(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記方法が、前記塊茎に適用される初回において、CIPCの質量に対するリモネンの質量の比が2〜50であり、且つ、前記塊茎に適用された後2回目から、前記CIPCの質量に対する前記リモネンの質量の比が、4〜30である請求項1から3のいずれかに記載の方法。
請求項1から9のいずれかに記載の方法におけるリモネンの使用であって、塊茎の処置におけるCIPCの少なくとも部分的な代替のための抗出芽剤としてのリモネンの使用。
【背景技術】
【0002】
ジャガイモ及び他の塊茎の保存は、典型的には、2℃〜10℃の温度で実施される。この温度で、ジャガイモは、デンプンを糖に変換し、ジャガイモ中の糖を保存し、それによってより甘い食味となる。フレンチフライテスト(French fries test)では、調理すると(fry colour)、ジャガイモは、茶色に早く(to fast)着色する。これによって、ジャガイモの質が低くなってしまう。ジャガイモ中の糖の蓄積に効くのは、2、3週間、ジャガイモを高い温度、好ましくは約15℃で保存し、その後ジャガイモを市場に出荷することである。この期間で、ジャガイモ内の糖レベルは、低下するが、ジャガイモは、芽や新芽を形成し始める。芽の形成に伴って、ジャガイモは、有害なグリコアルカロイドを生成し始め、これらの分子は、調理中に破壊されず、そのことが、ジャガイモを売れないものにする。ジャガイモの保存は、気候制御ユニット(until)を装備せず、保存内の温度は、天候状況に左右される。倉庫内の温度が充分に低く維持できないと、ジャガイモは芽を形成し始める。出芽を抑制するために、出芽抑制剤が使用される。
【0003】
過去50年に亘って選ばれている芽の抑制剤は、クロルプロファム(CAS 101−21−3)としても知られる、3−クロロフェニルイソプロピルカルバメート(CIPC)である。CIPCは、ジャガイモ又は塊茎に、芽の形成がごく僅かである休眠状態をもたらす。CIPCは、室温では固体であり;この特性は、CIPCをジャガイモに付着させ、適用後長期間、処置されたジャガイモに残渣を残す。ヨーロッパにおけるCIPCの使用は、1年につき、ジャガイモ1トン当たり最大36gの活性成分に制限されている。
【0004】
CIPC残渣レベルは、規制を受ける。指令EC/91/414における欧州附属書Iに含まれることの一部として、10mg/kgの最大残渣レベル(MRL)が設定された。MRLレベルが下げられるであろうという予測があり、塊茎、特にジャガイモの代替処置に対する要求がある。更に、残渣がない青果物を必要とするバイオ−市場区分が成長している。したがって、CIPCの使用を低減し、残渣レベルの必要要件を満たし、効能を維持することを可能にするために、代替が研究されている。
【0005】
特許文献1では、高温噴霧(hot fogging)によるCIPC及びテルペンの適用によるジャガイモの抗出芽処置のための方法が記載されている。CIPCと組合せて試験されたテルペンの範囲の効能試験が含まれている。カルボンにおいて、良好な結果が得られた。CIPCとリモネンの組合せは、効果的ではなく、CIPC単独の適用よりも更に悪いと報告された。処置後125日で、16.6ppmのCIPCと16.6ppmのリモネンとの組合せた使用は、97%が新鮮なパックの使用に対して不向きであると示した。平均で1mm超である芽を有する塊茎は、新鮮なパックの使用に対して受け入れられないと考えられた。明らかに、リモネンは、CIPCの代わりの候補ではない。
【0006】
ごく最近では、特許文献2では、高温噴霧を介したCIPCとテルペン又は精油との適用による塊茎の抗出芽処置のための方法が記載された。テルペンの選択としては、チョウジ油又はミント油から得られるカルボン、オイゲノール、又はイソオイゲノールであった。しかしながら、チョウジ油及びその誘導体は、費用が高くなり得、より安価でより経済的な代替を必要とする。この文献では、CIPCと組み合わせたリモネンが芽の形成を抑制するのに効果的ではないと繰り返し述べられている。塊茎の処置においては、1トン当たり20グラムのCIPCがカルボン又は(イソ)オイゲノールと組み合わせて用いられる。CIPCとリモネン又はジャスモン(jasmonene)との組合せは、ポジティブな結果を提供しないものとして開示された。
【0007】
特許文献3では、ジャガイモの処置のための液体組成物を用いた霧処置方法が開示される。実施例の1つは、7重量%の非イオン乳化剤及び33重量%の酢酸ブチル溶媒を含む60重量%リモネン組成物を用いる。処置のプロトコルは、保存の開始で45g/トン、20日毎に15g/トンからなり、それによって6ヶ月超でジャガイモ1トン当たり165gの活性成分を施す。5ヶ月の期間後、リモネン処置したジャガイモは、非処置のコントロールで観察されたものに近い重量損失(4.5%vs5.4%)及び芽の生育(96.8%vs100%;CIPCにおける18%と比較して)を示した。この開示は、リモネンがジャガイモの芽の制御に対して不向きであるとして示す。
【0008】
上記で述べられている問題の少なくとも1つに対する解決策を提供することが本発明の目的である。
【0009】
本発明は、ジャガイモのための抗出芽剤として、少なくとも部分的に、CIPCに取って代わることができる、抗出芽剤としての使用のための組成物を提供することを目的とする。代替は、対費用効果があるべきである。前記代替は、再生可能であることが好ましい。前記代替によって、CIPCの残渣の量を減らすことができれば、有利となるであろう。
【0010】
【特許文献1】US 5,811,372
【特許文献2】US 2006/0276336 (EP 1 728 429)
【特許文献3】WO 00/32063
【発明を実施するための形態】
【0026】
パラメーター、量、経時的期間など測定可能な値に関する、本明細書中で用いられる、「約」は、明記された値から、35+/−20%以下の変動、好ましくは+/−10%以下の変動、より好ましくは+/−5%以下の変動、更により好ましくは+/−1%以下の変動、一層より好ましくは+/−0.1%以下の変動を包含し、開示された発明が、このような変動内において適切に働く意味である。しかしながら、修飾語句である「約」が言及する値は、それ自身で具体的に開示されたものであることが理解されよう。
【0027】
終了点までの数値範囲の列挙は、その範囲及び列挙された終了点の中において包含された全ての数及び小数(fractions)を含む。
【0028】
ここで及び明細書中において、「重量%」又は「重量%」(重量パーセント)という用語は、特段の定義がない限り、配合物の総重量に対して、それぞれの成分の相対的な重量を指す。
【0029】
本明細書中で用いられる、「塊茎」という用語は、植物が、養分を蓄え、冬や乾燥する月を生き残れるために拡大された、改変された植物の構造物を指す。これらは、再成長の及び無性生殖のために、エネルギー及び養分を提供する。これらは、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、サツマイモ(Ipomoea batatas)、キャッサバ(Manihot esculenta)、ヤムイモ(Dioscorea)、及びダリアなどの植物において見られる。
【0030】
本明細書中で用いられる、「芽」、「新芽」、又は「幼芽」という用語は、同義語である。これらの用語は、球根又は塊茎からの早い植物の生長物を指す。
【0031】
本明細書中で用いられる、「抗出芽」及び「抗発芽」という用語は、形成又は成長から塊茎上の芽又は幼芽を押さえる(stop)能力を指す。
【0032】
第1の態様において、本発明は、塊茎の抗出芽処置のための方法を提供する。それは、CIPC及びリモネン処置を含む。工程の順番は、変えることができる。CIPC処置は、リモネン処置の先であることが好ましい。CIPCは、そのままで(neat)又は配合された製品の形態で適用されることができる。リモネンは、そのままで又は配合された製品の形態で適用されることができる。リモネンは、リモネンリッチのオレンジ油の形態で適用されることが好ましい。
【0033】
特に本発明は、塊茎の抗出芽処置のための方法であって、
少なくとも部分的に、前記塊茎の出芽を抑制し、前記塊茎に形成された芽を除去するのに効果的なCIPC及びリモネンの総量で、前記塊茎にCIPC及びリモネンを適用する工程を含み、
CIPC重量に対するリモネン重量の比が、4超であり、好ましくは6超であり、より好ましくは8超であり、更により好ましくは9超であり、最も好ましくは10超であることを特徴とする。
【0034】
CIPCとリモネンとの組み合わせた使用について、CIPCは、浸透性活性モード(systemic mode of action)によって、芽の成長を抑制し、一方、適用されたリモネンは、有効な活性モード(curative mode of action)によって、芽を有する塊茎から芽を除去する働きをする。
好ましい実施形態においては、リモネンは、D−リモネン(CAS:5989−27−5)の鏡像異性の純粋な形態として前記組成物中に存在する。他の実施形態においては、リモネンは、L−リモネン(CAS:5989−54−8)の鏡像異性の純粋な形態として前記組成物中に存在する。更に別の態様においては、リモネンは、ジペンテン(CAS:138−86−3)としても知られる、ラセミ混合物として存在する。
【0035】
リモネンは、合成経路を介して得られることができる、又はリモネンは、天然源から抽出されることができる。前記合成経路は、天然源から利用可能な材料の点からコストがかかりすぎるので、最も商業的に利用可能なリモネンは、天然源からである。2つの主要な方法である遠心分離又は水蒸気蒸留を通して、D−リモネンは、柑橘類から商業的に得られることができる。
【0036】
好ましい実施形態においては、リモネンは、植物又は植物の一部から生成された油を意味する精油の形態で存在する。精油で存在することよって、抗出芽剤が更に天然のものとなり、製造においてより持続可能な資源を用いる。多くの場合、精油は、農業の副産物であり、この副産物の適用は、作物を生育すること以外に、より高い経済的価値を生み出すことができることが知られる。本発明に用いられるのに好適な精油は、柑橘油、オレンジ油、レモン油、ライム油、グレープフルーツ油、及びタンジェリン油である。
【0037】
好ましい実施形態においては、リモネンは、活性成分として、一般的にリモネンと知られる1−メチル−4−(1−メチルエテニル)−シクロヘキセンを50%超含む組成物の形態で存在する。好ましい実施形態においては、前記組成物は、前記組成物の総重量に対して、60%超、好ましくは70%超、最も好ましくは90%超のリモネンを含む。
【0038】
好ましい実施形態においては、前記リモネン含有組成物は、オレンジ油を含む。オレンジ油は、90%超のD−リモネン(リモネンの鏡像異性の純粋な形態)からなる。オレンジ油のリモネン含量は、油が生成されるオレンジの品種及びオレンジが生育される地域に左右される。オレンジ油は、FDAによって、「一般的に安全と認識される」ものと分類され、食品へのオレンジ油の添加が承認される。オレンジ油の価格は、ミント油、チョウジ油、又はカラウェー油の価格よりも遥かに安価であり、そのことによって、オレンジ油が最も経済的に支持される選択肢とさせている。
【0039】
更に好ましい実施形態においては、前記リモネン含有組成物は、オレンジ油のみであり、任意の添加物又はオレンジ油以外の任意の溶媒を含まない。
【0040】
オレンジ油は、メントールを含有するミント油ほど、処置された塊茎の食味に影響を及ぼさないことが分かった。処置されたジャガイモが得るミント風味の一因となるものは、メントールである。
【0041】
より好ましい実施形態においては、前記オレンジ油は、工業等級オレンジ油(CAS 94266−47−4);食品等級オレンジ油(CAS 8028−48−6)又はコールドプレスオレンジ油の一覧から選択される。当業者であれば、活性物質としての一覧(SANCO/12083/2013 rev 3,2013)、基準参照ISO3140:211及びヨーロッパ薬局方5.0,2005から、オレンジ油及びその特性を熟知している。
【0042】
好ましい実施形態においては、前記リモネン組成物は、水乳化性組成物(EC)の形態であり、50重量%超、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、又は60重量%超のリモネン、及び乳化性界面活性剤を含む。好ましい実施形態においては、前記組成物は、前記組成物の総重量に対して、65%超、好ましくは70%超、最も好ましくは71重量%超のリモネンを含む。最も好まれる組成物は、典型的には、前記組成物の総重量に対して、71重量%〜72重量%のリモネン含量を含む。より希釈された製品と比較して、高いリモネン含量は、配送及び保存される必要のある組成物の体積を少なくできるため有利である。
【0043】
好ましくは、乳剤は、前記組成物の総体積に対して、100%の純度を有する活性成分量で表される、少なくとも500g/lのリモネン、好ましくは少なくとも550g/lのリモネン、最も好ましくは少なくとも600g/lのリモネンを含む。
【0044】
好ましい実施形態においては、前記リモネン組成物は、溶媒が実質的にない(すなわち、水及びオレンジ油又はリモネン以外の任意の有機溶媒が実質的にない)。本発明において用いられる、「実質的に溶媒を含まない」という用語は、前記組成物の総重量に対して、溶媒が10重量%未満の組成物を意味する。「溶媒」という用語は、他の物質を溶解し、溶液を形成する物質を意味する。
【0045】
好ましい実施形態においては、前記リモネン組成物は、微量の溶媒、すなわち、0.1%未満の溶媒は除くことができないものの、10重量%未満の溶媒、好ましくは5重量%未満の溶媒を含み、溶媒を含まないことが最も好ましい。ここで、パーセントは、いずれも重量対重量である。好ましい実施形態においては、前記組成物は、微量の水、すなわち、0.1%未満の水は除くことができないものの、5%未満の水を含み、水を含まないことが最も好ましい。ここで、パーセントはいずれも重量対重量である。
【0046】
好ましくは、前記リモネン組成物は、更に1つ以上の界面活性剤を含む。前記1つ以上の界面活性剤は、非イオン性及び/又はアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0047】
前記非イオン性界面活性剤は、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、セスキオレイン酸ソルビタン、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールアルキレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアミド、脂肪酸イソ−プロパノールアミド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化ポリサッカライド、アルキルグリコシド、糖エステル、アルコキシル化アルコール、親油性グリセロールモノステアレート、自己乳化型グリセロールモノステアレート、ポリグリセロールモノステアレート、ポリグリセロールアルキレート、脂肪族アルコールアルコキシレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレン蜜蝋、又はこれらの組合せの一覧から選択されることが好ましい。
【0048】
前記アニオン性界面活性剤は、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム、又はこれらの組合せの一覧から選択されることが好ましい。
【0049】
好ましくは、本発明に係る組成物中に存在する非イオン性界面活性剤は、非イオン性高分子界面活性剤である。より好ましくは、高分子界面活性剤は、アルコキシル化アルコールであり、更により好ましくは脂肪族アルコールアルコキシレートであり、最も好ましくはエトキシレート及び/又はプロポキシル化アルコールである。前記アルコキシル化アルコールは、イソ−トリデカノールアルコキシレート、より好ましくはイソ−トリデカノールペンタ−エトキシレートである。
【0050】
前記界面活性剤は、前記組成物の総重量に対する、界面活性剤の全ての重量は、5%〜40%の量、より好ましくは10%〜20%の量、最も好ましくは12%〜13%の量で存在していることが好ましい。
【0051】
本明細書中で用いられる「脂肪族アルコール」という用語は、少なくとも4個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも8個、更により好ましくは少なくとも10個、最も好ましくは少なくとも12個の炭素原子を有する炭素鎖の長さを含む、線状又は分岐状アルコールを意味する。好ましくは、前記脂肪族アルコールは、22個未満の炭素原子、より好ましくは20個未満の炭素原子、最も好ましくは18個未満の炭素原子の炭素鎖の長さを含む。前記アルコールは、第一級アルコールであることが好ましい。より好ましくは、前記アルコールは、4〜22個の炭素鎖原子、最も好ましくは8〜14個の炭素鎖原子の炭素鎖の長さを含む第一級アルコールである。
【0052】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、湿潤剤を含む。それによって前記組成物を水に添加し、スプレー混合物を形成した後に形成されるエマルションの表面張力を低下させることを助ける。この低下した表面張力は、塊茎の表面を前記組成物で広く塗布することを助ける。
【0053】
しかしながら、実質的に水を含まない組成物は、先行技術で一般的に用いられる湿潤剤具体的には、水溶性アニオン性界面活性剤を許容しない。これらの界面活性剤は、対イオンが、一般的にカルシウムイオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンであるため、安定した溶液を形成するために水を必要とする。これらのアニオン界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、及びN−アシルグルタミン酸ナトリウム、及びこれらの組合せなどの薬剤が挙げられる。
本発明に係る組成物中の湿潤剤は、アニオン性部分として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸塩を有するアニオン性界面活性剤であることが好ましい。カチオン性対イオンとしては、トリエチルアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウム(tertrabutylammonium)イオン、又は他のテトラ−アルキルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン、又は他のテトラ−アルキルホスホニウムイオン;又は金属−イオン及びクラウンエーテルの組合せ、及びこれらの組合せの一覧から選択されることが好ましい。
【0054】
好ましい実施形態においては、前記湿潤剤は、エタノールアミンアルキルベンゼンスルホネートであることが好ましい。好ましい実施形態においては、前記湿潤剤は、トリエタノールアンモニウムドデシルベンゼンスルホネート(CAS:27323−41−7)である。このアニオン及び対イオンの組合せは、リモネン以外の溶媒を含むことなく、前記湿潤剤を組成物中で溶解することを可能にする。追加の溶媒がない、リモネン及びこのタイプの界面活性剤の乳化性組成物は、良好な冷温保存安定性を有することが分かった。
【0055】
本発明に係るリモネン組成物の許容できる冷温保存安定性は、−20℃〜5℃、好ましくは−10℃〜4℃、より好ましくは−5℃〜3℃、最も好ましくは−4℃〜0℃の温度範囲で提供されることが好ましい。
【0056】
CIPAC MT 39.3:液体配合物の低温安定性に準拠し、7日間の期間で保存した組成物に対して、低温保存安定性を測定した。サンプルを0℃で1時間保持し、その後分離した固体又は油状物の体積を記録した。0℃における保存を7日間続け、いずれの固体物も遠心分離にかけ沈殿させ、その体積を記録した。測定方法は、当業者によく知られる。
【0057】
前記湿潤剤は、好ましくは5%〜25%、より好ましくは10%〜20%、最も好ましくは15%〜16%の量で乳化性組成物中に存在し、前記組成物の総重量に対して重量パーセントの界面活性剤で表される。
【0058】
好ましい実施形態においては、前記リモネン組成物は、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤のいずれも含む。本発明で用いられるための組成物は、界面活性剤として、アルコキシル化脂肪族アルコール及びエタノールアミンアルキルベンゼンスルホネートの組合せを含むことが最も好ましい。
【0059】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、リモネンのための抗酸化剤を含む。前記抗酸化剤は、ジフェニルアミン、エトキシキン、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールの混合物であるBHA、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールに相当するBHT、アスコルビン酸、トコフェロール、ポリフェノール、又はこれらの組合せの一覧から選択されることが好ましい。
【0060】
抗酸化剤の存在によって、リモネンが酸化することを防止することができる。例えば、ボトルを空けた後、微量の酸素が、組成物又はボトルのヘッドスペースに入り込むことがある。これは、リモネン酸化物が潜在的な感作物質であるため有利である。
前記抗酸化剤は、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、最も好ましくは0.1%未満で存在し、抗酸化剤の重量はいずれも、前記組成物の重量に対して表される。
【0061】
好ましい実施形態においては、前記抗酸化剤は、BHT又はBHAである。前記組成物は、好ましくは1%未満のBHT又はBHA%、より好ましくは0.5%未満のBHT又はBHA%、最も好ましくは0.1%未満のBHT又はBHA%を含み、抗酸化剤の重量はいずれも、前記組成物の重量に対して表される。
【0062】
他の好ましい実施形態においては、オレンジ油は、そのまま(neat)で用いられる。これによって、前記リモネン組成物が完全に天然のものとなる。好ましくは、前記組成物は、前記組成物の総体積に対して、100%の純度を有するリモネン活性成分量で表される、少なくとも500g/lのリモネン、好ましくは少なくとも600g/lのリモネン、より好ましくは700g/lのリモネン、更により好ましくは800g/lのリモネン、最も好ましくは少なくとも900g/lのリモネンを含む。
【0063】
好ましい実施形態においては、本発明に係る方法の実施形態で用いられる組成物は、CIPC及びリモネンを共に含む。これらは、いずれも溶媒中に溶解されることができる、又は溶媒を必要とすることなく、CIPCは、リモネン中に溶解されることができる。CIPC及びリモネンのいずれも含む組成物の利点としては、方法が1つの工程(すなわちCIPC及びリモネンを含む組成物の適用)に減らせることである。
【0064】
本発明の実施形態に係る方法で用いられるためのリモネン組成物は、前記組成物の総重量に対して、好ましくは少なくとも50重量%のリモネン、好ましくは55重量%のリモネン、より好ましくは60重量%のリモネン、更により好ましくは65重量%のリモネン、最も好ましくは少なくとも70重量%のリモネンを含む。より希釈された製品と比較して、高いリモネン含量は、配送及び保存される必要のある組成物の体積を少なくできるため有利である。
【0065】
処置のための活性成分量は、選択され、少なくとも部分的に、処置された塊茎の出芽を抑制し、前記塊茎に形成された芽を除去する。
【0066】
リモネンを用いずに、抗出芽剤として典型的に用いられるCIPCの量は、最大36gのCIPC/トン/年であり、通常は、下記の用量が用いられる。
−保存中3〜6週間において、1トン当たり6g〜12gのCIPCの用量による第1の適用;及び
−2〜3ヶ月毎に、1トン当たり6g〜8gのCIPCの用量における第2の適用
【0067】
本発明においては、塊茎に適用されるリモネン/CIPCの量は、前記塊茎の出芽を抑制するのに効果的な量である。出芽の抑制は、本発明では、ミニマムからある程度の抑制、及び完全な抑制までのあらゆる範囲に変化させうる。
【0068】
塊茎、特にジャガイモの塊茎の出芽を抑制するのに効果的なリモネン/CIPCの量は、リモネン及び/又はCIPCを含む組成物(例えば、そのまま、希釈、EC)及び潜在的に、処置されるジャガイモの栽培品種といった要因に左右される。本発明の方法の幾つかの実施形態においては、塊茎、特にジャガイモの塊茎に適用されたリモネン/CIPCは、.001ppmから50ppm、100ppm、200ppm、500ppm、又は1,000ppmまでの任意の測定できる投与量を提供するのに十分な量である。
【0069】
本発明の方法は、どのジャガイモの栽培品種(栽培品種であるビンチェ及びイノベーター(Innovator)が挙げられるがこれらに限定されない)に適用可能である。
【0070】
本発明に係る方法においては、CIPCの質量に対するリモネンの質量の比は、4超である。好ましい実施形態においては、リモネンの質量とCIPCの質量との比は、好ましくは2〜50、より好ましくは4〜40、更により好ましくは6〜30、最も好ましくは8〜24である。この比は、活性成分の大部分が無害なリモネンであることを確実にし、芽の形成の抑制に効果的で必要な潜在的に有害なCIPCの量を大きく減らす。
【0071】
CIPCは、処置された塊茎の1トン当たり最大36gのCIPCの量で、本発明に係る方法の実施形態で用いられることが好ましい。より好ましくは、処置された塊茎1トン当たり最大30gのCIPCの量で用いられ、更により好ましくは、処置された塊茎1トン当たり最大25g、20g、15gの量であり、最も好ましくは、処置された塊茎1トン当たり最大12gのCIPCの量である。
【0072】
リモネンは、処置された塊茎の1トン当たり最大1,080gのリモネンで、又は1トン当たり90gのリモネンを12回の処置で、本発明に係る方法の実施形態で用いられることが好ましい。
【0073】
好ましい実施形態においては、保存時に12gのCIPCが、90gリモネンと組み合わせて、適用され、9週間後、3週間毎に90gのリモネン処置が続く。他の好ましい実施形態においては、12gのCIPCが、保存時に適用され、その後3週間毎に90gリモネンの処置が続く。
【0074】
本発明の実施形態に係る処置の方法は、4ヶ月まで、好ましくは5ヶ月まで、より好ましくは6ヶ月まで、更により好ましくは7ヶ月まで、最も好ましくは8ヶ月までの保存期間のための芽の制御を提供することができる。
【0075】
好ましい実施形態においては、CIPC含有組成物の適用は、噴霧によって行われる。噴霧の工程においては、前記組成物は、空気で揮発される、又は前記組成物中の他の気体は、吹き払われ、空気又は気体中に分散された液滴をもたらす。噴霧を行う温度は、好ましくは150℃〜350℃、より好ましくは175℃〜250℃である。このタイプの適用は、低温噴霧が行うものよりも、小径の液滴で狭いサイズ分布の霧をつくる。本明細書中で用いられる、「高温噴霧」という同義語は、熱的噴霧又は熱的噴霧化(thermonebulization)である。
【0076】
本明細書中で用いられる、「噴霧」は、空気力学的エネルギーを用いて、1μm〜50μmの範囲の超微細液滴の生成を指す。液体物質は、噴霧バレル(共鳴器)の末端で蒸発され、冷たい周囲空気と接触し凝縮し超微細エアロゾルを生成し、吐出することで、高密度の目に見える霧雲を形成する。
【0077】
本発明の実施形態における使用に記載されるオレンジ油溶液又はリモネン乳剤は、特に、この目的に好適である。噴霧方法は、最小量の農薬溶液で、より少ない操作作業で、環境に殆ど有害ではない(すなわち、残渣が少ない)、比較的広い空間の処置を可能にする。
【0078】
噴霧装置は、当業者にはよく知られる。例えば、噴霧では、パルスジェットエンジンを用いられることができる。前記パルスジェットエンジンは、長い排気管(共鳴器)に開くロケットエンジンに類似している、ボトルの形をした燃料室からなる。燃料と空気との最初の混合物は、逆止め弁を通して燃料室に供給され、数秒間、プラグに接続されたバッテリー駆動型電子点火装置から得られた高圧のスパークによって点火される。前記燃料は、標準グレードのガソリンであり、約2リットル/hが小さな機械において用いられる。一度機械が駆動すると、高圧のスパークは必要なく、自動的に停止される。燃料室からの排気ガスは、燃料室よりも小径の長いパイプを通して、高い速度で圧力波として出て行き、キャブレターから新たな燃料と空気のチェンジを取り込む。操作においては、1秒間当たり約80〜100回のパルス(pulsation)がある。逆止弁によって、農薬タンクも加圧され、0.2〜0.4barで加圧されることが好ましい。機械がウォームアップし始めると(一般的には約2分運転した後)、バルブタップが開けられ、互換性投与ノズルを通して、制御され且つ調節された溶液が流れ、共鳴器の末端に組み込まれることを可能にする。共鳴器の出口の近くで、小粒子に噴霧される化学薬品が、高温排気ガス流に注入される。その一部を気体化し、凝縮し、数十億もの超微細霧の液滴を形成する。パルスジェットエンジンは、機械的な駆動装置部品を有さないので、すり切れや引き裂きは起こりにくい。修理作業における節約を実現することができるので、対費用効果がある。
【0079】
好ましい実施形態においては、噴霧装置は、2つの異なる噴霧注入ポイントのある共鳴器で用いられる。それによって、リモネン及びCIPCなど、2つの異なる活性成分又は小さなサイズ及び大きなサイズの液滴の組合せを可能にする。
【0080】
他の好ましい実施形態においては、噴霧装置は、リモネン/CIPC及びキャリアとしての水を化学薬品タンク中で予混合するだけではなく、それらを装置の共鳴器に別々に注入し、小粒子に噴霧されるところで混合することを可能にする。水又はテルペン以外の溶媒を含まないリモネン乳剤は、特に、このタイプの装置で用いられるのに好適である。
水の分離添加を有するパルスジェット熱噴霧器(fogger)について、利点としては、蒸発させるのにより多くの熱量を必要とする水は、高い温度のポイントで共鳴器に注入され、高温の爆発ガスを所謂オープンシステムの水蒸気温度(=100℃)へと冷却する。リモネン組成物は、冷却ポイントで注入され、0.05秒間〜0.1秒間最初の排出温度の代わりに100℃の前冷却温度を吸収し、「ベンチュリー効果」の混合領域へともたされることによって30℃〜40℃の更に低い温度となる。所望の液滴のサイズは、注入された水の調節可能な流速によって制御される。必要であれば、より大きく、重い液滴のサイズを生成することができる。したがって、前記技術は、LV及びULVシステムと比較して、一種の低温の霧の適用システムを提供する。他の利点としては、生成された水の蒸気が共鳴器の排気管を洗浄し、パイプの末端における噴霧溶液の残渣を回避する。更なる利点としては、水の注入によって、どのような場合でも、油系農薬の霧が点火することを防止し、機械が不適切に用いられたときに、火事の危険を非常に少なくし、低減する。たとえユーザーが機械の使用を止め、フォグタップ(fog tap)を閉め忘れたとしても、水の注入によって、農薬配合物の点火を防止するであろう。
【0081】
好ましい実施形態においては、リモネン含有組成物の適用は、噴霧によって行われる。これは、低温噴霧又は高温噴霧であることができる。リモネンの適用は、電気による噴霧など、高温噴霧によって行われることが好ましい。
【0082】
他の好ましい実施形態においては、リモネン及びCIPCのいずれも含む組成物の適用は、噴霧によって適用される。
【0083】
他の実施形態においては、リモネン含有組成物及び/又はCIPC含有組成物の適用は、スプレー、湿潤、液浸、ミスト、ドレンチング(drenching)、シャワー、浸漬、湿し(dampening)、ドリズリング(drizzling)、ダウジング(dousing)、又は飛散(splashing)することによって行われる。
【0084】
好ましい実施形態においては、前記方法は、塊茎の保存中1回超繰り返され、好ましくは毎週〜8週間毎に、より好ましくは2週間毎〜6週間毎に、更により好ましくは3週間毎〜4週間毎に、最も好ましくは3週間毎に、前記方法は繰り返される。
【0085】
好ましい実施形態においては、最初に、前記方法を塊茎上に実施し、CIPCの質量に対するリモネンの質量の比は、好ましくは2〜50、より好ましくは4〜40、更により好ましくは15〜30、最も好ましくは24である。
【0086】
好ましい実施形態においては、前記方法を塊茎上に行った後2回目から、CIPCの質量に対するリモネンの質量の比は、好ましくは2〜50、より好ましくは4〜30、更により好ましくは6〜15、最も好ましくは8である。
【0087】
リモネンを用いた処置は、塊茎が市場に出される前に、最大で1日の間隔で実行されることができる。その揮発性によって、1日以内で揮発する。ジャガイモの値段は、保存の時期を通して代わり、予測も難しい。大量のCIPCで処置されると、市場に出すことができず、ジャガイモの価格が急激に高くなる。これは、CIPCの残渣レベルが高すぎるという事実が原因である。少用量のCIPCの後、リモネンの処置を頻繁に行うことは、CIPC残渣レベルが最大残渣レベル(MRL)より低くなった時点で、保存シーズン間のいつでも市場に出せることを確実にする。このように、市場の要求に対するより良好な対応及びより高い市場価値を得ることができる。
【0088】
好ましい実施形態においては、処置される塊茎は、ジャガイモである。
【0089】
好ましい実施形態においては、前記方法は、貯蔵室で行われる。前記貯蔵室は、環境を制御する方法で、塊茎を保存するように設計されることが好ましく、好ましくは塊茎のみを収容する。
【0090】
好ましい実施形態においては、リモネン含有組成物の適用は、CIPC含有組成物の適用後に行われる。CIPCは、芽の形成を遅くさせる休眠状態を誘発する。CIPCは、抑制する抗出芽剤として働いている。形成された僅かな芽は、効果ある抗出芽剤として働くリモネンによって除去される。
【0091】
他の好ましい実施形態においては、CIPC含有組成物の適用は、リモネン含有組成物の適用後に行われる。リモネンは、効果のある抗出芽剤として働くので、存在する芽を除去する。その後、CIPCは、休眠状態を誘導し、CIPCが抑制の抗出芽剤として働くので、極めて少ない芽しか形成しない。
【0092】
好ましい実施形態においては、好ましくは0日間〜30日間の期間、より好ましくは7日間〜21日間の期間、最も好ましくは14日間の期間がCIPC含有組成物の適用とリモネン含有組成物の適用との間である。このタイミングの適用は、リモネンが適用されるとき芽は非常に小さいため、最も効果的な結果をもたらす。
【0093】
他の好ましい実施形態においては、CIPC及びリモネンの適用は、同時で、好ましくは同じ機械を用いて行われる。
【0094】
本発明の実施形態に係る方法は、これまでに用いられたCIPCの量を少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは30%、更により好ましくは40%、最も好ましくは50%カットすることを可能にする。このことによって、塊茎又はジャガイモ上のCIPCの残渣を少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは30%、更により好ましくは40%、最も好ましくは50%低減することもできる。
本発明は、実施例を示し、より詳細に記載されるが、これらに限定されない。
【0095】
実施例1:噴霧で利用するためのリモネン組成物の調製
塊茎の抗出芽処置のための低温噴霧における使用に好適な組成物は、下記の通り調製されることができる。オレンジ油、食品グレードを出発材料として選択した。このD−リモネンリッチなテルペン油に、界面活性剤、具体的には非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤を添加した。リモネン抗酸化剤を添加することは、利点があった。表1で下記に示される組成物において、ブチル化ヒドロキシトルエンが選択された。オレンジ油の他に、溶媒は必要ではない。
表1:600ECオレンジ油組成物、製品コード BCP425D
【表1】
【0096】
実施例2
ジャガイモ保存施設の設計研究
保存システムを設計し、大型の商業的な保存施設を縮小型に複製した。1段当たり4個の箱のための場所を有する、4つの試験キャビンからなった。全部で7つの段があり、箱は、時計回りに階段状に置かれた。各キャビンを用いて、キャビン当たり560kgまでのジャガイモを保存することができた。キャビンの寸法は、
図1に図示される。
【0097】
保存中、前記保存システム内における気温は、5.0℃〜9.5℃に維持した。相対湿度は、87%〜100%に維持した。
【0098】
高温噴霧に用いられた適用装置は、IGEBA TF−35であった。低温噴霧に用いられた適用装置は、VEUGEN、タイプ:FOGCOLであった。操作圧力は、3.3barであった。低温噴霧及び高温噴霧条件は、局所(local)の保存プラクティスで得られるものと同じであった。
【0099】
噴霧による処置
560kgのジャガイモが入ったキャビンを冷却された保存施設に収容した。品種ビンチェのジャガイモを用いた。ジャガイモは、直接試験フィールドから取りこまれた。それらを収穫した後、特別な等級分けを行わなかった。塊茎の質は良好で、特殊なものは報告されなかった。10月8日に収穫した。2週間後、約20kgから青い箱に置いた。4つの試験キャビン(1段当たり4箱)に置かれた。各箱は、下記のとおり、様々な対象を含んだ。
−対象1:ビンチェ非処置
−対象2:ビンチェCIPC(Neonet開始 30ml/トン)(CIPC 300 EC)
−対象3:イノベーター非処置
−対象4:Himalaya 5kgのイノベーター(1ヘクタール当たり5kgのマレイン酸ヒドラジド 600SG(葉の適用)
全部で、各キャビンに560kgのジャガイモがあった。
【0100】
−処置前約15分間、自動調節をオフにし、手動の内部換気をオンにした(フォースIII)。それによって、留まる空気循環をかきまわす。注記:換気フォースIIIは、約900m
3/hを意味する。
−セル中の塊茎の正確な重量が分かるので、配合された製品の正確な量を、算出し、調製した。
−スプレー/噴霧の間及びスプレー後約15分間まで、内部換気のスイッチをオンにしたままにし(フォースIII)、製品と塊茎との間の良好な接触を確実にした。
−スプレー後約15分、内部換気のスイッチをオフにした。
−(スプレーの終わった後最小12時間)の後の日に、次の適用まで又は試験の終わりまで、自動調節のスイッチをオンにした。
【0101】
キャビンの噴霧は、ドアの頂部における小径穴によって行われた。霧は、キャビンの外側で生成され、中に入れられた。キャビンに噴霧した後、8℃で冷蔵庫に戻した。
【0102】
キャビンの背面には、キャビン中の空気循環を提供する小さなファンを有する管があった。キャビン中の空気循環は、底部から頂部へと流れた。処置後24時間、空気循環を遮断した。
【0103】
処置間で、噴霧ノズルを温水で洗浄し、すすいだ。それをセットアップし、温水でスプレーし、清潔にした。
【0104】
キャビンからの第1の噴霧適用(A)を、収穫後2週間である10月22日に行った。そのときから、翌年5月の第2の見積もり(評価(quotation))及び最後の見積もりまで3週間の間隔であった。
【0105】
下記表2に示された条件にしたがって、各キャビンを処置した。
表2:処置スケジュール
【表2】
【0106】
評価
対象の評価を2回行った。表3に示されるPCA−スケールに準拠し、第1の評価を3月8日に行った。キャビンの4番目の段(キャビンの中央)で得られた全体的な数であった。結果を表2にまとめる。
表3:評価スケール
【表3】
【0107】
第2の評価を5月の中旬に行った。結果は、写真で提供される(
図3〜図
6)。
【0108】
様々な観察の間、塊茎において植物毒性の症状は、認められなかった。
【0109】
結果−最初の評価 2013.03.08
図2は、保存前に処置されなかった品種ビンチェからのジャガイモ(黒色)及び保存に入る前に、ジャガイモ1トン当たり30mlのCIPCで処置されたジャガイモ(灰色)についての芽の指標の図式的表示を提供する。4つの処置キャビンについての結果が示される。第1のキャビンは、保存中処置されなかった。第2のキャビンは、3週間毎にNeonet 500HN配合物中のCIPCを用いて、高温噴霧を介し、ジャガイモ1トン当たり7.5mlのCIPCの用量率で、処置した。第3のキャビンは、リモネン組成物を用いて、初回用量率(ジャガイモ1トン当たり90mlのリモネン)で処置し、前記用量以降の第2の処置からジャガイモ1トン当たり30mlのリモネンであった。第4のキャビンは、ジャガイモ1トン当たり90mlのリモネンの初回用量率で、リモネン組成物で処置し、前記用量以降の第2の処置から、用量率は、ジャガイモ1トン当たり30mlのリモネンであり、第4のキャビンでは、各処置は、ジャガイモ1トン当たり3.75mlのCIPCの用量率で、Neonet 500HN配合物を用いたCIPCの適用と組み合わせた。
【0110】
結果から、CIPCとリモネンとの組合せは、後続する処置のためのCIPCの用量の低減を可能にする。
【0111】
Neonetは、CIPC配合物であり、CIPCを用いた3週間毎のジャガイモの処置は、芽の成長を低減したが、保存に入る前にCIPCで処置されたジャガイモと比べて追加の効果はない。BCP425Dは、オレンジ油、すなわちリモネンを意味する。90mlの初回用量率の後、30mlの用量におけるリモネンは、芽の成長についての効果を示さなかった。Neonetの形態における3.75mlのCIPCを用いた処置との組合せたリモネンの同じ用量率は、CIPCの半分の量を用いた芽の形成の抑制に対して効果的であり、CIPC単独の使用よりも同じか良好な結果を得ることが証明された。
結果−第2の評価 2013.05−5月中旬
【0112】
図
3は、第1のキャビンのジャガイモの4番目の段を示す。このキャビンは、コントロールであり、保存開始後、活性剤を適用しなかった。「Inno NT」は、保存前に任意の活性剤で処置されていない、品種イノベーターからのジャガイモを表す。「Bintje NT」は、保存前に任意の活性剤で処置されていない、品種ビンチェからのジャガイモを表す。「Inno HYM」は、5kg/ヘクタールの用量率で、Hymalayaマレイン酸ヒドラジドの配合物で処置された品種イノベーターからのジャガイモを意味する。「Bintje CIPC」は、保存に入る前に1トン当たり30mlのCIPCで処置された品種ビンチェからのジャガイモを意味する。
【0113】
図
4は、第2のキャビン中のジャガイモの4番目の段を示す。このキャビンに、Neonet 500HN配合物において、7.5ml/トンの用量率でCIPCを添加した。これを3週間毎に繰り返した。
【0114】
図
5は、第3のキャビン中のジャガイモの4番目の段を示す。このキャビンに90ml/トンの初回用量率で、その後30ml/トンの用量率でリモネンを添加した。このキャビンに、リモネンを3週間毎に添加した。
【0115】
図
6は、第4のキャビン中のジャガイモの4番目の段を示す。このキャビンに、90ml/トンの初回用量率、その後30ml/トンの用量率でリモネンを添加した。どのリモネン処置も3.75ml/トンの用量率でNeonet配合物中のCIPCの適用と組み合わせた。このキャビンに、リモネンを3週間毎に添加した。
【0116】
結果―内部の芽
各観察日に、内部の芽も評価した。処置のいずれにおいても、典型的な芽の存在は、検知されなかった。
実施例3
【0117】
スペアミント油処置とオレンジ油処置との間の比較を行った。スペアミント油処置は、主にカルボン(65%〜85%)をベースとし、電気による噴霧のために配合させた製品であるBiox Mを用いた。オレンジ油処置は、リモネン(少なくとも900gのリモネン/リットル)の含量を増加させたオレンジ油であるBIO024を用いた。処置の1つのグループとしては、低温噴霧(グループA)であり、他のグループとしては、高温噴霧、詳細には電気による噴霧によるものであった。非処置試験も同様に含まれた。処置条件(保存温度、換気、湿度、用いられた品種、荷積み/荷降ろし/散布)は、同じであった。ジャガイモは、2014年9月23日に収穫し、2014年9月30日に実験用の保存室に積んだ。ジャガイモを乾燥し、その後7℃まで冷却した。最初の適用は、2014年10月21日に行われた。
【0118】
保存の種々な時間間隔(
図7A:保存後5ヶ月、
図7B:保存後6ヶ月、
図7C:保存後7ヶ月)における結果を
図7にまとめる。9つのオレンジ油処置によって、1トン当たり675ml〜1,350mlの配合された製品を使用した(9×75ml〜9×150mlの配合された製品)。Biox−Mに関しては、最初の適用が90mlで、その後30mlの適用を9回行い、合計が310ml/トンとなった。
【0119】
結果から、オレンジ油処置が最も良好な芽の生長制御を提供したことを結論づけた。直接接触することで、オレンジ油は働く。ジャガイモの表面を覆った良好な広がりは、均一な制御を提供するために必要とされる。図面から、低温噴霧によるものよりも高温噴霧によって得られたものが良好であるということが分かる。これは、高温噴霧が生成する液滴が小さいため、製品の広がりが良好になるためである。用量を反映する明確な関係が、75mlと100mlとの間にあるが、100mlと150mlとの間にはない。3週間の間隔でジャガイモ1トン当たり100mlの配合された製品の用量は、最も良好な制御を提供した。効能は、効いている効果に基づいていると考えられる。
【0120】
結論として、オレンジ油/リモネン処置は、長期期間に亘り、マレイン酸ヒドラジド又はCIPCなどの従来の化学的な処置がなくても十分な芽の制御を提供したことが実証される。スペアミント油系のBiox−Mと比較して、良好な芽の制御を提供した。更に、フライの製造においても、加工されたジャガイモにミント味が残らない。
【0121】
実施例4
高温噴霧によるジャガイモの品種(ビンチェ、シャーロット、及びニコラ)上のBIO024(940g/lのオレンジ油)の適用における幾つかのタイミングでの評価を行った。結果を
図8にまとめる。
【0122】
参考として、非処置試験及びCIPC 500HN(500g/lのクロルプロファム)を用いた処置も含まれる。処置は、活性物質の全用量が同じである。適用当たりの用量率は、用いられた適用の頻度に準拠して適用される。繰り返しは4回行われた。ユニットあたりの気温は、8.3℃〜10.4℃であり、相対湿度は、試験の開始で90%であり、試験中は99%であった。
【0123】
第1の試験では、CIPCのみに基づく処置スケジュールを用いた。2014年11月5日に12グラムの活性成分を適用し、その後2014年12月31日に8gの活性成分を適用し、2015年2月25日に8gの活性成分を適用し、2015年4月22日に8gの活性成分を適用した。全部で、4つの処置によって、1年当たり、ジャガイモ1トン当たり36gの最大許容量が適用された。
【0124】
第2の試験では、12gの活性成分に相当する24mlのCIPCが配合された製品を保存時に適用した。保存後9週間で、90gのリモネンに相当する100mlのBIO024を適用した。この後に、3週間毎に100mlのBIO024の処置を行った。これは、全部で6回の処置に相当した。第3の試験では、24mlのCIPCが配合された製品を保存時に適用した。保存後3週間に100mlのBIO024を適用し、その後3週間毎に100mlのBIO024の処置を行った。これは、全部で8回の処置に相当した。
【0125】
第4の試験では、5週間毎に、全部で6回の処置で、166mlのBIO024を適用した。第5の試験では、4週間毎に133mlのBIO024を適用し、7回の処置に相当した。第6の試験では、3週間毎に100mlのBIO024を適用し、9回の処置に相当した。第7の試験では、2週間毎に、全部で14回の処置で66mlを適用した。第8の試験では、毎週、全部で27回の処置で33mlのBIO024を適用した。第9の試験では、処置は行われなかった。
【0126】
結果から、製品を単独で用いると、3週間毎における100mlのBIO024(又は90gのリモネン)の投与計画(投与量 regime)は、最も良好な芽の制御を提供することが分かる。より少ない単一の用量且つ短い適用頻度(例えば、毎週33mlのBIO024)を用いて、又は高い単一の用量及び長い適用頻度(例えば、4週間毎に133mlのBIO024)を用いた同じ量の活性成分の運用は、単独で用いた製品の効能を低下させる。
【0127】
100mlの処置における、減少させた用量(12gの活性成分)におけるCIPCとオレンジ油(活性成分のリモネン)との組合せは、今回使われているCIPC適用スキーム(12gの用量の後、8gを3回適用、ジャガイモ1トン当たり36gの活性成分の合計量を提供する)と比較して、同様の制御を提供した。揮発性があり、且つ浸透性(systemic)作用がないことで、リモネンは、残渣として発見されない。このスキームで、芽の制御の効能を維持しつつ、CIPCの量を減らすことができる。保存時に(保存開始時に)CIPCを使用すると、CIPCの適用と、保存からジャガイモを取り出す間の期間を、CIPCの残渣が青果物市場区分に許容できるレベルへ減少させるのに十分な長さとなる。