで上昇するときに開口面積が最大値から中間値まで第1の傾きで減少し、かつ、パイロット圧が前記第1設定値から第2設定値まで上昇するときに開口面積が前記中間値からゼロまで前記第1の傾きよりも緩やかな第2の傾きで減少するように構成されていてもよい。あるいは、前記アンロード弁は、パイロット圧がゼロから第1設定値まで上昇するときに開口面積が最大値から中間値まで第1の傾きで減少し、かつ、パイロット圧が前記第1設定値から第2設定値まで上昇するときに、開口面積が前記中間値からゼロまで前記第1の傾きよりも緩やかな第2の傾きの直線に対して上向きに凸となる曲線に沿って減少するように構成されていてもよい。この構成によれば、アンロード弁の制御上必要とされる範囲における制御ゲインを犠牲にすることなく、かつ、アンロード弁のスプールのストロークをあまり長くすることなく、スタンバイ時の開口面積を確保できる。その結果、油圧システムのスタンバイ時に、ポンプを駆動するエンジンの動力を低減することができる。
【0012】
また、本発明は、別の側面から、操作部に対する操作量に応じた操作信号を出力する操作装置と、前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど油圧アクチュエータへ作動油を供給する通路の開口面積を増大させる制御弁と、供給ラインにより前記制御弁と接続された可変容量型のポンプと、前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど高い二次圧を出力する第1電磁比例弁と、前記第1電磁比例弁から出力される二次圧が高くなるほど前記ポンプの傾転角を増大させるレギュレータと、前記供給ラインから分岐するアンロードラインに設けられた、パイロットポートを有するアンロード弁と、前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど高い二次圧を前記アンロード弁のパイロットポートへ出力する第2電磁比例弁と、を備え、前記アンロード弁は、前記第2電磁比例弁から出力される二次圧が第1設定値と前記第1設定値よりも大きな第2設定値との間で変化するときは開口面積が全開状態と全閉状態との間で連続的に変化し、前記二次圧が前記第1設定値よりも小さな第3設定値以下のときおよび前記第2設定値よりも大きな第4設定値以上のときは開口面積が全開状態と全閉状態との間の中間値となるように構成されている、油圧システムを提供する。
【0013】
上記の構成によれば、第2電磁比例弁が故障して第2電磁比例弁の二次圧がゼロとなった場合は、アンロード弁の開口面積が中間値となって、アンロード弁が絞りとして機能する。その結果、操作装置が操作されないときでもポンプの吐出圧がある程度高くなるとともに、操作装置が操作されたときには操作量に応じてポンプの吐出圧が上昇し、油圧アクチュエータを作動させることができる。
【0014】
さらに、上記の構成では、第2電磁比例弁が故障して第2電磁比例弁の二次圧が一次圧と等しくなった場合も、アンロード弁の開口面積が中間値となる。その結果、スタンバイ時にはポンプの吐出圧がリリーフ圧まで上昇せずに、ポンプの吐出圧が過大となることを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アンロード弁用の電磁比例弁が故障してその電磁比例弁の二次圧がゼロとなった場合でも油圧アクチュエータを作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る油圧システムの概略構成図である。
【
図2】操作装置の操作部に対する操作量と第1電磁比例弁および第2電磁比例弁の二次圧との関係を示すグラフである。
【
図3】(a)は第1実施形態におけるアンロード弁のパイロット圧と開口面積との関係を示すグラフ、(b)は変形例におけるアンロード弁のパイロット圧と開口面積との関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る油圧システムの概略構成図である。
【
図5】アンロード弁のパイロット圧と開口面積との関係を示すグラフである。
【
図6】従来の建設機械の油圧システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る油圧システム1Aを示す。油圧システム1Aは、例えば、油圧ショベルや油圧クレーンのような建設機械、土木機械、農業機械または産業機械に搭載される。
【0018】
具体的に、油圧システム1Aは、油圧アクチュエータ24と、油圧アクチュエータ24に制御弁3を介して作動油を供給する主ポンプ21を含む。図例では、油圧アクチュエータ24と制御弁3のセットが1つであるが、油圧アクチュエータ24と制御弁3のセットは複数設けられてもよい。
【0019】
主ポンプ21は、傾転角が変更可能な、可変容量型のポンプである。主ポンプ21は、斜板ポンプであってもよいし、斜軸ポンプであってもよい。主ポンプ21の傾転角は、レギュレータ22により調整される。
【0020】
主ポンプ21は、供給ライン11により制御弁3と接続されている。主ポンプ21の吐出圧は、リリーフ弁12によってリリーフ圧以下に保たれる。
【0021】
本実施形態では、油圧アクチュエータ24が複動シリンダであり、制御弁3が一対の給排ライン31により油圧アクチュエータ24と接続されている。ただし、油圧アクチュエータ24が単動シリンダであり、制御弁3が1本の給排ライン31により油圧アクチュエータ24と接続されてもよい。あるいは、油圧アクチュエータ24は、油圧モータであってもよい。
【0022】
制御弁3は、操作装置4が操作されることによって、中立位置から第1位置(油圧アクチュエータ24を一方向に作動させる位置)または第2位置(油圧アクチュエータ24を逆方向に作動させる位置)に切り換えられる。本実施形態では、制御弁3が油圧パイロット式であり、一対のパイロットポートを有する。ただし、制御弁3は、電磁パイロット式であってもよい。
【0023】
操作装置4は、操作部41を有し、操作部41に対する操作量に応じた操作信号を出力する。つまり、操作装置4から出力される操作信号は、操作量が大きくなるほど大きくなる。操作部41は、例えば操作レバーであるが、フットペダルなどであってもよい。
【0024】
本実施形態では、操作装置4が、操作信号としてパイロット圧を出力するパイロット操作弁である。このため、操作装置4が一対のパイロットライン42により制御弁3のパイロットポートと接続されている。そして、操作装置4から出力されるパイロット圧(操作信号)が大きくなるほど、制御弁3が油圧アクチュエータ24へ作動油を供給する通路の開口面積を増大させる。ただし、操作装置4は、操作信号として電気信号を出力する電気ジョイスティックであってもよい。この場合、制御弁3の各パイロットポートは、電磁比例弁の二次圧ポートと接続される。
【0025】
上述したレギュレータ22は、二次圧ライン62により第1電磁比例弁6の二次圧ポートと接続されている。第1電磁比例弁6の一次圧ポートは、一次圧ライン61により副ポンプ23と接続されている。副ポンプ23の吐出圧は、リリーフ弁15によって設定圧に維持される。
【0026】
第1電磁比例弁6は、指令電流が大きくなるほど高い二次圧を出力する正比例型である。レギュレータ22は、第1電磁比例弁6から出力される二次圧が高くなるほど主ポンプ21の傾転角を増大させる。
【0027】
第1電磁比例弁6は、制御装置9により制御される。例えば、制御装置9は、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有し、ROMに格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0028】
制御装置9は、上述した一対のパイロットライン42のそれぞれに設けられた圧力センサ91と電気的に接続されている。ただし、
図1では、図面の簡略化のために一部の信号線のみを描いている。
【0029】
圧力センサ91は、操作装置4から出力されるパイロット圧を検出する。そして、制御装置9は、操作装置4から出力されるパイロット圧が大きくなるほど第1電磁比例弁6へ送給する指令電流を大きくする。つまり、第1電磁比例弁6は、操作装置4から出力されるパイロット圧が大きくなるほど高い二次圧を出力する。これにより、操作装置4の操作部41に対する操作量が大きくなるほど主ポンプ21の吐出流量が増大する。
【0030】
上述した供給ライン11からはアンロードライン13が分岐している。アンロードライン13は、タンクへつながれている。アンロードライン13には、アンロード弁5Aが設けられている。
【0031】
アンロード弁5Aは、パイロット式であり、パイロットポート5cを有する。そして、アンロード弁5Aは、パイロットポート5cに導かれるパイロット圧が高くなるほど全開状態から全閉状態に向かって、ポンプポート5aとタンクポート5bの間の開口面積が減少するように構成されている。つまり、アンロード弁5Aが中立状態のときは開口面積が最大となる。
【0032】
本実施形態では、アンロード弁5Aが、
図3(a)に示すように、パイロット圧がゼロから第1設定値αまで上昇するときに開口面積が最大値から中間値まで第1の傾きS1で減少し、かつ、パイロット圧が第1設定値αから第2設定値βまで上昇するときに開口面積が前記中間値からゼロまで第1の傾きS1よりも緩やかな第2の傾きS2で減少するように構成されている。換言すれば、第1の傾きS1の絶対値は、第2の傾きS2の絶対値よりも大きい。例えば、第1設定値αは、第2設定値βの20%〜80%である。ただし、アンロード弁5Aの開口面積は、パイロット圧が第1設定値αと第2設定値βの間で必ずしも直線的に減少する必要はなく、
図3(b)に示すように、第2の傾きS2の直線に対して上向きに凸となる曲線に沿って減少してもよい。
【0033】
図1に戻って、アンロード弁5Aのパイロットポート5cは、高圧選択弁8を介して第2電磁比例弁7の二次圧ポートと接続されている。第2電磁比例弁7の一次圧ポートは、一次圧ライン71により副ポンプ23と接続されている。
【0034】
より詳しくは、高圧選択弁8は、2つの入力ポートと1つの出力ポートを有し、アンロード弁5Aのパイロットポート5cが出力ライン83により高圧選択弁8の出力ポートと接続され、高圧選択弁8の1つの入力ポートが第1入力ライン81により第2電磁比例弁7の二次圧ポートと接続されている。さらに、高圧選択弁8のもう1つの入力ポートは、第2入力ライン82により、第1電磁比例弁6の二次圧ポートから延びる二次圧ライン62と接続されている。つまり、高圧選択弁8は、第1電磁比例弁6から出力される二次圧と第2電磁比例弁7から出力される二次圧のうち高い方を選択してアンロード弁5Aのパイロットポート5cへ導く。
【0035】
第2電磁比例弁7は、指令電流が大きくなるほど高い二次圧を出力する正比例型である。第2電磁比例弁7は、制御装置9により制御される。
【0036】
第1電磁比例弁6と同様に、制御装置9は、操作装置4から出力されるパイロット圧が大きくなるほど第2電磁比例弁7へ送給する指令電流を大きくする。つまり、第2電磁比例弁7は、操作装置4から出力されるパイロット圧が大きくなるほど高い二次圧を出力する。ただし、
図2に示すように、操作装置4から出力される同一のパイロット圧(操作信号)に対し、第2電磁比例弁7の二次圧は第1電磁比例弁6の二次圧よりも高く設定されている。
【0037】
このため、第2電磁比例弁7が正常な場合は、アンロード弁5のパイロットポート5cには第2電磁比例弁7の二次圧が導かれるために、第2電磁比例弁7によってアンロード弁5Aの開口面積を制御することができる。一方、第2電磁比例弁7が故障して第2電磁比例弁7の二次圧がゼロとなった場合は、アンロード弁5Aのパイロットポート5cには第1電磁比例弁6の二次圧が導かれる。従って、アンロード弁5Aの開口面積は操作信号が大きくなるほど減少する。その結果、操作装置4の操作部41に対する操作量に応じて主ポンプ21の吐出圧が上昇し、油圧アクチュエータ24を作動させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、
図3(a)に示すようにアンロード弁5Aの開口面積が最初は急激に、途中からはゆるやかに減少する。従って、アンロード弁5Aの制御上必要とされる範囲(パイロット圧が第1設定値αと第2設定値βの間の範囲)における制御ゲインを犠牲にすることなく、かつ、アンロード弁5Aのスプールのストロークをあまり長くすることなく、スタンバイ時の開口面積を確保できる。その結果、油圧システム1Aのスタンバイ時に、ポンプ21を駆動するエンジン(図示せず)の動力を低減することができる。なお、この効果は、
図3(b)に示す場合でも得ることができる。ただし、ポンプ21は、電動モータによって駆動されてもよい。
【0039】
(第2実施形態)
図4に、本発明の第2実施形態に係る油圧システム1Bを示す。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0040】
第1実施形態では2位置弁であるアンロード弁5Aが採用されていたが、本実施形態では4位置弁であるアンロード弁5Bが採用されている。また、本実施形態では、アンロード弁5Bのパイロットポート5cが二次圧ライン72により第2電磁比例弁7の二次圧ポートと接続されており、第2電磁比例弁7がアンロード弁5Bのパイロットポート5cへ二次圧を出力する。
【0041】
なお、本実施形態では、操作装置4から出力される同一のパイロット圧(操作信号)に対し、第2電磁比例弁7の二次圧は第1電磁比例弁6の二次圧と等しくてもよいし、それよりも低くてもよいし、第1実施形態と同様に高くてもよい。
【0042】
アンロード弁5Bは、
図5に示すように、第2電磁比例弁7から出力される二次圧(パイロット圧)が第1設定値P1と第1設定値P1よりも大きな第2設定値P2との間で変化するときは、ポンプポート5aとタンクポート5bの間の開口面積が全開状態と全閉状態との間で連続的に変化するように構成されている。本実施形態では、第2電磁比例弁7の二次圧が第1設定値P1から第2設定値P2へ上昇するにつれてアンロード弁5Bの開口面積が最大値からゼロまで減少する。
【0043】
さらに、アンロード弁5Bは、第2電磁比例弁7の二次圧が第1設定値P1よりも小さな第3設定値P3以下のときおよび第2設定値P2よりも大きな第4設定値P4以上のときは、開口面積が全開状態と全閉状態との間の中間値となるように構成されている。例えば、中間値は、開口面積の最大値の0.5〜50%である。なお、第2電磁比例弁7の二次圧が第3設定値P3以下のときの開口面積の中間値は、第2電磁比例弁7の二次圧が第4設定値P4以上のときの開口面積の中間値と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
アンロード弁5Bのパイロットポート5cに導かれるパイロット圧がゼロから第3設定値P3まで上昇すると、アンロード弁5Bの開口面積が中間値に維持されたままでアンロード弁5Bのスプールが少しだけ移動する。パイロット圧が第3設定値P3から第1設定値P1まで上昇すると、アンロード弁5Bの開口面積が中間値から最大値まで増大するようにアンロード弁5Bのスプールが移動する。パイロット圧が第1設定値P1から第2設定値P2まで上昇すると、アンロード弁5Bの開口面積が最大値からゼロまで減少するようにアンロード弁5Bのスプールが移動する。パイロット圧が第2設定値P2から第4設定値P4まで上昇すると、アンロード弁5Bの開口面積がゼロに維持されたままでアンロード弁5Bのスプールが少しだけ移動する。パイロット圧が第4設定値P4以上となると、アンロード弁5Bのスプールの移動によってタンクポート5bがポンプポート5aと再度連通し、アンロード弁5Bの開口面積が中間値に維持される。
【0045】
本実施形態の油圧システム1Bでは、第2電磁比例弁7が故障して第2電磁比例弁7の二次圧がゼロとなった場合は、アンロード弁5Bの開口面積が中間値となって、アンロード弁5Bが絞りとして機能する。その結果、操作装置4が操作されないときでも主ポンプ21の吐出圧がある程度高くなるとともに、操作装置4が操作されたときには操作量に応じて主ポンプ21の吐出圧が上昇し、油圧アクチュエータ24を作動させることができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、第2電磁比例弁7が故障して第2電磁比例弁7の二次圧が一次圧と等しくなった場合も、アンロード弁5Bの開口面積が中間値となる。その結果、スタンバイ時には主ポンプ21の吐出圧がリリーフ圧まで上昇せずに、主ポンプ21の吐出圧が過大となることを防止することができる。そして、操作装置4が操作されたときには操作量に応じて主ポンプ21の吐出圧が上昇し、油圧アクチュエータ24を作動させることができる。
【0047】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1A,1B 油圧システム
11 供給ライン
21 主ポンプ
22 レギュレータ
24 油圧アクチュエータ
3 制御弁
4 操作装置
41 操作部
5A,5B アンロード弁
5c パイロットポート
6 第1電磁比例弁
7 第2電磁比例弁
8 高圧選択弁