【実施例】
【0023】
図1に示すように、センターコンソール10は、自動車等の車両の運転席と助手席の間に設けられ、助手席(又は運転席)に沿って車両長手方向に延びているサイドパネル11と、左右2つのサイドパネル11の後端を結ぶリアパネル12と、サイドパネル11の後半部分及びリアパネル12の上縁に載せられ肘を載せることができるアームレスト13と、このアームレスト13と前方のジャックパネル14との間に配置されるシフトパネル20とを備えている。
【0024】
シフトパネル20に部分的に弾性マット30が載せられている。この弾性マット30に、細長い角形の携帯端末を載せることができる。弾性マット30は文字通り弾性変形するため、携帯端末に加わる力を減衰する。弾性マット30は汎用樹脂に比較して表面の摩擦係数が大きいため、携帯端末に慣性力が加わっても携帯端末が弾性マット30上を横滑りする心配がない。
【0025】
図2に示すように、本発明に係る車両用内装材15は、内装部材としてのシフトパネル20と、このシフトパネル20の一面(上面)に取付けられている弾性部材としての弾性マット30とからなる。
シフトパネル20は、例えば、ポリプロピレン(PP)材料からなる樹脂成形品である。
【0026】
また、弾性マット30は、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)からなる樹脂成形品である。エラストマーはゴムに近似する特性を有するため、弾性マット30は変形しやすく、変形した後に元に戻る特性を有する。
【0027】
図では、便宜上、シフトパネル20から弾性マット30を取外し、且つ弾性マット30を裏返した。シフトパネル20には、半円形の係合孔21が設けられ、弾性マット30の裏面31には、係合孔21に嵌る半円形の突部32が設けられている。
【0028】
突部32の詳細及び係合孔21の詳細を、
図3と
図4に基づいて説明する。
図3(a)は弾性マット30の裏面31から突出する突部32の斜視図であり、
図3(b)は突部32の平面図であり、
図3(c)は突部32の右側面図であり、
図3(d)は突部32の正面図であり、
図3(e)は
図3(b)のe−e線断面図である。
【0029】
図3(e)に示すように、突部32は、裏面31から延び、且つ平面断面が一様である中空柱部33と、この中空柱部33の外径D1よりも大きな外径D2で中空柱部33の上部から水平に張り出す係合片34と、中空柱部33の外径D1より小さな外径で中空柱部33の先端から延びる先尖り部35とからなる。
さらには、係合片34は、外径がD2である外周面34aと、この外周面34aの上端から先尖り部35に向かって縮径する先端テーパ面34bと、外周面34aの下端から中空柱部33に向かって縮径する基部テーパ面34cとを有している。
【0030】
図3(b)に示すように、突部32は、半円状の中空部36を有し、この中空部36を囲うように、中空柱部33の肉や、係合片34の肉や、先尖り部35の肉が付けられているため、全体的に半円状を呈している。
【0031】
図4に示すように、シフトパネル20は、係合孔21及びこの係合孔21を囲う凹部22を有している。係合孔21の代表径D3は、突部32の径D1より大きく、径D2より小さな値に設定する。
凹部22の径D4は、任意であるが、D3の3倍〜4倍程度が適当である。
【0032】
なお、凹部22の平面視形状は円形の他、楕円、矩形、多角形でもよいが、弾性マット30を均一に変形させたり、均一にストロークさせることが、より容易である円形の凹部が好適である。
【0033】
シフトパネル20に設けられる係合孔21も全体的に半円状を呈している。半円状の係合孔21へ半円状の突部32を矢印のように挿入し、係合する。この手順は後述する。
【0034】
図5に示すように、車両用内装材15は、内装部材としてのシフトパネル20と、このシフトパネル20の一面(上面)に取付けられている弾性部材としての弾性マット30とからなる。シフトパネル20は、下方に配置されるベースプレート17で支持される。
【0035】
図6は
図5の6部拡大図であり、
図6に示すように、係合孔21の出口21aに、突部32の基部テーパ面34cが当たることにより、シフトパネル20に弾性マット30が固定される。
シフトパネル20には、係合孔21の入口21bを囲う部位に凹部22が設けられている。なお、凹部22とシフトパネル20の一般面とは、傾斜湾曲面23(又は傾斜面)で繋がれており、シフトパネル20における断面急変が解消される。
凹部22の深さhは、弾性マット30の厚さTを1としたときに、0.16〜0.4の範囲に設定する。その理由は後述する。
【0036】
係合孔21へ突部32を挿入し、係止する工程を、
図7に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、係合孔21に突部32を臨ませ、弾性マット30を下げる。
図7(b)に示すように、突部32の係合片34が係合孔21の壁で押されて縮径する。さらに弾性マット30を下げる。
【0037】
図7(c)に示すように、弾性マット30が凹部22にδ1だけ沈み込む。すると、係合片34は係合孔21を突き抜けた。突き抜けた瞬間に係合片34が元の径に戻り、このときに「カチッ」というクリック感が手に伝わる。組立作業者は、このクリック感で取付作業が完了したと認識する。
その上に、係合孔21の出口21aからδ2だけ隙間ができる。いわゆる、オーバーストロークした。
【0038】
弾性マット30に加えていた下向き力を解除すると、スプリングバック作用により、δ1が0に戻ろうとし、δ2は0になる。
結果、
図6の形態が得られる。
【0039】
図7(c)において、突部の軸中心37を基準にして、係合孔21の半径をd3、係合片34の半径をd2、中空部36の半径をd5とすると、係合片34の係合代は(d2−d3)となる。半径d2は軸中心37から係合片34の先端までの距離に相当する。
【0040】
図7(b)に示すように、少なくとも係合代分だけは、係合片34は軸中心37に向かって変位する。中空部36の半径d5が不足すると、この変位が吸収できない。加えて、係合孔21や突部32には
製作誤差が加わる。
対策として、中空部36の半径d5は係合代(d2−d3)の2倍を超えるように設定する。これで、係合片34の変位及び
製作誤差の両方が吸収され、突部32を係合孔21に円滑に挿入することができる。
【0041】
以上に述べたように、本発明は、オーバーストロークとスプリングバックとを利用していることを特徴とする。
図7(c)において、
製作誤差により、突部32が規定寸法より、短く出来上がっている、又はシフトパネル20が規定寸法より厚い場合は、従来の技術であれば
図7(b)のように、係合片34が係合孔21に留まり、取付不良を招くが、本発明であれば、オーバーストロークにより、
図7(c)が得られ、取付不良を回避することができる。
【0042】
次に、凹部22の深さhに関する実験を行った。
実験条件:
シフトパネルの材質:PP
シフトパネルの厚さ:2.5mm
凹部の深さh:(6種類)
0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.75mm、1.0mm、1.25mm
弾性マットの材質:TPO
弾性マットの厚さ:2.0mm
突部の中空柱部の外径:4.5mm
【0043】
実験では、突部が係合孔を突き抜けたか否かの確認及びクリック感が得られたかの確認を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実験1では、突部は突き抜けなかった。突き抜けないためクリック感は得られない。凹部が浅すぎ、十分なオーバーストロークが得られなかった。
実験2では、クリック感が得られ、突部が突き抜けていた。
実験3、4、5も同様に、クリック感が得られ、突部が突き抜けていた。
【0046】
実験6では、他の実験に比較して、ごく短い時間で突き抜けた。そのためか、クリック感が殆ど得られなかった。係合孔の長さは1.25mm(シフトパネルの厚さ2.5mm−凹部の深さ1.25mm)であり、ごく短い時間で突き抜けた。時間が短いため、弾性エネルギーの蓄積が不十分であり、反発エネルギーが小さいため、クリック感が得られなかったとも推論できる。
【0047】
また、係合孔回りには係合片による軸力が加わるため、強度が問題になる。実験1〜5では強度を確保できるが、実験6では強度低下が懸念される。
【0048】
以上の突き抜けたか否か、クリック感の有無、及びシフトパネルの強度を勘案すると、総合評価の欄に示すように、実験1と実験6は「不可」で実験2〜5が「可」となる。
【0049】
(h/シフトパネルの厚さ)の欄において、実験1では、h=0.3、シフトパネルの厚さは2.5mm(一定値)であるから、(h/シフトパネルの厚さ)=0.12となる。
同様の計算により、実験2は0.16、実験3は0.20、実験4は0.30、実験5は0.40、実験6は0.50となる。
【0050】
(h/シフトパネルの厚さ)が0.16〜0.40の範囲であれば、突部が確実に突き抜け、十分なクリック感がえられ、且つシフトパネルの強度が確保できる。
【0051】
次に、変更例を説明する。
図8(a)に示すように、凹部22は、弾性マット30側に、突部32を囲うように設けてもよい。これでも、所望のオーバーストロークとスプリングバッ
クが得られる。
【0052】
または、
図8(b)に示すように、凹部22は、シフトパネル20と弾性マット30の両方に設けてもよい。凹部22の深さは、1箇所当たりhの半分でよいため、シフトパネル20の強度低下及び弾性マット30の強度低下が抑制される。
【0053】
次に、本発明の突部32の形状について、
図9に基づいて説明する。
比較例を示す
図9(a)での突部101は円形であり、このような突部101はよく使用される。係合片102は円環状である。
一方のスライド型103で180°分を分担し、他方のスライド型104で残りの180°分を分担する。型組み時に2個のスライド型103、104を矢印のように合わせ、樹脂が固まったら反矢印側に分離する。
2個のスライド型103、104が必要であるため、金型の費用が嵩む。
【0054】
別の比較例を示す
図9(b)での突部111は角形である。係合片112はコ字状である。1個のスライド型113を主型114に当てることで、樹脂成形が可能となる。型費用が低減できる。
ただし、コ字形であるため、係合片112の周長L1は、必然的に大きくなり、スライド型113の設計が面倒になる。
【0055】
対して実施例を示す
図9(c)での突部32は半円形である。係合片34は半円状である。1個のスライド型41を主型42に当てることで、樹脂成形が可能となる。型費用が低減できる。
コに対して半円は、係合片34の周長L2が小さくなり、スライド型41の設計が容易になり、かつ係合する範囲を最大限形成することができ、脱落やガタツキのリスクを低減できる。よって、突部32は半円形が好適である。
【0056】
ただし、本発明の突部32において、
図9(a)、(b)の形態を排除するものではない。
突部32の数及び位置は任意だが、対を成して配置することが好ましい。その場合、一対の半円形の平面を対向するように配置することが好適である。
【0057】
尚、本発明の車両用内装材は、センターコンソールのシフトパネルに限定されるものではなく、車両の内装部材であれば種類は問わない。弾性部材も弾性マットに限定されない。