(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799534
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
A61G 13/00 20060101AFI20201207BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20201207BHJP
【FI】
A61G13/00 Z
A61B34/30
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-525684(P2017-525684)
(86)(22)【出願日】2015年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2015003251
(87)【国際公開番号】WO2017002142
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2018年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康彦
【審査官】
小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−213892(JP,A)
【文献】
特表2012−501866(JP,A)
【文献】
特開2015−085406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/00
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が載せられる少なくとも1つの支持体と、
複数の自由度を持つ複数の多関節アーム、および前記複数の多関節アームが設けられた少なくとも1つの土台、を含むロボットと、
前記複数の多関節アームに取り付けられ、体位変更、透過検査、上体起こし及び起立補助のうちのいずれかを行うための少なくとも一種類の機器と、を備え、
前記ロボットは、前記少なくとも一種類の機器を動かすことにより、前記人に対して、体位変更、透過検査、上体起こし及び起立補助のうちの、少なくとも2つの介護・医療関連行為を行い、
前記少なくとも1つの支持体は、長手方向に複数に分割され、長手方向に分割された前記支持体のうちの少なくとも一部が長手方向に直交する幅方向に揺動可能な変形ベッドであり、
前記変形ベッドには、前記変形ベッドの変形を操作するための操作機構が設けられ、
前記少なくとも一種類の機器は、前記操作機構を操作することにより前記変形ベッドの変形を操作するハンドを含み、
前記少なくとも2つの介護・医療関連行為は、前記変形ベッドを介した、前記変形ベッドと人との接触位置を変更する体位変更を含み、
前記体位変更が行われる際には、前記ハンドがクッションを掴み、前記クッションを用いて前記変形ベッドと人との接触位置が変更される、ロボットシステム。
【請求項2】
前記少なくとも一種類の機器は、前記複数の多関節アームのうちの2つの多関節アームにそれぞれ取り付けられる一対の透過検査装置を含み、
前記少なくとも2つの介護・医療関連行為は、人の透過検査を含む、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの支持体は、ベッド状態とイス状態との間で変形可能な変形ベッドを含み、
前記変形ベッドには、前記変形ベッドの変形を操作する操作機構が設けられ、
前記少なくとも一種類の機器は、前記操作機構を操作することにより前記変形ベッドの変形を操作するハンドを含み、
前記少なくとも2つの介護・医療関連行為は、前記変形ベッドを介した、人が横たわった状態から座った状態へ変更する上体起こしを含む、請求項1または2のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記複数の多関節アームの少なくとも1つに装着され、起立補助に用いられ、人が起立する際に人の腕を支持して人の起立を補助する腕置き台をさらに備え、
前記少なくとも2つの介護・医療関連行為は、人が座った状態から立ち上がるまで前記腕置き台で人を支える起立補助を含む、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記少なくとも一種類の機器は、複数種類の機器を含み、前記複数の多関節アームに着脱可能に取り付けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの支持体は、前記少なくとも1つの土台に連結されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの土台は、当該少なくとも1つの土台の全体が前記支持体の下方のスペース内に収まるように前記支持体の下方に配置されている、請求項1〜6のいずれか一 項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの支持体の下方に、複数の多関節アームを格納することが可能なスペースが形成され、
前記ロボットは、前記少なくとも1つの支持体の下方の前記スペースに前記複数の多関節アームを格納できるように構成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ロボットは、音声またはスイッチ操作に基づいて、前記少なくとも2つの介護・医療関連行為を行うように構成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記ロボットは、床ずれの生じないような所定のインターバルで前記体位変更を繰り返すように構成されている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項11】
前記土台に組み込まれた、左右の車輪を駆動する一対のサーボモータを含む移動装置をさらに備え、
前記ロボットは、前記一対のサーボモータがロボット制御盤により制御されることにより移動される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護・医療関連行為用のロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人に対して介護・医療関連行為を行うロボットが種々提案されている。例えば、特許文献1の
図19には、ベッドに横たわった人を持ち上げる介護用の双腕型ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/147832号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、介護・医療関連行為を行う従前のロボットは、特定の介護・医療関連行為に専用に設計されている。そのため、複数の介護・医療関連行為を行うには、その介護・医療関連行為と同数のロボットが必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、1つのロボットにより複数の介護・医療関連行為を行うことができるロボットを含むロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のロボットシステムは、人が載せられる少なくとも1つの支持体と、複数の自由度を持つ複数の多関節アーム、および前記複数の多関節アームが設けられた少なくとも1つの土台、を含むロボットと、前記複数の多関節アームに取り付けられる少なくとも一種類の機器と、を備え、前記ロボットは、前記少なくとも一種類の機器を動かすことにより、前記人に対して少なくとも2つの介護・医療関連行為を行う、ことを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、ロボットを複数の介護・医療関連行為のプラットホームとして使用することができるため、1つのロボットにより複数の介護・医療関連行為を行うことができる。
【0008】
前記少なくとも一種類の機器は、前記複数の多関節アームのうちの2つの多関節アームにそれぞれ取り付けられる一対の透過検査装置を含み、前記少なくとも2つの介護・医療関連行為は、人の透過検査を含んでもよい。この構成によれば、ロボットを人の透過検査と他の介護・医療関連行為とに共通に使用することができる。
【0009】
前記少なくとも1つの支持体は、部分的に幅方向に揺動可能な変形ベッドを含み、前記少なくとも一種類の機器は、前記変形ベッドを操作するハンドを含み、前記少なくとも2つの介護・医療関連行為は、前記変形ベッドを介した、前記変形ベッドと人との接触位置を変更する体位変更を含んでもよい。この構成によれば、ロボットを体位変更と他の介護・医療関連行為とに共通に使用することができる。
【0010】
前記少なくとも1つの支持体は、ベッド状態とイス状態との間で変形可能な変形ベッドを含み、前記少なくとも一種類の機器は、前記変形ベッドを操作するハンドを含み、前記少なくとも2つの介護・医療関連行為は、前記変形ベッドを介した、人が横たわった状態から座った状態へ変更する上体起こしを含んでもよい。この構成によれば、ロボットを上体起こしと他の介護・医療関連行為とに共通に使用することができる。
【0011】
上記のロボットシステムは、前記複数の多関節アームの少なくとも1つに装着される腕置き台をさらに備え、前記少なくとも2つの介護・医療関連行為は、人が座った状態から立ち上がるまで前記腕置き台で人を支える起立補助を含んでもよい。この構成によれば、ロボットを少なくとも上体起こしと起立補助とに共通に使用することができる。
【0012】
例えば、前記少なくとも一種類の機器は、複数種類の機器を含み、前記複数の多関節アームに着脱可能に取り付けられてもよい。
【0013】
前記少なくとも1つの支持体は、前記少なくとも1つの土台に連結されていてもよい。この構成によれば、支持体とロボットの土台との相対位置が固定されるため、多関節アームに取り付けられた機器の人または支持体に対する位置決めが容易となる。
【0014】
前記少なくとも1つの土台は、当該少なくとも1つの土台の全体が前記支持体の占有スペース内に収まるように前記支持体の下方に配置されていてもよい。この構成によれば、比較的に大きなロボットの土台が支持体の下方に隠されるため、支持体に載せられた人に、それ以外の人が支持体の周囲から自由に近寄ることができる。それ故に、支持体に載せられた人に対する処置を容易に行うことができる。
【0015】
前記ロボットは、前記少なくとも1つの支持体の下方に前記複数の多関節アームを格納できるように構成されていてもよい。この構成によれば、ロボットが介護・医療関連行為を行わないときは、多関節アームを支持体の下方に格納して、ロボットを支持体の下方に収容することができる。
【0016】
例えば、前記ロボットは、音声またはスイッチ操作に基づいて、前記少なくとも2つの介護・医療関連行為を行うように構成されていてもよい。また、前記ロボットは、所定のインターバルで前記体位変更を繰り返すように構成されていてもよい。
【0017】
上記のロボットシステムは、前記土台に組み込まれた、左右の車輪を駆動する一対のサーボモータを含む移動装置をさらに備え、前記ロボットは、前記一対のサーボモータがロボット制御盤により制御されることにより移動されていてもよい。この構成によれば、ロボットを自由に自走させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、1つのロボットにより複数の介護・医療関連行為を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るロボットシステムにおけるロボットの斜視図である。
【
図2】前記ロボットシステムの斜視図であり、体位変更を行う場合の一工程を示す。
【
図3】前記ロボットシステムの斜視図であり、体位変更を行う場合の一工程を示す。
【
図4】前記ロボットシステムの斜視図であり、体位変更を行う場合の一工程を示す。
【
図5】前記ロボットシステムの斜視図であり、体位変更を行う場合の一工程を示す。
【
図6】前記ロボットシステムの斜視図であり、体位変更を行う場合の一工程を示す。
【
図7】前記ロボットシステムの斜視図であり、透過検査を行う場合の一工程を示す。
【
図8】前記ロボットシステムの斜視図であり、上体起こしを行う場合の一工程を示す。
【
図9】前記ロボットシステムの斜視図であり、上体起こしを行う場合の一工程を示す。
【
図10】前記ロボットシステムの斜視図であり、上体起こしを行う場合の一工程を示す。
【
図11】前記ロボットシステムの斜視図であり、起立補助を行う場合の一工程を示す。
【
図12】前記ロボットシステムの斜視図であり、起立補助を行う場合の一工程を示す。
【
図13】前記ロボットシステムの斜視図であり、起立補助を行う場合の一工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2〜
図13に、本発明の一実施形態に係るロボットシステム1を示し、
図1に、そのロボットシステム1に含まれるロボット3を示す。本実施形態では、ロボット3が、人10に対して4つの介護・医療関連行為を行う。人10は、介護・医療関連行為ごとに異なっていてもよい。
【0021】
1つ目の介護・医療関連行為は、
図2〜
図6に示す体位変更である。例えば、体位変更は、床ずれ防止などを目的に、手術中に行われてもよいし、介護中に行われてもよい。2つ目の介護・医療関連行為は、
図7に示す透過検査である。3つ目の介護・医療関連行為は、
図8〜
図10に示す上体起こしである。4つ目の介護・医療関連行為は、
図11〜
図13に示す起立補助である。
【0022】
ロボットシステム1は、ロボット3と、
図2〜
図13に示す人10が載せられる3つの支持体2を含む。3つの支持体2は、
図2〜
図6に示す変形ベッド2Aと、
図7に示す固定ベッド2Bと、
図8〜
図13に示す変形ベッド2Cである。
【0023】
ロボット3は、
図1に示すように、複数の自由度を持つ複数の多関節アーム5と、多関節アーム5が設けられた少なくとも1つの土台4を含む。各多関節アーム5の自由度は、6自由度以上(例えば、7自由度)であることが好ましい。本実施形態では、土台4の数が1つ、多関節アーム5の数が2つである。ただし、土台4の数は2つ以上であってもよいし、多関節アーム5の数は3つ以上であってもよい。
【0024】
本実施形態では、4つの介護・医療関連行為のいずれにおいても、土台4の全体が支持体2の占有スペース内に収まるように支持体2の下方に配置される。これにより、比較的に大きなロボット3の土台4が支持体2の下方に隠されるため、支持体2に載せられた人10に、それ以外の人が支持体2の周囲から自由に近寄ることができる。それ故に、支持体2に載せられた人10に対する処置(例えば、手術や介護)を容易に行うことができる。なお、ロボット3は、音声またはスイッチ操作に基づいて、4つの介護・医療関連行為を行うように構成されていてもよい。
【0025】
さらに、本実施形態では、ロボット3が、4つの介護・医療関連行為のいずれにおいても、支持体2の下方に2つの多関節アーム5を格納できるように構成されている。このため、ロボット3が介護・医療関連行為を行わないときは、多関節アーム5を支持体2の下方に格納して、ロボット3を支持体2の下方に収容することができる。
【0026】
2つの多関節アーム5には、介護・医療関連行為に応じた複数種類(本実施形態では二種類)の機器6が着脱可能に取り付けられる。ロボット3は、これらの機器6を多関節アーム5により動かすことにより、上述した4つの介護・医療関連行為を行う。図示は省略するが、ロボット3には、カメラやセンサなどの情報取得装置が装着されており、この情報取得装置で得られた情報に基づいて土台4に内蔵されるロボット制御盤41(
図14参照)により多関節アーム5が制御される。
【0027】
二種類の機器6は、体位変更および上体起こしに用いられる一対のハンド61と、透過検査に用いられる一対の透過検査装置62である。一対のハンド61は、2つの多関節アーム5の先端にそれぞれ取り付けられ、一対の透過検査装置62は、ハンド61に代えて、2つの多関節アーム5の先端にそれぞれ取り付けられる。
【0028】
本実施形態では、3つの支持体2(変形ベッド2A,2Cおよび固定ベッド2B)のいずれもが土台4に連結されている。従って、支持体2とロボット3の土台4との相対位置が固定されるため、多関節アーム5に取り付けられた機器6の人10または支持体2に対する位置決めが容易となる。ただし、各支持体2は、必ずしも土台4に連結される必要はなく、3つの支持体2のうちのいくつかまたは全てが、ロボット3が載置されるフロアに立設された支柱により支持されていてもよい。
【0029】
ロボット3の土台4は、移動可能であることが望ましい。例えば、土台4には、
図14に示すような移動装置9が組み込まれてもよい。この移動装置9は、駆動用の左右の車輪92と、従動用の前方の車輪93を含む。また、移動装置9は、左右の車輪92を駆動する一対のサーボモータ91を含む。そして、ロボット3は、一対のサーボモータ91がロボット制御盤41により制御されることにより移動される。このような構成であれば、ロボット3を自由に自走させることができる。ただし、ロボット3の土台4は、ロボット3が載置されるフロアに設けられた移送機構により移送されてもよい。
【0030】
以下、上述した各介護・医療関連行為(体位変更、透過検査、上体起こし、起立補助)について詳細に説明する。
【0031】
(体位変更)
図2〜
図6に示すように、体位変更では、支持体2として、部分的に幅方向に揺動可能な変形ベッド2Aが用いられる。また、体位変更では、双方の多関節アーム5にハンド61が取り付けられる。ロボット3は、ハンド61により変形ベッド2Aを操作することにより、変形ベッド2Aを介した、変形ベッド2Aと人10との接触位置を変更する体位変更を行う。
【0032】
上述したように、変形ベッド2Aは、土台4と連結されている。本実施形態では、変形ベッド2Aが、当該変形ベッド2Aのほぼ中央に配置された後述する第1揺動機構23を介して土台4に連結されており、変形ベッド2Aが土台4に支持されている。ただし、上述したように変形ベッド2Aは土台4から切り離されていてもよい。
【0033】
変形ベッド2Aは、長手方向に複数(図例では4つ)のピース21に分割されている。各ピース21の幅方向の両端部には、柵22が設けられている。4つのピース21は、隣り合うもの同士が変形ベッド2Aの長手方向に延びる軸回りに相対的に回転できるように構成されている。
【0034】
また、本実施形態では、変形ベッド2Aが、全体も幅方向に揺動可能に構成されている。変形ベッド2Aは、変形ベッド2Aの全体を幅方向に揺動させる第1揺動機構23(
図4参照)と、各ピース21を幅方向に揺動させる第2揺動機構24(
図5参照)を含む。
【0035】
さらに、本実施形態では、体位変更で、人10に対する一対の丸太状のクッション7が用いられる。例えば、各クッション7は、水や空気などの作動流体が供給されることにより所定の形状に膨らみ、作動流体が排出されることにより小さく縮むように構成されていてもよい。そして、クッション7は、ロボット3が介護・医療関連行為を行わないときは、小さく縮んだ状態で多関節アーム5と共に変形ベッド2Aの下方に格納されてもよい。
【0036】
ロボット3は、まず、双方のハンド61によりクッション7を掴み、
図3に示すように、一方のクッション7を人10と柵22との間に挿入する。ついで、
図4に示すように、ロボット3は、一方のハンド61で第1揺動機構23を操作して変形ベッド2Aの全体を挿入されたクッション7側に傾けた後、
図5に示すように、そのハンド61で第2揺動機構24を操作して末端(人10の頭側)のピース21を水平に戻すように傾ける。その後、ロボット3は、
図6に示すように、末端のピース21と人10との間に形成された空間に、他方のハンド61でクッション7を挿入する。
【0037】
なお、
図2〜
図6に示す体位変更は一例であり、その他の方法によって体位変更を行うことが可能であることは言うまでもない。この点は、後述する透過検査、上体起こしおよび起立補助でも同様である。また、ロボット3は、所定のインターバルで体位変更を繰り返すように構成されていてもよい。
【0038】
(透過検査)
図7に示すように、透過検査では、支持体2として、固定ベッド2Bが用いられる。また、透過検査では、双方の多関節アーム5に透過検査装置62が取り付けられる。例えば、一方の透過検査装置62がX線を出射し、他方の透過検査装置62がそのX線を受信する。ロボット3は、一対の透過検査装置62を、例えば人10の頭を中心とする球状軌道に沿って動かすことにより、透過検査を行う。
【0039】
上述したように、固定ベッド2Bは、土台4と連結されている。本実施形態では、固定ベッド2Bが、当該固定ベッド2Bのほぼ中央で土台4に連結されており、土台4に支持されている。ただし、上述したように固定ベッド2Bは土台4から切り離されていてもよい。
【0040】
(上体起こし)
図8〜
図10に示すように、上体起こしでは、支持体2として、ベッド状態とイス状態との間で変形可能な変形ベッド2Cが用いられる。また、体位変更では、双方の多関節アーム5にハンド61が取り付けられる。ロボット3は、ハンド61により変形ベッド2Cを操作することにより、変形ベッド2Cを介した、人10が横たわった状態から座った状態へ変更する上体起こしを行う。変形ベッド2Cの両側には、後述する起立補助で使用される腕置き台8が配置されている。
【0041】
上述したように、変形ベッド2Cは、土台4と連結されている。本実施形態では、変形ベッド2Cが、当該変形ベッド2Cのほぼ中央に配置された後述する第1起伏機構25を介して土台4に連結されており、変形ベッド2Cが土台4に支持されている。ただし、上述したように変形ベッド2Cは土台4から切り離されていてもよい。
【0042】
変形ベッド2Cは、長手方向に複数(図例では4つ)のピース21に分割されている。各ピース21の幅方向の両端部には、柵22が設けられている。4つのピース21は、隣り合うもの同士が変形ベッド2Cの幅方向に延びる軸回りに相対的に回転できるように構成されている。変形ベッド2Cは、人10の頭側の2つのピース21を起伏させる第1起伏機構25(
図9参照)と、人10の足側の2つのピース21を起伏させる第2起伏構(図示せず)を含む。
【0043】
図8に示すベッド状態では、全てのピース21が水平である。ロボット3は、まず、
図9に示すように、一方のハンド61で第1起伏機構25を操作して頭側の2つのピース21を立ち上げる。ついで、
図10に示すように、他方のハンド61で第2起伏機構を操作して脚側の2つのピース21を垂れ下げる。
【0044】
(起立補助)
図11〜
図13に示すように、起立補助では、双方の多関節アーム5に腕置き台8が装着される。ただし、腕置き台8は、一方の多関節アーム5のみに装着されてもよい。ロボット3は、人10が座った状態から立ち上がるまで腕置き台8で人10を支える起立補助を行う。
【0045】
具体的に、ロボット3は、まず、
図11に示すように、ハンド61により各多関節アーム5の先端アームに腕置き台8を装着する。ついで、ロボット3は、
図12に示すように、双方の腕置き台8を人10の胸の前に移動する。その後、ロボット3は、人10が立ち上がるにつれて腕置き台8を開く。
【0046】
例えば、各腕置き台8は、上述したクッション7を利用して構成されてもよい。より詳しくは、作動流体により膨らんだり縮んだりするクッション7の内部を複数のセルに区切り、作動流体をそのうちの1つのセルに供給することによって、腕置き台8の形状が実現されてもよい。そして、腕置き台8は、ロボット3が介護・医療関連行為を行わないときは、小さく縮んだ状態で多関節アーム5と共に変形ベッド2Cの下方に格納されてもよい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のロボットシステム1では、ロボット3を複数の介護・医療関連行為のプラットホームとして使用することができるため、1つのロボット3により複数(本実施形態では4つ)の介護・医療関連行為を行うことができる。換言すれば、ロボット3を4つの介護・医療関連行為に共通に使用することができる。
【0048】
<変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0049】
例えば、ロボット3は少なくとも2つの医療行為を行えばよい。このため、ロボット3が行う介護・医療関連行為は、前記実施形態における4つのうちの2つまたは3つであってもよい。例えば、ロボット3が体位変更と上体起こしのみを行う場合は、ロボットシステム1は、機器6としてハンド61のみを有していてもよい。このように、ロボットシステム1は、少なくとも一種類の機器6を有していればよい。
【0050】
また、例えば、ロボット3が上体起こしと起立補助のみを行う場合は、ロボットシステム1は、支持体2として変形ベッド2Cのみを有していてもよい。このように、ロボットシステム1は、少なくとも1つの支持体2を有していればよい。
【0051】
あるいは、変形ベッド2Aの部分的に幅方向に揺動可能な機能と、変形ベッド2Cのベッド状態とイス状態との間で変形可能な機能を合わせ持った支持体2が用いられてもよい。
【0052】
また、ロボット3が行う介護・医療関連行為は前記実施形態で説明した介護・医療関連行為に限られない。例えば、その他の介護・医療関連行為としては、リハビリ、マッサージ、食事補助などが挙げられる。また、ロボット3の多関節アーム5には、介護・医療関連行為に応じて様々な種類の機器6が取り付け可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ロボットシステム
10 人
2 支持体
2A,2C 変形ベッド
3 ロボット
4 土台
41 ロボット制御盤
5 多関節アーム
6 機器
61 ハンド
62 透過検査装置
8 腕置き台
9 移動装置
91 サーボモータ
92,93 車輪