特許第6799571号(P6799571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799571
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20201207BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20201207BHJP
   B60R 21/2165 20110101ALI20201207BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   B60K37/00 C
   B60K37/00 G
   B60R21/205
   B60R21/2165
   B60R11/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-179165(P2018-179165)
(22)【出願日】2018年9月25日
(65)【公開番号】特開2020-50023(P2020-50023A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2019年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100166648
【弁理士】
【氏名又は名称】鎗田 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】野田 誠
(72)【発明者】
【氏名】明井 亨訓
(72)【発明者】
【氏名】関 進
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 陽介
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−226955(JP,A)
【文献】 特開2003−200800(JP,A)
【文献】 実開平06−042438(JP,U)
【文献】 特開2008−143378(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011076673(DE,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第03021931(FR,A1)
【文献】 特開2014−069730(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011000924(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B60R 11/02
B60R 21/205
B60R 21/2165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部構造であって、
インストルメントパネルと、
ディスプレイユニットと、
前記インストルメントパネルの表面の下方に配置されたエアバッグ装置と、を備え、
前記エアバッグ装置の作動時に、前記エアバッグ装置のリッドが開放され、前記開放されたリッドが、前記インストルメントパネルと前記ディスプレイユニットとにより形成される溝部を覆うと共に、
前記溝部は、前記インストルメントパネルの後端上部のテーパー部と前記ディスプレイユニットの前端上部のテーパー部とにより形成されており、
前記開放されたリッドが、前記溝部を覆うように前記ディスプレイユニットの上方まで延在し、
前記ディスプレイユニットの上方にある前記開放されたリッドの端面のカット方向に前記ディスプレイユニットの上面の縁部が存在するように、前記リッドの端面が形成されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記ディスプレイユニットは、
ディスプレイと
前記ディスプレイの上面部を覆う覆い部材と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記覆い部材は、前記ディスプレイの左側面部及び右側面部をさらに覆うことを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記エアバッグ装置の作動前において、前記ディスプレイユニットの上端の高さは、前記インストルメントパネルの上端の高さよりも低いことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記インストルメントパネルはティアラインを備えており、
前記リッドの開放時に前記ティアラインが開裂することにより、前記エアバッグ装置のエアバッグが車内へ展開されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記開裂したインストルメントパネルの一部と前記リッドとは一体的に動くことを特徴とする請求項5に記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記エアバッグ装置の作動によるエアバッグ展開後に押し開かれた前記リッドと、前記インストルメントパネルに設けられたティアラインの開裂により押し開かれた前記インストルメントパネルの一部との何れか一方が、前記溝部を覆うように前記ディスプレイユニットの上方まで延在することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インストルメントパネルのディスプレイが、表示内容を相互に切替えることが可能な二つの画面により構成された車両用モニター装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−180080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エアバッグが作動し、インストルメントパネル上面からエアバッグが車内に展開すると、エアバッグがディスプレイユニットに引っ掛かる可能性がある。そのため、エアバッグの展開が遅れたり、エアバッグが破れたりすることがあるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、エアバッグの車内への展開遅れや破れを防止するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の車体前部構造は、
インストルメントパネルと、
ディスプレイユニットと、
前記インストルメントパネルの表面の下方に配置されたエアバッグ装置と、を備え、
前記エアバッグ装置の作動時に、前記エアバッグ装置のリッドが開放され、前記開放されたリッドが、前記インストルメントパネルと前記ディスプレイユニットとにより形成される溝部を覆うと共に、
前記溝部は、前記インストルメントパネルの後端上部のテーパー部と前記ディスプレイユニットの前端上部のテーパー部とにより形成されており、
前記開放されたリッドが、前記溝部を覆うように前記ディスプレイユニットの上方まで延在し、
前記ディスプレイユニットの上方にある前記開放されたリッドの端面のカット方向に前記ディスプレイユニットの上面の縁部が存在するように、前記リッドの端面が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エアバッグの車内への展開遅れや破れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車体前部構造の外観図である。
図2】本発明の一実施形態に係る助手席用のエアバッグ装置を車体上方から観察した図である。
図3】本発明の一実施形態に係る車体の左側方から観察したA−A断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るエアバッグ展開時のリッドの位置と、インストルメントパネル及びディスプレイユニットとの位置関係を示す図である。
図5】(a)本発明の一実施形態に係るディスプレイユニットの外観図であり、(b)本発明の一実施形態に係るディスプレイユニットのCーC断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、各図面を通じて同一の構成要素に対しては同一の参照符号を付している。また、各図における、上、下、前、後、左、右の文字は、それぞれ車体の上方、下方、前方、後方、左側方、右側方を表している。
【0010】
まず、図1乃至図3を参照して、本発明の一実施形態に係る車体前部構造について説明を行う。図1は、本発明の一実施形態に係る車体前部構造の外観図である。図1において、1は車体前部構造である。10はインストルメントパネルであり、11はディスプレイユニットである。12は、ディスプレイユニット11に対して車体後方に設けられた平面部であり、物を載置したり、ディスプレイユニット11を操作する際に乗員の手を載せたりすることができる。13は、インストルメントパネル10の裏面に設けられたティアラインを表しており、ラインに沿って開裂可能な脆弱部である。インストルメントパネル10のティアライン13の下方に、図2及び図3を参照して後述するエアバッグ装置20が収納されている。エアバッグ装置20の作動時には、膨張したエアバッグの押圧力によってインストルメントパネル10のティアライン13が開裂する。これにより、インストルメントパネル10の一部が両開きの蓋部を形成し、蓋部が車内方向へ押し上げられることにより、膨張したエアバッグが車内に展開される。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態に係る助手席用のエアバッグ装置を車体上方から観察した図である。20は、助手席側に設けられたエアバッグ装置であり、21はエアバッグ装置20が作動した際のエアバッグの展開エリアを表している。エアバッグが展開することで乗員を保護することができる。なお、エアバッグ装置20は、前述した通り、インストルメントパネル10の下方に収納されている。
【0012】
図3は、図1及び図2に示されるA−A断面図であり、車体の左側方からA−A断面を観察した図である。22はインフレータであり、30はフロントウィンドウシールドである。エアバッグ装置20は、インフレータ22からのガスによって展開するように折り畳まれたエアバッグ(不図示)と、エアバッグの展開時に開放されて両開きする前後一対のリッド40a及び40bとを備えている。リッド40aは、ティアライン13に沿って開裂したインストルメントパネル10の一部と共に一体的に上方へ押し上げられ、支点50aを介して回動することによって車体前方へ開く。また、リッド40bは、ティアライン13に沿って開裂したインストルメントパネル10の一部と共に一体的に上方へ押し上げられ、支点50bを介して回動することによって車体後方へ開く。このように、エアバッグ装置20の作動により、リッド40a及び40bがインストルメントパネル10の一部と共に蓋部を形成して車体前後方向へ両開きする。
【0013】
インストルメントパネル10のティアライン13が、エアバッグ装置20の作動時のリッド40a及び40bの開放に伴って開裂することにより、エアバッグ装置20のエアバッグが車内へ展開される。ティアライン13を形成しておくことで、エアバッグのスムーズな車内への展開が可能となる。
【0014】
続いて、図4は、本発明の一実施形態に係るエアバッグ展開時のリッドの位置と、インストルメントパネル及びディスプレイユニットとの位置関係を示す図である。図4は、図3のBで表された、インストルメントパネル10とディスプレイユニット11との境界付近の領域の拡大図である。図4において、111はディスプレイ、112は回路基板等を含むディスプレイモジュール、113はシャーシである。そして、114はディスプレイ111及びシャーシ113を覆う覆い部材(例えばガーニッシュ)である。覆い部材114を備えることにより、デザイン性を向上させることができるとともに、ディスプレイ11、ディスプレイモジュール112、シャーシ113を保護することができる。
【0015】
また図4には、エアバッグ装置20が作動してエアバッグが車内に展開した場合のリッド40b及びインストルメントパネル10の一部が描写されている。図4に示される通り、インストルメントパネル10とディスプレイユニット11との境界には溝部60が形成されており、エアバッグの展開後、少なくともこの溝部60を覆うようにリッド40b及びインストルメントパネル10の一部が延びている。これにより、車内に展開したエアバッグが溝部60に入り込むことを防止することができるため、展開したエアバッグがディスプレイユニット11に引っ掛かることを防止できる。そのため、ディスプレイユニット11への引っ掛かりによるエアバッグの車内への展開遅れを防止できるとともに、ディスプレイユニット11への引っ掛りに起因するエアバッグの破れの発生を防止することができる。
【0016】
また、エアバッグ装置20の作動前において、ディスプレイユニット11の上端70の高さは、インストルメントパネル10の上端80の高さよりも低く形成されている。これにより、エアバッグ装置20の作動時に、車内に展開したエアバッグがディスプレイユニット11に接触しにくくなるため、展開したエアバッグがディスプレイユニット11に引っ掛かることをより効果的に防止できる。
【0017】
なお、本実施形態では、開裂したインストルメントパネル10の一部とリッド40a及び40bとが一体的に動く例を説明したが、必ずしも一体的に動かなくてもよい。また、エアバッグ展開後に押し開かれたリッド40bと、開裂して押し開かれたインストルメントパネル10の一部との何れか一方が、溝部60を覆うことができる構成としてもよい。
【0018】
また、インストルメントパネル10の一部とリッド40aとが1つのリッドとして構成されてもよい。同様にインストルメントパネル10の一部とリッド40bとが1つのリッドとして構成されてもよい。すなわち、一体的に動くインストルメントパネル10の一部とリッド40a、40bとの全体をリッドと称してもよい。
【0019】
図5は、本発明の一実施形態に係るディスプレイユニットの構造の説明図である。図5(a)は、本発明の一実施形態に係るディスプレイユニットの外観図であり、図5(b)は、図5(a)のCーC断面図である。
【0020】
図5(a)に示されるように、覆い部材114は、ディスプレイ111の上面部、左側面部及び右側面部を覆うように形成されている。これにより、例えばエアバッグが展開する前に、ディスプレイ111に割れが生じているような場合に、展開時のエアバッグがディスプレイ111と接触して破れししまうことを防止できる。また、エアバッグの展開により接触したディスプレイ111が割れて、ディスプレイ111のガラスが飛散することも防止できるため、乗員の安全を確保することができる。なお、図示の例では、覆い部材114は、ディスプレイ111の上面部、左側面部及び右側面部を覆うように形成されているが、少なくとも上面部を覆うように形成すれば、ディスプレイ111を保護することができる。
【0021】
なお、上述した実施の形態は、本発明の一手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0022】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の車体前部構造(例えば1)は、
インストルメントパネル(例えば10)と、
ディスプレイユニット(例えば12)と、
前記インストルメントパネルの表面の下方に配置されたエアバッグ装置(例えば20)と、を備え、
前記エアバッグ装置の作動時に、前記エアバッグ装置のリッド(例えば40a及び40b)が開放され、前記開放されたリッド(例えば40b)が、前記インストルメントパネルと前記ディスプレイユニットとにより形成される溝部(例えば60)を覆うことを特徴とする。
【0023】
この実施形態によれば、車内に展開したエアバッグが、インストルメントパネルとディスプレイユニットとの間に形成される溝部に入り込むことを防止することができるため、展開したエアバッグがディスプレイユニットに引っ掛かることを防止できる。そのため、ディスプレイユニットへの引っ掛かりによるエアバッグの車内への展開遅れを防止できるとともに、ディスプレイユニットへの引っ掛りに起因するエアバッグの破れの発生を防止することができる。
【0024】
2.上記実施形態の車体前部構造(例えば1)では、
前記ディスプレイユニット(例えば12)は、
ディスプレイ(例えば111)と
前記ディスプレイの上面部を覆う覆い部材(例えば114)と
を備えることを特徴とする。
【0025】
この実施形態によれば、ディスプレイの上面部を覆い部材で覆うことによってディスプレイを保護することができるため、エアバッグがディスプレイの上面付近に接触したような場合でも、ディスプレイの割れによるガラス部材の飛散を抑制することができる。従って、乗員の安全性を向上させることができる。
【0026】
3.上記実施形態の車体前部構造(例えば1)では、
前記覆い部材(例えば114)は、前記ディスプレイ(例えば111)の左側面部及び右側面部をさらに覆うことを特徴とする。
【0027】
この実施形態によれば、ディスプレイの上面だけではなく左右側面も覆うことによって、ディスプレイを更に安全に保護することができる。従って、ディスプレイの割れによるガラス部材の飛散を更に抑制することができる。従って、乗員の安全性を更に向上させることができる。
【0028】
4.上記実施形態の車体前部構造(例えば1)では、
前記エアバッグ装置(例えば20)の作動前において、前記ディスプレイユニット(例えば11)の上端(例えば70)の高さは、前記インストルメントパネル(例えば10)の上端(例えば80)の高さよりも低いことを特徴とする。
【0029】
この実施形態によれば、エアバッグ装置の作動時に、車内に展開したエアバッグがディスプレイユニットに接触しにくくなるため、展開したエアバッグがディスプレイユニットに引っ掛かることをより効果的に防止できる。
【0030】
5.上記実施形態の車体前部構造(例えば1)では、
前記インストルメントパネルはティアラインを備えており、
前記リッド(例えば40a及び40b)の開放時に前記ティアライン(例えば13)が開裂することにより、前記エアバッグ装置(例えば20)のエアバッグが車内へ展開されることを特徴とする。
【0031】
この実施形態によれば、脆弱部であるティアラインを形成しておくことで、エアバッグのスムーズな車内への展開が可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1:車体前部構造
10:インストルメントパネル
11:ディスプレイユニット
12:平面部
13:ティアライン
20:エアバッグ装置
40a,40b:リッド
60:溝部
70:ディスプレイユニットの上端
80:インストルメントパネルの上端
111:ディスプレイ
114:覆い部材
図1
図2
図3
図4
図5