(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誘電体フィルムを挟んで互いに対向する一対の前記金属膜において、少なくとも一方の前記金属膜の前記第3部位の一部と、他方の前記金属膜の前記第3部位の一部とが重なるように配置されている、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
前記第2部位は、断続的に設けられた網目状の溝により分離されるように形成された複数の小領域と、該小領域間をつなぐヒューズ部とにより構成されている、請求項1または2に記載のフィルムコンデンサ。
前記誘電体フィルムの前記第1方向における長さをW0とし、前記第3部位の前記第1方向における長さをW3としたとき、前記W0に対する前記W3の比(W3/W0)が0.2〜0.3である、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
複数のフィルムコンデンサと、該複数のフィルムコンデンサを接続するバスバーと、を備え、前記フィルムコンデンサが、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムコンデンサである、連結型コンデンサ。
スイッチング素子により構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続された容量部とを備え、前記容量部が請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムコンデンサである、インバータ。
スイッチング素子により構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続された容量部とを備え、前記容量部が請求項5に記載の連結型コンデンサである、インバータ。
電源と、該電源に接続されたインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備え、前記インバータが、請求項6または請求項7に記載のインバータである、電動車輌。
【発明を実施するための形態】
【0011】
フィルムコンデンサは、
図1、2に示すように、誘電体フィルム1a、1bと、金属膜2a、2bとが積層または捲回されたフィルムコンデンサ本体部3(以下、単に本体部3という場合もある)と、本体部3の対向する端部(本体端部)にメタリコンにより設けられた一対の外部電極4a、4bとを具備している。
【0012】
図1に示す積層型のフィルムコンデンサAの本体部3では、誘電体フィルム1aの第1面1acに金属膜2aを備えた金属膜付きフィルム5aと、誘電体フィルム1bの第1面1bcに金属膜2bを備えた金属膜付きフィルム5bとが交互に積層されている。金属膜2aは本体部3の一方の本体端部3aで外部電極4aに電気的に接続されている。金属膜2bは、本体部3の他方の本体端部3bで外部電極4bに電気的に接続されている。
【0013】
図1においては、誘電体フィルム1a、1bおよび金属膜2a、2bの幅方向をx方向、長さ方向をy方向、厚さ方向をz方向として示している。したがって、誘電体フィルム1a、1bおよび金属膜2a、2bはz方向に重ねあわされており、外部電極4a、4bは本体部3のx方向に位置する本体端部3a、3bにそれぞれ配置されている。
【0014】
図2に示す捲回型のフィルムコンデンサBの本体部3では、誘電体フィルム1aの第1面1acに金属膜2aを備えた金属膜付きフィルム5aと、誘電体フィルム1bの第1面1bcに金属膜2bを備えた金属膜付きフィルム5bとが重ねられ、捲回されている。金属膜2aは本体部3の一方の本体端部3aで外部電極4aに電気的に接続されている。金属膜2bは、本体部3の他方の本体端部3bで外部電極4bに電気的に接続されている。
【0015】
なお、
図2においては、理解を容易にするために、引き出した誘電体フィルム1a、1bおよび金属膜2a、2bの厚みを紙面の手前にくる程厚くなるように描いている。
【0016】
図2においては、誘電体フィルム1a、1bおよび金属膜2a、2bの幅方向をx方向、長さ方向をy方向、厚さ方向をz方向として示している。したがって、誘電体フィルム1a、1bおよび金属膜2a、2bはz方向に重ねあわされており、外部電極4a、4bは本体部3のx方向に位置する本体端部3a、3bにそれぞれ配置されている。フィルムコンデンサBでは、x方向は捲回の軸長方向と一致する。
【0017】
フィルムコンデンサAおよびBの誘電体フィルム1aは、対向する第1面1acと第2面1adを有しており、誘電体フィルム1bは、対向する第1面1bcと第2面1bdを有している。金属膜付きフィルム5aとは、誘電体フィルム1aの第1面1ac上に金属膜2aを形成したものであり、第1面1ac上の一部には誘電体フィルム1aが露出したいわゆる絶縁マージン部6aを有している。金属膜付きフィルム5bとは、誘電体フィルム1bの第1面1bc上に金属膜2bを形成したものであり、第1面1bc上の一部には誘電体フィルム1bが露出したいわゆる絶縁マージン部6bを有している。これらの金属膜付きフィルム5a、5bは、
図1、2に示すように、少し幅方向(x方向)にずれた状態で積層または捲回されている。
【0018】
このように、フィルムコンデンサA、Bは、誘電体フィルム1aおよび金属膜2aにより構成される金属膜付きフィルム5aと、誘電体フィルム1bおよび金属膜2bにより構成される金属膜付きフィルム5bとが、
図1、2に示すように重ねられ、積層または捲回されている。
【0019】
金属膜2a、2bは、本体部3のx方向に位置する本体端部3a、3bに露出した接続部において、それぞれ外部電極4a、4bに接続している。
【0020】
金属膜付きフィルム5a、5bに共通する本実施形態の特徴について説明するため、以下では、
図3Aに示すように、a、bの符号を省略する場合がある。また、
図3Bの横断面図においては、説明を容易にするためにフィルムの厚さ方向(z方向)を拡大して示している。
【0021】
本実施形態では、
図3A、
図3Bに示すように、金属膜2が、第1部位2l、第2部位2m、および第3部位2nにより構成される。第1部位2lは、左の本体端部側に位置し、外部電極4(図示せず)に接続されている。第2部位2mは、右の本体端部の近傍、すなわち絶縁マージン部6の近傍に位置しており、外部電極4(図示せず)と直接には接続していない。第3部位2nは、x方向において、第1部位2lと第2部位2mとの間に位置している。金属膜2は、x方向の両端にそれぞれ第1部位2lおよび第2部位2mが配置され、第3部位2nは第1部位2lと第2部位2mとの間に挟まれている。
【0022】
第1部位2lおよび第3部位2nは、連続した金属の膜である。第1部位2lが連続した膜であり、それが外部電極4とつながっていることにより、ESRが低減される。
【0023】
図3Bは
図3Aの横断面図であり、
図4Aは
図3Aの破線部を拡大した平面図である。第2部位2mは、
図3Bおよび
図4Aに示すように、複数の小領域2miと、小領域2mi間をつなぐヒューズ部8mにより構成されていてもよい。複数の小領域2miは、断続的に設けられた網目状(格子状)の溝7mにより分離されるように形成されている。隣接する小領域2mi同士はヒューズ部8mにより電気的に接続されている。小領域2miおよびヒューズ部8mは、例えば、レーザー加工により形成できる。溝7mの幅は、たとえば0.01〜0.20mmとすればよい。
【0024】
このように、第2部位2mが小領域2miを有し、これら小領域2miがヒューズ部8mでつながっていることにより、自己回復時の短絡電流により絶縁欠陥部周囲のヒューズ部8mを溶断して、絶縁欠陥部を電気回路から切り離すことができる。したがって、自己回復性に優れたフィルムコンデンサA、Bとすることができる。また、自己回復により蒸発した成分が、網目状(格子状)の溝7mを通じて外部に蒸散しやすいという利点もある。
【0025】
なお、第2部位2mは、複数の小領域2miと、小領域2mi間をつなぐヒューズ部8mを有していればよく、溝7mは網目状(格子状)でなくてもよい。例えば、x方向にのびる溝7mに分割された、x方向にのびる帯状(横縞状)の小領域2miを有していてもよい。
【0026】
図5〜7は、金属膜付きフィルム5aと5bとを重ね合わせた配置を示している。
図5の上段に示す金属膜付きフィルム5aと、
図5の下段に示す金属膜付きフィルム5bとは、
図6の横断面図に示すように、幅方向(x方向)に少しずれた状態で重ねあわされている。
図7の上段は
図5の上段の破線部を拡大したものであり、
図7の下段は
図5の下段の破線部を拡大したものである。金属膜付きフィルム5a、5bは、金属膜2aの第1部位2laが、金属膜2bの第2部位2mbと重なり、金属膜2aの第2部位2maが、金属膜2bの第1部位2lbと重なるように配置されている。
【0027】
金属膜2aの第3部位2naと、金属膜2bの第3部位2nbとは、互いに重なるように配置されている。金属膜2aの第3部位2naは、その一部が金属膜2bの第2部位2mbまたは第1部位2lbと重なっていてもよい。金属膜2bの第3部位2nbは、その一部が金属膜2aの第2部位2maまたは第1部位2laと重なっていてもよい。
【0028】
本実施形態においては、第1部位2lと第2部位2mとの間に第3部位2nが配置されていることで、金属膜付きフィルム5aと5bとを重ね合わせたときに、金属膜2aの第2部位2maと、金属膜2bの第2部位2mbとが重ならないように配置されている。したがって、
図6に示すように、第2部位2maのヒューズ部8maと第2部位2mbのヒューズ部8mbとが重なることがない。換言すれば、ヒューズ部8mがフィルムコンデンサA、Bのx方向の中央部に集中することがないため、発熱の集中が抑制され、フィルムコンデンサA、Bのx方向の中央部における絶縁破壊を抑制することができる。
【0029】
また、
図3B、
図4Bに示すように、第1部位2lと第3部位2nとの境界において、金属膜2の第1部位2lと第3部位2nとは連続している。また、第2部位2mと第3部位2nとの境界において、金属膜2の第3部位2nに隣接する小領域2miと、第3部位2nとは連続している。したがって、本実施形態では、第1部位2lと第3部位2nとの境界、および第2部位2mと第3部位2nとの境界の近傍で、溝およびヒューズが集中して配置されることがない。すなわち、第1部位2lと第3部位2nとの境界、および第2部位2mと第3部位2nとの境界の近傍においても、ヒューズが集中しないため、この領域における発熱の集中を抑制し、絶縁破壊を抑制することができる。また、積層または捲回時に、溝が特定の箇所に集中することによるシワの発生を抑制することができる。
【0030】
上述したように、小領域2miとヒューズ部8mとを有する第2部位2mでは、絶縁欠陥部で自己回復現象が生じたときに、絶縁欠陥部周囲のヒューズ部8mに短絡電流が流れてヒューズ部8mが発熱・溶断し、絶縁欠陥部を電気回路から切り離すことができる。これは、ヒューズ部8mの幅が狭く、電気抵抗が高いためである。従来のフィルムコンデンサでは、x方向の中央付近に、ヒューズ部8maと8mbとが重なり合う部分、すなわち複数の層(捲回層)にわたってヒューズ部8mが集中する部分があり、一部の層(捲回層)でヒューズ部8mが発熱・溶断すると、その熱で他の層(捲回層)のヒューズ部8mも溶断して容量が大きく低下していた。
【0031】
一方、本実施形態では、第1部位2lと第2部位2mとの間に第3部位2nが配置されている。第3部位2nは、ヒューズ部8mを有していないが、第2部位2mよりも小さい膜厚を有している。金属膜2は、通常、部位によらず同じ金属材料が用いられる。したがって、金属膜2の膜厚を調整することで、金属膜2のシート抵抗が変化する。換言すれば、金属膜2の膜厚が小さい第3部位2nは、シート抵抗の高い部位といえる。
【0032】
そのため、第3部位2nすなわち金属膜2の膜厚が小さい部位では、他の部位(ヒューズ部8m)よりも小さい熱量で金属膜2が蒸発・飛散する。したがって、第3部位2nでは、自己回復が起っても、ヒューズ部8mを溶断する場合よりも発熱が小さく抑えられる。また、第3部位2nでは金属膜2が分割されず連続しているため、発生した熱量は金属膜2の面内を拡散しやすい。したがって、他の層(捲回層)の金属膜2への熱量の拡散が抑制され、金属膜2の蒸発・飛散の影響が他の層(捲回層)には及ばないため、フィルムコンデンサA、Bの容量の低下を低減できる。
【0033】
すなわち、第1部位2lと、第2部位2mとの間に電気抵抗(シート抵抗)の高い第3部位2nを配置することで、フィルムコンデンサA、Bの自己回復性を維持したまま、ヒューズ部8mの集中による発熱の集中を抑制し、ヒューズ部8mが複数の層(捲回層)にわたって同時に断線する懸念を低減することができ、自己回復時の容量低下を低減できる。
【0034】
このように、x方向の両端に位置する第1部位2lと第2部位2mとの間に位置する第3部位2nの膜厚が小さい(高いシート抵抗を有している)ため、本実施形態では、フィルムコンデンサA、Bの第3部位2n同士(2naと2nb)が重なった領域でも、自己回復性(耐電圧)を維持することができる。換言すれば、金属膜付きフィルム5aと5bとを重ね合わせたときにヒューズ部8mが存在しない部位(幅方向(x方向)の中央付近)に、膜厚が小さい第3部位2nが配置されていることで、金属膜2naまたは2nbに絶縁欠陥が発生した際に、絶縁欠陥部の金属膜2na、2nbが蒸発・飛散しやすくなり、自己回復性を発現することができる。
【0035】
なお、第2部位2mが溝7mにより複数の小領域2miに分離されていない、すなわち第2部位2mが連続した金属の膜である場合も、高い抵抗を有する第3部位2nが、第1部位2lと第2部位2mとの間に挟まれていることにより、フィルムコンデンサA、Bのx方向の中央付近に絶縁欠陥が発生した際に、絶縁欠陥部の金属膜2na、2nbが蒸発・飛散しやすくなる。また、第3部位2nは膜厚が小さいため、第3部位2nでは金属膜付きフィルム5aと5bとの間に間隙が形成される。そのため、蒸発・飛散した金属成分が隙間を通じて外部に抜けやすくなり、良好な自己回復機能を有するフィルムコンデンサA、Bとなる。
【0036】
図3Bに示すように、誘電体フィルム1のx方向の長さをW0、第1部位のx方向の長さをW1、第2部位のx方向の長さをW2、第3部位のx方向の長さをW3とする。W1とW3との和(W1+W3)は、W2よりも大きいのがよい。(W1+W3)をW2よりも大きくすることで、金属膜付きフィルム5aと5bとを重ね合わせても第2部位2m同士(2maと2mb)が重なり合う領域が形成されず、ヒューズ部8mが集中することがない。
【0037】
W2は、W1よりも大きいのがよい。W2をW1よりも大きくすることで、より自己回復性に優れたフィルムコンデンサA、Bとすることができる。
【0038】
W3の長さは、W3のW0に対する比(W3/W0)にして0.2〜0.5とすればよい。W3/W0を0.2以上とすることで、x方向の中央付近に第2部位2mのヒューズ部8mが重なり合わないように配置することができ、充分な発熱の抑制効果が得られる。また、0.5以下とすることで、第3部位2nにおいて自己回復が起きてもフィルムコンデンサA、Bの容量低下を抑制できる。
【0039】
また、金属膜2(2a、2b)は、
図3B、
図6に示すように、外部電極4(4a、4b)との接続部の近傍(2f)にヘビーエッジ構造を有していてもよい。以下、金属膜2の外部電極4との接続部の近傍2fを、ヘビーエッジ部2fという場合もある。ヘビーエッジ構造とは、金属膜2a、2b同士が重なり合う有効領域に対して、外部電極4との接続部の近傍2fにおける金属膜2の抵抗を低くした構造である。
【0040】
金属膜2の膜厚は、第1部位2lおよび第2部位2mにおいて、例えば20nm以下、特には5〜15nmの範囲とするのがよい。金属膜2の第1部位2lおよび第2部位2mをこのような膜厚とすることで、面積抵抗(シート抵抗)が18〜50Ω/□となり、自己回復性を発揮できる。また、外部電極4との接続部近傍2fにおける金属膜2の膜厚は、第1部位2lおよび第2部位2mの2〜4倍、すなわち10〜80nmの範囲とするのがよい。なお、第1部位2lの膜厚は、第2部位2mの膜厚より大きくてもよい。外部電極4と接続する第1部位2lの膜厚を第2部位2mの膜厚より大きくすることで、フィルムコンデンサA、Bの等価直列抵抗(ESR)を低減することができる。
【0041】
そして、金属膜2の第3部位2nにおける膜厚は、第1部位2lおよび第2部位2mの膜厚の例えば0.2〜0.6倍とすればよい。このような膜厚とすることで、第2部位2mよりもシート抵抗を高めることができ、第3部位2nで絶縁欠陥が生じても小さい熱量で十分な自己回復性を発現することができる。金属膜2の膜厚は、たとえばイオンミリング加工をした金属膜付きフィルム5の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)などで確認すればよい。
【0042】
誘電体フィルム1に用いる絶縁性の樹脂の材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびシクロオレフィンポリマー(COP)などが挙げられる。特にポリアリレート(PAR)は、高い絶縁破壊電圧を有する。
【0043】
このようなフィルムコンデンサA、Bは、例えば以下のようにして作製すればよい。まず、誘電体フィルム1を準備する。誘電体フィルム1は、例えば絶縁性の樹脂を溶媒に溶解した樹脂溶液を、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材の表面にシート状に成形し、乾燥して溶剤を揮発させることにより得られる。成形方法としては、ドクターブレード法、ダイコータ法およびナイフコータ法等、周知の成膜方法から適宜選択すればよい。成形に使用する溶剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサン、又は、これらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤を用いるのがよい。また、溶融押し出し法で作製した樹脂のフィルムを延伸加工してもよい。
【0044】
誘電体フィルム1の厚さは、例えば5μm以下とすればよいが、特に0.5〜4μmの厚さの誘電体フィルム1を用いるのがよい。
【0045】
誘電体フィルム1は、上述の絶縁性の樹脂のみにより構成されていてもよいが、他の材料を含んでいてもよい。誘電体フィルム1に含まれる樹脂以外の構成要素としては、例えば上述の有機溶剤および無機フィラーが挙げられる。無機フィラーには、例えば、アルミナ、酸化チタン、二酸化珪素などの無機酸化物、窒化珪素など無機窒化物、ガラスなどを用いることができる。特に、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物など比誘電率の高い材料を無機フィラーとして用いた場合には、誘電体フィルム1全体の比誘電率が向上し、フィルムコンデンサを小型化することができる。また、無機フィラーと樹脂との相溶性を高める上で、無機フィラーにシランカップリング処理、チタネートカップリング処理等の表面処理を行っても良い。
【0046】
誘電体フィルム1にこのような無機フィラーを用いる場合、無機フィラーを50質量%未満、樹脂を50質量%以上含有する複合フィルムとすることで、樹脂の可撓性を維持したまま、無機フィラーによる比誘電率向上などの効果を得ることができる。また、無機フィラーのサイズ(平均粒径)は、4〜1000nmとすることが好ましい。
【0047】
作製した誘電体フィルム1の一方の面の、幅方向(x方向)の端部の一方にマスクをする。誘電体フィルム1の一方の面の、マスクをしていない部分に、アルミニウム(Al)などの金属成分を蒸着して金属膜2を形成することで、絶縁マージン部6を有する金属膜付きフィルム5が得られる。
【0048】
第1部位2l、第2部位2mおよび第3部位2nを有する金属膜2を形成する場合、たとえば誘電体フィルム1に金属膜2を形成する際に、以下のような手順で形成すればよい。誘電体フィルム1の一方の面の、金属膜2の第3部位2nを形成する領域に、オイルを塗布してマスク(オイルマスク)をする。オイルマスクをした誘電体フィルム1に、抵抗加熱方式の真空蒸着装置を用いて1回目の蒸着を行う。このとき、第1部位2l、第2部位2mとなる蒸着膜が形成されるとともに、第3部位2nとなる部分に塗布したオイルマスクが揮発する。その後、さらに2回目の蒸着を行うことで、オイルマスクが揮発した領域にも蒸着膜が形成される。得られた金属膜付きフィルム5は、金属膜2の膜厚が小さい第3部位2nを挟んで、幅方向(x方向)の端部の一方側(絶縁マージン部6側)に第2部位2mとなる蒸着膜、他方側に第1部位2lを有するものとなる。
【0049】
ヘビーエッジ構造を形成する場合は、上述の金属膜付きフィルム5のヘビーエッジを形成する部分以外をマスクし、上述の蒸着した金属成分(1回目および2回目の蒸着膜)のマスクの無い部分の上にさらに、たとえば亜鉛(Zn)を蒸着(3回目の蒸着)して形成する。ヘビーエッジ部2fを形成するために3回目に蒸着する蒸着膜の膜厚は、上述の蒸着した金属成分(1回目および2回目の蒸着膜)の膜厚の1〜3倍とする。これにより、ヘビーエッジ部2fの膜厚は、他の第1部位2lおよび第2部位2mの膜厚(1回目の蒸着および2回目の蒸着により形成された蒸着膜の膜厚の合計)の2〜4倍となる。
【0050】
次に、金属膜2の第2部位2mとなる部分に溝7mを形成する。溝7mの形成には、金属の蒸着膜を飛ばすことが可能な、レーザーマーカー機またはレーザートリマー機を用いる。レーザーとしては、グリーンレーザー、YAGレーザーおよびCO
2レーザーのうちいずれかを用いればよい。
【0051】
一方の面に金属膜2(2a、2b)を有する金属膜付きフィルム5(5a、5b)は、2枚を一組として、
図1、2に示すように、少し幅方向(x方向)にずれた状態で重ねて積層または捲回し、本体部3を得る。
【0052】
得られた本体部3のx方向の両端面に外部電極4としてメタリコン電極を形成することで、フィルムコンデンサA、Bが得られる。外部電極4の形成には、例えば、金属の溶射、スパッタ法、メッキ法などの方法を用いればよい。
【0053】
次いで、必要に応じ、外部電極4を形成した本体部3の外表面を外装部材(図示せず)で覆うこともできる。
【0054】
金属膜2の材料としては、例えばアルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)などの金属または合金などが挙げられる。
【0055】
また、メタリコン電極の材料としては、亜鉛、アルミニウム、銅およびハンダから選ばれる少なくとも1種の金属材料が好適である。
【0056】
図8は、連結型コンデンサの一実施形態の構成を模式的に示した斜視図である。
図8においては構成を分かりやすくするために、ケースならびにモールド用の樹脂を省略して記載している。本実施形態の連結型コンデンサCは、複数個の捲回型のフィルムコンデンサBが一対のバスバー21、23により並列接続された構成となっている。バスバー21、23は、外部接続用の端子部21a、23aとフィルムコンデンサBの外部電極4a、4bにそれぞれ接続される引出端子部21b、23bにより構成されている。
【0057】
連結型コンデンサCに上記したフィルムコンデンサBを適用すると、自己回復性に優れ、容量低下の少ない連結型コンデンサCを得ることができる。なお、捲回型のフィルムコンデンサBにかえて積層型のフィルムコンデンサAを適用してもよい。
【0058】
連結型コンデンサCは、フィルムコンデンサBを複数個(本実施形態においては4個)並べた状態で、本体部3の両端にそれぞれ形成された外部電極4a、4bに、接合材を介してバスバー21、23を取り付けることによって得ることができる。
【0059】
なお、フィルムコンデンサA、Bおよび連結型コンデンサCは、ケースに収納したのちケース内の空隙に樹脂を充填し、樹脂モールド型(ケースモールド型)のコンデンサとすることもできる。
【0060】
また、
図8に示した連結型コンデンサCは、フィルムコンデンサBを、その捲回軸に垂直な断面の長径の方向に並べて配置したものであるが、この他に、フィルムコンデンサBをその捲回軸に垂直な断面の短径の方向に積み上げた構造としてもよい。
【0061】
図9は、インバータの一実施形態の構成を説明するための概略構成図である。
図9には、直流から交流を作り出すインバータDの例を示している。本実施形態のインバータDは、
図9に示すように、スイッチング素子(例えば、IGBT(Insulated gate Bipolar Transistor))とダイオードにより構成されるブリッジ回路31と、電圧安定化のためにブリッジ回路31の入力端子間に配置された容量部33とを備えた構成となっている。ここで、容量部33として上記のフィルムコンデンサA、Bまたは連結型コンデンサCが適用される。
【0062】
なお、このインバータDは、直流電源の電圧を昇圧する昇圧回路35に接続される。一方、ブリッジ回路31は駆動源となるモータジェネレータ(モータM)に接続される。
【0063】
図10は、電動車輌の一実施形態を示す概略構成図である。
図10には、電動車輌Eとしてハイブリッド自動車(HEV)の例を示している。
【0064】
図10における符号41は駆動用のモータ、43はエンジン、45はトランスミッション、47はインバータ、49は電源(電池)、51a、51bは前輪および後輪である。
【0065】
この電動車輌Eは、駆動源としてモータ41またはエンジン43、もしくはその両方の出力がトランスミッション45を介して左右一対の前輪51aに伝達される機能を備えている。電源49はインバータ47を介してモータ41に接続されている。
【0066】
また、
図10に示した電動車輌Eには、電動車輌E全体の統括的な制御を行う車輌ECU53が設けられている。車輌ECU53には、イグニッションキー55、図示しないアクセルペダル、ブレーキ等の電動車輌Eからの運転者等の操作に応じた駆動信号が入力される。この車輌ECU53は、その駆動信号に基づいて指示信号をエンジンECU57、電源49、および負荷としてのインバータ47に出力する。エンジンECU57は、指示信号に応答してエンジン43の回転数を制御し、電動車輌Eを駆動する。
【0067】
本実施形態のフィルムコンデンサA、Bまたは連結型コンデンサCを、容量部33として適用したインバータDを、例えば、
図10に示すような電動車輌Eに搭載すると、フィルムコンデンサA、Bまたは連結型コンデンサCが、自己回復性に優れ容量低下の少ないものであるため、静電容量が長期間に渡り維持でき、インバータ47等で発生するスイッチング・ノイズを長期間低減することができる。
【0068】
なお、本実施形態のインバータDは、上記のハイブリッド自動車(HEV)のみならず、電気自動車(EV)、燃料電池車、あるいは電動自転車、発電機、太陽電池など種々の電力変換応用製品に適用できる。
【実施例】
【0069】
ポリアリレート(U−100、ユニチカ製)を用いて平均厚さ2.5μmの誘電体フィルムを作製した。誘電体フィルムは、ポリアリレートをトルエンに溶解し、コータを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材上に塗布し、シート状に成形した。成形後、130℃で熱処理してトルエンを除去し、誘電体フィルムを得た。
【0070】
得られた誘電体フィルムを基材から剥離し、130mm幅にスリット加工した後、誘電体フィルムの一方の主面に、97mm幅のAl(アルミニウム)金属膜を形成した。Al金属膜は、メタルマスクおよび所定の位置にオイルマスクをして、真空蒸着法により形成した。真空蒸着は2回行った。金属膜の厚さは、イオンミリング加工をした断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により求めた。金属膜のシート抵抗は、マルチメータを用いて4端子抵抗測定モードにより評価した。その結果、オイルマスクを施さなかった第1部位、第2部位の膜厚は15nm、シート抵抗は50Ω/□であり、オイルマスクを施した第3部位の膜厚は8nm、シート抵抗は100Ω/□であった。
【0071】
グリーン・レーザーマーカーを用いて、金属膜の第2部位となる領域に、網目状のパターン(
図4Aを参照)を形成した。また、実施例4として第3部位を有さず、第1部位と第2部位とが直接隣接するものも作製した。
【0072】
レーザー照射条件は、出力4W、周波数140kHz、スキャン速度4m/秒とした。第2部位の網目状のパターンは、2mm×2mmの小領域と、小領域間をつなぐ幅0.4mmのヒューズ部とにより構成されるパターンとした。
【0073】
130mm幅の金属膜付きフィルムをさらにスリット加工し、1.5mmの絶縁マージン部(誘電体フィルムが露出した金属膜非形成部)を有する50mm幅の金属膜付きフィルムとした。実施例の金属膜付きフィルムには、幅方向を第1方向(x方向)として、その一方の端部に位置する第1部位と、他方の端部に位置する絶縁マージン部に隣接する第2部位と、第1部位と第2部位との間に位置する第3部位とを配置した。第3部位の第1方向(x方向)の長さW3は、金属膜付きフィルム(誘電体フィルム)の幅W0に対する比率(W3/W0)が0.5、0.3、0.25となるように設定した。以下、W3/W0が0.5の場合を実施例1、0.3の場合を実施例2、0.25の場合を実施例3とする。
【0074】
実施例4の金属膜付きフィルムには、第1方向(x方向)の一方の端部に位置する第1部位と、他方の端部に位置する絶縁マージン部に隣接する第2部位とが、金属膜付きフィルムの中央で隣接するように配置した。
【0075】
なお、実施例1〜4では、それぞれの第1部位の幅W1と第2部位の幅W2とが、等しくなるように設定した。
【0076】
巻芯として、外径5mm、長さ50mmのポリプロピレン(PP)製の円柱を用いた。50mm幅の一対の金属膜付きフィルムを、金属膜が誘電体フィルムを介して対向するように重ね合わせて巻芯に捲回し、捲回体を作製した。なお、一対の金属膜付きフィルムは、第1方向(x方向)に互いに0.5mmずれた状態とし、絶縁マージン部を第1方向(x方向)の異なる側にそれぞれ配した状態で捲回し、捲回体(本体部)を得た。捲回数は50回とした。
【0077】
捲回体(本体部)の金属膜が露出した対向する端面に亜鉛と錫との合金を溶射し、外部電極であるメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサとした。
【0078】
作製したフィルムコンデンサの静電容量を、LCRメータを用いてAC1V、1kHzの条件で測定した。静電容量は、実施例1〜4のいずれも20μFであった。
【0079】
フィルムコンデンサの発熱状態および容量低下率を、以下のように評価した。発熱状態は、フィルムコンデンサに、初期温度を105℃として、ファンクションジェネレータで出力した10kHzの正弦波を、バイポーラ電源で100Aの電流に増幅した信号を印加した。信号を印加してから約1時間経過して表面温度が飽和した後に、軸長方向(x方向)の中央部の温度を測定して、初期の温度(105℃)と比較した。容量低下率は、絶縁抵抗計を用いて、フィルムコンデンサに室温で1200Vの直流電圧を120秒印加したのち、LCRメータを用いてAC1V、1kHzの条件で静電容量を測定し、初期の静電容量(20μF)と比較した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
電流印加による、初期の温度からの温度上昇は、第3部位を有さない実施例4では15℃であったが、実施例1〜3では12℃以下であり、第3部位を有することにより発熱が抑制されていることを確認した。これは、実施例1〜3では、第3部位を有することにより、ヒューズ部が重なり合って集中することなく、発熱の集中が抑制されたためと考えられる。
【0082】
直流電圧印加後の容量低下率は、第3部位を有さない実施例4では15%であったが、実施例1〜3では12%以下であり、第3部位を有することにより容量低下が抑制されていることを確認した。