【課題を解決するための手段】
【0005】
そこでこの発明では、施設の周辺道路の混雑度を取得してこれを経路案内に反映し、目的地までの到着予想時間(アクセス実時間)を演算する。同時に、混雑が無いときの目的地までの到着予想時間(アクセス標準時間)を演算する。両者の差が、出発時に予想される渋滞時間である。
他方、目的地である施設にはそれぞれの魅力度があり、その魅力度は変化する。この明細書において、施設の魅力度とは、ユーザの属人的なパラメータではなく、ユーザの嗜好等から独立したものを指し、例えば施設内の混雑度やイベントの有無が該当する。施設内の混雑度が高いと魅力度は低下し、イベントが開催されているとその魅力度は高くなる。その他、気温、天候、時間、季節等も施設の魅力度を規定する要因となり得る。また、施設に応じて個別に、デフォルト値として、魅力度を付与することもできる。また、営業時間内や閉店時間までの残り時間なども魅力度のパラメータとなり得る。
施設の魅力度が大きければ、周辺道路の渋滞に伴い到着までに時間がかかろうとも、ユーザにとっては大したストレスとならない。つまり、魅力度の如何によって、我慢できる渋滞時間もかわるものである。
【0006】
この発明の案内装置は、ユーザがある施設を目的地として設定したとき、該施設の魅力度と当該施設に到達するまでに巻き込まれる渋滞時間とを考慮して案内を行うようにした。即ち、この発明の第1の局面は次のように規定される。
施設を保存する施設保存部と、
該保存された施設の魅力度を特定する魅力度設定部と、
所定の位置から前記施設へ到達するのに要するアクセス実時間を道路の混雑情報を参照して演算し、該所定の位置から該施設に到達するのに要するアクセス標準時間を道路の混雑情報を参照せずに演算し、前者と後者の時間差である渋滞時間を演算する渋滞時間演算部と、
前記特定された魅力度と前記演算された渋滞時間とに基づき、ユーザへのレコメンドを作成するレコメンド作成部と、
とを備える案内装置。
【0007】
このように規定された第1の局面の案内装置によれば、施設の魅力度と渋滞時間との両者に基づいてユーザへのレコメンドが作成される。他方、従来の技術では、施設の周辺道路の混雑度を特定しただけで、特に渋滞時間を演算することもなく、勿論、施設の魅力度は何ら考慮されずに、その対策としてユーザへレコメンド(渋滞道路の表示や代替目的地の提案等)が行われていた。
本発明のように、渋滞時間に加えて施設の魅力度を考慮してユーザへのレコメンドを作成すれば、そのレコメンドはよりユーザにとって有益なものとなる。
ここにレコメンドは、案内装置がユーザに提供する情報であって、ユーザの行動の指針またはヒントになりうる情報を指す。この発明では、レコメンドは周辺道路の混雑を示唆する内容を含むこととなる。例えば、施設までのアクセス実時間や渋滞時間に関する情報をこのレコメンドに含ませることが好ましい。レコメンドは画像上にテキスト若しくはシンボルの形で表示することができる。また、音声としての出力も可能である。
案内装置が施設検索機能(所定の種類(娯楽施設等)の施設を検索する機能)を有する場合、所定の範囲に存在する複数の施設に対して本発明の機能(魅力度と渋滞時間とを用いる評価)が発揮される。その結果にもとづき、施設を順位付けすることができる。この順位もレコメンドの1つとなりうる。
【0008】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、第1の局面の案内装置において、前記施設の魅力度は該施設の混雑度に基づき特定される。例えば娯楽施設が混雑しておれば、アトラクションの待ち時間が数時間に及ぶこともある。他方、周辺道路は何ら混雑していない場合もある。周辺道路の渋滞度のみに基づき当該施設を選択すると、やはりユーザがストレスを感じることを否めない。そこで、第2の局面で規定するように、当該施設を目的地として指定したとき、渋滞時間の演算はもとより施設の混雑度に基づいて(即ち、混雑度を魅力度として)、ユーザに対するレコメンドを作成する。
たとえば、周辺道路が渋滞して長い渋滞時間を要して(例えば1時間)がかかっても施設が混雑していなければ(例えば、アトラクションの待ち時間が5分)、当該施設への案内を強く勧めるレコメンドが作成される。他方、渋滞時間が殆どなくても、施設が混雑していれば(例えば、アトラクションの待ち時間が2時間)、当該施設の案内をする際に施設が混雑している旨をレコメンドする。
ここに、施設の混雑度の特定方法は特に限定されるものではないが、例えば、施設自体から発信される混雑情報(例えば、アトラクションの平均待ち時間)に基づきその混雑度を特定できる。また、施設周辺の駐車場の混雑度合いから施設自体の混雑度を予想可能である。駐車場の混雑度合いは車輌の行動履歴を指すプローブ情報を解析することで得られる。
【0009】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、第1又は第2の局面に記載の前記施設の魅力度が該施設のイベント情報によって修正される。
施設内でイベントが行われておれば、ユーザにとって多少の混雑は気にならなくなる。そこで、施設から提供されるイベントの情報に基づいて、当該イベントが開催される間は、施設の魅力度を高くする。なお、施設の魅力度が混雑度で修正されているときは、この混雑度をイベントの有無で補正し、もって魅力度を修正することができる。混雑度を示すパラメータをイベントの有無若しくはイベントの種類に応じて補正してこれを小さくする。イベントが開催されている間は、混雑がなかったもの(混雑度=0)とすることもできる。
第3の局面で説明したようにイベント情報に基づき魅力度を変化させたとき、ユーザへのレコメンドに当該イベント情報が反映されるものとする(第4の局面)。これにより、ユーザにより有用なレコメンドを行える。
【0010】
この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、第1の局面に記載の案内装置において、前記施設の魅力度が第1の閾値以下のときに前記渋滞時間演算部が前記渋滞時間を演算する。
このように規定された第5の局面の案内装置によれば、施設の魅力度の如何によって、渋滞時間が演算されたり演算されなかったりする。例えば、施設が全く混雑しておらずその魅力度が大のとき(魅力度>第1の閾値)、周辺道路の渋滞はユーザにとってのストレスとならない。そこで、魅力度が第1の閾値以下のときのみ渋滞時間演算部をオンにしてレコメンドの作成を可能な状態とし、他方、魅了度が第1の閾値を超えたときには渋滞時間演算部をオフとし、汎用的な案内を行う。これにより、案内装置に要求される負担が軽くなる。
【0011】
また、前記施設の魅力度が第1の閾値以下のときであっても、演算された渋滞時間が殆どゼロ(即ち、渋滞なし)のときは、強いてレコメンドを作成するまでもないことがある。そこでこの発明の第6の局面では、第5の局面に規定の案内装置において、前記渋滞時間が第1の閾値時間以上のときのみ、レコメンドを作成することとした。これにより、無駄なレコメンドが省かれ、ユーザにとって使い勝手よいものとする。
更に第7の局面では、第6の局面に規定の案内装置において、レコメンドを作成する条件を更に絞り込み、無駄なレコメンドを省く。即ち、施設の魅力度が第2の閾値以下のとき、レコメンドを作成することとした。この第2の閾値は第1の閾値より小さいものとする。即ち、魅力度が第1の閾値以下なので渋滞時間演算部はオンになるが、当該魅力度が第2の閾値より大きいときはレコメンド作成部を動作させず、これが第2の閾値以下のときのみレコメンドを作成させる。第1の閾値を用いることにより多少のマージンをみて、案内装置のバックグラウンドとして渋滞時間演算部をオンとしておくことで、施設の魅力度が変化して、即ち魅力度が第2の閾値以下となって、ユーザに強く案内する必要が生じたときなど、迅速にレコメンドを作成できる。
【0012】
施設の魅力度の感じ方、例えば、施設のアトラクションの待ち時間に対するストレスや渋滞時間に対するストレスはユーザによって異なる。そこで、この発明の案内装置には、施設の魅力度に関する第1の閾値及び渋滞時間に関する第1の閾値をユーザが任意に設定できるよう、閾値設定部を備えることとした(第8の局面)。
【0013】
この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、第6の局面に規定の案内装置において、前記レコメンド作成部は前記渋滞時間に比べ前記魅力度から高い影響を受けて前記レコメンドの内容を特定する。このように、施設の現況をレコメンドに反映させることより、ユーザにとってより使いやすいものとなる。また、施設の魅力に比べて渋滞時間は変化し易いので、レコメンド作成の基準を施設の魅力度とすることが好ましい。レコメンドが頻繁に代わるとユーザが混乱するおそれがあるからである。
その一方で、施設へのアクセス実時間はユーザにとって重要な情報であるので、当該アクセス実時間が把握できるようにレコメンドを作成することが好ましい(第10の局面)。
【0014】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、第1〜10に規定の局面において、
前記レコメンド作成部がレコメンドを作成する毎に、該レコメンドの内容及び該レコメンドを作成ときの環境を保存する履歴保存部と、
前記レコメンド作成部が新たにレコメンドを作成する際、該新たなレコメンドと同一若しくは同種のレコメンドを前記履歴保存部から抽出して、該抽出したレコメンドの作成時の環境を特定するレコメンド抽出部と、
該特定された環境と新たにレコメンドを作成する際の環境とを比較する比較部と、を備え、
前記レコメンド作成部は前記比較の結果をレコメンドの作成に反映させる。
【0015】
このように規定される第11の局面の案内装置によれば、履歴保存部においてレコメンド作成のログが記録される。
そして、新たなレコメンドを作成する際にレコメンド抽出部によりレコメンドのログが参照されて、同一若しくは同種のレコメンドが抽出される。ここに、同一若しくは同種のレコメンドは施設の魅力及び渋滞時間が同じ条件のとき作成されるべきものである。一般的な娯楽施設及びその周辺道路では、週単位おいては曜日毎に、年単位において月日毎に、同種の混雑傾向が現れる。いわゆる定常の混雑状態である。
そこで、この第11の局面の案内装置では、比較部を用いて、定常の混雑状態の環境と新たにレコメンドを作成する際の環境とを比較する。例えば、レコメンドの内容は同一若しくは同種であるにも拘わらず、両者の曜日、若しくは月日に大きな違いが認められたとき、即ち、定常の混雑状態以外のときに定常状態と同じレコメンドが作成されるとき、そのこと(比較結果)をレコメンドに反映させる。これにより、ユーザに注意喚起を行える。
上記の例では、曜日(周単位)や月日(年単位)を環境の指標としたが、時分(日単位)を用いることができ、またこれら時間を指標とする環境の他、天候、気温などを環境の指標とすること、更にはこれらの組合せを環境の指標とすることができる。
【0016】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、施設保存部、魅力度設定部、渋滞時間演算部及びレコメンド作成部を備える案内装置を用いる案内方法であって、
前記施設保存部に保存された施設の魅力度を前記魅力度設定部が特定し、
前記渋滞時間演算部は所定の位置から前記施設へ到達するのに要するアクセス実時間を道路の混雑情報を参照して演算し、該所定の位置から該施設に到達するのに要するアクセス標準時間を道路の混雑情報を参照せずに演算し、前者と後者の時間差を演算してこれを渋滞時間とし、
前記レコメンド作成部は前記特定された魅力度と前記演算された渋滞時間とに基づき、ユーザへのレコメンドを作成する、案内方法
このように規定される第12の局面の案内方法のように、渋滞時間に加えて施設の魅力度を考慮してユーザへのレコメンドを作成すれば、そのレコメンドはよりユーザにとって有益なものとなる。
【0017】
この発明の第13の局面は次のように規定される。即ち、第12の局面に規定の案内方法において、前記施設の魅力度は該施設の混雑度に基づき特定される。施設の混雑度は入手し易いパラメータであるため、施設の魅力度の特定が容易になる。
この発明の第14の局面は次のように規定される。即ち、第13の局面に規定の案内方法において、前記施設の魅力度が該施設のイベント情報により修正される。施設の混雑度に基づき特定される施設の魅力度をイベント情報を用いて修正することにより、施設の魅力度がユーザの求めにより適合するものとなる。
【0018】
この発明の第15の局面は次のように規定される。即ち、第14の局面に規定の案内方法において、前記イベント情報により前記魅力度が修正されたとき、前記イベント情報が前記レコメンドの内容に反映される。魅力度を修正するようなイベント情報をユーザに提供することは、ユーザにとって有益である。
【0019】
この発明の第16の局面は次のように規定される。即ち、第12の局面に規定の案内方法において、前記レコメンド作成部は、前記施設の魅力度が第1の閾値以下であり、かつ前記渋滞時間が第1の閾値時間以上のときにレコメンドを作成する。施設の魅力度と渋滞時間とが所定の条件を満足するときのみにレコメンドの作成することにより、無駄なレコメンドの作成を防止する。
更に、この発明は、第12〜第16の局面の案内方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムを提供する。