特許第6799491号(P6799491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799491
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】酸素濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/10 20060101AFI20201207BHJP
   A61M 16/20 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   A61M16/10 B
   A61M16/20 F
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-67892(P2017-67892)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-166920(P2018-166920A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄大
(72)【発明者】
【氏名】内山 暢
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−163605(JP,A)
【文献】 特開2015−017007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/10
A61M 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒と、該吸着筒に加圧空気を供給する加圧手段を備え、空気中の窒素を吸着し酸素濃縮ガスを生成する吸着型酸素濃縮装置において、生成した酸素濃縮ガスを貯留する酸素貯蔵手段、調圧弁、調圧後の酸素濃縮ガスを使用者に供給する第1酸素流量制御弁、該酸素濃縮ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段、酸素流量を測定する第1流量測定手段を備えた酸素供給ラインと、調圧後の酸素濃縮ガスを系外に放出する第2酸素流量制御弁を備えた酸素排気ラインを備え、酸素供給流量設定値および該流量測定手段の測定値に基づいて第1酸素流量制御弁の開度を制御すると共に、予め設定された酸素濃度となるように、第2酸素流量制御弁の開度を制御する制御手段を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
該第1酸素流量制御弁および該第2酸素流量制御弁が比例制御弁である、請求項1に記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
該制御手段が、該酸素濃度測定手段の測定値に基づいて該第2酸素流量制御弁の開度を制御する手段である請求項1または2に記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒と、該吸着筒に加圧空気を供給する加圧手段を備え、空気中の窒素を吸着し酸素濃縮ガスを生成する吸着型酸素濃縮装置において、生成した酸素濃縮ガスを貯留する酸素貯蔵手段、調圧弁、調圧後の酸素濃縮ガスを使用者に供給する第1酸素流量制御弁、該酸素濃縮ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段、酸素流量を測定する第1流量測定手段を備えた酸素供給ラインと、調圧後の酸素濃縮ガスを系外に放出する第2酸素流量制御弁と系外に放出する酸素流量を測定する第2流量測定手段を備えた酸素排気ラインを備え、酸素供給流量設定値および該第1流量測定手段の測定値に基づいて第1酸素流量制御弁の開度を制御すると共に、予め設定された酸素濃度となるように、該第2流量測定手段の測定値に基づいて、第2酸素流量制御弁の開度を制御する制御手段を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項5】
該第1酸素流量制御弁および該第2酸素流量制御弁が比例制御弁である、請求項4に記載の酸素濃縮装置。
【請求項6】
該制御手段が、酸素濃度測定手段の測定値が予め定めた値を下回った場合、第2酸素流量制御弁の開度を小さくする制御を行う手段である、請求項1から5の何れかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項7】
該制御手段が、該第2酸素流量制御弁の開度が予め定めた値を下回る場合、該加圧手段から該吸着筒への供給量を上昇させる制御をおこなう請求項6に記載の酸素濃縮装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着剤を用いた吸着型酸素濃縮装置に関するものであり、特に慢性呼吸器疾患患者などに対して行われる酸素吸入療法に使用する圧力変動吸着型酸素濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、喘息、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎等の呼吸器系器官の疾患に苦しむ患者が増加する傾向にあるが、その効果的な治療法のひとつに酸素吸入療法がある。かかる酸素吸入療法とは、酸素ガスあるいは酸素濃縮ガスを患者に吸入させるものである。その供給源として、酸素濃縮装置、液体酸素、酸素ガスボンベ等が知られているが、使用時の便利さや保守管理の容易さから、在宅酸素療法には酸素濃縮装置が主に用いられている。
【0003】
酸素濃縮装置は、空気中に存在する約21%の酸素を分離濃縮して患者供給ガスとして患者に供給する装置であり、高濃度の酸素が得られる点から、現在では酸素より窒素を優先的に吸着しうる吸着剤を用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置が主流になっている。圧力変動吸着型酸素濃縮装置では一般的に酸素濃度を約90%前後に保ち、生成した酸素の流量を調整することで酸素投与量を調節している。
【0004】
必要な酸素の流量は、少ない場合では流量が0.25L/分程度の場合もあり、多い場合には7L/分程度の場合もある。しかしながら、新生児や乳幼児あるいは軽症患者に対しては、さらに少量の酸素を、患者の様態に合わせて投与したいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―163605号公報
【特許文献2】特開2004―229862号公報
【特許文献3】特開平1−228107号公報
【特許文献4】特開平8−268701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでの圧力変動吸着型酸素濃縮装置では、約90%の酸素濃度を有する患者供給ガスの流量変更だけで実酸素供給量を変えているため、流量が少ない場合には気体が供給されていることを患者自身も感じ取れないこともあり、鼻腔に投与できているかどうかの判断も難しい。そのためには、患者供給ガスの流量を確保した上で、労作時は酸素濃度が高い患者供給ガスを吸入し、安静時には労作時に対して比較的酸素濃度の低い患者供給ガスを吸入することが望ましい。また、0.25L/分以下の極めて小さい流量範囲においては、患者供給ガスの流量の正確なコントロールが難しく、90%程度の高い酸素濃度の患者供給ガスを用いる場合には、新生児や乳幼児あるいは軽症患者に対しての酸素投与が困難という課題がある。
【0007】
例えば、40%程度の酸素濃度のガスをボンベに充填し、これによって酸素投与を行うことや、高濃度酸素ガス(例えば、99%以上の酸素濃度を有するガス)をボンベに充填し、希釈用の空気を準備して流量と酸素濃度をコントロールすることができるが、いずれの方法においても長時間の使用においては都度ボンベ交換する必要があるため、在宅酸素療法においては酸素濃縮装置を用いることが望ましい。
【0008】
このような需要に対し、圧力変動吸着型酸素濃縮装置においても、患者供給ガスの酸素濃度を下げ、任意の酸素濃度を任意の流量で供給できるものが用いられるようになっている。その方法としては、例えば、特開2001―163605号公報に示されているように、生成ガスの酸素濃度と流量の積が一定になるようにコンプレッサと吸脱着工程の切り替え時間を制御して濃度と流量を変化させる方法があるが、この方法では酸素濃度と流量を独立に設定するものではない。
【0009】
特開2004―229862号公報においては、原料空気の一部を可変絞り手段を経由して製品ガスに混合することで、酸素濃度を任意の値に調節できる方法が示されている。しかしながら、吸着プロセスにて生成される酸素濃度を知る手段がないため、絞り手段の制御が非常に困難になるという課題がある。コンプレッサや吸着剤の継時的な性能変化や環境条件によって生成される酸素濃度は変化するため、一定の酸素濃度を得るためには絞り手段の再調整を要するが、自動で絞り弁を制御する技術は開示されていない。
【0010】
さらに、原料空気は吸着筒における吸着プロセスに起因した周期的な圧力変動が生じており、絞り手段のみでは、精密にその流量を制御することはできず、安定した酸素濃度を得ることは難しい。酸素濃度を安定化させるには、生成ガスの貯蔵手段を十分に大きくする方法があるが、この場合は装置が大きくなるという欠点があり、酸素濃度の安定性と装置の大きさがトレードオフの関係となってしまう。
【0011】
更に酸素センサは混合後のガスの濃度を測定する構成となっているため、濃縮酸素の酸素濃度を知ることができないため、吸着筒や切替弁の故障や吸着剤の劣化の検出が困難であり、使用者の治療効果の確保という点で課題がある。
【0012】
特開平1−228107号公報には、製品酸素の取出量を多くし吸着破過領域で運転することにより低酸素濃度の酸素を供給する装置が開示されている。また特開平8−268701号公報には、連動する2系統の流路を持つオリフィス型流量設定器が開示され、取り出し流量を一定に制御し、供給量とパージ量を制御する装置が開示されている。
【0013】
酸素濃度40%といった吸着破過領域では、90%といった最適条件とは異なり、吸着性能を一定に制御することが難しいが、酸素取出量を一定制御することにより安定運転が出来る。オリフィス等の機械式流量設定器では、流量設定器の下流側の使用者に供給するカニューラが折れなどにより圧損が生じた場合、パージ側への排気されるガス流量が増加し、取り出し流量が変動し、結果として製品酸素ガスの濃度が大きく変動する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、圧力変動吸着型酸素濃縮装置における前述の課題を解決するために鋭意研究した結果、以下の本発明に到達した。
【0015】
すなわち本発明は、酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒と、該吸着筒に加圧空気を供給する加圧手段を備え、空気中の窒素を吸着し酸素濃縮ガスを生成する吸着型酸素濃縮装置において、生成した酸素濃縮ガスを貯留する酸素貯蔵手段、調圧弁、調圧後の酸素濃縮ガスを使用者に供給する第1酸素流量制御弁、該酸素濃縮ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段、酸素流量を測定する流量測定手段を備えた酸素供給ラインと、調圧後の酸素濃縮ガスを系外に放出する第2酸素流量制御弁を備えた酸素排気ラインを備え、酸素供給流量設定値および該流量測定手段の測定値に基づいて第1酸素流量制御弁の開度を制御すると共に、予め設定された酸素濃度となる酸素濃縮ガス取出量となるように、該流量測定手段の計測値に基づいて、第2酸素流量制御弁の開度を制御する制御手段を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸素濃縮装置は、40%などの低濃度酸素濃縮ガスを安定的に供給することができ、未熟児などの乳幼児患者の治療に最適な酸素濃縮ガスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の酸素濃縮装置の構成を示す模式図。
図2】従来の酸素濃縮装置の構成を示す模式図。
図3】本発明の酸素濃縮装置の別の態様例の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の酸素濃縮装置の実施態様を説明する。
【0019】
図1は本発明による圧力変動吸着型酸素濃縮装置の構成を示す模式図である。酸素濃縮手段3は圧力変動吸着型の酸素濃縮手段であって、窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒を用い、1)コンプレッサ等の加圧手段1を用いて原料空気を導入して加圧状態で窒素を吸着させて酸素濃縮ガスを得る吸着工程、2)大気開放弁あるいは真空ポンプなどの減圧手段を用いて吸着筒の内圧を大気圧付近あるいは大気圧以下の状態まで減圧させ、吸着剤に吸着した窒素を脱着させて吸着剤の再生を行う脱着工程、の少なくとも2つの工程を交互に行うことにより、連続して酸素濃縮ガスを得ることができる。
【0020】
酸素濃縮手段3には、吸着筒の製品端である酸素濃縮ガスの取出し口に逆止弁を備えてもよい。生成された酸素濃縮ガスは酸素供給ラインを流れ、酸素濃縮ガス貯蔵手段4に一時貯蔵される。該酸素濃縮ガス貯蔵手段4を用いることにより該酸素濃縮手段3から生成される酸素濃縮ガスの圧力変動および酸素濃度変動を緩和することができ、ガス流量および酸素濃度を安定させることができる。
【0021】
酸素濃縮ガス貯蔵手段4に貯蔵された酸素濃縮ガスは、調圧弁5により所定圧力に調整したのち、外部入力手段11より入力された流量設定値に基づいて、流量制御手段12が比例制御弁である第1酸素流量制御弁6の開度を制御し所定の流量に供給流量を調節し、流量測定手段7により実流量を計測、酸素濃度測定手段8により酸素濃度がを計測した後、鼻カニューラ等の酸素供給手段11により使用者に供給される。該酸素濃度測定手段8には、ジルコニア式センサや超音波式センサ、磁気式センサ等を用いることができる。超音波式センサを採用することで酸素濃度および酸素濃度の両方の値を一つの測定手段で計測が可能である。流量測定手段7による実流量の計測結果に基づいて第1酸素流量制御弁6の開度をフィードバック制御することで、酸素濃縮ガスを所望の流量に調整することが出来る。
【0022】
一方、流量制御手段12は、供給する酸素濃縮ガスの酸素濃度に応じて設定される吸着筒および酸素貯留手段からの酸素取出量に基づいて第2酸素流量制御弁9の開度を制御し、放出される酸素濃縮ガス量を制御する。運転初期には、供給酸素濃度、酸素供給流量に基づいて予め設定した第2酸素流量制御弁9の開度で酸素濃縮ガスを放出する。その後、酸素濃度測定手段8の測定結果に基づいて第2酸素流量制御弁9の開度を微調整する。酸素濃度が設定値を下回る場合は第2酸素流量制御弁9の開度を小さくし、設定値を上回る場合は第2酸素流量制御弁9の開度を大きくするように酸素濃度測定手段8の測定値に基づいて第2酸素流量制御弁9の開度をフィードバック制御することで酸素濃度を所定値に制御する。
【0023】
酸素濃縮手段3からの酸素濃縮ガスの取出量、すなわち第1酸素流量制御弁6および第2酸素流量制御弁9から放出される酸素濃縮ガスの取出量によって、酸素濃度を制御することが出来る。
【0024】
酸素濃縮ガスの取出量は、供給する酸素濃縮ガスの酸素濃度によって決定される。例えば定常状態で90%以上の濃度の酸素濃度濃縮ガスを2L/分で生成する能力を有する酸素濃縮手段3において、その生成能力以上の酸素濃縮ガス流量を取り出すと、吸着床は破過状態となり、未吸着の窒素ガスが酸素濃縮ガス貯蔵手段4側に流れ、酸素濃縮ガスの酸素濃度が低下する。従って、酸素濃縮ガスの取出量を調整することで供給する酸素濃縮ガスの酸素濃度を制御することが可能となる。
【0025】
例えば、酸素濃度90%で2L/分の酸素濃縮ガスを生成する能力を有する酸素濃縮手段3から6L/分の酸素濃縮ガスを取り出すと、酸素濃度40%の酸素濃縮ガスを生成することが出来る。具体的な酸素濃縮ガスの取出量は、酸素濃縮手段3の酸素生成能力に応じて、実際の酸素濃縮ガスの取出量と酸素濃度の関係を調整した上で決定し、第1酸素流量制御弁6、第2酸素流量制御弁9の開度を制御することで酸素濃縮ガスの供給量および排気量放出量を制御する。
【0026】
本願発明では、濃度測定手段8の実酸素濃度の計測結果に基づいて比例制御弁である第2酸素流量制御弁9の開度を調整し、酸素濃縮手段3からの酸素濃縮ガスの取出量を調整する為、たとえ鼻カニューラなどの酸素供給手段11が折れ曲がるなどにより背圧が掛った場合であっても、比例制御弁の第2酸素流量制御弁9の開度を調整して、トータルの酸素濃縮ガスの取出量を一定に調整する為、酸素濃度を一定に制御することが出来る。
【0027】
図2に示す従来型の酸素濃縮装置では、窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒を備えた圧力変動吸着型の酸素濃縮手段103に対して、コンプレッサ等の加圧手段101を用いて原料空気を導入して加圧状態で窒素を吸着させて酸素濃縮ガスを得る吸着工程、大気開放弁あるいは真空ポンプなどの減圧手段を用いて吸着筒の内圧を大気圧付近あるいは大気圧以下の状態まで減圧させ、吸着剤に吸着した窒素を脱着させて吸着剤の再生を行う脱着工程、の少なくとも2つの工程を交互に行うことにより、連続して酸素濃縮ガスを得る点は、本願発明の酸素濃縮装置と同じである。
【0028】
生成された酸素濃縮ガスは酸素供給ラインを流れ、酸素濃縮ガス貯蔵手段104に一時貯蔵されたのち、調圧弁105により所定圧力に調整したのち、外部入力手段111より入力された流量設定値に基づいて、流量制御手段112が相当するオリフィス径を有するオリフィス型第1流量制御弁106により所定の流量に供給流量を調節し、流量測定手段107により実流量を計測、酸素濃度測定手段108により酸素濃度がを計測した後、鼻カニューラ等の酸素供給手段111により使用者に供給される。同時に、流量制御手段112は、オリフィス型第1流量制御弁106に対応し、酸素濃縮ガスの取出量が一定となるオリフィス径を有するオリフィス型第2流量制御弁109から、余剰の酸素濃縮ガスを放出する。
【0029】
オリフィス型第1流量制御弁106、オリフィス型第2流量制御弁109のオリフィス径は固定されているため、供給する酸素濃縮ガスの濃度の可変制御をすることは出来ない。また、酸素供給手段111に背圧が掛った場合には、オリフィス型第2流量制御弁109に流れる酸素濃縮ガス流量が多くなると共にトータルの酸素濃縮ガス取出量が変動する為、吸着破過領域での酸素濃縮ガスの取出量の変動は、酸素濃度の大きな変動をもたらす結果となる。
【0030】
図3に本願発明の酸素濃縮装置の別の態様例を示す。窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒を備えた圧力変動吸着型の酸素濃縮手段203に対して、コンプレッサ等の加圧手段201を用いて原料空気を導入して加圧状態で窒素を吸着させて酸素濃縮ガスを得る吸着工程、大気開放弁あるいは真空ポンプなどの減圧手段を用いて吸着筒の内圧を大気圧付近あるいは大気圧以下の状態まで減圧させ、吸着剤に吸着した窒素を脱着させて吸着剤の再生を行う脱着工程、の少なくとも2つの工程を交互に行うことにより、連続して酸素濃縮ガスを得る点は、図1の酸素濃縮装置と同じである。
【0031】
酸素濃縮ガス貯蔵手段204に貯蔵された酸素濃縮ガスは、調圧弁205により所定圧力に調整したのち、外部入力手段211より入力された流量設定値に基づいて、流量制御手段212が比例制御弁である第1酸素流量制御弁206の開度を制御し所定の流量に供給流量を調節し、流量測定手段207により実流量を計測、酸素濃度測定手段208により酸素濃度がを計測した後、鼻カニューラ等の酸素供給手段211により使用者に供給される。
【0032】
流量測定手段207による実流量の計測結果に基づいて第1酸素流量制御弁206の開度をフィードバック制御することで、酸素濃縮ガスを所望の流量に調整することが出来る。
【0033】
流量制御手段212は、酸素濃度測定手段208による計測結果に基づいて比例制御弁である第2酸素流量制御弁209の開度を調整し放出量を制御する。酸素濃度が設定値を下回る場合は第2酸素流量制御弁209の開度を小さくし、設定値を上回る場合は第2酸素流量制御弁209の開度を大きくするように酸素濃度測定手段208の測定値に基づいて第2酸素流量制御弁209の開度をフィードバック制御することで酸素濃度を所定値に制御することができる。第2流量制御弁209の開度の調整は、第1酸素流量測定手段207と第2酸素流量測定手段213の測定結果に基づき、酸素濃度が設定値となる第2流量制御弁209からの放出量を算出し、算出された放出量と第2酸素流量測定手段213の測定結果に基づいてフィードバック制御しても良い。第2酸素流量測定手段213の計測結果に基づいて開度を調整するため、比例制御弁故障時(弁開度と流量特性がズレた場合)にも酸素濃縮ガスを所望の濃度で供給することが出来る。
【0034】
酸素濃縮ガスの取出量を少なくしても酸素濃度が上がらない場合、すなわち第2酸素流量制御弁209の開度、第2流量測定手段213の計測値が予め設定した値を下回り、酸素濃縮ガスの酸素濃度が設定値を下回る場合には、吸着筒の劣化が進行している可能性が高く、酸素濃度測定手段208の測定結果に基づいて加圧手段201の回転数を制御し、酸素濃縮手段203の吸着床圧力を制御することで酸素濃縮ガスの濃度を制御することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願発明の酸素濃縮装置では、圧力変動吸着型の吸着床からの酸素濃縮ガスの取出量を一定に制御することで、吸脱着の破過条件下であっても一定の酸素濃度の酸素濃縮ガスを取り出すことが出来、未熟児や乳幼児などの低酸素濃縮ガスが必要とされる患者に対して、安定的に酸素を供給することが出来る。
【符号の説明】
【0036】
1、101、201:加圧手段
3、103、203:酸素濃縮手段
4、104、204:酸素濃縮ガス貯蔵手段
5、105、205:調圧弁
6、106、206:第1酸素流量制御弁
7、107、207:流量測定手段
8、108、208:酸素濃度測定手段
9、209:第2酸素流量制御弁
10、110、210:酸素供給手段
11、111、211:外部入力手段
12、112、212:流量制御手段
106:オリフィス型第1酸素流量制御弁
109:オリフィス型第2酸素流量制御弁
213:第2流量測定手段
図1
図2
図3